(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車室内に吹き出される空気と内燃機関の冷却水との間で熱交換を行わせる熱交換器を熱源として有する暖房装置を備え、予め設定された停止条件が成立した場合には、前記内燃機関を停止させ、前記内燃機関を停止させている状態で、予め設定された再始動条件が成立した場合には、前記内燃機関を再始動させ、前記暖房装置が作動状態にあることを条件として、少なくとも前記再始動条件に前記熱交換器の温度に関する条件を含む車両の暖房制御装置であって、
前記熱交換器から奪われる単位時間あたりの熱量に応じた値を熱負荷として算出する熱負荷算出部と、
前記熱交換器を通過する前記単位時間あたりの空気の流量に応じた値を風負荷として算出する風負荷算出部と、
前記熱負荷算出部によって算出された熱負荷及び前記風負荷算出部によって算出された風負荷に基づいて、前記単位時間あたりの前記熱交換器の低下温度を算出する低下温度算出部と、
前記低下温度算出部によって算出された低下温度に基づいて、前記内燃機関が停止されている状態における前記熱交換器の温度を推定する熱交換器温度推定部と、
前記内燃機関の冷却水の温度を検出する水温センサと、を備え、
前記熱交換器温度推定部は、前記内燃機関が停止された後に初めて前記熱交換器の温度を推定することを条件として、前記水温センサによって検出された前記冷却水の温度を前記熱交換器の温度として推定することを特徴とする暖房制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る暖房制御装置を搭載した車両1は、内燃機関型のエンジン2と、エンジン2を制御するためのエンジン制御ユニット(以下、単に「EG−ECU」という)3と、空調ユニット4と、空調ユニット4を制御するための空調用制御ユニット(以下、単に「AC−ECU」という)5とを含んで構成されている。
【0020】
エンジン2は、EG−ECU3によって制御される点火プラグ10を用いた火花点火式エンジンによって構成されている。エンジン2には、複数の気筒が形成されている。各気筒には、その吸気ポート部分にガソリン等の燃料を噴射するインジェクタ11が設けられている。
例えば、エンジン2は、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を実行するとともに、圧縮行程と膨張行程との間に燃料と空気とを含む混合気に点火を行う4サイクルのエンジンによって構成されている。
【0021】
EG−ECU3は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、フラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートと、ネットワークモジュールとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。ネットワークモジュールは、AC−ECU5等の他のECU(Electronic Control Unit)とCAN(Controller Area Network)を介して通信を行うことができるようになっている。
なお、本実施の形態において、EG−ECU3及びAC−ECU5は、CANを介して通信を行うものとして説明するが、フレックスレイ等の他の規格に準拠したネットワークを介して通信を行うようにしてもよい。
【0022】
EG−ECU3のROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをEG−ECU3として機能させるためのプログラムが記憶されている。すなわち、EG−ECU3において、CPUがROMからRAMにプログラムを読み込んで、読み込んだプログラムを実行することにより、当該コンピュータユニットは、EG−ECU3として機能する。
【0023】
EG−ECU3の入力ポートには、アクセルペダル12の開度を表すアクセル開度を検出するアクセル開度センサ13と、ブレーキペダル14の操作量を検出するブレーキペダルポジションセンサ15と、車両1の速度を検出する車速センサ16と、エンジン2の冷却水の温度を検出する水温センサ17とを含む各種センサ類が接続されている。
また、EG−ECU3の出力ポートには、点火プラグ10及びインジェクタ11に加えて、エンジン2を始動させるためのスタータを駆動するスターターモータ18等の各種制御対象類が接続されている。
【0024】
本実施の形態において、EG−ECU3は、予め設定された停止条件が成立した場合には、エンジン2を停止させ、エンジン2を停止させている状態で、予め設定された再始動条件が成立した場合には、エンジン2を再始動させるようになっている。
【0025】
具体的には、EG−ECU3は、いわゆるアイドルストップ機能を実現することができるようになっている。EG−ECU3は、EG−ECU3に接続された各種センサ類から出力された検出信号に基づいて停止条件が成立したか否かを判断するようになっている。ここで、停止条件は、設計に応じた複数の条件の組合せからなる。
本実施の形態において、EG−ECU3は、アクセル開度センサ13によって検出されたアクセルペダル開度がほぼ0であり、ブレーキペダルポジションセンサ15によって検出されたブレーキペダル14の操作量が所定量以上であり、車速センサ16によって検出された車速が予め定められた閾値(例えば、1km/h)未満であるときに、停止条件が成立したと判断するものとする。
EG−ECU3は、エンジン2がアイドリング運転状態にあるときに停止条件が成立したことを条件として、点火プラグ10による点火およびインジェクタ11による燃料の噴射を停止することにより、エンジン2を停止させるようになっている。
【0026】
EG−ECU3は、EG−ECU3に接続された各種センサ類から出力された検出信号に基づいて再始動条件が成立したか否かを判断するようになっている。ここで、再始動条件は、設計に応じた複数の条件の組合せからなる。
本実施の形態において、EG−ECU3は、アクセル開度センサ13によって検出されたアクセルペダル12の開度が所定値以上であり、ブレーキペダルポジションセンサ15によって検出されたブレーキペダル14の操作量がほぼ0であるときに、再始動条件を満たしたと判断するものとする。
EG−ECU3は、アイドルストップ機能によりエンジン2を停止させている状態で、再始動条件が成立したことを条件として、スターターモータ18を駆動させると共に、点火プラグ10による点火およびインジェクタ11による燃料の噴射を開始させることにより、エンジン2を再始動させるようになっている。
【0027】
空調ユニット4には、車室内に吹き出される空気の導入口として、空調ユニット4内を車室外に連通する外気導入口20aと、空調ユニット4内を車室内に連通する内気導入口20bとが形成されている。
外気導入口20aは、車室外の空気を空調ユニット4内に導入する導入口である。内気導入口20bは、車室内の空気を空調ユニット4内に導入する導入口、すなわち車室内で循環する空気を導入させるための導入口である。
【0028】
空調ユニット4内には、車室内に吹き出される空気の導入口を外気導入口20aと内気導入口20bとの間で切り換える導入口切換ドア21が設けられている。導入口切換ドア21は、外気導入口20aを完全に閉じて内気導入口20bを完全に開く位置と、内気導入口20bを完全に閉じて外気導入口20aを完全に開く位置との間を移動できるように、空調ユニット4内に回転自在に取り付けられている。
【0029】
導入口切換ドア21には、導入口切換ドア21を駆動するためのアクチュエータ22が設けられている。アクチュエータ22は、AC−ECU5による制御に応じて、導入口切換ドア21の位置を制御するようになっている。このように、導入口切換ドア21は、アクチュエータ22及びAC−ECU5と協働して導入口切換部を構成する。
【0030】
また、空調ユニット4には、車室内に吹き出される空気の排出口として、フロントウインドガラスの車室内側に向けて開口されたデフロスタ吹き出し口に連通されたデフロスタ排出口24aと、運転席及び助手席に向けて開口されたベント吹き出し口に連通されたベント排出口24bと、運転席及び助手席に着座した乗員の足元に向けて開口された足元吹き出し口に連通された足元排出口24cとが形成されている。
空調ユニット4内には、デフロスタ排出口24aを開閉する吹出口切換ドア25aと、ベント排出口24b及び足元排出口24cを選択的に開閉する吹出口切換ドア25bとが設けられている。
【0031】
吹出口切換ドア25aは、デフロスタ排出口24aを完全に閉じる位置と、デフロスタ排出口24aを完全に閉じる位置との間を移動できるように、空調ユニット4内に回転自在に取り付けられている。
吹出口切換ドア25aには、吹出口切換ドア25aを駆動するためのアクチュエータ26aが設けられている。アクチュエータ26aは、AC−ECU5による制御に応じて、吹出口切換ドア25aの位置を制御するようになっている。
【0032】
吹出口切換ドア25bは、ベント排出口24bを完全に閉じて足元排出口24cを完全に開く位置と、足元排出口24cを完全に閉じてベント排出口24bを完全に開く位置との間を移動できるように、空調ユニット4内に回転自在に取り付けられている。
吹出口切換ドア25bには、吹出口切換ドア25bを駆動するためのアクチュエータ26bが設けられている。アクチュエータ26bは、AC−ECU5による制御に応じて、吹出口切換ドア25bの位置を制御するようになっている。
【0033】
また、空調ユニット4内には、空気の導入口から排出口に向けて、ブロワファン30と、エバポレータコア31と、エアミックスドア32と、ヒータコア33とが設けられている。
【0034】
ブロワファン30は、車室内に吹き出される空気を送風するようになっている。ブロワファン30には、ブロワファン30を回転させるブロワファンモータ34が設けられている。ブロワファン30は、ブロワファンモータ34によって回転させられることにより、導入口から導入された空気を排出口に向けて送風するようになっている。ブロワファンモータ34は、AC−ECU5による制御に応じて、その回転力が変化し、ブロワファン30の送風量を変化させるようになっている。
【0035】
エバポレータコア31は、エバポレータコア31を通過する空気と、エバポレータコア31内を通過する冷媒との間で熱交換を行わせることによって、エバポレータコア31を通過する空気を冷却及び除湿するようになっている。エバポレータコア31には、図示を省略するが、コンプレッサ、コンデンサ及び膨張弁が設けられ、空調ユニット4は、公知の冷房装置を構成する。
【0036】
エアミックスドア32は、ヒータコア33を通過する空気の流量を調整するようになっている。具体的には、エアミックスドア32は、エバポレータコア31を通過した空気がヒータコア33を通過する位置と、エバポレータコア31を通過した空気がヒータコア33を通過しない位置との間を移動できるように、空調ユニット4内に回転自在に取り付けられている。
エアミックスドア32には、エアミックスドア32を駆動するためのアクチュエータ35が設けられている。アクチュエータ35は、AC−ECU5による制御に応じて、エアミックスドア32の位置(以下、「エアミックスドア開度」ともいう)を制御するようになっている。
【0037】
ヒータコア33は、車室内に吹き出される空気とエンジン2の冷却水との間で熱交換を行わせる熱交換器を構成している。エンジン2の冷却水は、エンジン2によって駆動されるウォーターポンプ40によって循環路41を循環するようになっている。循環路41は、エンジン2に形成されたウォータージャケット、ラジエータ42内及びヒータコア33内を冷却水が循環するように形成されている。
このように、ヒータコア33は、エンジン2の排熱で暖められて循環路41を循環するエンジン2の冷却水と車室内に吹き出される空気との間でヒータコア33によって熱交換を行わせることにより、車室内に吹き出される空気を暖める熱源として機能する。
【0038】
したがって、ブロワファン30が回転させられ、車室内に吹き出される空気がヒータコア33を通過するようにエアミックスドア32の位置が制御されることにより、空調ユニット4は、暖房装置を構成する。
【0039】
AC−ECU5は、CPUと、RAMと、ROMと、フラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートと、ネットワークモジュールとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。ネットワークモジュールは、EG−ECU3等の他のECUとCANを介して通信を行うことができるようになっている。
AC−ECU5のROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをAC−ECU5として機能させるためのプログラムが記憶されている。すなわち、AC−ECU5において、CPUがROMからRAMにプログラムを読み込んで、読み込んだプログラムを実行することにより、当該コンピュータユニットは、AC−ECU5として機能する。
【0040】
本実施の形態において、AC−ECU5の入力ポートには、エバポレータコア31の温度を検出するエバポレータ温度センサ50と、車室内の温度を検出する車室内温度センサ51と、外気の温度を検出する外気温度センサ52とを含む各種センサ類と、コントロールパネル53とが接続されている。
【0041】
コントロールパネル53には、車室内に吹き出される空気の導入口が外気導入口20aと内気導入口20bとの間で選択される空気導入モード選択スイッチと、デフロスタ吹き出し口、ベント吹き出し口及び足元吹き出し口から吹き出される空気量の比率の組合せが選択される吹出口モード選択スイッチと、これら吹き出し口から吹き出される空気の流量(以下、単に「吹き出し量」ともいう)が設定される風量調節スイッチと、設定温度が設定される温度設定スイッチとを含む各種コントローラが設けられている。一方、AC−ECU5の出力ポートには、アクチュエータ22、26a、26b及び35、ブロワファンモータ34等の各種制御対象類が接続されている。
【0042】
例えば、AC−ECU5は、車室内温度センサ51によって検出された車室内の温度が設定温度未満であることを条件として、暖房装置を作動させるようになっている。暖房装置が作動状態にある場合には、AC−ECU5は、車室内温度センサ51及び外気温度センサ52によって検出された温度と、コントロールパネル53で設定された設定温度及び吹き出し量とに基づいて、ブロワファンモータ34と、アクチュエータ35とを制御し、ブロワファン30の送風量と、エアミックスドア開度とを制御するようになっている。
【0043】
図2に示すように、本発明の実施の形態に係る暖房制御装置は、通過空気温度検出部60と、熱負荷算出部61と、風負荷算出部62と、低下温度算出部63と、熱交換器温度推定部64とを備えている。ここで、熱負荷算出部61、風負荷算出部62、低下温度算出部63及び熱交換器温度推定部64は、AC−ECU5によって構成される。
【0044】
通過空気温度検出部60は、空調ユニット4内でヒータコア33を通過する前の空気の温度を検出するようになっている。本実施の形態において、ヒータコア33を通過する前の空気の温度は、エバポレータ温度センサ50によって検出される。すなわち、通過空気温度検出部60は、従来のエバポレータ温度センサ50によって構成される。
【0045】
熱負荷算出部61は、ヒータコア33から奪われる単位時間dtあたりの熱量に応じた値を熱負荷HLとして算出するようになっている。ここで、空調ユニット4の容積は、一定であると考えることができ、ヒータコア33を通過する空気の流量の変化による誤差は、風負荷算出部62によって風負荷BLとして換算されるため、ヒータコア33から奪われる単位時間dtあたりの熱量に応じた熱負荷HLは、ヒータコア33前後の温度差に比例する。
このため、熱負荷算出部61は、熱交換器温度推定部64によって推定されたヒータコア33の温度Hcと、通過空気温度検出部60によって検出された温度Heとの差を算出することにより、熱負荷HLを算出するようになっている。
なお、本実施の形態において、熱負荷算出部61は、熱負荷HLを予め実験的に定められた定数kで正規化するようになっている。具体的には、熱負荷算出部61は、熱負荷HL=(Hc−He)/kを算出するようになっている。したがって、熱負荷HLは、0%から100%までの範囲で算出される。
【0046】
風負荷算出部62は、ヒータコア33を通過する単位時間dtあたりの空気の流量に応じた値を風負荷BLとして算出するようになっている。具体的には、風負荷算出部62は、ブロワファン30の送風量Baと、エアミックスドア開度Ddとに基づいて風負荷BLを算出するようになっている。具体的には、ブロワファン30が停止している状態の送風量Baを0%とし、ブロワファン30が最大能力で駆動されているときの送風量Baを100%とする。
また、エバポレータコア31を通過した空気がヒータコア33を通過しない位置にエアミックスドア32があるときのエアミックスドア開度Ddを0%とし、エバポレータコア31を通過した空気がヒータコア33を最大限に通過する位置にエアミックスドア32があるときのエアミックスドア開度Ddを100%とする。
風負荷算出部62は、ブロワファン30の送風量Baと、エアミックスドア開度Ddとの積Ba×Ddを算出することにより、風負荷BLを算出するようになっている。したがって、風負荷BLは、0%から100%までの範囲で算出される。
【0047】
また、風負荷算出部62は、車室内に吹き出される空気の導入口として、外気導入口20aに切り換えられているか、内気導入口20bに切り換えられているかに応じて風負荷BLを補正するようになっている。
例えば、車室内に吹き出される空気の導入口として、外気導入口20aに切り換えられているときの補正係数をk1とし、内気導入口20bに切り換えられているときの補正係数をk2とする。ここで、補正係数k1、k2は、実験により0から1までの範囲で予め定められているものとする。
風負荷算出部62は、車室内に吹き出される空気の導入口として、外気導入口20aに切り換えられている場合には、Ba×Dd×k1を算出することにより、風負荷BLを算出するようになっている。
一方、風負荷算出部62は、車室内に吹き出される空気の導入口として、内気導入口20bに切り換えられている場合には、Ba×Dd×k2を算出することにより、風負荷BLを算出するようになっている。
【0048】
低下温度算出部63は、熱負荷算出部61によって算出された熱負荷HL及び風負荷算出部62によって算出された風負荷BLに基づいて、単位時間dtあたりのヒータコア33の低下温度Tdを算出するようになっている。
具体的には、低下温度算出部63は、
図3に示すように、熱負荷HLと風負荷BLとに対して、単位時間dtあたりのヒータコア33の低下温度Tdが対応付けられたマップを参照し、熱負荷算出部61によって算出された熱負荷と、風負荷算出部62によって算出された風負荷BLとに基づいて、低下温度Tdを算出するようになっている。
なお、
図3に示すマップは一例として図示されているが、低下温度算出部63が参照するマップは、熱負荷HLが大きくなるにつれて低下温度Tdが高くなるとともに、風負荷BLが大きくなるにつれて低下温度Tdが高くなるように対応付けられている。
【0049】
図2において、熱交換器温度推定部64は、低下温度算出部63によって算出された低下温度Tdに基づいて、エンジン2が停止されている状態におけるヒータコア33の温度Hcを推定するようになっている。
具体的には、熱交換器温度推定部64は、推定したヒータコア33の温度Hpから低下温度算出部63によって算出された低下温度Tdを減じることによって、現在のヒータコア33の温度Hcを推定するようになっている。
ここで、熱交換器温度推定部64は、エンジン2が停止された後に初めてヒータコア33の温度Hcを推定することを条件として、EG−ECU3からCANを介して得られる冷却水の温度を現在のヒータコア33の温度Hcとして推定するようになっている。
【0050】
すなわち、熱交換器温度推定部64は、推定したヒータコア33の温度Hpから低下温度算出部63によって算出された低下温度Tdを減じることによって、現在のヒータコア33の温度Hcを推定するため、エンジン2が停止された後に初めてヒータコア33の温度Hcを推定するときには、ヒータコア33の温度Hpが推定できていない。
しかしながら、エンジン2が停止した直後は、冷却水の温度とヒータコア33の温度とがほぼ等しいため、EG−ECU3から得られる冷却水の温度を現在のヒータコア33の温度Hcとして推定することができる。
【0051】
図1において、AC−ECU5は、EG−ECU3からCANを介して得られる情報に基づいて、アイドルストップ機能によってエンジン2が停止させられているアイドルストップ状態にあるか否かを判断するようになっている。
ここで、AC−ECU5は、アイドルストップ状態にあると判断し、暖房装置が作動状態にあることを条件として、熱交換器温度推定部64によって推定されたヒータコア33の温度Hcに基づいて、エンジン2を再始動させるか否かを判断するようになっている。
具体的には、AC−ECU5は、推定したヒータコア33の温度Hcが予め定められた閾値Hth未満となったことを条件として、エンジン2を再始動させるようにEG−ECU3に要求するようになっている。
【0052】
以上のように構成された本発明の実施の形態に係る暖房制御装置によるエンジン再始動動作について
図4を参照して説明する。なお、以下に説明するエンジン再始動動作は、AC−ECU5が作動している間、単位時間dt間隔で繰り返し実行される。
【0053】
まず、AC−ECU5は、暖房装置が作動状態にあるか否かを判断する(ステップS1)。ここで、暖房装置が作動状態にないと判断した場合には、AC−ECU5は、エンジン再始動動作を終了する。
一方、暖房装置が作動状態にあると判断した場合には、AC−ECU5は、EG−ECU3からCANを介して得られる情報に基づいて、アイドルストップ状態にあるか否かを判断する(ステップS2)。
ここで、アイドルストップ状態にないと判断した場合には、AC−ECU5は、エンジン再始動動作を終了する。一方、アイドルストップ状態にあると判断した場合には、AC−ECU5は、
図5に示す熱交換器温度推定処理を実行する(ステップS3)。
【0054】
図5において、まず、AC−ECU5は、熱交換器温度推定部64として機能し、エンジン2が停止された後に初めてヒータコア33の温度Hcを推定するか否かを判断する(ステップS4)。
ここで、エンジン2が停止された後に初めてヒータコア33の温度Hcが推定すると判断した場合には、AC−ECU5は、EG−ECU3からCANを介して得られる冷却水の温度をヒータコア33の温度Hcとして推定し(ステップS5)、熱交換器温度推定処理を終了する。
一方、エンジン2が停止された後にヒータコア33の温度Hcを推定することが初めてではないと判断した場合には、AC−ECU5は、熱負荷算出部61として機能し、ヒータコア33から奪われる単位時間dtあたりの熱量に応じた熱負荷HLを算出する(ステップS6)。
【0055】
次いで、AC−ECU5は、風負荷算出部62として機能し、ヒータコア33を通過する単位時間dtあたりの空気の流量に応じた風負荷BLを算出する(ステップS7)。次いで、AC−ECU5は、低下温度算出部63として機能し、算出した熱負荷HL及び風負荷BLに基づいて、単位時間dtあたりのヒータコア33の低下温度Tdを算出する(ステップS8)。
次いで、AC−ECU5は、熱交換器温度推定部64として機能し、算出した低下温度Tdを推定したヒータコア33の温度Hpから減じることによって、現在のヒータコア33の温度Hcを推定し(ステップS9)、熱交換器温度推定処理を終了する。
【0056】
図4において、熱交換器温度推定処理を終了すると、AC−ECU5は、ヒータコア33の推定温度Hcが閾値Hth未満であるか否かを判断する(ステップS10)。ヒータコア33の推定温度Hcが閾値Hth未満でないと判断した場合には、AC−ECU5は、エンジン再始動動作を終了する。
一方、ヒータコア33の推定温度Hcが閾値Hth未満であると判断した場合には、AC−ECU5は、エンジン2を再始動させるようにEG−ECU3に要求し(ステップS11)、エンジン再始動動作を終了する。
【0057】
以上のように、本実施の形態は、ヒータコア33の温度を検出する新たな温度センサを設けることなく、エンジン2の再始動条件に含まれるヒータコア33の温度Hcを熱負荷HLと風負荷BLとに基づいて推定するため、生産コストを増加させずに、車室内に吹き出される空気の温度が低下することを防止することができる。
【0058】
なお、本実施の形態においては、アイドルストップ機能を有する車両に本発明に係る暖房制御装置を適用した例について説明した。しかしながら、本発明に係る暖房制御装置は、内燃機関型のエンジンと回転電機とを駆動源として有するハイブリッド車両に適用することもできる。
すなわち、本発明に係る暖房制御装置は、回転電機のみで走行する条件が成立した場合には、エンジンを停止させ、エンジンを停止させている状態で、予め設定された再始動条件が成立した場合には、エンジンを再始動させ、暖房装置が作動状態にあることを条件として、少なくとも再始動条件にヒータコアの温度に関する条件を含むハイブリッド車両に適用することもできる。
【0059】
以上、本発明の実施の形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が特許請求の範囲に記載された請求項に含まれることが意図されている。