(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被写体部位の動態を撮影することにより複数のフレーム画像を生成する撮影手段と、 前記撮影手段により生成された複数のフレーム画像を解析して前記被写体部位の動態に係る診断支援情報を生成する診断支援情報生成手段と、を備える診断支援システムを用いた診断支援情報生成方法であって、
前記被写体部位に所定の負荷を与える負荷付与工程と、
前記被写体部位に前記所定の負荷を与えた直後に前記被写体部位の動態を前記撮影手段により撮影する第1の撮影を行うとともに、前記第1の撮影から予め定められた時間経過後に前記被写体部位の動態を前記撮影手段により撮影する第2の撮影を行う撮影工程と、
前記撮影工程の前記第1の撮影において前記撮影手段により生成された複数のフレーム画像に基づいて前記診断支援情報生成手段により前記被写体部位の動態に係る所定の特徴量として第1の特徴量を算出し、前記撮影工程の前記第2の撮影において前記撮影手段により生成された複数のフレーム画像に基づいて前記診断支援情報生成手段により前記被写体部位の動態に係る所定の特徴量として第2の特徴量を算出し、前記第1の特徴量と前記第2の特徴量との変化に基づいて前記被写体部位の動態に係る診断支援情報を生成する診断支援情報生成工程と、
を含む診断支援情報生成方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0014】
〔胸部診断支援システム100の構成 〕
まず、構成を説明する。
図1に、本実施形態における胸部診断支援システム100の全体構成を示す。
図1に示すように、胸部診断支援システム100は、撮影装置1と、撮影用コンソール2とが通信ケーブル等により接続され、撮影用コンソール2と、診断用コンソール3とがLAN(Local Area Network)等の通信ネットワークNTを介して接続されて構成されている。胸部診断支援システム100を構成する各装置は、DICOM(Digital Image and Communications in Medicine)規格に準じており、各装置間の通信は、DICOMに則って行われる。尚、一の胸部診断支援システム100内で自己完結するシステムの場合、換言すると、外部システムと直接的に通信等を行わない場合には、DICOM準拠しない構成であっても良い。
【0015】
〔撮影装置1の構成〕
撮影装置1は、例えば、呼吸運動に伴う肺の膨張及び収縮の形態変化、心臓の拍動等の、周期性(サイクル)を持つ胸部の動態を撮影する撮影手段である。動態撮影は、人体の胸部に対し、X線等の放射線を連続的に、或いは、パルス的に照射して複数の画像を取得(即ち、連続撮影)することにより行う。この連続撮影により得られた一連の画像を動態画像と呼ぶ。また、動態画像を構成する複数の画像のそれぞれをフレーム画像と呼ぶ。
撮影装置1は、
図1に示すように、放射線源11、放射線照射制御装置12、放射線検出部13、読取制御装置14等を備えて構成されている。
【0016】
放射線源11は、被検者Mの被写体部位を挟んで放射線検出部13と対向する位置に配置され、放射線照射制御装置12の制御に従って、被検者Mの被写体部位である胸部に対し放射線(X線)を照射する。
放射線照射制御装置12は、撮影用コンソール2に接続されており、撮影用コンソール2から入力された放射線照射条件に基づいて放射線源11を制御して放射線撮影を行う。撮影用コンソール2から入力される放射線照射条件は、例えば、連続照射時の照射時間、パルス照射時のパルスレート、パルス幅、パルス間隔、1撮影あたりの撮影フレーム数、X線管電流の値、X線管電圧の値、フィルター種等である。パルスレートは、1秒あたりの放射線照射回数であり、後述するフレームレートと一致している。パルス幅は、放射線照射1回当たりの放射線照射時間である。パルス間隔は、連続撮影において、1回の放射線照射開始から次の放射線照射開始までの時間であり、後述するフレーム間隔と一致している。なお、本実施形態においては、被検者Mに対し複数回の撮影を行うため、放射線照射条件には、撮影回数、撮影間の時間間隔(例えば、一の連続照射から次の連続照射までの時間間隔)が含まれる。
【0017】
放射線検出部13は、FPD(Flat Panel Detector)等の半導体イメージセンサーにより構成される。FPDは、例えば、ガラス基板等を有しており、基板上の所定位置に、放射線源11から照射されて少なくとも被検者Mを透過した放射線をその強度に応じて検出し、検出した放射線を電気信号に変換して蓄積する複数の検出素子(画素)がマトリックス状に配列されている。各画素は、例えばTFT(Thin Film Transistor)等のスイッチング部を備えて構成され、画素サイズは50〜200μm(ミクロン)である。FPDにはX線をシンチレーターを介して光電変換素子により電気信号に変換する間接変換型、X線を直接的に電気信号に変換する直接変換型があるが、何れを用いてもよい。
放射線検出部13は、被検者Mを挟んで放射線源11と対向するように設けられている。
【0018】
読取制御装置14は、撮影用コンソール2に接続されている。読取制御装置14は、撮影用コンソール2から入力された画像読取条件に基づいて放射線検出部13の各画素のスイッチング部を制御して、当該各画素に蓄積された電気信号の読み取りをスイッチングしていき、放射線検出部13に蓄積された電気信号を読み取ることにより、画像データを取得する。この画像データがフレーム画像である。そして、読取制御装置14は、取得したフレーム画像を撮影用コンソール2に出力する。画像読取条件は、例えば、フレームレート、フレーム間隔、ビニングサイズ(後述するビニング処理で何個の画素を一のブロックとして扱うか)、画像サイズ(マトリックスサイズ)等である。フレームレートは、1秒あたりに取得するフレーム画像数であり、パルスレートと一致している。フレーム間隔は、連続撮影において、1回のフレーム画像の取得動作開始から次のフレーム画像の取得動作開始までの時間であり、パルス間隔と一致している。また、上述のように、本実施形態においては、被検者Mに対し複数回の撮影を行うため、画像読取条件には、撮影回数、撮影間の時間間隔(連続読取を行ってから次の連続読取を行うまでの時間間隔)が含まれる。
ビニング処理は、フレーム画像をビニングサイズの画素単位のブロックに分割し、各ブロックの画素の信号値の代表値(ここでは、平均信号値とする)を算出してブロック内の画素の信号値を算出された代表値に置き換える処理である。ビニング処理は、撮影用コンソール2で行っても良いが、放射線検出部13で実施し、例えば、10画素×10画素を1ブロックに圧縮された画像データ(ビニング画像データ)を、後述する撮影用コンソール2に送信表示して、再撮影の要否を技師が判断可能とし、再撮不要、即ち、動態解析に使用可能と判断されると、当該ビニング画像データを診断用コンソール3に転送し解析に使用することができる。つまり、ビニング画像データを再撮要否確認用プレビュー表示及び動態解析の両方に使用することが好ましい。
【0019】
ここで、放射線照射制御装置12と読取制御装置14は互いに接続され、互いに同期をとりながら放射線照射動作と画像の読み取りの動作を同調させるようになっている。同期の取り方としては、放射線照射制御装置12と読取制御装置14とが同期信号を通信する方式の他、放射線照射制御装置12が自己で照射開始及び終了を検知する方式等を用いることができる。
【0020】
〔撮影用コンソール2の構成〕
撮影用コンソール2は、放射線照射条件や画像読取条件を撮影装置1に出力して撮影装置1による放射線撮影及び放射線画像の読み取り動作を制御するとともに、撮影装置1により取得された動態画像を撮影技師によるポジショニングの確認や診断に適した画像であるか否かの確認用に表示する。
撮影用コンソール2は、
図1に示すように、制御部21、記憶部22、操作部23、表示部24、通信部25を備えて構成され、各部はバス26により接続されている。
【0021】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory
)等により構成される。制御部21のCPUは、操作部23の操作に応じて、記憶部22に記憶されているシステムプログラムや各種処理プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って後述する撮影制御処理を始めとする各種処理を実行し、撮影用コンソール2各部の動作や、撮影装置1の放射線照射動作及び読み取り動作を集中制御する。
【0022】
記憶部22は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等により構成される。記憶部22は、制御部21で実行される各種プログラムやプログラムにより処理の実行に必要なパラメーター、或いは処理結果等のデータを記憶する。例えば、記憶部22は、
図3に示す撮影制御処理を実行するためのプログラムを記憶している。また、記憶部22は、日被写体部位に対応付けて放射線照射条件及び画像読取条件を記憶している。各種プログラムは、読取可能なプログラムコードの形態で格納され、制御部21は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
【0023】
操作部23は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された指示信号を制御部21に出力する。また、操作部23は、表示部24の表示画面にタッチパネルを備えても良く、この場合、タッチパネルを介して入力された指示信号を制御部21に出力する。
【0024】
表示部24は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等のモニターにより構成され、制御部21から入力される表示信号の指示に従って、操作部23からの入力指示やデータ等を表示する。また、再撮影の要否(動態解析への使用可否)の判断のために、ビニング画像が表示される。
【0025】
通信部25は、LANアダプターやモデムやTA(Terminal Adapter)等を備え、通信ネットワークNTに接続された各装置との間のデータ送受信を制御する。
【0026】
〔診断用コンソール3の構成〕
診断用コンソール3は、撮影用コンソール2から動態画像を取得し、取得した動態画像を解析して医師が読影診断するための診断支援情報を生成して表示する診断支援情報生成手段である。
診断用コンソール3は、
図1に示すように、制御部31、記憶部32、操作部33、表示部34、通信部35を備えて構成され、各部はバス36により接続されている。
【0027】
制御部31は、CPU、RAM等により構成される。制御部31のCPUは、操作部33の操作に応じて、記憶部32に記憶されているシステムプログラムや、各種処理プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って、診断支援情報生成処理を始めとする各種処理を実行し、診断用コンソール3各部の動作を集中制御する。
【0028】
記憶部32は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等により構成される。記憶部32は、制御部31で診断支援情報生成処理を実行するためのプログラムを始めとする各種プログラムやプログラムにより処理の実行に必要なパラメーター、或いは処理結果等のデータを記憶する。これらの各種プログラムは、読取可能なプログラムコードの形態で格納され、制御部31は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
【0029】
操作部33は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された指示信号を制御部31に出力する。また、操作部33は、表示部34の表示画面にタッチパネルを備えても良く、この場合、タッチパネルを介して入力された指示信号を制御部31に出力する。
【0030】
表示部34は、LCDやCRT等のモニターにより構成され、制御部31から入力される表示信号の指示に従って、操作部33からの入力指示やデータ等を表示する。
【0031】
通信部35は、LANアダプターやモデムやTA等を備え、通信ネットワークNTに接続された各装置との間のデータ送受信を制御する。
【0032】
〔胸部診断支援システム100の動作〕
次に、上記胸部診断支援システム100における動作について説明する。
【0033】
(診断支援情報生成の流れ)
図2を参照して、胸部診断支援システム100を用いた診断支援情報の生成の流れについて説明する。
まず、被検者Mに所定の運動を行ってもらい、被検者Mの被写体部位である胸部に負荷をかける(ステップT1)。このステップは、被検者Mが実生活において受ける負荷による影響を取得するために行われる。例えば、高負荷をかけるのであれば踏台昇降20回、低負荷をかけるのであれば踏台昇降10回等の運動を被検者Mに行ってもらう。なお、負荷のレベルはこれに限定されず、被検者Mの性別、年齢、過去の病歴等に応じて適宜設定すればよい。
【0034】
ここで、肺や心臓を含む胸部に疾患のない正常者の場合、運動を行うことにより胸部に負荷をかけると、一般的に、呼吸及び心拍は[表1]のように変化することが知られている。
【表1】
なお、単位時間あたりの呼吸数が増加することは、各呼吸の周期が小さくなることを意味している。
体力測定等で広く用いられている踏み台昇降に於いては、高負荷とは、例えば、踏台昇降20回、低負荷とは、例えば、踏台昇降10回程度の負荷である。
【0035】
踏台昇降等の運動を行うと、体内で乳酸が生成され、生成された乳酸は血液中に放出される。血液中に放出された乳酸は中和されて水と二酸化炭素になる。この二酸化炭素を呼吸とともに体外へ排出すべく換気量を増大させる体内メカニズムが知られている。正常者の場合、負荷を与えた直後には、この体内メカニズムに従い、[表1]に示すように呼吸周期が大幅に短くなるとともに(即ち、単位時間当たりの呼吸数が増え)、呼吸1周期あたりの換気量も大幅に増大し、所定時間経過後に安静呼吸状態に遷移することになる。
一方、疾患患者の場合(とりわけ、閉塞性肺疾患の場合)には、正常者に比べて負荷を与えた直後と安静時の呼吸の周期変動が少なく、かつ、負荷を与えた直後と安静時の呼吸1周期あたりの換気量の変化が少ないことが知られている。また、正常者と比べて負荷を与えてから安静な呼吸状態に復帰するまでの時間が長い。また、安静時は正常者に比べて呼吸周期が短く、呼吸一周期あたりの換気量は小さい。
即ち、正常者と疾患患者とでは、負荷を与えた直後の、胸部の動態に負荷の影響のある状態(有負荷状態という)から胸部の動態に負荷の影響がない状態(無負荷状態という。安呼吸静状態と同じ。)に復帰するまでの呼吸周期や換気量の変化の違いが大きく、これらに基づいて両者を弁別するほうが安静呼吸状態の呼吸周期や換気量に基づいて両者を弁別するよりも容易であり、換言すると、診断能が高く、精度良い診断が行えることになる。また、正常者も疾患患者も実生活下では何等かの負荷を受けるので、負荷をかけたほうがより実生活に相関のある診断支援情報の生成が可能となるものと考えられる。
そこで、本実施形態においては、動態撮影前に、被検者Mの胸部に負荷をかける。
【0036】
負荷をかけた後、被検者Mに被写体部位である胸部の動態撮影を実施する(ステップT2)。ステップT2は、具体的には、撮影用コンソール2が
図3に示す撮影制御処理を実行して撮影装置1を制御することにより実施される。撮影制御処理は、制御部21と記憶部22に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0037】
図3の撮影制御処理においては、まず、撮影技師により撮影用コンソール2の操作部23が操作され、被検者Mの患者情報(被検者Mの氏名、身長、体重、年齢、性別等)の入力が行われる(ステップS1)。
【0038】
次いで、放射線照射条件が記憶部22から読み出されて放射線照射制御装置12に設定されるとともに、画像読取条件が記憶部22から読み出されて読取制御装置14に設定される(ステップS2)。
【0039】
次いで、操作部23の操作による放射線照射の指示が待機される(ステップS3)。ここで、撮影技師等の撮影実施者は、被検者Mの被写体部位のポジショニングを行う。即ち、被検者Mの被写体部位を放射線源11と放射線検出部13の間に配置する。撮影準備が整った時点で、操作部23を操作して放射線照射指示を入力する。
【0040】
操作部23により放射線照射指示が入力されると(ステップS3;YES)、放射線照射制御装置12及び読取制御装置14に撮影開始指示が出力され、動態撮影が開始される(ステップS4)。即ち、放射線照射制御装置12に設定されたパルス間隔で放射線源11により放射線が照射され、放射線検出部13によりフレーム画像が取得される。予め定められたフレーム数(又は、時間)の撮影が終了すると、制御部21により放射線照射制御装置12及び読取制御装置14に予め定められた時間間隔(撮影間の時間間隔)の待機の指示が出力され、撮影が待機される。予め定められた時間間隔が経過すると、次の動態撮影が行われる。予め定められた回数の動態撮影が終了すると、制御部21により放射線照射制御装置12及び読取制御装置14に撮影終了の指示が出力され、撮影動作が停止される。撮影される1撮影あたりのフレーム数は、少なくとも1呼吸サイクルが撮影できる枚数である。
【0041】
ここで、複数回の動態撮影を行うのは、負荷を与えた後、安静状態に復帰するまでの全期間にわたり撮影を続ける(放射線を連続、或いは、パルス照射し続ける)と、被検者Mの被曝線量が増大してしまうため、これを防止するためである。そこで、まず、被検者Mの胸部に負荷をかけた直後(負荷直後)に複数サイクルの呼吸が含まれる時間幅、例えば、8秒間の動態撮影(第1の撮影)を行い、その後、予め定められた時間、例えば、30秒経過後に、安静時の複数サイクルの呼吸が含まれる時間幅、例えば、10秒間(第2の撮影)の動態撮影を行う。1回目の撮影と2回目の撮影の時間間隔は、正常者なら負荷の大きさに鑑み、安静呼吸状態に復帰するであろう時間(実験的、経験的に求めた時間)に設定することが好ましい。
なお、必要に応じて、撮影間の時間間隔を短くして第1の撮影と第2の撮影の間に、有負荷状態から無負荷状態に復帰するまでの過渡期の胸部の状態を示す撮影を実施することとしてもよい。このようにすると、有負荷状態から無負荷状態に復帰するまでの過渡期の情報を得ることができるので好ましい。
放射線の照射時間や撮影間の時間間隔は、負荷の大きさに応じて適宜設定することができる。
【0042】
撮影により取得されたフレーム画像は順次撮影用コンソール2に入力され、撮影順を示す番号と対応付けて記憶部22に記憶されるとともに(ステップS5)、表示部24に表示される(ステップS6)。撮影技師は、表示された動態画像によりポジショニング等を確認し、撮影により診断に適した画像が取得された(撮影OK)か、再撮影が必要(撮影NG)か、を判断する。そして、操作部23を操作して、判断結果を入力する。
【0043】
操作部23の所定の操作により撮影OKを示す判断結果が入力されると(ステップS7;YES)、動態撮影で取得された一連のフレーム画像のそれぞれに、動態画像を識別するための識別IDや、患者情報、被写体部位、放射線照射条件、画像読取条件、何回目の撮影かを示す情報、撮影順を示す番号(フレーム番号)、撮影日時等の情報が付帯され(例えば、DICOM形式で画像データのヘッダ領域に書き込まれ)、通信部25を介して診断用コンソール3に送信される(ステップS8)。そして、本処理は終了する。一方、操作部23の所定の操作により撮影NGを示す判断結果が入力されると(ステップS7;NO)、記憶部22に記憶された一連のフレーム画像が削除され(ステップS9)、撮影制御処理は終了する。
【0044】
なお、より精度のよい診断を行うためには、レベルの異なる複数の負荷を被検者Mに与えて撮影を行うことが好ましい。異なる負荷を与えた撮影を行う際には、与えた負荷の影響が消え、被検者Mが安静呼吸状態に戻った後、次の負荷を与えた撮影を行う必要がある。
【0045】
動態撮影が終了すると、複数回の動態撮影により得られた複数のフレーム画像群に基づいて、診断用コンソール3において診断支援情報の生成が行われる(ステップT3)。
【0046】
−換気機能の診断支援情報の生成−
ここで、呼吸1周期は、呼気期と吸気期により構成される。呼気期は、横隔膜が上がることによって肺から空気が排出され、肺野の領域が小さくなる。これに伴い、肺野の密度は増加するので、肺野を透過する放射線量及びこれを示す画像の信号値は減少する。吸気期は、横隔膜が下がることにより肺に空気が取り込まれ、胸郭中の肺野の領域が大きくなる。これに伴い、肺野の密度は減少するので、肺野を透過する放射線量及びこれを示す信号値は増加する。よって、胸部の動態撮影により得られた一連のフレーム画像の肺野全体又はこれを分割した各ブロック(例えば、ビニング処理で得られる複数画素のブロック)毎に、横軸を撮影開始からの経過時間、縦軸を画素の平均信号値とした座標平面を作成して、各フレーム画像の撮影開始からの経過時間とその領域について算出された平均信号値が交わる点をプロットすると、最大吸気位を最大信号値、最大呼気位を最小信号値とする波形を得ることができる。最大信号値と最小信号値の差である振幅は、換気量を示す指標値となる。
【0047】
図4(a)に、正常者の胸部に対して高負荷をかけた後に胸部動態を撮影することにより得られたフレーム画像群の肺野全体又はこれを分割した各ブロック毎の平均信号値の変化を示す波形を模式的に示す。
図4(b)に、正常者に対して低負荷をかけた後に胸部動態を撮影することにより得られたフレーム画像群の肺野全体又はこれを分割した各ブロック毎の平均信号値の変化を示す波形を模式的に示す。なお、
図4(a)、(b)において、信号値の波形は高負荷を与えた直後の有負荷状態及び安静呼吸状態への復帰時の無負荷状態の一部のみを示している。また、信号値は、換気による信号値の時間変化を抽出するため、時間軸方向のローパスフィルター処理を施したものである。
【0048】
図4(a)、(b)に示すように、正常者に運動を行わせて負荷を与えると、負荷を与えた直後は安静時に比べて信号値変化の周期が短くなり、信号値の振幅が増大する。この状態から所定時間が経過すると、安静呼吸状態の周期及び振幅に戻る。低負荷の方が安静呼吸状態に遷移する時間は短い。
【0049】
図4(c)に、閉塞性肺疾患の患者に対して高負荷をかけた後に胸部動態を撮影することにより得られたフレーム画像群の肺野全体又はこれを分割した各ブロック毎の平均信号値の変化を示す波形を模式的に示す。
図4(d)に、閉塞性肺疾患の患者に対して低負荷をかけた後に胸部動態を撮影することにより得られたフレーム画像群の肺野全体又はこれを分割した各ブロック毎の平均信号値の変化を示す波形を模式的に示す。なお、
図4(c)、(d)において、信号値の波形は高負荷を与えた直後の有負荷状態及び安静呼吸状態への復帰時の無負荷状態の一部のみを示している。また、信号値は、換気による信号値の時間変化を抽出するため、時間軸方向のローパスフィルター処理を施したものである。
【0050】
図4(c)、(d)に示すように、閉塞性肺疾患の患者に運動を行わせて負荷を与えると、正常者と同様に、負荷を与えた直後は安静時に比べて信号値変化の周期が短くなり、信号値の振幅が増大する。しかし、
図4(a)〜(d)を比較すればわかるように、負荷時と安静時との信号値の周期や振幅の変化は正常者よりも小さい。また、閉塞性肺疾患の患者の場合、正常者に比べて安静呼吸状態に復帰するまでの時間が長い。
【0051】
そこで、診断用コンソール3の制御部31は、記憶部32に記憶されているプログラムとの協働により、診断支援情報生成処理を実行し、ステップT2の複数回の撮影のそれぞれにより得られたフレーム画像群に基づいて、複数の撮影のそれぞれに対応する複数の特徴量を算出し、複数の特徴量に基づいて診断支援情報を生成する。即ち、少なくとも、上記第1の撮影において生成された複数のフレーム画像に基づいて所定の特徴量を算出し(算出された特徴量を第1の特徴量という)、第2の撮影において生成された複数のフレーム画像に基づいて所定の特徴量を算出し(算出された特徴量を第2の特徴量という)、第1の特徴量及び第2の特徴量に基づいて、被検者Mの換気機能に係る診断支援情報を生成する。必要に応じて第1の撮影と第2の間に第3、第4、…第nの撮影を行った場合には、それぞれの撮影において生成された複数のフレーム画像に基づいて所定の特徴量を算出し、算出した複数の特徴量に基づいて診断支援情報を生成する。
【0052】
特徴量を算出するに当たっては、撮影装置1から得られた一連のフレーム画像の肺野領域を互いに対応付ける必要がある。この対応付けは、例えば、特開2012−110400号公報に記載のように、各フレーム画像の肺野領域内の同じ位置の画素(放射線検出部13における同一位置の検出素子の出力を示す画素)をフレーム画像間で互いに対応付けることにより行うことができる。具体的には、フレーム画像群のうち一のフレーム画像を基準画像として肺野領域を抽出し、他のフレーム画像において基準画像の肺野領域内の各画素と同じ位置の画素を基準画像の肺野領域内の各画素に対応付ける。
なお、基準画像は、肺野領域の面積が最小の最大呼気位の画像とすることが好ましい。基準画像の肺野領域内の画素が他のフレーム画像の肺野領域外に対応付けられることがないからである。肺野領域の抽出方法は何れの方法であってもよい。例えば、基準画像の各画素の信号値(濃度値)のヒストグラムから判別分析によって閾値を求め、この閾値より高信号の領域を肺野領域候補として1次抽出する。次いで、1次抽出された肺野領域候補の境界付近でエッジ検出を行い、境界付近でエッジが最大となる点を境界に沿って抽出すれば肺野領域の境界を抽出することができる。
上述のように、複数のフレーム画像間で同じ位置の画素を対応付けることとすれば、処理時間の短縮を図ることができるので好ましい。
また、例えば、特開2012−5729号公報に記載の、公知のローカルマッチング処理及びワーピング処理を行うことによりフレーム画像間の肺野領域の位置を対応付けることとしてもよい。
【0053】
また、胸部の動態画像の信号変化には、換気による信号変化だけでなく、血流による信号変化が含まれるため、換気機能に係る特徴量を算出するに当たっては、特徴量の算出対象の領域の信号値に対して時間軸方向のローパスフィルター処理(例えば、高域カットオフ周波数1.0Hz)を施して、血流による信号変化を除去しておく必要がある。
【0054】
特徴量は、肺野全体について算出することとしてもよいし、肺野領域のうちユーザーが操作部33により指定した領域について算出することとしてもよい。例えば、聴診器等により予め肺野領域のうちの一部領域が疑わしいことが事前に判明している場合には、指定した領域のみについて算出することで、必要な領域のみに特徴量の算出処理を行えばよいので処理時間が短縮することができる。スパイロメーターによる換気量測定では特定の領域のみについての測定ができないが、本実施形態では、指定領域のみの特徴量の算出が可能であるので好ましい。また、肺野領域を複数のブロック(例えば、200μm画素サイズの場合、10個×10個の画素で構成される2mm×2mm角)に分割したブロック毎に特徴量を算出することが好ましい。前述したように、プレビュー表示と特徴量解析の両方に、ビニング処理された2mm×2mm角のブロックのデータを使用できるからである。勿論、処理時間よりも特徴量の精度を優先する場合は、特徴量解析を各画素単位に行うこととしても良い。
【0055】
算出する所定の特徴量としては、例えば、換気量に対応する特徴量、呼吸周期、最大流速比の平均値や標準偏差値等、肺野の換気機能に係るいずれの特徴量を算出することとしてもよい。ただし、第1の撮影〜第nの撮影に対して、全て同じ特徴量を算出する。
換気量に対応する特徴量としては、例えば、特開2009−153678号公報に記載の、呼吸1サイクルの最大吸気位と最大呼気位の信号量の差等を用いることができる。最大吸気位と最大呼気位の信号量は、例えば、特徴量の算出対象領域の最大吸気位の信号値と最大呼気位の信号値のヒストグラムを生成し、それぞれの信号値に頻度を乗算することにより算出することができる。
また、呼吸周期は、特徴量の算出対象領域内の信号値の平均信号値を算出し、その平均信号値の時間変化を示す信号波形を生成し、生成した波形の1周期の長さ(時間)を算出することにより求めることができる。
また、最大流速比の平均値や標準偏差値は、肺野領域を分割したブロック毎に、隣接する(時間的に隣接する)フレーム画像間でフレーム間差分値を算出し、呼気期のフレーム間差分値の絶対値の最大値を呼気期のフレーム間差分値の絶対値の最大値で除算することにより最大流速比を求め、肺野全体の最大流速比の平均値と標準偏差値を算出することにより求めることができる。なお、最大流速比の平均値や標準偏差値は、肺野全体に対する算出となる。
【0056】
各撮影に対応する特徴量が算出されると、算出された複数の特徴量に基づいて診断支援情報を生成する。例えば、縦軸に特徴量、横軸を撮影開始からの経過時間とした座標空間上に算出したそれぞれの特徴量をプロットしてグラフを生成し、このグラフを診断支援情報とする。グラフは、異なる時点の複数の特徴量に基づいて生成した近似曲線を表示することとしてもよい。また、例えば、複数の撮影における特徴量(例えば、負荷直後の第1の特徴量と安静時の第2の特徴量)の変化率を算出し、これを診断支援情報としてもよい。また、負荷直後の第1の撮影に対応する特徴量の数値を診断支援情報としてもよい。
【0057】
図5(a)に、負荷直後の有負荷状態から安静時の無負荷状態に復帰するまでの換気量に対応する特徴量のグラフを模式的に示す。なお、説明のため、
図5(a)においては、正常者であって換気機能が良好な被検者(実線)、正常者に分類されるが換気機能がやや退化ぎみの被検者(一点鎖線)、正常者に分類されるが換気機能がある程度退化している被検者(二点鎖線)、閉塞性肺疾患の発症者(太い実線)の特徴量を一つのグラフに示している。
図5(a)に示すように、換気機能が良好な正常者は負荷直後の換気量が安静時に比べて大幅に増大し、すぐに安静呼吸状態に近い状態まで復帰する。正常者に分類される人であっても、換気機能がやや退化ぎみの場合は、負荷直後の換気量は大きいが、安静呼吸状態に近い状態となるまでに時間がかかる。換気機能がある程度退化している場合は、負荷直後の換気量が換気機能が良好な人に比べて小さく、また安静呼吸状態に近い状態となるまでに時間がかかるが、発症者よりは多い。閉塞性肺疾患の発症者は、負荷直後と安静時の換気量の変化が正常者に比べて非常に小さく、負荷直後の値は正常者と比べてかなり小さい。
【0058】
図5(b)に、負荷直後の有負荷状態から安静時の無負荷状態に復帰するまでの呼吸周期のグラフを模式的に示す。なお、説明のため、
図5(b)においては、正常者(実線)、閉塞性肺疾患の発症者(太い実線)の呼吸周期を一つのグラフに示している。
図5(b)に示すように、正常者の負荷直後の呼吸周期は安静時の比べて大幅に短く、安静時に復帰するにつれて呼吸周期が長くなっている。一方、発症者は、負荷直後と安静時との呼吸周期の変動が正常者と比べて非常に小さく、負荷直後の呼吸周期は正常者と比べてかなり長い。
【0059】
図5(c)に、負荷直後の有負荷状態から安静時の無負荷状態に復帰するまでの最大流速比の平均値(又は標準偏差値)のグラフを模式的に示す。なお、説明のため、
図5(c)においては、正常者(実線)、閉塞性肺疾患の発症者(太い実線)の最大流速比の平均値(又は標準偏差値)を一つのグラフに示している。
図5(c)に示すように、正常者の負荷直後の最大流速比の平均値(標準偏差値)は、安静時とほぼ同じで変動がほとんどない。一方、発症者は、運動負荷後の過換気状態において、呼気時間増大や呼出できずに空気を捉え込むエアートラッピングが増大するため、安静時に対して最大流速比の平均値(標準偏差値)が増加する傾向がある。重症度が高いほど、負荷直後の値は増加する。
【0060】
正常者も疾患患者も、実生活下においては、例えば、重量物を持ったり、階段を上ったり等の何等かの負荷を受けつつ生活している。従って、負荷を受けた状態で胸部の動態撮影を行って、有負荷状態の換気機能の特徴量を算出し、診断支援情報として提供することで、より被検者Mの実生活における換気機能と相関のある診断支援情報を提供することが可能となる。また、
図5(a)〜(c)に示すように、特徴量によってグラフはさまざまなパターンとなるが、何れの特徴量においても、負荷直後においては正常者と発症者の特徴量の差が安静時に比べて大きいことがわかる。従って、少なくとも、負荷直後の特徴量を医師に提供することで、医師による被検者Mの換気機能が正常であるか否かの弁別が容易となる。また、負荷直後の有負荷状態から安静呼吸状態の無負荷状態に復帰するまでの特徴量の変化を
図5(a)〜(c)等に示したようにグラフ化することにより、負荷直後の有負荷状態から安静時の呼吸状態に復帰するまでの特徴量の過渡的な変化を医師に提供することができ、医師による被検者Mの換気機能が正常であるか否かの弁別がより一層容易となる。また、運動等の負荷をかけた場合にどのくらいの時間休憩をとる必要があるかといった生活における指導を医師が患者に行うことも可能となる。
【0061】
−血流に係る診断支援情報の生成−
上記の説明では、肺の換気機能の診断支援情報の生成について説明したが、肺の血流に係る診断支援情報を生成することとしてもよい。心拍周期>>呼吸周期であるので、各回の撮影につき1呼吸周期以上の撮影を行えば、換気の診断支援情報生成用の撮影で得られたフレーム画像群を用いて換気及び血流の双方の診断支援情報を生成することができる。
【0062】
肺野においては、心臓の収縮によって右心室から大動脈を介して血液が急激に吐出されることにより肺野血管が拡がる。肺野において血管が拡張すると、肺血管が拡がった領域の放射線透過量が、肺野(肺胞)領域を透過する放射線透過量よりも比較的大きく減少するので、この領域に対応する放射線検出部13の信号値が低下する。即ち、フレーム画像間で対応する画素(又は上述のブロック)毎に、時間軸方向のハイパスフィルター処理(低域カットオフ周波数0.7Hz)を施して血流に係る信号変化を抽出し、横軸を撮影開始からの経過時間、縦軸を画素の平均信号値とした座標平面を作成して、各フレーム画像の撮影開始からの経過時間とその領域について算出された平均信号値が交わる点をプロットすると、血流により肺血管が拡張〜収縮する変化を示す波形(血流信号波形)を得ることができる。
【0063】
[表1]で示したように、被検者Mに運動を行わせて負荷を与えることにより、生理学上、単位時間当たりの心拍数及び1回心拍量が増加することが知られている。よって、 正常者及び疾患患者に負荷(高負荷、低負荷)を与えたとき及び安静時の血流信号波形の変化は、それぞれ
図4(a)〜(d)に示すものと略同様である。即ち、負荷を与えたほうが、正常者及び疾患患者の血流信号波形の違いが顕著になる。
従って、負荷直後の有負荷状態から安静時の無負荷状態に復帰するまでの血流信号の振幅や周期等の特徴量を算出して診断支援情報を生成して提供することにより、医師が被検者Mの肺血流が正常であるか否かを容易に弁別することが可能となる。
【0064】
血流に係る特徴量を算出する前提としての各フレーム画像間での肺野領域の対応付けは、換気の特徴量算出と同様の手法により行うことができる。また、血流による信号値の成分を抽出するため、対応付けた各画素(ブロック)に対して時間軸方向のハイパスフィルター処理を施してから特徴量を算出する必要がある。
【0065】
特徴量としては、血流に係るどのような特徴量を用いてもよい。例えば、血流信号波形の振幅、周期を用いることができる。また、例えば、特開2009−136573号公報の記載のように、各フレーム画像の低信号部を脈動部として検出し、脈動部の重心の単位時間あたりの移動量(血流速)を特徴量としてもよい。
【0066】
また、換気の場合と同様に、負荷直後の有負荷状態から安静時の無負荷状態に復帰するまでの特徴量の変化を示すグラフ、各撮影における特徴量(例えば、負荷直後と安静時)の変化率、負荷直後の特徴量の数値等を診断支援情報として生成することができる。このような血流に係る診断支援情報を医師に提供した場合の効果は、換気において説明したものと同様である。
【0067】
また、上述のように、負荷直後のほうが安静時よりも血流信号値の変化量(血流信号波形の振幅)が大きいことから、負荷直後は、血流量の増大する領域(血流有りの領域)と血流量が増大しない領域(血流なしの領域)との信号値差が大きくなる。よって、例えば、胸部に負荷を与えて撮影した一連のフレーム画像を順次表示して診断支援情報としたり、一連のフレーム画像の対応する各画素や各ブロックの信号値を合算した値に応じた色を付して診断支援情報としたり、特開2012−5729号公報に記載のように、隣接するフレーム画像間で対応する画素又は小領域(ブロック)の信号値の差分値(小領域の場合は平均信号値等の代表値の差分値)を算出して、画像上に信号値に応じた色を付加したフレーム間差分画像を生成し、これを順次表示(動画表示)して血流に係る診断支援情報を生成したりする場合等においても、血流ありとなしの領域がより明確となるので、視認性の高い診断支援情報を提供することが可能となる。特に、安静時に血流量が少ない胸郭付近の末梢血管や肺尖部において、負荷を与えることにより血流量が増大するので、これらの領域における血流の有無の視認性が高まり、血流量が低下している疾患部分の視認がしやすくなる。例えば、被検者Mに血栓がある領域(血流のない血管領域)が存在している場合、血栓領域の視認性が向上するので、医師が認識しやすくなり好ましい。また、負荷をかけて撮影したフレーム画像の血流信号やフレーム間差分値に対応する色を付加した診断支援情報は、血栓に対して薬治療を行った場合の血栓の改善状況を確認する場合にも使用することができる。心拍周期>>呼吸周期であるので、短時間で撮影を終了することができ、被曝線量が少なくて済むので好ましい。また、造影剤を使う場合に比べて患者の負担も少ないので好ましい。
【0068】
診断支援情報の生成が終了すると、診断用コンソール3の制御部31により、表示部34に診断支援情報が表示される(ステップT4)。
【0069】
以上説明したように、本実施形態によれば、被写体部位である胸部に所定の負荷を与え、負荷の影響のある有負荷状態の胸部動態を撮影装置1及び撮影用コンソール2により撮影して有負荷状態の胸部動態に係る複数のフレーム画像を生成し、生成された複数のフレーム画像に基づいて診断用コンソール3により有負荷状態の胸部動態、例えば、肺野の換気機能や血流に係る所定の特徴量を算出し、当該算出した特徴量に基づいて胸部動態に係る診断支援情報を生成する。
【0070】
従って、実生活と同様に負荷を受けると被検者Mの肺の換気機能や血流がどのような状態になるかを医師が把握することができるので、実生活における被検者Mの換気機能や血流と相関のある診断支援情報を提供することが可能となる。また、負荷直後においては、正常者と疾患患者の特徴量の差が安静時に比べて大きいので、負荷直度の特徴量を診断支援情報として提供することで、医師による被検者Mの換気機能や血流が正常であるか否かの弁別が容易となる。
【0071】
また、撮影装置1及び撮影用コンソール2により、更に、負荷の影響のない無負荷状態の被検者Mの胸部動態を撮影し、診断用コンソール3により、無負荷状態の被検者Mの胸部動態に係る所定の特徴量を算出し、算出された有負荷状態の動態に係る特徴量及び無負荷状態の動態に係る特徴量に基づいて被検者Mの胸部動態に係る診断支援情報を生成するようにすることで、負荷を受けると胸部動態が無負荷状態と比べてどのように変化するのかを医師が容易に把握することが可能となる。
【0072】
例えば、被検者Mに負荷をかけた後に第1の撮影を行うことにより有負荷状態の胸部動態を撮影し、第1の撮影から予め定められた時間経過後に第2の撮影を行うことにより、無負荷状態の胸部動態を撮影し、第1の撮影において生成された複数のフレーム画像に基づいて第1の特徴量を算出し、第2の撮影において生成された複数のフレーム画像に基づいて第2の特徴量を算出し、第1の特徴量と第2の特徴量との変化に基づいて、被写体部位の動態に係る診断支援情報を生成することで、負荷直後の有負荷状態から安静時の呼吸状態に復帰するまでの胸部動態の機能の変化を医師が把握することが可能となる。
【0073】
なお、上記実施形態における記述は、本発明に係る好適な胸部診断支援システムの一例であり、これに限定されるものではない。
【0074】
例えば、上記実施形態においては、被写体部位を胸部とした場合を例にとり説明したが、これに限定されるものではない。また、動態を撮影して動態画像を生成する撮影装置をX線撮影装置としたが、これに限定されない。
【0075】
また、例えば、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリー等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、CD-ROM
等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【0076】
その他、胸部診断支援システム100を構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。