(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記プレキャスト壁体の壁体さや管には、鋼管杭より大径のフーチングさや管が差し込まれるため、少なくともこのフーチングさや管が差し込まれる部分の壁体厚を大きくとる必要があるとともに、このプレキャスト壁体は堤体の構造耐力の一端を担っているので、全体として重量が大きくなる。
このため、現場で前記プレキャスト壁体を用いて堤体を施工する際に運搬機械や施工機械が大型化し、施工が容易でないという問題がある。
また、比較的小型の汎用機で施工する場合、積み上げるプレキャスト壁体の段数を細分化することも考えられるが、施工性が悪くなるともに、上下に積み重ねられるプレキャスト壁体間の止水作業も増え、全体として施工が長期化するおそれがある。
【0006】
また、前記プレキャスト壁体を用いて堤体の曲線部を施工する場合、横方向に隣り合うプレキャスト壁体間に隙間が生じるが、この隙間に曲線部専用のプレキャスト壁体を施工するには、隙間の大きさに合わせた複数種類の曲線部専用のプレキャスト壁体を用意しなければならずコスト高になるため、一般的に曲線部は現場打ちのコンクリート構造としている。このため、堤体の曲線部の施工に手間がかかるという問題もある。
【0007】
さらに、前記プレキャスト壁体を用いて堤体を施工する場合、横方向に隣り合うプレキャスト壁体間に縦目地が生じるが、この縦目地は止水性の弱点となったり、地震時の揺れにより連続体としての挙動が損なわれ破損の起点や目開きの原因となるため、現場打ちコンクリートによる処理が行われる場合が多い。したがって、この現場での縦目地の処理に手間がかかるという問題があった。
【0008】
また、前記プレキャスト壁体を用いて堤体を施工する場合、フーチングさや管と、このフーチングさや管に差し込まれた鋼管杭との隙間にグラウト材(充填材)を充填している。
この場合、フーチングさや管の上端開口から、当該フーチングさや管と鋼管杭との隙間にグラウト材を充填する必要があるため充填作業が容易でなく、さらに、グラウト材がフーチングさや管と鋼管杭との隙間に十分かつ確実に充填されているかどうかも、フーチングさや管の上端開口から確認する必要があるため確認作業も容易でない。このため、グラウト材充填の施工および施工管理が容易でなかった。
【0009】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、施工性に優れかつ曲線部の施工や縦目地の処理も容易であり、さらに充填材の施工および施工管理が容易な堤体、堤体構成部材および堤体の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の堤体は、杭と、この杭に支持されたフーチング部と、このフーチング部の上方に配置されたプレキャスト壁体とを備えた堤体であって、前記フーチング部は鋼製横材を有し、この鋼製横材に鋼製縦材が接合され、前記プレキャスト壁体の側端部が前記鋼製縦材に係合されることで、当該鋼製縦材を介して隣り合う前記プレキャスト壁体が横方向に接合され、隣り合う前記プレキャスト壁体の接合部を前記鋼製縦材ごと被覆する被覆部材を備えることを特徴とする。
【0011】
ここで、横方向に隣り合うプレキャスト壁体の側端部どうしは、1本の鋼製縦材にそれぞれ係合してもよいし、鋼製縦材を2本並設して、一方の鋼製縦材に一方のプレキャスト壁体の側端部を係合し、他方の鋼製縦材に他方のプレキャスト壁体の側端部を係合してもよい。
また、鋼製縦材としては例えばH形鋼、溝形鋼、鋼管等の鋼材が挙げられるが、これらに限定されるものではない。プレキャスト壁体の側端部が鋼製縦材に係合されるので、当該鋼製縦材には、プレキャスト壁体に側端部を係合可能な凹所が鋼製縦材の長手方向に沿って設けられていればよい。
【0012】
本発明においては、プレキャスト壁体の側端部が鋼製縦材に係合され、この鋼製縦材が杭によって支持されたフーチング部の鋼製横材に接合されているので、従来と異なり、プレキャスト壁体内にフーチングさや管を差し込む必要がないので、このフーチングさや管が差し込まれる部分の壁体厚を大きくとる必要がないし、堤体としての構造耐力は鋼製縦材、鋼製横材、フーチング部等が担い、プレキャスト壁体は遮水版としての機能を有するだけでよい。
したがって、プレキャスト壁体の重量を従来に比して軽減できるので、施工性がよく全体として施工の短縮化を図ることができる。
【0013】
また、横方向に隣り合うプレキャスト壁体間の縦目地(接合部)は、被覆部材によって被覆するので、現場でのコンクリート打設に比して縦目地の処理が容易となるとともに、止水性を容易かつ確実に確保できる。
また、鋼製縦材にプレキャスト壁体の側端部を係合しているので、堤体の曲線部においては、プレキャスト壁体の鋼製縦材に対する角度を変えて当該プレキャスト壁体の側端部を係合したり、2本の鋼製縦材を隣接させるとともに、これら鋼製縦材を所定の角度をもって配置し、これら鋼製縦材にそれぞれプレキャスト壁体の側端部を係合することによって、隣り合うプレキャスト壁体の接続角度を容易に変更できるので、堤体の曲線部を容易に施工できる。この場合、隣り合うプレキャスト壁体の接合部は被覆部材によって被覆できるので、止水性も容易に確保できる。
【0014】
本発明の前記構成において、前記被覆部材を型枠としてその内側に充填材が充填されていることが好ましい。
【0015】
ここで、充填材は、被覆部材とプレキャスト壁体との間の隙間を埋めることで、プレキャスト壁体と鋼製縦材とを一体化して断面力を伝達できるものであれば、どのようなものでもよいが、充填材としては、例えば、コンクリート、モルタル、樹脂等が挙げられる。
【0016】
このような構成によれば、充填材によってプレキャスト壁体と鋼製縦材とを一体化できるので、地震時においても、堤体が連続体として一体的に挙動する。したがって、横方向に隣り合うプレキャスト壁体の接合部の破損や目開きを抑制できる。
また、被覆部材が型枠となるので、別途型枠を用意する必要もなく、さらに、被覆部材が充填材を介してプレキャスト壁体や鋼製縦材に密着するので、被覆部材の固定強度や止水性を十分に確保できる。
【0017】
また、本発明の前記構成において、前記鋼製横材に下方に突出する鋼製杭頭接合部材が接合され、前記杭は少なくとも上端部に筒部を有しており、この筒部に前記鋼製杭頭接合部材が挿入されたうえで充填材が充填されていることが好ましい。
【0018】
ここで、杭としては鋼管杭が好適に用いられるが、これに限ることはない。例えば、現場打ちの鉄筋コンクリート杭の上端部に鋼管等によって筒部を接合したものや、鉄筋コンクリート製のプレキャスト杭の上端部に鋼管等によって筒部を接合したものでもよい。
また、前記鋼製杭頭接合部材の外周面と、筒部の内周面との少なくともいずれか一方にずれ止め用の突起を設けるのが好ましい。この突起としてはリング状やスパイラル状のものが好適である。
【0019】
このような構成によれば、杭上端部の筒部に鋼製杭頭接合部材が挿入されたうえで充填材が充填されているので、筒部と鋼製杭頭接合部材とが充填材によって一体化して断面力を効率的に伝達できる。したがって、杭によって鋼製横材およびこの鋼製横材に接合された鋼製縦材を確実に支持できる。このように、鋼製横材と鋼製縦材で構成された骨組を杭で確実に支持できるので、この骨組で堤体の構造耐力を担うことができる。したがって、プレキャスト壁体には大きな構造耐力を期待してなくてもよいので、プレキャスト壁体の厚さを従来に比して薄くでき、さらに骨組によって堤体の構造耐力を担うことができるので、フーチング部自体の厚さを従来に比して薄くできる。よって、全体として重量を軽減できる。
【0020】
また、本発明の前記構成において、前記フーチング部は前記鋼製横材と前記鋼製縦材の下端部を覆う被覆コンクリートとを有しており、この被覆コンクリートに上下に貫通する貫通孔が設けられ、この貫通孔に前記鋼製杭頭接合部材の上端部が配置されるとともに、前記貫通孔を通して充填材が前記筒部に充填されるとともに前記貫通孔に充填されていること好ましい。
【0021】
このような構成によれば、フーチング部は鋼製横材と鋼製縦材とによって骨組が構成され、この骨組によって構造耐力を担うことができ、被覆コンクリートには大きな構造耐力を期待しなくてもよい。
したがって、被覆コンクリートは、従来のフーチングを構成するコンクリートに比して十分に薄くできるので、フーチング部の重量を従来に比して軽減できる。したがって、このフーチング部をプレキャスト部材とする場合でも、施工や運搬が容易となる。
また、被覆コンクリートに設けられた貫通孔を通して充填材が前記筒部に充填されるとともに前記貫通孔に充填されているので、筒部と鋼製杭頭接合部材との間に容易かつ確実に充填材を充填して筒部と鋼製杭頭接合部材とを容易に一体化できるとともに、施工の際に貫通孔を通して、筒部と鋼製杭頭接合部材との間に確実に充填材が充填されているかを確認できる。したがって、充填材の施工および施工管理を容易に行える。
【0022】
また、本発明の堤体は、杭と、この杭の上方に配置されたプレキャスト壁体とを備えた堤体であって、前記杭は少なくとも上端部に筒部を有しており、この筒部に鋼製縦材が挿入されたうえで充填材が充填され、前記プレキャスト壁体の側端部が前記鋼製縦材に係合されることで、当該鋼製縦材を介して隣り合う前記プレキャスト壁体が横方向に接合され、隣り合う前記プレキャスト壁体の接合部を前記鋼製縦材ごと被覆する被覆部材を備えることを特徴とする。
ここで、前記被覆部材を型枠としてその内側に、コンクリート、モルタル、樹脂等の充填を充填するのが好ましい。
【0023】
本発明においては、プレキャスト壁体の側端部が鋼製縦材に係合され、この鋼製縦材が杭によって支持されているので、従来と異なり、プレキャスト壁体内にフーチングさや管を差し込む必要がないので、このフーチングさや管が差し込まれる部分の壁体厚を大きくとる必要がないし、堤体としての構造耐力は鋼製縦材が担い、プレキャスト壁体は遮水版としての機能を有するだけでよい。
したがって、プレキャスト壁体の重量を従来に比して軽減できるので、施工性がよく全体として施工の短縮化を図ることができる。
【0024】
また、横方向に隣り合うプレキャスト壁体間の縦目地(接合部)は、被覆部材によって被覆するので、現場でのコンクリート打設に比して縦目地の処理が容易となるとともに、止水性を容易かつ確実に確保できる。
また、鋼製縦材にプレキャスト壁体の側端部を係合しているので、堤体の曲線部においては、プレキャスト壁体の鋼製縦材に対する角度を変えて当該プレキャスト壁体の側端部を係合したり、2本の鋼製縦材を隣接させるとともに、これら鋼製縦材を所定の角度をもって配置し、これら鋼製縦材にそれぞれプレキャスト壁体の側端部を係合することによって、隣り合うプレキャスト壁体の接続角度を容易に変更できるので、堤体の曲線部を容易に施工できる。この場合、隣り合うプレキャスト壁体の接合部は被覆部材によって被覆できるので、止水性も容易に確保できる。
【0025】
また、本発明の前記構成において、隣り合う前記プレキャスト壁体どうしが連結部材によって連結されていることが好ましい。
【0026】
このような構成によれば、隣り合うプレキャスト壁体どうしが連結部材によって連結されているので、地震時の揺れによって、隣り合うプレキャスト壁体どうしが離れるのを防止できる。したがって、隣り合うプレキャスト壁体の接合部の破損や目開きを抑制できる。
【0027】
また、本発明の堤体構成部材は、鋼製横材を有するフーチング部と、前記鋼製横材に接合されて、上方に立ち上がる鋼製立上部と、前記鋼製横材に接合されて、下方に突出する鋼製杭頭接合部材とを有し、前記フーチング部は前記鋼製横材と前記鋼製立上部の下端部を覆う被覆コンクリートとを有し、この被覆コンクリートに上下に貫通する貫通孔が設けられ、この貫通孔に前記杭頭接合部の上端部が配置されていることを特徴とする。
【0028】
本発明においては、上端部に筒部を有する杭の上方から堤体構成部材を吊り降ろして筒部に鋼製杭頭接合部材を挿入したうえで、貫通孔を通して充填材を前記筒部に充填するとともに貫通孔に充填することで、杭とフーチング部とを容易に接合できる。
そして、鋼製立上部に鋼製縦材を接合し、次に、この鋼製縦材にプレキャスト壁体の側端部を係合することで、鋼製縦材を介して隣り合う前記プレキャスト壁体を横方向に接合し、その後、隣り合うプレキャスト壁体の接合部を被覆部材によって鋼製縦材ごと被覆することによって、堤体を容易に施工できる。
【0029】
つまり、堤体構成部材は、鋼製横材、鋼製立上部および鋼製杭頭接合部材で骨組が構成され、この骨組に被覆コンクリートが設けられてなる比較的軽量なものであるので、この堤体構成部材をクレーン等によって吊り下げて容易に杭に接合でき、この堤体構成部材の鋼製立上部に鋼製縦材をクレーン等によって吊り下げて接合できる。そして、この鋼製縦材にプレキャスト壁体をクレーン等によって吊り下げてその側端部を係合することで、プレキャスト壁体を横方向に接合したうえで、隣り合うプレキャスト壁体の接合部に被覆部材をクレーン等によって吊り下げて当該接合部を鋼製縦材ごと被覆することによって、堤体を容易に施工できる。
【0030】
また、本発明堤体施工方法は、少なくとも上端部に筒部を有する杭を地盤に施工しておき、前記杭の上方から前記堤体構成部材を吊り降ろして前記筒部に前記鋼製杭頭接合部材を挿入したうえで、前記貫通孔を通して充填材を前記筒部に充填するとともに前記貫通孔に充填することで、前記杭と前記フーチング部とを接合し、次に、前記鋼製立上部に鋼製縦材を接合し、次に、前記鋼製縦材にプレキャスト壁体の側端部を係合することで、前記鋼製縦材を介して隣り合う前記プレキャスト壁体を横方向に接合し、次に、隣り合う前記プレキャスト壁体の接合部を被覆部材によって前記鋼製縦材ごと被覆することを特徴とする。
【0031】
本発明によれば、堤体構成部材、鋼製縦材、プレキャスト壁体をクレーン等を用いて吊り下げて容易に堤体を施工できる。
また、被覆コンクリートに設けられた貫通孔を通して充填材を筒部に充填するとともに貫通孔に充填するので、筒部と鋼製杭頭接合部材との間に容易かつ確実に充填材を充填して筒部と鋼製杭頭接合部材とを容易に一体化できるとともに、施工の際に貫通孔を通して、筒部と鋼製杭頭接合部材との間に確実に充填材が充填されているかを確認できる。したがって、充填材の施工および施工管理を容易に行える。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、堤体を容易に施工できるともに堤体の曲線部の施工や縦目地の処理も容易であり、さらに充填材の施工および施工管理も容易となる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の係る堤体の実施の形態について説明する。
(第1の実施の形態)
図1は第1の実施の形態における堤体の概略構成を示す斜視図、
図2は堤体構成部材の概略構成を杭とともに示す斜視図、
図3は堤体構成部材の概略構成を示す斜視図、
図4はプレキャスト壁体の接合部を示す平断面図である。なお、
図2では、図示を分かりやすくする都合上、本来見えない内部構造を実線で記載している箇所もある。
図1において符号1は堤体、符号2は杭、符号3はフーチング部、符号4はプレキャスト壁体を示す。
【0035】
杭2は、
図2に示すように、円筒状の鋼管杭2である。なお、この鋼管杭2はフーチング部3の横方向の長さに比べ上下に長いものであるが、
図2においては上下の長さを実際よりかなり短くして図示している。
鋼管杭2の上端部は後述する鋼製杭頭接合部材6が挿入される筒部2aとなっており、この筒部2aの内周面にはずれ止め用の突起2bが設けられている。この突起2bは円形のリング状に形成され、筒部2aの下部に軸方向に所定間隔で複数設けられている。
【0036】
フーチング部3は内部に鋼製横材5を有している。鋼製横材5は、
図2では断面四角形の角筒状の鋼材によって構成されているが、これに限ることなく、H形鋼等の鋼材で構成してもよい。
鋼製横材5の両端部には下方に突出する鋼製杭頭接合部材6がそれぞれ接合されている。この鋼製杭頭接合部材6は断面四角形の角筒状の鋼材によって構成されているが、これに限ることなく、H形鋼等の鋼材で構成してもよい。この鋼製杭頭接合部材6の下端部の外周面にはずれ止め用の突起6bが設けられている。この突起6bは四角形のリング状に形成され、鋼製杭頭接合部材6の下部に軸方向に所定間隔で複数設けられている。
【0037】
鋼製杭頭接合部材6の鋼製横材5から下方に突出する突出部分は鋼管杭2の筒部2aに挿入されており、この状態において、突起6bと突起2bとは軸方向と直交する方向において重なっているか、または、軸方向に所定距離だけずれている。
鋼製杭頭接合部材6と筒部2aとの間にはコンクリート等からなる充填材が充填されており、これによって鋼製杭頭接合部材6と筒部2aとが一体化されている。また、突起2b,6bに充填材を介して軸力が作用し、これによって筒部2aに対する鋼製杭頭接合部材6のずれ止めや抜け止めがなされている。
【0038】
また、鋼製横材5の長さ方向略中央部には、鋼製横材5の上面から上方に立ち上がる鋼製立上部7が接合されている。この鋼製立上部7は鋼製縦材8が接合されるもので、この鋼製縦材8と等しい断面を有する鋼材で構成されていてもよいし、異なる断面の鋼材で構成されていてもよい。要は鋼製縦材8の下端部を強固に接合できるものであればよい。
図2および
図3では鋼製立上部7および鋼製縦材8はそれぞれ四角筒状に図示しているが、本実施の形態では実際は鋼製立上部7および鋼製縦材8はそれぞれH形鋼によって構成されている。なお、鋼製立上部7の高さは適宜設定されるが、プレキャスト壁体4の下端部の側端部が係合されるので、鋼製縦材8の下端部を構成するものである。
【0039】
フーチング部3は鋼製横材5と鋼製立上部7の下端部を覆う被覆コンクリート9を有している。この被覆コンクリート9は直方体状に形成され、その両端部には上下に貫通する貫通孔10が設けられ、この貫通孔10に鋼製杭頭接合部材6の上端部および鋼製横材5の端部が配置されている。
そして、
図3に示すように、鋼製横材5を有するフーチング部3と、鋼製杭頭接合部材6と、鋼製立上部7とによって堤体構成部材11が構成されている。
【0040】
また、鋼製立上部7を含む鋼製縦材8には
図1および
図4に示すように、プレキャスト壁体4の側端部が係合されおり、これによって鋼製縦材8を介して隣り合うプレキャスト壁体4,4が横方向に接合されている。
鋼製縦材8はH形鋼によって構成されているので、
図4に示すように、そのフランジ8a,8aとウエブ8bによって構成される凹溝状の係合部12にプレキャスト壁体4の側端部が嵌め込まれることによって、当該係合部12にプレキャスト壁体4の側端部が係合されている。係合部12の幅つまりフランジ8a,8a間の距離は、プレキャスト壁体4の厚さとほぼ等しいか、所定の寸法だけ大きくなっている。なお、係合部12の幅がプレキャスト壁体4の厚さとほぼ等しくなっており、この係合部12にプレキャスト壁体4の側端部が隙間なく係合する場合には、後述する充填材16を充填しなくてもよい場合がある。
【0041】
また、ウエブ8bには貫通孔が鋼製縦材8の長手方向に所定間隔で設けられており、この貫通孔に鋼線等で形成された連結部材13が挿通されている。連結部材13はプレキャスト壁体4の側端面から表面にかけて形成された貫通孔に挿通され、表面に突出した連結部材13の端部を図示しない留め具によってプレキャスト壁体4の表面に止めることで隣り合うプレキャスト壁体4,4を連結している。
【0042】
また、隣り合うプレキャスト壁体4,4には、これらの接合部を鋼製縦材8ごと覆う被覆部材15がプレキャスト壁体4,4の両面側にそれぞれ設けられている。
この被覆部材15は断面コ字形に形成された鉄筋コンクリート製のプレキャスト部材であり、その両端部がプレキャスト壁体4,4の側端部の表面に当接されている。被覆部材15には、その裏面から突出するフック部材15aが設けられており、このフック部材15aが鋼製縦材8のフランジ8aに設けられた図示しない係止部に係止されることで、被覆部材15はプレキャスト壁体4,4に固定されている。
そして、このようにして固定された被覆部材15,15を型枠としてその内側のコンクリート等の充填材16が充填されている。
【0043】
プレキャスト壁体4の側端部が係合される鋼製縦材8は、
図1に示すように、1つのフーチング部3に対して1本設けられており、フーチング部3を所定間隔で配置することによって、鋼製縦材8が所定間隔で複数設けられている。そして、隣り合う鋼製縦材8,8間にそれぞれプレキャスト壁体4を配置し、隣り合うプレキャスト壁体4,4のそれぞれの側端部を鋼製縦材8の係合部12に係合することによって、プレキャスト壁体4が横方向(鋼製縦材8の並設方向)に接合されて堤体1が施工されている。
【0044】
次に、堤体構成部材11によって堤体1を施工する方法について説明する。
まず、堤体1を施工する地盤に鋼管杭2を所定間隔で2列、例えば圧入や中堀工法等の適宜の方法で施工する。鋼管杭2の並列方向におけるピッチはプレキャスト壁体4の幅寸法とほぼ等しく設定する。また、鋼管杭2の列間のピッチ(距離)は堤体構成部材11の鋼製杭頭接合部材6,6間の距離とほぼ等しく設定する。
【0045】
次に、
図2に示すように、鋼管杭2の上方から堤体構成部材11をクレーン等によって吊り降ろして鋼管杭2の上端部の筒部2aに鋼製杭頭接合部材6を挿入する。そして、所定の高さ位置で堤体構成部材11を固定しておき、フーチング部3の貫通孔10を通してコンクリート等の充填材を筒部2aに充填するとともに貫通孔10に充填する。充填材が十分に固化することによって、鋼管杭2とフーチング部3とが接合され、これによって堤体構成部材11が鋼管杭2によって支持される。
このような堤体構成部材11の設置を全ての鋼管杭2に対して同様にして行うことによって、堤体構成部材11を所定間隔で設置する。
【0046】
次に、各堤体構成部材11の鋼製立上部7に鋼製縦材8をクレーン等によって吊り下げて接合する。この接合は鋼製立上部7の上端に鋼製縦材8の下端を突き当て、現場で溶接することによって行う。
次に、隣り合う鋼製縦材8,8間にプレキャスト壁体4をクレーン等によって吊り下げて配置するともに、当該プレキャスト壁体4の両側端部をそれぞれ鋼製縦材8,8の対向する係合部12,12に上方から吊り降ろしながら嵌め込んで係合することによって、鋼製縦材8を介して隣り合うプレキャスト壁体4を横方向に接合する。
【0047】
なお、プレキャスト壁体4は複数枚を順次鋼製縦材8,8に係合することによって、必要枚数を上下に積み重ねる。鋼製縦材8の高さは予め積み重ねるプレキャスト壁体4の枚数に応じて適宜設定されているが、鋼製縦材8の高さが不足する場合、現場で鋼製縦材8に所定長さの鋼製縦材を溶接等によって継ぎ足してもよい。
【0048】
全てのプレキャスト壁体4を横方向に接合した後、または適宜の枚数のプレキャスト壁体4を横方向に接合した後、隣り合うプレキャスト壁体4,4の接合部を被覆部材15によって前記鋼製縦材8ごと被覆する。
この場合、
図4に示すように、鋼製縦材8を介して隣り合うプレキャスト壁体4,4どうしを連結部材13によって連結した後、被覆部材15の両端部をプレキャスト壁体4,4の側端部の表面に当接するとともに、被覆部材15の裏面から突出するフック部材15aを鋼製縦材8のフランジ8aに設けられた図示しない係止部に係止することによって、被覆部材15をプレキャスト壁体4,4に固定する。
そして、このようにして固定された被覆部材15,15を型枠としてその内側にコンクリート等の充填材16を充填する。この充填材16が固化することによって、プレキャスト壁体4と鋼製縦材8、さらには被覆部材15が一体化して、連続した堤体1となる。
【0049】
また、堤体1の曲線部を施工する場合、
図5(a)に示すように、プレキャスト壁体4の鋼製縦材8に対する角度を変えて、鋼製縦材8の係合部12にプレキャスト壁体4の側端部を係合する。係合部12の幅はプレキャスト壁体4の厚さより所定寸法だけ広くなっているので、プレキャスト壁体4を所定の範囲内で傾けてその側端部を係合部12に係合したうえで、連結部材13によってプレキャスト壁体4,4どうしを連結し、その後、前記と同様にしてプレキャスト壁体4,4の接合部を被覆部材15Aによって鋼製縦材8ごと被覆して固定した後、被覆部材15Aを型枠として充填材16を充填する。
被覆部材15Aは曲線部の施工に対応させて複数種類を用意しておくことで、容易に対処できる。
なお、堤体1の曲線部を施工する場合、それに対応させて鋼管杭2を施工するとともに、当該鋼管杭2に前記と同様にして堤体構成部材11を設置する。
【0050】
また、堤体1の曲線部を施工する場合、
図5(b)に示すように、2本の鋼製縦材8,8を隣接させるとともに、これら鋼製縦材8,8を所定の角度をもって配置し、これら鋼製縦材8,8の係合部12,12にそれぞれプレキャスト壁体4,4の側端部を係合することによって、隣り合うプレキャスト壁体4,4の接続角度を変更してもよい。隣接する鋼製縦材8,8間には補強用の鋼材を挿入してもよく、さらにコンクリート等の充填材を充填してもよい。
【0051】
さらに、
図5(c)に示すように、2本の鋼製縦材8,8をそれぞれ断面コ字形の溝形鋼によって構成してもよい。この場合、
図5(b)に示すものより、隣り合うプレキャスト壁体4,4間の距離を短くできるので、その分被覆部材15の幅を狭くできるという利点がある。
なお、
図5(b)および(c)においては、被覆部材15等は図示を省略してある。
2本の鋼製縦材8,8を使用する場合、鋼製縦材8,8の配置角度を変更することによって、プレキャスト壁体4,4の接続角度を容易に変更できるという利点がある。
【0052】
なお、堤体1の直線部および曲線部を施工するいずれの場合でも、鋼製縦材8をH形鋼や溝形鋼に代えて、角筒状の鋼管を使用することもできる。この場合、鋼管の外側を向く側面にプレキャスト壁体4の側端部を係合するための係合部を設ければよい。この係合部は例えば鋼管の側面に左右一対のプレートを鋼管の長手方向に沿って設け、この一対のプレート間にプレキャスト壁体4の側端部を嵌め込めばよい。
【0053】
本実施の形態によれば、プレキャスト壁体4の側端部が鋼製縦材8の係合部12に係合され、この鋼製縦材8が鋼管杭2によって支持されたフーチング部3の鋼製横材5に接合されているので、従来と異なり、プレキャスト壁体4内にフーチングさや管を差し込む必要がないので、このフーチングさや管が差し込まれる部分の壁体厚を大きくとる必要がないし、堤体1としての構造耐力は鋼製縦材8、鋼製横材5等が担い、プレキャスト壁体4は遮水版としての機能を有するだけでよい。
したがって、プレキャスト壁体4の重量を従来に比して軽減できるので、施工性がよく全体として施工の短縮化を図ることができる。
【0054】
また、横方向に隣り合うプレキャスト壁体4,4間の縦目地(接合部)は、被覆部材15によって被覆するので、現場でのコンクリート打設に比して縦目地の処理が容易となるとともに、止水性を容易かつ確実に確保できる。
また、鋼製縦材8の係合部12にプレキャスト壁体4の側端部を係合しているので、堤体1の曲線部においては、プレキャスト壁体4の鋼製縦材8に対する角度を変えて当該プレキャスト壁体4の側端部を係合部12に係合することによって、隣り合うプレキャスト壁体4,4の接続角度を容易に変更できるので、堤体1の曲線部を容易に施工できる。この場合、隣り合うプレキャスト壁体4,4の接合部は被覆部材15Aによって被覆できるので、止水性も容易に確保できる。
【0055】
また、被覆部材15(15A)を型枠としてその内側に充填材16が充填されているので、充填材16によってプレキャスト壁体4と鋼製縦材8とを一体化でき、地震時においても、堤体1が連続体として一体的に挙動する。したがって、横方向に隣り合うプレキャスト壁体4,4の接合部の破損や目開きを抑制できる。
また、隣り合うプレキャスト壁体4,4どうしが連結部材13によって連結されているので、地震時の揺れによって、隣り合うプレキャスト壁体4,4どうしが離れるのを防止できる。したがって、この点においても、隣り合うプレキャスト壁体4,4の接合部の破損や目開きを抑制できる。
また、被覆部材15(15A)が型枠となるので、別途型枠を用意する必要もなく、さらに、被覆部材15(15A)が充填材16を介してプレキャスト壁体4や鋼製縦材8に密着するので、被覆部材15(15A)の固定強度や止水性を十分に確保できる。
【0056】
さらに、鋼管杭2の上端部の筒部2aに鋼製杭頭接合部材6が挿入されたうえで充填材が充填されているので、筒部2aと鋼製杭頭接合部材6とが充填材によって一体化して断面力を効率的に伝達できる。したがって、鋼管杭2によって鋼製横材5およびこの鋼製横材5に接合された鋼製縦材8を確実に支持できる。このように、鋼製横材5と鋼製縦材8で構成された骨組を鋼管杭2で確実に支持できるので、この骨組で堤体1の構造耐力を担うことができる。したがって、プレキャスト壁体4の厚さを従来に比して薄くでき、全体として重量を軽減できる。
【0057】
また、フーチング部3は鋼製横材5と鋼製縦材8とによって骨組が構成され、この骨組によって構造耐力を担うことができ、被覆コンクリート9には大きな構造耐力を期待しなくてもよい。したがって、被覆コンクリート9は、従来のフーチングを構成するコンクリートに比して十分に薄くできるので、フーチング部3の重量を従来に比して軽減できる。したがって、このフーチング部3をプレキャスト部材とする場合でも、施工や運搬が容易となる。
また、鋼管杭2の上方から堤体構成部材11を吊り降ろして筒部2aに鋼製杭頭接合部材6を挿入したうえで、貫通孔10を通して充填材を筒部2aに充填するとともに貫通孔10に充填することで、鋼管杭2とフーチング部3とを容易に接合できる。
そして、鋼製立上部7に鋼製縦材8を接合し、次に、この鋼製縦材8の係合部12にプレキャスト壁体4の側端部を係合することで、鋼製縦材8を介して隣り合うプレキャスト壁体4,4を横方向に接合し、その後、隣り合うプレキャスト壁体4,4の接合部を被覆部材15(15A)によって鋼製縦材8ごと被覆し、被覆部材15(15A)を型枠としてその内側に充填材16を充填することによって、堤体1を容易に施工できる。
【0058】
また、被覆コンクリート9に設けられた貫通孔10を通して充填材を筒部2aに充填するとともに貫通孔10に充填するので、筒部2aと鋼製杭頭接合部材6との間に容易かつ確実に充填材を充填して筒部2aと鋼製杭頭接合部材6とを容易に一体化できるとともに、施工の際に貫通孔10を通して、筒部2aと鋼製杭頭接合部材6との間に確実に充填材が充填されているかを確認できる。したがって、充填材の施工および施工管理を容易に行える。
【0059】
図6〜
図8はそれぞれ前記堤体構成部材11の第1変形例〜第3変形例を示す斜視図である。
第1変形例〜第3変形例の堤体構成部材11A〜11Cが
図3に示す堤体構成部材11と異なる点は、鋼製立上部および当該鋼製立上部と鋼製縦材8との接合構造であるので、以下ではこの点について説明し、堤体構成部材11と共通の構成部分には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
【0060】
図6に示すように、第1変形例の堤体構成部材11Aでは、鋼製立上部7Aが、左右一対の立上プレート7a,7aによって構成されている。この立上プレート7aは長方形板状の鋼材で形成されており、立上プレート7a,7a間の距離は鋼製縦材8の左右の幅寸法(フランジ間の距離)とほぼ等しく設定されている。
そして、立上プレート7a,7aに鋼製縦材8の下端部を挿入して、当該立上プレート7aと鋼製縦材8のフランジを図示しないボルトによってボルト接合することによって、鋼製立上部7Aに鋼製縦材8を現場で接合するようになっている。
このような堤体構成部材11Aでは、現場での鋼製立上部7Aと鋼製縦材8との接合が鋼製立上部7と鋼製縦材8との接合より容易であるという利点がある。
【0061】
図7に示すように、第2変形例の堤体構成部材11Bでは、鋼製立上部7Bが円筒状の鋼管7Bによって構成されており、この鋼管7Bの下端部が鋼製横材5に溶接等によって接合されている。この鋼管7Bの内径は鋼製縦材8が挿入可能な長さに設定されている。
そして、鋼管(鋼製立上部)7Bに鋼製縦材8の下端部を挿入したうえで、現場で鋼管7Bにコンクリート等の充填材を充填することによって鋼製立上部7Bに鋼製縦材8を現場で接合するようになっている。
このような堤体構成部材11Bでは、鋼製縦材8の断面形状に拘らず鋼製縦材8と鋼製立上部7Bの接合が容易であるという利点がある。
なお、第2変形例では、鋼製立上部7Bの内周面や鋼製縦材8の下端部外周面にリング状やスパイラル状のずれ止め用の突起を設けてもよい。
【0062】
図8に示すように、第3変形例の堤体構成部材11Cでは、前記鋼製立上部7と鋼製縦材8とを溶接接合ではなく、鋼管7Cを用いて行っている。
すなわち、現場で円筒状の鋼管7Cを鋼製立上部7に外挿したうえで、現場で鋼管7Cにコンクリート等の充填材を充填することによって鋼製立上部7に鋼製縦材8を現場で接合するようになっている。鋼管7Cの高さは鋼製立上部7より高くなっており、当該鋼管7Cの下端開口はフーチング部3の上面に当接されて塞がれている。したがって、鋼管7Cの上端開口から充填材を充填しても、当該充填材が下端開口から漏れ出ることはない。
このような堤体構成部材11Cでは、鋼製縦材8の断面形状に拘らず鋼製縦材8との接合が容易であるともに、溶接接合より施工が容易であるという利点がある。
なお、第3変形例では、鋼製縦材8の下端部外周面、鋼製立上部7の外周面や鋼管7Cの内周面にリング状やスパイラル状のずれ止め用の突起を設けてもよい。
【0063】
図9および
図10はそれぞれ鋼製縦材8を介して隣り合うプレキャスト壁体4,4の接合構造の第1変形例および第2変形例をそれぞれ示す平断面図である。
第1変形例および第2変形例の接合構造が前記第1の実施の形態の接合構造と異なる点はプレキャスト壁体4,4の連結構造および被覆部材15の接合構造であるので、以下ではこの点について説明し、第1の実施の形態における接合構造と共通部分には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
【0064】
図9に示すように、第1変形例では、鋼製縦材8のウエブ8bに連結部材20,20が設けられている。連結部材20は断面T字形に形成されており、鋼製縦材8の長手方向(
図9において紙面と直交する方向)に連続して形成されるか、または所定間隔をもって形成されている。一方の連結部材20は一方のプレキャスト壁体4側に向けてウエブ8bの略中央部から突出しており、他方の連結部材20は他方のプレキャスト壁体4側に向けてウエブ8bの略中央部から突出している。
一方、プレキャスト壁体4の側端面には断面T字形の溝4aがプレキャスト壁体4の高さ方向に沿って形成されており、当該溝4aはプレキャスト壁体4の上端面および下端面に開口している。
そして、溝4aに連結部材20が嵌合されることによって、隣り合うプレキャスト壁体4,4が連結されている。
溝4aに連結部材20を嵌合する場合、立設されている鋼製縦材8にプレキャスト壁体4の下端面に開口している溝4aを嵌め込みながら下方にスライドするようにして行う。
【0065】
また、プレキャスト壁体4の表面には、被覆部材15が当接する部分に凸部4bがプレキャスト壁体4の高さ方向に沿って、あるいは高さ方向に所定間隔で設けられている。
一方、被覆部材15の端面には凹部15bが被覆部材15の高さ方向に沿って、あるいは高さ方向に所定間隔で設けられている。
そして、凸部4bに凹部15bが嵌合されることによって、被覆部材15がプレキャスト壁体4の表面に位置決め固定されている。
【0066】
このような第1変形例の接合構造では、鋼製縦材8の係合部12にプレキャスト壁体4の側端部を上方から挿入して係合すると同時に、連結部材20に溝4aを嵌合して、プレキャスト壁体4,4どうしを連結できるので、
図1に示す接合構造に比して連結作業が容易であるという利点がある。
また、凸部4bに凹部15bが嵌合されることによって、被覆部材15の位置決めを容易かつ確実に行うことができるという利点もある。
【0067】
図10に示すように、第2変形例では、鋼製縦材8のフランジ8aに連結部材21,21が設けられている。連結部材21はフランジ8aの内面から突出し、かつ鋼製縦材8の長手方向(
図10において紙面と直交する方向)に連続して形成されるか、または所定間隔をもって形成されている。
一方、プレキャスト壁体4の表面には溝4cがプレキャスト壁体4の高さ方向に沿って形成されており、当該溝4cはプレキャスト壁体4の上端面および下端面に開口している。
そして、溝4cに連結部材21が嵌合されることによって、隣り合うプレキャスト壁体4,4が連結されている。
溝4cに連結部材21を嵌合する場合、立設されている鋼製縦材8にプレキャスト壁体4の下端面に開口している溝4cを嵌め込みながら下方にスライドするようにして行う。
【0068】
また、プレキャスト壁体4の表面には、被覆部材15が当接する部分を挟むようにして凸部4d,4dがプレキャスト壁体4の高さ方向に沿って、あるいは高さ方向に所定間隔で設けられている。
そして、凸部4d,4d間に被覆部材15の端部が嵌合されることによって、被覆部材15がプレキャスト壁体4の表面に位置決め固定されている。
【0069】
このような第2変形例の接合構造では、鋼製縦材8の係合部12にプレキャスト壁体4の側端部を上方から挿入して係合すると同時に、連結部材21に溝4cを嵌合して、プレキャスト壁体4,4どうしを連結できるので、
図4に示す接合構造に比して連結作業が容易であるという利点がある。
また、凸部4d,4d間に被覆部材15の端部が嵌合されることによって、被覆部材15の位置決めを容易かつ確実に行うことができるという利点もある。
【0070】
(第2の実施の形態)
図11および
図12は第2実施の形態を示すもので、
図11は堤体の概略構成を示す斜視図、
図12は堤体構成部材の概略構成を杭とともに示す斜視図である。なお、
図12では、図示を分かりやすくする都合上、本来見えない内部構造を実線で記載している箇所もある。
図11および
図12に示す堤体1が
図1および
図2に示す堤体1と異なる点は、フーチング部3に対するプレキャスト壁体4の位置であるので、以下ではこの点について説明し、
図1および
図2に示す堤体1と共通構成部分には同一符号を付してその説明を省略ないし簡略化する。
【0071】
図11に示すように、本実施の形態の堤体1ではプレキャスト壁体4がフーチング部3の端部に位置している。
図12に示すように、本実施の形態の堤体1を構成する堤体構成部材31では、2本ある鋼製杭頭接合部材6,6のうち一方の鋼製杭頭接合部材6を上方に延出させて、この延出した部分を鋼製立上部32としている。
【0072】
この鋼製杭頭接合部材6は、
図12では四角筒状に図示しているが、実際はH形鋼で構成されており、したがって、鋼製立上部32もH形鋼で構成されている。なお、このH形鋼はそのウエブがフーチング部3の長手方向と平行となるように配置されている。
そして、鋼製立上部32に第1の実施の形態と同様にして鋼製縦材8が現場で溶接接合されるようになっている。
【0073】
堤体構成部材11によって堤体1を施工する場合、第1の実施の形態と同様にして行うが、例えば、プレキャスト壁体4をフーチング部3における海側に配置する場合、まず、鋼製立上部32を有する鋼製杭頭接合部材6の下端部を海側に施工された鋼管杭2の上端部の筒部2aに挿入するとともに、鋼製立上部32を有しない鋼製杭頭接合部材6の下端部を陸側に施工された鋼管杭2の上端部の筒部2aに挿入したうえで、貫通孔10を通して充填材を筒部2aに充填するとともに貫通孔10に充填することで、鋼管杭2とフーチング部3とを接合する。
【0074】
次に、鋼製立上部32に鋼製縦材8を溶接等によって現場で接合した後、鋼製縦材8にプレキャスト壁体4の側端部を係合することで、鋼製縦材8を介して隣り合うプレキャスト壁体4,4を横方向に接合し、最後に、隣り合うプレキャスト壁体4,4の接合部を被覆部材15によって鋼製縦材8ごと被覆する。
【0075】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる他、現場の状況に応じて、プレキャスト壁体4をフーチング部3の前側(海側)に配置するか、後側(陸側)に配置するかを選択できるという利点がある。
【0076】
なお、第1および第2の実施の形態では、1つのフーチング部3を2本の鋼管杭2等の杭によって支持する場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限ることなく、例えば1つのフーチング部3を3本以上の鋼管杭2等の杭で支持する、つまり杭を3列以上施工してフーチング部3を支持する場合や、1つのフーチング部3を1本の鋼管杭2等の杭で支持する、つまり杭を1列施工してフーチング部3を支持する場合でも適用できる。
【0077】
また、本実施の形態では、被覆コンクリート9や鋼製立上部7,7A,7B等を有する堤体構成部材11,11A,11B,11Cを用いて堤体1を施工したが、これに限ることなく、例えば、鋼製横材5および鋼製杭頭接合部材6を有する骨組を鋼管杭2に支持させたうえで、鋼製横材5に鋼製縦材8を接合し、次いで被覆コンクリート9を施工し、その後、鋼製縦材8にプレキャスト壁体4の側端部を係合し、被覆部材15を設けてもよい。
さらに、本実施の形態では、フーチング部3を被覆コンクリート9を有する構成としたが、鋼製横材5、鋼製杭頭接合部材6および鋼製立上部7等に防錆処理が施されていれば、必ずしも被覆コンクリート9は設けなくてもよい。
【0078】
(第3の実施の形態)
図13および
図14は第3実施の形態を示すもので、
図13は堤体の概略構成を示す斜視図、
図12は鋼製縦材を杭によって支持した状態を示す斜視図である。なお、
図14では、図示を分かりやすくする都合上、本来見えない内部構造を実線で記載している箇所もある。
図13および
図14において符号1Aは堤体、符号2は杭、符号4はプレキャスト壁体を示す。
【0079】
杭2は、
図14に示すように、円筒状の鋼管杭2である。なお、この鋼管杭2はフーチング部3の横方向の長さに比べ上下に長いものであるが、
図14においては上下の長さを実際よりかなり短くして図示している。
鋼管杭2の上端部は鋼製縦材8の下端部が挿入される筒部2aとなっており、この筒部2aの内周面にはずれ止め用の突起2bが設けられている。この突起2bは円形のリング状に形成され、筒部2aの下部に軸方向に所定間隔で複数設けられている。
鋼製縦材8の下端部の外周面にはずれ止め用の突起8cが設けられている。この突起8cは鋼製縦材8のフランジ8aの外面に鋼製縦材8の軸方向と直交して形成され、鋼製縦材8の下端部に軸方向に所定間隔で複数設けられている。なお、突起8cを鋼製縦材8のウエブにも設けてもよい。
【0080】
鋼製縦材8の下端部は鋼管杭2の筒部2aに挿入されており、この状態において、突起8cと突起2bとは軸方向と直交する方向において重なっているか、または、軸方向に所定距離だけずれている。
鋼製縦材8の下端部と筒部2aとの間にはコンクリート等からなる充填材が充填されており、これによって鋼製縦材8と筒部2aとが一体化されている。また、突起2b,8cに充填材を介して軸力が作用し、これによって筒部2aに対する鋼製縦材8のずれ止めや抜け止めがなされている。
【0081】
鋼製縦材8には、
図13に示すように、プレキャスト壁体4の側端部が係合されおり、これによって鋼製縦材8を介して隣り合うプレキャスト壁体4,4が横方向に接合されている。
鋼製縦材8はH形鋼によって構成されており、
図4に示すように、そのフランジ8a,8aとウエブ8bによって構成される凹溝状の係合部12にプレキャスト壁体4の側端部が嵌め込まれることによって、当該係合部12にプレキャスト壁体4の側端部が係合されている。
【0082】
なお、
図4は第1の実施の形態におけるプレキャスト壁体4,4の接合部の平断面図であるが、本実施の形態でもプレキャスト壁体4,4の接合部の構造は第1の実施の形態と同様であるので、本実施の形態における接合部の構造を、
図4を参照して説明している。
また、係合部12の構成、隣り合うプレキャスト壁体4,4どうしを連結部材13によって連結する構成、隣り合うプレキャスト壁体4,4に、これらの接合部を鋼製縦材8ごと覆う被覆部材15を設ける構成、被覆部材15,15を型枠としてその内側のコンクリート等の充填材16が充填されている構成等は、第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0083】
図13に示すように、鋼管杭2は地盤に所定間隔で複数1列に施工されている。そして、各鋼管杭2に鋼製縦材8がそれぞれ支持され、隣り合う鋼製縦材8,8間にそれぞれプレキャスト壁体4を配置し、隣り合うプレキャスト壁体4,4のそれぞれの側端部を鋼製縦材8の係合部12に係合することによって、プレキャスト壁体4が横方向(鋼製縦材8の並設方向)に接合されて堤体1Aが施工されている。
【0084】
このような堤体1Aを施工する場合、まず、堤体1Aを施工する地盤に鋼管杭2を所定間隔で1列、例えば圧入や中堀工法等の適宜の方法で施工する。鋼管杭2の並列方向におけるピッチはプレキャスト壁体4の幅寸法とほぼ等しく設定する。
【0085】
次に、
図14に示すように、鋼管杭2の上方から鋼製縦材8をクレーン等によって吊り降ろして鋼管杭2の上端部の筒部2aに挿入する。そして、所定の高さ位置で鋼製縦材8を固定しておき、コンクリート等の充填材を筒部2aに充填し、充填材が十分に固化することによって、鋼管杭2と鋼製縦材8とが接合され、これによって鋼製縦材8が鋼管杭2によって支持される。
このような鋼製縦材8の設置を全ての鋼管杭2に対して同様にして行うことによって、鋼製縦材8を所定間隔で設置する。
【0086】
次に、隣り合う鋼製縦材8,8間にプレキャスト壁体4をクレーン等によって吊り下げて配置するともに、当該プレキャスト壁体4の両側端部をそれぞれ鋼製縦材8,8の対向する係合部12,12に上方から吊り降ろしながら嵌め込んで係合することによって、鋼製縦材8を介して隣り合うプレキャスト壁体4を横方向に接合する。
【0087】
全てのプレキャスト壁体4を横方向に接合した後、または適宜の枚数のプレキャスト壁体4を横方向に接合した後、隣り合うプレキャスト壁体4,4の接合部を被覆部材15によって前記鋼製縦材8ごと被覆する。
この被覆部材15による被覆は第1の実施の形態と同様にして行い、最後に、被覆部材15,15を型枠としてその内側にコンクリート等の充填材16を充填する。この充填材16が固化することによって、プレキャスト壁体4と鋼製縦材8、さらには被覆部材15が一体化して、連続した堤体1Aとなる。
また、堤体1Aの曲線部の施工は第1の実施の形態と同様にして行う。
【0088】
本実施の形態によれば、プレキャスト壁体4の側端部が鋼製縦材8に係合され、この鋼製縦材8が鋼管杭2によって支持されているので、従来と異なり、プレキャスト壁体内にフーチングさや管を差し込む必要がないので、このフーチングさや管が差し込まれる部分の壁体厚を大きくとる必要がないし、堤体1Aとしての構造耐力は鋼製縦材8が担い、プレキャスト壁体4は遮水版としての機能を有するだけでよい。
したがって、プレキャスト壁体4の重量を従来に比して軽減できるので、施工性がよく全体として施工の短縮化を図ることができる。
また、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。