(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の異方性導電フィルムを詳細に説明する。
【0017】
<<異方性導電フィルム>>
図1Aに示すように、本発明の異方性導電フィルム100は、絶縁性バインダ層1に導電粒子2が分散もしくは規則的パターンで配列されている異方性導電フィルムであって、少なくとも片面の一部に絶縁性バインダ層1よりも密着強度が低い低密着性領域3が形成されている構造を有する。
【0018】
導電粒子2が規則的パターンで配列されている場合には、
図1Bに示すように、絶縁性バインダ層1は、導電粒子2を保持している導電粒子保持層1aとその上に積層された絶縁性層接着層1bとから構成してもよい。この絶縁性接着層1bに低密着性領域3が形成されることになる。
【0019】
また、低密着性領域3の低密着性を実現する手法としては、低密着性材料を適用することや、絶縁性バインダ層1に微細グレーティング構造、微細凹凸構造等を公知の手法を利用して形成することが挙げられる。
【0020】
異方性導電フィルム全体の総厚は、10μm以上60μm以下であることが好ましい。
【0021】
<低密着性領域>
低密着性領域3の好ましい態様は、低密着性材料を適用することであり、具体的には
図1に示すように、絶縁性バインダ層1又は絶縁性接着層1bに形成された、好ましくは深さ2μm以上30μm以下、より好ましくは5μm以上15μm以下の凹部10に低密着性樹脂が充填されている態様である。凹部10はフィルムの層厚の10%以上50%以下が好ましく、20%以上50%以下がより好ましい。この場合、
図2に示すように、片面に凹部10が形成された絶縁性バインダ層1の当該片面の低密着性領域3以外の領域にも、絶縁性バインダ層1の密着強度を損なわない範囲で(換言すれば、異方性導電接続の際に接続領域から排除される範囲で)、絶縁性バインダ層と同様の材料により凹部10より薄い層が形成されていても良い。具体的には該低密着性樹脂の好ましくは0.2μm以上6μm以下、より好ましくは0.3μm以上4μm以下の薄膜3aが形成されていてもよい。凹部10だけに低密着性樹脂を充填するよりも製造条件が緩和される効果が得られる。また、低密着性樹脂は、電気的接続に関与しないので、導電粒子を含有しないことが経済的な理由からも好ましい。なお、薄膜3aは凹部10の深さに対して、3%以上20%以下であることが好ましい。これ以上厚い場合は撓みを解消するための接着力の面内方向での差が生じにくくなり、薄い場合は塗布厚の均一性を確保できず、長尺化した場合の品質に影響が生じるためである。
【0022】
低接着性領域3は、異方性導電フィルムの全幅の好ましくは20%以上80%以下、より好ましくは30%以上70%以下の範囲に存在することが好ましい。この範囲は幅方向の中央部に存在することが望ましい。
【0023】
凹部10の形状は、
図1に示す場合には、異方性導電フィルム表面と凹部の内側側面とのなす角が直角で、凹部の内側側面と底面とがなす角も直角であるが、底部から開口部に向かって広くなるような凹部形状であってもよい。また、凹部の内側側面は厚み方向に直線的に形成されていでもよいが、曲線的に形成されていてもよい。たとえば、凹部が半円球形状であってもよい。これにより、低密着性樹脂の形状を精度良く簡易に製造することが可能となる。また、接着力を局所的に調整することも可能となる。面方向で接着力の急峻な変化を生じさせないようにするためである。
【0024】
ここで、絶縁性バインダ層1よりも密着強度が低い低密着性領域3は、絶縁性バインダ層1の片面の一部に設けられている。低い密着強度の程度としては、異方性導電接続の際にICチップに生じた反りを異方性導電接続後に緩和することができる程度に低いという意味である。低密着性領域3は、その領域以外の絶縁性バインダ層1の接着強度の5%以上50%以下が好ましく、20%以上40%以下がより好ましい。それぞれの接着強度は、ダイシェア測定機(品名:Dage2400、デイジ社製)を用いて室温下で測定することができる。通常、低密着性領域3の接着強度は300N以下であることが好ましく、その領域以外の絶縁性バインダ層1の接着強度は600N以上あることが好ましい。
【0025】
また、低接着領域3とそれ以外の領域が同一組成である場合、未硬化の状態での低接着領域3における特定の官能基のFT−IRの検出ピークの絶対値が、それ以外の領域における検出ピークに対して好ましくは80%未満、より好ましくは70%以下、更により好ましくは50%以下である。この検出ピークの相対比は、エポキシ化合物やアクリルモノマーの重合において官能基の減少率から反応率を求める際に用いる公知手法と同様に求めることができる。
【0026】
また、
図2に示すような凹部10に充填する低密着性樹脂としては、硬化成分を含有せず、タック性を発現しない樹脂を使用することができる。例えば、このような低密着性樹脂としては、ガラス転移点が−30℃以上70℃以下の成膜性樹脂を挙げることができる。具体的には、フェノキシ樹脂やアクリルゴムなどACFに用いられている公知の樹脂を挙げることができる。また、エポキシ化合物やアクリル化合物などの重合性樹脂を含んでいても良いが、凹部の含有量は凹部以外の領域の含有量の好ましくは50%以下、より好ましくは5%以上50%以下、さらにより好ましくは10%以上40%以下である。硬化成分が含有されていないか、もしくは少なすぎる場合、硬化後のフィルム内で接着強度が急峻に変化する部位ができることで、浮きなどの別の問題が発生することが懸念される。このような変化を抑制させるために、凹部の形状は、凹部底部よりフィルム表面側が広くなるように傾斜をもたせることが好ましい。
【0027】
なお、低接着性領域3は、その他の領域と同様の材料を用いて構成することができるが、エポキシ化合物やアクリル重合物などの硬化成分の配合量をその他の領域の80%以下にすることや、反応開始剤を含まないようにすることにより、低密着性領域として機能させることができる。低密着性領域とそれ以外の領域とは、FT−IR測定における官能基の減少比率の変化割合で区別することができ、低密着性領域は相対的にその変化割合が小さい領域である。
【0028】
また、低密着性領域3が設けられる位置は、異方性導電接続の際に異方性導電フィルムに生じる残留応力を減少させるために設けられるものであるから、異方性接続に直接寄与する領域から外れた領域であって、応力変化が最も大きい領域に設けることが好ましい。例えば、
図3に示すように、端部にバンプBを有するICチップ30をガラス基板31の配線に異方性導電フィルム100を用いて異方性導電接続する際に、反りが生ずる部分(例えば、端部にバンプBが形成されたICチップ30の当該バンプBに囲まれた中央部分R)に対応した領域である。
【0029】
また、
図4に示すように、低密着性領域3は、異方性導電フィルム100の長手方向(矢印方向)に延設(好ましくは巾15μm以上、より好ましくは50μm以上、特に好ましくは150μm〜5mm)されてもよく、
図5に示すように、異方性導電フィルム100の長手方向(矢印方向)に飛び石状に不連続に設置されていてもよい。
【0030】
<絶縁性バインダ層、導電粒子保持層>
本発明の異方性導電フィルム100を構成する絶縁性バインダ層1(
図1A)又は導電粒子保持層1a(
図1B)は、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂などの膜形成樹脂と、熱又は光カチオン、アニオン又はラジカル重合性樹脂等の熱又は光重合性樹脂との混合物を成膜したもの、若しくはその重合膜である。特に好ましい絶縁性バインダ層1又は導電粒子保持層1aは、アクリレート化合物と光ラジカル重合開始剤とを含む混合物を成膜したもの、又はその重合膜である。以下、絶縁性バインダ層1又は導電粒子保持層1aが光ラジカル重合樹脂を含み、重合させた場合について説明する。
【0031】
(アクリレート化合物)
アクリレート単位となるアクリレート化合物としては、従来公知の光ラジカル重合性アクリレートを使用することができる。例えば、単官能(メタ)アクリレート(ここで、(メタ)アクリレートにはアクリレートとメタクリレートとが包含される)、二官能以上の多官能(メタ)アクリレートを使用することができる。本発明においては、接着剤を熱硬化性とするために、アクリル系モノマーの少なくとも一部に多官能(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
【0032】
絶縁性バインダ層1又は導電粒子保持層1aにおけるアクリレート化合物の含有量は、凹部の形状安定性の観点から好ましくは2質量%以上70質量%以下、より好ましくは10質量%以上50質量%以下である。
【0033】
(光ラジカル重合開始剤)
光ラジカル重合開始剤としては、公知の光ラジカル重合開始剤の中から適宜選択して使用することができる。例えば、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンジルケタール系光重合開始剤、リン系光重合開始剤等が挙げられる。
【0034】
光ラジカル重合開始剤の使用量は、十分な光ラジカル重合反応の進行と、フィルム剛性低下の抑制の観点から、アクリレート化合物100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上25質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上15質量部以下である。
【0035】
絶縁性バインダ層1の層厚は、導電粒子捕捉効率の低下抑制と、導通抵抗の上昇抑制との観点から、好ましくは5μm以上60μm以下、より好ましくは7μm以上40μm以下である。また、導電粒子保持層1aの層厚も、同様の観点から、好ましくは1μm以上20μm以下、より好ましくは2μm以上15μm以下である。
【0036】
絶縁性バインダ層1又は導電粒子保持層1aには、更に、エポキシ化合物と熱又は光カチオン若しくはアニオン重合開始剤とを含有させることもできる。この場合、後述するように、絶縁性接着層1bにもエポキシ化合物と熱又は光カチオン若しくはアニオン重合開始剤とを含有する熱又は光カチオン若しくはアニオン重合性樹脂層とすることが好ましい。これにより、層間接着強度を向上させることができる。エポキシ化合物と熱又は光カチオン若しくはアニオン重合開始剤については、後述する。
【0037】
絶縁性バインダ層1の形成は、例えば、光ラジカル重合性アクリレートと光ラジカル重合開始剤と導電粒子とを含有する光ラジカル重合性組成物を、低密着性領域3を形成するために必要な構造を有するモールドに塗布し、加熱もしくは紫外線照射により乾燥(もしくは成膜)することにより形成することができる。また、導電粒子保持層1aは、光ラジカル重合性組成物を用い、フィルム転写法、金型転写法、インクジェット法、静電付着法等の手法により導電粒子を付着させ、紫外線を導電粒子側、その反対側、もしくは両側から照射することにより形成することができる。
【0038】
<絶縁性接着層>
導電粒子保持層1aに積層される絶縁性接着層1bは、導電粒子保持層1aと同様の材料を用いることができる。
【0039】
絶縁性接着層1bの層厚は、凹部を保持し、且つ十分な接着強度を得るという観点から、好ましくは2μmより大きく30μm未満、より好ましくは5μmより大きく15μm未満である。
【0040】
(エポキシ化合物)
絶縁性接着層1bがエポキシ化合物と熱又は光カチオン若しくはアニオン重合開始剤とを含有する熱又は光カチオン若しくはアニオン重合性樹脂層である場合、エポキシ化合物としては、分子内に2つ以上のエポキシ基を有する化合物もしくは樹脂が好ましく挙げられる。これらは液状であっても、固体状であってもよい。
【0041】
(熱カチオン重合開始剤)
熱カチオン重合開始剤としては、エポキシ化合物の熱カチオン重合開始剤として公知のものを採用することができ、例えば、熱により、カチオン重合性化合物をカチオン重合させ得る酸を発生するものであり、公知のヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、フェロセン類等を用いることができ、温度に対して良好な潜在性を示す芳香族スルホニウム塩を好ましく使用することができる。
【0042】
熱カチオン重合開始剤の配合量は、硬化不良を抑制し、製品ライフの低下を抑制する観点から、エポキシ化合物100質量部に対し、好ましくは2〜60質量部、より好ましくは5〜40質量部である。
【0043】
(熱アニオン重合開始剤)
熱アニオン重合開始剤としては、エポキシ化合物の熱アニオン重合開始剤として公知のものを採用することができ、例えば、熱により、アニオン重合性化合物をアニオン重合させ得る塩基を発生するものであり、公知の脂肪族アミン系化合物、芳香族アミン系化合物、二級又は三級アミン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリメルカプタン系化合物、三フッ化ホウ素−アミン錯体、ジシアンジアミド、有機酸ヒドラジッド等を用いることができ、温度に対して良好な潜在性を示すカプセル化イミダゾール系化合物を好ましく使用することができる。
【0044】
熱アニオン重合開始剤の配合量は、少なすぎても硬化不良となる傾向があり、多すぎても製品ライフが低下する傾向があるので、エポキシ化合物100質量部に対し、好ましくは2質量部以上60質量部以下、より好ましくは5質量部以上40質量部以下である。
【0045】
(光カチオン重合開始剤及び光アニオン重合開始剤)
エポキシ化合物用の光カチオン重合開始剤又は光アニオン重合開始剤としては、公知のものを適宜使用することができる。
【0046】
(アクリレート化合物)
絶縁性接着層1bがアクリレート化合物と熱又は光ラジカル重合開始剤とを含有する熱又は光ラジカル重合性樹脂層である場合、アクリレート化合物としては、絶縁性バインダ層1に関して説明したものの中から適宜選択して使用することができる。
【0047】
(熱ラジカル重合開始剤)
また、熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物やアゾ系化合物等が挙げられるが、気泡の原因となる窒素を発生しない有機過酸化物を好ましく使用することができる。
【0048】
熱ラジカル重合開始剤の使用量は、少なすぎると硬化不良となり、多すぎると製品ライフの低下となるので、アクリレート化合物100質量部に対し、好ましくは2質量部以上60質量部以下、より好ましくは5質量部以上40質量部以下である。
【0049】
(光ラジカル重合開始剤)
アクリレート化合物用の光ラジカル重合開始剤としては、公知の光ラジカル重合開始剤を使用することができる。
【0050】
光ラジカル重合開始剤の使用量は、少なすぎると硬化不良となり、多すぎると製品ライフの低下となるので、アクリレート化合物100質量部に対し、好ましくは1質量部以上60質量部以下、より好ましくは3質量部以上40質量部以下である。
【0051】
なお、絶縁性バインダ層1の他面に、別の絶縁性接着層が積層されていてもよい。これにより、層全体の流動性をより精緻に制御することが可能となるという効果が得られる。ここで、別の絶縁性接着層としては、前述した絶縁性接着層1bと同じ構成としてもよい。
【0052】
<導電粒子>
導電粒子2としては、従来公知の異方性導電フィルムに用いられているものの中から適宜選択して使用することができる。例えばニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウムなどの金属粒子、金属被覆樹脂粒子などが挙げられる。2種以上を併用することもできる。
【0053】
導電粒子2の平均粒径としては、配線高さのばらつきに対応できるようにし、また、導通抵抗の上昇を抑制し、且つショートの発生を抑制するために、好ましくは1μm以上10μm以下、より好ましくは2μm以上6μm以下である。平均粒径は、一般的な粒度分布測定装置により測定することができる。
【0054】
導電粒子2の絶縁性バインダ層1中の存在量は、導電粒子捕捉効率の低下を抑制し、且つショートの発生を抑制するために、好ましくは1平方mm当たり50個以上40000個以下、より好ましくは200個以上20000個以下である。
【0055】
「導電粒子2の規則的パターンの配列」
導電粒子2の規則的パターンの配列における規則的パターンとは、異方性導電フィルム100の表面から導電粒子2を透視したときに認識できる導電粒子2が、長方形格子、正方格子、六方格子、菱形格子等の格子点に存在している配列を意味する。これらの格子を構成する仮想線は、直線だけなく、曲線、屈曲線であってもよい。
【0056】
全導電粒子2に対する、規則的パターンで配列されている導電粒子2の割合は、導電粒子数基準で異方性接続の安定化のために好ましくは90%以上である。この割合の測定は、光学顕微鏡などにより行うことができる。
【0057】
また、導電粒子2の粒子間距離、即ち、導電粒子間の最短距離は、導電粒子2の平均粒子径の好ましくは0.5倍以上、より好ましくは1倍以上5倍以下である。
【0058】
<<異方性導電フィルムの製造方法>>
次に、本発明の異方性導電フィルムの製造方法の一例を説明する。
【0059】
本発明の異方性導電フィルムは、絶縁性バインダ層の片面の一部に低密着性領域形成処理を行うことにより製造することができる。低密着性領域形成処理としては、低密着性領域形成材料をポッティングし、公知の手法により平滑処理することや、レーザーによりグレーティング加工を施すことや、フォトリソグラフ法により微細凹凸加工を施すこと等が挙げられる。
【0060】
本発明の異方性導電フィルムの製造方法の好ましい一例は、以下の工程(A)〜(C)を有する製造方法である。以下、工程毎に説明する。
【0061】
工程(A)
まず、低密着性領域に対応した凸部が形成されたモールドに、導電粒子を含有する絶縁性バインダ層形成用組成物を塗布し加熱又は紫外線照射により乾燥もしくは成膜化することにより、片面に凹部が形成された絶縁性バインダ層を形成する。モールドとしては、ガラス、硬化樹脂、金属等から形成したものを使用することができる。
【0062】
工程(B)
次に、公知の手法を利用してモールドから絶縁性バインダ層を外す。この工程では、予め転写シートを絶縁性バインダ層に仮貼りしておき、転写シートを支持体としてモールドから絶縁性バインダ層を外すことが好ましい。
【0063】
工程(C)
続いて、絶縁性バインダ層の凹部に、低密着性領域形成材料を公知の手法を利用して充填する。これにより、本発明の好ましい態様の異方性導電フィルムが得られる。
【0064】
必要に応じ、転写シートを剥がし、その面に(絶縁性バインダ層の他面)に、別の絶縁性接着層を積層してもよい。
【0065】
<<異方性導電フィルムの用途>>
このようにして得られた異方性導電フィルムは、ICチップ、ICモジュール、フレキシブル基板などの第1電子部品と、フレキシブル基板、リジット基板、ガラス基板などの第2電子部品とを熱又は光により異方性導電接続する際に好ましく適用することができる(COG以外にもCOF、COB、FOG、FOBなどに適用可能)。このようにして得られる接続構造体も本発明の一部である。この場合、配線基板などの第2電子部品に対し、異方性導電フィルムをその絶縁性バインダ層側から仮貼りし、仮貼りされた異方性導電フィルムに対し、ICチップなどの第1電子部品を搭載し、第1電子部品側から熱圧着することが、接続信頼性を高める点から好ましい。また、光硬化を利用して接続することもできる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0067】
実施例1〜5
フェノキシ樹脂(YP−50、新日鉄住金化学(株))60質量部、アクリレート(EP600、ダイセル・オルネクス(株))40質量部、光ラジカル重合開始剤(IRGADCURE 369、三菱化学(株))2質量部、及び平均粒径4μmの導電粒子(Ni/Auメッキ樹脂粒子、AUL704、積水化学工業(株))10質量部を、トルエンにて樹脂固形分が50質量%となるように混合液を調製した。
【0068】
この混合液と、所定の凸部(実施例1〜4の場合には
図4に対応した連続的に延設された態様、実施例5の場合には
図5に対応した飛び石状に不連続した態様)が形成されたシート型のモールドとを使用して、スリット後に幅2mmの絶縁性バインダ層を作成した。この絶縁性バインダ層をモールドから外し、凹部が形成された面に、低密着性樹脂組成物を凹部以外の乾燥厚が3μmとなるように塗布し、波長365nm、積算光量4000mL/cm
2の紫外線を照射することにより絶縁性バインダ層を形成した。
【0069】
得られた絶縁性バインダ層の凹部側表面の全体に、上記のフェノキシ樹脂94質量部、アクリレート6質量部、光ラジカル重合開始剤0.3質量部をトルエンにて希釈させた低密着性樹脂組成物を、凹部以外の乾燥厚が3μmとなるように塗布し、乾燥することにより、全厚25μmの異方性導電フィルムを得た。
【0070】
なお、得られた異方性導電フィルムの凹部側表面における凹部の面積割合(%)、総厚に対する凹部深さ(μm)の深さ割合(%)、一方のフィルム側端から凹部端までの距離(μm)と他方のフィルム側端から凹部端までの距離(μm)との合計は光学顕微鏡を用いて測定した。深さは、焦点の調整から算出して求めた。得られた結果を表1に示す。
【0071】
実施例6
(導電粒子が配列した絶縁性バインダ層の作成)
フェノキシ樹脂(YP−50、新日鉄住金化学(株))60質量部、アクリレート(EP600、ダイセル・オルネクス(株))40質量部、及び光ラジカル重合開始剤(IRGADCURE 369、三菱化学(株))2質量部を、トルエンにて固形分が50質量%となるように混合液を調製した。この混合液を、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに、乾燥厚が8μmとなるように塗布し、80℃のオーブン中で5分間乾燥することにより光ラジカル重合性樹脂層を形成した。
【0072】
次に、得られた光ラジカル重合性樹脂層に対し、平均粒子径4μmの導電粒子(Ni/Auメッキ樹脂粒子、AUL704、積水化学工業(株))を、互いに4μm離隔して単層で配列させた。更に、この導電粒子側から光ラジカル重合性樹脂層に対し、LED光源から波長365nm、積算光量4000mJ/cm
2の紫外線を照射することにより、表面に導電粒子が固定された絶縁性バインダ層を形成した。
【0073】
(凹部を有する絶縁性接着層の形成)
上記のフェノキシ樹脂60質量部、アクリレート40質量部、光ラジカル重合開始剤2質量部を含有する絶縁性接着層形成用組成物と、所定の凸部(
図4に対応した連続的に延設された態様)が形成されたシート型のモールドとを使用して、スリット後に幅2mmであって、中央に凹部が形成された絶縁性接着層を形成した。
【0074】
(異方性導電フィルムの作成)
得られた絶縁性接着層上に絶縁性バインダ層を重ね、40℃、0.1Paという条件でラミネートした。得られた積層体をモールドから外し、絶縁性接着層の凹部側表面の全体に、上記のフェノキシ樹脂80質量部、アクリレート20質量部、光ラジカル重合開始剤1質量部をトルエンにて希釈させた低密着性樹脂組成物を、凹部以外の乾燥厚が3μmとなるように塗布し、乾燥することにより、全厚28μmの異方性導電フィルムを得た。
【0075】
なお、得られた異方性導電フィルムの凹部側表面における凹部の面積割合(%)、総厚に対する凹部深さ(μm)の深さ割合(%)、一方のフィルム端部から凹部端までの距離(μm)と他方のフィルム端部から凹部端までの距離(μm)との合計は光学顕微鏡を用いて測定した。深さは、焦点の調整から算出して求めた。得られた結果を表1に示す。
【0076】
比較例1
凹部が設けられていないシート状モールドを使用し、且つ非密着性樹脂層を設けない事以外は、実施例1と同様に全厚25μmの異方性導電フィルムを作成した。
【0077】
なお、得られた異方性導電フィルムの凹部側表面における凹部の面積割合(%)、総厚に対する凹部深さ(μm)の深さ割合(%)、一方のフィルム側端から凹部端までの距離(μm)と他方のフィルム側端から凹部端までの距離(μm)との合計は光学顕微鏡を用いて測定した。深さは、焦点の調整から算出して求めた。得られた結果を表1に示す。
【0078】
<評価>
各実施例及び比較例の異方導電性フィルムについて、異方性導電接続した際の(a)ショート発生率と(b)反り量とを、それぞれ以下のように試験評価した。結果を表1に示す。
(a)ショート発生率
各実施例及び比較例の異方導電性フィルムを、ショート発生率の評価用ICとガラス基板の間に挟み、加熱加圧(180℃、80MPa、5秒)して各評価用接続物を得、この評価用接続物のショート発生率を求めた。ショート発生率は、「ショートの発生数/7.5μmスペース総数」で算出される。
【0079】
ショート発生率の評価用IC(7.5μmスペースの櫛歯TEG(test element group)) 外径 1.5×13mm
厚み 0.5mm
Bump仕様 金メッキ、高さ15μm、サイズ25×140μm、Bump間Gap7.5μm
【0080】
ガラス基板
ガラス材質 コーニング社製
外径 30×50mm
厚み 0.5mm
電極 ITO配線
【0081】
(b)反り量
(a)で作成した評価用接続物のおける、ICチップが実装されていない側のガラス配線基板の表面の巾20mmの反りを、三次元側長機((株)キーエンス)を用いて測定した。反りは、実用上15μm未満であることが好ましい。なお、この巾20mmは、裏面に実装されたICチップの巾に相当する。
【0082】
【表1】
【0083】
表1から分かるように、実施例1〜6の異方性導電フィルムについては、ショート発生率を上昇させることなく、比較例1に比べ、反り量を小さくすることができた。また、総厚に対する凹部の深さの割合が20〜50%の範囲で大きな変化はない(実施例1,2)。フィルム表面積に対する凹部面積が大きくなると反り量が減少する傾向があった(実施例2〜4)。凹部が連続的に延設された場合も、点在している場合も、反り量に大きな相違はなかった(実施例2,5)。また、導電粒子がランダムに分散している場合も、配列している場合も、反り量に大きな相違は無かった。