特許第6241338号(P6241338)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241338
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】応力測定装置及び応力測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/40 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
   G01N3/40 A
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-56543(P2014-56543)
(22)【出願日】2014年3月19日
(65)【公開番号】特開2015-179018(P2015-179018A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2017年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】徳良 晋
【審査官】 福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0289965(US,A1)
【文献】 特開2003−207432(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/069250(WO,A1)
【文献】 特表2008−528998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が内部を視認可能な素材で形成され、測定対象の微小物質及び磁性微粒子が収納される容器と、
前記容器内を定期的に撮影する撮影部と、
前記容器内に磁力を与える磁力発生部と、
前記撮影部で定期的に撮影された複数の画像の解析結果から、磁性微粒子の位置を検出する検出手段と、
当該検出手段が検出した前記磁性微粒子の最新の位置を利用して前記容器の底面又は内壁と接する測定対象の微小物質に前記磁性微粒子を所定深さまで押し込むように前記磁力発生部を制御する制御手段と、
当該制御手段による制御の変化を利用して前記微小物質の表面状態の応力を算出する算出手段と、
を備えることを特徴とする応力測定装置。
【請求項2】
前記磁力発生部は、それぞれ前記容器の上下に配置される一対の磁石と、それぞれ前記容器の側面に前記容器を中心に対向して配置される一対の磁石とを備える
ことを特徴とする請求項1に記載の応力測定装置。
【請求項3】
前記撮影部は、第1の方向から前記容器内の画像を撮影するとともに、前記第1の方向と異なる第2の方向から前記容器内の画像を撮影し、
前記制御手段は、第1の方向及び前記第2の方向の画像から検出された位置を利用して、三次元座標で特定される前記磁性微粒子の位置を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の応力測定装置。
【請求項4】
少なくとも一部が内部を視認可能な素材で形成され、測定対象の微小物質及び磁性微粒子が収納される容器を撮影するステップと、
撮影される各画像の解析結果から、磁性微粒子の位置を検出するステップと、
検出した前記磁性微粒子の最新の位置を利用して前記容器の底面又は内壁と接する測定対象の微小物質に前記磁性微粒子を所定深さまで押し込むように前記容器内に磁力を与える磁力発生部を制御するステップと、
前記磁力発生部の制御の変化を利用して前記微小物質の表面状態の応力を算出するステップと、
を有することを特徴とする応力測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微細物質の表面の強度を測定する応力測定装置及び応力測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な分野で微細物質の表面の強度が測定されている。例えば、医療分野では、微細物質である1〜10μm程度の細胞の硬さの測定結果は、腫瘍の状態の把握に有効に利用することができる。このような微細物質の測定方法の一例として、マイクロピペットやビッカース圧子を利用する方法がある。
【0003】
マイクロピペットを利用する場合、マイクロピペットの先端により微細物質を引っ張ったり押し込んだりして微細物質の表面の強度を測定する。しかしながら、任意の場所にマイクロピペットを当てることは困難であるとともに、測定の精度は高くない。
【0004】
また、ビッカース圧子を使用する場合、ビッカース圧子を規定の圧力で微細物質に押し当てて形成された表面積を利用して微細物質の表面の強度を測定する。しかしながら、この場合も任意の場所にビッカース圧子を押し当てることは困難である。
【0005】
一方、微粒子を利用する技術として、特許文献1には、微粒子を磁気プローブを用いて目標位置に配置することが記載されている。しかし、このような技術を適用として微細物質の表面の強度を測定することは考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−56565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来の微細物質の表面を測定する方法では、対象物質において測定する位置を任意の場所に調整することは難しく、対象物質の表面の強度を高精度に測定することが困難である。したがって、従来の測定方法は、希望する位置の状態を測定するのではなく、マイクロピペットやビッカース圧子がたまたま当たった場所の状態を測定しているといえる。
【0008】
上記課題に鑑み、本発明は、微小物質の強度を高精度に測定することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1の発明は、少なくとも一部が内部を視認可能な素材で形成され、測定対象の微小物質及び磁性微粒子が収納される容器と、測定時に、前記容器内を定期的に撮影する撮影部と、前記容器内に磁力を与える磁力発生部と、前記撮影部で撮影される各画像の解析結果から、磁性微粒子の位置を検出する検出手段と、当該検出手段が検出した前記磁性微粒子の最新の位置を利用して前記容器の底面又は内壁と接する測定対象の微小物質に前記磁性微粒子を所定深さまで押し込むように前記磁力発生部を制御する制御手段と、当該制御手段による制御の変化を利用して前記微小物質の表面状態の応力を算出する算出手段とを備える。
【0010】
また、第2の発明は、前記磁力発生部は、それぞれ前記容器の上下に配置される一対の磁石と、それぞれ前記容器の側面に前記容器を中心に対向して配置される一対の磁石とを備える。
【0011】
また、第3の発明は、第1の方向から前記容器内の画像を撮影するとともに、前記第1の方向と異なる第2の方向から前記容器内の画像を撮影し、前記制御手段は、第1の方向及び前記第2の方向の画像から検出された位置を利用して、三次元座標で特定される前記磁性微粒子の位置を制御する制御手段とを備える。
【0012】
また、第4の発明は、少なくとも一部が内部を視認可能な素材で形成され、測定対象の微小物質及び磁性微粒子が収納される容器を撮影するステップと、撮影される各画像の解析結果から、磁性微粒子の位置を検出するステップと、検出した前記磁性微粒子の最新の位置を利用して前記容器の底面又は内壁と接する測定対象の微小物質に前記磁性微粒子を所定深さまで押し込むように前記容器内に磁力を与える磁力発生部を制御するステップと、前記磁力発生部の制御の変化を利用して前記微小物質の表面状態の応力を算出するステップとを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、微小物質の強度を高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態に係る応力測定装置の構成を説明する概略図である。
図2図2は、図1の応力測定装置の容器を説明する概略図である。
図3図3は、図1の応力測定装置の容器と撮影部の位置関係を説明する図である。
図4図4は、図1の応力測定装置で磁性微粒子に働く力を説明する図である。
図5図5は、図1の応力測定装置における処理を説明するフローチャートである。
図6図6は、応力測定の際の細胞と磁性微粒子の関係を説明する概略図である。
図7図7は、磁性微粒子の探索の処理を説明するフローチャートである。
図8図8は、磁性微粒子の移動の処理について説明するフローチャートである。
図9図9は、細胞の探索の処理を説明するフローチャートである。
図10図10は、応力の測定の処理を説明するフローチャートである。
図11図11は、磁性微粒子を移動の処理で撮影された画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を用いて本発明の実施形態に係る応力測定装置について説明する。実施形態に係る応力測定装置は、液体中に存在する細胞等の微小物質の表面の所望の場所に磁性微粒子を押し当て、その微小物質の表面の応力を測定するものである。このとき、応力測定装置では、磁力を用いて液体中で磁性微粒子を微小物質の表面まで移動させる。また、応力測定装置は、微小物質の表面上で磁性微粒子を移動させることで、微小物質の応力の分布を測定することができる。
【0016】
測定に利用する磁性微粒子は、磁性体材料で形成される微粒子である。また、磁性微粒子は、細胞とともに培養液に注入されるため、培養液による影響を受けない材料であることが好ましい。例えば、磁性微粒子は、マグネタイト(Fe34)で形成される。応力測定の際に測定の精度を向上するため、磁性微粒子のサイズは、測定対象の微細物質のサイズよりも小さいことが好ましい。また、磁性微粒子は、球状であることが好ましい。以下の説明において、微小物質は細胞であるものとして説明する。
〈応力測定装置〉
図1に示すように、応力測定装置1は、測定対象の細胞C及び磁性微粒子Mを含む培養液Lを収納可能な容器10と、容器10内を撮影可能な撮影部20と、容器10内に磁力を与える磁力発生部30と、磁力発生部30に電流を供給する電源装置40と、撮影部20を制御して撮影された画像を処理するとともに、磁力発生部30に電流を供給するために電源装置40を制御する制御装置50とを備える。
【0017】
容器10は、図2に示すように、送出ライン11を介して培養液L、測定対象の細胞C及び磁性微粒子Mを容器10に送出する送出部12と接続される。また、容器10は、回収ライン13を介して細胞C及び磁性微粒子Mを容器10から回収する回収部14と接続される。送出部12及び回収部14は、例えば、制御装置50により制御される。または、送出部12及び回収部14は、オペレータにより手動で制御されてもよい。
【0018】
この容器10は、例えば、石英ガラス等の内部が視認可能な素材で形成される。このとき、容器10の全体が石英ガラスで形成される必要はなく、撮影部20によって内部を撮影可能であればよい。例えば、撮影部20が容器10の側面と上面から内部を撮影する場合、少なくともこの容器10の側面と上面の一部と、容器10内に光を照射する一部のみが石英ガラスで形成されればよい。
【0019】
容器10のサイズは限定されない。測定対象の細胞Cのサイズがμmオーダーであり、磁性微粒子Mはこれより小さくてよいため、これら細胞C及び磁性微粒子Mを収納できるサイズであればよい。例えば、幅10mm、奥行き10mm、高さ50mm程度の直方体の容器10を利用することができる。また、図1及び図2では、容器10は、直方体を例として図示しているが、形状も限定されない。
【0020】
撮影部20は、図3に示すように、容器10内に光を照射する光源21と、光源21により光が照射された容器10内を撮影する第1カメラ22及び第2カメラ23を有する。図3は、撮影部20と容器10の位置関係を容器10の上部から示す図である。第1カメラ22は、容器10の側面からの画像であるxy画像を撮影する。また、第2カメラ23は、容器10の上面からの画像であるxz画像を撮影する。このように、複数のカメラ22,23を利用することで、三次元での位置関係を特定することができる。なお、ここでは、撮影部20が2台のカメラ22,23を有する例で説明するが、2台以上のカメラを有していてもよい。
【0021】
具体的には、容器10の周囲には、後述するように磁石31〜36が配置されるが、これらの磁石31〜36にカメラ22,23の視野が遮られない位置に配置する必要がある。例えば、一方のカメラ22を、容器10の前面側から撮像するように配置したとき、他方のカメラ23を正面に対し所定角度斜め上から容器10を見下ろして撮像するように配置する。
【0022】
この撮影部20は、制御装置50から入力される制御信号に応じて光源21を制御し、容器10内を照射する。また、撮影部20は、制御装置50から入力される制御信号に応じて、各カメラ22,23を制御し、撮影された画像データを制御装置50に出力する。
【0023】
撮影対象は微小な物質であるため、撮影部20は、カメラ22,23の能力に応じて、容器10とカメラ22,23の間に、カメラ22,23が撮影対象の物質を拡大して撮影可能なマイクロスコープ(図示せず)を有してもよい。
【0024】
また、光源21としては、レーザ光を照射するレーザや、白色光を照射するハロゲンランプを利用することができる。例えば、磁性微粒子Mのサイズやカメラ22,23の倍率に合わせて光源21を選択することが好ましい。
【0025】
磁力発生部30は、図1中の紙面で容器10の上側に配置される第1磁石31、下側に配置される第2磁石32、左側に配置される第3磁石33、右側に配置される第4磁石34を有する。また、図1では省略されているが、磁力発生部30は、図3に示すように、容器10の前側に配置される第5磁石35、後側に配置される第6磁石36を有する。具体的には、各磁石31〜36は、それぞれ独立して制御される電磁石や超伝導磁石である。磁力発生部30は、これらの磁石31〜36を利用して、容器10内に磁場勾配を形成する。応力測定装置1では、この磁場勾配により、容器10内の磁性微粒子Mの位置を制御することができる。
【0026】
具体的には、第1磁石31と第2磁石32とがセット(第1の磁石セット)となり、いずれか一方の磁石をONにするとともに、供給される電流量に応じて発生する磁力の大きさを調整することで、磁性微粒子Mの上下方向(y軸方向)の位置を制御することができる。また、第3磁石33と第4磁石34とがセット(第2の磁石セット)となり、いずれか一方の磁石をONにするとともに、供給される電流量に応じて発生する磁力の大きさを調整することで、磁性微粒子Mの左右方向(x軸方向)の位置を制御することができる。さらに、第5磁石35と第6磁石36がセット(第3の磁石セット)となり、いずれか一方の磁石をONにするとともに、供給される電流量に応じて発生する磁力の大きさを調整することで、磁性微粒子Mの奥行き方向(z軸方向)の位置を制御することができる。
【0027】
なお、磁力発生部30は、第1〜第3の磁石セットのうち、いずれかを有していなくてもよい。例えば、磁力発生部30に第3の磁石セットがなく、前後方向に磁石35,36が配置されない場合、細胞Cのz座標を特定した後に磁性微粒子Mを注入し、細胞Cの位置を特定するz座標と同じz座標にある磁性微粒子Mを選択することで、磁性微粒子Mのz軸方向を細胞Cと合わせることができる。
【0028】
電源装置40は、制御装置50から入力される制御信号に応じて、磁力発生部30の各磁石31〜36を制御し、容器10内に磁場勾配を形成する。具体的には、電源装置40は、制御信号で特定される電流量の電流を各磁石31〜36に供給する。
【0029】
なお、ここでは、電源装置40が供給する電流に応じて容器10内の磁場勾配を調整して磁性微粒子Mの位置を制御するものとして説明するが、これに限定されない。例えば、容器10と各磁石31〜36との距離を利用して容器10内の磁場勾配を調整してもよい。この場合、電源装置40の代わりに、入力される制御信号に応じて、容器10と各磁石31〜36との距離を制御する駆動装置を有する。
【0030】
制御装置50は、図1に示すように、撮影部20を制御する撮影制御手段511と、撮影された画像を解析する解析手段512と、対象の磁性微粒子Mを検出する検出手段513と、磁性微粒子Mの位置と目的位置との差分を求める差分算出手段514と、電源装置40を制御する電源制御手段515と、電源装置40の制御に応じて細胞Cの応力を算出する応力算出手段516を有している。
【0031】
例えば、この制御装置50は、中央演算装置(CPU)51、記憶装置52、通信インタフェース(通信I/F)53、キーボードやマウス等の入力装置54及びディスプレイやスピーカ等の出力装置55を備える情報処理装置である。図1に示すように、記憶装置52に記憶される測定制御プログラムPが読み出されて実行されることで、CPU51が撮影制御手段511、解析手段512、検出手段513、差分算出手段514、電源制御手段515及び応力算出手段516として処理を実行する。また、測定制御プログラムPが実行されると、記憶装置52には、応力測定処理の過程で、画像データD1、二値化データD2、位置データD3、制御データD4及び応力データD5が記憶される。
【0032】
撮影制御手段511は、入力装置54を介して測定開始信号が入力されると、撮影部20に制御信号を出力する。具体的には、撮影制御手段511は、光源21によって容器10内に光を照射させる制御信号を出力するとともに、カメラ22,23で容器10内を撮影させる制御信号を出力する。このとき、撮影制御手段511は、定期的(例えば、100フレーム/秒)に複数枚の画像を撮影するようにカメラ22,23を制御する。撮影制御手段511は、撮影部20で撮影された画像データD1を撮影時刻と関連付けて記憶装置52に記憶する。
【0033】
解析手段512は、画像データD1に二値化処理を実行し、二値化データD2を生成する。解析手段512は、生成した二値化データD2を撮影時刻と関連付けて記憶装置52に記憶する。
【0034】
検出手段513は、二値化データD2から、対象の物質である磁性微粒子M又は細胞Cの位置を特定する座標を検出する。また、検出手段513は、検出した座標と画像の撮影時刻と関連付けて位置データD3として記憶装置52に記憶する。
【0035】
具体的には、磁性微粒子M又は細胞Cを探索する際、検出手段513は、二値化データD2に含まれる全ての粒子の面積を求める。ここで、粒子は、二値化データD2において背景とは色が異なる部分である。例えば、背景を黒と定義した場合、白い部分が粒子であり、背景を白と定義した場合、黒い部分が粒子である。検出手段513は、二値化データに含まれる各粒子から予め定められる面積の粒子を磁性微粒子M又は細胞Cとして検出し、検出した粒子の座標を磁性微粒子M又は細胞Cの位置として特定する。なお、細胞Cのサイズは磁性微粒子Mのサイズよりも大きい。したがって、所定の面積の領域が細胞Cとなる。
【0036】
また、磁性微粒子Mの位置を制御する際、検出手段513は、二値化データD2に含まれる全ての粒子の座標を求める。検出手段513は、二値化データD2に含まれる各粒子の座標のうち、位置データD3で前回の撮影時刻と関連付けられる磁性微粒子Mの座標と最も近い座標に存在する粒子を磁性微粒子Mとして特定し、位置データD3に追加する。
【0037】
差分算出手段514は、検出手段513で検出された磁性微粒子Mの位置(座標)と目標位置(座標)との差分を求める。具体的には、第1カメラ22で撮影されたxy画像を利用するとき、二値化データD2中の磁性微粒子Mの座標(x1,y1)と、目標位置の座標(x2,y2)との差分(x1−x2,y1−y2)を求める。また、第2カメラ23で撮影されたxz画像を利用するとき、二値化データD2中の磁性微粒子Mの座標(x1,z1)と、目標位置の座標(x2,z2)との差分(x1−x2,z1−z2)を求める。これにより、磁性微粒子Mを目標位置に移動させる距離と方向とを特定することができる。目標位置は、例えば、測定対象の細胞Cの表面に設定される複数の「測定点」又は、「測定点から一定深さの点」である。応力測定の際には、細胞Cの各測定点に磁性微粒子Mを移動させるとともに、各測定点で磁性微粒子Mを一定深さまで押し込み、細胞Cの各測定点の応力を測定する。
【0038】
電源制御手段515は、検出手段513で検出された差分データを利用して、電源装置40を制御する制御信号を生成して電源装置40に出力する。この制御信号は、磁性微粒子Mを目標位置に移動させる磁場勾配が形成されるように各磁石31〜36に供給する電流量情報を含む。また、電源制御手段515は、新たな制御信号を生成すると、差分データの算出に利用された位置とともに、電流量情報を含む制御データD4を記憶装置52に出力する。その後、電源装置40を制御して磁性微粒子の新たな位置が特定されると、電源制御手段515は、この新たな位置に応じた制御信号を生成する。このとき、応力測定装置1では、新たな位置がフィードバック信号となり、フィードバック制御が実行される。
【0039】
磁性微粒子Mに作用する力は、図4に示すように、磁力発生部30から発生される磁力Fp、流体である培養液Lから受ける流体抵抗力Fd、浮力Fb及び重力Fgである。Fp+Fb>Fd+Fgとなったとき、磁性微粒子Mは加速力を生じ(下方向に移動)、Fp+Fb<Fd+Fgとなったとき、磁性微粒子Mは減速力を生じる(上方向に移動)。また、Fp+Fb=Fd+Fgとなったとき、磁性微粒子Mは一点に留まることとなり、以下では、この状態を「磁性微粒子Mがバランスされた状態」として説明する。
【0040】
培養液L及び磁性微粒子Mが決定すると、浮力Fb及び重力Fgは固定の値になる。また、培養液Lが流動せず、かつ、磁性微粒子Mがバランスしている場合、流体抵抗力Fdは、固定の値である「0」になる。したがって、この場合、電源制御手段515は、浮力Fb、重力Fg及び流体抵抗力Fdから磁性微粒子Mの目的位置に応じた磁力Fpを決定し、この磁力Fpを発生するための制御信号を生成する。
【0041】
一方、培養液Lが一定速度で流動し、磁性微粒子Mが細胞Cと接しておらず、かつ、磁性微粒子Mがバランスした場合、流体抵抗力Fdは、浮力Fb、重力Fg、このときの磁力Fpのベクトル演算で求められる固定の値になる。したがって、この場合、まず浮力Fb、重力Fg及び磁力Fpから流体抵抗力Fdを求め、次に、浮力Fb、重力Fg及び求めた流体抵抗力Fdから磁性微粒子Mの目的位置に応じた磁力Fpを決定する。なお、一度、流体抵抗力Fdを求めた後、培養液Lの流動速度に変更がない場合、その後に測定のために磁性微粒子Mを細胞Cに押し当てる目的で磁力Fpを決定する際には、電源制御手段515は、流体抵抗力Fdを固定値として使用し、この固定値の流体抵抗力Fdを用いて、磁性微粒子Mの目的位置に応じた磁力Fpを決定し、この磁力Fpを発生するための制御信号を生成する。
【0042】
応力算出手段516は、電源制御手段515が電源装置40に出力する制御信号に含まれる電流量情報を利用して、細胞Cの表面の応力を算出する。また、算出した応力の値及び対象の位置を関連付ける応力データD5を記憶装置52に記憶する。
【0043】
例えば、磁性微粒子Mは、細胞Cの表面の各測定点を移動しながら、細胞Cの各測定点で所定深さまで押し込まれる。これにより、細胞Cに磁性微粒子Mを押し込んだ量を変位とし、磁性微粒子Mが感じる反力を応力として、細胞Cの表面の応力分布を表す「応力‐ひずみ線図」を生成することができる。ここで、応力算出手段516は、磁性微粒子Mの制御に利用した電流量を利用して磁力Fpを求める式を利用し、これにより「押し込んだ量」を特定する。また、応力算出手段516は、浮力Fb、重力Fg及び磁力Fpの値を用いて所定の式により「反力」を算出する。
【0044】
具体的には、応力算出手段516は、磁気力Fpの算出に、式(1)及び、記憶装置52に記憶される磁界データD6を利用する。
【0045】
Fp=μ0・Mm・∇H・V ・・・(1)
磁界データD6は、予め複数の電流パターンについて、磁界分布及び磁気勾配分布を計測した結果のデータである。また、式(1)のμ0は真空透磁率、Mmは磁性微粒子Mの磁化、∇Hは磁界データD6から特定される磁界、Vは磁性微粒子Mの体積である。なお、磁性微粒子Mの体積Vは、撮影部20で撮影された磁性微粒子Mの断面積から特定することができる。
【0046】
〈応力測定処理〉
図5に示すフローチャートを用いて、応力測定装置1を利用して実行される応力測定処理を説明する。まず、応力測定処理を実行する際には、送出部12により、容器10に細胞Cが送出される(S1)。容器10内において、細胞Cは、底面に付着する。または、細胞Cは、容器10の側面に付着する。
【0047】
その後、制御装置50の制御により、容器10における細胞Cの位置が探索される(S2)。細胞Cの位置の探索は、第1カメラ22の画像(xy画像)を使用する。ステップS2における細胞Cの探索の処理については、図7を用いて詳述する。
【0048】
続いて、送出部12により、容器10に磁性微粒子Mが送出される(S3)。その後、制御装置50の制御により、容器10における磁性微粒子Mの位置が探索される(S4)。磁性微粒子Mの位置の探索は、第1カメラ22の画像(xy画像)を使用する。ステップS4における磁性微粒子Mの探索の処理については、図8を用いて詳述する。
【0049】
ここで、細胞Cのサイズと磁性微粒子Mのサイズとの比率は、例えば、10:1程度である。比率が、10:1程度であれば、細胞Cの表面上の分布や押し込み量を計測しやすい。しかしながら、比率が5:1程度である場合、比率10:1の場合と比較して、細胞Cに対する磁性微粒子Mのサイズが大きくなるため、測定精度が劣るおそれがある。また、比率が100:1程度である場合、磁性微粒子Mが細胞Cに対して小さく、測定点を多く設定する必要が生じるため、測定に長い時間を要することになる。この細胞Cと磁性微粒子Mのサイズの比率は、細胞C上に設定する測定点の数、細胞Cに磁性微粒子Mを押し込む深さ、撮影部20で撮影される画像の分解能等に応じて設定される。
【0050】
磁性微粒子Mの探索がされると、制御装置50の制御により、磁力発生部30を制御して磁性微粒子Mの位置を所定の定点把持位置に移動させる(S5)。ここで、定点把持位置は、任意に定められる位置であって、例えば、測定対象の細胞Cの表面上の「測定開始点」を定点把持位置として設定することができる。磁性微粒子Mは、次に移動されるまで、この定点把持位置に把持される。磁性微粒子Mの定点把持位置への移動の制御は、第1カメラ22の画像(xy画像)の位置情報を使用して行われる。ステップS5における磁性微粒子Mの位置の移動制御の処理については、図9を用いて詳述する。
【0051】
磁性微粒子Mの位置が制御されると、制御装置50の制御により、磁力発生部30を制御して、応力測定の処理が実行される(S6)。例えば、図6(a)に示すように、定点把持位置が、細胞C上にない場合、培養液L中で細胞Cと離れている磁性微粒子Mを、磁力によって図6(b)に示すように細胞Cの測定点に移動させる。磁性微粒子Mの細胞Cの表面上への移動の制御は、第1カメラ22の画像(xy画像)及び第2カメラ23の画像(xz画像)の位置情報を使用して行われる。
【0052】
その後、図6(c)に示すように、磁性微粒子Mを一定深さまで押し込んで細胞Cの応力を測定した後、元に戻し、図6(d)に示すように、次の測定点に移動させる。また、図6(c)及び図6(d)に示すように、磁性微粒子Mを、それぞれ次の測定点に移動させ、各測定点において、同様に、一定深さまで磁性微粒子Mを押し込み、細胞Cの応力を測定する。例えば、測定点は、所定間隔毎に設定される。また、応力は、浮力Fb、重力Fg及び磁力Fpを用いて算出される。ステップS6における応力測定の処理については、図10を用いて詳述する。
【0053】
なお、ここでは、ステップS1で容器10に送出された細胞Cは、容器10の底面や側面に付着するものとして説明した。しかしながら、細胞Cが容器10に付着せず、浮遊している場合もある。このような場合、ステップS5で磁性微粒子Mを移動させ、ステップS6で応力を測定する際に、磁性微粒子Mを細胞Cに接するように移動させた後、細胞Cに接する磁性微粒子Mを細胞Cの一部が容器10の底面又は側面に接するまで移動させる。これにより、測定中に細胞Cが磁性微粒子Mを押し当てる力で培養液L中を浮遊することはなく、正確に応力を測定することができる。
【0054】
〈細胞の探索〉
細胞Cを探索する際、図7のフローチャートに示すように、制御装置50の制御によって撮影部20が容器10内の画像を撮影する(S21)。制御装置50は、撮影部20から入力された画像データD1を記憶装置52に記憶する。
【0055】
制御装置50は、画像データD1を使用して、二値化データD2を生成する(S22)。このとき、制御装置50は、二値化データD2を記憶装置52に記憶する。
【0056】
制御装置50は、二値化データD2に含まれる全ての粒子の面積を算出する(S23)。
【0057】
条件を満たす面積があるとき(S24でYES)、制御装置50は、これを測定対象の細胞Cと特定し、この細胞Cの位置を位置データD3に追加して細胞Cの探索の処理を終了する(S25)。この位置データD3に追加された細胞の位置は、細胞Cの表面の座標データであって、具体的には、画像中における細胞Cと背景である培養液Lとの境界の曲線を特定する座標のデータである。
【0058】
一方、条件を満たす面積がないとき(S24でNO)、制御装置50は、定期的に撮影部20から入力される画像データを用いてステップS21〜S24の処理を繰り返す。
【0059】
〈磁性微粒子の探索〉
微粒子の探索は、細胞Cの探索と同様に行う。具体的には、磁性微粒子Mを探索する際、図8のフローチャートに示すように、制御装置50の制御によって撮影部20が容器10内の画像を撮影する(S31)。制御装置50は、撮影部20から入力された画像データD1を記憶装置52に記憶する。
【0060】
制御装置50は、画像データD1を使用して、二値化データD2を生成する(S32)。このとき、制御装置50は、二値化データD2を記憶装置52に記憶する。
【0061】
制御装置50は、二値化データD2に含まれる全ての粒子の面積を算出する(S33)。
【0062】
条件を満たす面積があるとき(S34でYES)、制御装置50は、これを対象の磁性微粒子Mと特定し、この磁性微粒子Mの位置を含む位置データD3を記憶装置52に記憶して磁性微粒子Mの探索の処理を終了する(S35)。
【0063】
一方、条件を満たす面積がないとき(S34でNO)、制御装置50は、定期的に撮影部20から入力される画像データを用いてステップS31〜S34の処理を繰り返す。また、一定時間経過後も磁性微粒子Mが探索できないとき、再び磁性微粒子Mを注入(図5のS3)した後、新たに注入された磁性微粒子Mを対象として探索してもよい。
【0064】
なお、実際は、磁性微粒子Mは微小であることにより、1粒ずつ容器10に注入することは困難であったり、所望のサイズの磁性微粒子Mを選択することが困難であったりする。したがって、このような場合、容器10に磁性微粒子Mを注入する際、複数の磁性微粒子Mを注入し、探索処理で条件を満たす所望の磁性微粒子Mを選択する。
【0065】
〈磁性微粒子の移動〉
磁性微粒子Mを定点把持位置に移動する際、図9のフローチャートに示すように、制御装置50の制御によって撮影部20が容器10内の画像を撮影する(S41)。制御装置50は、撮影部20から入力された画像データD1を記憶装置52に記憶する。
【0066】
制御装置50は、画像データD1を使用して、二値化データD2を生成する(S42)。このとき、制御装置50は、二値化データD2を記憶装置52に記憶する。
【0067】
制御装置50は、二値化データD2に含まれる全ての粒子の位置を特定する(S43)。
【0068】
制御装置50は、全ての粒子の位置が特定されると、位置データD3で前回の撮影時刻と関連付けられる磁性微粒子Mの位置と最も近い位置に存在する粒子を磁性微粒子Mの新たな位置として特定する(S44)。またこのとき、制御装置50は、新たな磁性微粒子Mの位置を画像の撮影時刻と関連付けて位置データD3に追加する。
【0069】
制御装置50は、新たな磁性微粒子Mの位置が特定されると、磁性微粒子Mの位置と目標位置である定点把持位置との差分を求める(S45)。
【0070】
磁性微粒子Mが定点把持位置に存在しないとき(S46でNO)、制御装置50は、磁性微粒子Mを定点把持位置に移動させるために必要な電流量を求め、電源装置40に制御信号を出力する(S47)。このとき、制御装置50は、新たに求めた電流量情報を制御データD4に追加する。
【0071】
電源装置40は、制御信号に応じて各磁石31〜34を制御する(S48)。
【0072】
応力測定装置1では、磁性微粒子Mが定点把持位置に移動するまで、ステップS41〜S48の処理を繰り返す。
【0073】
〈応力の測定〉
ここでは、細胞Cの応力を測定する際、まず、xy画像上で磁性微粒子Mを細胞Cの表面上に移動させる。後に、xz画像上で磁性微粒子Mを細胞Cの表面上に移動させることで、三次元での移動を行うものとする。図10のフローチャートに示すように、制御装置50の制御によって撮影部20の第1カメラ22が、容器10内の画像を撮影する(S51)。制御装置50は、撮影部20から入力された画像データD1を記憶装置52に記憶する。
【0074】
制御装置50は、画像データD1を利用して、二値化データD2を生成する(S52)。このとき、制御装置50は、二値化データD2を記憶装置52に記憶する。
【0075】
制御装置50は、二値化データD2に含まれる全ての粒子の位置を特定する(S53)。
【0076】
制御装置50は、全ての粒子の位置が特定されると、位置データD3で前回の撮影時刻と関連付けられる磁性微粒子Mの位置(xy座標)と各粒子の位置を比較し、同一又は最も近い位置を、磁性微粒子Mの位置として特定する。(S54)。このとき、制御装置50は、新たに特定された磁性微粒子Mの位置(xy座標)を画像の撮影時刻と関連付けて位置データD3に追加する。なお、細胞Cの位置は、細胞の探索(図5のS2)で特定された、位置データD3に含まれる位置である。
【0077】
制御装置50は、磁性微粒子Mの位置と目標位置である細胞C上の測定開始点との差分を求める(S55)。この測定開始点は、細胞Cが特定された際、オペレータが任意に設定することができる。
【0078】
磁性微粒子Mが細胞C上の測定開始点に存在しないとき(S56でNO)、制御装置50は、磁性微粒子Mを測定開始点に移動させるために必要な電流量を求め、電源装置40に制御信号を出力する(S57)。このとき、制御装置50は、新たに求めた電流量情報を制御データD4に追加する。
【0079】
電源装置40は、制御信号に応じて各磁石31〜34を制御する(S58)。
【0080】
応力測定装置1では、xy画像上で磁性微粒子Mが細胞C上に移動するまで、ステップS51〜S58の処理を繰り返す。したがって、応力測定装置1では、新たな位置がフィードバック信号となり、電源装置40にフィードバック制御が実行される。
【0081】
xy画像で磁性微粒子Mが細胞C上に移動すると(S56でYES)、制御装置50の制御によって撮影部20の第2カメラ23が、容器10内の画像を撮影する(S59)。制御装置50は、撮影部20から入力された画像データD1を記憶装置52に記憶する。
【0082】
制御装置50は、画像データD1を使用して、二値化データD2を生成する(S60)。このとき、制御装置50は、二値化データD2を記憶装置52に記憶する。
【0083】
制御装置50は、二値化データD2に含まれる全ての粒子の位置を特定する(S61)。
【0084】
制御装置50は、全ての粒子の位置(xz座標)が特定されると、位置データD3に含まれる磁性微粒子Mの位置(xy座標)のx座標と各粒子の位置のx座標を比較し、同一又は最も近い座標の位置を、磁性微粒子Mの位置として特定する。また、制御装置50は、位置データD3に含まれる細胞Cを特定する座標データ(xy座標)のx座標を含む、所定面積以上の領域を細胞Cと特定する(S62)。このとき、制御装置50は、新たに特定された磁性微粒子Mの位置(xz座標)及び細胞Cの位置(xz座標)を、記憶装置52に記憶される位置データD3に追加する。なお、位置データD3に追加された細胞の位置は、画像中における細胞Cと背景である培養液Lとの境界の曲線を特定する座標のデータである。
【0085】
制御装置50は、磁性微粒子Mの位置と目標位置である細胞Cの測定開始点との差分を求める(S63)。この測定開始点は、ステップS55で設定された測定開始点のx座標と、ステップS62で特定された細胞の座標データとから求めることができる。
【0086】
磁性微粒子Mが細胞C上に存在しないとき(S64でNO)、制御装置50は、磁性微粒子Mを細胞C上に移動させるために必要な電流量を求め、電源装置40に制御信号を出力する(S65)。このとき、制御装置50は、新たに求めた電流量情報を制御データD4に追加する。
【0087】
電源装置40は、制御信号に応じて各磁石31〜36を制御する(S66)。
【0088】
応力測定装置1では、xz画像上で磁性微粒子Mが細胞C上に移動するまで、ステップS59〜S66の処理を繰り返す。したがって、応力測定装置1では、新たな位置がフィードバック信号となり、電源装置40にフィードバック制御が実行される。
【0089】
なお、ここでは、磁性微粒子Mのxy画像上の位置を調整(ステップS51〜S58)した後、xz画像上の位置を調整(ステップS59〜S66)すると説明したが、この方法に限定されない。例えば、同時に磁性微粒子Mの三次元の位置を調整してもよいし、磁性微粒子Mのxz画像の調整の後にxy画像の位置を調整してもよい。
【0090】
ステップS51〜S66の処理により、細胞Cの表面上に磁性微粒子Mが移動したため、この後、磁性微粒子Mを細胞Cの表面上の各測定点に順次移動させ、各測定点において磁性微粒子Mを押し込んだときの応力をそれぞれ測定する。
【0091】
具体的には、まず、制御装置50は、磁性微粒子Mが細胞C上の測定点に移動させるために必要な電流量を求める(S67)。また制御装置50は、電源装置40に制御信号を出力し、磁石31〜36を制御する(S68)。このとき、制御装置50は、求めた電流量情報を制御データD4に追加する。
【0092】
制御装置50の制御によって撮影部20の第1カメラ22及び第2カメラ23が、容器10内の画像を撮影する(S69)。制御装置50は、撮影部20から入力された画像データD1を記憶装置52に記憶する。
【0093】
制御装置50は、画像データD1を使用して、二値化データD2を生成する(S70)。このとき、制御装置50は、二値化データD2を記憶装置52に記憶する。
【0094】
制御装置50は、xy画像及びxz画像の二値化データD2に含まれる全ての粒子の位置を特定する(S71)。
【0095】
制御装置50は、全ての粒子の位置が特定されると、位置データD3で前回の撮影時刻と関連付けられる磁性微粒子Mの位置と今回算出した各粒子の位置を比較し、同一又は最も近い位置を、磁性微粒子Mの位置として特定する。また、制御装置50は、位置データD3に含まれる細胞Cの位置と同一の位置にある領域を、細胞Cの位置として特定する(S72)。またこのとき、制御装置50は、新たな磁性微粒子Mの位置を画像の撮影時刻と関連付けて位置データD3に追加する。
【0096】
制御装置50は、磁性微粒子Mの位置と細胞Cの位置を特定すると、磁性微粒子Mが細胞Cの測定点から一定の深さ押し込まれているか否かを判定する(S73)。
【0097】
細胞Cの測定点から磁性微粒子Mが一定深さ押し込まれていないとき(S73でNO)、磁性微粒子Mを一定の力で押し込むための電流量を求め(S74)、ステップS68〜S73の処理を繰り返す。このとき、制御装置50は、新たに求めた電流量情報を制御データD4に追加する。
【0098】
磁性微粒子Mが細胞Cの測定点から一定深さまで押し込まれたとき(S73でYES)、制御装置50は、制御データD4で記憶される電流量情報から、細胞Cの表面の応力の値を求め、結果を出力する(S75)。このとき、制御装置50は、新たに求めた応力の値を、応力データD5に追加する。
【0099】
その後、応力測定装置1では、測定が終了するまで、ステップS67〜S76の処理が繰り返され、フィードバック制御が継続する(S76)。なお、ここでは、制御装置50は、各測定点で所定深さまで押し込む毎に、ステップS75で応力の値を求めるものとして説明したが、これに限定されない。例えば、制御が終了し、制御データD4に全ての必要な電流量情報が追加された後、応力の値を算出してもよい。また、各測定点で押し込む一定深さは、1段階のみでなく、複数の段階設定し、同じ測定点で複数回押し込んで応力を求めることで、より詳細に応力の測定をすることができる。
【0100】
図11は、定点把持位置Tに磁性微粒子Mを移動させる際に撮影された画像の一例である。図11(a)は、処理を開始して1秒後(t=1(s))の画像である。また、図11(b)は、処理を開始して1.5秒後(t=1.5(s))、図11(c)は、処理を開始して2秒後(t=2(s))、図11(d)は、処理を開始して3秒後(t=3(s))の画像である。このように、磁力発生部30で磁力を発生させることで、磁性微粒子Mを培養液L中で自由に移動させることができる。したがって、磁性微粒子Mを測定対象の細胞Cの表面上の各測定点に順次移動させ、各測定点で一定深さまで押し込む際の電流量を利用して、細胞Cの応力を測定することもできる。
【0101】
上述したように、実施形態に係る応力測定装置1では、磁力を利用して容器10内の培養液L中で磁性微粒子Mを移動させ、微細物質である細胞Cの表面に力を与えて応力を測定することができる。このとき、磁性微粒子Mの位置は、細かくコントロールすることができ、微細物質の強度を高精度に測定することができる。また、連続して微細物質の表面の応力分布を測定することが可能であるため、定量的な測定も可能となる。
【0102】
〈変形例〉
応力の測定の精度を上げるため、適切な磁性微粒子Mを利用することが好ましい。具体的には、磁性微粒子Mは微小であるため、磁性微粒子Mの生成の際にサイズや形状を調整したり、希望のサイズの磁性微粒子Mをすることが困難である。また、1粒の磁性微粒子Mのみを容器10に入れることが困難である。したがって、容器10には複数のサイズが異なる磁性微粒子Mが存在することも多い。このようなとき、磁力を与えると、複数の磁性微粒子Mが互いに影響しあうことがある。したがって、例えば、以下のような処理により、磁性微粒子Mを選択し、応力の測定の精度を向上させることができる。
【0103】
・チェーンクラスター化の確認
応力測定中に測定に利用する磁性微粒子Mの近傍にサイズの異なる他の磁性微粒子が近接してきた場合、粒子間磁気力で複数の磁性微粒子Mがクラスター化することを避けるため、制御装置50は、培養液Lを送出する流量を(流速0から)変化させて他の磁性微粒子を押し流してもよい。サイズの異なる磁性微粒子は定点把持するために必要な磁気力が異なるため、測定対象の磁性微粒子Mはその場に保持される一方、他の磁性微粒子は培養液Lの流れで移動する。万が一、クラスター化した場合、適切な励磁条件を選択することで、これを切断する処理を行ってもよい。流体抵抗力と慣性力によってクラスター化された複数の磁性微粒子の結合面にせん断力が作用しこれを切り離すことができる。また、磁性微粒子の探索(図5のステップS2)で条件に合う磁性微粒子Mが特定された場合、この磁性微粒子Mを上下方向に移動させたり、左右方向に移動させる等、磁性微粒子Mを一定のパターンで移動させる。これにより、磁性微粒子Mにクラスター化が生じないことを確認してもよい。このように、クラスター化の磁性微粒子Mを除くことで、応力測定の精度を向上させることができる。
【0104】
・体積の測定
上述した方法では、画像の面積を元に粒子のサイズを特定している。このとき、磁性微粒子Mを複数の方向から撮影した画像を利用して磁性微粒子Mのサイズを特定することで、求められるサイズの信頼性を向上させることができる。具体的には、磁力発生部30で定点把持位置に磁性微粒子Mを把持するとともに、この定点把持位置で回転磁界を重畳させることで、磁性微粒子Mを回転させながら、複数の画像を撮影する。また、この複数の画像から求められる磁性微粒子Mの面積から、磁性微粒子Mのサイズを特定する。これにより求められた磁性微粒子Mのサイズが条件を満たさない場合、条件を満たす新たな磁性微粒子Mを探索することで、応力測定の精度を向上させることができる。
【0105】
・不要な粒子の排除
不要な粒子が多くあるとき、測定に利用する磁性微粒子Mの特定が困難なことがある。また、磁性微粒子Mの磁力による位置の制御が困難になることがある。したがって、不要な粒子が多くあるとき、定点把持位置に磁性微粒子Mを把持したうえで、不純物の含まれない培養液Lのみを送出ライン11を介して容器10に供給する。また、回収ライン13を介して容器10から不要な粒子を含む培養液Lを回収する。このように、培養液Lに含まれる不要な粒子を除くことで、応力測定の精度を向上させることができる。
【0106】
以上、実施形態を用いて本発明を詳細に説明したが、本発明は本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載及び特許請求の範囲の記載と均等の範囲により決定されるものである。
【符号の説明】
【0107】
1 応力測定装置
10 容器
11 送出ライン
12 送出部
13 回収ライン
14 回収部
20 撮影部
21 光源
22 第1カメラ
23 第2カメラ
30 磁力発生部
31〜36 磁石
40 電源装置
50 制御装置
51 CPU
511 撮影制御手段
512 解析手段
513 検出手段
514 差分算出手段
515 電源制御手段
52 記憶装置
53 通信I/F
54 入力装置
55 出力装置
P 制御プログラム
C 細胞
L 培養液
M 磁性微粒子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11