(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、該一対のビード部間に内側カーカス層と外側カーカス層とを含む複数層のカーカス層が装架され、前記内側カーカス層及び前記外側カーカス層がビードコアの廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げられた空気入りタイヤにおいて、前記内側カーカス層がポリエステル繊維コードから構成され、前記外側カーカス層がアラミド繊維コードから構成されると共に、前記アラミド繊維コードの総繊度が前記ポリエステル繊維コードの総繊度の40%〜75%であり、前記内側カーカス層の巻き上げ高さが前記外側カーカス層の巻き上げ高さよりも大きく、前記サイドウォール部において前記カーカス層の外側に配置されるゴム部分のタイヤ最大幅位置での厚さが1.0mm〜2.0mmであることを特徴とする空気入りタイヤ。
下式(1)で表されるリベット比について、前記外側カーカス層のリベット比が前記内側カーカス層のリベット比の60%〜85%であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
R=C×N/50 ・・・(1)
但し、R:リベット比
C:コード径(mm)
N:幅50mm当たりのコード打ち込み本数(本/50mm)
下式(2)で表される撚り係数について、前記アラミド繊維コードの撚り係数が前記ポリエステル繊維コードの撚り係数よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
K=T√D ・・・(2)
但し、K:撚り係数
T:コードの撚り数(回/10cm)
D:コードの総繊度(dtex)
前記アラミド繊維コードを被覆するコートゴムの貯蔵弾性率が前記ポリエステル繊維コードを被覆するコートゴムの貯蔵弾性率よりも大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、サイドウォール部の薄肉化により軽量化及び転がり抵抗の低減を図ると共に、耐外傷性及び耐久性を改善することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを備え、該一対のビード部間に内側カーカス層と外側カーカス層とを含む複数層のカーカス層が装架され、前記内側カーカス層及び前記外側カーカス層がビードコアの廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げられた空気入りタイヤにおいて、前記内側カーカス層がポリエステル繊維コードから構成され、前記外側カーカス層がアラミド繊維コードから構成されると共に、前記アラミド繊維コードの総繊度が前記ポリエステル繊維コードの総繊度の40%〜75%であり、前記内側カーカス層の巻き上げ高さが前記外側カーカス層の巻き上げ高さよりも大きく、前記サイドウォール部において前記カーカス層の外側に配置されるゴム部分のタイヤ最大幅位置での厚さが1.0mm〜2.0mmであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、サイドウォール部を薄肉化して空気入りタイヤの軽量化及び転がり抵抗の低減を図るにあたって、内側カーカス層にポリエステル繊維コードを使用する一方で、外側カーカス層に耐切削性が高いアラミド繊維コードを使用することにより、サイドウォール部を薄肉化した場合であっても耐外傷性を改善することができる。また、アラミド繊維コードはポリエステル繊維コードよりも屈曲疲労を生じ易いが、アラミド繊維コードの総繊度をポリエステル繊維コードの総繊度の40%〜75%とすることにより、屈曲時にアラミド繊維コードに生じる歪みが低減されるので、空気入りタイヤの耐久性を改善することができる。
【0008】
更に、アラミド繊維コードからなる外側カーカス層の巻き上げ高さがポリエステル繊維コードからなる内側カーカス層の巻き上げ高さよりも大きいと、その内側カーカス層の巻き上げ端末を支点とする屈曲によりアラミド繊維コードの疲労が促進されて耐久性が低下することになるが、内側カーカス層の巻き上げ高さを外側カーカス層の巻き上げ高さよりも大きくすることにより、上記のような屈曲を防止して耐久性を確保することができる。従って、本発明によれば、サイドウォール部の薄肉化により軽量化及び転がり抵抗の低減を図りつつ、耐外傷性及び耐久性を改善することができる。
【0009】
本発明において、下式(1)で表されるリベット比について、外側カーカス層のリベット比が内側カーカス層のリベット比の60%〜85%であることが好ましい。
R=C×N/50 ・・・(1)
但し、R:リベット比
C:コード径(mm)
N:幅50mm当たりのコード打ち込み本数(本/50mm)
【0010】
リベット比はカーカス層中のコード占有状態を表す指標であり、リベット比が高いほどコードが密に存在することを意味する。アラミド繊維コードはポリエステル繊維コードよりもゴムとの接着性に劣り、しかも引張モジュラスが高いので、タイヤ転動中にビードフィラーとそれに接する外側カーカス層との間には相対的に大きなせん断歪みが発生し、セパレーションを生じ易い。これに対して、アラミド繊維コードからなる外側カーカス層のリベット比をポリエステル繊維コードからなる内側カーカス層のリベット比よりも小さくし、外側カーカス層を被覆するコートゴムを十分に確保することにより、ビードフィラーと外側カーカス層とのセパレーションを防止し、空気入りタイヤの耐久性を改善することができる。
【0011】
また、下式(2)で表される撚り係数について、アラミド繊維コードの撚り係数がポリエステル繊維コードの撚り係数よりも大きいことが好ましい。
K=T√D ・・・(2)
但し、K:撚り係数
T:コードの撚り数(回/10cm)
D:コードの総繊度(dtex)
【0012】
このようにアラミド繊維コードの撚り係数をポリエステル繊維コードの撚り係数よりも大きくすることにより、外側カーカス層を構成するアラミド繊維コードの耐屈曲疲労性を改善し、空気入りタイヤの耐久性を更に高めることができる。
【0013】
また、アラミド繊維コードを被覆するコートゴムの貯蔵弾性率はポリエステル繊維コードを被覆するコートゴムの貯蔵弾性率よりも大きいことが好ましい。このようにアラミド繊維コードを被覆するコートゴムの貯蔵弾性率を相対的に高くすることにより、タイヤ転動中にビードフィラーとそれに接する外側カーカス層との間に生じるせん断歪みが低減されるので、ビードフィラーと外側カーカス層とのセパレーションを防止し、空気入りタイヤの耐久性を更に改善することができる。貯蔵弾性率(E')は、JIS−K6394に準拠して、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所製)を用い、周波数20Hz、初期歪み10%、動歪み±2%、温度60℃の条件にて測定されるものである。
【0014】
本発明において、タイヤ断面高さは120mm以上であることが好ましい。このような寸法要件を満足する空気入りタイヤはサイドウォール部の露出面積が広く外傷を受け易いため、上述したカーカス構造を適用した場合に顕著な効果を得ることができる。特に、本発明の空気入りタイヤは、SUVに装着される大型乗用車用の空気入りラジアルタイヤとして好適である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1及び
図2は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示すものである。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部1と、トレッド部1の両側に配置された一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部3とを備えている。
【0018】
一対のビード部3,3間にはタイヤ径方向に延びる複数本のカーカスコードを含む2層のカーカス層4が装架されている。カーカス層4は、トレッド部1においてタイヤ径方向内側に位置する内側カーカス層4Aと、トレッド部1においてタイヤ径方向外側に位置する外側カーカス層4Bとを包含するものである。各ビード部3には、環状のビードコア5が埋設されており、そのビードコア5の外周上に断面三角形状のゴム組成物からなるビードフィラー6が配置されている。内側カーカス層4A及び外側カーカス層4Bは、ビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側に一体的に巻き上げられている。その結果、外側カーカス層4Bはビードフィラー6と内側カーカス層4Aとの間に介在するように配置されている。
【0019】
一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には、複数層のベルト層7がタイヤ全周にわたって埋設されている。これらベルト層7は、タイヤ周方向に対して傾斜する複数本の補強コードを含み、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。ベルト層7において、補強コードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は例えば10°〜40°の範囲に設定されている。ベルト層7の補強コードとしては、例えばスチールコードが好ましく使用される。
【0020】
ベルト層7の外周側には、高速耐久性の向上を目的として、補強コードをタイヤ周方向に対して5°以下の角度で配列してなる少なくとも1層のベルト補強層8が配置されている。ベルト補強層8は少なくとも1本の補強コードを引き揃えてゴム被覆してなるストリップ材をタイヤ周方向に連続的に巻回したジョイントレス構造とすることが望ましい。また、ベルト補強層8はベルト層7の幅方向の全域を覆うように配置しても良く、或いは、ベルト層7の幅方向外側のエッジ部のみを覆うように配置しても良い。ベルト補強層8の補強コードとしては、ナイロンやアラミド等の有機繊維コードが好ましく使用される。
【0021】
上述した空気入りタイヤにおいて、
図2に示すように、内側カーカス層4Aを構成するカーカスコードとしてはポリエステル繊維コード11Aが使用され、外側カーカス層4Bを構成するカーカスコードとしてはアラミド繊維コード11Bが使用され、アラミド繊維コード11Bの総繊度はポリエステル繊維コード11Aの総繊度の40%〜75%の範囲に設定されている。また、
図1に示すように、内側カーカス層4Aの巻き上げ高さHaは外側カーカス層4Bの巻き上げ高さHbよりも大きく設定され、サイドウォール部2においてカーカス層4A,4Bの外側に配置されるゴム部分のタイヤ最大幅位置Pmaxでの厚さtは1.0mm〜2.0mmの範囲に設定されている。
【0022】
上記空気入りタイヤでは、サイドウォール部2を薄肉化して空気入りタイヤの軽量化及び転がり抵抗の低減を図るにあたって、内側カーカス層4Aにポリエステル繊維コード11Aを使用する一方で、外側カーカス層4Bに耐切削性が高いアラミド繊維コード11Bを使用している。これにより、サイドウォール部2を薄肉化した場合であってもアラミド繊維コード11Bからなる外側カーカス層4Bに基づいて耐外傷性を改善することができる。
【0023】
アラミド繊維コード11Bはポリエステル繊維コード11Aに比べて引張強度が高いという特長を有するものの、耐屈曲疲労性に劣るという欠点を有している。これに対して、アラミド繊維コード11Bの総繊度をポリエステル繊維コード11Aの総繊度の40%〜75%とすることにより、屈曲時にアラミド繊維コード11Bに生じる歪みが低減されるので、空気入りタイヤの耐久性を改善することができる。ここで、アラミド繊維コード11Bの総繊度がポリエステル繊維コード11Aの総繊度の40%よりも小さいと耐外傷性が低下し、逆に75%よりも大きいと耐屈曲疲労性が低下する。
【0024】
また、ポリエステル繊維コード11Aからなる内側カーカス層4Aの巻き上げ高さHaをアラミド繊維コード11Bからなる外側カーカス層4Bの巻き上げ高さHbよりも大きくするので、アラミド繊維コード11Bからなる外側カーカス層4Bが内側カーカス層4Aの巻き上げ端末を支点として屈曲するような挙動が生じるのを回避し、アラミド繊維コード11Bの疲労による耐久性の低下を防止することができる。なお、内側カーカス層4Aの巻き上げ端末はビードフィラー6の頂点よりもタイヤ径方向内側に配置することが好ましい。これにより、内側カーカス層4Aの巻き上げ端末が外側カーカス層4Bの本体部分に隣接するのを回避することができる。また、内側カーカス層4Aの巻き上げ高さHaと外側カーカス層4Bの巻き上げ高さHbとの差は10mm以上であると良い。このように両者の端末同士を十分に離間させることにより、応力集中を回避し、耐久性を更に高めることができる。
【0025】
サイドウォール部2においてカーカス層4A,4Bの外側に配置されるゴム部分のタイヤ最大幅位置Pmaxでの厚さtは1.0mm〜2.0mmとするが、これはサイドウォール部2を薄肉化する際の指標である。タイヤ最大幅位置Pmaxでの厚さtが1.0mmよりも小さいとサイドウォール部2の擦れによりカーカス層4が簡単に露出してしまう恐れがあり、逆に2.0mmよりも大きいと軽量化や転がり抵抗の低減が不十分になる。これら要件を満足することにより、サイドウォール部2の薄肉化により軽量化及び転がり抵抗の低減を図りつつ、耐外傷性及び耐久性を改善することができる。
【0026】
下式(1)で表されるリベット比について、外側カーカス層4Bのリベット比は内側カーカス層4Aのリベット比の60%〜85%であると良い。
R=C×N/50 ・・・(1)
但し、R:リベット比
C:コード径(mm)
N:幅50mm当たりのコード打ち込み本数(本/50mm)
【0027】
アラミド繊維コード11Bからなる外側カーカス層4Bのリベット比をポリエステル繊維コード11Aからなる内側カーカス層4Aのリベット比よりも小さくし、外側カーカス層4Bを被覆するコートゴムを十分に確保することにより、ビードフィラー6とそれに接する外側カーカス層4Bとのセパレーションを防止し、空気入りタイヤの耐久性を改善することができる。ここで、外側カーカス層4Bのリベット比が内側カーカス層4Aのリベット比の60%よりも小さいとアラミド繊維コード11Bの間隔が開き過ぎて耐外傷性が低下し、逆に85%よりも大きいとビードフィラー6と外側カーカス層4Bとの間に生じるせん断歪みが増大し、空気入りタイヤの耐久性の改善効果が低下する。
【0028】
また、下式(2)で表される撚り係数について、アラミド繊維コード11Bの撚り係数はポリエステル繊維コード11Aの撚り係数よりも大きいものであると良い。
K=T√D ・・・(2)
但し、K:撚り係数
T:コードの撚り数(回/10cm)
D:コードの総繊度(dtex)
【0029】
このようにアラミド繊維コード11Bの撚り係数をポリエステル繊維コード11Aの撚り係数よりも大きくすることにより、外側カーカス層4Bを構成するアラミド繊維コード11Bの耐屈曲疲労性を改善し、空気入りタイヤの耐久性を更に高めることができる。なお、ポリエステル繊維コード11Aの総繊度は3000dtex〜40000dtexの範囲に設定し、アラミド繊維コード11Bの総繊度は1500dtex〜2600dtexの範囲に設定することが望ましい。また、ポリエステル繊維コード11Aの撚り係数は2200〜2400の範囲に設定し、アラミド繊維コード11Bの撚り係数は2100〜2700の範囲に設定することが望ましい。総繊度及び撚り係数として、上記のような範囲を選択することにより、耐外傷性及び耐久性を良好なものとすることができる。
【0030】
また、外側カーカス層4Bにおいてアラミド繊維コード11Bを被覆するコートゴムの貯蔵弾性率は内側カーカス層4Aにおいてポリエステル繊維コード11Aを被覆するコートゴムの貯蔵弾性率よりも大きくすると良い。このようにアラミド繊維コード11Bを被覆するコートゴムの貯蔵弾性率を相対的に高くすることにより、タイヤ転動中にビードフィラー6とそれに接する外側カーカス層4Bとの間に生じるせん断歪みが低減されるので、ビードフィラー6と外側カーカス層4Bとのセパレーションを防止し、空気入りタイヤの耐久性を更に改善することができる。なお、アラミド繊維コード11Bを被覆するコートゴムの貯蔵弾性率及びポリエステル繊維コード11Aを被覆するコートゴムの貯蔵弾性率は5.0MPa〜8.5MPaの範囲から選択すれば良い。
【0031】
上記空気入りタイヤにおいて、タイヤ断面高さSHは120mm以上、より好ましくは、120mm〜200mmであると良い。このような寸法要件を満足する空気入りタイヤはサイドウォール部2の露出面積が広く外傷を受け易いため、サイドウォール部2を薄肉化するにあたって上記カーカス構造を適用した場合、耐外傷性及び耐久性について顕著な改善効果を得ることができる。
【実施例】
【0032】
タイヤサイズ255/55R18で、内側カーカス層及び外側カーカス層を含む2層のカーカス層を備えた空気入りタイヤ(断面高さSH=137mm)において、サイドウォール部のタイヤ最大幅位置でのゴム厚さt、各カーカス層のカーカスコードの材質、太さ、打ち込み本数、撚り係数、各カーカス層の巻き上げ高さha,hb、各カーカス層のコートゴムの貯蔵弾性率、内側カーカス層のリベット比Raに対する外側カーカス層のリベット比Rbの比率(Rb/Ra×100%)を表1及び表2のように設定した従来例、比較例1〜7及び実施例1〜6のタイヤを製作した。
【0033】
従来例のタイヤはサイドゴム厚さtを基準となる3.0mmに設定したものであるが、それ以外のタイヤはサイドゴム厚さtを半減させて1.5mmとしたものである。また、従来例、比較例1〜3,5〜7及び実施例1〜6のタイヤは内側カーカス層及び外側カーカス層がビードコアの廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げられた所謂2−0プライロック構造を有するものであるが、比較例4のタイヤは内側カーカス層がビードコアの廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げられる一方で外側カーカス層の端部が内側カーカス層の巻き上げ部の外側に配置された所謂1−1プライロック構造を有するものである。また、ポリエステル繊維コードとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維コードを使用した。
【0034】
リベット比については、原則として、内側カーカス層のリベット比Raに対する外側カーカス層のリベット比Rbの比率(Rb/Ra×100%)を表示しているが、実施例1に対してカーカス層を内外で入れ替えた例である比較例6については、理解を容易にするために、外側カーカス層のリベット比Rbに対する内側カーカス層のリベット比Raの比率(Ra/Rb×100%)を表示している。
【0035】
これら試験タイヤについて、下記の評価方法により、タイヤ質量、転がり抵抗、耐外傷性、耐久性を評価し、その結果を表1及び表2に併せて示した。
【0036】
タイヤ質量:
各試験タイヤの質量を計測した。評価結果は、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が小さいほど軽量であることを意味する。
【0037】
転がり抵抗:
ISO28580に基づく試験法に準拠し、各試験タイヤをリムサイズ18×8Jのホイールに組み付けて空気圧を290kPaに設定し、直径1707mmの試験ドラムを用いたフォース法により、荷重7.5kN、速度80km/hの条件にて転がり抵抗を測定した。評価結果は、測定値の逆数を用い、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど転がり抵抗が小さいことを意味する。
【0038】
耐外傷性:
各試験タイヤをリムサイズ18×8Jのホイールに組み付けて車両に装着し、空気圧を200kPaに設定し、速度10km/hにて高さ15cmの縁石に30°の角度で乗り上げる試験を実施し、これを5回繰り返し、サイドウォール部で損傷を受けたカーカスコードの本数を数えた。評価結果は、測定値の逆数を用い、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど耐外傷性が優れていることを意味する。
【0039】
耐久性:
各試験タイヤをリムサイズ18×8Jのホイールに組み付け、空気圧を230kPaに設定し、JIS−D4230の耐久性能試験に準拠し、表面が平滑な鋼製で直径1707mmのドラムを備えたドラム試験機を用い、周辺温度を38±3℃に制御し、走行速度を81km/hとし、負荷荷重をJATMA規定の最大荷重の85%から4時間ごとに最大荷重の15%ずつ増加させながらタイヤが破壊するまでの走行距離を測定した。但し、最終荷重は最大荷重の280%とし、その荷重条件のまま故障を生じるまで走行を続けた。評価結果は、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど荷重耐久性が優れていることを意味する。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
表1から判るように、比較例1のタイヤは、基準となる従来例との対比において、サイドゴム厚さtが半減したものであり、質量及び転がり抵抗の点では有利であるが、耐外傷性が著しく悪化していた。比較例2のタイヤは、2層のカーカス層にポリエステル繊維コードを使用し、内側カーカス層のコード打ち込み本数を外側カーカス層のコード打ち込み本数よりも多くしたものであるが、比較例1よりも耐外傷性が悪化していた。
【0043】
比較例3のタイヤは、内側カーカス層のポリエステル繊維コードと同じ繊度のアラミド繊維コードを外側カーカス層に用いたものである。この場合、耐外傷性が改善されたものの、アラミド繊維コードが太過ぎるため、荷重を負荷した際にビード部の曲げ変形による歪みが大きくなり、従来例よりも荷重耐久性が悪化していた。
【0044】
比較例4のタイヤは、1−1プライロック構造であり、アラミド繊維コードからなる外側カーカス層の端部が内側カーカス層の巻き上げ部の外側に配置されているため、アラミド繊維コードがタイヤ転動時に最も大きな曲げ変形を受ける結果、耐久性が著しく低下していた。比較例5のタイヤは、アラミド繊維コードの繊度がポリエステル繊維コードの繊度の30%であるため、耐外傷性が従来例よりも劣っていた。
【0045】
比較例6のタイヤは、内側カーカス層にアラミド繊維コードを使用し、外側カーカス層にポリエステル繊維コードを使用しているため、耐外傷性が従来例よりも悪化していた。また、アラミド繊維コードからなる内側カーカス層の巻き上げ部がタイヤ外側に配置されるため、その部分に大きな変形を受けた結果、耐久性も悪化していた。
【0046】
比較例7のタイヤは、アラミド繊維コードからなる外側カーカス層の巻き上げ高さHbがポリエステル繊維コードからなる内側カーカス層の巻き上げ高さHaよりも高いため、内側カーカス層の巻き上げ端末で屈曲が生じる結果、耐久性が悪化していた。
【0047】
これに対して、表2から判るように、実施例1,2のタイヤは、外側カーカス層にアラミド繊維コードを用いることにより、耐外傷性が大幅に向上し、しかも内側カーカス層のポリエステル繊維コードよりも繊度が小さいアラミド繊維コードを使用しているため、曲げ変形時の歪みが低減されて耐久性が改善されていた。
【0048】
実施例3,4は実施例1に対してリベット比を変更したものである。外側カーカス層のリベット比を内側カーカス層のリベット比と同水準にした場合、コード間隔が狭くなるため、外側カーカス層とビードフィラーとの間のせん断変形に対する接着抵抗が低下し、耐久性が低下していた。一方、外側カーカス層のリベット比を内側カーカス層のリベット比に対して極端に小さくした場合、耐外傷性が低下していた。これら結果も踏まえて、外側カーカス層のリベット比は内側カーカス層のリベット比の60%〜85%の範囲にあることが好ましい。
【0049】
実施例5のタイヤは、アラミド繊維コードの撚り係数をポリエステル繊維コードの撚り係数よりも大きくしたものであるが、この場合、耐外傷性を損なうことなく耐久性を更に向上することができた。また、実施例6のタイヤは、アラミド繊維コードを被覆するコートゴムの貯蔵弾性率をポリエステル繊維コードを被覆するコートゴムの貯蔵弾性率よりも大きくしたものであるが、この場合、耐久性が更に向上することができた。