【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
実施例1における車両用補機の駆動装置の構成を、[全体システム構成]、[モータ駆動機構とローラ対選択構成]に分けて説明する。
【0011】
[全体システム構成]
図1は、実施例1の車両用補機の駆動装置を示す。以下、
図1に基づき、全体システム構成を説明する。
【0012】
実施例1の車両用補機の駆動装置は、ハイブリッド車に適用され、
図1に示すように、エンジン1(第1駆動源)と、モータ/ジェネレータ2(第2駆動源)と、コンプレッサ3(補機)と、が搭載されている。そして、駆動伝達要素であるローラとして、エンジンローラ4と、モータ/ジェネレータローラ5と、コンプレッサローラ6と、を備える。駆動伝達パターンを選択するアイドラローラとして、第1アイドラローラ7と、第2アイドラローラ8と、第3アイドラローラ9と、を備える。さらに、駆動伝達パターンを選択するとき、各アイドラローラ7,8,9を径方向に移動させるローラ対選択機構10と、を備えている。
【0013】
前記コンプレッサ3は、車室内の空調を行うエアコンシステムにおいて、熱媒体を圧縮するものであり、エンジン1とモータ/ジェネレータ2のうち、どちらかの駆動源により駆動される。
【0014】
前記エンジンローラ4は、エンジン1のクランク軸11(回転軸)に連結されている。前記モータ/ジェネレータローラ5は、モータ/ジェネレータ2のモータ軸12(回転軸)に連結されている。前記コンプレッサローラ6は、コンプレッサ3のコンプレッサ軸13(回転軸)に連結されている。
これらのローラ4,5,6は、
図1に示すように、直径を同一径とし、円環状のキャリアケース14に対し回転可能に両端支持されている。そして、ローラ対選択機構10に設けられたセレクター軸15(中心回転軸)を中心軸線Oとする円周上に、等間隔(120°間隔)で配置されている。各ローラ4,5,6のうち、隣接する2つのローラ間に形成される周方向隙間は、アイドラローラ7,8,9の直径よりも少し小さい寸法としている。
【0015】
前記第1アイドラローラ7は、エンジンローラ4とモータ/ジェネレータローラ5の間に形成された周方向隙間に配置されている。前記第2アイドラローラ8は、エンジンローラ4とコンプレッサローラ6の間に形成された周方向隙間に配置されている。前記第3アイドラローラ9は、モータ/ジェネレータローラ5とコンプレッサローラ6の間に形成された周方向隙間に配置されている。
これらのアイドラローラ7,8,9は、
図1に示すように、直径を同一径とし、周方向隙間のそれぞれにおいて、キャリアケース14に開口した第1長穴14a,第2長穴14b,第3長穴14cに沿って径方向移動可能に配置されている。
【0016】
前記ローラ対選択機構10は、アイドラローラをローラ接触方向に移動させることで、3つのローラ4,5,6の中からアイドラローラ7,8,9のうち、いずれか一つあるいは二つを介在させて動力を伝達するローラ対を選択する機構である。
【0017】
[モータ駆動機構とローラ対選択構成]
図2は、実施例1の車両用補機の駆動装置においてローラ対選択機構の凸カムによるローラ対の選択切り替えを示し、
図3は、凹カムによるローラ対の選択切り替えを示す。なお、
図2では、モータ駆動機構16を説明するために、エンジンローラ4とモータ/ジェネレータローラ5とを離して配置していると共に、コンプレッサローラ6の図示を省略している。
図3では、同様に、モータ/ジェネレータローラ5とコンプレッサローラ6とを離して配置している。以下、
図1〜
図3に基づき、モータ駆動機構16とローラ対選択構成を説明する。
【0018】
前記モータ駆動機構16は、モータ軸12からセレクター軸15へモータ/ジェネレータ2の回転駆動を伝達する機構である。このモータ駆動機構16は、第1スプロケット16a(第1伝達部材)と、第2スプロケット16b(第2伝達部材)と、チェーンベルト16c(回転駆動伝達部材)と、ワンウェイクラッチ16dと、を備えている。
【0019】
前記第1スプロケット16aは、
図2と
図3に示すように、モータ/ジェネレータ2とモータ/ジェネレータローラ5との間に配置され、モータ軸12に連結されている。前記第2スプロケット16bは、
図2と
図3に示すように、セレクター軸15に連結されている。前記チェーンベルト16cは、
図2と
図3に示すように、第1スプロケット16aと第2スプロケット16bに掛け渡されている。すなわち、第1スプロケット16aの回転駆動を第2スプロケット16bへ伝達する。
【0020】
前記ワンウェイクラッチ16dは、
図2と
図3に示すように、モータ軸12と第1スプロケット16aとの間に介装され、モータ/ジェネレータ2からセレクター軸15への回転駆動の伝達を機械的に断接するクラッチである。このワンウェイクラッチ16dは、モータ/ジェネレータ2の回転方向により、機械的に断接される。例えば、モータ/ジェネレータ2が右方向(空転方向)に回転するとき、ワンウェイクラッチ16dは空転(解放)する。また、モータ/ジェネレータ2が左方向(係合方向)に回転するとき、ワンウェイクラッチ16dは係合(締結)する。これにより、ワンウェイクラッチ16dは、モータ/ジェネレータ2からセレクター軸15への回転駆動の伝達を機械的に断接する。
ここで、モータ/ジェネレータ2の回転方向や回転数の制御は、
図2と
図3に示すように、モータコントローラ100(モータ制御手段)により行われる。
【0021】
前記ローラ対選択機構10は、セレクター軸15による回転運動をアイドラローラ7,8,9の径方向移動に変換する凸カム17(カム)及び凹カム18(カム)を有する。そして、凸カム17及び凹カム18は、セレクター軸15に一体に設けられ、セレクター軸15の回転により凸カム17及び凹カム18の回転角位置を変更することで、動力を伝達するローラ対を選択する構成としている。
【0022】
前記第1アイドラローラ7は、
図1に示すように、第1アイドラローラ7を回転可能に支持する第1ベアリング支持部71が、キャリアケース14に開口した第1長穴14aの内径位置から外形位置まで径方向に移動可能に設けられている。そして、第1ベアリング支持部71の内径側が凸カム17に接し、第1ベアリング支持部71の外形側が、第1スプリング72により内径方向に付勢されている。この第1アイドラローラ7は、第1長穴14aの内径位置にあるときローラ対4,5と非接触を保ち、第1長穴14aの外径位置にあるときローラ対4,5と接触する。つまり、第1アイドラローラ7は、径方向外側へ移動することでローラ接触する。
【0023】
前記第2アイドラローラ8は、
図1に示すように、第2アイドラローラ8を回転可能に支持する第2ベアリング支持部81が、キャリアケース14に開口した第2長穴14bの内径位置から外形位置まで径方向に移動可能に設けられている。そして、第2ベアリング支持部81の内径側が凸カム17に接し、第2ベアリング支持部81の外形側が、第2スプリング82により内径方向に付勢されている。この第2アイドラローラ8は、第2長穴14bの内径位置にあるときローラ対4,6と非接触を保ち、第2長穴14bの外径位置にあるときローラ対4,6と接触する。つまり、第2アイドラローラ8は、径方向外側へ移動することでローラ接触する。
【0024】
前記第3アイドラローラ9は、
図1に示すように、第3アイドラローラ9を回転可能に支持する第3ベアリング支持部91が、キャリアケース14に開口した第3長穴14cの内径位置から外形位置まで径方向に移動可能に設けられている。そして、第3ベアリング支持部91の内径側が凹カム18に接し、第3ベアリング支持部91の外形側が、第3スプリング92により内径方向に付勢されている。この第3アイドラローラ9は、第3長穴14cの外径位置にあるときローラ対5,6と非接触を保ち、第3長穴14cの内径位置にあるときローラ対5,6と接触する。つまり、第3アイドラローラ9は、径方向内側へ移動することでローラ接触する。
【0025】
前記凸カム17は、
図1に示すように、扇形状カムとされ、扇の要位置にセレクター軸15が接続され、セレクター軸15による回転運動を、第1アイドラローラ7及び第2アイドラローラ8の径方向移動に変換する。すなわち、
図2(a)に示すように、第1ベアリング支持部71の内径側に接する凸カム17のカム径が小径であり、第1アイドラローラ7が内径位置にあるとき、ローラ対4,5と非接触である。一方、
図2(b)に示すように、第1ベアリング支持部71の内径側に接する凸カム17のカム径が大径であり、第1アイドラローラ7が内径位置から外径位置へ径方向に移動すると、ローラ対4,5と接触する。同様に、第2ベアリング支持部72の内径側に接する凸カム17のカム径が小径であり、第2アイドラローラ8が内径位置にあるとき、ローラ対4,6と非接触である。一方、第2ベアリング支持部72の内径側に接する凸カム17のカム径が大径であり、第2アイドラローラ8が内径位置から外径位置へ径方向に移動すると、ローラ対4,6と接触する。なお、
図2では、上述したとおり、説明のためにエンジンローラ4とモータ/ジェネレータローラ5とを離して配置しているが、第1アイドラローラ7がエンジンローラ4に接触すると、第1アイドラローラ7がローラ対4,5と接触することになる(
図4及び
図5参照)。
【0026】
前記凹カム18は、
図1に示すように、外周部18aの周上の1箇所に凹部18bを形成した円板状カムとされ、円板の中心位置にセレクター軸15が接続され、セレクター軸15による回転運動を第3アイドラローラ9の径方向移動に変換する。すなわち、
図3(a)に示すように、第3ベアリング支持部73の内径側に接する凹カム18のカム径が大径(外周部18a)であり、第3アイドラローラ9が外径位置にあるとき、ローラ対5,6と非接触である。一方、
図3(b)に示すように、第3ベアリング支持部73の内径側に接する凹カム18のカム径が小径(凹部18b)であり、第3アイドラローラ9が外径位置から内径位置へ径方向に移動すると、ローラ対5,6と接触する。なお、
図3では、上述したとおり、説明のためにモータ/ジェネレータローラ5とコンプレッサローラ6とを離して配置しているが、第3アイドラローラ9がコンプレッサローラ6に接触すると、第3アイドラローラ9がローラ対5,6と接触することになる(
図8参照)。
【0027】
前記ローラ対選択機構10は、ローラ対の選択により、下記の4つの駆動伝達モードを達成する。
(a) 第1駆動伝達モード(
図4と
図5)
エンジンローラ4とモータ/ジェネレータローラ5に対して第1アイドラローラ7を接触させた駆動伝達パターンによるモードをいう。
(b) 第2駆動伝達モード(
図6)
エンジンローラ4とモータ/ジェネレータローラ5に対して第1アイドラローラ7を接触させると共に、エンジンローラ4とコンプレッサローラ6に対して第2アイドラローラ8を接触させた駆動伝達パターンによるモードをいう。
(c) 第3駆動伝達モード(
図7)
エンジンローラ4とコンプレッサローラ6に対して第2アイドラローラ8を接触させた駆動伝達パターンによるモードをいう。
(d) 第4駆動伝達モード(
図8)
モータ/ジェネレータローラ5とコンプレッサローラ6に対して第3アイドラローラ9を接触させた駆動伝達パターンによるモードをいう。
【0028】
次に、作用を説明する。
実施例1の車両用補機の駆動装置における作用を、[モータ/ジェネレータの回転駆動作用]、[第1駆動伝達モード作用]、[第2駆動伝達モード作用]、[第3駆動伝達モード作用]、[第4駆動伝達モード作用]に分けて説明する。
【0029】
[モータ/ジェネレータの回転駆動作用]
モータ/ジェネレータ2を右方向(空転方向)に回転させると、ワンウェイクラッチ16dは空転(解放)する。このとき、モータ/ジェネレータ2の回転駆動が、モータ/ジェネレータローラ5へ伝達される(
図8)。なお、ワンウェイクラッチ16dが空転しているので、モータ/ジェネレータ2の回転駆動は、セレクター軸15へ伝達されない(
図2、
図3)。
【0030】
反対に、モータ/ジェネレータ2を左方向(係合方向)に回転させると、ワンウェイクラッチ16dは係合(締結)する。このとき、モータ/ジェネレータ2の回転駆動が、第1スプロケット16aとチェーンベルト16cと第2スプロケット16bを介して、セレクター軸15へ伝達される(
図2、
図3)。
【0031】
上記のように、実施例1では、モータ/ジェネレータ2からコンプレッサ3へ回転駆動を伝達するとき、ワンウェイクラッチ16dが空転する空転方向へモータ/ジェネレータ2を回転させる。一方、モータ/ジェネレータ2からセレクター軸15へ回転駆動を伝達するとき、ワンウェイクラッチ16dが係合する係合方向へモータ/ジェネレータ2を回転させる構成を採用した。
すなわち、ワンウェイクラッチ16dが空転することで、モータ/ジェネレータ2とコンプレッサ3の間で駆動伝達パターンを形成すると、モータ/ジェネレータ2の回転駆動によりコンプレッサ3が駆動される(
図8)。
一方、ワンウェイクラッチ16dが係合することで、モータ/ジェネレータ2の回転駆動が、モータ駆動機構16を介してモータ軸12からセレクター軸15へ伝達されて、セレクター軸15が回転する。このとき、セレクター軸15による回転運動をアイドラローラ(第1アイドラローラ7,第2アイドラローラ8,第3アイドラローラ9)の径方向移動に変換するカム機構(凸カム17,凹カム18)によって、アイドラローラ7,8,9を径方向に移動させることで、複数のローラ(エンジンローラ4、モータ/ジェネレータローラ5、コンプレッサローラ6)の中からアイドラローラ7,8,9を介在させて動力を伝達するローラ対が選択される。つまり、モータ/ジェネレータ2の回転駆動を用いたカム機構17,18によって、複数の駆動伝達パターンの切り替え選択が行われる(
図4〜
図8)。このため、ワンウェイクラッチ16dを有するモータ駆動機構16により、セレクター軸15を回転させるためのアクチュエータが不要となる。
この結果、アクチュエータを不要としながら、複数の駆動伝達パターンの切り替え選択を行うことができる。
ここで、コンプレッサ3の駆動方向は一方向であるため、上記のようなモータ/ジェネレータ2の回転方向の違いによる上記動作が成立する。
加えて、アクチュエータが不要となるため、コストを低減することができる。
さらに、中心軸線Oとする円形領域内に各ローラ4,5,6及びアイドラローラ7,8,9がコンパクトに配置される。
【0032】
実施例1では、第1駆動源は、エンジン1であり、第2駆動源は、モータ/ジェネレータ2であり、補機は、エンジン1又はモータ/ジェネレータ2により駆動されるハイブリッド車のコンプレッサ3である構成を採用した。
ハイブリッド車の場合、エンジン1とモータ/ジェネレータ2を共に駆動するHEV走行モード、モータ/ジェネレータ2のみを駆動するEV走行モードがある。そして、EV走行モードからHEV走行モードへモード遷移する場合、モータ/ジェネレータ2をスタータモータとしてエンジン1を始動することがあるし、また、HEV走行モードでは、エンジン1の駆動力の一部を用いてモータ/ジェネレータ2により発電することがある。さらに、選択されている走行モードに応じ、コンプレッサ3の駆動源を選択する必要がある。
これに対し、実施例1では、動力を伝達するローラ対の選択機能を、補機の駆動源選択機能としてだけでなく、2つの駆動源間の動力伝達を断接するクラッチ機能として用いることで、ハイブリッド車において要求される様々な駆動伝達パターンの形成機能に応えられる。
【0033】
実施例1では、ローラ対選択機構10として、セレクター軸15による回転運動を第1アイドラローラ7及び第2アイドラローラ8の径方向移動に変換する凸カム17と、セレクター軸15による回転運動を第3アイドラローラ9の径方向移動に変換する凹カム18と、を有する構成を採用した。
この構成により、セレクター軸15による回転角位置を制御し、凸カム17及び凹カム18により各アイドラローラ7,8,9の径方向規定位置を変更するだけで、4つの駆動伝達モードに切り替えられる。
【0034】
[第1駆動伝達モード作用]
エンジンローラ4とモータ/ジェネレータローラ5に対して第1アイドラローラ7を接触させた駆動伝達パターンによる第1駆動伝達モードでは、
図4に示すエンジン始動パターンと、
図5に示すエンジン発電パターンと、が実現される。以下、2つのパターンについて説明する。
【0035】
(エンジン始動パターン:
図4)
エンジン始動パターンでは、
駆動源:モータ/ジェネレータ2
被駆動:エンジン1
となる。
このエンジン始動パターンは、モータ/ジェネレータ2の回転駆動によりセレクター軸15を、
図4に示すように、第1アイドラローラ7が、エンジンローラ4とモータ/ジェネレータローラ5に接触する位置に回転させる。このとき、第2アイドラローラ8及び第3アイドラローラ9は、ローラ非接触位置にある。
このため、エンジンローラ4とモータ/ジェネレータローラ5と第1アイドラローラ7が、駆動伝達に関与するローラになり、3つのローラ4,5,7間での駆動伝達パターンが得られる。
したがって、モータ/ジェネレータ2→モータ軸12→モータ/ジェネレータローラ5→第1アイドラローラ7→エンジンローラ4→クランク軸11→エンジン1へと流れるトルクフローによる駆動伝達パターンが形成される。この結果、モータ/ジェネレータ2を駆動源として、クランク軸11を回転させることで、エンジン1の始動を行うことができる。
【0036】
(エンジン発電パターン:
図5)
エンジン発電パターンでは、
駆動源:エンジン1
被駆動:モータ/ジェネレータ2
となる。
エンジン発電パターンは、エンジン始動パターンと同様に、モータ/ジェネレータ2の回転駆動によりセレクター軸15を、
図5に示すように、第1アイドラローラ7が、エンジンローラ4とモータ/ジェネレータローラ5に接触する位置に回転させる。このとき、第2アイドラローラ8及び第3アイドラローラ9は、ローラ非接触位置にある。
このため、エンジン始動パターンと同様に、エンジンローラ4とモータ/ジェネレータローラ5と第1アイドラローラ7が、駆動伝達に関与するローラになり、3つのローラ4,5,7間での駆動伝達パターンが得られる。
したがって、エンジン1→クランク軸11→エンジンローラ4→第1アイドラローラ7→モータ/ジェネレータローラ5→モータ軸12→モータ/ジェネレータ2へと流れるトルクフローによる駆動伝達パターンが形成される。この結果、エンジン1を駆動源として、モータ軸12を回転させることで、モータ/ジェネレータ2により発電を行うことができる。
【0037】
[第2駆動伝達モード作用]
エンジンローラ4とモータ/ジェネレータローラ5に対して第1アイドラローラ7を接触させると共に、エンジンローラ4とコンプレッサローラ6に対して第2アイドラローラ8を接触させた駆動伝達パターンによる第2駆動伝達モードでは、
図6に示すエンジン1による発電&エアコン駆動パターンが実現される。
エンジン1による発電&エアコン駆動パターンでは、
駆動源:エンジン1
被駆動:モータ/ジェネレータ2及びコンプレッサ3
である。
【0038】
エンジン1による発電&エアコン駆動パターンは、モータ/ジェネレータ2の回転駆動によりセレクター軸15を、
図6に示すように、第1アイドラローラ7が、エンジンローラ4とモータ/ジェネレータローラ5に接触すると共に、第2アイドラローラ8が、エンジンローラ4とコンプレッサローラ6に接触する位置に回転させる。このとき、第3アイドラローラ9のみは、ローラ非接触位置にある。
このため、エンジンローラ4とモータ/ジェネレータローラ5とコンプレッサローラ6と第1アイドラローラ7と第2アイドラローラ8が、駆動伝達に関与するローラになり、5つのローラ4,5,6,7,8間での駆動伝達パターンが得られる。
したがって、エンジン1→クランク軸11→エンジンローラ4→第1アイドラローラ7→モータ/ジェネレータローラ5→モータ軸12→モータ/ジェネレータ2へと流れるトルクフローによる駆動伝達パターンが形成される。加えて、エンジン1→クランク軸11→エンジンローラ4→第2アイドラローラ8→コンプレッサローラ6→コンプレッサ軸13→コンプレッサ3へと流れるトルクフローによる駆動伝達パターンが形成される。この結果、エンジン1を駆動源として、モータ軸12を回転させることで、モータ/ジェネレータ2により発電を行うことができると共に、コンプレッサ軸13を回転させることで、エアコンのコンプレッサ駆動ができる。
【0039】
[第3駆動伝達モード作用]
エンジンローラ4とコンプレッサローラ6に対して第2アイドラローラ8を接触させた駆動伝達パターンによる第3駆動伝達モードでは、
図7に示すエンジンエアコン駆動パターンが実現される。
このエンジンエアコン駆動パターンでは、
駆動源:エンジン1
被駆動:コンプレッサ3
である。
【0040】
エンジンエアコン駆動パターンは、モータ/ジェネレータ2の回転駆動によりセレクター軸15を、
図7に示すように、第2アイドラローラ8が、エンジンローラ4とコンプレッサローラ6に接触する位置に回転させる。このとき、第1アイドラローラ7及び第3アイドラローラ9は、ローラ非接触位置にある。
このため、エンジンローラ4とコンプレッサローラ6と第2アイドラローラ8が、駆動伝達に関与するローラになり、3つのローラ4,6,8間での駆動伝達パターンが得られる。
したがって、エンジン1→クランク軸11→エンジンローラ4→第2アイドラローラ8→コンプレッサローラ6→コンプレッサ軸13→コンプレッサ3へと流れるトルクフローによる駆動伝達パターンが形成される。この結果、エンジン1を駆動源として、コンプレッサ軸13を回転させることで、エアコンのコンプレッサ駆動ができる。
【0041】
[第4駆動伝達モード作用]
モータ/ジェネレータローラ5とコンプレッサローラ6に対して第3アイドラローラ9を接触させた駆動伝達パターンによる第4駆動伝達モードでは、
図8に示すモータエアコン駆動パターンが実現される。
このモータエアコン駆動パターンでは、
駆動源:モータ/ジェネレータ2
被駆動:コンプレッサ3
である。
【0042】
モータエアコン駆動パターンは、モータ/ジェネレータ2の回転駆動によりセレクター軸15を、
図8に示すように、第3アイドラローラ9が、モータ/ジェネレータローラ5とコンプレッサローラ6に接触する位置に回転させる。このとき、第1アイドラローラ7及び第2アイドラローラ8は、ローラ非接触位置にある。
このため、モータ/ジェネレータローラ5とコンプレッサローラ6と第3アイドラローラ9が、駆動伝達に関与するローラになり、3つのローラ5,6,9間での駆動伝達パターンが得られる。
したがって、モータ/ジェネレータ2→モータ軸12→モータ/ジェネレータローラ5→第3アイドラローラ9→コンプレッサローラ6→コンプレッサ軸13→コンプレッサ3へと流れるトルクフローによる駆動伝達パターンが形成される。この結果、モータ/ジェネレータ2を駆動源として、コンプレッサ軸13を回転させることで、エアコンのコンプレッサ駆動ができる。
【0043】
なお、モータエアコン駆動パターンにおいて、セレクター軸15の回転により、第3アイドラローラ9が凹カム18の凹部18bに落ち込んで両ローラ5,6に接触する前後であって、かつ、凹部18bに落ち込まない角度回転位置に保持した場合、ニュートラルモードが実現される。つまり、ニュートラルモードでは、3つのアイドラローラ7,8,9の何れもが、3つのローラ4,5,6の何れにも接触することがない。
【0044】
次に、効果を説明する。
実施例1の車両用補機の駆動装置にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0045】
(1) 第1駆動源(エンジン1)と第1駆動源(エンジン1)とは別の第2駆動源としてのモータ(モータ/ジェネレータ2)のうち、どちらかの駆動源により駆動される少なくとも一つの補機(コンプレッサ3)を備えた車両用補機の駆動装置において、
中心軸線Oの位置に配置した中心回転軸(セレクター軸15)の円周上の位置に周方向隙間を形成して複数配置し、第1駆動源(エンジン1)に有する回転軸(クランク軸11)と、モータ(モータ/ジェネレータ2)に有する回転軸(モータ軸12)と、補機(コンプレッサ3)に有する回転軸(コンプレッサ軸13)と、のそれぞれに連結するローラ(エンジンローラ4,モータ/ジェネレータローラ5,コンプレッサローラ6)と、
周方向隙間に径方向移動可能に配置したアイドラローラ(第1アイドラローラ7,第2アイドラローラ8,第3アイドラローラ9)と、
中心回転軸(セレクター軸15)による回転運動をアイドラローラ(第1アイドラローラ7,第2アイドラローラ8,第3アイドラローラ9)の径方向移動に変換するカム機構(凸カム17,凹カム18)により、複数のローラ(エンジンローラ4,モータ/ジェネレータローラ5,コンプレッサローラ6)の中からアイドラローラ(第1アイドラローラ7,第2アイドラローラ8,第3アイドラローラ9)を介在させて動力を伝達するローラ対を選択するローラ対選択機構10と、
モータ(モータ/ジェネレータ2)の回転軸(モータ軸12)から中心回転軸(セレクター軸15)へモータ(モータ/ジェネレータ2)の回転駆動を伝達すると共に、モータ(モータ/ジェネレータ2)の回転軸(モータ軸12)とモータ(モータ/ジェネレータ2)の回転軸(モータ軸12)に連結される第1伝達部材(第1スプロケット部材16a)との間に介装されるワンウェイクラッチ16dを有するモータ駆動機構16と、
モータ(モータ/ジェネレータ2)から補機(コンプレッサ3)へ回転駆動を伝達するとき、ワンウェイクラッチ16dが空転する空転方向へモータ(モータ/ジェネレータ2)を回転させ、モータ(モータ/ジェネレータ2)から中心回転軸(セレクター軸15)へ回転駆動を伝達するとき、ワンウェイクラッチ16dが係合する係合方向へモータ(モータ/ジェネレータ2)を回転させるモータ制御手段(モータコントローラ100)と、
を有する(
図1〜
図3)。
このためアクチュエータを不要としながら、複数の駆動伝達パターンの切り替え選択を行うことができる。
【0046】
(2) 第1駆動源は、エンジン1であり、
第2駆動源は、モータ/ジェネレータ2であり、
補機は、エンジン1又はモータ/ジェネレータ2により駆動されるハイブリッド車のコンプレッサ3である(
図1)。
このため、(1)の効果に加え、動力を伝達するローラ対の選択機能を、コンプレッサ3の駆動源選択機能としてだけでなく、エンジン1とモータ/ジェネレータ2間の動力伝達を断接するクラッチ機能として用いることで、ハイブリッド車において要求される様々な駆動伝達パターンの形成機能に応えることができる。
【0047】
(3) ローラは、エンジン1の回転軸(クランク軸11)に連結されたエンジンローラ4と、モータ/ジェネレータ2の回転軸(モータ軸12)に連結されたモータ/ジェネレータローラ5と、コンプレッサ3の回転軸(コンプレッサ軸13)に連結されたコンプレッサローラ6であり、
アイドラローラは、エンジンローラ4とモータ/ジェネレータローラ5の間に配置された第1アイドラローラ7と、エンジンローラ4とコンプレッサローラ6の間に配置された第2アイドラローラ8と、モータ/ジェネレータローラ5とコンプレッサローラ6の間に配置された第3アイドラローラ9であり、
ローラ対選択機構10は、中心回転軸(セレクター軸15)による回転運動を第1アイドラローラ7及び第2アイドラローラ8の径方向移動に変換する凸カム17と、中心回転軸(セレクター軸15)による回転運動を第3アイドラローラ9の径方向移動に変換する凹カム18と、を有する(
図1〜
図3)。
このため、(2)の効果に加え、セレクター軸15による回転角位置を制御し、凸カム17及び凹カム18により各アイドラローラ7,8,9の径方向規定位置を変更するだけで、4つの駆動伝達モードに切り替えることができる。
【0048】
(4) ローラ対選択機構10は、エンジンローラ4とモータ/ジェネレータローラ5に対して第1アイドラローラ7を接触させた駆動伝達パターンによる第1駆動伝達モードを有する(
図4,
図5)。
このため、(3)の効果に加え、第1駆動伝達モードを選択することで、モータ/ジェネレータ2によるエンジン始動を行うことができると共に、エンジン1による発電を行うことができる。
【0049】
(5) ローラ対選択機構10は、エンジンローラ4とモータ/ジェネレータローラ5に対して第1アイドラローラ7を接触させると共に、エンジンローラ4とコンプレッサローラ6に対して第2アイドラローラ8を接触させた駆動伝達パターンによる第2駆動伝達モードを有する(
図6)。
このため、(3)又は(4)の効果に加え、第2駆動伝達モードを選択することで、エンジン1により発電とエアコン駆動を同時に行うことができる。
【0050】
(6) ローラ対選択機構10は、エンジンローラ4とコンプレッサローラ6に対して第2アイドラローラ8を接触させた駆動伝達パターンによる第3駆動伝達モードを有する(
図7)。
このため、(3)〜(5)の効果に加え、第3駆動伝達モードを選択することで、エンジン1によるエアコン駆動を行うことができる。
【0051】
(7) ローラ対選択機構10は、モータ/ジェネレータローラ5とコンプレッサローラ6に対して第3アイドラローラ9を接触させた駆動伝達パターンによる第4駆動伝達モードを有する(
図8)。
このため、(3)〜(6)の効果に加え、第4駆動伝達モードを選択することで、モータ/ジェネレータ2によるエアコン駆動を行うことができる。
【実施例2】
【0052】
実施例2は、メインモータとサブモータが搭載された電気自動車において補機の駆動源を選択する例である。
【0053】
まず、構成を説明する。
実施例2における車両用補機の駆動装置の構成を、[全体システム構成]、[モータ駆動機構]に分けて説明する。
【0054】
[全体システム構成]
実施例2の車両用補機の駆動装置は、電気自動車に適用され、
図9に示すように、メインモータ21(第1駆動源)と、サブモータ22(第2駆動源)と、コンプレッサ23(補機)と、が搭載されている。そして、駆動伝達要素であるローラとして、メインモータローラ24と、サブモータローラ25と、コンプレッサローラ26と、を備える。駆動伝達パターンを選択するアイドラローラとして、第1アイドラローラ28と、第2アイドラローラ29と、を備える。さらに、駆動伝達パターンを選択するとき、アイドラローラ28,29を径方向に移動させるローラ対選択機構210と、を備えている。
【0055】
前記コンプレッサ23は、車室内の空調を行うエアコンシステムにおいて、熱媒体を圧縮するものであり、メインモータ21とサブモータ22のうち、どちらかの駆動源により駆動される。
【0056】
前記メインモータローラ24は、メインモータ21のモータ軸211(回転軸)に連結されている。前記サブモータローラ25は、サブモータ22のモータ軸212(回転軸)に連結されている。前記コンプレッサローラ26は、コンプレッサ23のコンプレッサ軸213(回転軸)に連結されている。
これらのローラ24,25,26は、
図9に示すように、直径を同一径とし、円環状のキャリアケース214に対し回転可能に両端支持されている。そして、ローラ対選択機構210に設けられたセレクター軸215(中心回転軸)を中心軸線Oとする円周上に、等間隔(120°間隔)で配置されている。各ローラ24,25,26のうち、隣接する2つのローラ間に形成される周方向隙間は、アイドラローラ28,29の直径よりも少し小さい寸法としている。
【0057】
前記第1アイドラローラ28は、メインモータローラ24とコンプレッサローラ26の間に形成された周方向隙間に配置されている。前記第2アイドラローラ29は、サブモータローラ25とコンプレッサローラ26の間に形成された周方向隙間に配置されている。
これらのアイドラローラ28,29は、
図9に示すように、直径を同一径とし、周方向隙間のそれぞれにおいて、キャリアケース214に開口した第1長穴214b,第2長穴214bに沿って径方向移動可能に配置されている。
【0058】
前記ローラ対選択機構210は、アイドラローラをローラ接触方向に移動させることで、3つのローラ24,25,26の中からアイドラローラ28,29のいずれかを介在させて動力を伝達するローラ対を選択する機構である。このローラ対選択機構210は、セレクター軸215による回転運動を、第1アイドラローラ28の径方向移動に変換する凸カム217(カム)と、第2アイドラローラ29の径方向移動に変換する凹カム218(カム)を有する。そして、凸カム217及び凹カム218は、セレクター軸215に一体に設けられ、セレクター軸215の回転により凸カム217及び凹カム218の回転角位置を変更することで、実施例1と同様に、動力を伝達するローラ対を選択する構成としている。
【0059】
前記凸カム217は、
図9に示すように、一方向に突出する形状のカムとされ、カム基部位置にセレクター軸215が接続され、セレクター軸215による回転運動を、第1アイドラローラ28の径方向移動に変換する。
【0060】
前記凹カム218は、
図9に示すように、外周部218aの周上の1箇所に凹部218bを形成した円板状カムとされ、円板の中心位置にセレクター軸215が接続され、セレクター軸215による回転運動を第2アイドラローラ29の径方向移動に変換する。
【0061】
前記ローラ対選択機構210は、ローラ対の選択により、下記の2つの駆動伝達モードを達成する。
(a) 第1駆動伝達モード(
図9)
メインモータローラ24とコンプレッサローラ26に対して第1アイドラローラ28を接触させた駆動伝達パターンによるモードをいう。
(b) 第2駆動伝達モード(
図11)
サブモータローラ25とコンプレッサローラ26に対して第2アイドラローラ29を接触させた駆動伝達パターンによるモードをいう。
【0062】
[モータ駆動機構]
実施例2において、モータ駆動機構216は、サブモータ22のモータ軸212(回転軸)からセレクター軸215へサブモータ22の回転駆動を伝達する機構である。このモータ駆動機構216は、第1スプロケット216a(第1伝達部材)と、第2スプロケット216b(第2伝達部材)と、チェーンベルト216c(回転駆動伝達部材)と、ワンウェイクラッチ216dと、を備えている。
【0063】
前記第1スプロケット216aは、
図10に示すように、サブモータ22とサブモータローラ25との間に配置され、サブモータ22のモータ軸212に連結されている。前記第2スプロケット216bは、
図10に示すように、セレクター軸215に連結されている。前記チェーンベルト216cは、
図10に示すように、第1スプロケット216aと第2スプロケット216bに掛け渡されている。すなわち、第1スプロケット216aの回転駆動を第2スプロケット216bへ伝達する。
【0064】
前記ワンウェイクラッチ216dは、
図10に示すように、サブモータ22のモータ軸212と第1スプロケット216aとの間に介装され、サブモータ22からセレクター軸215への回転駆動の伝達を機械的に断接するクラッチである。このワンウェイクラッチ216dは、サブモータ22の回転方向により、機械的に断接される。例えば、サブモータ22が右方向(空転方向)に回転するとき、ワンウェイクラッチ16dは空転(解放)する。また、サブモータ22が左方向(係合方向)に回転するとき、ワンウェイクラッチ216dは係合(締結)する。これにより、ワンウェイクラッチ216dは、サブモータ22からセレクター軸215への回転駆動の伝達を機械的に断接する。
ここで、サブモータ22の回転方向や回転数の制御は、
図10に示すように、サブモータコントローラ200(モータ制御手段)により行われる。
【0065】
次に、作用を説明する。
実施例2の車両用補機の駆動装置における作用を、[第1駆動伝達モード作用]、[第2駆動伝達モード作用]に分けて説明する。
【0066】
[第1駆動伝達モード作用]
メインモータローラ24とコンプレッサローラ26に対して第1アイドラローラ28を接触させた駆動伝達パターンによる第1駆動伝達モードでは、
図9に示すメインモータエアコン駆動パターンが実現される。
このメインモータエアコン駆動パターンでは、
駆動源:メインモータ21
被駆動:コンプレッサ23
である。
【0067】
メインモータエアコン駆動パターンは、サブモータ22の回転駆動によりセレクター軸215を、
図9に示すように、第1アイドラローラ28が、メインモータローラ24とコンプレッサローラ26に接触する位置に回転させる。このとき、第2アイドラローラ29は、ローラ非接触位置にある。
このため、メインモータローラ24とコンプレッサローラ26と第1アイドラローラ28が、駆動伝達に関与するローラになり、3つのローラ24,26,28間での駆動伝達パターンが得られる。
したがって、メインモータ21→モータ軸211→メインモータローラ24→第1アイドラローラ28→コンプレッサローラ26→コンプレッサ軸213→コンプレッサ23へと流れるトルクフローによる駆動伝達パターンが形成される。この結果、メインモータ21を駆動源として、コンプレッサ軸213を回転させることで、エアコンのコンプレッサ駆動ができる。
【0068】
[第2駆動伝達モード作用]
サブモータローラ25とコンプレッサローラ26に対して第2アイドラローラ29を接触させた駆動伝達パターンによる第2駆動伝達モードでは、
図11に示すサブモータエアコン駆動パターンが実現される。
このサブモータエアコン駆動パターンでは、
駆動源:サブモータ22
被駆動:コンプレッサ23
である。
【0069】
サブモータエアコン駆動パターンは、サブモータ22の回転駆動によりセレクター軸215を、
図11に示すように、第2アイドラローラ29が、サブモータローラ25とコンプレッサローラ26に接触する位置に回転させる。このとき、第1アイドラローラ28は、ローラ非接触位置にある。
このため、サブモータローラ25とコンプレッサローラ26と第2アイドラローラ29が、駆動伝達に関与するローラになり、3つのローラ25,26,29間での駆動伝達パターンが得られる。
したがって、サブモータ22→モータ軸212→サブモータローラ25→第2アイドラローラ29→コンプレッサローラ26→コンプレッサ軸213→コンプレッサ23へと流れるトルクフローによる駆動伝達パターンが形成される。この結果、サブモータ22を駆動源として、コンプレッサ軸213を回転させることで、エアコンのコンプレッサ駆動ができる。
【0070】
なお、サブモータエアコン駆動パターンにおいて、セレクター軸215の回転により、第2アイドラローラ29が凹カム218の凹部218bに落ち込んで両ローラ25,26に接触する前後であって、かつ、凹部218bに落ち込まない角度回転位置に保持した場合、ニュートラルモードが実現される。つまり、ニュートラルモードでは、2つのアイドラローラ28,29の何れもが、3つのローラ24,25,26の何れにも接触することがない。他の作用は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0071】
次に、効果を説明する。
実施例2の車両用補機の駆動装置にあっては、下記の効果を得ることができる。
【0072】
(8) 第1駆動源は、メインモータ21であり、
第2駆動源は、サブモータ22であり、
補機は、メインモータ21又はサブモータ22により駆動される電気自動車のコンプレッサ23である(
図9及び
図11)。
このため、実施例1の(1)の効果に加え、動力を伝達するローラ対の選択機能を、コンプレッサ23の駆動源選択機能として用いることで、電気自動車においてバッテリ状態や走行状況等に応じ、より効率の良い駆動源(メインモータ21又はサブモータ22)を選択することで、電力消費を抑制し、走行距離の延長を図ることができる。
【0073】
以上、本発明の車両用補機の駆動装置を実施例1,2に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0074】
実施例1,2では、駆動源や補機の回転軸に連結される複数のローラを、同径で円周上に等間隔にて配置する例を示した。しかし、複数のローラの配置としては、異径のローラであって、駆動源や補機の車載レイアウトに応じて不等間隔で、直線状や凹凸状に配置する例であっても良い。
【0075】
実施例1では、第2駆動源をモータ/ジェネレータ2とする例を示し、実施例2では、第2駆動源をサブモータ22とする例を示した。しかし、第2駆動源は、回転方向を変更することができるものであれば良い。また、実施例2では、第1駆動源をサブモータ22とし、第2駆動源をメインモータ21としても良い。この場合、モータ駆動機構216は、メインモータ21のモータ軸211(回転軸)からセレクター軸215へメインモータ21の回転駆動を伝達する機構となる。
【0076】
実施例1,2では、第2駆動源2,22が右方向(空転方向)に回転するとき、ワンウェイクラッチ16d,216dは空転(解放)する例を示し、第2駆動源2,22が左方向(係合方向)に回転するとき、ワンウェイクラッチ16d,216dは係合(締結)する例を示した。しかし、コンプレッサ3の駆動方向が実施例1,2とは逆の方向である場合には、第2駆動源2,22が左方向(空転方向)に回転するとき、ワンウェイクラッチ16d,216dは空転(解放)し、第2駆動源2,22が右方向(係合方向)に回転するとき、ワンウェイクラッチ16d,216dは係合(締結)するようにしても良い。要するに、コンプレッサ3の駆動方向に合わせて、空転方向/係合方向を設定すれば良い。
【0077】
実施例1,2では、ローラ対選択機構として、カム機構により回転運動を径方向の直線運動に変換する例を示した。しかし、ローラ対選択機構としては、リンク機構等を用いてローラ対を選択する例であっても良い。
【0078】
実施例1,2では、補機として、コンプレッサを用いる例を示した。しかし、補機としては、コンプレッサ以外の例えばウォータポンプ等を用いる例であっても良いし、一つの補機だけでなく、複数の補機を備える例であっても良い。
【0079】
実施例1,2では、第1伝達部材を第1スプロケット16a,216aとし、第2伝達部材を第2スプロケット16b,216bとし、回転駆動伝達部材をチェーンベルト16c,216cとする例を示した。しかし、第1伝達部材と第2伝達部材をプーリとし、回転駆動伝達部材をベルトとしても良い。この場合、第1伝達部材と第2伝達部材はローラであっても良い。また、第1伝達部材と第2伝達部材及び回転駆動伝達部材は、回転駆動伝達部材が第1伝達部材と第2伝達部材と接する部分に回転駆動伝達部材滑り防止のための段が設けられていても良い。この他、第1伝達部材と第2伝達部材と回転駆動伝達部材を歯車とし、これらの歯車を噛み合わせて、第1伝達部材の回転駆動を第2伝達部材へ伝達しても良い。また、第1伝達部材と第2伝達部材とを歯車としたとき、回転駆動伝達部材を省略し、第1伝達部材と第2伝達部材の歯車を噛み合わせて、第1伝達部材の回転駆動を第2伝達部材へ伝達しても良い。
要するに、ワンウェイクラッチ16d,216dが係合するとき、第1伝達部材と第2伝達部材と回転駆動伝達部材により、第2駆動源としてのモータ/ジェネレータ2又はサブモータ22の回転駆動をセレクター軸15,215へ伝達することができれば良い。
【0080】
実施例1では、本発明の車両用補機の駆動装置をハイブリッド車に適用する例を示し、実施例2では、本発明の車両用補機の駆動装置を電気自動車に適用する例を示した。しかし、本発明の車両用補機の駆動装置は、エンジン車等の他の車両に対しても適用することができる。要するに、2つの駆動源と、少なくとも一つの補機と、を備えた車両であれば適用できる。ただし、2つの駆動源のうち少なくとも1つの駆動源は、回転方向を変更することができるものとする。