(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記配列台に固定され、前記送り装置により前記セット位置から前記所定量だけスライドされた前記分割コアが突き当たる先行の前記分割コアに接触して摩擦抵抗を付与するように構成された摩擦部材をさらに有する
ことを特徴とする請求項4に記載のステータ製造装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下において、ステータ製造装置等の構成の説明の便宜上、上下左右等の方向を適宜使用する場合があるが、ステータ製造装置等の各構成の位置関係を限定するものではない。
【0011】
<ステータ製造装置の構成>
図1及び
図2を用いて本実施形態に係るステータ製造装置1の構成について説明する。ステータ製造装置1は、回転電機のステータの製造工程において、コイル21(
図1中の拡大図参照)が巻回された複数の分割コア2を環状に配列する装置である。
【0012】
図1及び
図2に示すように、ステータ製造装置1は、配列台4と、セット装置5と、送り装置6とを有する。
【0013】
配列台4は、例えば平面視形状が略正方形であるベース41と、ベース41の上部に設けられた円柱部42と、円柱部42を囲むように形成された円環状の溝43とを有する。溝43には、複数の分割コア2がスライド可能に配列される。分割コア2の個数は特に限定されるものではないが、本実施形態では12個である場合を一例として説明する(後述の
図8及び
図9参照)。溝43の外周長及び内周長は、それぞれ分割コア2の外周側(ヨーク22の外周側)の長さ及び内周側(ティース23の内周側)の長さを全個数分合計した長さよりも若干大きくなるように設定されている(後述の
図8及び
図9参照)。また、円柱部42は、ベース41の上端よりも上方に突出するように設けられている。
【0014】
なお、ベース41の平面視形状は略正方形に限定されるものではなく、例えば長方形や円形等でもよい。また、円柱部42の高さをベース41の上端以下としてもよい。
【0015】
また、配列台4は、セット位置Pよりも分割コア2のスライド方向(本実施形態では反時計回り方向)下流側に摩擦部材44を備える。
図2に示すように、摩擦部材44は、例えば曲面状の接触面44aを有し、ベース41の上面に固定されている。摩擦部材44は、送り装置6によってセット位置Pから所定量だけスライドされた分割コア2が先にスライドされた先行する分割コア2に突き当たる際、先行する分割コア2の外周面(ヨーク22の外周面)に接触面44aを接触させて摩擦抵抗を付与する。これにより、先行する分割コア2のヨーク22と後からスライドされた後続の分割コア2のヨーク22との凹凸嵌合の確実性を高めることが可能である。
【0016】
セット装置5は、溝43のセット位置Pに分割コア2をセットする装置である。なお、ここでいう「セット」とは、分割コア2を溝43に投入し、溝43内をスライド可能なように、長手方向を鉛直上下方向として自立させることをいう。また「セット位置」とは、セット装置5により溝43に対して分割コア2が投入される投入位置のことをいう。
【0017】
セット装置5は、分割コア2をセット位置P近傍に案内するシュータ51と、シュータ51の下端部を回動可能に支持する支持部材52と、シュータ51を回動させて傾斜角度を可変させるシリンダ53とを有する。シュータ51の下端部には受け止め板54が設けられており、支持部材52は受け止め板54が溝43のセット位置Pに近接するようにシュータ51の下端部を支持している。
【0018】
シリンダ53は、第1駆動装置の一例であり、その駆動源は電動、空気圧、油圧等、特に限定されるものではない。また、第1駆動装置はシリンダに限定されるものではなく、シュータ51の傾斜角度を可変できるものであれば、例えばリニアモータや回転型モータ等、シリンダ以外の駆動装置を使用してもよい。
【0019】
シュータ51は、シリンダ53により所定の傾斜角度に保持され、この状態で図示しない供給装置から分割コア2が供給される。シュータ51は、分割コア2の軸方向(回転電機の軸方向)をシュータ51の長手方向としつつ、ヨーク22を下側とする寝かせた姿勢で分割コア2を重力により下方向に滑らせる。滑り落ちた分割コア2は、受け止め板54によりシュータ51の下端で静止する。その後、シュータ51は、シリンダ53の駆動により傾斜角度を増大され、分割コア2を起き上がらせた姿勢とする。そして、シュータ51が鉛直上下方向よりもさらに配列台4側に傾斜した際に、分割コア2は重力により受け止め板54上を滑り、溝43のセット位置Pに投入される。投入された分割コア2は、ヨーク22を外周側とし、且つ、軸方向を鉛直方向とした姿勢で、溝43内に保持される。このようにして、分割コア2は自立した状態でセット位置Pにセットされる。分割コア2のセット位置Pへのセットが終了すると、シュータ51はシリンダ53の駆動により傾斜角度を減少され、初めの姿勢に戻される。以上のようにして、シュータ51は順次供給される分割コア2をセット位置Pまで案内してセットすることを繰り返す。
【0020】
なお、円柱部42がベース41の上端よりも突出することにより、分割コア2の投入時のストッパとして機能するとともに、円柱部42の外周面が分割コア2のティース23の内周面に当接することで、分割コア2の自立姿勢を保持する効果を高めている。
【0021】
なお、セット装置5は、上述のシュータ51とシリンダ53を有する構成に限定されるものではなく、例えば開閉自在なロボットハンドで分割コア2を把持して移動するロボットアーム等の他の手段を用いてもよい。
【0022】
送り装置6は、セット装置5によりセットされた分割コア2をセット位置Pから所定量だけ溝43に沿ってスライドさせる装置である。
図2に示すように、送り装置6は、セット位置P近傍で溝43内に設けられた棒部材61と、棒部材61を駆動するモータ62とを有する。
【0023】
棒部材61は、例えば円柱状であり、溝43内に立設され、溝43の方向に沿って所定量だけ往復移動可能に構成されている。この所定量は、分割コア2の周方向の幅よりも若干大きく設定されており、棒部材61により移動された分割コア2と、その後セット位置Pにセットされる後続の分割コア2とが、接触しないようになっている(後述の
図5参照)。溝43の底部には、棒部材61の移動を許容する例えば円弧状の開口43aが設けられている。
【0024】
なお、棒部材61は上記形状に限定されるものではなく、例えば角柱状や板状等でもよい。また、棒部材61は必ずしも溝43内に立設される必要はなく、例えば円柱部42の側面から外周に向けて突出した構成としてもよい。なお、棒部材61はこの例では溝43内に突出したままとしたが、必要に応じて溝43内に出没自在に設けられてもよい。
【0025】
モータ62は、配列台4に内蔵されている。モータ62は、この例では回転型のモータであり、出力軸62aに取り付けられたアーム63を介して、棒部材61を溝43の方向に沿って所定量だけ往復移動させる。
【0026】
なお、モータ62は、第2駆動装置の一例であり、その駆動源は電動、空気圧、油圧等、特に限定されるものではない。また、第2駆動装置は回転型のモータに限定されるものではなく、棒部材61を溝43の方向に沿って往復移動できるものであれば、例えばリニアモータやシリンダ等、その他の駆動装置を使用してもよい。
【0027】
棒部材61は、開口43aの周方向一方側の端部を初期位置とする。棒部材61は、モータ62の駆動により周方向他方側に向けて(本実施形態では反時計回り方向)所定量移動し、セット装置5によりセットされた分割コア2をプッシュしてセット位置Pから所定量だけ溝43に沿ってスライドさせる。分割コア2をスライドさせた棒部材61は、モータ62の上記とは逆の駆動により、周方向一方側に向けて(本実施形態では時計回り方向)所定量移動し、分割コア2のスライド前の初期位置に戻される。このようにして、棒部材61は、セット装置5により次々にセット位置Pにセットされる分割コア2を、セット位置Pから所定量だけ溝43に沿ってスライドさせることを繰り返す。
【0028】
なお、上記とは反対に、開口43aの周方向他方側の端部を初期位置とし、分割コア2を周方向一方側に向けて(時計回り方向に)スライドさせる構成としてもよい。
【0029】
分割コア2のそれぞれは、
図1中の拡大図に示すように、例えば円筒の一部を構成する形状のヨーク22と、ヨーク22から径方向内側に突出するティース23とを備えており、ティース23にコイル21が巻回されている。ティース23は、この例ではヨーク22に対し周方向(回転電機の周方向)に傾斜しており、スキューを有する構成となっている。また、ヨーク22は、周方向一方側に例えばV字突起状の凸部24を備え、周方向他方側に例えばV字溝状の凹部25を有している。複数の分割コア2は、隣接する分割コア2同士が凸部24と凹部25とを互いに凹凸嵌合させて環状に配列される。
【0030】
なお、分割コア2は上記構造に限定されるものではなく、スキュー構造や凹凸嵌合構造を有しない分割コアとしてもよい。また、分割コア2は必ずしもコイル21が巻回されている必要はなく、例えばステータ製造装置1でコイル21が巻回されていない分割コアを環状に配列した後に、空芯コイルを装着する等でもよい。
【0031】
<分割コアの配列動作>
次に、ステータ製造装置1による分割コア2の配列動作を、
図3〜
図10を用いて説明する。なお、
図3〜
図9では、分割コア2の配列動作が分かり易いように適宜構成を省略して図示している。
【0032】
図3に、セット装置5により配列台4の溝43のセット位置Pに1個目の分割コア2がセットされた状態を示す。このとき、セットされた分割コア2と棒部材61とが接触しないように棒部材61の初期位置が設定されており、分割コア2及び棒部材61の破損等が生じにくい構造となっている。この状態から、
図4に示すように、送り装置6の棒部材61がモータ62の駆動により溝43に沿って反時計回り方向に所定量だけ移動すると、セット位置Pにセットされた分割コア2がセット位置Pから溝43に沿って所定量スライドする。このとき、スライドした分割コア2の外周面(ヨーク22の外周面)は摩擦部材44の接触面44aに接触する。
【0033】
その後、
図5に示すように、分割コア2をスライドした棒部材61がモータ62の駆動により元の初期位置に戻るとともに、セット装置5により空いたセット位置Pに2個目の分割コア2がセットされる。このとき、前述のように棒部材61の移動量が分割コア2の周方向の幅よりも若干大きく設定されていることにより、スライドされた1個目の分割コア2とセットされた2個目の分割コア2との接触が回避され、分割コア2の破損等が生じにくい構造となっている。
【0034】
そして、
図6に示すように、2個目の分割コア2が棒部材61の移動によりセット位置Pから溝43に沿って所定量スライドする。このとき、2個目の分割コア2が先行する1個目の分割コア2に突き当たるが、摩擦部材44により1個目の分割コアに対し摩擦抵抗が付与されているので、後続する2個目の分割コア2の凹部25に先行する1個目の分割コア2の凸部24が嵌め合わされ、凹凸嵌合の確実性を向上できる。凹凸嵌合された1個目の分割コア2は、所定量スライドする2個目の分割コア2に押されて溝43に沿って所定量スライドする。所定量スライドした2個目の分割コア2の外周面は、摩擦部材44に接触する。
【0035】
このように、摩擦部材44により摩擦抵抗が付与された先行する分割コア2に対し後続する分割コア2をスライドすることにより突き当てて、先行する分割コア2に後続する分割コア2を凹凸嵌合させて順次配列することを繰り返す。
図7に、6個目の分割コア2まで配列された状態を示す。
【0036】
そして、
図8に示すように、最後(この例では12個目)の分割コア2がセット位置Pにセットされる。このとき、前述のように、溝43の外周長及び内周長が分割コア2の外周長及び内周長を全個数分合計した長さよりも若干大きくなるように設定されていることにより、セットされた12個目の分割コア2が配列の先頭である1個目の分割コア2や最後尾である11個目の分割コア2と接触するのが回避され、分割コア2の破損等が生じにくい構造となっている。
【0037】
その後、
図9に示すように、最後の分割コア2が棒部材61の移動により所定量スライドされると、複数(この例では12個)の分割コア2が凹凸嵌合により略円環状に配列された分割コア連結体3Aが組み上がる。この際、上記溝43の周長と分割コア2の周長との関係から、分割コア連結体3Aの先頭の分割コア2と最後尾の分割コア2との間には隙間Sが生じる。
【0038】
その後は、例えば作業員の手作業等により、配列台4から分割コア連結体3Aを取り外し、分割コア連結体3Aの先頭の分割コア2の凹部25と最後尾の分割コア2の凸部24とを凹凸嵌合させることにより、
図10に示すように、複数の分割コア2が凹凸嵌合により円環状に連結されたステータ3が製造される。
【0039】
<ステータ製造方法の手順>
次に、ステータ製造装置1によるステータ製造方法の手順の一例について
図11を用いて説明する。なお、この手順は例えばステータ製造装置1を制御するコントローラ(図示せず)により実行される。
【0040】
ステップS10では、セット装置5により分割コア2が配列台4の溝43のセット位置Pにセットされる。すなわち、セット装置5のシュータ51に分割コア2が供給されると、シュータ51により分割コア2が寝かせた姿勢でセット位置Pの近傍まで案内される。そして、シリンダ53の駆動によりシュータ51の傾斜角度が増大されて、セット位置Pまで案内された分割コア2が起き上がった姿勢とされ、自立した状態で溝43のセット位置Pにセットされる。このステップS10が第1ステップの一例に相当する。
【0041】
ステップS20では、送り装置6が棒部材61を溝43の方向に沿って所定量だけ往復移動させることにより、セット位置Pにセットされた分割コア2がセット位置Pから所定量だけ溝43に沿ってスライドされる。このとき、セット位置Pから所定量スライドされた分割コア2は摩擦部材44と接触し、摩擦抵抗を付与される。これにより、後続する分割コア2は摩擦抵抗が付与された先行する分割コア2に対し凹凸嵌合しつつ突き当たり、環状に配列される。このステップS20が第2ステップ及び第3ステップの一例に相当する。
【0042】
ステップS30では、全ての分割コア2の配列が完了したか否かをコントローラが判定する。全ての分割コア2の配列が完了していない場合には判定が満たされず(ステップS30:NO)、上記ステップS10に戻って同様の手順を繰り返す。全ての分割コア2の配列が完了した場合には判定が満たされ(ステップS30:YES)、本フローを終了する。
【0043】
<実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態のステータ製造装置1は、セット装置5を用いて分割コア2を配列台4に形成された円環状の溝43のセット位置Pにセットし、送り装置6を用いてセットされた分割コア2をセット位置Pから所定量だけ溝43に沿ってスライドさせる。これらの動作を分割コア2の個数と同じ回数だけ繰り返すことにより、複数の分割コア2を自動で環状に配列することができる。このようにして、分割コア2を環状に配列する工程を自動化できるので、当該工程での作業者の工数を大幅に削減できる。
【0044】
また、本実施形態では特に、セット装置5は、分割コア2をセット位置Pに案内するシュータ51と、シュータ51の傾斜角度を可変するシリンダ53とを有する。これにより、シュータ51を用いて分割コアの姿勢を変更することができる。すなわち、シュータ51の傾斜角度を小さくすることで分割コア2を寝かせた姿勢でセット位置Pまで案内し、シュータ51の傾斜角度を大きくすることで分割コア2を起き上がらせた姿勢とし、自立した状態で溝43にセットすることが可能である。このようにして、分割コア2の案内、姿勢変更、セットを単一の装置で行うことができる。
【0045】
また、本実施形態では特に、送り装置6は、溝43内に設置される棒部材61と、棒部材61を溝43の方向に沿って所定量だけ往復移動させるモータ62とを有する。これにより、棒部材61の往復移動を繰り返すことで、セット位置Pにセットされた分割コア2を順次所定量だけスライドさせることができる。また、分割コア2をプッシュする部材を棒部材61とすることでプッシャの設置スペースを少なくでき、出来上がりの隙間S(最初の分割コア2と最後の分割コア2との隙間)を極力小さくすることができる。
【0046】
また、本実施形態では特に、各々が凹部25及び凸部24を有する複数の分割コア2を、隣接する分割コア2同士が互いに凹凸嵌合するように環状に配列する。この場合、分割コア2を径方向外側から組み付けることができないので、自動化が難しい。本実施形態では、分割コア2を円周方向にスライドさせて順次組み付けるので、上記構造のステータであっても自動化することが可能である。
【0047】
また、本実施形態では特に、各々がティース23にスキューを有する複数の分割コア2を、隣接するティース23同士が互いに嵌合するように環状に配列する。この場合、分割コア2を軸方向から組み付けることができないので、自動化が難しい。本実施形態では、分割コア2を円周方向にスライドさせて順次組み付けるので、上記構造のステータであっても自動化することが可能である。
【0048】
また、本実施形態では特に、配列台4に、送り装置6によりセット位置Pから所定量だけスライドされた分割コア2が突き当たる先行の分割コア2に接触して摩擦抵抗を付与する摩擦部材44を設ける。これにより、次のような効果を奏する。すなわち、隣接する分割コア2同士が互いに凹凸嵌合する構造の場合、後続する分割コア2が送り装置6によりスライドされて先行する分割コア2に突き当たる際に、先行する分割コア2が動いてしまい凹部25と凸部24が十分に嵌合されない可能性がある。本実施形態では、先行する分割コア2に対し摩擦部材44により摩擦抵抗を付与するので、凹凸嵌合をより確実に行わせつつ、分割コア2を順次配列することが可能となる。
【0049】
なお、以上既に述べた以外にも、上記実施形態による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0050】
その他、一々例示はしないが、上記実施形態は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。