(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
X線を照射するX線管と、前記X線管から照射され被検体を通過したX線を検出するX線検出器と、前記X線検出器により検出されたX線に基づいてX線画像を生成し表示部に表示する画像処理部と、操作者からの指示が入力される操作部とを備えるX線透視撮影装置において、
前記操作部からの指示に応じて透視を実行するときに、透視により収集するX線画像のフレーム数を前記X線管からのX線出力が安定するまでの時間に収集されるフレーム数に制限する制限モードに切り替える切替手段と、
前記切替手段により前記制限モードに切り替えられた後、前記操作部からの透視の指示に対してX線画像を取得する画像取得部と、
を備えることを特徴とするX線透視撮影装置。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、透視画像を見ながら撮影範囲を確認する場合、被検体に照射されるX線が低線量であっても、撮影範囲の修正のためにX線管、X線検出器および被検体のポジショニングに長い時間がかかってしまうと、積算線量が増え、被検体が必要以上に被曝する不都合が生じる。
【0005】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、被検体の被曝を低減しつつ撮影範囲の確認および修正を容易に行うことが可能なX線透視撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、X線を照射するX線管と、前記X線管から照射され被検体を通過したX線を検出するX線検出器と、前記X線検出器により検出されたX線に基づいてX線画像を生成し表示部に表示する画像処理部と、操作者からの指示が入力される操作部とを備えるX線透視撮影装置において、前記操作部からの指示に応じて透視を実行するときに、透視により収集するX線画像のフレーム数を
前記X線管からのX線出力が安定するまでの時間に収集されるフレーム数に制限する制限モードに切り替える切替手段と、前記切替手段により前記制限モードに切り替えられた後、前記操作部からの透視の指示に対してX線画像を取得する画像取得部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記表示部に前記画像取得部により取得されたX線画像を表示させ、当該X線画像を画面上で移動させる画像移動手段と、前記画像移動手段により移動させた前記X線画像の画面上での移動量に基づいて、前記被検体と、前記X線管および前記X線検出器とを相対的に移動させる移動制御部と、を備える。
【0008】
請求項
3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記画像取得部は、フレーム数が制限された透視により収集した最終フレームのX線画像を取得する。
【0009】
請求項
4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記画像取得部は、フレーム数が制限された透視により収集した全フレームの画像を利用して作成したX線画像を取得する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1から請求項
4に記載の発明によれば、操作部からの指示に応じて透視を実行するときに、透視により収集するX線画像のフレーム数を
X線管からのX線出力が安定するまでの時間に収集されるフレーム数に制限する制限モードに切り替える切替手段を備えることから、被検体に必要以上にX線を照射することを防止し、被検体の被曝を低減することが可能となる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、X線画像を画面上で移動させる画像移動手段と、画像移動手段により移動させたX線画像の画面上での移動量に基づいて、被検体と、X線管およびX線検出器とを相対的に移動させる移動制御部と、を備えることから、操作者は、撮影範囲の設定を容易に行うことが可能となる。さらに、従来のようにX線撮影範囲を設定する間、透視により被検体にX線を照射し続けることがなく、積算線量を大幅に削減することも可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。この発明に係るX線透視撮影装置は、X線透視撮影台10と、このX線透視撮影台10の動作を遠隔操作する操作台40から構成される。
図1は、寝台15が臥位位置に配置されたときのX線透視撮影台10の正面図であり、
図2は、寝台15が立位位置に配置されたときのX線透視撮影台10の正面図である。そして、
図3は、寝台15が臥位位置に配置されたときのX線透視撮影台10の側面図である。また、
図4は、操作台40の概要図である。
【0014】
X線透視撮影台10は、天板11上の被検体Mに対してX線を照射するX線管12と、X線管12から照射されたX線の照射野を規制するためのコリメータ13と、X線管12から照射され被検体Mを通過したX線を検出するイメージインテンシファイア(I.I.)やフラットパネルディテクタ(FPD)等のX線検出器14とを備える。X線管12とコリメータ13とは、寝台15に連結する支柱16により支持されている。
【0015】
これらの寝台15および支柱16は、モータ(図示せず)を内蔵した回動機構18の作用により、
図1に示す、天板11の表面が床面20と平行な水平方向を向く臥位位置と、
図2に示す、天板11の表面が床面20と垂直となって鉛直方向を向く立位位置との間を回動可能となっている。また、回動機構18自体は、床面20に立設された主支柱17に対して昇降可能となっている。
【0016】
支柱16と寝台15との間には、リニアガイドやモータ等(図示せず)を内蔵したX線管移動機構21が配設されている。X線管移動機構21の作用により、支柱16の移動に伴って、X線管12が天板11の表面に沿って寝台15の長手方向に往復移動する。同様に、コリメータ13も、天板11の表面に沿って寝台15の長手方向に往復移動する。
【0017】
X線検出器14は、寝台15の背面に保持されており、リニアガイドやモータ等(図示せず)を内蔵したX線検出器移動機構23の作用により、寝台15の長手方向に往復移動可能となっている。
【0018】
天板11は、寝台15に連結されている。また、天板11は、リニアガイドやモータ等(図示せず)を内蔵した天板移動機構22の作用により、寝台15の短手方向に水平移動可能となっている。
【0019】
寝台15が臥位位置にあるときには、臥位状態の被検体Mに対して透視あるいは撮影が行われる。透視または撮影のための位置決めを行うときには、X線管12とX線検出器14を寝台15の長手方向に移動させて対向配置するとともに、天板11を寝台15の短手方向に移動させる。
【0020】
また、寝台15が立位位置にあるときには、立位状態の被検体Mに対して透視あるいは撮影が行われる。透視または撮影のための位置決めを行うときには、被検体Mを天板11の正面に起立させる。そして、X線管12とX線検出器14を寝台15の長手方向に移動させて対向配置する。
【0021】
このX線透視撮影装置は、寝台15の起倒やX線撮影などの各種動作を操作する操作部としての操作台40を備える。操作台40には、X線画像を表示するための表示部41と、寝台15の起倒、支柱16に支持されたX線管12の移動、天板11の移動、X線検出器14の移動などの各種動作に対応付けられたスイッチ群が配設された操作パネル42と、X線撮影を実行するための撮影用ハンドスイッチ47および透視を実行するための透視用フットスイッチ48が配設されている。
【0022】
図5は、X線透視撮影装置の主要な制御系を説明するブロック図である。
【0023】
操作台40は、論理演算を実行するCPU、装置の制御に必要な動作プログラムが格納されたROM、制御時にデータ等が一時的にストアされるRAM等から成る制御部50を備える。
【0024】
制御部50は、操作台40の操作パネル42に配設された各スイッチ、撮影用ハンドスイッチ47、透視用フットスイッチ48に接続され、これらのスイッチからの入力を受けつける。操作パネル42に配設されたスイッチのうち、切替ボタン43は、操作者が透視用フットスイッチ48を踏んだときの入力を、通常の透視を行う通常モードと、透視により収集するX線画像のフレーム数を制限する制限モードに切り替える切替手段として機能する。また、操作パネル42に配設されたスイッチのうち、画像移動用ハンドル44は、切替ボタン43により透視用フットスイッチ48からの操作入力が制限モードに切り替わっているときに収集されたフレーム数の画像に基づくX線画像を、表示部41の画面上で移動させる画像移動手段として機能する。
【0025】
制御部50は、X線管制御部30、コリメータ13、X線検出器14、回動機構18、X線管移動機構21、天板移動機構22およびX線検出器移動機構23に接続されている。制御部50は、操作パネル42のX線照射条件に対応付けられたスイッチからの入力に応じて、X線管制御部30を介してX線管12の管電流・管電圧を制御するとともに、コリメータ13の絞りを制御する。
【0026】
また、制御部50は、機能的構成として、X線検出器14が検出したX線に基づくX線画像の表示部41への表示等の各種画像処理を実行する画像処理部51と、透視の指示に対してX線画像を取得する画像取得部52と、X線管移動機構21、天板移動機構22およびX線検出器移動機構23の動作を制御する移動制御部53を備える。さらに、移動制御部53は、画像処理部51の作用により表示部41の画面上で移動させた1フレーム分のX線画像の移動量を、X線管12およびX線検出器14の寝台15の長手方向の移動量、ならびに、天板11の寝台15の短手方向の移動量に換算する演算を実行する。
【0027】
以上のような構成を有するX線透視撮影装置において、X線撮影を実行する前に撮影範囲を設定する動作について説明する。
図6は、撮影範囲の確認および修正手順を示すフローチャートである。
図7は、表示部41に表示されたX線画像の移動動作の概要を示す説明図である。なお、
図7では、被検体Mの腰部の撮影を行う例を示している。
【0028】
被検体Mを天板11上に載置した状態で、被検体Mの体内構造を含めた撮影範囲を確認するときには、操作者が、透視用フットスイッチ48を踏み込むことにより透視が開始される(ステップS1)。このとき、切替ボタン43により通常モードから制限モードへの切り替えが行われていなければ(ステップS2)、透視用フットスイッチ48が踏み込まれている間、透視が続行され、表示部41に所定のフレームレートで収集された透視画像が動画として表示される(ステップS3)。なお、透視が続行されている間は、被検体Mに低線量X線が照射され続ける。
【0029】
操作者が操作台40の操作パネル42に配置されたX線透視撮影台10の各構成の動作に対応づけられたスイッチを操作したことで、支柱16に支持されたX線管12の移動、天板11の移動、X線検出器14の移動を指示する信号が制御部50に入力されると、その信号に基づいて、X線管移動機構21、天板移動機構22、X線検出器移動機構23がそれぞれ駆動される(ステップS4)。しかる後、透視用フットスイッチ48の踏み込みが解除されると(ステップS5)、透視が停止され、被検体MへのX線照射が遮断される(ステップS6)。
【0030】
一方、切替ボタン43により通常モードから制限モードへの切り替えが行われている場合には(ステップS2)、透視用フットスイッチ48が踏み込まれている状態であっても、制限モードにより制限されているフレーム数分の画像が収集されると(ステップS7)、透視を停止して被検体MへのX線照射を遮断する(ステップS8)。そして、
図7(a)に示すように、表示部41に静止画像91を表示する(ステップS9)。
【0031】
なお、透視開始時にはX線管12からのX線出力が不安定であるため、この実施形態では、制限モードにより制限する透視におけるフレーム数として、所定のフレームレートで透視を開始してからX線管12のX線出力が安定するまでの時間に収集されるフレーム数(例えば5〜10フレーム)を想定している。静止画像91は、通常の透視であれば動画として表示部41に表示されるが画像としては保存されないフレーム画像を、画像取得部52が取得して保持するX線画像であり、制限モードでの透視で複数フレーム分の画像が収集される場合には、X線出力がある程度安定した状態での画像となる最終フレームの画像を画像取得部52に取得・保持させて(ラストイメージホールド)、その最終フレームの1フレーム分の画像を静止画像91として表示部41に表示させる。また、静止画像91は、X線出力が安定するまでに収集された全てのフレームの画像を、単純加算して得られた画像、もしくは、リカーシブルフィルタ処理をして形成された画像であってもよい。
【0032】
このとき、X線撮影を行いたい撮影範囲が、
図7(a)中に×印で示す被検体Mの第3腰椎を中心にした領域である場合、操作者が画像移動用ハンドル44をX方向およびY方向に傾ける操作を行い、
図7(b)に示すように、静止画像91を第3腰椎が画面の中央となるように移動させる。このような静止画像91の移動が行われた場合には(ステップS10)、表示部41の画面上での静止画像91のX方向およびY方向の移動量から、X線管移動機構21、天板移動機構22、X線検出器移動機構23によるX線管12、天板11、X線検出器14の移動量を演算する(ステップS11)。そして、静止画像91の移動量に基づく移動機構の駆動が実行される(ステップS12)。
【0033】
X線管12、天板11、X線検出器14の移動量は、例えば、X線が照射される領域のサイズに対する画像サイズの縮尺等の情報から求めることができる。すなわち、X線が照射される領域のサイズに対する画像サイズの縮尺がわかれば、表示部41に表示される画像の1画素あたりの実際の距離がわかることから、静止画像91の表示部41の画面上での移動量を、実際の移動量に換算することができる。なお、静止画像91のX方向の移動は、寝台15の短手方向の移動に対応し、静止画像91のY方向の移動は、寝台15の長手方向の移動に対応する。
【0034】
この実施形態では、撮影範囲の修正における寝台15の短手方向の位置調整は、天板11の移動による被検体M側の移動により行われる。このため、静止画像91のX方向の移動量は、天板11の移動量に換算される。天板11の移動速度は予め一定の速度に決められていることから、静止画像91のX方向の移動量から換算された実際の距離だけ天板11を移動させる時間が、天板移動機構22への駆動制御量として与えられる。しかる後、天板移動機構22の駆動により天板11が移動する(ステップS12)。
【0035】
この実施形態では、撮影範囲の修正における寝台15の長手方向の位置調整は、X線管12およびX線検出器14から成る撮像系の移動により行われる。このため、静止画像91のY方向の移動量は、X線管12およびX線検出器14の移動量に換算される。X線管12を支持した支柱16の移動速度およびX線検出器14の移動速度は予め一定の速度に決められていることから、静止画像91のY方向の移動量から換算された実際の距離だけX線管12およびX線検出器14を移動させる時間が、X線管移動機構21およびX線検出器移動機構23への駆動制御量として与えられる。しかる後、X線管移動機構21およびX線検出器移動機構23の駆動によりX線管12およびX線検出器14が同期して移動する(ステップS12)。
【0036】
先の静止画像91の表示部41の画面上での移動量に基づいて天板11、X線管12およびX線検出器14を移動させたことにより被検体M、X線管12およびX線検出器14の相対的な位置の変更が行われた後に、撮影中心の修正ができたか否かを操作者が確認するには、操作者は、切替ボタン43を操作せずに、再度透視用フットスイッチ48を踏み込む(ステップS1)。このときには、制限モードに切り替えられているままであることから、ステップS7〜ステップS9の動作が繰り返し実行される。そして、表示部41には、
図7(c)に示すように、第3腰椎を撮影中心とする1フレーム分のX線画像である静止画像92が表示される。操作者は、静止画像92から、撮影範囲の修正が適正に行われたことを確認できる。
【0037】
撮影範囲の修正と確認が終了し、診断に必要となるX線画像を収集するためのX線撮影の準備が整えば、操作者は撮影用ハンドスイッチ47を操作してX線撮影を行う。
【0038】
上述したように、この発明に係るX線透視撮影装置では、切替ボタン43により透視を通常モードから制限モードに切り替えたことで、撮影範囲の修正および確認が終了するまで、最低2フレーム分のX線画像を取得すればよいことになる。このため、通常モードのように撮影範囲の修正が完了するまで低線量X線を被検体Mに照射し続けることがなく、積算線量を大幅に削減することが可能となる。したがって、被検体Mの不必要な被曝を低減することが可能となる。
【0039】
なお、透視を通常モードから制限モードに切り替えるためのボタンや透視等の実行のために操作者が操作するスイッチ類の態様は、この実施形態の態様に限定されるものではない。上述した実施形態においては、透視用のスイッチにフットスイッチを採用し、撮影用のスイッチにハンドスイッチを採用しているが、透視用、撮影用のスイッチが逆であってもよい。また、透視を通常モードから制限モードに切り替えるためのボタンは操作パネル42に設けた機能ボタンやスイッチのいずれかにその機能を割り当てればよい。
【0040】
また、上述した実施形態においては、天板11、X線管12およびX線検出器14をそれぞれ移動させる構成を備えたX線透視撮影装置にこの発明を適用しているが、X線管12とX線検出器14を対向させた状態で支持するC型アーム33を備えたX線透視撮影装置や、X線管12を天井またはアームから垂下したX線透視撮影装置等、その他の構成を有するX線透視撮影装置にこの発明を適用してもよい。