(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明に係る作業車両の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
図1は本実施例に係る作業車両の側面図である。
図2は
図1に示す作業車両の平面図である。なお、以下の説明においては、前後、左右の方向基準は、作業車両の操縦座席からみて車体の走行方向を基準として前後、左右を規定している。作業車両の一例である本実施例に係る作業車両1は、作業者が搭乗することのできる走行車体2を備えている。この走行車体2は、左右一対の前輪4と、同様に左右一対の後輪5とを有しており、走行時には各車輪が駆動する四輪駆動車としている。これにより、走行車体2は、圃場や道路を走行することが可能になっている。また、走行車体2の後部には、圃場で作業を行う作業装置として設けられ、苗植付部昇降機構40によって昇降可能な苗植付部50が配設されている。
【0027】
この走行車体2は、車体の略中央に配置されたメインフレーム7と、このメインフレーム7の上に搭載されたエンジン10と、エンジン10の動力を駆動輪と苗植付部50とに伝える動力伝達装置15とを備えている。このエンジン10や動力伝達装置15は、圃場や道路を走行するための装置である走行装置8を構成している。また、本実施形態に係るこの作業車両では、動力源であるエンジン10で発生した動力は、走行車体2を前進や後進させるために用いるのみでなく、苗植付部50を駆動させるためにも使用され、ディーゼル機関やガソリン機関等の熱機関が用いられる。
【0028】
また、エンジン10は、走行車体2の左右方向における略中央で、且つ、作業者が乗車時に足を載せるフロアステップ26よりも上方に突出させた状態で配置されている。また、フロアステップ26は、走行車体2の前部とエンジン10の後部との間に渡って設けられてメインフレーム7上に取り付けられており、その一部が格子状になることにより、靴に付いた泥を圃場に落とせるようになっている。また、このフロアステップ26の後方には、後輪5のフェンダを兼ねたリアステップ27が設けられている。このリアステップ27は、後方に向うに従って上方向に傾斜した傾斜面を有しており、エンジン10の左右それぞれの側方に配置されている。
【0029】
エンジン10は、これらのフロアステップ26とリアステップ27とから上方に突出しており、これらのステップから突出している部分には、エンジン10を覆うエンジンカバー11が配設されている。即ち、エンジンカバー11は、フロアステップ26とリアステップ27とから上方に突出した状態で、エンジン10を覆っている。
【0030】
また、走行車体2には、エンジンカバー11の上部に、作業者が着席する操縦座席28が設置されており、操縦座席28の前方で、且つ、走行車体2の前側中央部には、操縦部30が配設されている。この操縦部30は、フロアステップ26の床面から上方に突出した状態で配置されており、フロアステップ26の前部側を左右に分断している。また、操縦座席28には、作業者の着座を検知する着座検知部材である着座センサ130(
図7参照)が設けられている。この感圧センサ130は、圧力センサによって構成されると共に、操縦座席28の座面内に配設されており、作業者の着座した際における圧力を検知することにより、作業者の着座を検知することが可能になっている。
【0031】
操縦部30の前部には、開閉可能なフロントカバー31が設けられている。また、操縦部30の上部には、操作装置を作動させる操作レバー等や計器類、ハンドル32が配設されている。このハンドル32は、作業者が前輪4を操舵操作することにより走行車体2を操舵操作する操舵部材として設けられており、操縦部30内の操作装置等を介して前輪4を転舵させることが可能になっている。また、操作レバーとしては、走行車体2の前後進と走行出力を切替操作する変速操作部材である変速レバー35と、走行車体2の走行速度を、走行する場所に応じた速度に切り替える副走行操作部材である副変速レバー38とが、機体右側と左側に配設されている。
【0032】
また、フロアステップ26における操縦部30の左右それぞれの側方に位置する部分には、補給用の苗を載せておく予備苗載台65が配置されている。この予備苗載台65は、フロアステップ26の床面から突出した支持軸(鉛直軸)によって回転自在に支持されており、作業者の手、または電動モータ等の回動部材によって回動させることが可能になっている。
【0033】
また、動力伝達装置15は、エンジン10から伝達される駆動力を変速する変速装置である油圧式無段変速機16と、この油圧式無段変速機16にエンジン10からの動力を伝えるベルト式動力伝達機構17とを有している。このうち、油圧式無段変速機16とは、HST(Hydro Static Transmission)と云われる静油圧式
の無段変速装置として構成されている。このため、油圧式無段変速機16は、エンジン10からの動力で駆動する油圧ポンプによって油圧を発生させ、この油圧を油圧モータで機械的な力(回転力)に変換して出力する。これにより、油圧式無段変速機16は、エンジン10で発生する動力を、走行車体2を走行させる力に変換する。
【0034】
その際に、油圧式無段変速機16は、回転力の方向や回転速度を変更することにより、走行車体2の前後進及び走行速度を変更することが可能になっており、変速レバー35は、この油圧式無段変速機16の出力及び出力方向を変更することによって、走行車体2の前後進及び走行速度を操作することが可能になっている。
【0035】
この油圧式無段変速機16は、エンジン10よりも前方で、且つ、フロアステップ26の床面よりも下方に配置されており、本実施形態に係る作業車両1では、走行車体2の上面から見て、エンジン10の前方に配置されている。
【0036】
また、ベルト式動力伝達機構17は、エンジン10の出力軸に取り付けたプーリと、油圧式無段変速機16の入力軸に取り付けたプーリと、双方のプーリに巻き掛けたベルトと、さらに、このベルトの張力を調整するテンションプーリとを備えている。これにより、ベルト式動力伝達機構17は、エンジン10で発生した動力を、ベルトを介して油圧式無段変速機16に伝達可能になっている。
【0037】
さらに、動力伝達装置15は、ベルト式動力伝達機構17を介して油圧式無段変速機16に伝達され、油圧式無段変速機16で変速したエンジン10からの駆動力を各部に伝達する伝動装置であるミッションケース18を有している。このミッションケース18は、路上走行時や植付時等における走行車体2の作業速度を切り替える副変速機構(図示省略)を内設しており、メインフレーム7の前部に取り付けられている。副変速レバー38は、ミッションケース18内の副変速機構を操作することにより、走行車体2の走行速度を切り替えることが可能になっている。ミッションケース18は、ベルト式動力伝達機構17と油圧式無段変速機16とを介して伝達されたエンジン10からの出力を、当該ミッションケース18内の副変速機構で変速して、前輪4と後輪5への走行用動力と、苗植付部50への駆動用動力とに分けて出力可能になっている。
【0038】
このうち、走行用動力は、一部が左右の前輪ファイナルケース21を介して前輪4に伝達可能になっており、残りが左右の後輪ギヤケース22を介して後輪5に伝達可能になっている。左右それぞれの前輪ファイナルケース21は、ミッションケース18の左右それぞれの側方に配設されており、左右の前輪4は、車軸を介して左右の前輪ファイナルケース21に連結されている。また、この前輪ファイナルケース21は、ハンドル32の操舵操作に応じて駆動し、前輪4を転舵させることが可能になっている。同様に、左右それぞれの後輪ギヤケース22には、車軸を介して後輪5が連結されている。一方、駆動用動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチ(図示省略)に伝達され、この植付クラッチの係合時に植付伝動軸(図示省略)によって苗植付部50へ伝達される。
【0039】
また、走行車体2の後部に備えられる苗植付部50を昇降させる苗植付部昇降機構40は、昇降リンク装置41を有しており、苗植付部50は、この昇降リンク装置41を介して走行車体2に取り付けられている。この昇降リンク装置41は、走行車体2の後部と苗植付部50とを連結させる平行リンク機構42を備えている。この平行リンク機構42は、上リンクと下リンクとを有しており、これらのリンクが、メインフレーム7の後部端に立設した背面視門型のリンクベースフレーム43に回動自在に連結され、各リンクの他端側が苗植付部50に回転自在に連結されることにより、苗植付部50を昇降可能に走行車体2に連結している。
【0040】
また、苗植付部昇降機構40は、油圧によって伸縮する油圧昇降シリンダ44を有しており、油圧昇降シリンダ44の伸縮動作によって、苗植付部50を昇降させることが可能になっている。苗植付部昇降機構40は、その昇降動作によって、苗植付部50を非作業位置まで上昇させたり、対地作業位置(対地植付位置)まで下降させたりすることが可能になっている。
【0041】
また、苗植付部50は、苗を植え付ける範囲を複数の区画、或いは複数の列で植え付けることができ、本実施形態に係る作業車両1では、苗を6つの区画で植え付ける、いわゆる6条植の苗植付部50になっている。この苗植付部50は、苗植付装置60と、苗載置台51及びフロート48,49を備えている。このうち、苗載置台51は、走行車体2の後部に複数条の苗を積載する苗載置部材として設けられており、走行車体2の左右方向において仕切られた植付条数分の苗載せ面52を有し、それぞれの苗載せ面52に土付きのマット状苗を載置することが可能になっている。これにより、苗載置台51に載置した苗が植え付けられて無くなるたびに、圃場外に用意している苗を取りに戻る必要が無く、連続した作業を行えるので、作業能率が向上する。
【0042】
また、苗植付装置60は、苗載置台51の下部に配設されており、苗載置台51の前面側に配設される苗植付部50のフレームである植付支持フレーム55によって支持されている。この苗植付装置60は、苗載置台51に載置された苗を苗載置台51から取って圃場に植え付ける装置になっており、植付伝動ケース64と植付体61とを有している。このうち、植付体61は、苗載置台51から苗を取って圃場に植え付けることができるように構成されており、植付伝動ケース64は、植付体61に駆動力を供給することが可能になっている。
【0043】
詳しくは、植付伝動ケース64は、エンジン10から苗植付部50に伝達された動力を、植付体61に供給可能に構成されており、植付体61は、植付伝動ケース64に対して回転可能に連結されている。また、植付体61は、苗載置台51から苗を取って圃場に植え付ける植込杆62と、植込杆62を回転可能に支持すると共に植付伝動ケース64に対して回転可能に連結されるロータリケース63とを有している。
【0044】
ロータリケース63は、植付伝動ケース64から伝達された駆動力によって植込杆62を回転させる際に、回転速度を変化させながら回転させることのできる不等速伝動機構(図示省略)を内装している。これにより、植付体61の回転時には、植込杆62は、ロータリケース63に対する回転角度によって回転速度が変化しながら回転をすることができる。
【0045】
このように構成される苗植付装置60は、2条毎に1つずつ配設されており、即ち、複数の苗植付装置60は、それぞれ植付条が割り当てられている。また、各植付伝動ケース64は、2条分の植付体61を回転可能に備えており、つまり、1つの植付伝動ケース64には、2つのロータリケース63が、機体左右方向の両側に連結されている。本実施例に係る作業車両1が有する苗植付装置60は、この植付伝動ケース64を3つ備えており、これにより、6条分の植付体61を備えている。
【0046】
また、フロートは、走行車体2の移動と共に、圃場面上を滑走して整地するものであり、走行車体2の左右方向における苗植付部50の中央に位置するセンターフロート48と、左右方向における苗植付部50の両側に位置するサイドフロート49とを有している。
【0047】
また、苗植付部50の下方側の位置における前側には、圃場の整地を行う整地用ロータ67が設けられている。この整地用ロータ67は、後輪ギヤケース22を介して伝達されるエンジン10からの出力によって回転可能に構成されている。
【0048】
また、苗植付部50の左右両側には、次の植付条に進行方向の目安になる線を形成する線引きマーカ68が備えられている。即ち、線引きマーカ68は、作業車両1が圃場内における直進前進時に、圃場の畦際で転回した後に直進前進する際の目印を圃場上に線引きする。この線引きマーカ68は、マーカモータ69(
図7参照)によって作動し、走行車体2が旋回するごとに、左右の線引きマーカ68が入れ替わって作動することができるように構成されている。この左右の線引きマーカ68の入れ替えは、マーカモータ69が接続されるコントローラ150(
図7参照)によって行う。即ち、コントローラ150は、走行車体2の旋回時に、左右の線引きマーカ68を交互に作動状態と非作動状態とに切り替えるマーカ切替装置としても設けられている。なお、左右の線引きマーカ68の線引き作用部は、
図1及び
図2に示す通り、円盤の外周部に複数の突起体を設け、回転自在にロッド部に装着したものとすると、圃場面との接地抵抗により確実に圃場面に線を形成することができ、次の植付作業位置での直進作業が行い易くなり、作業能率が向上する。
【0049】
また、走行車体2における操縦座席28の後方には、施肥装置70が搭載されている。この施肥装置70は、肥料を貯留する貯留ホッパ71と、貯留ホッパ71から供給される肥料を設定量ずつ繰り出す繰出し装置72と、繰出し装置72により繰り出される肥料を圃場に供給する施肥通路である施肥ホース74と、施肥ホース74に搬送風を供給することにより、施肥ホース74内の肥料を苗植付部50側に移送する起風装置であるブロア73とを有している。さらに、施肥装置70は、苗植付部50の下方に配設されると共に、施肥ホース74によって肥料が移送される施肥ガイド75と、施肥ガイド75の前側に設けられると共に、施肥ホース74によって移送された肥料を、苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込む作溝器76を有している。
【0050】
また、本実施例に係る作業車両1は、苗植付部50を、機体前後方向の軸を中心に回動させるローリング機構80を備えている。
図3は、
図1のA−A断面図である。
図4は、
図3のB詳細図である。
図5は、
図4のC−C断面図である。ローリング機構80は、植付支持フレーム55に配設されるローリングフレームである縦枠82と、ローリングアクチュエータである電動モータ84とを有している。詳しくは、植付支持フレーム55は、機体左右方向における両側にそれぞれ位置して機体上下方向に延びる左右支持部材56を有して構成されており、縦枠82は、この左右支持部材56同士の間で、且つ、機体の左右方向における中心付近の位置に、機体上下方向に延びて配設されている。
【0051】
この縦枠82は、機体前後方向の軸に延び、苗植付部50を機体左右方向に揺動自在に支持する軸であるローリング軸81に、下端側が連結されている。また、縦枠82の上部には、支持板83が溶接固定されており、電動モータ84は、支持板83にボルトによって取り付けられている。この電動モータ84の回転駆動軸85には、小径の駆動歯車86が正逆回転駆動されるように装着されている。
【0052】
また、支持板83には、大径の従動歯車88が回動軸87を中心として回動自在に設けられており、電動モータ84の回転駆動軸85に取り付けられた駆動歯車86に噛み合っている。これにより、従動歯車88は、電動モータ84の回転駆動を減速して回転する構成となっている。また、従動歯車88には、ローリング駆動ピン90の基端部が溶接固定されており、その先端部は、支持板83に枢支軸91を中心として回動自在に設けられた回動アーム95の長孔96に嵌合している。
【0053】
この回動アーム95の揺動先端部には、機体左右方向における支持板83の左右両側に配設される左右引張バネ100のそれぞれの一端、即ち、左右引張バネ100における、機体左右方向内側に位置するそれぞれの端部が係合している。また、左右の左右引張バネ100の他端、即ち、左右引張バネ100における、機体左右方向外側に位置するそれぞれの端部は、植付支持フレーム55の左右支持部材56に係合している。このため、電動モータ84の回転駆動軸85の正逆転によって、回動アーム95がL−R方向に揺動し、左右引張バネ100を介して、苗植付部50を、走行車体2に対してローリング作動させることが可能になっており、即ち、ローリング軸81を中心に、苗植付部50を回動させることが可能になっている。
【0054】
また、苗植付部50は、苗の植え付け作業時には、苗載置台51が左右に往復移動しながら植え付け動作を行う。このため、苗載置台51が中央部に位置する時と右端に位置する時と左端に位置する時とでは、苗植付部50の重心が左右に大きく変動し、ローリング機構80による制御が適正に行ない難くなることがある。このため、ローリング機構80では、支持板83の先端部に、機体左右方向における支持板83の左右両側に配設される補正用左右引張バネ101のそれぞれの一端、即ち、補正用左右引張バネ101における、機体左右方向内側に位置するそれぞれの端部が、係合している。また、左右の補正用左右引張バネ101の他端、即ち、補正用左右引張バネ101における、機体左右方向外側に位置するそれぞれの端部は、苗植付部50の苗載置台51に係合している。これにより、苗載置台51が左端付近及び右端付近に移動しているときは苗載置台51の重みで、苗植付部50の苗載置台51が移動している側が下がりぎみになろうとするが、補正用左右引張バネ101は、苗載置台51が移動して下がりぎみになろうとする側を引き上げる方向に作用し、適正なローリング動作を行うことができる。
【0055】
また、ローリング機構80は、水平センサ105と、中央位置センサ106と、最大揺動位置センサ107と、を備えている。このうち、水平センサ105は、苗植付部50の水平に対する左右傾斜を電気信号の変動として検出することが可能になっている。ローリング機構80は、この水平センサ105の検出値に応じて、電動モータ84を正逆転作動させることにより、苗植付部50を水平となる姿勢にすることができる。
【0056】
また、中央位置センサ106は、回動アーム95を左右中央位置で停止させるために、従動歯車88の位置を検出するためのセンサになっている。この中央位置センサ106による、回動アーム95が左右中央位置であるか否かの検出結果は、ローリング制御を停止する際等の各種制御に用いられる。また、最大揺動位置センサ107は、回動アーム95を左右最大揺動位置で停止させるために、従動歯車88の位置を検出するためのセンサになっている。この最大揺動位置センサ107が、回動アーム95が左右最大揺動位置であることを検出した時には、電動モータ84が停止し、それ以上左右方向にローリング動作が行われることが停止される。
【0057】
また、本実施例に係る作業車両1は、GPS(Global Positioning System)によって作業車両1の位置情報を取得するGPS制御装置120(
図7参照)を備えており、走行車体2には、GPS制御装置120を構成する受信アンテナ121が配設されている。この受信アンテナ121は、所定の時間的な間隔でGPS座標を取得することにより、地球上での位置情報を所定間隔で取得する位置情報取得装置として設けられている。この受信アンテナ121は、予備苗載台65を支持する支柱である予備苗載台支柱66に連結されるアンテナフレーム124に取り付けられている。
【0058】
図6は、
図1のD−D矢視図である。アンテナフレーム124は、下側が開放された向きの門型の形状で形成されており、門型の2箇所の下端部が、左右の予備苗載台支柱66に連結されている。つまり、アンテナフレーム124は、機体左右方向に延びるフレーム水平部125と、フレーム水平部125の両端から下方に延びる2箇所のフレーム垂直部126とを有しており、フレーム垂直部126の下端が、予備苗載台支柱66に連結されている。フレーム垂直部126と予備苗載台支柱66とは、軸方向が機体前後方向に延びる回動部128によって連結されており、これにより、フレーム垂直部126は、回動部128を中心として機体左右方向に回動自在に、予備苗載台支柱66に連結されている。
【0059】
また、左右のフレーム垂直部126のうち、一方のフレーム垂直部126には、フレーム垂直部126が延びる方向に伸縮自在な伸縮シリンダ127が設けられている。この伸縮シリンダ127は、油圧によって全長が伸縮可能になっており、これにより、伸縮シリンダ127が設けられる側のフレーム垂直部126は、全長が伸縮することが可能になっている。また、受信アンテナ121は、フレーム水平部125に取り付けられており、詳しくは、フレーム水平部125の長さ方向における中央付近の位置で、フレーム水平部125の上面に取り付けられている。
【0060】
図7は、
図1に示す作業車両が有する装置の機能ブロック図である。本実施形態に係る作業車両1は、電子制御によって各部を制御することが可能になっており、このため、作業車両1には、各部を制御するコントローラ150が備えられている。このコントローラ150は、CPU等を有する処理部や、RAM等の記憶部、さらに入出力部が設けられており、これらは互いに接続され、互いに信号の受け渡しが可能になっている。記憶部には、作業車両1を制御するコンピュータプログラムが格納されている。このコントローラ150は、モータ等のアクチュエータ類や、各部の情報を取得するセンサ類等が接続されている。
【0061】
例えば、コントローラ150には、アクチュエータ類として、エンジン10の吸気量を調節するスロットル(図示省略)を作動させることにより、エンジン10の回転数を増減させるスロットルモータ12や、線引きマーカ68を作動させるマーカモータ69、ローリング機構80の電動モータ84、アンテナフレーム124に設けられる昇降シリンダ127等が接続されている。
【0062】
また、コントローラ150に接続されるセンサ類としては、後輪回転センサ23、作業クラッチセンサ58、水平センサ105、中央位置センサ106、最大揺動位置センサ107、ジャイロセンサ115、傾斜センサ116、感圧センサ130が接続されている。このうち、後輪回転センサ23は、後輪5の回転速度を検知することにより、走行車体2の車速を検知する車速検知部材として設けられている。また、作業クラッチセンサ58は、苗植付部50に動力を伝達するクラッチ(図示省略)の接続状態を検知することにより、苗植付部50の作動を検知する作業検知部材として設けられている。また、ジャイロセンサ115は、走行車体2の進行方向の変化を検知する方向変化検知部材として設けられている。また、傾斜センサ116は、走行車体2の前後傾斜を検知する傾斜検知部材として設けられている。
【0063】
また、作業車両1は、自動操舵装置110と、GPS制御装置120と、情報記憶端末140と、離間検知部材135とを備えており、これらはコントローラ150に接続されている。このうち、自動操舵装置110は、ハンドル32を操作して、走行車体2を直進方向に維持することが可能になっている。このため、自動操舵装置110は、任意の回転力をハンドル32に付与することにより、ハンドル32を回転させる操舵モータ111と、ハンドル32の回転角度を検知するハンドルポテンショメータ112と、を有している。これらの操舵モータ111やハンドルポテンショメータ112は、ハンドル32の回転軸に対して回転力を付与したり、ハンドル32の回転軸の回転角度を検知したりすることにより、ハンドル32を操作したり、回転角度を検知したりすることが可能になっている。
【0064】
また、GPS制御装置120は、GPSを用いることにより地球上における作業車両1 の位置情報又は座標情報を取得することができ、GPS制御装置120で取得した位置情報は、コントローラ150に伝達可能になっている。GPS制御装置120は、このようにGPSを用いることにより作業車両1の位置情報を取得するため、GPSで使用される人工衛星からの信号を受信する受信アンテナ121を有している。
【0065】
また、情報記憶端末140は、情報を表示する表示部と、各種の入力操作を行う入力操作部と、情報を記憶する記憶部とを有している。このうち、表示部と入力操作部とは、別体で構成されていてもよく、タッチパネル式のディスプレイによって一体で構成されていてもよい。また、情報記憶端末140の記憶部は、一または複数の圃場の位置情報、及び圃場での以前の作業時における位置情報を記憶する。
【0066】
また、離間検知部材135は、作業者と操縦座席28との離間を検知することが可能になっており、操縦座席28に配設される、操縦座席28側の受信部材136と、作業者が携帯する、作業者側の発信部材137とを有している。これらの受信部材136と発信部材137とは、無線通信を行っており、発信部材137から発信した信号を受信部材136で受信することにより、離間検知部材135は、作業者と操縦座席28との離間を無線によって検知する。コントローラ150には、このように構成される離間検知部材135の受信部材136が接続されている。
【0067】
本実施例に係る作業車両1は、以上のような構成からなり、以下、その作用について説明する。作業車両1の運転時は、エンジン10で発生する動力によって、走行車体2の走行と、苗載置台51に載せた苗の植付作業を行う。この植付作業は、回転軸が左右方向になる向きで、苗植付装置60の植付体61全体が回転しながら、植込杆62も回転することにより、苗載置台51に載せられた苗を順次植込杆62で取り、取った苗を徐々に圃場に植え付ける。その際に、苗載置台51を、苗載置台51に載置する1条分の機体左右方向の幅の範囲内で機体左右方向に往復移動させることにより、各苗植付装置60は、苗載置台51においてそれぞれの苗植付装置60に対応する部分から苗を取り出し、圃場に植え付ける。即ち、各苗植付装置60は、苗載置台51の所定の条に対応する部分から苗を取り出して、所定の条に苗を植え付ける。植付作業時は、このように苗植付装置60を作動させながら圃場内を走行車体2で走行することにより、複数の列状に苗を植え付ける。
【0068】
走行車体2の走行時には、エンジン10で発生した動力はベルト式動力伝達機構17に伝達され、ベルト式動力伝達機構17から油圧式無段変速機16に伝達されて、油圧式無段変速機16で所望の回転速度や回転方向、トルクに変換されて出力される。油圧式無段変速機16から出力された動力は、ミッションケース18に伝達され、路上走行時の走行速度に適した回転速度、または苗の植え付け時の走行速度に適した回転速度にミッションケース18内で変速されて、前輪4側や後輪5側に出力される。また、ミッションケース18から出力される動力の一部は、苗植付部50側にも伝達され、苗植付部50での植え付け作業にも用いられる。
【0069】
また、本実施例に係る作業車両1は、圃場で植え付け作業を行う際には、GPS制御装置120で作業車両1の位置情報を取得しつつ、自動操舵装置110で操舵を行うことにより、直進しながら植え付け作業を行うことが可能になっている。詳しくは、作業車両1は、GPSで使用される人工衛星からの信号をGPS制御装置120の受信アンテナ121で受信することにより、地球上における作業車両1の位置情報を、所定の時間間隔ごとに取得する。
【0070】
情報記憶端末140には、圃場内で効率良く植え付け作業を行うための走路である直進走路の情報が記憶されており、コントローラ150は、情報記憶端末140に記憶されている直進走路の情報と、受信アンテナ121で取得した位置情報とを比較し、自動操舵装置110を制御する。
【0071】
自動操舵装置110の制御は、受信アンテナ121で取得した位置情報が、情報記憶端末140に記憶されている直進走路の情報に沿うように、ハンドルポテンショメータ112で操舵角を検知し、さらに、ジャイロセンサ115で走行車体2の進行方向の変化を検知しながら、操舵モータ111を作動させて操舵を行う。これにより、走行車体2を、情報記憶端末140に記憶されている直進走路に沿って走行させる。換言すると、自動操舵装置110は、受信アンテナ121とジャイロセンサ115の検出値に基づいて作動し、情報記憶端末140に記憶されている直進走路に沿って、走行車体2を直進走行させる。
【0072】
苗の植え付け作業時には、このように自動操舵装置110は、GPS制御装置120で所定間隔ごとに取得した作業車両1の位置情報に基づいて、走行車体2を直進走行させるが、GPS制御装置120は、走行車体2の車速に応じて、位置情報を取得する間隔を変更する。例えば、後輪回転センサ23で検知した車速が1.0〜1.6km/h以上であるときは、位置情報を取得する際の周期を短くし、後輪回転センサ23で検知した車速が0.5〜0.9km/h未満であるときは、位置情報を取得する際の周期を長くする。
【0073】
なお、このように自動操舵装置110での操舵量を規制する際には、車速に基づいて規制するのではなく、自動操舵装置110で操舵を行う際の操舵速度に基づいて、操舵量を規制してもよい。つまり、自動操舵装置110での操舵速度が遅いときは、車速も遅いことを示しているので、この場合は操舵量の規制を緩やかにする、または、操舵量の規制は行わない。これに対し、自動操舵装置110での操舵速度が速いときは、車速も速いことを示しているので、この場合は操舵量の規制を強くし、操舵することのできる角度を小さくする。
【0074】
本実施例では、GPSから位置情報を所定間隔で取得する受信アンテナ(位置情報取得装置)121と走行車体2からの進行方向の変化を検知するジャイロセンサ(方向変化検知部材)115とハンドル(操舵部材)34を操作して走行車体2を直進方向に維持する自動操舵装置110を備えているので、受信アンテナ121とジャイロセンサ115の検出に基づいて自動操舵装置110を作動させ、所定時間内(例:1〜2秒)に位置情報の取得間隔が広がると、又は狭まると自動操舵装置110を停止させる制御構成を制御装置150内に設けている。
【0075】
従って、所定時間内(例:1〜2秒)に受信アンテナ121による位置情報の取得間隔が広がると、又は狭まると、急な加減速が生じたとみなし、自動操舵装置110を停止させることにより、加減速中にハンドル34が切られることを防止できるので、走行車体(機体)2が大きく振れて直進方向から大幅にずれた方向を向くことを防止でき、走行車体2の直進精度が従来技術より向上する。
【0076】
こうして、機体2が大きく振れることがないので作業者が車体2上で揺さぶられることを防止でき、作業者の操縦作業、または他の作業が妨げられることが防止され、作業装置50の作業能率や安全性が従来技術より向上する。
【0077】
また、作業装置50を作業状態(=下降)にしたときの機体2の位置情報(機体旋回後の下降位置情報)と、現在の位置情報を比較し、現在の走行車体(機体)2の位置情報が、左右方向に所定距離(例:25〜50cm)以上作業開始位置から離れていると、自動操舵装置110を停止させるか、又は走行速度を減速させるか、又は走行停止させる制御構成を制御装置150に備えている。
【0078】
そのため、走行車体2が作業開始時から左右方向に所定距離以上離れると、自動操舵装置110を停止させるか、機体2を減速させるか又は走行停止させることにより、自動操舵による誤った作業走行を中断して作業者が復帰操作することができるので、作業装置50が作業していない区間を短く抑えることができ、作業車両1による作業精度や作業能率が従来技術より向上する。
また、作業装置50が一度作業した箇所で再度作業することを防止できるので、作業装置50の作業能率の向上や作業資材(例:苗、肥料、薬剤等)の消費量の軽減が図られる。
【0079】
本実施例では、走行車体2の前輪4を左右回動させるステアリング機構を設け、作業者が搭乗する操縦座席28と操縦座席28に作業者を検知する感圧センサ(着座検知部材)130を走行車体2に設け、自動操舵装置110にトルクセンサ(トルク検知部材)117を設け、さらに制御装置150に感圧センサ130が非検知状態であるときにトルクセンサ117が過トルク又は操作ロックを検知すると、走行速度を減速させる制御構成を設けている。
【0080】
このため、作業者が操縦座席28から離れた状態で自動操舵装置110に過トルク又は操作ロックが生じると、自動操舵装置110が自動減速することにより、圃場の土質等の影響で前輪のステアリングが制限され、自動操舵装置110に負荷がかかる状況であることを作業者に知らせることができるので、自動操舵装置110の破損が防止される。
また、自動操舵装置110を使うとかえって直進走行しにくい区間で、作業者にハンドル操作を促すことができるので、直進走行が乱れにくくなり、走行精度が従来技術より向上する。
【0081】
また、例えば、圃場の土質等により、前輪4のステアリングが制限された状態で自動操舵装置110が作動していると、負荷で破損し得るが、作業者が操縦部30から離れていると作業車両1に負荷が生じる条件に気づかない。そこで、自動操舵装置110に過ト
ルク又は操作ロックが掛かると自動操舵装置110を自動減速する。
【0082】
さらに、前輪4を左右回動させるハンドル32の操作頻度が一定以上になると油圧式無段変速機16のトラニオン開度を小さくして出力を低下させることにより、走行車体2を減速させる。さらに、所定時間内(例:5〜10秒)にハンドル32を左右にステアリング操作する角度の合計が所定角度以上になったときは、油圧式無段変速機16のトラニオン開度を小さくして出力を低下させることにより、走行車体2を減速させる。
【0083】
これにより、走行車体2を理論上の走行位置に復帰させるまでの間、直進位置からずれた位置を移動する距離を短くすることができるので、直進精度が向上すると共に、作業精度が向上する。
【0084】
前記自動直進セット6に内装されるジャイロセンサ115(
図8参照)が360度(ピッチング、ローリング、ヨーイング全てに対応)方向の角度を検知可能であることを利用し、該ジャイロセンサ115の検知するローリング方向の角度が所定値以上変動すると、走行車体2の左右どちらか一方が上昇し過ぎていると判断して、油圧式無段変速機16のトラニオン開度を小さくして出力を低下させることにより、走行車体2を減速させる。
【0085】
これにより、走行車体2が接地抵抗等によって大幅に左右傾斜したとき、自動的に走行速度が低下するので、作業者が異常に気付くと共に、過度に傾斜した状態で高速走行することが防止され、作業の安全性や、作業精度が向上する。
【0086】
前記ハンドル32の操作角度を検知するハンドルポテンショメータ(図示省略)が、一定時間(例:3〜10秒)以上に亘って所定角度(例:15〜30度)以上であるときは、自動操舵装置110の制御を必要としない変形圃場の円弧状部分を走行している、あるいは円弧軌跡で走行していると判断して、制御装置150は自動操舵装置110の作動状態をキャンセルするか、あるいは油圧式無段変速機16の出力を下げて、走行を停止させる。
【0087】
これにより、特殊な軌跡を描きながら作業を行う場所で自動操舵装置110が作動し、直進走行に修正しようとしてかえって作業軌跡が乱れることを防止できるので、操作性や作業精度が向上する。
【0088】
また、作業者が自動操舵装置110を切り忘れていても自動的にキャンセル操作されるので、切り忘れによる操作性や作業精度の低下が防止される。
また、ステアリング機構により生じる自動操舵装置110の振れ幅をトルクセンサ117によって検知すると、制御装置150は、検知された振れ幅に基づき、現在の位置情報と直進走行位置の位置情報の差に基づく自動操舵装置110の操舵量を変更することができる。
【0089】
このように、ステアリング機構が接地抵抗で振れた分を差し引いて自動操舵装置110を作動させることにより、直進方向から僅かにずれた方向に自動操舵されることを防止できるので、正確な直進走行が可能となり、作業精度が従来技術より向上する。
【0090】
さらに本実施例では、圃場の凹凸を検知して作業装置50の作業高さを自動変更させる凹凸検知センサ131を設け、作業装置50を油圧により昇降させる昇降リンク41と昇降装置40を走行車体2に設け、制御装置150は、トルクセンサ117が検知するトルクが所定値以上であると、現在の圃場深さが深いと判断し、走行速度を減速させ、作業装置50を自動下降させると共に、前記凹凸検知センサ131が、大きな角度変化を検知したときにのみ昇降装置40による自動昇降を行い、また、該自動昇降は凹凸検知センサ131の検知後、所定時間(例:0.5〜1秒)の経過後に行う制御構成を備えている。
【0091】
このため、トルクセンサ117により検知されるトルクから圃場の深さを判定し、圃場が深いと判定されたときは走行速度を減速させることにより、自動操舵装置110が機体の進行方向を修正する際の作業範囲を狭くすることができるので、直進走行からずれた位置で作業される範囲が減少し、作業精度が従来技術より向上する。
【0092】
また、前記圃場が深いと判定されたときに走行速度を減速させると共に作業装置50を自動下降させることにより、作業装置50と圃場面の間隔が開き過ぎることによる作業精度の低下や、作業が行われないことが防止される。
【0093】
また、圃場の凹凸検知センサ131が大きな角度変化を検知したときにのみ作業装置50の作業高さを変更すると共に、所定時間の経過後に作業装置50の自動昇降を行うことにより、頻繁に作業装置50の作業高さ変更が行われることが防止され、作業高さが適切になり、作業精度が従来技術より向上する。
【0094】
また、走行車体2の変速レバー35には、操作量に合わせてエンジン10のスロットル開度を変更するオートアクスル機構(図示省略)が設けられているが、上記のように圃場深さが深く、トルクセンサ117の検出値が所定以上になるときは、このオートアクセル機構との連動を無視し、直接エンジン10のスロットル開度を操作するスロットル操作部材(図示省略)の操作量に合わせたスロットル開度とする。
【0095】
これにより、トルク不足で走行車体2の走行が妨げられることを防止できるので、作業が中断されず、作業能率が向上する。
また、エンジン10のスロットル開度を大きくすべく、高速走行する必要ない状況で変速レバー35を高速側に操作する必要がなく、操作性や作業精度が低下することが防止されると共に、走行に必要なトルクが弱くても走行可能な個所に移動したときに、急加速することが防止される。
【0096】
さらに、トルクセンサ117の検出値から圃場の深い場所に移動したことを検知すると、作業装置50を自動的に制御装置150に記録された設定量に合わせて下降させる。
これにより、圃場面と作業装置50の間隔が空きすぎることが防止され、作業精度が向上する、あるいは、作業装置50が全く作業できず、作業を後からやり直すことが防止され、作業時間の短縮が図られる。
【0097】
上記に加えて、油圧バルブが作動油の出し入れを行ってから昇降油圧シリンダ127が伸縮するまでの時間を通常よりも長くすることにより、昇降油圧シリンダ127に作動油が急激に流入する、あるいは昇降油圧シリンダ127から急激に作動油が排出されることが防止され、作業装置50が高速で下降して圃場面を叩き、圃場面を荒らしたり作業装置50が破損したりすることが防止される。
【0098】
また、作業装置50が高速で上昇し、停止時に慣性で上下に揺れることを防止できるので、機体に余分な振動が加わることや、付着した圃場の泥土が周囲に飛散することが防止される。
【0099】
さらに、制御装置150は、フロートセンサ(図示省略)が検知するセンターフロート48の仰角方向及び俯角方向の回動角度が、通常時よりも大きい角度であるときに油圧バルブに作動油の供給、または作動油の排出信号を発信する制御を行う。
【0100】
これにより、大きな圃場面の凹凸があるときのみ作業装置50の自動昇降が行われるので、頻繁に作業装置50が上下動することが防止され、作業精度が向上する。
またハンドル32又はハンドルポストに、自動操舵解除スイッチ(自動操舵解除部材)132を設けておき、前記自動操舵解除スイッチ132を人間が操作した状態でハンドル32を操作すると、制御装置150が自動操舵を解除する構成とした。
【0101】
自動操舵解除スイッチ132が操作された状態でハンドル32を操作したときに自動操舵が解除されることにより、偶発的な誤作動や故障により自動操舵が解除されることを防止できるので、作業者の知らないうちに直進制御が解除されることが防止され、作業精度が従来技術より向上する。
【0102】
ハンドルポストが傾いたら、人間がハンドル32を操作していると判断して、制御装置150が自動操舵を解除する構成としても良い。
ハンドル32又はハンドルポストに1カ所のみ自動操舵解除スイッチ132を設け、ハンドル32を操作する時は該スイッチ132を押すようにする。前記スイッチ132が入った状態でハンドル32が切られると人間の操作と判断できるので、自動操舵装置110の作動をキャンセルできる構成にすることもできる。
【0103】
本実施例では、操縦座席28よりも走行車体2の前側で、且つ走行車体2の左右方向の中央部に
図8に示す表示装置141を設け、該表示装置141には、取得された位置情報と理論上の直進作業位置から、直進走行を示す中央表示位置141aにいるか、又は中央表示位置141aより左右方向のどちら側にずれたずれ表示位置141b、141cにいるかを表示する複数の表示部材(LED)を設け、直進走行を示す中央表示位置141aと、該中央表示位置より左右方向のずれ表示位置141b、141cとで、それぞれ異なる色などの表示を行う構成とした。
【0104】
したがって、現在表示をしている作業位置が理論上の直進作業位置を示す中央表示位置141aか、あるいは中央表示位置より左右方向のどちら側にずれたずれ表示位置141b、141cかにより、ユーザが直進時のずれを判断可能な状態にしておき、あまりにずれが続くと自動操舵をキャンセルすることで直進走行が適切に行え、作業精度が従来技術より向上する。
【0105】
センターマスコット9に自動操舵装置110を起動したときに点灯するランプを設けると、自動直進モード、下記旋回連動機構モード、苗植付装置60の入・切が目視で確認できるようになる。
【0106】
上記旋回連動機構モードとは、ハンドル32が操作されて旋回走行が始まると、まず自動上昇機構により、制御装置150に信号が発信されて油圧バルブ(図示省略)が作動し、昇降油圧シリンダ127を伸ばして苗植付部50を上昇させ、そして、左右の後輪回転センサ23の回転数差のカウントが開始されると共に、ハンドル32が旋回終了側に操作されてから左右の後輪回転センサ23の回転数差が一定値未満になると、制御装置150が油圧バルブ(図示省略)を作動させ、昇降油圧シリンダ127を縮めて苗植付部50を下降させると共に、左右の後輪回転センサ23の回転数が所定回転数に到達すると植付クラッチを「入」にする機構である。
【0107】
また、自動操舵装置110を起動したまま、長時間オペレータが動かないと、居眠り中であると判断して、警告を発するか又はシートバイブレータを作動する。しかし又はそれでも気づかなければ走行車体2を停止させる制御構成を採用しても良い。
【0108】
なお、長時間オペレータが動かないことは操縦座席28に圧力感知センサを設けておき、そのセンサ検知結果に所定の時間、変化が検出されないとオペレータが居眠りをしていると判断する等の方法を採用する。
【0109】
また、オペレータが操縦座席28に着座していないときに車両が畦に近づくと緩やかに減速してストップさせる制御構成を採用しても良い。
走行車両には予め開始位置と終了位置をはじめ圃場情報をティーチングしておけば、圃場の端に車両が近付いたことがわかる。
【0110】
また、脳波を検出する帽子をオペレータが被っていれば、眠り始めたときに、速やかに危険を知らせることができる。
オペレータがどこを向いているかの視点検出をメガネを掛けさせることで分かるようにすると、危険運転を避けることができる。
【0111】
なお、上述した作業車両(苗移植機)1では、走行車体2の進行方向の変化を検知する方向変化検知部材として、ジャイロセンサ115が用いられているが、方向変化検知部材は、ジャイロセンサ115以外のものが用いられてもよい。方向変化検知部材は、例えば、回動時における角速度を検出する角速度センサであってもよい。方向変化検知部材は、検出形態に関わらず、走行車体2の進行方向の変化を検知することができるものであれば、その態様は問わない。
【0112】
苗移植機1は、苗の植え付け時期の気温が低いときに、頻繁に停車して苗載置台51に苗を補給する、いわゆる苗補給作業のために停車をする場合に、冷却水がラジエータを通過する頻度が高くなり過ぎ、エンジン冷却用のラジエータに供給する冷却水の温度が急上昇することにより、作業負荷によってはオーバーヒートが発生して作業が中断されることがある。
【0113】
そこで、
図9に示すように、エンジン10冷却用のラジエータ134に水を送るウォーターポンプ133を電動モータで作動する構成とし、エンジン10及びウォーターポンプ133の起動、停止を苗移植機1の変速レバー35と連動させることで、苗載置台51に苗つぎをする際のアイドリングストップにより燃費改善を図ることができる。
【0114】
このとき、ウォーターポンプ133は水温に応じて、冷却水流量を2段階に調整可能な構成にすることにより、苗移植機1の電動クーリングファンと併せて、冷却水温を適温に保つことで冷却損失を減らし、燃費の改善を図ることができる。
また、エンジン10の始動時はウォーターポンプ133を動かさず、エンジン10の始動後にウォーターポンプ133を動かすことで、始動時の負荷を減らし、始動性改善を図ることができる。
【0115】
特に、遠心ポンプ型のウォーターポンプ133は起動時に最も負荷が大きくなる。また、ウォーターポンプ133を電動化しても、エンジン10と同時に起動すると、発電により負荷増大する。しかし、上記構成によりエンジン10の始動時のウォーターポンプ負荷を軽減することで、始動性を改善する。
【0116】
また、上述した実施例では、作業車両の一例として苗移植機を用いて説明したが、作業車両1は、苗移植機以外のものでもよい。作業車両1は、圃場での作業を行う播種装置やロータリ等の作業装置を、走行車体の後部に配設するものであれば、その種類は問わない。