(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241402
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】接触検知装置、接触検知方法および疵検出器
(51)【国際特許分類】
G01N 27/90 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
G01N27/90
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-205499(P2014-205499)
(22)【出願日】2014年10月6日
(65)【公開番号】特開2016-75552(P2016-75552A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2016年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126701
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】岡田 誠康
【審査官】
蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−096554(JP,A)
【文献】
特開2005−043172(JP,A)
【文献】
特開平11−326445(JP,A)
【文献】
特開2009−172703(JP,A)
【文献】
米国特許第04901074(US,A)
【文献】
特表2006−527438(JP,A)
【文献】
特開2011−065719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/72−27/90、29/00−29/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体の疵を検出する疵検出器が被検査体に接触したことを検知する接触検知装置であって、
被検査体が鋼板であり、
疵検出器の被検査体側の面の全面に形成された導電性塗装部と、
導電性塗装部に電圧を印加する電源と、
導電性塗装部に電流が流れたか否かを検出する電流計と、を備えた接触検知装置。
【請求項2】
導電性塗装部の表面に、カラー塗装部をさらに備えた請求項1に記載の接触検知装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の接触検知装置を備えた疵検出器。
【請求項4】
被検査体の疵を検出する疵検出器が被検査体に接触したことを検知する接触検知方法であって、
被検査体が鋼板であり、
疵検出器の被検査体側の面の全面に形成された導電性塗装部に電圧を印加し、
被検査体が疵検出器に接触した際に、導電性塗装部に流れる電流を検出することにより、被検査体と疵検出器との接触を検知する接触検知方法。
【請求項5】
被検査体の疵を検出する疵検出器が被検査体に接触したことを検知する接触検知方法であって、
疵検出器の被検査体側の面に形成された導電性塗装部に電圧を印加し、
被検査体が疵検出器に接触した際に、導電性塗装部に流れる電流を検出するとともに、
疵検出器に形成された導電性塗装部の表面に、さらにカラー塗料を塗装することによりカラー塗装部を形成し、
カラー塗装部の剥がれ、および被検査体に色移りしたカラー塗装の少なくとも一方を検出することにより被検査体と疵検出器との接触を検知する接触検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査体の疵を検出する疵検出器が被検査体に接触したことを検知する接触検知装置、接触検知方法および疵検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼板等の被検査体の品質管理を行うために、被検査体の表面疵を疵検出器により検出している。
【0003】
特許文献1には、表層近くに存在する表面疵を検出するために、導電性の被検査体に、交流電流を流したコイルを近接させて、電磁誘導により被検査体に渦電流を発生させ、被検査体の疵によって生じた渦電流の変化を検出して、探傷を行う技術が開示されている(特許文献1の[0002]段落等)。
【0004】
ここで、被検査体と疵検出器の隙間は数mm程度であり、被検査体の形状が悪い場合は、被検査体と疵検出器とが接触し、被検査体に疵が入る可能性がある。
【0005】
一般に、被検査体と疵検出器の接触検知においては、距離センサを設け、被検査材と疵検出器との間の距離を測定する方法が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−92388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、距離センサを用いて被検査材と疵検出器との接触を検知する場合では、疵検出器の形状に応じて、距離センサの設置を行わなければならない。また、距離センサを用いて被検査材と疵検出器との接触を検知する方法では、距離センサの構造が複雑で壊れやすく、コストが高いといった問題がある。さらに、被検査体の全幅で接触検知を行うためには、幅方向に多くの距離センサを並べなければならず、構造がさらに複雑になるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題点に対してなされたものであり、疵検出器の形状に関係なく接触検知装置を設置可能であり、シンプルな構成で、かつ安価に実現することができる接触検知装置、接触検知方法および疵検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記のような目的を達成するために、以下のような特徴を有している。
[1] 被検査体の疵を検出する疵検出器が被検査体に接触したことを検知する接触検知装置であって、
疵検出器の被検査体側の面に形成された導電性塗装部と、
導電性塗装部に電圧を印加する電源と、
導電性塗装部に電流が流れたか否かを検出する電流計と、を備えた接触検知装置。
[2] 導電性塗装部の表面に、カラー塗装部をさらに備えた[1]に記載の接触検知装置。
[3] [1]または[2]に記載の接触検知装置を備えた疵検出器。
[4] 被検査体の疵を検出する疵検出器が被検査体に接触したことを検知する接触検知方法であって、
疵検出器の被検査体側の面に形成された導電性塗装部に電圧を印加し、
被検査体が疵検出器に接触した際に、導電性塗装部に流れる電流を検出することにより、被検査体と疵検出器との接触を検知する接触検知方法。
[5] 疵検出器に形成された導電性塗装部の表面に、さらにカラー塗料を塗装することによりカラー塗装部を形成し、
カラー塗装部の剥がれ、および被検査体に色移りしたカラー塗装の少なくとも一方を検出することにより被検査体と疵検出器との接触を検知する[4]に記載の接触検知方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、疵検出器の形状に関係なく接触検知装置を設置可能である。また、電圧を掛けて電流を検出するだけの簡易な構造のため、シンプルかつ安価に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係る接触検知装置が設置される疵検出器を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る接触検知装置の構成を示す図であり、被検査体の進行方向から見た断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る接触検知装置の構成を示す図であり、被検査体の進行方向を側面から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る接触検知装置が設置される疵検出器を示す図である。被検査体1は、例えば、鋼板であり、サポートロール2によって支持されている。疵検出器3としては、例えば、渦流式の疵検出器を用いることができる。渦流式の疵検出器は、交流電流を流したコイルを近接させて、電磁誘導により被検査体に渦電流を発生させ、被検査体の疵によって生じた渦電流の変化を検出して疵を検出する。なお、疵検出器3は、電磁誘導を用いた渦流式の疵検出器に限られず、超音波やレーザ等を用いた疵検出器を用いてもよい。
【0014】
図2は、本発明の実施の形態に係る接触検知装置の構成を示す図であり、被検査体の進行方向から見た断面図である。また、
図3は、被検査体の進行方向を側面から見た断面図である。
【0015】
本発明の実施の形態に係る接触検知装置10は、疵検出器3の被検査体1側の面に形成された導電性塗装部5と、導電性塗装部5に電圧を印加する電源8と、導電性塗装部5に電流が流れたか否かを検出する電流計7とを備えている。
【0016】
導電性塗装部5は、疵検出器3の被検査体1と対向する面の全面に形成され、被検査体1の幅方向に亘って形成されている。導電性塗装部5は、導電性塗料を塗布することにより形成される。
【0017】
導電性塗装部5と疵検出器3との間には、絶縁性塗料が塗布された絶縁性塗装部4が形成されている。絶縁性塗装部4の代わりに、疵検出器3の表面に絶縁材を配してもよい。なお、疵検出器3の表面が絶縁体により覆われている場合には、絶縁体塗装部4を配さなくてもよい。また、導電性塗装部5の表層には、さらに、カラー塗料を塗布することにより形成されたカラー塗装部6が形成されている。なお、カラー塗料は、疵検出器3が被検査体1に接触した場合に、被検査体1に色移りしやすいものを用いることが好ましい。
【0018】
次に、このように構成された接触検知装置10の動作について説明する。
【0019】
図1において、被検査体1がサポートロール2に支持されながら高速に紙面手前に進んでいるとする。疵検出器3は、交流電流を流したコイルを近接させて、電磁誘導により被検査体に渦電流を発生させ、被検査体の疵によって生じた渦電流の変化を検出して疵を検知する。
【0020】
疵検出器3による検査中においては、導電性塗装部5に電源8から電圧を印加しておき、電流計7により電流を測定する。被検査体1と疵検出器3が接触していない状態では、導電性塗装部5には、電流が流れない。
【0021】
一方、被検査体1の形状が悪く、被検査体1に疵検出器3が接触した場合には、疵検出器3導電性塗装部5を介して被検査体1に電流が流れ、電流計7で電流が流れたことが検出される。電流計7により導電性塗装部5に電流が流れたか否かを検出することで、被検査体1に疵検出器3が接触したか否かを検知することができる。
【0022】
また、被検査体1に疵検出器3が接触した際には、導電性塗装部5の表面に形成されたカラー塗装部6の塗装が剥がれると共に、剥がれた塗装が被検査体1に付着する。電流計7によって被検査体1に疵検出器3が接触したか否かを検知しただけでは、電流計7がノイズを検出することにより誤検知してしまうおそれがある。そこで、電流計7の電流値と共に、カラー塗装部6の塗装の剥がれ、および被検査体1に移ったカラー塗料のうち少なくとも一方を目視などにより確認することにより、より正確に被検査体1に疵検出器3が接触したことを検知することができる。
【0023】
また、被検査体1に移ったカラー塗料を検知すれば、被検査体1のどの位置において被検査体1に疵検出器3が接触したかを知ることができる。
【0024】
なお、導電性塗装部5が設けられていれば、被検査体1に疵検出器3が接触したことを検知することができるため、カラー塗装部6は設けられていなくてもよい。
【0025】
本発明によれば、疵検出器3と被検査体1の間に流れる電流を検知するだけで接触を検知するため、シンプルで安価な構造が実現できる。さらに、導電性塗料を疵検出器3の表面に塗装するだけでよいため、疵検出器1の形状に関係なく接触検知装置10を設置することができる。
【0026】
さらに導電性塗装部5の上にカラー塗装部6を塗布することにより、接触時はカラー塗料が剥がれるため、接触検知時に、実際に接触があったことを塗料の剥がれによっても確認することができる。また、カラー塗料に色移り性の良いものを採用することで、接触時にカラー塗料が被検査体1に色移りし、被検査体1のどの部分が接触したかが分かり、日検査体1にあった既存の疵なのか、もしくは、被検査体1に疵検出器3が接触したことによる疵なのかを容易に判別することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 被検査体
2 サポートロール
3 疵検出器
4 絶縁性塗装部
5 導電性塗装部
6 カラー塗装部
7 電流計
8 電源
10 接触検知装置