(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の樹脂部材は樹脂基材の表面の一部に樹脂層が形成されたものである。本発明においては、樹脂基材における樹脂層が形成された樹脂層形成面において樹脂層の非形成領域が存在する場合において本発明の効果を発揮する。以下、本発明を、
図1〜
図12を用いて説明するが、特記しない限り、同じ符号は、形状が異なること以外、同じ部材を意味するものとする。
【0016】
本発明においては、
図1に示すように、樹脂基材1における樹脂層2の形成領域が段落ちにより薄肉化されている。
図1は、本発明の樹脂部材の一例の概略垂直断面図であって、当該樹脂部材の端部を拡大した一部拡大図である。樹脂基材1における樹脂層2の形成領域とは、樹脂基材1の樹脂層形成面において樹脂層2が形成された領域(以下単に、形成領域ということがある)であり、
図1において「12」で表される。樹脂基材1における樹脂層2の非形成領域とは、樹脂基材1の樹脂層形成面において樹脂層2が形成されない領域(以下単に、非形成領域ということがある)であり、
図1において「11」で表される。
【0017】
段落ちとは、樹脂基材1の厚みが減少することであり、本発明においては特に非形成領域11から形成領域12への方向で減少することを意味する。段落ちにより樹脂基材1において厚みが当該減少前の厚みよりも薄い領域(段)が形成される。段落ちにより樹脂基材の厚みが減少する部分を段落ち部10として示している。
【0018】
段落ちによる樹脂基材1の厚みの減少は、
図1に示すように、連続的であってもよいし、または
図2に示すように段階的であってもよい。当該厚みの減少は、樹脂層の収縮に伴う応力集中の緩和の観点から、連続的であることが好ましい。段落ちにより樹脂基材の厚みが連続的に減少する部分を段落ち部10a、段階的に減少する部分を段落ち部10bとして示している。
図2の樹脂部材は、段落ち部10において樹脂基材1の厚みが段階的に減少すること以外、
図1の樹脂部材と同様である。以下、段落ち部10は、連続的段落ち部10aおよび段階的段落ち部10bを包含して意味するものとする。
【0019】
段落ち部10における樹脂基材厚みの連続的または段階的な減少の程度、すなわち勾配、は通常、0.1〜5、好ましくは0.4〜3、より好ましくは0.6〜1.5である。段落ち部10の勾配とは樹脂部材の垂直断面において、樹脂基材1の非形成領域11を基準とした勾配のことである。例えば、当該垂直断面において樹脂基材1の非形成領域11の平行方向に2mm進む間に、厚みが非形成領域の垂直方向に1.6mm減少するときの勾配は0.8(=1.6/2)である。
【0020】
本明細書中、垂直断面は、特記しない限り、樹脂基材1の非形成領域11に対して垂直な断面であって、段落ち部10における厚み減少直前の任意の始点(段落ち部10の始端)13と、当該始点から最短距離(直線距離)で厚み減少が完了する終点(段落ち部10の終端)14とを含む断面のことをいう。
【0021】
本発明においては、樹脂基材1は樹脂層の形成領域12に上記のような段落ち部10を有するので、樹脂層2における非形成領域11側の端部20がその縁端21に近づくほど減少する厚みを有する。このため、樹脂層2の収縮力、特に樹脂部材の垂直断面における樹脂基材1と樹脂層2との界面方向での収縮力を、段落ち部10を設けなかった場合と比較して有意に減少させることができる。その結果、樹脂基材1における樹脂層形成面とは反対側の面15における樹脂層端部20近傍に対応する領域150において、応力集中を十分に緩和できるので、凹状への変形および光学的ひずみの発生を十分に防止できる。当該面15にさらにハードコート層を形成する場合には、樹脂層端部20近傍に対応する領域150でハードコート層形成材料の十分な浸透を達成するため、ハードコート層の剥がれ、白化および膨張も十分に防止することができる。
【0022】
樹脂基材1を構成する樹脂は、あらゆる熱可塑性ポリマーまたは熱硬化性ポリマーであってもよく、成形性の観点からは通常、熱可塑性ポリマーが使用される。熱可塑性ポリマーとしては、熱可塑性を有するあらゆるポリマーが使用可能である。例えば、以下のポリマーおよびそれらの混合物が挙げられる:
ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂およびそれらの変性物;
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリ乳酸(PLA)などのポリエステル系樹脂;
ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)などのポリアクリレート系樹脂;
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンエーテル(PPE)などのポリエーテル系樹脂;
ポリアセタール(POM);
ポリフェニレンサルファイド(PPS);
PA6、PA66、PA11、PA12、PA6T、PA9T、MXD6などのポリアミド系樹脂(PA);
ポリカーボネート系樹脂(PC);
ポリウレタン系樹脂;
フッ素系ポリマー樹脂;および
液晶ポリマー(LCP)。
【0023】
熱硬化性ポリマーとしては、熱硬化性を有するあらゆるポリマーが使用可能である。例えば、以下のポリマーおよびそれらの混合物が挙げられる:
フェノール樹脂;
エポキシ樹脂;
メラミン樹脂;
尿素樹脂。
【0024】
樹脂基材1としては、特に樹脂部材を車両用ウィンドウ部材として使用する場合、透明樹脂基材が使用される。透明樹脂基材を構成する樹脂としては、上記ポリマーのうち、ポリカーボネート系樹脂などの透明ポリマーが使用される。
【0025】
樹脂基材1にはあらゆる添加剤が含有されてもよい。このような添加剤として、例えば、着色剤、酸化防止剤等が挙げられる。特に樹脂部材を車両用ウィンドウ部材として使用する場合、透明樹脂基材には着色剤は含有されない。
【0026】
樹脂基材1の厚み(T1)は特に限定されず、通常は1〜20mmであり、好ましくは2〜15mm、より好ましくは3〜10mmであり、特に樹脂部材を車両用ウィンドウ部材として使用する場合においては、3〜5mmが最も好ましい。
【0027】
樹脂基材1における樹脂層形成領域12の段落ち深さtは、樹脂基材1の厚みをT1(mm)としたとき、通常、0.3×T1以下、特に0.1×T1〜0.3×T1であり、樹脂層の収縮に伴う応力集中の緩和の観点から、好ましくは0.15×T1〜0.3×T1であり、より好ましくは0.2×T1〜0.3×T1である。
【0028】
樹脂層2を構成する樹脂は、樹脂基材1を構成する樹脂と同様の樹脂が使用可能であり、成形性の観点からは通常、熱可塑性ポリマーが使用される。熱可塑性ポリマーとしては、樹脂基材1においてと同様のポリマーおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0029】
樹脂層2としては、特に樹脂部材を車両用ウィンドウ部材として使用する場合、有色樹脂層、好ましくは黒色樹脂層が使用される。有色樹脂層の表面に接着剤を塗布し、車両用ウィンドウ部材を固定することにより、車外からの接着剤の透視を防止することができる。有色樹脂層を構成する樹脂としては、上記ポリマーのうち、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂およびそれらの混合物などが好ましく使用される。
【0030】
樹脂層2にはあらゆる添加剤が含有されてもよい。このような添加剤として、樹脂基材1においてと同様の添加剤が挙げられる。特に樹脂部材を車両用ウィンドウ部材として使用する場合、樹脂層2は添加剤として少なくとも着色剤を含有する。着色剤としては、黒色着色剤などの着色剤が使用される。黒色着色剤としては、例えば、カーボンブラックが挙げられる。
【0031】
樹脂層2の厚み(T2)は特に限定されず、通常は樹脂基材1における樹脂層形成領域12の段落ち深さtよりも大きい。樹脂層2の厚み(T2)は通常、1〜20mmであり、好ましくは2〜15mm、より好ましくは2〜10mmであり、特に樹脂部材を車両用ウィンドウ部材として使用する場合においては、2〜4mmが最も好ましい。
【0032】
樹脂層2の厚み(T2)は、樹脂基材1の厚み(T1)との関係で、以下の関係式を満たすことが好ましい。段落ち部を形成しないとき、以下の関係式を満たす場合に、応力集中に基づく本発明の課題が著しく発生するところ、本発明においては、そのような場合においても応力集中を十分に緩和できるためである。
0.4×T1≦T2≦2.0×T1;
望ましくは、0.4×T1≦T2≦1.5×T1;
より望ましくは、0.4×T1≦T2≦1×T1;
最も望ましくは、0.7×T1≦T2≦1×T1。
【0033】
本発明においては、
図3に示すように、樹脂層2における非形成領域11側の端部20が傾斜面22を有することが好ましい。傾斜面22により、樹脂層2の端部20の厚みが形成領域12から形成領域11への方向で減少する。これにより端部20の厚みはその縁端(傾斜面の縁端)21に近づくほどより一層、減少するため、樹脂基材1と樹脂層2との界面方向での樹脂層2収縮力を著しく減少させることができる。その結果、樹脂層形成面とは反対側の面15における樹脂層端部20近傍に対応する領域150において、応力集中をより一層、十分に緩和できる。
図3の樹脂部材は、樹脂層2の端部20が傾斜面を有すること以外、
図1の樹脂部材と同様である。
【0034】
傾斜面22の勾配は、通常、0.1〜4、好ましくは0.2〜2、より好ましくは0.4〜1である。傾斜面22の勾配は、段落ち部10の勾配と同様に、樹脂部材の垂直断面において、樹脂基材1の非形成領域11を基準とした勾配のことである。
【0035】
図3において、傾斜面22の縁端21は、樹脂基材1における非薄肉化領域16と薄肉化領域17との間の段落ち部始端13近傍に配置されているが、当該縁端21は、
図4に示すように樹脂基材1における非薄肉化領域16内に配置されてもよいし、または
図5に示すように薄肉化領域17内に配置されてもよい。なお、
図5において縁端21は、樹脂基材1における薄肉化領域17内にある段落ち部10aの終端14近傍に配置されている。
図4の樹脂部材は、傾斜面22の縁端21が樹脂基材1の非薄肉化領域16内に配置されること以外、
図3の樹脂部材と同様である。
図5の樹脂部材は、傾斜面22の縁端21が樹脂基材1の薄肉化領域17内に配置されること以外、
図3の樹脂部材と同様である。
【0036】
非薄肉化領域16とは、樹脂基材1の樹脂層形成面において、段落ちしていない領域のことである。
薄肉化領域17とは、樹脂基材1の樹脂層形成面において、非薄肉化領域16よりも厚みが薄くなっている領域のことである。
【0037】
本発明においては、樹脂層の収縮に伴う応力集中の緩和の観点から、
図1〜
図5に示すように、樹脂基材1における形成領域12の全体が段落ちにより薄肉化されていることが好ましいが、本発明は、樹脂層の収縮に伴う応力集中が緩和される限り、形成領域12の一部が薄肉化されていなくてもよい。例えば、
図6に示すように、形成領域12が一部に非薄肉化領域16を含んでいてもよい。
図6の樹脂部材は、形成領域12の一部が薄肉化されていないこと以外、
図3の樹脂部材と同様である。
【0038】
本発明の好ましい実施態様においては、樹脂層の収縮に伴う応力集中の緩和の観点から、段落ち部において樹脂基材1の厚みが連続的に減少すること(例えば、
図1および
図3〜
図6の樹脂部材)が好ましい。
【0039】
樹脂層の収縮に伴う応力集中のより一層の緩和の観点から、段落ち部において樹脂基材1の厚みが連続的に減少し、かつ樹脂層2における非形成領域11側の端部20が傾斜面22を有すること(例えば、
図3〜
図6の樹脂部材)がより好ましい。
【0040】
樹脂層の収縮に伴う応力集中のより一層の緩和と成形性の観点から、段落ち部において樹脂基材1の厚みが連続的に減少し、かつ樹脂層2における非形成領域11側の端部20が傾斜面22を有し、かつ傾斜面22の縁端21が段落ち部始端13近傍に配置されていること(例えば、
図3および
図6の樹脂部材)が好ましい。
【0041】
樹脂層の収縮に伴う応力集中のより一層の緩和と成形性の観点から、段落ち部において樹脂基材1の厚みが連続的に減少し、かつ樹脂層2における非形成領域11側の端部20が傾斜面22を有し、かつ傾斜面22の縁端21が段落ち部始端13近傍に配置されており、かつ樹脂基材1における形成領域12の全体が段落ちにより薄肉化されていること(例えば、
図3の樹脂部材)が最も好ましい。
【0042】
本発明の樹脂部材は、樹脂基材1を形成した後、樹脂層2を形成することにより製造できる。
【0043】
樹脂基材1の形成方法および樹脂層2の形成方法はそれぞれ上記した所定の形状に成形可能な限り、いかなる方法が採用されてもよい。樹脂基材1および樹脂層2はそれぞれ独立して、例えば、所定の形状に加工された金型を用いて、射出成形法、プレス成形法等を用いて成形する。
【0044】
成形性の観点から好ましい樹脂基材1および樹脂層2の製造方法は、樹脂基材1を射出成形法により形成した後、樹脂層2を射出成形法により形成する方法である。
【0045】
本発明の樹脂部材は、車両用部材、光学用部材、建築用部材などとして有用である。
【0046】
車両用部材としては、例えば、ルーフウィンドウ、フロントウィンドウ、三角窓、リアウィンドウ、リアクオータウィンドウ、バックウインドウなどの車両用ウィンドウ部材が挙げられる。
【0047】
本発明の樹脂部材を、車両用ウィンドウ部材(リアウィンドウ)として使用する場合について、詳しく説明する。
【0048】
本発明の車両用ウィンドウ部材において、樹脂基材1は前記透明樹脂基材であり、樹脂層2は前記有色樹脂層である。
【0049】
本発明の車両用ウィンドウ部材(リアウィンドウ)の一例を
図7(A)に示す。
図7(A)は車外から車両用ウィンドウ部材を見たときの車両用ウィンドウ部材50の概略全体見取り図であり、
図7(B)は
図7(A)におけるA−A断面を矢印方向で見たときの概略断面図であり、
図7(C)は
図7(B)における左側一端の樹脂基材1および樹脂層2の構造を示す拡大断面図である。なお、
図7(C)において省略される右側一端は、
図7(C)における左側一端の樹脂基材1および樹脂層2の構造と左右対称の構造を有している。
【0050】
図7(A)〜(C)に示す車両用ウィンドウ部材50は、
図1に示す樹脂基材1および樹脂層2の構造を採用したものである。
図7(C)における樹脂基材1および樹脂層2の構造は、樹脂基材1および樹脂層2の配置が上下逆の配置になっていること、
図7(C)の左端部において樹脂基材1および樹脂層2が共に屈曲していること、
図7(C)の右方に向けて樹脂基材1が延びていること以外、
図1においてと同様であるため、それらの説明を省略する。
【0051】
本発明の車両用ウィンドウ部材(リアウィンドウ)の別の一例を
図8に示す。
図8において、車外から車両用ウィンドウ部材を見たときの車両用ウィンドウ部材50の概略全体見取り図は
図7(A)においてと略同様であるため、省略する。
図8は、
図7(A)の対応図面におけるA−A断面を矢印方向で見たときの概略断面図における左側一端の樹脂基材1および樹脂層2の構造を示す拡大断面図である。なお、
図8において省略される右側一端は、
図8における左側一端の樹脂基材1および樹脂層2の構造と左右対称の構造を有している。
【0052】
図8に示す車両用ウィンドウ部材50は、
図2に示す樹脂基材1および樹脂層2の構造を採用したものである。
図8における樹脂基材1および樹脂層2の構造は、樹脂基材1および樹脂層2の配置が上下逆の配置になっていること、
図8の左端部において樹脂基材1および樹脂層2が共に屈曲していること、
図8の右方に向けて樹脂基材1が延びていること以外、
図2においてと同様であるため、それらの説明を省略する。
【0053】
本発明の車両用ウィンドウ部材(リアウィンドウ)のまた別の一例を
図9に示す。
図9において、車外から車両用ウィンドウ部材を見たときの車両用ウィンドウ部材50の概略全体見取り図は
図7(A)においてと略同様であるため、省略する。
図9は、
図7(A)の対応図面におけるA−A断面を矢印方向で見たときの概略断面図における左側一端の樹脂基材1および樹脂層2の構造を示す拡大断面図である。なお、
図9において省略される右側一端は、
図9における左側一端の樹脂基材1および樹脂層2の構造と左右対称の構造を有している。
【0054】
図9に示す車両用ウィンドウ部材50は、
図3に示す樹脂基材1および樹脂層2の構造を採用したものである。
図9における樹脂基材1および樹脂層2の構造は、樹脂基材1および樹脂層2の配置が上下逆の配置になっていること、
図9の左端部において樹脂基材1および樹脂層2が共に屈曲していること、
図9の右方に向けて樹脂基材1が延びていること以外、
図3においてと同様であるため、それらの説明を省略する。
【0055】
本発明の車両用ウィンドウ部材(リアウィンドウ)のまた別の一例を
図10に示す。
図10において、車外から車両用ウィンドウ部材を見たときの車両用ウィンドウ部材50の概略全体見取り図は
図7(A)においてと略同様であるため、省略する。
図10は、
図7(A)の対応図面におけるA−A断面を矢印方向で見たときの概略断面図における左側一端の樹脂基材1および樹脂層2の構造を示す拡大断面図である。なお、
図10において省略される右側一端は、
図10における左側一端の樹脂基材1および樹脂層2の構造と左右対称の構造を有している。
【0056】
図10に示す車両用ウィンドウ部材50は、
図4に示す樹脂基材1および樹脂層2の構造を採用したものである。
図10における樹脂基材1および樹脂層2の構造は、樹脂基材1および樹脂層2の配置が上下逆の配置になっていること、
図10の左端部において樹脂基材1および樹脂層2が共に屈曲していること、
図10の右方に向けて樹脂基材1が延びていること以外、
図4においてと同様であるため、それらの説明を省略する。
【0057】
本発明の車両用ウィンドウ部材(リアウィンドウ)のまた別の一例を
図11に示す。
図11において、車外から車両用ウィンドウ部材を見たときの車両用ウィンドウ部材50の概略全体見取り図は
図7(A)においてと略同様であるため、省略する。
図11は、
図7(A)の対応図面におけるA−A断面を矢印方向で見たときの概略断面図における左側一端の樹脂基材1および樹脂層2の構造を示す拡大断面図である。なお、
図11において省略される右側一端は、
図11における左側一端の樹脂基材1および樹脂層2の構造と左右対称の構造を有している。
【0058】
図11に示す車両用ウィンドウ部材50は、
図5に示す樹脂基材1および樹脂層2の構造を採用したものである。
図11における樹脂基材1および樹脂層2の構造は、樹脂基材1および樹脂層2の配置が上下逆の配置になっていること、
図11の左端部において樹脂基材1および樹脂層2が共に屈曲していること、
図11の右方に向けて樹脂基材1が延びていること以外、
図5においてと同様であるため、それらの説明を省略する。
【0059】
本発明の車両用ウィンドウ部材(リアウィンドウ)のまた別の一例を
図12に示す。
図12において、車外から車両用ウィンドウ部材を見たときの車両用ウィンドウ部材50の概略全体見取り図は
図7(A)においてと略同様であるため、省略する。
図12は、
図7(A)の対応図面におけるA−A断面を矢印方向で見たときの概略断面図における左側一端の樹脂基材1および樹脂層2の構造を示す拡大断面図である。なお、
図12において省略される右側一端は、
図12における左側一端の樹脂基材1および樹脂層2の構造と左右対称の構造を有している。
【0060】
図12に示す車両用ウィンドウ部材50は、
図6に示す樹脂基材1および樹脂層2の構造を採用したものである。
図12における樹脂基材1および樹脂層2の構造は、樹脂基材1および樹脂層2の配置が上下逆の配置になっていること、
図12の左端部において樹脂基材1および樹脂層2が共に屈曲していること、
図12の右方に向けて樹脂基材1が延びていること以外、
図6においてと同様であるため、それらの説明を省略する。
【0061】
車両用ウィンドウ部材50において、樹脂基材1における樹脂層形成面とは反対側の面15にはハードコート層、反射防止層などの種々の機能層が形成されてもよい。
【0062】
機能層は、少なくとも反応性化合物を含む機能層形成材料を面15に塗布し、重合または硬化を行うことにより、形成することができる。反応性化合物としては、重合性二重結合を有する重合性モノマーおよび反応性基を有する反応性シリコーン樹脂が挙げられる。
【0063】
重合性モノマーとしては、例えば、アクリル系モノマー、オレフィン系モノマー、ビニルエステル系モノマー、スチレン系モノマー、ハロゲン化ビニル系モノマーなどが挙げられる。好ましくはアクリル系モノマーである。
【0064】
アクリル系モノマーの具体例として、例えば、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジメタクリレート、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル等が挙げられる。
オレフィン系モノマーの具体例として、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ヘキセン等が挙げられる。
ビニルエステル系モノマーとして、例えば、酢酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。
スチレン系モノマーの具体例として、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−クロロスチレン、α−ブロモスチレン、2,5−ジクロロスチレン等が挙げられる。
ハロゲン化ビニル系モノマーの具体例として、例えば、塩化ビニル、フッ化ビニル、テトラフルオロエチレン等が挙げられる。
【0065】
反応性シリコーン樹脂は、反応性基およびシロキサン骨格を含有する化合物である。反応性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基;ビニル基;グリシジル基;水酸基;およびフッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子が挙げられる。これらから選択される1以上の反応性基を反応性シリコーン樹脂は有する。
【0066】
反応性シリコーン樹脂の具体例として、例えば、いわゆるカゴ型構造、ハシゴ型構造またはランダム型構造を有するシルセスキオキサン樹脂が挙げられる。このようなシルセスキオキサン樹脂は、例えば、市販のシルセスキオキサン(シグマ・アルドリッチ社)として入手可能である。
【0067】
機能層形成材料には重合開始剤、溶剤が含有されてもよい。
重合開始剤としては、プラスチックの分野で熱重合開始剤または光重合開始剤として使用されているあらゆる化合物が使用可能である。
【0068】
溶剤は反応性化合物を溶解可能であれば特に限定されるものではない。
【0069】
重合は、重合開始剤の種類に応じて、加熱または光照射により行えばよい。
【0070】
機能層、特にハードコート層の厚みは通常、1〜50μmであり、好ましくは2〜20μmである。
【実施例】
【0071】
実施例1
成形体の製造
図9に示す断面を有する成形体サンプル50を製造した。T1=4mm、t=1mm、T2=3mm、段落ち部10aにおける勾配=1、傾斜面22の勾配=0.58。成形体サンプル50は、
図9において70cmの奥行きを有しており、奥行き方向で同一の断面を有していた。具体的には、ポリカーボネートを溶融し、射出成形法により所定形状の樹脂基材1を製造し、室温まで冷却した。ポリカーボネートおよびポリエチレンテレフタレートの混合ポリマーおよびカーボンブラックを溶融および混合し、これを、樹脂基材1を収容させた金型内に射出することにより、樹脂基材1上に所定形状の樹脂層2を形成し、成形体サンプル50を得た。
【0072】
ハードコート層の形成
成形体サンプル50における面15(
図9参照)にハードコート層を形成した。具体的には、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)溶液(固形分濃度30重量%)に光重合開始剤を添加および混合し、ハードコート層形成材料を調製した。ハードコート層形成材料を面15に塗布し、100℃で6分間乾燥した。照度193mW/cm
2および積算光量1998mJ/cm
2で紫外線を照射することにより塗膜を硬化させ、平均厚み10μmのハードコート層を形成した。
【0073】
評価
ハードコート層を有する成形体サンプルを120℃で40分間加熱処理した。
図9中、x、y、zで示され、かつ奥行きについて中央の位置において、ハードコート層における表面から、ポリカーボネート比率(それぞれCx、Cy、Cz)をIR分析(ATR法)により求めた。
図9においてxとyとの距離およびyとzとの距離はいずれも20mmであった。ポリカーボネート比率はポリカーボネートのC=O強度(1773cm
−1)/アクリレートのC=O強度(1725cm
−1)として求めた。それぞれの測定値をCxに対する割合で示したところ、Cx/Cx=1、Cy/Cx=0.947、Cz/Cx=0.955であった。
【0074】
実施例2
成形体の製造
図7(C)に示す断面を有する成形体サンプル50を製造した。T1=4mm、t=1mm、T2=3mm、段落ち部10aにおける勾配=1。成形体サンプル50は、
図7(C)において70cmの奥行きを有しており、奥行き方向で同一の断面を有していた。具体的には、ポリカーボネートを溶融し、射出成形法により所定形状の樹脂基材1を製造し、室温まで冷却した。ポリカーボネートおよびポリエチレンテレフタレートの混合ポリマーおよびカーボンブラックを溶融および混合し、これを、樹脂基材1を収容させた金型内に射出することにより、樹脂基材1上に所定形状の樹脂層2を形成し、成形体サンプル50を得た。
【0075】
ハードコート層の形成
成形体サンプル50における面15(
図7(C)参照)にハードコート層を形成した。
具体的には、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)溶液(固形分濃度30重量%)に光重合開始剤を添加および混合し、ハードコート層形成材料を調製した。ハードコート層形成材料を面15に塗布し、100℃で6分間乾燥した。照度193mW/cm
2および積算光量1998mJ/cm
2で紫外線を照射することにより塗膜を硬化させ、平均厚み10μmのハードコート層を形成した。
【0076】
評価
ハードコート層を有する成形体サンプルを120℃で40分間加熱処理した。
図7(C)中、x、y、zで示され、かつ奥行きについて中央の位置において、ハードコート層における表面から、ポリカーボネート比率(それぞれCx、Cy、Cz)をIR分析(ATR法)により求めた。
図7(C)においてxとyとの距離およびyとzとの距離はいずれも20mmであった。ポリカーボネート比率はポリカーボネートのC=O強度(1773cm
−1)/アクリレートのC=O強度(1725cm
−1)として求めた。
それぞれの測定値をCxに対する割合で示したところ、Cx/Cx=1、Cy/Cx=0.931、Cz/Cx=0.961であった。
【0077】
実施例3
成形体の製造
図11に示す断面を有する成形体サンプル50を製造した。T1=4mm、t=1mm、T2=3mm、段落ち部10aにおける勾配=1、傾斜面22の勾配=0.58。成形体サンプル50は、
図11において70cmの奥行きを有しており、奥行き方向で同一の断面を有していた。具体的には、ポリカーボネートを溶融し、射出成形法により所定形状の樹脂基材1を製造し、室温まで冷却した。ポリカーボネートおよびポリエチレンテレフタレートの混合ポリマーおよびカーボンブラックを溶融および混合し、これを、樹脂基材1を収容させた金型内に射出することにより、樹脂基材1上に所定形状の樹脂層2を形成し、成形体サンプル50を得た。
【0078】
ハードコート層の形成
成形体サンプル50における面15(
図11参照)にハードコート層を形成した。具体的には、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)溶液(固形分濃度30重量%)に光重合開始剤を添加および混合し、ハードコート層形成材料を調製した。ハードコート層形成材料を面15に塗布し、100℃で6分間乾燥した。照度193mW/cm
2および積算光量1998mJ/cm
2で紫外線を照射することにより塗膜を硬化させ、平均厚み10μmのハードコート層を形成した。
【0079】
評価
ハードコート層を有する成形体サンプルを120℃で40分間加熱処理した。
図11中、x、y、zで示され、かつ奥行きについて中央の位置において、ハードコート層における表面から、ポリカーボネート比率(それぞれCx、Cy、Cz)をIR分析(ATR法)により求めた。
図11においてxとyとの距離およびyとzとの距離はいずれも20mmであった。ポリカーボネート比率はポリカーボネートのC=O強度(1773cm
−1)/アクリレートのC=O強度(1725cm
−1)として求めた。それぞれの測定値をCxに対する割合で示したところ、Cx/Cx=1、Cy/Cx=0.921、Cz/Cx=0.933であった。
【0080】
実施例4
成形体の製造
図9に示す断面を有する成形体サンプル50を製造した。T1=4mm、t=1mm、T2=2mm、段落ち部10aにおける勾配=1、傾斜面22の勾配=0.58。成形体サンプル50は、
図9において70cmの奥行きを有しており、奥行き方向で同一の断面を有していた。具体的には、ポリカーボネートを溶融し、射出成形法により所定形状の樹脂基材1を製造し、室温まで冷却した。ポリカーボネートおよびポリエチレンテレフタレートの混合ポリマーおよびカーボンブラックを溶融および混合し、これを、樹脂基材1を収容させた金型内に射出することにより、樹脂基材1上に所定形状の樹脂層2を形成し、成形体サンプル50を得た。
【0081】
ハードコート層の形成
成形体サンプル50における面15(
図9参照)にハードコート層を形成した。具体的には、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)溶液(固形分濃度30重量%)に光重合開始剤を添加および混合し、ハードコート層形成材料を調製した。ハードコート層形成材料を面15に塗布し、100℃で6分間乾燥した。照度193mW/cm
2および積算光量1998mJ/cm
2で紫外線を照射することにより塗膜を硬化させ、平均厚み10μmのハードコート層を形成した。
【0082】
評価
ハードコート層を有する成形体サンプルを120℃で40分間加熱処理した。
図9中、x、y、zで示され、かつ奥行きについて中央の位置において、ハードコート層における表面から、ポリカーボネート比率(それぞれCx、Cy、Cz)をIR分析(ATR法)により求めた。
図9においてxとyとの距離およびyとzとの距離はいずれも20mmであった。ポリカーボネート比率はポリカーボネートのC=O強度(1773cm
−1)/アクリレートのC=O強度(1725cm
−1)として求めた。それぞれの測定値をCxに対する割合で示したところ、Cx/Cx=1、Cy/Cx=0.952、Cz/Cx=0.959であった。
【0083】
比較例1
成形体の製造
成形体サンプルが
図13(C)に示す断面を有すること以外、実施例1と同様の方法により成形体サンプル100を製造した。T101=4mm、T102=3mm。
【0084】
ハードコート層の形成
成形体サンプル100における面115(
図13(C)参照)にハードコート層を形成したこと以外、実施例1と同様の方法により、ハードコート層を得た。
【0085】
評価
ハードコート層を有する成形体サンプルを120℃で40分間加熱処理した。
図13(C)中、x、y、zで示され、かつ奥行きについて中央の位置において、ハードコート層における表面から、ポリカーボネート比率(それぞれCx、Cy、Cz)を、実施例1と同様の方法により求めた。
図13(C)においてxとyとの距離およびyとzとの距離はいずれも20mmであった。それぞれの測定値をCxに対する割合で示したところ、Cx/Cx=1、Cy/Cx=0.900、Cz/Cx=0.948であった。
【0086】
Cy/Cxの値が比較例1よりも実施例1〜4の方が著しく大きいので、実施例1〜4では比較例1よりも、面15における樹脂層端部20近傍の対応領域150でハードコート層形成材料の浸透が十分に達成されていることが明らかである。この現象は実施例1〜4において応力集中を十分に緩和できたことに起因するものと考えられる。応力が集中すると、当該応力により樹脂基材のポリマーが分子レベルで強制的に配向されるため、当該ポリマーのハードコート層への滲出が起こらず、その結果、Cy/Cxの値は小さくなるためである。