【文献】
CATT,Draft TP for TR36.828 section 7,3GPP TSG-RAN WG1 Meeting #69 R1-122064,[online],2012年 5月12日,pages 1-2,[検索日 2017.09.27],URL,http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_69/Docs/R1-122064.zip
【文献】
Huawei, HiSilicon,Methods to support different time scales for TDD UL-DL reconfiguration,3GPP TSG-RAN WG1 Meeting #69 R1-122909,[online],2012年 5月25日,pages 1-4,[検索日 2017.09.27],URL,http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_69/Docs/R1-122909.zip
【文献】
Renesas Mobile Europe Ltd.,Discussion on Enhancements for Dynamic TDD UL-DL Configuration,3GPP TSG-RAN WG1 Meeting #69 R1-122363,[online],2012年 5月12日,pages 1-4,[検索日 2017.09.27],URL,http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_69/Docs/R1-122363.zip
【文献】
Alcatel-Lucent Shanghai Bell, Alcatel-Lucent,Discussion on timing issues with dynamic TDD UL-DL configuration,3GPP TSG-RAN WG1 Meeting #69 R1-122510,[online],2012年 5月12日,pages 1-8,[検索日 2017.09.27],URL,http://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG1_RL1/TSGR1_69/Docs/R1-122510.zip
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記通信制御装置は、コンフィギュレーション候補ごとに前記データ送信のタイミングと前記制御シグナリングのタイミングとを関連付けるテーブルを記憶する記憶部、をさらに備え、
前記データ送信のタイミング及び前記制御シグナリングのタイミングの一方は、前記テーブル内の指定されたコンフィギュレーション候補についてのエントリを参照することにより、他方のタイミングに基づいて決定される、
請求項5又は請求項6に記載の通信制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
また、以下の順序で説明を行う。
1.概要
1−1.リンク方向コンフィギュレーションの設定
1−2.リンク方向コンフィギュレーションのシグナリング
1−3.リンク方向の衝突
1−4.追加的な課題
2.通信制御システムの構成
2−1.システムの概要
2−2.基本的な原理
2−3.通信制御装置の構成例
2−4.ダイナミックTDD端末の構成例
3.処理の流れの例
4.まとめ
【0019】
<1.概要>
[1−1.リンク方向コンフィギュレーションの設定]
図1は、TD−LTEにおけるリンク方向コンフィギュレーションの一例について説明するための説明図である。
図1を参照すると、LTE方式において採用される無線フレームのフレームフォーマットが示されている。1つの無線フレーム(radio frame)は、10個のサブフレーム(#0〜#9)を含む。各サブフレームの時間長は1msecであり、1つの無線フレームの時間長は10msecである。リンク方向は、サブフレーム単位で設定される。
図1の例において、「D」とラベリングされたサブフレームのリンク方向はダウンリンクであり、当該サブフレームをダウンリンクサブフレームという。「U」とラベリングされたサブフレームのリンク方向はアップリンクであり、当該サブフレームをアップリンクサブフレームという。「S」とラベリングされたサブフレームは、TD−LTEに特有のスペシャルサブフレームである。
図1に例示したように、基地局(eNB)から送信されるダウンリンク信号は、遅延dTと共に端末装置(UE)へ到達する。端末装置は、基地局へ到達するアップリンク信号の遅延dTを考慮に入れて、基地局のアップリンクサブフレームのタイミングよりも先行してアップリンク信号を送信する。スペシャルサブフレームは、ダウンリンクサブフレームからアップリンクサブフレームへの切替えのタイミングで挿入され、端末装置でのダウンリンク信号の受信及びアップリンク信号の送信のタイミングが重ならないようにする緩衝期間としての役割を有する。スペシャルサブフレームは、UEによりダウンリンク信号が受信されるダウンリンクパイロットタイムスロットと、ガード期間(Guard Period)と、UEによりアップリンク信号が送信されるアップリンクパイロットタイムスロットとを含む。なお、スペシャルサブフレームにおいても基地局から端末装置へダウンリンクデータは送信され得る。その意味において、スペシャルサブフレームはダウンリンクサブフレームの一種であると見なすこともできる。
【0020】
図2は、非特許文献1において定義されている、TD−LTEにおいて設定可能な7種類のリンク方向コンフィギュレーションの一覧を示している。
図2から理解されるように、0番目のサブフレーム(#0)及び5番目のサブフレーム(#5)は、いずれのコンフィギュレーションにおいてもダウンリンクサブフレームに設定される。1番目のサブフレーム(#1)は、いずれのコンフィギュレーションにおいてもスペシャルサブフレームに設定される。2番目のサブフレーム(#2)は、いずれのコンフィギュレーションにおいてもアップリンクサブフレームに設定される。残りのサブフレームの設定は、コンフィギュレーションごとに異なる。
【0021】
図2の右端には、アップリンクサブフレームの数とダウンリンクサブフレームの数との構成比(UL−DL構成比)が示されている。Configuration0において、アップリンクサブフレームの数は6個、ダウンリンクサブフレームの数は2個であり、UL−DL構成比は6:2である。Configuration1において、アップリンクサブフレームの数は4個、ダウンリンクサブフレームの数は4個であり、UL−DL構成比は4:4である。Configuration2において、アップリンクサブフレームの数は2個、ダウンリンクサブフレームの数は6個であり、UL−DL構成比は2:6である。Configuration3において、アップリンクサブフレームの数は3個、ダウンリンクサブフレームの数は6個であり、UL−DL構成比は3:6である。Configuration4において、アップリンクサブフレームの数は2個、ダウンリンクサブフレームの数は7個であり、UL−DL構成比は2:7である。Configuration5において、アップリンクサブフレームの数は1個、ダウンリンクサブフレームの数は8個であり、UL−DL構成比は1:8である。Configuration6において、アップリンクサブフレームの数は5個、ダウンリンクサブフレームの数は3個であり、UL−DL構成比は5:3である。
【0022】
TD−LTE方式に従って動作する無線通信システムは、7種類のリンク方向コンフィギュレーションのうちのいずれを用いるべきかを、UL−DLトラフィック比に基づいて決定し得る。一般的に、アップリンク信号は、送信が許可される前に、端末装置のアップリンクバッファによりバッファリングされる。一方、ダウンリンク信号は、送信がスケジューリングされる前に、コアネットワーク内のP−GW(PDN Gateway)によりバッファリングされる。バッファ待機中のトラフィック量がバッファ容量を超えると、バッファオーバフローが発生する。また、所定の期間を超えてバッファリングされたトラフィックは、タイムアウトとして破棄され得る。そこで、端末装置は、バッファ待機中のアップリンクトラフィック量を示すバッファステータスレポートを、周期的に基地局へ送信する。P−GWは、バッファ待機中のダウンリンクトラフィック量を示すバッファシグナリングを提供する。それにより、基地局又はその他の制御ノード内のスケジューラが、各セルについてのUL−DLトラフィック比を算出することができる。例えば、
図3Aの例では、バッファ待機中のダウンリンクトラフィックよりも、バッファ待機中のアップリンクトラフィックの方が多い。この場合、アップリンク率の高いリンク方向コンフィギュレーションを設定することにより、バッファ待機中のアップリンクトラフィックを減少させることができる。一方、
図3Bの例では、バッファ待機中のアップリンクトラフィックよりも、バッファ待機中のダウンリンクトラフィックの方が多い。この場合、ダウンリンク率の高いリンク方向コンフィギュレーションを設定することにより、バッファ待機中のダウンリンクトラフィックを減少させることができる。
【0023】
[1−2.リンク方向コンフィギュレーションのシグナリング]
基地局又はその他の制御ノードにより設定されたリンク方向コンフィギュレーションは、基地局から端末装置へのSIB1を用いたブロードキャストによってシグナリングされる。現在の標準仕様におけるSIB1の更新の周期は、640msecである。上記非特許文献2によれば、SIB1を用いたリンク方向コンフィギュレーションの更新の周期は、320msecに短縮され得る。SIB1は、DL−SCH(Downlink Shared Channel)にマッピングされる様々なタイプのSIB(System Information Block)のうちの1つである。SIBを搬送するメッセージを、SI(System Information)メッセージという。SIメッセージの最短の送信周期は、80msecである。従って、SIメッセージでリンク方向コンフィギュレーションがシグナリングされる限り、リンク方向コンフィギュレーションの更新周期は最短で80msecである。
【0024】
近年、無線通信のトラフィックは飛躍的に増加している。UL−DLトラフィック比は、頻繁に変動する。従って、既存の手法におけるリンク方向コンフィギュレーションのシグナリング周期は、UL−DLトラフィック比の変動に追随するために十分とは言えない。リンク方向コンフィギュレーションの更新がUL−DLトラフィック比の変動に追いつかなければ、バッファ待機中のトラフィック量が増加し、リソース効率の低下及びスループットの低下が引き起こされる。シグナリングオーバヘッドを考慮しないとすると、1つの無線フレームの時間長が10msecであることから、リンク方向コンフィギュレーションの理想的な更新の周期は、10msecである。但し、リンク方向コンフィギュレーションのシグナリングの仕組みを既存の手法から全く変更すれば、既存の端末装置がリンク方向コンフィギュレーションを取得できず動作不能に陥ってしまう。
【0025】
そこで、一実施形態において、既存の手法よりも短い周期でリンク方向コンフィギュレーションを端末装置へシグナリングするための、SIメッセージとは異なる新たなメッセージが導入される。導入される当該新たなメッセージを、本明細書では、ダイナミックコンフィギュレーション(DC)メッセージという。また、リンク方向コンフィギュレーションの設定のためにSIメッセージのみを受信する端末装置を、レガシー端末(レガシーUE)という。これに対し、DCメッセージを受信する端末装置を、ダイナミックTDD端末(ダイナミックTDD UE)という。
【0026】
図4は、DCメッセージを用いたリンク方向コンフィギュレーションのシグナリングについて説明するための説明図である。
【0027】
図4の上段には、レガシー端末が周期C1でSIB1を搬送するSIメッセージを周期的に受信する様子が示されている。SIB1は、その時点でレガシー端末のために設定されているリンク方向コンフィギュレーションの識別子(
図2に例示したコンフィギュレーション番号0〜6のいずれか)を含む。このリンク方向コンフィギュレーションに従って、レガシー端末は、自らの無線通信回路のリンク方向をサブフレーム単位で設定する。SIメッセージのシグナリング周期C1は、例えば、320msecである。ここで、仮にSIメッセージの受信から20msec後の時点でUL−DLトラフィック比が大きく変動したとすると、次のSIメッセージの受信までの300msecの期間にわたって、設定されているリンク方向コンフィギュレーションとUL−DLトラフィック比との間のミスマッチが継続する。
【0028】
図4の下段には、ダイナミックTDD端末が周期C2(<C1)でDCメッセージを周期的に受信する様子が示されている。DCメッセージは、その時点でダイナミックTDD端末のために設定されているリンク方向コンフィギュレーションの識別子(
図2に例示したコンフィギュレーション番号0〜6のいずれか)を含む。このリンク方向コンフィギュレーションに従って、ダイナミックTDD端末は、自らの無線通信回路のリンク方向をサブフレーム単位で設定する。DCメッセージのシグナリング周期C2は、10msecの整数倍であってよい。例えば、シグナリング周期C2=40msecであれば、リンク方向コンフィギュレーションとUL−DLトラフィック比との間のミスマッチが継続する期間は、最悪のケースでも40msecである。
【0029】
一実施形態において、基地局は、SIメッセージを用いてレガシー端末へ第1のリンク方向コンフィギュレーションをシグナリングし、DCメッセージを用いてダイナミックTDD端末へ第2のリンク方向コンフィギュレーションをシグナリングする。本明細書において、周期C1で更新され得る第1のリンク方向コンフィギュレーションを、レガシー用コンフィギュレーションという。また、第2のリンク方向コンフィギュレーションを、ダイナミックTDD用コンフィギュレーションという。基地局は、これら2つのコンフィギュレーションをシグナリングするものの、実際には、後に説明するようにダイナミックTDD用コンフィギュレーションに従って動作する。なお、基地局は、ダイナミックTDD端末の新規接続又はアクティブモードへの復帰などの所定のイベントが発生した際に、DCメッセージを、そのシグナリング周期の経過を待つことなく送信してもよい。
【0030】
他の実施形態において、SIメッセージを用いたレガシー端末へのシグナリングは、省略されてもよい。本開示に係る技術は、互換性が保証されるべきレガシー端末の存在しないシステムであって、短い周期で更新され得るダイナミックTDD用コンフィギュレーションのみがシグナリングされるシステムにも適用可能である。
【0031】
[1−3.リンク方向の衝突]
短い周期でダイナミックTDD用コンフィギュレーションを更新する場合、更新前及び更新後の2つのコンフィギュレーションの間で、リンク方向の衝突が頻繁に発生し得る。ここでは、リンク方向の衝突とは、更新前の無線フレームのi番目(i=0,…,9)のサブフレームのリンク方向と、更新後の無線フレームのi番目のサブフレームのリンク方向とが互いに異なることをいう。リンク方向の衝突は、衝突の発生するタイミングでのデータ送信又は制御シグナリングのロスをもたらし、通信のスループットを低下させる。以下、非特許文献3において説明されている2つのケースについて説明する。
【0032】
(1)ダウンリンク送信に対するACK/NACK
確認応答(ACK)及び否定応答(NACK)は、データ送信の信頼性を確保するための仕組みであるHARQ(ハイブリッド自動再送要求:Hybrid Automatic Repeat Request)のベースとなる基本的な制御シグナリングである。ダウンリンク送信のタイミングとACK/NACKのタイミングとのオフセットが、3GPP TS36.213のテーブル10.1.3.1−1において、リンク方向コンフィギュレーションごとに定義されている(表1参照)。
【0034】
表1は、ダウンリンク送信と、当該ダウンリンク送信に関連付けられるACK/NACKとの間のタイミングのオフセットを、サブフレーム数を単位として示している。ACK/NACKの送信タイミングについて、
図5も参照しながら説明する。
図5の上段には、Configuration3が設定された連続する2つの無線フレームF11及びF12が示されている。無線フレームF11及びF12において、ダウンリンク送信は、0番目、1番目、5番目、6番目、7番目、8番目及び9番目のサブフレームにおいて発生し得る。表1のConfiguration3の行を参照すると、0番目のサブフレームでのダウンリンク送信に対するACK/NACKは、オフセット4を示す4番目のサブフレームで送信され得る。1番目のサブフレームでのダウンリンク送信に対するACK/NACKは、オフセット11を示す(次の無線フレームの)2番目のサブフレームで送信され得る。5番目のサブフレームでのダウンリンク送信に対するACK/NACKは、オフセット7を示す(次の無線フレームの)2番目のサブフレームで送信され得る。6番目のサブフレームでのダウンリンク送信に対するACK/NACKは、オフセット6を示す(次の無線フレームの)2番目のサブフレームで送信され得る。7番目のサブフレームでのダウンリンク送信に対するACK/NACKは、オフセット6を示す(次の無線フレームの)3番目のサブフレームで送信され得る。8番目のサブフレームでのダウンリンク送信に対するACK/NACKは、オフセット5を示す(次の無線フレームの)3番目のサブフレームで送信され得る。9番目のサブフレームでのダウンリンク送信に対するACK/NACKは、オフセット5を示す(次の無線フレームの)4番目のサブフレームで送信され得る。こうしたタイミングの対応関係が、
図5では点線の矢印で示されている。無線通信に関与する装置は、表1のような仕様化されたテーブルを予め記憶し、ダウンリンク送信に対するACK/NACKの送信タイミングを、当該テーブルを参照することにより決定し得る。
【0035】
しかし、リンク方向コンフィギュレーションが更新される場合、更新前の無線フレームと更新後の無線フレームとの間でリンク方向の異なるサブフレームが存在する。
図5の下段では、Configuration3が設定された無線フレームF21に続く無線フレームF22に、Configuration2が設定されている。この場合、3番目及び4番目のサブフレームでリンク方向の衝突が発生する。その結果として、端末装置は、無線フレームF21の7番目、8番目及び9番目のサブフレーム、並びに無線フレームF22の0番目のサブフレームでのダウンリンク送信に対するACK/NACKを、上記テーブルによって指定される無線フレームF22の3番目及び4番目のサブフレームで送信することができない。ACK/NACKがロスすると、基地局は、対応するダウンリンク送信が正常に行われていたとしてもそのことを認識できず、送信済みのデータを再送し得る。それにより、無線リソースが無駄に消費され、システムのスループットは低下し得る。
【0036】
(2)アップリンク送信に先立つUL許可
UL許可(Uplink Grant)は、アップリンク送信がスケジューリングされたことを端末装置へ通知するための制御シグナリングである。アップリンク送信とUL許可との間のタイミングのオフセットは、3GPP TS36.213のテーブル8−2において、リンク方向コンフィギュレーションごとに定義されている(表2参照)。
【0038】
表2は、アップリンク送信と、当該アップリンク送信に関連付けられるUL許可との間のタイミングのオフセットを、サブフレーム数を単位として示している。なお、表1ではACK/NACKの送信タイミングを基準とする後方(過去)へのオフセットが示されていたのに対して、表2ではUL許可の送信タイミングを基準とする前方(未来)へのオフセットが示されている。UL許可の送信タイミングについて、
図6も参照しながら説明する。
図6の上段には、Configuration4が設定された連続する2つの無線フレームF31及びF32が示されている。無線フレームF31及びF32において、アップリンク送信は、2番目及び3番目のサブフレームにおいて発生し得る。表2のConfiguration4の行を参照すると、2番目のサブフレームでのアップリンク送信についてのUL許可は、オフセット4を示す(前の無線フレームの)8番目のサブフレームで送信され得る。3番目のサブフレームでのアップリンク送信についてのUL許可は、オフセット4を示す(前の無線フレームの)9番目のサブフレームで送信され得る。こうしたタイミングの対応関係が、
図6では点線の矢印で示されている。無線通信に関与する装置は、表2のような仕様化されたテーブルを予め記憶し、アップリンク送信についてのUL許可の送信タイミングを、当該テーブルを参照することにより決定し得る。
【0039】
しかし、リンク方向コンフィギュレーションが更新される場合、更新前の無線フレームと更新後の無線フレームとの間でリンク方向の異なるサブフレームが存在する。
図6の下段では、Configuration0が設定された無線フレームF41に続く無線フレームF42に、Configuration4が設定されている。この場合、4番目、7番目、8番目及び9番目のサブフレームでリンク方向の衝突が発生する。その結果として、基地局は、無線フレームF42の2番目及び3番目のサブフレームでのアップリンク送信についてのUL許可を、上記テーブルによって指定される無線フレームF41の8番目及び9番目のサブフレームで送信することができない。UL許可が送信されなければ、端末装置は、アップリンク送信を実行しない。この場合、無線フレームF42の2番目及び3番目のサブフレームが使用されないことになるため、無線リソースの利用効率は下がり、システムのスループットは低下し得る。
【0040】
(3)既存の手法の問題点
非特許文献3は、リンク方向コンフィギュレーションが短い周期で更新される状況での上述した課題に対するいくつかの解決策を提案している。それら解決策は、制御シグナリング(ACK/NACK又はUL許可)のタイミングの延期又は前倒しなどであり、いずれも、リンク方向の衝突の判定と制御シグナリングのタイミングの個別の変更とを要する。リンク方向コンフィギュレーションが短い周期で更新されることを前提とすれば、そうした解決策は、処理の負荷を著しく増大させ、電力消費を悪化させることに加えて、複雑な実装に起因するコストの増加も招くというデメリットを有する。本開示に係る技術は、これらデメリットを回避しつつ、リンク方向コンフィギュレーションが短い周期で更新される状況において、リンク方向の衝突に起因するスループットの低下を防ぐことのできる、改善された仕組みを提供する。
【0041】
[1−4.追加的な課題]
なお、ダイナミックTDD用コンフィギュレーションがレガシー用コンフィギュレーションよりも短い周期で更新される結果として、これら2つのコンフィギュレーションの間でもリンク方向の衝突が生じ得る。2つのコンフィギュレーションの間のリンク方向の衝突は、レガシー端末の同期動作に影響を与える可能性がある。
【0042】
一般的に、端末装置の同期動作は、基本同期及び同期トラッキングを含む。基本同期は、端末装置の動作タイミングが基地局の動作タイミングに全く同期していない状態からの同期を指す。基本同期は、端末装置がPSS(Primary Synchronization Signal)及びSSS(Secondary Synchronization Signal)をサーチすることにより行われる。端末装置は、基本同期を通じて、接続先のセルのセルIDを取得し、無線フレームの大まかなタイミングを知る。同期トラッキングは、基本同期が完了した後、同期精度を向上するために実行される。同期トラッキングは、端末装置がCRS(Cell-specific Reference Symbol)を受信することにより行われる。CRSは、
図7Aに例示されるように、原則として、各ダウンリンクサブフレームのPDCCH(Physical Downlink Control Channel)及びPDSCH(Physical Downlink Shared Channel)に分散的に挿入される。端末装置は、アイドルモード(RRC_Idle)及びアクティブモード(RRC_Connected)の双方において、自らを宛て先とするデータが存在するかに関わらず、これらダウンリンクサブフレームのCRSを受信することにより、動作タイミングの同期を維持する。なお、ダウンリンクサブフレームがMBSFN(MBMS Single Frequency Network)サブフレームに設定されると、当該ダウンリンクサブフレームのPDSCHは、MBMS(Multimedia Broadcast Multicast Services)信号のブロードキャスト又はマルチキャストのためにのみ使用される。
図7Bに例示されるように、MBSFNサブフレームのPDSCHには、CRSは挿入されない。
【0043】
ここで、例えば、レガシー用コンフィギュレーションとしてConfiguration2、ダイナミックTDD用コンフィギュレーションとしてConfiguration4が設定されたものとする(
図2参照)。基地局はダイナミックTDD用コンフィギュレーションに従って動作するため、3番目のサブフレーム(#3)のリンク方向はアップリンクであり、7番目のサブフレーム(#7)のリンク方向はダウンリンクである。しかし、レガシー端末は、レガシー用コンフィギュレーションに従って、3番目のサブフレームのリンク方向はダウンリンク、7番目のサブフレームのリンク方向はアップリンクであると認識する。そして、レガシー端末は、3番目のサブフレームにおいて同期トラッキングのためにCRSの受信を試みる。しかし、基地局は実際にはアップリンクサブフレームである当該サブフレームにおいてCRSを送信しない。結果として、レガシー端末の同期トラッキングの精度が低下するリスクが生じる。なお、7番目のサブフレームでは、基地局はCRSを送信するものの、レガシー端末は当該CRSを受信しない。しかし、一部のCRSが受信されないとしても、レガシー端末の同期トラッキングの精度は低下しないため、7番目のサブフレームのリンク方向の衝突の影響は小さい。
【0044】
次節より説明する一実施形態によれば、このような2つのコンフィギュレーションの間のリンク方向の衝突の影響も回避され又は緩和され得る。
【0045】
<2.通信制御システムの構成>
[2−1.システムの概要]
図8は、本開示に係る技術の一実施形態に係る通信制御システム1の構成の一例を示す説明図である。
図8を参照すると、通信制御システム1は、基地局100を含む。基地局(eNB)100は、セル102の内部に位置するレガシー端末104及びダイナミックTDD端末200へ、TD−LTE方式に従って無線通信サービスを提供する。基地局100は、典型的にはEPC(Evolved Packet Core)として実現されるコアネットワーク106と接続される。コアネットワーク106は、例えば、MME(Mobility Management Entity)、S−GW(Serving Gateway)及びP−GWなどの様々な制御ノードを含む。
【0046】
レガシー端末104は、レガシー用コンフィギュレーションに従って動作する端末装置である。ダイナミックTDD端末200は、ダイナミックTDD用コンフィギュレーションに従って動作することの可能な端末装置である。ダイナミックTDD端末200は、追加的に、レガシー用コンフィギュレーションに従って動作することも可能であってよい。これらリンク方向コンフィギュレーションを設定し、端末装置のために制御シグナリングを行う制御機能は、基地局100、又は基地局100を介してこれら端末装置と通信するいずれかの制御ノードに配置され得る。以下の説明では、一例として、基地局100が当該制御機能を有するものとする。
【0047】
[2−2.基本的な原理]
本節では、通信制御システム1において、ダイナミックTDD用コンフィギュレーションを短い周期で更新することを可能としつつも、リンク方向の衝突に起因するスループットの低下を防ぐための、基本的な原理について説明する。
【0048】
(1)新たなシグナリングの導入
本実施形態において、基地局100は、レガシー端末104のためにレガシー用コンフィギュレーションを設定する。また、基地局100は、ダイナミックTDD端末200のためにダイナミックTDD用コンフィギュレーションを設定する。ダイナミックTDD用コンフィギュレーションは、レガシー用コンフィギュレーションのシグナリング周期よりも短い時間間隔で更新可能である。さらに、基地局100は、ダイナミックTDD用コンフィギュレーションに依存することなく、第1のリンク方向(DL又はUL)のデータ送信に関連付けられる第2のリンク方向(UL又はDL)の制御シグナリングのタイミングを設定する。ここでの制御シグナリングは、ダウンリンク送信に関連付けられるACK/NACK及びアップリンク送信に関連付けられるUL許可のうちの一方又は双方を含み得る。そして、基地局100は、これら設定に基づいて、いくつかの種類のシグナリングを実行する。
【0049】
図9Aは、本実施形態において導入され得る新たなシグナリングの第1の例について説明するための説明図である。
図9Aを参照すると、基地局100は、レガシー端末104に向けてのシグナリングSIG0、並びにダイナミックTDD端末200に向けてのシグナリングSIG1及びシグナリングSIG2を実行する。例えば、シグナリングSIG0は、レガシー用コンフィギュレーションをレガシー端末104へ通知するSIメッセージである。シグナリングSIG1は、ダイナミックTDD用コンフィギュレーションをダイナミックTDD端末200へ通知するダイナミックコンフィギュレーション(DC)メッセージである。シグナリングSIG2は、ダウンリンク送信に関連付けられるACK/NACKの送信タイミングをダイナミックTDD端末200へ通知する新たなメッセージである。ダイナミックTDD端末200は、受信されるシグナリングSIG2に基づいて、ダウンリンク送信が行われるダウンリンクサブフレームとACK/NACKを送信すべきアップリンクサブフレームとの間のオフセットを認識する。
【0050】
図9Bは、本実施形態において導入され得る新たなシグナリングの第2の例について説明するための説明図である。
図9Bを参照すると、基地局100は、レガシー端末104に向けてのシグナリングSIG0、並びにダイナミックTDD端末200に向けてのシグナリングSIG1及びシグナリングSIG3を実行する。例えば、シグナリングSIG3は、UL許可に関連付けられるアップリンク送信の送信タイミングをダイナミックTDD端末200へ通知する新たなメッセージである。ダイナミックTDD端末200は、シグナリングSIG3に基づいて、UL許可が受信されるダウンリンクサブフレームとアップリンク送信が許可されたアップリンクサブフレームとの間のオフセットを認識する。
【0051】
図9Cは、本実施形態において導入され得る新たなシグナリングの第3の例について説明するための説明図である。
図9Cを参照すると、基地局100は、レガシー端末104に向けてのシグナリングSIG0、並びにダイナミックTDD端末200に向けてのシグナリングSIG1、シグナリングSIG2及びシグナリングSIG3を実行する。
【0052】
図9A〜
図9Cのいずれの例においても、シグナリングSIG2及びSIG3は、制御シグナリングのタイミングが変更されない限り、ダイナミックTDD端末200に一度だけ送信されれば十分である。シグナリングSIG2及びSIG3のトリガは、例えば、ダイナミックTDD端末200の基地局100への新規接続(他のシステムからのハンドオーバを含む)、又はダイナミックTDD端末200のアイドルモードからアクティブモードへの復帰などであってよい。
【0053】
(2)シグナリングされる値(SIG0)
本実施形態において、基地局100は、シグナリングSIG0〜SIG3の各々において、コンフィギュレーション候補のセットのうちの1つをそれぞれ指定する。コンフィギュレーション候補のセットとは、典型的には、
図2に例示したConfiguration0〜Configuration6を含み得る。コンフィギュレーション候補のセットは無線通信ネットワークに固有であってもよく、その場合、いくつかのリンク方向コンフィギュレーションがコンフィギュレーション候補のセットから除外され得る。
【0054】
シグナリングSIG0では、典型的には、アップリンク率のより高いコンフィギュレーション候補が、レガシー用コンフィギュレーションとして指定され得る。例えば、アップリンク率の最も高いConfiguration0がレガシー用コンフィギュレーションとして指定される場合、レガシー端末104は、0番目及び5番目のサブフレームをダウンリンクサブフレームとして認識する。そして、基地局100が他のいずれのコンフィギュレーションに従って動作したとしても、0番目及び5番目のサブフレームはダウンリンクサブフレームに維持される。従って、レガシー端末104がCRSの受信を試みるサブフレームにおいて基地局100はCRSを送信するため、レガシー端末104により正常に同期トラッキングが行われることを保証することができる。
【0055】
(3)シグナリングされる値(SIG1)
シグナリングSIG1では、ネットワーク内のアップリンクトラフィックとダウンリンクトラフィックとの間の比率(UL−DLトラフィック比)に応じて選択されるコンフィギュレーション候補が、ダイナミックTDD用コンフィギュレーションとして指定される。例えば、コンフィギュレーション候補のセットがConfiguration0〜Configuration2のみを含む場合において、アップリンクトラフィックの比率がより高いときは、Configuration0が指定され得る。同じ場合において、ダウンリンクトラフィックの比率がより高いときは、Configuration2が指定され得る。同じ場合において、アップリンクトラフィックの比率とダウンリンクトラフィックの比率との間の差が小さいときは、Configuration1が指定され得る。UL−DLトラフィック比のモニタリングは、例えば、1〜数無線フレーム分の(即ち、10〜数十msecの)時間間隔で行われてよい。将来のUL−DLトラフィック比の予測に基づいて、ダイナミックTDD用コンフィギュレーションが選択されてもよい。
【0056】
(4)シグナリングされる値(SIG2)
上述したように、シグナリングSIG2は、ダウンリンク送信に関連付けられるACK/NACKの送信タイミングをダイナミックTDD端末200へ通知する。シグナリングSIG2では、基地局100は、コンフィギュレーション候補のセットのうちダウンリンク比率のより高い候補を指定し得る。特に、シグナリングSIG2は、他のコンフィギュレーション候補においてダウンリンクサブフレームになり得る位置の全てのサブフレームがダウンリンクサブフレームとして定義されているコンフィギュレーション候補を指定することが好適である。例えば、コンフィギュレーション候補のセットがConfiguration0〜Configuration6を含む場合には、シグナリングSIG2は、Configuration5を指定し得る。
【0057】
図10Aは、シグナリングSIG2に基づくACK/NACKの新たな送信タイミングの第1の例について説明するための説明図である。
図10Aの例では、上段に示したように、シグナリングSIG2において、Configuration5が指定されたものとする。一方、
図10Aの下段には、無線フレームF51及びそれに続く無線フレームF52が示されている。無線フレームF51に設定されたダイナミックTDD用コンフィギュレーションは、Configuration3である。無線フレームF52に設定されたダイナミックTDD用コンフィギュレーションは、Configuration2である。この場合、3番目、4番目及び7番目のサブフレームでリンク方向の衝突が発生する。しかし、表1のConfiguration5の行を参照すると、いずれのダウンリンクサブフレームでのダウンリンク送信に対するACK/NACKも、2番目のサブフレームにおいて送信される。具体的には、
図10Aの下段において破線の矢印で示されているように、無線フレームF51の1番目、5番目、6番目、7番目及び8番目のダウンリンクサブフレームでのダウンリンク送信に対するACK/NACKは、無線フレームF52の2番目のアップリンクサブフレームで送信される。無線フレームF51の9番目のダウンリンクサブフレームでのダウンリンク送信に対するACK/NACKは、無線フレームF52の次の無線フレームの2番目のアップリンクサブフレームで送信される。無線フレームF52の0番目のダウンリンクサブフレームでのダウンリンク送信に対するACK/NACKは、無線フレームF52の次の無線フレームの2番目のアップリンクサブフレームで送信される。そして、これらACK/NACKが送信されるアップリンクサブフレームにおいてリンク方向の衝突は発生しないため、リンク方向の衝突に起因するACK/NACKのロスは回避される。
【0058】
図10Bは、シグナリングSIG2に基づくACK/NACKの新たな送信タイミングの第2の例について説明するための説明図である。
図10Bの例では、上段に示したように、シグナリングSIG2において、Configuration4が指定されたものとする。一方、
図10Bの下段には、無線フレームF61及びそれに続く無線フレームF62が示されている。無線フレームF61に設定されたダイナミックTDD用コンフィギュレーションは、Configuration3である。無線フレームF62に設定されたダイナミックTDD用コンフィギュレーションは、Configuration1である。この場合、4番目、7番目及び8番目のサブフレームでリンク方向の衝突が発生する。しかし、表1のConfiguration4の行を参照すると、いずれのダウンリンクサブフレームでのダウンリンク送信に対するACK/NACKも、2番目又は3番目のサブフレームにおいて送信される。具体的には、
図10Bの下段において破線の矢印で示されているように、無線フレームF61の1番目及び5番目のダウンリンクサブフレームでのダウンリンク送信に対するACK/NACKは、無線フレームF62の2番目のアップリンクサブフレームで送信される。無線フレームF61の6番目、7番目、8番目及び9番目のダウンリンクサブフレームでのダウンリンク送信に対するACK/NACKは、無線フレームF62の3番目のアップリンクサブフレームで送信される。無線フレームF62の0番目のダウンリンクサブフレームでのダウンリンク送信に対するACK/NACKは、無線フレームF62の次の無線フレームの2番目のアップリンクサブフレームで送信される。そして、これらACK/NACKが送信されるアップリンクサブフレームにおいてリンク方向の衝突は発生しないため、リンク方向の衝突に起因するACK/NACKのロスは回避される。
図10Bの例は、コンフィギュレーション候補のセットからConfiguration5などが除外されている場合に有効である。
【0059】
このように、ダイナミックTDD用コンフィギュレーションとは別にシグナリングされ得る特定のコンフィギュレーションに基づいてACK/NACKの送信タイミングを決定することにより、リンク方向の衝突に起因するACK/NACKのロスを回避して、システムのスループットの低下を防ぐことができる。
【0060】
なお、レガシー端末104は、シグナリングSIG2を受信せず、シグナリングSIG0において指定されるレガシー用コンフィギュレーション(例えば、Configuration0)に従って動作する。表1のConfiguration0の行を参照すると、6番目のサブフレームでのダウンリンク送信に対するACK/NACKは、アップリンクサブフレームである2番目のサブフレームで送信される。そこで、基地局100は、レガシー端末104へのダウンリンク送信を6番目のサブフレームにスケジューリングするようにスケジューリングを制限することにより、当該ダウンリンク送信に対するACK/NACKを適切に受信することができる。
【0061】
(5)シグナリングされる値(SIG3)
上述したように、シグナリングSIG3は、UL許可に関連付けられるアップリンク送信の送信タイミングをダイナミックTDD端末200へ通知する。シグナリングSIG3では、基地局100は、コンフィギュレーション候補のセットのうちアップリンク比率のより高い候補を指定し得る。特に、シグナリングSIG3は、他のコンフィギュレーション候補においてアップリンクサブフレームになり得る位置の全てのサブフレームがアップリンクサブフレームとして定義されているコンフィギュレーション候補を指定することが好適である。例えば、コンフィギュレーション候補のセットがConfiguration0〜Configuration6を含む場合には、シグナリングSIG3は、Configuration0を指定し得る。
【0062】
図11Aは、シグナリングSIG3に基づくUL許可の新たな送信タイミングの第1の例について説明するための説明図である。
図11Aの例では、上段に示したように、シグナリングSIG3において、Configuration0が指定されたものとする。一方、
図11Aの下段には、無線フレームF71及びそれに続く無線フレームF72が示されている。無線フレームF71に設定されたダイナミックTDD用コンフィギュレーションは、Configuration0である。無線フレームF72に設定されたダイナミックTDD用コンフィギュレーションは、Configuration4である。この場合、4番目、7番目、8番目及び9番目のサブフレームでリンク方向の衝突が発生する。しかし、表2のConfiguration0の行を参照すると、いずれのアップリンクサブフレームでのアップリンク送信についてのUL許可も、0番目、1番目、5番目又は6番目のサブフレームにおいて送信される。これら4つのサブフレームのリンク方向は、コンフィギュレーションに関わらず常にダウンリンクである。具体的には、
図11Aの下段において破線の矢印で示されているように、無線フレームF72の2番目及び3番目のアップリンクサブフレームでのアップリンク送信についてのUL許可は、無線フレームF71の6番目のダウンリンクサブフレームで送信される。このUL許可が送信されるダウンリンクサブフレームにおいてリンク方向の衝突は発生しない。
【0063】
図11Bは、シグナリングSIG3に基づくUL許可の新たな送信タイミングの第2の例について説明するための説明図である。
図11Bの例では、上段に示したように、シグナリングSIG3において、Configuration6が指定されたものとする。一方、
図11Bの下段には、無線フレームF81及びそれに続く無線フレームF82が示されている。無線フレームF81に設定されたダイナミックTDD用コンフィギュレーションは、Configuration1である。無線フレームF82に設定されたダイナミックTDD用コンフィギュレーションは、Configuration3である。この場合、4番目、7番目及び8番目のサブフレームでリンク方向の衝突が発生する。しかし、表2のConfiguration6の行を参照すると、
図11Bの下段において破線の矢印で示されているように、無線フレームF82の2番目のアップリンクサブフレームでのアップリンク送信についてのUL許可は、無線フレームF81の5番目のダウンリンクサブフレームで送信される。無線フレームF82の3番目のアップリンクサブフレームでのアップリンク送信についてのUL許可は、無線フレームF81の6番目のダウンリンクサブフレームで送信される。無線フレームF82の4番目のアップリンクサブフレームでのアップリンク送信についてのUL許可は、無線フレームF81の9番目のダウンリンクサブフレームで送信される。これらUL許可が送信されるダウンリンクサブフレームにおいて、リンク方向の衝突は発生しない。
図11Bの例は、コンフィギュレーション候補のセットからConfiguration0などが除外されている場合に有効である。
【0064】
このように、ダイナミックTDD用コンフィギュレーションとは別にシグナリングされ得る特定のコンフィギュレーションに基づいてUL許可の送信タイミングを決定することにより、アップリンク送信のために使用し得ないサブフレームの発生を回避して、システムのスループットの低下を防ぐことができる。
【0065】
なお、レガシー端末104は、シグナリングSIG3を受信せず、シグナリングSIG0において指定されるレガシー用コンフィギュレーション(例えば、Configuration0)に従って動作する。表2のConfiguration0の行を参照すると、いずれのアップリンクサブフレームでのアップリンク送信に対するUL許可も、常にダウンリンクサブフレームである0番目、1番目、5番目又は6番目のサブフレームで送信される。従って、基地局100は、レガシー端末104からのアップリンク送信のスケジューリングに特別な制約を課すことなく、レガシー端末104へ適切にUL許可を送信することができる。
【0066】
本節で説明した原理を実装する通信制御装置(本実施形態では、基地局100)及びダイナミックTDD端末200の具体的な構成例について、次節以降で説明する。
【0067】
[2−3.通信制御装置の構成例]
本実施形態において、基地局100は、時分割複信(TDD)方式に従って端末装置により行われる無線通信を制御する通信制御装置としての役割を有する。
図12は、基地局100の構成の一例を示すブロック図である。
図12を参照すると、基地局100は、無線通信部110、信号処理部120、インタフェース部130、設定部140、記憶部142及びシグナリング部150を備える。
【0068】
(1)無線通信部
無線通信部110は、基地局100が1つ以上の端末装置との間で無線信号を送受信するための通信インタフェースである。無線通信部110は、1つ以上のアンテナ(図示せず)及びRF回路を有する。無線通信部110は、端末装置から送信されるアップリンク信号を受信し、受信信号の増幅、周波数変換及びAD変換を行う。また、無線通信部110は、送信信号のDA変換、周波数変換及び増幅を行い、ダウンリンク信号を端末装置へ送信する。
【0069】
無線通信部110により受信されるアップリンク信号は、アップリンクデータ信号及びアップリンクシグナリングを含む。アップリンクシグナリングは、各端末装置からのバッファステータスレポート、及びダウンリンク送信に関連付けられるACK/NACKを含む。また、無線通信部110により送信されるダウンリンク信号は、ダウンリンクデータ信号及びダウンリンクシグナリングを含む。ダウンリンクシグナリングは、アップリンク送信に関連付けられるUL許可、並びに上述したシグナリングSIG0、SIG1、SIG2及びSIG3を含み得る。
【0070】
(2)信号処理部
信号処理部120は、無線通信部110から入力される受信信号の等化、復調及び復号、並びに無線通信部110へ出力される送信信号の符号化及び変調を行うための信号処理回路を有する。信号処理部120は、復調し及び復号した受信信号に含まれるデータを、インタフェース部130へ出力する。また、信号処理部120は、インタフェース部130から入力されるデータを含む送信信号を符号化し及び変調する。
【0071】
(3)インタフェース部
インタフェース部130は、基地局100が他の基地局との間で通信するためのX2インタフェース、及び基地局100がコアネットワーク106内の制御ノードとの間で通信するためのS1インタフェースなどの通信インタフェース群を含む。インタフェース部130の各通信インタフェースは、有線通信インタフェースであってもよく、又は無線通信インタフェースであってもよい。インタフェース部130は、例えば、P−GWからバッファシグナリングを受信する。当該バッファシグナリングは、端末装置ごとのバッファ待機中のダウンリンクデータ信号のトラフィック量を示す。インタフェース部130は、受信したバッファシグナリングを設定部140へ出力する。
【0072】
(4)設定部
設定部140は、複数のサブフレームを含むフレームの各々について、セル内の無線通信のために、サブフレーム単位のリンク方向を表すリンク方向コンフィギュレーションを設定する。より具体的には、設定部140は、1つ以上のレガシー端末104を含む第1の端末グループのために、レガシー用コンフィギュレーションを設定する。また、設定部140は、1つ以上のダイナミックTDD端末200を含む第2の端末グループのために、ダイナミックTDD用コンフィギュレーションを設定する。無線通信部110は、設定部140により設定されるダイナミックTDD用コンフィギュレーションに従って動作する。
【0073】
例えば、設定部140は、レガシー用コンフィギュレーションとして、予め定義されるリンク方向コンフィギュレーション(例えば、Configuration0)を半永続的に設定してよい。レガシー用コンフィギュレーションとして設定されるリンク方向コンフィギュレーションは、レガシー端末104によるCRSを用いた正常な同期トラッキングが保証されるように定義され得る。
【0074】
また、設定部140は、UL−DLトラフィック比の最新の値又は予測される将来の値に基づいて、各無線フレームに設定すべきダイナミックTDD用コンフィギュレーションを、複数のコンフィギュレーション候補から選択する。例えば、設定部140は、より多くのアップリンクトラフィックがバッファ待機中であれば、アップリンク率のより高いリンク方向コンフィギュレーションを選択し得る。同様に、設定部140は、より多くのダウンリンクトラフィックがバッファ待機中であれば、ダウンリンク率の高いリンク方向コンフィギュレーションを選択し得る。無線通信ネットワークにおいて選択され得るコンフィギュレーション候補のセットは、非特許文献1において定義されている7種類のリンク方向コンフィギュレーションの全てであってもよく、又はネットワーク固有のサブセットであってもよい。
【0075】
また、設定部140は、設定したダイナミックTDD用コンフィギュレーションに依存することなく、端末装置との無線通信において第1のリンク方向のデータ送信に関連付けられる、第1のリンク方向とは逆の第2のリンク方向の制御シグナリングのタイミングを設定する。ここでの制御シグナリングは、ダウンリンク送信への応答として端末装置から送信されるACK/NACK及びアップリンク送信に先立って端末装置へ送信されるUL許可の一方又は双方を含む。本実施形態において、設定部140は、制御シグナリングのタイミングを、選択可能なコンフィギュレーション候補のうちの1つを指定する形で設定する。
【0076】
例えば、設定部140は、ダウンリンク送信に対するACK/NACKのタイミングとして、コンフィギュレーション候補のセットのうちダウンリンク比率のより高い候補を指定し得る。その結果、
図10A及び
図10Bを用いて説明したように、ダイナミックTDD用コンフィギュレーションが更新される際にも、ACK/NACKが送信されるアップリンクサブフレームにおいてリンク方向の衝突が発生することを回避することができる。基地局100及びダイナミックTDD端末200の双方は、コンフィギュレーション候補ごとにダウンリンク送信のタイミングとACK/NACKのタイミングとを関連付けるテーブル(表1参照)を予め記憶する。そして、実際にダイナミックTDD端末200によりACK/NACKが送信されるタイミングは、設定部140により設定されたコンフィギュレーションに対応する当該テーブル内のエントリに基づいて決定される。
【0077】
また、設定部140は、アップリンク送信に先立つUL許可のタイミングとして、コンフィギュレーション候補のセットのうちアップリンク比率のより高い候補を指定し得る。その結果、
図11A及び
図11Bを用いて説明したように、ダイナミックTDD用コンフィギュレーションが更新される際にも、アップリンク送信のために使用し得ないサブフレームの発生を回避しつつ、UL許可のタイミングを決定することができる。基地局100及びダイナミックTDD端末200の双方は、コンフィギュレーション候補ごとにアップリンク送信のタイミングとUL許可のタイミングとを関連付けるテーブル(表2参照)を予め記憶する。そして、実際に無線通信部110によりUL許可が送信されるタイミングは、設定部140により設定されたコンフィギュレーションに対応する当該テーブル内のエントリに基づいて決定される。
【0078】
記憶部142は、設定部140により設定される様々なパラメータ、及びそれらパラメータを設定する際に参照される様々なデータを記憶する記憶媒体である。例えば、記憶部142は、基地局100により選択可能なコンフィギュレーション候補のセットを予め記憶する。また、記憶部142は、設定部140により設定されるレガシー用コンフィギュレーション及びダイナミックTDD用コンフィギュレーションを記憶する。また、記憶部142は、ダウンリンク送信のタイミングとACK/NACKのタイミングとを関連付ける第1のテーブル、及びアップリンク送信のタイミングとUL許可のタイミングとを関連付ける第2のテーブルを予め記憶する。また、記憶部142は、設定部140により設定されるACK/NACKのタイミング及びUL許可のタイミングを、コンフィギュレーション候補の番号を指定する形で記憶する。
【0079】
本実施形態において、設定部140は、スケジューラとしての役割も有する。より具体的には、設定部140は、基地局100から各端末装置へのダウンリンク送信及び各端末装置から基地局100へのアップリンク送信をスケジューリングする。そして、設定部140は、スケジューリングの結果を示すダウンリンク割当て(Downlink Assignment)及びUL許可(Uplink Grant)を生成する。スケジューリング情報は、シグナリング部150により各端末装置へ送信される。UL許可の送信タイミングは、記憶部142により記憶される第2のテーブル内の、UL許可のタイミングのために指定されたコンフィギュレーション番号のエントリを参照することにより、スケジューリングされたアップリンク送信のタイミングから決定される。
【0080】
(5)シグナリング部
シグナリング部150は、設定部140により設定されるリンク方向コンフィギュレーションと、上述した制御シグナリング(ACK/NACK及びUL許可の一方又は双方)のタイミングとを、無線通信部110を介して端末装置へシグナリングする。
【0081】
より具体的には、シグナリング部150は、シグナリング周期C1で、SIメッセージをブロードキャストすることにより、レガシー用コンフィギュレーションをレガシー端末104へシグナリングする(SIG0)。また、シグナリング部150は、シグナリング周期C1よりも短いシグナリング周期C2で、DCメッセージを送信することにより、ダイナミックTDD用コンフィギュレーションをダイナミックTDD端末200へシグナリングする(SIG1)。リンク方向コンフィギュレーションが更新されないタイミングでは、SIメッセージ又はDCメッセージの送信は、スキップされてよい。
【0082】
また、本実施形態において、シグナリング部150は、設定部140により設定されたコンフィギュレーション番号を指定することにより、ダウンリンク送信に対するACK/NACKのタイミングをダイナミックTDD端末200へシグナリングする(SIG2)。また、シグナリング部150は、設定部140により設定されたコンフィギュレーション番号を指定することにより、UL許可のタイミングをダイナミックTDD端末200へシグナリングする(SIG3)。シグナリング部150は、ダイナミックTDD端末200の基地局100への接続(新規接続及びアクティブモードへの復帰の双方を含み得る)の際に、これらシグナリングを実行してもよい。また、シグナリング部150は、これらシグナリングを周期的に実行してもよい。
【0083】
[2−4.ダイナミックTDD端末の構成例]
図13は、ダイナミックTDD端末200の構成の一例を示すブロック図である。
図13を参照すると、ダイナミックTDD端末200は、無線通信部210、信号処理部220、制御部230及び記憶部240を備える。
【0084】
(1)無線通信部
無線通信部210は、ダイナミックTDD端末200が基地局100との間で無線信号を送受信するための通信インタフェースである。無線通信部210は、1つ以上のアンテナ(図示せず)及びRF回路を有する。無線通信部210は、基地局100から送信されるダウンリンク信号を受信し、受信信号の増幅、周波数変換及びAD変換を行う。また、無線通信部210は、送信信号のDA変換、周波数変換及び増幅を行い、アップリンク信号を基地局100へ送信する。
【0085】
無線通信部210により受信されるダウンリンク信号は、ダウンリンクデータ信号及びダウンリンクシグナリングを含む。ダウンリンクシグナリングは、アップリンク送信に関連付けられるUL許可、並びに上述したシグナリングSIG1、SIG2及びSIG3を含み得る。また、無線通信部210により送信されるアップリンク信号は、アップリンクデータ信号及びアップリンクシグナリングを含む。アップリンクシグナリングは、バッファステータスレポート、及びダウンリンク送信に関連付けられるACK/NACKを含む。
【0086】
(2)信号処理部
信号処理部220は、無線通信部210から入力される受信信号の等化、復調及び復号、並びに無線通信部210へ出力される送信信号の符号化及び変調を行うための信号処理回路を有する。信号処理部220は、例えば、上位レイヤの処理を実現するプロセッサ(図示せず)と接続される。そして、信号処理部220は、復調し及び復号した受信信号に含まれるデータを上位レイヤへ出力する。また、信号処理部220は、上位レイヤから入力されるデータを含む送信信号を符号化し及び変調する。
【0087】
(3)制御部
制御部230は、ダイナミックTDD端末200による無線通信をTD−LTE方式に従って制御する。例えば、制御部230は、基地局100から受信されるDCメッセージにおいて指定されるダイナミックTDD用コンフィギュレーションに従って、サブフレーム単位のリンク方向を無線通信部210及び信号処理部220に設定する。また、制御部230は、ダウンリンクサブフレームにおいて、無線通信部210にCRSを受信させ、同期トラッキングを実行させる。また、制御部230は、バッファ待機中のアップリンクデータ信号のトラフィック量を示すバッファステータスレポートを周期的に生成し、生成したバッファステータスレポートを無線通信部210から基地局100へ送信する。
【0088】
また、制御部230は、第1のリンク方向のデータ送信のタイミングと、当該データ送信に関連付けられる第2のリンク方向の制御シグナリングのタイミングとの間のオフセットを、基地局100からのシグナリングに基づいて設定する。
【0089】
より具体的には、制御部230は、ダウンリンク送信と当該ダウンリンク送信に関連付けられるACK/NACKとの間のタイミングのオフセットを、基地局100から受信されるシグナリングSIG2に基づいて設定する。ここで設定されるオフセットは、ダウンリンク送信のタイミングとACK/NACKのタイミングとを関連付ける第1のテーブル内の、シグナリングSIG2により指定されたエントリにより示される。そして、制御部230は、無線通信部210により受信されるダウンリンク割当てに従って、無線通信部210にダウンリンク信号を受信させる。さらに、制御部230は、設定したオフセットとダウンリンク送信のタイミングとに基づいて、個々のACK/NACKのタイミングを決定する。このように決定されるACK/NACKのタイミングに相当するサブフレームは、いずれも、ダイナミックTDD用コンフィギュレーションに関わらず、アップリンクサブフレームとなる。従って、制御部230は、ダウンリンク送信の都度リンク方向の衝突を判定しなくてよく、ACK/NACKを延期するような動作も不要である。
【0090】
また、制御部230は、アップリンク送信と当該アップリンク送信に関連付けられるUL許可との間のタイミングのオフセットを、基地局100から受信されるシグナリングSIG3に基づいて設定する。ここで設定されるオフセットは、アップリンク送信のタイミングとUL許可のタイミングとを関連付ける第2のテーブル内の、シグナリングSIG3により指定されたエントリにより示される。そして、制御部230は、無線通信部210により受信されるUL許可に従って、無線通信部210にアップリンク信号を送信させる。アップリンク送信のタイミングは、設定されているダイナミックTDD用コンフィギュレーションのいずれのアップリンクサブフレームにも該当する可能性がある。即ち、使用される可能性の無いアップリンクサブフレームが存在しないため、無線リソースの利用効率の低下は回避される。
【0091】
(4)記憶部
記憶部240は、制御部230がダイナミックTDD端末200による無線通信を制御するために使用するデータ及びプログラムを記憶する記憶媒体である。例えば、記憶部240は、制御部230により設定されたダイナミックTDD用コンフィギュレーションを記憶する。また、記憶部240は、ダウンリンク送信のタイミングとACK/NACKのタイミングとを関連付ける第1のテーブル、及びアップリンク送信のタイミングとUL許可のタイミングとを関連付ける第2のテーブルを予め記憶する。また、記憶部240は、制御部230により設定されるACK/NACKのタイミング及びUL許可のタイミングを、コンフィギュレーション候補の番号を指定する形で記憶する。
【0092】
(5)デュアルモードのサポート
なお、ダイナミックTDD端末200は、レガシー端末104と同様にレガシー用コンフィギュレーションに従ってリンク方向を設定する第1の動作モード、及びより短い周期でダイナミックTDDコンフィギュレーションに従ってリンク方向を設定する第2の動作モードの双方で動作可能であってもよい。例えば、ダイナミックTDD端末200は、無線通信ネットワークへの初期同期の段階において第1の動作モードで動作し、その後、DCメッセージの受信に応じて第2の動作モードへ遷移してもよい。かかる構成によれば、ダイナミックTDD端末200は、既存の手続に従ってが基地局100との間で確実に同期を確立した後、基地局100との間で様々なチャネル上で柔軟にシグナリングを交換し、第2の動作モードのための設定を取得することができる。また、ダイナミックTDD端末200は、アイドルモード(RRC_Idle)において低い頻度でSIメッセージを受信(即ち、第1の動作モード)し、アクティブモード(RRC_Connected)において高い頻度でDCメッセージを受信(即ち、第2の動作モード)してもよい。それにより、アイドルモードでの消費電力が上昇することを回避することができる。
【0093】
<3.処理の流れの例>
図14A及び
図14Bは、本実施形態に係る通信制御システム1において実行され得る処理の流れの一例を示すシーケンス図である。なお、ここで説明する処理には、基地局100、レガシー端末104及びダイナミックTDD端末200が関与する。ダイナミックTDD端末200は、一例として、上述したデュアルモードをサポートする端末であるものとする。
【0094】
図14Aを参照すると、まず、基地局100は、シグナリング周期C1で周期的にSIメッセージをブロードキャストする(ステップS100)。SIメッセージは、レガシー用コンフィギュレーションをシグナリングするメッセージであり、例えば、Configuration0を指定する。レガシー端末104は、SIメッセージを受信し、レガシー用コンフィギュレーションとしてConfiguration0を設定する。ダイナミックTDD端末200もまた、SIメッセージを受信し、レガシー用コンフィギュレーションに従って、基地局100との間の初期同期を確立する(ステップS104)。
【0095】
基地局100は、端末におけるバッファ待機中のアップリンクトラフィック量及びコアネットワーク内のバッファ待機中のダウンリンクトラフィック量のデータを収集し、UL−DLトラフィック比をモニタリングする(ステップS108)。そして、基地局100は、UL−DLトラフィック比(の最新の値又は予測される将来の値)に応じて、ダイナミックTDD用コンフィギュレーションを設定する(ステップS112)。
【0096】
基地局100との間の初期同期を確立したダイナミックTDD端末200は、アップリンクサブフレームにおいて、基地局100へ接続要求を送信する(ステップS116)。基地局100は、ダイナミックTDD端末200からの接続を承認する(ステップS120)。
【0097】
次に、基地局100は、ダイナミックTDD端末200へケイパビリティ問合せを送信する(ステップS124)。当該問合せの受信に応じて、ダイナミックTDD端末200は、自らがダイナミックTDD(シグナリングSIG1、SIG2及びSIG3の受信)をサポートしていることを基地局100へ応答する(ステップS128)。
【0098】
次に、基地局100は、DCメッセージをダイナミックTDD端末200へ送信する(ステップS132)。DCメッセージは、ダイナミックTDD用コンフィギュレーションをシグナリングするメッセージであり、ステップS112において基地局100により設定されたコンフィギュレーション番号を示す。ここでは、DCメッセージは、シグナリングSIG1に加えて、シグナリングSIG2及びSIG3も兼ねるものとする。即ち、DCメッセージは、ダウンリンク送信に対するACK/NACKのタイミングのためのコンフィギュレーション番号、及びUL許可のタイミングのためのコンフィギュレーション番号をも指定する。
図14Aの例では、ダイナミックTDD用コンフィギュレーションはConfiguration2、ACK/NACKのタイミングはConfiguration5、UL許可のタイミングはConfiguration0である。
【0099】
ダイナミックTDD端末200は、ステップS132において基地局100からDCメッセージを受信すると、応答を返し(ステップS136)、ダイナミックTDD用コンフィギュレーションであるConfiguration2にリンク方向の設定を変更する(ステップS140)。また、ダイナミックTDD端末200は、ACK/NACKのタイミングとしてConfiguration5、UL許可のタイミングとしてConfiguration0をそれぞれ記憶する。
【0100】
その後、ダイナミックTDD端末200のためのトラフィックが発生すると、基地局100は、トラフィックをスケジューリングする(ステップS144)。発生したトラフィックがダウンリンクトラフィックであれば、基地局100は、ダウンリンク割当てに従って、ダウンリンクトラフィックをダイナミックTDD端末200へ送信する(ステップS148)。ダイナミックTDD端末200は、ダウンリンクトラフィックに対するACK/NACKの送信タイミングを、ステップS140において基地局100からシグナリングされたコンフィギュレーション番号(Configuration5)に基づいて決定し、決定したタイミングでACK/NACKを基地局100へ送信する(ステップS152)。
【0101】
一方、発生したトラフィックがアップリンクトラフィックであれば、基地局100は、ステップS140においてダイナミックTDD端末200へシグナリングしたコンフィギュレーション番号(Configuration0)に基づいて、アップリンク送信のタイミングからUL許可の送信タイミングを決定し、決定したタイミングでUL許可をダイナミックTDD端末200へ送信する(ステップS148)。ダイナミックTDD端末200は、UL許可に対するアップリンク送信のタイミングを、基地局100からシグナリングされたコンフィギュレーション番号に基づいて決定し、決定したタイミングでアップリンクトラフィックを基地局100へ送信する(ステップS152)。
【0102】
シーケンスは
図14Bへ移り、その後、基地局100により、UL−DLトラフィック比の変動が検出されたものとする(ステップS160)。すると、基地局100は、UL−DLトラフィック比に応じて、ダイナミックTDD用コンフィギュレーションの設定を更新することを決定する。そして、基地局100は、DCメッセージをダイナミックTDD端末200へ送信する(ステップS164)。ダイナミックTDD端末200は、応答を返す(ステップS168)。ここで送信されるDCメッセージは、将来の更新後のダイナミックTDD用コンフィギュレーション(
図14Bの例では、Configuration3)をシグナリングするメッセージである。
【0103】
さらに、ダイナミックTDD用コンフィギュレーションが更新される前に、ダイナミックTDD端末200のためのトラフィックが再び発生したものとする。すると、基地局100は、トラフィックをスケジューリングする(ステップS172)。そして、基地局100は、ダウンリンクトラフィック又はUL許可をダイナミックTDD端末200へ送信する(ステップS176)。
【0104】
その後、基地局100は、ダイナミックTDD用コンフィギュレーションの設定を、ステップS164においてシグナリングしたコンフィギュレーションに更新する(ステップS180)。同時に、ダイナミックTDD端末200もまた、ダイナミックTDD用コンフィギュレーションの設定を、基地局100からシグナリングされたコンフィギュレーションに変更する(ステップS184)。しかし、ステップS176で受信されたダウンリンクトラフィック又はUL許可に関連付けられるACK/NACK又はアップリンク送信のタイミングは、ダイナミックTDD用コンフィギュレーションの更新に影響されない。
【0105】
ダイナミックTDD端末200は、ACK/NACK又はアップリンクトラフィックの送信タイミングを、ステップS140において基地局100からシグナリングされたコンフィギュレーション番号に基づいて決定し、決定したタイミングでACK/NACK又はアップリンクトラフィックを基地局100へ送信する(ステップS188)。
【0106】
<4.まとめ>
ここまで、
図1〜
図14Bを用いて、本開示に係る技術の実施形態について詳細に説明した。上述した実施形態によれば、時分割複信(TDD)方式での無線通信のために設定されるリンク方向コンフィギュレーションに依存することなく、第1のリンク方向のデータ送信に関連付けられる第2のリンク方向の制御シグナリングのタイミングが設定される。従って、リンク方向コンフィギュレーションが更新される度にリンク方向の衝突を判定するという負荷の高い処理の必要性を排除しつつ、リンク方向の衝突に起因するスループットの低下を防ぐことができる。
【0107】
また、上述した実施形態によれば、UL−DLトラフィック比に応じて設定されるリンク方向コンフィギュレーションとは別に、上記制御シグナリングのタイミングが端末装置へシグナリングされる。従って、端末装置は、リンク方向コンフィギュレーションの更新に関わらず、互いに関連付けられるデータ送信及び制御シグナリングのタイミングを適切に把握し及び予期することができる。
【0108】
また、上述した実施形態によれば、上記制御シグナリングのタイミングは、リンク方向コンフィギュレーションのための複数のコンフィギュレーション候補のうちの1つを指定する形でシグナリングされる。従って、シグナリングされるビット数は、コンフィギュレーション番号のための数ビットのみでよい。そのため、上述した新たなシグナリングが採用されたとしても、シグナリングオーバヘッドの増加はわずかである。また、コンフィギュレーション候補のセットを定義するデータは、レガシー端末も保持するデータである。そのため、追加的なデータの定義を導入することなく、既存のデータを再利用して上述した仕組みを容易に実現することができる。
【0109】
また、上述した実施形態によれば、上記制御シグナリングのタイミングは、端末装置の無線通信ネットワークへの接続の際に当該端末装置へシグナリングされ得る。従って、無線通信ネットワークに固有のコンフィギュレーション候補のセットが使用される場合であっても、スループットの低下を回避するために最適な制御シグナリングのタイミングを、端末装置へ適切に通知することができる。
【0110】
なお、本明細書において説明した各装置による一連の制御処理は、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアとの組合せのいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各装置の内部又は外部に設けられる記憶媒体(非一時的な媒体:non-transitory media)に予め格納される。そして、各プログラムは、例えば、実行時にRAM(Random Access Memory)に読み込まれ、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサにより実行される。
【0111】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0112】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(1)
無線通信ネットワーク内で時分割複信(TDD)方式に従って端末装置により行われる無線通信を制御する通信制御装置であって、
複数のサブフレームを含むフレームの各々について、前記無線通信のためにサブフレーム単位のリンク方向を表すリンク方向コンフィギュレーションを設定する設定部、
を備え、
前記設定部は、設定された前記リンク方向コンフィギュレーションに依存することなく、前記無線通信において第1のリンク方向のデータ送信に関連付けられる、前記第1のリンク方向とは逆の第2のリンク方向の制御シグナリングのタイミングを設定する、
通信制御装置。
(2)
前記通信制御装置は、
前記設定部により設定される前記リンク方向コンフィギュレーションと前記タイミングとを前記端末装置へシグナリングするシグナリング部、
をさらに備える、前記(1)に記載の通信制御装置。
(3)
前記設定部は、複数のコンフィギュレーション候補から選択される前記リンク方向コンフィギュレーションを前記無線通信のために設定し、
前記シグナリング部は、前記複数のコンフィギュレーション候補のうちの1つを指定することにより、前記タイミングをシグナリングする、
前記(2)に記載の通信制御装置。
(4)
前記第1のリンク方向はダウンリンクであり、前記第2のリンク方向はアップリンクであり、
前記制御シグナリングは、ダウンリンク送信への応答として前記端末装置から送信されるACK/NACKである、
前記(3)に記載の通信制御装置。
(5)
前記第1のリンク方向はアップリンクであり、前記第2のリンク方向はダウンリンクであり、
前記制御シグナリングは、アップリンク送信に先立って前記端末装置へ送信されるアップリンク許可である、
前記(3)に記載の通信制御装置。
(6)
前記シグナリング部は、前記複数のコンフィギュレーション候補のうちダウンリンク比率のより高い候補を指定する、前記(4)に記載の通信制御装置。
(7)
前記シグナリング部は、前記複数のコンフィギュレーション候補のうちアップリンク比率のより高い候補を指定する、前記(5)に記載の通信制御装置。
(8)
前記通信制御装置は、コンフィギュレーション候補ごとに前記データ送信のタイミングと前記制御シグナリングのタイミングとを関連付けるテーブルを記憶する記憶部、をさらに備え、
前記データ送信のタイミング及び前記制御シグナリングのタイミングの一方は、前記テーブル内の指定されたコンフィギュレーション候補についてのエントリを参照することにより、他方のタイミングに基づいて決定される、
前記(6)又は前記(7)に記載の通信制御装置。
(9)
前記設定部は、前記無線通信ネットワーク内のアップリンクトラフィックとダウンリンクトラフィックとの間の比率に応じて、設定すべき前記リンク方向コンフィギュレーションを前記複数のコンフィギュレーション候補から選択する、前記(3)〜(8)のいずれか1項に記載の通信制御装置。
(10)
前記複数のコンフィギュレーション候補は、前記無線通信ネットワークに固有であり、
前記シグナリング部は、前記端末装置の前記無線通信ネットワークへの接続の際に、前記タイミングを前記端末装置へシグナリングする、
前記(3)〜(9)のいずれか1項に記載の通信制御装置。
(11)
前記設定部は、第1の端末グループのために前記リンク方向コンフィギュレーションを設定し、第2の端末グループのために別のリンク方向コンフィギュレーションを設定し、
前記シグナリング部は、前記第2の端末グループに属する端末装置へのシグナリング周期よりも短い周期で、前記第1の端末グループに属する端末装置へ前記リンク方向コンフィギュレーションをシグナリングする、
前記(2)〜(10)のいずれか1項に記載の通信制御装置。
(12)
前記通信制御装置は、基地局である、前記(1)〜(11)のいずれか1項に記載の通信制御装置。
(13)
前記通信制御装置は、基地局を介して前記端末装置と通信する制御ノードである、前記(1)〜(11)のいずれか1項に記載の通信制御装置。
(14)
無線通信ネットワーク内で時分割複信(TDD)方式に従って端末装置により行われる無線通信を制御する通信制御方法であって、
複数のサブフレームを含むフレームの各々について、前記無線通信のためにサブフレーム単位のリンク方向を表すリンク方向コンフィギュレーションを設定することと、
設定された前記リンク方向コンフィギュレーションに依存することなく、前記無線通信において第1のリンク方向のデータ送信に関連付けられる、前記第1のリンク方向とは逆の第2のリンク方向の制御シグナリングのタイミングを設定することと、
を含む通信制御方法。
(15)
無線通信ネットワーク内で時分割複信(TDD)方式に従って端末装置により行われる無線通信を制御する通信制御装置のコンピュータを、
複数のサブフレームを含むフレームの各々について、前記無線通信のためにサブフレーム単位のリンク方向を表すリンク方向コンフィギュレーションを設定する設定部として機能させるプログラムであって、
前記設定部は、設定された前記リンク方向コンフィギュレーションに依存することなく、前記無線通信において第1のリンク方向のデータ送信に関連付けられる、前記第1のリンク方向とは逆の第2のリンク方向の制御シグナリングのタイミングを設定する、
プログラム。
(16)
時分割複信(TDD)方式で基地局と通信する無線通信部と、
前記基地局からの第1のシグナリングにより示されるリンク方向コンフィギュレーションに従い、複数のサブフレームを含むフレームの各々について、サブフレーム単位のリンク方向を設定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、第1のリンク方向のデータ送信のタイミングと、当該データ送信に関連付けられる前記第1のリンク方向とは逆の第2のリンク方向の制御シグナリングのタイミングとの間のオフセットを、前記基地局からの第2のシグナリングに基づいて設定する、
端末装置。
(17)
時分割複信(TDD)方式で基地局と通信する無線通信部を備える端末装置により実行される無線通信方法であって、
前記基地局からの第1のシグナリングにより示されるリンク方向コンフィギュレーションに従い、複数のサブフレームを含むフレームの各々について、サブフレーム単位のリンク方向を設定することと、
第1のリンク方向のデータ送信のタイミングと、当該データ送信に関連付けられる前記第1のリンク方向とは逆の第2のリンク方向の制御シグナリングのタイミングとの間のオフセットを、前記基地局からの第2のシグナリングに基づいて設定することと、
を含む無線通信方法。
(18)
時分割複信(TDD)方式で基地局と通信する無線通信部を備える端末装置のコンピュータを、
前記基地局からの第1のシグナリングにより示されるリンク方向コンフィギュレーションに従い、複数のサブフレームを含むフレームの各々について、サブフレーム単位のリンク方向を設定する制御部、
として機能させるプログラムであって、
前記制御部は、第1のリンク方向のデータ送信のタイミングと、当該データ送信に関連付けられる前記第1のリンク方向とは逆の第2のリンク方向の制御シグナリングのタイミングとの間のオフセットを、前記基地局からの第2のシグナリングに基づいて設定する、
プログラム。
(19)
時分割複信(TDD)方式で基地局と通信する端末装置と、前記端末装置により行われる無線通信を制御する通信制御装置と、を含む通信制御システムであって、
前記通信制御装置は、
複数のサブフレームを含むフレームの各々について、前記無線通信のためにサブフレーム単位のリンク方向を表すリンク方向コンフィギュレーションを設定する設定部、
を備え、
前記設定部は、設定された前記リンク方向コンフィギュレーションに依存することなく、前記無線通信において第1のリンク方向のデータ送信に関連付けられる、前記第1のリンク方向とは逆の第2のリンク方向の制御シグナリングのタイミングを設定する、
通信制御システム。