特許第6241436号(P6241436)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6241436廃プラスチック油化方法及び油化システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241436
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】廃プラスチック油化方法及び油化システム
(51)【国際特許分類】
   C10G 1/10 20060101AFI20171127BHJP
   C08J 11/16 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   C10G1/10ZAB
   C08J11/16
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-44037(P2015-44037)
(22)【出願日】2015年2月18日
(65)【公開番号】特開2016-151023(P2016-151023A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2016年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】506353334
【氏名又は名称】鶴見 和行
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 和行
【審査官】 齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−234216(JP,A)
【文献】 特開2014−139263(JP,A)
【文献】 特開2006−348104(JP,A)
【文献】 特開平09−235563(JP,A)
【文献】 特開2008−069191(JP,A)
【文献】 米国特許第07758729(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G1/00−99/00
C08J11/00−28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形の廃プラスチックと触媒を溶解蒸発槽に入れ、この溶解蒸発槽の周壁空洞に封入した流動性の熱媒体を加熱することにより、廃プラスチックを触媒と共に所定の温度範囲内(T1〜T2)で間接的に加熱しながら撹拌して溶解させるとともに、蒸発させ、蒸発してきたガス分を冷却して一次分解油を生成する一次分解油生成工程と、
前記一次分解油を蒸留槽内で前記一次分解油生成工程よりも低い所定温度範囲内(T3〜T4)(但し、T3<T2)で加熱して蒸発させ、蒸発してきたガス分を冷却することにより、炭素数が所定数以下となる二次分解油を生成する二次分解油生成工程と、
前記二次分解油を定温加熱槽内で前記二次分解油生成工程の加熱温度(T3〜T4)よりもさらに低いほぼ一定温度(T5)に維持して加熱し、その温度(T5)での蒸発を行う引火点調整工程と、
を含むことを特徴とする廃プラスチック油化方法。
【請求項2】
前記二次分解油生成工程にて蒸発しなかったものを前記溶解蒸発槽へ返戻することを特徴とする請求項1記載の廃プラスチック油化方法。
【請求項3】
前記一次分解油生成工程の加熱温度の範囲(T1〜T2)が350℃〜450℃、前記二次分解油生成工程の加熱温度の範囲(T3〜T4)が190℃〜300℃、前記三次分解油生成工程の加熱温度(T5)が120℃〜130℃である請求項1又は2記載の廃プラスチック油化方法。
【請求項4】
固形の廃プラスチックと触媒を溶解蒸発槽に入れ、この溶解蒸発槽の周壁空洞に封入した流動性の熱媒体を加熱することにより、廃プラスチックを触媒と共に所定の温度範囲内(T1〜T2)で間接的に加熱しながら撹拌して溶解させるとともに、蒸発させ、蒸発してきたガス分を冷却して一次分解油を生成する一次分解油生成工程と、
前記一次分解油を前記溶解蒸発槽へ返戻して触媒を用いずに前記一次分解油生成工程よりも低い所定温度範囲内(T3〜T4)(但し、T3<T2)で加熱して蒸発させ、蒸発してきたガス分を冷却することにより、炭素数が所定数Cx以下となる二次分解油を生成する二次分解油生成工程と、
前記二次分解油を定温加熱槽内で前記二次分解油生成工程の加熱温度(T3〜T4)よりもさらに低いほぼ一定温度(T5)を維持して加熱し、その温度(T5)での蒸発を行う引火点調整工程と、
を含むことを特徴とする廃プラスチック油化方法。
【請求項5】
前記二次分解油生成工程にて前記蒸留槽内に残ったものを前記溶解蒸発槽へ戻し、新たな固形の廃プラスチックと共に前記一次分解油生成工程と同様の処理をすることを特徴とする請求項4記載の廃プラスチック油化方法。
【請求項6】
前記一次分解油生成工程の加熱温度の範囲(T1〜T2)が350℃〜450℃、前記二次分解油生成工程の加熱温度の範囲(T3〜T4)が190℃〜300℃、前記三次分解油生成工程の加熱温度(T5)が120℃〜130℃である請求項4又は5記載の廃プラスチック油化方法。
【請求項7】
前記一次分解油生成工程において使用する触媒が、シリカとアルミナを主成分とするFCC廃触媒であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の廃プラスチック油化方法。
【請求項8】
前記熱媒体による前記溶解蒸発槽の加熱温度を前記一次分解油生成工程の加熱温度(T1〜T2)よりも高い加熱温度(T6)(但し、T6>T2)に上昇させ、前記溶解蒸発槽内に残留した触媒をこの温度(T6)で加熱してから溶解蒸発槽外へ排出することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の廃プラスチック油化方法。
【請求項9】
前記二次分解油生成工程で生成された一部の二次分解油または前記引火点調整工程で蒸発しなかった一部の分解油のいずれか一方を、固形の廃プラスチックを前記溶解蒸発槽へ投入する廃プラスチック投入路に注入することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の廃プラスチック油化方法。
【請求項10】
周壁に空洞を形成し、その内部に流動性の熱媒体を封入した溶解蒸発槽、この熱媒体を加熱する加熱部及び撹拌機を備え、前記溶解蒸発槽内で固形の廃プラスチックに触媒を反応させ前記熱媒体により所定の温度範囲内(T1〜T2)で間接的に加熱しながら前記撹拌機で撹拌して溶解させるとともに、蒸発させる廃プラスチック分解装置と、
前記溶解蒸発槽から蒸発してきたガス分を冷却して一次分解油を生成する一次冷却装置と、
前記一次分解油を前記溶解蒸発槽での加熱温度(T1〜T2)よりも低い所定温度範囲内(T3〜T4)(但し、T3<T2)で加熱して蒸留する蒸留槽と、
この蒸留槽から蒸発してきたガス分を冷却して二次分解油を生成する二次冷却装置と、
前記二次分解油を定温加熱槽に導入し、前記蒸留槽での加熱温度(T3〜T4)よりもさらに低いほぼ一定温度(T5)に維持して加熱し、その温度(T5)での蒸発を行う引火点調整装置と、
を含むことを特徴とする廃プラスチック油化システム。
【請求項11】
周壁に空洞を形成し、その内部に流動性の熱媒体を封入した溶解蒸発槽、この熱媒体を加熱する加熱部及び撹拌機を備え、前記溶解蒸発槽内で固形の廃プラスチックに触媒を反応させ前記熱媒体により所定の温度範囲内(T1〜T2)で間接的に加熱しながら前記撹拌機で撹拌して溶解させるとともに、蒸発させる廃プラスチック分解装置と、
前記溶解蒸発槽から蒸発してきたガス分を冷却して一次分解油を生成する冷却装置と、
前記一次分解油を沈殿分離して前記溶解蒸発槽へ返戻する沈殿分離装置と、
を備え、
前記廃プラスチック油化装置は、前記沈殿分離装置からの一次分解油を、前記加熱部にて温度調整することにより前記加熱温度(T1〜T2)よりも低い所定温度範囲内(T3〜T4)(但し、T3<T2)で触媒を用いずに加熱して蒸発させる、触媒無し蒸留処理にも使用され、
前記冷却装置は、触媒無し蒸留処理により蒸発してきたガス分を冷却することにより、炭素数が所定数Cx以下となる二次分解油を生成する二次分解油生成にも使用され、
さらに前記冷却装置からの前記二次分解油を定温加熱槽に導入し、前記加熱温度(T3〜T4)よりもさらに低いほぼ一定温度(T5)に維持して加熱し、その温度(T5)での蒸発を行う引火点調整装置を備えていることを特徴とする廃プラスチック油化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形の廃プラスチックを触媒と共に加熱してガス化し、このガスを冷却して分解油を生成する廃プラスチック油化方法及び油化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、粉砕された廃プラスチックの連続的油化運転と残渣の効率的排出を意図した廃プラスチック油化装置として、特許文献1記載の構造のものを提供している。
この廃プラスチック油化装置では、ガス冷却して生成された分解油をオイルセパレータで沈殿処理して未処理の廃プラスチック粉を排出し、これをポンプで還流させて再処理(再油化)するようにしている。
【0003】
一方、特許文献2には、廃プラスチックの分解油から、A重油又は第三石油類に相当する0℃の低温度でも移送可能な油を回収することを意図し、廃プラスチックを反応温度650℃±20℃に調整した熱分解炉内で熱分解処理して熱分解ガスを生成した後、生成した熱分解ガスを熱分解油生成装置に導入して熱分解ガスを冷却し、熱分解ガス中に含まれる引火点60℃以上または引火点70℃以上の油状成分を凝縮させて回収する方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、廃プラスチックを酸素不存在下に熱分解する熱分解装置と、該熱分解装置で生成する分解ガスを蒸留する蒸留装置を備えた廃プラスチックの熱分解回収装置を切り換え使用し、スチレン系廃プラスチックおよびオレフィン系廃プラスチックを別個に熱分解してそれぞれの有用成分を回収する方法であって、蒸留装置として第1蒸留装置と第2蒸留装置を設け、スチレン系廃プラスチックの場合は、それを熱分解装置で減圧下に熱分解し、生成する分解ガスを第1蒸留装置で減圧下にスチレンより低沸点成分を分離し、次いで第2蒸留装置で減圧下にスチレンより高沸点成分を分離することによりスチレンを回収し、その際、第1蒸留装置の圧力を第2蒸留装置の圧力より高くし、オレフィン系廃プラスチックの場合は、それを熱分解装置で常圧下に熱分解し、生成する分解ガスを第1蒸留装置で常圧下にガソリン成分とそれより高沸点成分を分離することによりガソリン成分を回収する方法が開示されている。
【0005】
特許文献4には、廃プラスチックから低沸点油を生成することを意図し、原料の廃プラスチックに対して、塩素分中和(脱塩素)のための微粉状の中和剤と5〜35重量%のFCC廃触媒とを添加するとともに、600℃〜950℃の高温に加熱した砂を熱媒体として添加し、この高温の砂を循環させる流動床によって廃プラスチックをFCC廃触媒と共に350℃〜500℃の温度で加熱して熱分解する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−234216号公報
【特許文献2】特開2008−266452号公報
【特許文献3】特許第3348378号公報
【特許文献4】特開2001−107058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
廃プラスチックにはポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチロール(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)など、種々のプラスチックが混在しており、ガス冷却して生成された分解油から一様な性状の油質に分けて回収しなければ、再生製品として利用価値がないが、特許文献1記載の構造ではそこまでの配慮をしていない。
【0008】
一方、特許文献2記載の技術は、熱分解炉内の反応温度を650℃±20℃の高温範囲内に保つことで、A重油又は第3石油類(1気圧において温度20℃で液状かつ、引火点が70℃以上200℃未満のもの)が生成されるようにしており、これに特化した分解方法である。
【0009】
また、特許文献3記載の技術では、廃プラスチックを熱分解する熱分解装置、それからの分解ガスを蒸留する第1蒸留装置および第2蒸留装置を用い、スチレン系廃プラスチックの場合は、分解ガスを第1蒸留装置で減圧下にスチレンより低沸点成分を分離し、次いで第2蒸留装置で減圧下にスチレンより高沸点成分を分離して高純度のスチレンを回収し、オレフィン系廃プラスチックの場合は、分解ガスを第1蒸留装置で常圧下にガソリン成分とそれより高沸点成分を分離してガソリン成分を回収する。
【0010】
ところで、例えばJIS(日本工業規格)の石油に関する規定では、ガソリン、灯油、軽油、重油など、石油製品として分類するに当たり引火点などの性状を規定しており、これに沿わないと現実には市場製品化が難しい。
しかし、特許文献2記載の技術は、熱分解炉内の反応温度を650℃±20℃の高温範囲内にすると、長鎖脂肪族炭化水素類の芳香族化反応が急激に進行して長鎖脂肪族炭化水素類が脂肪族側鎖を持ったA重油に相当する芳香族炭化水素類に変化することに着目し、石油製品のなかで炭素数が最も大きく沸点も高いA重油(又は第3石油類)に限り生成されるようにしたものである。すなわち、この技術は、いったん蒸溜分解したものが再び重合する再重合が起こらないように、熱分解炉内の反応温度を650℃±20℃の高温範囲内に維持することにより、炭素数が大きいものだけ、つまりA重油(又は第3石油類)だけを蒸留生成するもので、廃プラスチック油化の再生範囲がこれに限定されてしまう。
【0011】
また、特許文献3記載の技術は、廃プラスチックを熱分解装置において、触媒を用いずに600℃〜800℃の高温かつ20Torr以上の減圧下でしかも窒素ガス等の不活性ガスと置換した酸素不存在状態で熱分解させ、その分解ガスを、第1蒸留装置および第2蒸留装置にて、廃プラスチックがスチレン系の場合とオレフィン系とで異なる条件で蒸留する。その蒸留の際にも、第1蒸留装置および第2蒸留装置を同様に不活性ガスと置換した酸素不存在状態にする。
このため、スチレン系廃プラスチックとオレフィン系廃プラスチックとに予め分別しなればならず、また熱分解装置を600℃〜800℃の高温でしかも20Torr以上の減圧状態にしなければならなく、熱分解装置にこのような条件を満たす耐熱性・耐圧性などが要求される。さらに、不活性ガスと置換し減圧するための設備も必要である。
【0012】
特許文献4記載の技術は、砂を600℃〜950℃の高温に加熱し循環させて流動床を形成するための流動床燃焼炉と、廃プラスチックに中和剤を添加して脱塩素する脱塩素用ロータリーキルンと、これを添加された廃プラスチックにFCC廃触媒を混合させて熱分解する熱分解炉とを用い、高温の砂を流動床燃焼炉から脱塩素用ロータリーキルンと熱分解炉へ、さらに熱分解炉から再び流動床燃焼炉へと循環させる流動床加熱方式であるため、温度の調整管理が難しいうえに、配管設備や装置規模が大がかりになる問題がある。
【0013】
そこで、本発明の目的は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチロール(PS)などが混在した廃プラスチックを、例えばスチレン系とオレフィン系とで分別するような事前分別をすることなく、JIS等の石油規格を満たす性状が安定したガソリン、灯油、軽油等の市場性の高い石油製品として、小規模の施設で経済的にしかも比較的低い反応温度で効率良く再生することができる廃プラスチック油化方法及び油化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的を達成するため、本発明による廃プラスチック油化方法の第1の態様は、固形の廃プラスチックと触媒を溶解蒸発槽に入れ、この溶解蒸発槽の周壁空洞に封入した流動性の熱媒体を加熱することにより、廃プラスチックを触媒と共に所定の温度範囲内(T1〜T2)で間接的に加熱しながら撹拌して溶解させるとともに、蒸発させ、蒸発してきたガス分を冷却して一次分解油を生成する一次分解油生成工程と、一次分解油を蒸留槽内で一次分解油生成工程よりも低い所定温度範囲内(T3〜T4)(但し、T3<T2)で加熱して蒸発させ、蒸発してきたガス分を冷却することにより、炭素数が所定数以下となる二次分解油を生成する二次分解油生成工程と、二次分解油を定温加熱槽内で二次分解油生成工程の加熱温度(T3〜T4)よりもさらに低いほぼ一定温度(T5)に維持して加熱し、その温度(T5)での蒸発を行う引火点調整工程とを含む。
この第1の態様において、二次分解油生成工程にて蒸発しなかったものを溶解蒸発槽へ返戻して再処理することができる。
【0015】
一次分解油生成工程の加熱温度の範囲(T1〜T2)は350℃〜450℃、二次分解油生成工程の加熱温度の範囲(T3〜T4)は190℃〜300℃、三次分解油生成工程の加熱温度(T5)が120℃〜130℃とすることが好ましい。
【0016】
本発明による廃プラスチック油化方法の第2の態様は、固形の廃プラスチックと触媒を溶解蒸発槽に入れ、この溶解蒸発槽の周壁空洞に封入した流動性の熱媒体を加熱することにより、廃プラスチックを触媒と共に所定の温度範囲内(T1〜T2)で間接的に加熱しながら撹拌して溶解させるとともに、蒸発させ、蒸発してきたガス分を冷却して一次分解油を生成する一次分解油生成工程と、一次分解油を前記溶解蒸発槽へ返戻して触媒を用いずに一次分解油生成工程よりも低い所定温度範囲内(T3〜T4)(但し、T3<T2)で加熱して蒸発させ、蒸発してきたガス分を冷却することにより、炭素数が所定数Cx以下となる二次分解油を生成する二次分解油生成工程と、二次分解油を定温加熱槽内で二次分解油生成工程の加熱温度(T3〜T4)よりもさらに低いほぼ一定温度(T5)を維持して加熱し、その温度(T5)での蒸発を行う引火点調整工程とを含む。
この第2の態様において、二次分解油生成工程にて溶解蒸発槽内に残ったものを、新たな固形の廃プラスチックと共に溶解蒸発槽内で一次分解油生成工程と同様の処理をすることができる。
【0017】
第2の態様においても、一次分解油生成工程の加熱温度の範囲(T1〜T2)は350℃〜450℃、二次分解油生成工程の加熱温度の範囲(T3〜T4)は190℃〜300℃、三次分解油生成工程の加熱温度(T5)は120℃〜130℃とすることが好ましい。
【0018】
第1の態様および第2の態様のいずれの場合も、一次分解油生成工程において使用する触媒は、シリカ(Si)とアルミナ(Al)を主成分とするFCC(流動接触分解)廃触媒が好ましい。
溶解蒸発槽内に残留した触媒を槽外へ排出する場合には、熱媒体による溶解蒸発槽の加熱温度を一次分解油生成工程の加熱温度(T1〜T2)よりも高い加熱温度(T6)(但し、T6>T2)に上昇させ、溶解蒸発槽内に残留した触媒をこの温度(T6)で加熱してから溶解蒸発槽外へ排出する。
【0019】
二次分解油生成工程および引火点調整工程のそれぞれにおいて分解油が生成されるが、その一部をシステム系内で有効利用するため、二次分解油生成工程で生成された一部の二次分解油または引火点調整工程で蒸発しなかった一部の分解油のいずれか一方を、固形の廃プラスチックを溶解蒸発槽へ投入する廃プラスチック投入路に注入する。
【0020】
本発明による廃プラスチック油化システムの第1の態様は、周壁に空洞を形成し、その内部に流動性の熱媒体を封入した溶解蒸発槽、この熱媒体を加熱する加熱部及び撹拌機を備え、溶解蒸発槽内で固形の廃プラスチックに触媒を反応させ熱媒体により所定の温度範囲内(T1〜T2)で間接的に加熱しながら撹拌機で撹拌して溶解させるとともに、蒸発させる廃プラスチック分解装置と、前記溶解蒸発槽から蒸発してきたガス分を冷却して一次分解油を生成する一次冷却装置と、前記一次分解油を前記溶解蒸発槽での加熱温度(T1〜T2)よりも低い所定温度範囲内(T3〜T4)(但し、T3<T2)で加熱して蒸留する蒸留槽と、この蒸留槽から蒸発してきたガス分を冷却して二次分解油を生成する二次冷却装置と、前記二次分解油を定温加熱槽に導入し、前記蒸留槽での加熱温度(T3〜T4)よりもさらに低いほぼ一定温度(T5)に維持して加熱し、その温度(T5)での蒸発を行う引火点調整装置とを含む。
【0021】
本発明による廃プラスチック油化システムの第2の態様は、周壁に空洞を形成し、その内部に流動性の熱媒体を封入した溶解蒸発槽、この熱媒体を加熱する加熱部及び撹拌機を備え、溶解蒸発槽内で固形の廃プラスチックに触媒を反応させ熱媒体により所定の温度範囲内(T1〜T2)で間接的に加熱しながら撹拌機で撹拌して溶解させるとともに、蒸発させる廃プラスチック分解装置と、前記溶解蒸発槽から蒸発してきたガス分を冷却して一次分解油を生成する冷却装置と、前記一次分解油を沈殿分離して前記溶解蒸発槽へ返戻する沈殿分離装置とを備えている。そして前記廃プラスチック油化装置は、前記沈殿分離装置からの一次分解油を、前記加熱部にて温度調整することにより前記加熱温度(T1〜T2)よりも低い所定温度範囲内(T3〜T4)(但し、T3<T2)で触媒を用いずに加熱して蒸発させる、触媒無し蒸留処理にも使用される。また、前記冷却装置は、触媒無し蒸留処理により蒸発してきたガス分を冷却することにより、炭素数が所定数Cx以下となる二次分解油を生成する二次分解油生成にも使用される。さらに、この廃プラスチック油化システムは、前記冷却装置からの前記二次分解油を定温加熱槽に導入し、前記加熱温度(T3〜T4)よりもさらに低いほぼ一定温度(T5)に維持して加熱し、その温度(T5)での蒸発を行う引火点調整装置を備えている。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、PP、PE、PSなどが混在した廃プラスチックを油化するが、石油製品のなかでも市場性が高いガソリン、灯油、軽油を主に再生することを意図しており、そのために三段階の処理を行う。
すなわち、第一段階では、周壁に空洞を形成し、その内部に流動性の熱媒体を封入した溶解蒸発槽を用い、廃プラスチックをこの溶解蒸発槽内で触媒と共に所定の温度範囲内(T1〜T2)で間接的に加熱しながら撹拌して溶解させるとともに、蒸発させ、蒸発してきたガス分を冷却して一次分解油を生成する。
このような溶解蒸発槽にて廃プラスチックを触媒と反応させながら間接的に加熱すると、溶解蒸発槽の周壁空洞に封入した熱媒体が周壁に沿って流動して伝熱するので、溶解蒸発槽の周面から内部全域を均一に熱効率良く加熱することができるとともに、溶解蒸発槽内の平均温度を熱媒体の温度と同一視することができる。従って、熱媒体の温度を計測することで、溶解蒸発槽内での加熱温度を計測するのと同等になるため、加熱温度の調整管理が容易で、炭素数が過度になる溶解(熱分解)や溶解ムラを防ぐことができるとともに、ある炭素数のものだけに集中するような熱分解を抑制し、意図する安定した条件での熱分解を行うことができる。また、本発明の処理において副産物として生成されるガスを、溶解蒸発槽の熱媒体を加熱するための燃料として利用できる利点もある。
【0023】
第二段階では、第一段階で生成された一次分解油を第一段階での加熱温度範囲(T1〜T2)よりも低い所定温度範囲内(T3〜T4)での蒸留を行い、そのガス分を冷却して炭素数が所定数Cx以下となる二次分解油を生成する。
ここでの蒸留によって、炭素数が所期以上となる留分(上限を超える炭素数のもの)を比較的低温な蒸留処理にて容易に除くことができる。
【0024】
第三段階では、第二段階で生成された二次分解油を第二段階での加熱温度範囲(T3〜T4)よりもさらに低いほぼ一定温度(T5)に維持して加熱し、その温度(T5)での蒸発を行う。
このような定温加熱処理によって、引火点が所期以下の留分を分離し、ガソリン、灯油、軽油としてのJISの石油規格を満たす生成油を取り出すことができる。
要約すると、第一段階の処理では、炭素数が少なく狭い範囲に特定されてしまうような熱分解を避け、むしろ炭素数の多いものも含まれるような熱分解を意図し、第二段階の処理では、炭素数の多いものを除く炭素数制限のための蒸留を意図し、第三段階の処理では、安定した性状の石油製品として取り出すための引火点調整を意図する。そして、このような目的の異なる三段階の処理の有機的な組み合わせにより、PP、PE、PSなどが混在した廃プラスチックから、JIS等の石油規格の性状を満たす、つまり炭素数と引火点の両面の性状の規格を満たすガソリン、灯油、軽油等の市場性の高い石油製品を、小規模の施設で経済的にしかも比較的低い反応温度で効率良く再生することができるようにしたものである。
【0025】
第二段階において、一次分解油を蒸留槽で加熱して蒸留すると、一部は炭素の再重合が起こって炭素数が増すものもあるが、炭素数が所定数Cx以上のものは蒸留槽に残留するので、これを溶解蒸発槽に戻して第一段階の熱分解処理を繰り返せば、所期する炭素数範囲の二次分解油を歩留まり良く生成できる。
【0026】
本発明の第1の態様は、上記の三段階の処理を連続して行う連続処理方式とすることができるので、生産効率が良い。
一方、本発明の第2の態様は、いわゆるバッチ式となるが、触媒を用いる第一段階の熱分解処理と触媒を用いない第二段階の蒸留処理とを、共通の溶解蒸発槽を用いて行うことができ、しかも溶解蒸発槽の加熱温度の調整管理が上記のように容易であるので、第一段階と第二段階では加熱温度範囲が上記のように異なっても支障はなく、システム規模を小さくして設備費を節約できる。
【0027】
本発明の第1の態様および第2の態様のいずれの場合も、好ましい温度として、一次分解油生成工程の加熱温度の範囲(T1〜T2)は350℃〜450℃、二次分解油生成工程の加熱温度の範囲(T3〜T4)は190℃〜300℃、三次分解油生成工程の加熱温度(T5)は120℃〜130℃とするのは、次の理由による。
先ず、第一段階の熱分解処理については、
(1)炭素数がC40を越えるような留分は極力避けたいこと。
(2)廃プラスチックがPP、PSの場合はだいたい320℃から分解が始まり380℃程度で終息し、PEの場合は380℃程度から分解が始まり420℃程度で終息すること。
(3)溶解蒸発槽内に残留した触媒を排出する前に、触媒から油分をガス化して取り除く場合には、一次分解油生成工程の際の加熱温度より高い温度で残留触媒を加熱するが、その加熱温度がだいたい500℃以上となること。
(4)高温で熱分解させるほど分解油が色づくので、加熱温度を可及的に低く抑えたいことから、350℃〜450℃の範囲が適当である。
【0028】
第二段階の蒸留処理については、灯油についてのJISの蒸留性状に関する規格が270℃以下で95%以上が蒸留するように定められているので、270℃を中心とした範囲としたこと、190℃以下で行うと蒸留しないで残留分が多くなり、300℃以上で行うと炭素数がC20を越えるものまで蒸留すること、二次分解油の炭素数をC20以下に抑えたいことから、190℃〜300℃の範囲が適当である。
【0029】
第三段階の定温加熱処理については、JISの規格では、炭素数C8の沸点が126℃であること、第二石油類に属する灯油については炭素数がC9〜C15程度で、安全性の面から引火点が40℃以上とされており、これを満たすことを第一義とするために、定温加熱の維持温度は120℃〜130℃が適当である。
【0030】
本発明の第1の態様および第2の態様のいずれの場合も、第一段階の熱分解において使用する触媒は、シリカとアルミナを主成分とするFCC廃触媒が好ましいが、その理由は次のとおりである。
(1)FCC廃触媒は、製油所等から排出される使用済みのFCC触媒で、大量に排出されるためバージンのFCC触媒よりも格段に廉価であること。
(2)いったん触媒として使用されているため劣化しており、熱分解の際の触媒反応は低下しているが、バージンのFCC触媒では、反応が良いために廃プラスチックに対して使用した場合、炭素数が概してC9以下の少ない値に集中する熱分解になりやすいため、最終的に再生される生成油が炭素数C9以下の石油製品に限定されてしまうのに対し、FCC廃触媒を使用すると反応が低下しているため、炭素数C9以下の石油製品ばかりでなく、灯油などそれ以上の炭素数の石油製品としても再生できる利点があるとともに、高温域ではなくそれ以下での熱分解に適していること。
(3)本発明は、炭素数がC20以下となるガソリン、灯油、軽油等の市場性の高い石油製品を経済的かつ効率的に再生することを意図していることから、特にシリカとアルミナを主成分とするFCC廃触媒は、第一段階で溶解蒸発槽により間接的加熱にて行う熱分解の際、また残留したFCC廃触媒を高い温度で加熱して付着している油分を蒸発させてから排出する際に、上記のような加熱温度の温度管理がしやすいうえに、廃棄処分も容易であるなどの利点がある。
【0031】
溶解蒸発槽内に残留した触媒を槽外へ排出する場合、熱媒体による加熱温度を第一段階の処理での加熱温度よりも高い温度にして触媒を加熱すると、触媒に捕捉されている油分を触媒から蒸発させ、触媒を油分が無いサラサラの状態にして排出することができるので、触媒を廃棄処分するのに有益である。
固形の廃プラスチックは粉砕してから溶解蒸発槽へ搬送投入するのが通常で、粉砕状態での搬送過程で静電気が発生するため、静電気による吸着集合が起こり、これが溶解蒸発槽からの熱も加わって助長されるが、第二段階で生成された分解油の一部、または第三段階で生成された分解油の一部を溶解蒸発槽への廃プラスチック投入路に注入すれば、除電により吸着集合を防止できるとともに、潤滑作用によりスムーズに投入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施例1のシステム構成図である。
図2】本発明の実施例2のシステム構成図である。
図3】両実施例に共通に使用できる廃プラスチック分解装置の構造図である。
図4】実施例1における第一処理工程の手順を示すタイミングチャートである。
図5】同じく第二処理工程の手順を示すタイミングチャートである。
図6】実施例1及び実施例2における第三処理工程の手順を示すタイミングチャートである。
図7】実施例1における残渣処理工程の手順を示すタイミングチャートである。
図8】実施例2における第一処理工程の手順を示すタイミングチャートである。
図9】同じく第二処理工程の手順を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、一連の処理を連続的に行える連続処理式と、連続的に処理できないものの設備を簡素化できるバッチ処理式の二つの形態で実施できるので、以下にそれぞれの場合の実施例について説明する。
【実施例1】
【0034】
図1は、連続処理式の場合の実施例1を示す全体のシステム構成図で、PP、PE、PSなどが混在した原料である廃プラスチックは、破砕機1による破砕、洗浄脱水機2による洗浄と脱水、温熱式減容機3による減容、水洗冷却装置4による冷却の各処理を経たのち、搬送コンベア5にて投入ホッパ6に搬入され、ここに粉砕状態にして一次的に貯溜される。ここまでが前処理工程で、これから先が本発明に係る処理となる。
【0035】
投入ホッパ6に一次貯溜された粉砕廃プラスチック(以下、粉砕原料と記す。)は、横軸コンベア7及びこれに連接された縦軸コンベア8を駆動させるとともに、この縦軸コンベア8の先端の投入バルブ9を開くことにより、廃プラスチック分解装置10の溶解蒸発槽11内へ、その天井部11aの投入口11bから投入される。
図1では、この廃プラスチック分解装置10を模式図にして示しているが、図3にその構造の具体例を示す。そこで、廃プラスチック分解装置10の構造を図3により明らかにしたうえで、これによる処理(第一処理工程)を追って説明することとする。
【0036】
廃プラスチック分解装置10の溶解蒸発槽11は断熱ケーシング11B内に収容され、またこれらの間の空室13の下部にはバーナ14が設置されている。溶解蒸発槽11の下部は先細となる漏斗状で、その下部を含めて溶解蒸発槽11の周壁は、内壁11cと外壁11dとによる二重壁構造で、その内外の壁の間に周壁空洞12が形成され、ここに熱媒体15が封入されている。熱媒体15としては、常温では蝋のように固まっているが、ある温度以上、例えば190℃以上に加熱されると溶けて周壁空洞12中を流動する相転移性材質のものが好ましい。
【0037】
溶解蒸発槽11の外壁11bと断熱ケーシング11Bとの間には、隔壁16が螺旋状に設けられているとともに、断熱ケーシング11Bには、空室13の上部において排気口17が形成されているため、バーナ14から排気口17までの空室13は螺旋状の煙道となる。従って、バーナ14からの熱は上昇する渦流となって周壁空洞12内の熱媒体15を加熱する。
【0038】
溶解蒸発槽11内には撹拌機18が組み込まれている。撹拌機18は、溶解蒸発槽11の天井部11aの外側に設置の可逆回転形モータ19を駆動源とし、このモータ19にて回転される回転軸20に、螺旋状撹拌羽根21の支持枠である回転枠22を装着するとともに、この回転軸20を同軸とする送りスクリュウ23を設けたものである。撹拌羽根21は上へ向かって徐々に大きくなる螺旋状であるのに対し、送りスクリュウ23は、撹拌羽根21の螺旋より小さく、その中央部において溶解蒸発槽11の底部下端の残渣排出口24まで延び、撹拌羽根21と一体回転する。
【0039】
溶解蒸発槽11の天井部11aには、触媒を投入するための触媒投入口25も設けてあるとともに、返流される分解油を流し込むための分解油返流配管26が分解油注入バルブ27を介して接続され、さらに外部ガス冷却装置であるコンデンサ28へのガス配管29が接続され、また周壁空洞12中の熱媒体15の温度を測定する温度センサ30が設置されている。一方、断熱ケーシング11Bの外部下側には、残渣排出口バルブ31を介して残渣ホッパ32が配置されている。
【0040】
第一処理工程は、このような構造の廃プラスチック分解装置10により次のように行われる。図4に、実施例1におけるその手順のタイミングチャートを示す。
溶解蒸発槽11内へ触媒投入口25から所要量の触媒を先に投入する(図4(1)参照)。その触媒には、シリカとアルミナを主成分とするFCC廃触媒を使用する。
【0041】
触媒投入後、投入バルブ9を閉じてから(図4(2)参照)、バーナ14による加熱を行う(図4(3)参照)。溶解蒸発槽11の周壁空洞12中に封入されている熱媒体15は190℃程度で溶けて周壁空洞12中を流動し、溶解蒸発槽11の周壁の全域から槽内を加熱するので、温度センサ30による熱媒体15の測定温度は槽内の加熱温度と同一視できる。
【0042】
測定温度(加熱温度)が300℃以上になったら投入バルブ9を開き(図4(4)参照)、投入ポッパ6内の粉砕原料を横軸コンベア7及び縦軸コンベア8にて溶解蒸発槽11内へ投入する(図4(5)参照)。そして、撹拌機18を正転駆動し(図4(6)参照)、粉砕原料とFCC廃触媒とを撹拌しながら加熱する。
この撹拌作用は、送りスクリュウ23が溶解蒸発槽11内の中央部において、その収斂した底部から粉砕原料とFCC廃触媒とを上方へ移送すると同時に、撹拌羽根21がその周りで巻き上げるように掻き回すので、粉砕原料とFCC廃触媒とは矢印Sで示すような上下の循環と渦流とを繰り返しながら満遍なく撹拌される。
加熱については、上記のようにバーナ14からの熱が上昇する渦流となって周壁空洞12内の熱媒体15を加熱し、加熱された熱媒体15は周壁空洞12中を流動するので、溶解蒸発槽11内はその周壁の全域から均等に加熱される。
【0043】
粉砕原料とFCC廃触媒とは、溶解蒸発槽11内でこのように撹拌されながらバーナ14からの熱により間接的に加熱されるが、その加熱温度は温度センサ30で監視して350℃〜450℃の範囲内とする。この温度範囲内でFCC廃触媒は廃プラスチックである粉砕原料に反応して熱分解を起こす。FCC廃触媒は、バージンの触媒に比べてPP、PE、PSなどのプラスチックに対する反応が劣るため、熱分解は炭素数C1〜C40の広い範囲で生じ、熱分解により生じたガスはこのような炭素数範囲で溶解蒸発槽11からガス配管29を通じて排出され、コンデンサ28にて冷却されて分解油が生成される(図4(7)参照)。この分解油は図1に示す二次蒸留装置33の蒸留槽34へ送入され、この二次蒸留装置33で次の処理(第二処理工程)が行われる。
なお、FCC廃触媒は、処理対象の原料がPP、PE、PSなどの廃プラスチックであることから、前述したように経済上の観点などから有利であるが、本発明はバージンのFCC触媒の使用を制限するものではない。
【0044】
二次蒸留装置33は、廃プラスチック分解装置10で生成された分解油を蒸留槽34内で加熱して蒸留することで、その炭素数の範囲の高域を低くすることを意図しており、蒸留槽34にヒータ35を内蔵するとともに、これによる加熱温度を測定する温度センサ36を蒸留槽34に付設している。また、蒸留槽34から蒸発してきたガス分を冷却して油化するコンデンサ37と、その油分を沈殿分離して二次分解油とする沈殿分離装置38を備えている。蒸留槽34の底部は漏斗状で、その下端外側には蒸留残油排出バルブ39が配置されている。なお、蒸留槽34にヒータ35を内蔵することに代えて、蒸留槽34の外側にバーナを設置してもよい。
【0045】
図5に、二次蒸留装置33において行われる二次処理工程の手順を示す。
蒸留残油排出バルブ39を開くと、蒸留槽34内の蒸留残油が残油返送路40を通って溶解分解槽11側へ返送される(図5(1)参照)。返送されてきた蒸留残油は、図3に示した前記縦軸コンベア8へその分解油注入口41から注入され(図4(8)参照)、縦軸コンベア8から溶解分解槽11へ投入されて行く粉砕原料の静電気防止と、流れの潤滑のために供される。
【0046】
蒸留槽34内に入った分解油はヒータ35にて加熱することにより蒸留されるが(図5(2)参照)、その加熱温度は温度センサ36にて監視して190℃〜300℃の範囲とする。この温度での蒸留により、蒸発分の炭層数はほぼC20以下となり、C20を越えるものは蒸留残油として蒸留槽39に残る。その蒸留残油は、縦軸コンベア8へ注入して上記のように活用できるとともに、溶解分解槽11内で再処理されることになるが、必要に応じ、図3に示した前記分解油返流配管26から溶解分解槽11内へ随時戻す(図5(3)参照)ことによっても、再処理することができる。
【0047】
蒸留槽34で蒸発したガス分はコンデンサ37にて冷却されて油化し、その油分は沈殿分離装置38にて沈殿分離され(図5(4)参照)、分離したものが炭素数ほぼC20以下の二次分解油として生成される(図5(5)参照)。この二次分解油は、図1においてバルブ42を開くことにより引火点調整装置43の定温加熱槽44へ送入される、
【0048】
引火点調整装置43は、二次分解油を引火点調整の観点から加熱するもので、定温加熱槽44にヒータ45を内蔵するとともに、これによる加熱温度を測定する温度センサ46を定温加熱槽44に付設している。また、定温加熱槽44から石油由来のガスが蒸発してくるので、それを例えば活性炭吸着により捕集するガスホルダ47を備えている。
【0049】
この引火点調整装置43による処理(第三処理工程)は次のように行われる。図6にその手順を示す。
定温加熱槽44内に入った二次分解油は、ヒータ45による加熱温度を温度センサ46にて監視することにより、温度を120℃〜130℃の範囲内の定温に維持したまま加熱される(図6(1)参照)。このような温度を維持しての定温加熱により、炭素数がC9未満の引火点が低いものは蒸発し、炭素数がC9〜C20の範囲内のものが定温加熱槽44に残る。
【0050】
ガスホルダ47にて捕集されたガスは前記廃プラスチック分解装置10のバーナ14の燃焼に利用され(図6(2)参照)、捕集できなかったものは大気放出される。一方、定温加熱槽44内の生成油の一部は、同バーナ14の燃料として供される(図6(3)参照)。また、定温加熱槽44内の生成油はバルブ48を開くことにより、製品タンク49へ適時に送入されてこれに貯溜される(図6(4)参照)。その貯溜された生成油は、炭素数がC9〜C20の範囲内の市場性の高い石油製品となる。
なお、この生成油の一部を廃プラスチック分解装置10のバーナ14の燃料として利用することができる。
【0051】
上述した第一処理工程、第2処理工程及び第三処理工程は連続して一連に行われるが、それを例えば一日単位の稼働とするなどの定期的稼働とする場合には、廃プラスチック分解装置10において次のように残渣処理を行う。図7に残渣処理の手順を示す。
【0052】
前記投入バルブ7を閉じたまま(図7(1)参照)、バーナ14による溶解蒸発槽11内の加熱温度を、第一処理工程での加熱温度(350℃〜450℃)より高い500℃程度に所要時間だけ昇温する(図7(2)参照)。このような高温加熱により、溶解蒸発槽11内の廃プラスチック残渣が急速に熱分解されるとともに、FCC廃触媒に捕捉されていた油分が強制的に蒸発される。この後、バーナ14による加熱を停止する(図7(3)参照)。
溶解蒸発槽11内の温度が安全な温度まで低下してから、撹拌機18を逆転させるとともに(図7(4)参照)、残渣排出バルブ30を開いてFCC廃触媒を含む残渣を溶解蒸発槽11から排出し(図7(5)参照)、残渣ホッパ31に回収する。
【0053】
撹拌機18が逆転すると、その撹拌羽根21によって残渣が溶解蒸発槽11内の中央部の下端へ収斂して行くように掻き集められ、その掻き集められてくる残渣は、送りスクリュウ23によって溶解蒸発槽11から強制的に落下排出される。残渣ホッパ31に回収されたFCC廃触媒を含む残渣は、FCC廃触媒からも油分が蒸発除去されているので、廃棄処分が容易である。
【実施例2】
【0054】
次に、図2はバッチ処理式の場合の実施例2を示す全体のシステム構成図で、実施例1における前記二次蒸留装置33は省略され、実施例1ではこの二次蒸留装置33によって行っていた第二次処理工程を、実施例2では廃プラスチック分解装置10及びコンデンサ28を再使用することで代替するようになっている。そのため実施例2では、第一処理工程で得られた一次分解油を廃プラスチック分解装置10に戻すが、その際に一次分解油を沈殿分離して貯溜する分解油沈殿貯溜タンク50が備えられている。
【0055】
図8に実施例2の場合の第一処理工程の手順を示す。
溶解蒸発槽11内へ、シリカとアルミナを主成分とするFCC廃触媒を投入し(図8(1)参照)、投入バルブ9を閉じてから(図8(2)参照)、バーナ14による加熱を行う(図4(3)参照)。測定温度(加熱温度)が300℃以上になったら投入バルブ9を開き(図8(4)参照)、投入ポッパ6内の粉砕原料を横軸コンベア7及び縦軸コンベア8にて溶解蒸発槽11内へ投入する(図8(5)参照)。そして、撹拌機18を正転駆動し(図8(6)参照)、粉砕原料とFCC廃触媒とを撹拌しながら加熱する。
その加熱温度は温度センサ30で監視して350℃〜450℃の範囲内とする。この温度範囲内でFCC廃触媒は廃プラスチックである粉砕原料に反応して熱分解を起こす。熱分解は炭素数C1〜C40の広い範囲で生じ、熱分解により生じたガスはこのような炭素数範囲で溶解蒸発槽11からガス配管29を通じて排出され、コンデンサ28にて冷却されて一次分解油が生成される(図8(7)参照)。
【0056】
ここまでの処理とそれによる前述したような作用は実施例1の場合と同様であるが、この後が実施例1とは異なり、コンデンサ28からの一次分解油は分解油沈殿貯溜タンク50に貯溜される。ここに貯溜された炭素数の多い分解油は、溶解蒸発槽11への粉砕原料の投入路、つまり投入コンベアである前記縦軸コンベア8へ注入され(図8(8)参照)、実施例1の場合と同様に粉砕原料の静電気防止と潤滑に使用されるとともに、溶解蒸発槽11内で再処理される。
【0057】
処理対象量の粉砕原料を溶解蒸発槽11に投入して熱分解したら投入バルブ7を閉じ(図8(9)参照)、バーナ14による溶解蒸発槽11内の加熱温度を500℃程度まで所要時間だけ昇温する(図8(10)参照)。このような高温加熱により、溶解蒸発槽11内の廃プラスチック残渣が急速に熱分解されるとともに、FCC廃触媒に捕捉されていた油分が強制的に蒸発される。この後、バーナ14による加熱を停止する(図8(11)参照)。
その後、撹拌機18を逆転させるとともに(図8(12)参照)、残渣排出バルブ30を開き、FCC廃触媒を含む残渣を溶解蒸発槽11から排出して(図8(13)参照)、残渣ホッパ31に回収し、溶解蒸発槽11の温度が低下するまで待機して次の第二処理工程へ移行する(図8(14)参照)。
【0058】
図9に実施例2の場合の第二処理工程の手順を示す。
温度センサ30の温度を監視することにより溶解蒸発槽11の温度が250℃程度まで低下したことを確認したら(図9(1)参照)、分解油沈殿貯溜タンク50に貯溜されている一次分解油を縦軸コンベア8又は前記分解油返流配管26を通じて溶解蒸発槽11へ返送する(図9(2)参照)。そして、バーナ14を再び点火して溶解蒸発槽11内の一次分解油を触媒を用いずに加熱する(図9(3)参照)。このときの加熱温度は第一処理工程での加熱温度より低い190℃〜300℃の範囲とする。この加熱により一次分解油は蒸留され、蒸発分はコンデンサ28で再び冷却されて二次分解油が生成される(図9(4)参照)。蒸留の加熱温度が190℃〜300℃の範囲であるので、生成される二次分解油の炭層数はほぼC20以下となり、蒸発しなかったものは炭素数がC20を越える蒸留残油として溶解蒸発槽11内に残る。
【0059】
溶解蒸発槽11では蒸留残油をそのままにして前述した第一処理工程を再開することができるが、コンデンサ28で生成された二次分解油については、これを実施例1と同様の引火点調整装置43の定温加熱槽44へ送入し、引火点調整装置43による実施例1と同様の第三処理工程に移行する。その手順は図6に示した実施例1の場合と同様なので、説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明はPP、PE、PSなどの廃プラスチックを原料とする場合に限らず、廃油を原料とする場合にも適用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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