(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一の方向に沿って間隔をおいて設けられた複数の収容室のそれぞれに前記積層セラミックコンデンサが収容されたテーピング積層セラミックコンデンサ連を、前記一の方向に沿って前記磁気発生装置と前記磁束密度計測器との間を通過させ、前記複数の積層セラミックコンデンサに対して前記計測工程を行う、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサの方向識別方法。
一の方向に沿って間隔をおいて設けられた複数の収容室のそれぞれに前記積層セラミックコンデンサが収容されたテーピング積層セラミックコンデンサ連から、吸着ノズルにより取り出された前記積層セラミックコンデンサを、前記磁気発生装置と前記磁束密度計測器との間を通過させ、前記積層セラミックコンデンサに対して前記計測工程を行う、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサの方向識別方法。
円形のローターの外周に沿って間隔をおいて設けられた複数の収容部のそれぞれに収容されて搬送される前記積層セラミックコンデンサを、前記磁気発生装置と前記磁束密度計測器との間を通過させ、前記複数の積層セラミックコンデンサに対して前記計測工程を行う、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサの方向識別方法。
リニア搬送経路を通る複数の収容部のそれぞれに収容された前記積層セラミックコンデンサを、前記磁気発生装置と前記磁束密度計測器との間を通過させ、前記複数の積層セラミックコンデンサに対して前記計測工程を行う、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサの方向識別方法。
前記積層セラミックコンデンサを、前記磁気発生装置と前記磁束密度計測器との間を通過させる際に、前記積層セラミックコンデンサを回転させない、請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層セラミックコンデンサの方向識別方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、内部電極の積層方向と磁束の方向とが平行である場合と、内部電極の積層方向と磁束の方向とが垂直である場合とで、計測される磁束密度の差は非常に小さい。また、計測される磁束密度は、磁石とセンサープローブ、コンデンサとの位置関係に大きく左右される。特に、小型の積層セラミックコンデンサでは計測される磁束密度に対する磁石とセンサープローブ、コンデンサとの位置関係が与える影響は甚大である。
【0006】
このように、方向が異なる場合に計測される磁束密度の差が小さく、かつ、計測時のコンデンサの位置により計測される磁束密度が大きく異なるため、特許文献1に記載の方法では、積層セラミックコンデンサの方向を正確に識別することは困難である。
【0007】
この問題についてより具体的に説明する。例えば、長さ寸法が1mmで、幅寸法が0.5mmで、高さ寸法が0.5mmであり、静電容量が4.7μFである積層セラミックコンデンサについて、ある測定条件で磁束密度を計測した場合を想定する。この積層セラミックコンデンサの、内部電極の積層方向が磁束の方向と平行な場合の最大磁束密度は、約53.6mTである。一方、この積層セラミックコンデンサの、内部電極の積層方向が磁束の方向と垂直な場合の最大磁束密度は、約52.3mTである。従って、この積層セラミックコンデンサでは、内部電極の積層方向と磁束の方向とが平行である場合と垂直である場合とで、磁束密度の最大値は1.3mTのみ異なる。従って、内部電極の積層方向と磁束の方向とが平行である場合と垂直である場合との間の磁束密度の最大値の差は、内部電極の積層方向と磁束の方向とが平行である場合の磁束密度の最大値に対して僅か2.4%である。
【0008】
また、積層セラミックコンデンサの計測位置が積層セラミックコンデンサの中心位置から0.3mmずれたときの、内部電極の積層方向と磁束の方向とが平行である積層セラミックコンデンサの磁束密度は、約52.3mTとなり、内部電極の積層方向と磁束の方向とが垂直である場合の積層セラミックコンデンサの磁束密度の最大値(測定位置が積層セラミックコンデンサの中心位置である場合)とほぼ等しくなる。このことから、積層セラミックコンデンサの計測位置が0.3mm以上変化し得る場合には、積層セラミックコンデンサの方向識別が困難である。この問題は、積層セラミックコンデンサが小型化するほど、例えば長さ寸法が1mmで、幅寸法が0.5mmで、高さ寸法が0.5mmというサイズ以下であるほど、計測位置を中心位置に定めることが難しくなるため、顕著になる。
【0009】
本発明の主な目的は、積層セラミックコンデンサの方向を正確に識別できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る積層セラミックコンデンサの方向識別方法は、一の方向に沿って積層された複数の内部電極を備える積層セラミックコンデンサにおける複数の内部電極の積層方向を識別する方法である。本発明に係る積層セラミックコンデンサの方向識別方法では、磁気発生装置から発生する磁束密度を磁束密度計測器により計測しながら、積層セラミックコンデンサを、磁気発生装置と磁束密度計測器との間を通過させ、少なくとも積層セラミックコンデンサの通過時における磁束密度を計測する。積層セラミックコンデンサが磁気発生装置と磁束密度計測器との間を通過する間に計測された磁束密度の積分値を算出し、積分値に基づいて積層セラミックコンデンサにおける複数の内部電極の積層方向を識別する。
【0011】
本発明に係る積層セラミックコンデンサの方向識別方法では、一の方向に沿って間隔をおいて設けられた複数の収容室のそれぞれに積層セラミックコンデンサが収容されたテーピング積層セラミックコンデンサ連を、一の方向に沿って磁気発生装置と磁束密度計測器との間を通過させ、複数の積層セラミックコンデンサに対して計測工程を行ってもよい。
【0012】
本発明に係る積層セラミックコンデンサの方向識別方法では、一の方向に沿って間隔をおいて設けられた複数の収容室のそれぞれに積層セラミックコンデンサが収容されたテーピング積層セラミックコンデンサ連から、吸着ノズルにより取り出された積層セラミックコンデンサを、磁気発生装置と磁束密度計測器との間を通過させ、積層セラミックコンデンサに対して計測工程を行ってもよい。
【0013】
本発明に係る積層セラミックコンデンサの方向識別方法では、円形のローターの外周に沿って間隔をおいて設けられた複数の収容部のそれぞれに収容されて搬送される積層セラミックコンデンサを、磁気発生装置と磁束密度計測器との間を通過させ、複数の積層セラミックコンデンサに対して計測工程を行ってもよい。
【0014】
本発明に係る積層セラミックコンデンサの方向識別方法では、リニア搬送経路を通る複数の収容部のそれぞれに収容された積層セラミックコンデンサを、磁気発生装置と磁束密度計測器との間を通過させ、複数の積層セラミックコンデンサに対して計測工程を行ってもよい。
【0015】
本発明に係る積層セラミックコンデンサの方向識別方法では、積層セラミックコンデンサを、磁気発生装置と磁束密度計測器との間を通過させる際に、積層セラミックコンデンサを回転させなくてもよい。
【0016】
本発明に係る積層セラミックコンデンサの方向識別方法では、積層方向の識別結果に基づき積層セラミックコンデンサを回転させる工程を行ってもよい。
【0017】
本発明に係る積層セラミックコンデンサの方向識別装置では、一の方向に沿って積層された複数の内部電極を備える積層セラミックコンデンサにおける複数の内部電極の積層方向を識別する装置である。本発明に係る積層セラミックコンデンサの方向識別装置は、磁気発生装置と、磁束密度計測器と、搬送装置と、識別部とを備える。磁束密度計測器は、磁気発生装置から発生した磁束の密度を計測する。搬送装置は、磁気発生装置と磁束密度計測器との間を、積層セラミックコンデンサを通過させる。磁束密度計測器は、少なくとも積層セラミックコンデンサの通過時における磁束密度を計測する。識別部は、積層セラミックコンデンサが磁気発生装置と磁束密度計測器との間を通過する間に計測された磁束密度の積分値を算出し、積分値に基づいて積層セラミックコンデンサにおける複数の内部電極の積層方向を識別する。
【0018】
テーピング積層セラミックコンデンサ連の製造方法では、一の方向に沿って積層された複数の内部電極を備える積層セラミックコンデンサを作製する。包装体の一の方向に沿って間隔をおいて設けられた複数の収容室に積層セラミックコンデンサを収容する。積層セラミックコンデンサにおける複数の内部電極の積層方向を識別する方向識別工程を行う。方向識別工程では、磁気発生装置から発生する磁束密度を磁束密度計測器により計測しながら、積層セラミックコンデンサを、磁気発生装置と磁束密度計測器との間を通過させ、少なくとも積層セラミックコンデンサの通過時における磁束密度を計測する。積層セラミックコンデンサが磁気発生装置と磁束密度計測器との間を通過する間に計測された磁束密度の積分値を算出し、積分値に基づいて積層セラミックコンデンサにおける複数の内部電極の積層方向を識別する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、積層セラミックコンデンサの方向を正確に識別できる方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0022】
また、実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものである。図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0023】
本実施形態では、
図4及び
図5に示される積層セラミックコンデンサ1の方向識別方法について説明する。まずは、識別対象となる積層セラミックコンデンサ1の構成について説明する。
【0024】
(積層セラミックコンデンサ1の構成)
図4及び
図5に示されるように、積層セラミックコンデンサ1は、セラミック素体10を備えている。セラミック素体10は、略直方体状である。具体的には、セラミック素体10は、正四角柱状である。セラミック素体10は、第1及び第2の主面10a,10bと、第1及び第2の側面10c,10dと、第1及び第2の端面10e,10f(
図5を参照)とを有する。第1及び第2の主面10a,10bは、それぞれ、長さ方向L及び幅方向Wに沿って延びている。第1の主面10aと第2の主面10bとは、互いに平行である。第1及び第2の側面10c,10dは、それぞれ、長さ方向L及び厚み方向Tに沿って延びている。第1の側面10cと第2の側面10dとは、互いに平行である。第1及び第2の端面10e,10fは、それぞれ、幅方向W及び厚み方向Tに沿って延びている。第1の端面10eと第2の端面10fとは互いに平行である。
【0025】
セラミック素体10の長さ方向Lに沿った寸法は、0.4mm〜2.0mmであることが好ましく、0.6mm〜1.0mmであることがより好ましい。セラミック素体10の幅方向Wに沿った寸法は、0.2mm〜1.2mmであることが好ましく、0.3mm〜0.5mmであることがより好ましい。セラミック素体10の厚み方向Tに沿った寸法は、0.2mm〜1.2mmであることが好ましく、0.3mm〜0.5mmであることがより好ましい。長さ方向Lに沿った寸法が1.0mm以下で、幅方向Wおよび厚み方向Tに沿った寸法が0.5mm以下である方が好ましいのは、このようなサイズ以下の小型品の場合に特に磁束密度の測定位置が積層セラミックコンデンサの中心位置から変化しやすいからである。また、長さ方向Lに沿った寸法が0.6mm以上で、幅方向Wおよび厚み方向Tに沿った寸法が0.3mm以上である方が好ましいのは、内部電極の密度が高いものの方が磁束密度による方向識別が行いやすいからである。同様の理由で、静電容量が1μF以上の積層セラミックコンデンサが本発明に適している。
【0026】
セラミック素体10は、例えば、誘電体セラミックを主成分とする材料により構成することができる。誘電体セラミックの具体例としては、例えば、BaTiO
3、CaTiO
3、SrTiO
3、CaZrO
3などが挙げられる。セラミック素体10には、例えば、Mn化合物、Mg化合物、Si化合物、Co化合物、Ni化合物、希土類化合物などの副成分を適宜添加してもよい。
【0027】
なお、「略直方体」には、角部や稜線部が面取りされた直方体や、角部や稜線部が丸められた直方体が含まれるものとする。
【0028】
図5に示されるように、セラミック素体10の内部には、複数の内部電極11,12が設けられている。複数の内部電極11,12は、厚み方向Tに沿って積層されている。各内部電極11,12は、長さ方向L及び幅方向Wに平行に設けられている。セラミック素体10の内部において、内部電極11と内部電極12とは、厚み方向Tに沿って交互に設けられている。厚み方向Tにおいて隣り合う内部電極11,12間には、セラミック部15が配されている。すなわち、厚み方向Tにおいて隣り合う内部電極11,12は、セラミック部15を介して対向している。
【0029】
内部電極11は、第1の端面10eに引き出されている。第1の端面10eの上には、外部電極13が設けられている。外部電極13は、内部電極11と電気的に接続されている。
【0030】
内部電極12は、第2の端面10fに引き出されている。第2の端面10fの上には、外部電極14が設けられている。外部電極14は、内部電極12と電気的に接続されている。
【0031】
内部電極11,12は、Niなどの磁性材料により構成することができる。
【0032】
外部電極13,14は、例えば、Ni,Cu,Ag,Pd,Au,Ag−Pd合金などの適宜の導電材料により構成することができる。
【0033】
図2及び
図3に示されるように、積層セラミックコンデンサ1は、テーピング積層セラミックコンデンサ連2を構成している。テーピング積層セラミックコンデンサ連2は、テーピング20を有する。テーピング20は、長手方向に沿って間隔をおいて設けられた直方体状の複数の収容室21を有する。複数の収容室21のそれぞれに積層セラミックコンデンサ1が収容されている。平面視において、収容室21は、積層セラミックコンデンサ1よりも大きい。従って、収容室21内において、積層セラミックコンデンサ1は、面方向に変位可能である。収容室21内における積層セラミックコンデンサ1の位置が収容室21ごとに変化すれば、磁束密度計測における積層セラミックコンデンサの中心位置からの変化量も収容室21ごとに変化することになる。
【0034】
なお、積層セラミックコンデンサ1は、
図4に示されるような2端子型の積層セラミックコンデンサの他に、側面電極を備える3端子ないし多端子型の積層セラミックコンデンサであってもよい。
【0035】
(積層セラミックコンデンサ方向識別装置3の構成)
積層セラミックコンデンサ方向識別装置3(以下、単に「識別装置3」とする。)は、積層セラミックコンデンサ1における複数の内部電極11,12の積層方向を識別するための装置である。以下、本明細書において、「積層セラミックコンデンサ1における複数の内部電極11,12の積層方向」を、「積層セラミックコンデンサ1の積層方向」、あるいは簡潔に「積層方向」と記載する。
【0036】
図1に示されるように、識別装置3は、磁気発生装置31と、磁束密度計測器32とを備える。磁束密度計測器32は、磁気発生装置31において発生した磁束密度を検出可能なように配置されている。磁束密度計測器32は、磁気発生装置31から発生した磁束密度を計測する。詳細には、磁束密度計測器32は、10kHz〜100kHz程度の間隔で磁束密度の測定を連続して行う。
【0037】
識別装置3は、搬送装置35をさらに備える。搬送装置35は、磁気発生装置31と磁束密度計測器32との間を、積層セラミックコンデンサ1を通過させる。具体的には、搬送装置35は、第1のロール33と、第2のロール34とを有する。第1のロール33には、テーピング積層セラミックコンデンサ連2が巻き取られており、この第1のロール33からテーピング積層セラミックコンデンサ連2が送り出される。磁気発生装置31と、磁束密度計測器32との間を通過したテーピング積層セラミックコンデンサ連2は、第2のロール34により巻き取られる。
【0038】
磁束密度計測器32は、少なくとも積層セラミックコンデンサ1の通過時における磁束密度の変化を計測する。磁束密度計測器32は、計測結果を、識別部36に出力する。識別部36は、磁束密度計測器32から出力された磁束密度の計測結果に基づいて積層セラミックコンデンサ1の積層方向を識別する。識別部36は、この積層方向の識別をテーピング積層セラミックコンデンサ連2中に相互に間隔をおいて一列に配された複数の積層セラミックコンデンサ1に対して順に行っていく。
【0039】
積層セラミックコンデンサ1の製造に際しては、まず、積層セラミックコンデンサ1を作製する。次に、作製した積層セラミックコンデンサ1をテーピング20内に収容し、テーピング積層セラミックコンデンサ連2を作製する。次に、テーピング積層セラミックコンデンサ連2に収容された積層セラミックコンデンサ1の積層方向を識別する。その結果、例えば、積層セラミックコンデンサ1の整列率を確認したり、所望でない積層方向積層セラミックコンデンサ1が検出された場合は、その積層セラミックコンデンサ1にマーキングを施したり、除外したりする。
【0040】
(方向識別方法)
次に、識別部36が行う積層セラミックコンデンサ1の方向識別方法について説明する。なお、以下の説明において、積層方向が磁束の方向と垂直であるものを「水平品」(積層セラミックコンデンサとしては収容室21の底面に対して内部電極が水平方向であるため)とし、平行であるものを「垂直品」(積層セラミックコンデンサとしては収容室21の底面に対して内部電極が垂直方向であるため)とする。
【0041】
まず、本実施形態における方向識別方法の原理について、
図6〜
図8を参照しながら説明する。例えば、
図6に示されるように、磁気発生装置31と磁束密度計測器32との間に積層セラミックコンデンサ1が位置していない状態のときは、磁束密度計測器32を通過する磁力線Lの間隔が最も広くなり、言い換えると、単位面積あたりの磁力線Lの本数が少なくなり、磁束密度としては低い値となる。
【0042】
図7及び
図8に示されるように、磁気発生装置31と磁束密度計測器32との間に積層セラミックコンデンサ1が位置している場合は、積層セラミックコンデンサ1が位置していない場合よりも磁束密度計測器32を通過する磁力線Lの間隔が狭くなる。磁気発生装置31と磁束密度計測器32との間に積層セラミックコンデンサ1が位置している場合は、積層セラミックコンデンサ1が位置していない場合よりも単位面積あたりの磁力線Lの本数が多くなる。
図8に示される積層方向が磁束の方向と平行(コンデンサとしては底面に対して内部電極が垂直方向)であるときのほうが、
図7に示される垂直(コンデンサとしては底面に対して内部電極が水平方向)であるときよりも、磁束密度計測器32を通過する磁力線Lの間隔が狭くなる。
図8に示される積層方向が磁束の方向と平行であるときのほうが、単位面積あたりの磁力線Lの本数が多くなる。
【0043】
従って、
図9に示されるように、積層方向が磁束の方向と平行であるときのほうが、垂直であるときよりも、計測される磁束密度が高くなる。また、
図10に示されるように、積層方向が磁束の方向と平行であるときのほうが、垂直であるときよりも、計測される磁束密度の積分値が高くなる。
【0044】
よって、例えば、計測された磁束密度の最大値に基づいて、積層セラミックコンデンサ1の積層方向を識別することができる。例えば、計測された磁束密度の積分値に基づいて、積層セラミックコンデンサ1の積層方向を識別することができる。
【0045】
積層セラミックコンデンサ1の積層方向をより正確に識別する観点からは、計測された磁束密度の積分値に基づいて、積層方向を識別することが好ましい。水平品の最大磁束密度D1と、垂直品の最大磁束密度D2との差Δd1(D2−D1)(
図9を参照)よりも、水平品の磁束密度の積分値D3と、垂直品の磁束密度の積分値D4との差Δd2(D4−D3)(
図10を参照)の方が大きい。従って、Δd1に基づいて積層セラミックコンデンサ1の方向を識別するよりも、Δd2に基づいて積層セラミックコンデンサ1の方向を識別する方が識別精度を向上することができる。例えば、積層セラミックコンデンサ1の検出時における位置がばらつくことにより、磁束密度の最大値がばらついた場合であっても、磁束密度の積分値を用いることにより、積層セラミックコンデンサ1の積層方向を正確に識別することができる。
【0046】
また、磁束密度の積分値を用いて積層セラミックコンデンサ1の積層方向を識別する場合、磁束密度の最大値を検出する必要がない。このため、磁気発生装置31と磁束密度計測器32との間の距離を長くし得る。従って、積層セラミックコンデンサ1の磁束密度計測時における積層セラミックコンデンサ1の位置ばらつきに伴う方向識別性度の低下を抑制することができる。
【0047】
特に、内部電極11,12の積層枚数が少ない場合には、Δd1が小さくなりやすく、Δd2とΔd1との差(Δd2−Δd1)が大きくなりやすい。よって、内部電極11,12の積層枚数が少ない場合には、磁束密度の最大値を用いるよりも、磁束密度の積分値を用いて積層方向を識別を行うことが好ましい。具体的には、内部電極11,12の積層枚数が、100枚以下である積層セラミックコンデンサ1により好適である。
【0048】
以下、本発明の好ましい実施形態の他の例について説明する。以下の説明において、上記第1の実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0049】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、テーピング積層セラミックコンデンサ連2に収容された積層セラミックコンデンサ1に対して計測工程を行う例について説明した。但し、本発明は、これに限定されない。
【0050】
例えば、
図11に示されるように、磁気発生装置31と磁束密度計測器32との間を、搬送装置41によりテーピングに収容されていない積層セラミックコンデンサ1を搬送しながらその積層方向を識別してもよい。積層セラミックコンデンサ1を、磁気発生装置31と、磁束密度計測器32との間を通過させた後に、積層セラミックコンデンサ1を回転させて積層方向を揃えてもよく、所望でない積層方向の積層セラミックコンデンサ1を取り除いてもよい。
【0051】
(第3の実施形態)
図12は、第3の実施形態における積層セラミックコンデンサの方向識別装置の要部を表す模式的側面図である。本実施形態では、搬送路42に磁気発生装置31と磁束密度計測器32とが設けられている。搬送路42には、リニアフィーダー等のフィーダーにより複数の積層セラミックコンデンサ1が一列に(一の方向に沿って)供給される。積層方向が不適切であると判断された積層セラミックコンデンサ1は、ブロー孔43から噴出される気体により搬送路42から搬送路44に吹き飛ばされる。吹き飛ばされた積層セラミックコンデンサ1は、搬送路44を経由して、回収又は廃棄される。
【0052】
搬送路42を搬送された積層セラミックコンデンサ1は、例えば、テーピング収容機によりテーピングに収容されていってもよいし、例えば、実装機により実装基板等に実装されていってもよい。
【0053】
(第4の実施形態)
図13は、第4の実施形態における積層セラミックコンデンサの方向識別装置を表す模式的側面図である。第4の実施形態における方向識別装置は、テーピング電子部品連の製造装置の一部を構成している。
【0054】
本実施形態において、テーピング電子部品連の製造装置には、ボールフィーダー50が設けられている。ボールフィーダー50には、複数の積層セラミックコンデンサ1が収容されている。ボールフィーダー50は、振動することによりリニアフィーダー51に電子部品を順次供給する。
【0055】
リニアフィーダー51は、振動により供給された積層セラミックコンデンサ1を搬送する。リニアフィーダー51は、搬送機構52に積層セラミックコンデンサ1を供給する。搬送機構52は、積層セラミックコンデンサ1をキャリアテープ53まで搬送する。搬送機構52は、中心軸Cを中心として回転する円板状の搬送テーブル54を有する。具体的には、本実施形態では、円形のローターである搬送テーブル54は、中心軸Cを中心として時計回りに回転する。搬送テーブル54は、複数の凹部(収容部)54aを備えている。複数の凹部54aは、円形のローターの外周に沿って相互に間隔をおいて一列に設けられている。搬送テーブル54の凹部54aには、ポジションP1において、リニアフィーダー51から積層セラミックコンデンサ1が振り込まれる。ポジションP1において凹部54aに振り込まれた積層セラミックコンデンサ1は、搬送テーブル54が回転することにより、中心軸Cを中心として周方向に沿って搬送される。積層セラミックコンデンサ1は、ポジションP3まで搬送される。積層セラミックコンデンサ1は、ポジションP3において搬送テーブル54からキャリアテープ53の収容室53aに収容される。 搬送経路において、ポジションP1とポジションP3の間に位置するポジションP2には、方向識別装置55が設けられている。方向識別装置55は、磁気発生装置31と磁束密度計測器32とを備えている。この方向識別装置55において積層セラミックコンデンサ1の積層方向が識別される。積層セラミックコンデンサ1を、磁気発生装置31と、磁束密度計測器32との間を通過させた後に、積層セラミックコンデンサ1を回転させて積層方向を揃えてもよく、所望でない積層方向の積層セラミックコンデンサ1を取り除いてもよい。
【0056】
本実施形態においても、テーピングに収容前に方向を識別することができる。
【0057】
(第5の実施形態)
図14は、第5の実施形態における積層セラミックコンデンサの方向識別装置を表す模式的側面図である。
【0058】
図14に示される方向識別装置は、例えば、実装基板61に実装するためのマウンター60を介して配された磁気発生装置31と磁束密度計測器32とを備えていてもよい。この場合、実装前に積層セラミックコンデンサ1の積層方向を判別することができる。なお、マウンター60は、例えば、吸着ノズルを備えていてもよい。
【0059】
(実験例)
下記の設計パラメータを有する積層コンデンサを150個用意した。そして、水平品とした状態で、磁束密度の最大値を測定し、その後、垂直品とした後に、磁束密度の最大値を測定した。結果を、
図15に示す。水平品とした状態で、磁束密度の積分値を測定し、その後、垂直品とした後に、磁束密度の最大値を測定した。結果を、
図16に示す。なお、
図15及び
図16のそれぞれにおいて、縦軸は、頻度を示し、横軸が磁束密度を示す。
【0060】
図15に示される結果から、磁束密度の最大値を計測した場合は、水平品と垂直品とで磁束密度の差が生じにくい場合があることが分かる。一方、磁束密度の積分値を計測した場合は、水平品と垂直品とで磁束密度の差が生じやすいことが分かる。この結果から、磁束密度の積分値を用いることで積層セラミックコンデンサの方向を正確に識別できることが分かる。
【0061】
積層セラミックコンデンサの大きさ:1mm×0.5mm×0.5mm
内部電極:ニッケルを主成分とする電極
内部電極の積層枚数:40枚
静電容量:0.1μF
(第6の実施形態)
図17は、第6の実施形態における積層セラミックコンデンサ1の方向識別装置を表す模式的平面図である。
【0062】
図17に示されるように、リニアフィーダー51は、搬送機構52に積層セラミックコンデンサ1を供給する。搬送機構52は、積層セラミックコンデンサ1をキャリアテープ53まで搬送する。搬送機構52は、中心軸Cを中心として回転する円板状の搬送テーブル54と搬送テーブル54が配される搬送ステージ71(
図18を参照)を備える。
図17に示されるように、リニアフィーダー51には、磁気を発生させる磁気発生装置70が設けられ、この磁気発生装置70の前を積層セラミックコンデンサ1が通過することにより積層セラミックコンデンサ1が磁化する。磁気発生装置70は、積層セラミックコンデンサ1を磁力で回転させることにより、内部電極11,12の向きを揃える機能を兼ね備えている。
【0063】
搬送テーブル54は、外周面に複数の凹部54aを備え、複数の凹部54aは、搬送テーブル54の周方向に沿って等間隔を置いて設けられている。複数の凹部54aは、それぞれ、搬送テーブル54の外周面から中心軸Cに向かって延びるとともに、搬送テーブル54の一方主面から他方主面まで貫通している。
図18に示されるように、搬送テーブル54は搬送ステージ71の上に設けられており、この搬送ステージ71により凹部54aの下側が塞がれている。
【0064】
図17に示されるように、ポジションP11からポジションP16までの搬送経路に位置するポジションP12には、静電容量測定部75が配されている。この静電容量測定部75において、凹部54aに収容されている積層セラミックコンデンサ1の静電容量が測定される。測定された積層セラミックコンデンサ1の静電容量は、制御部73に出力される。
【0065】
ポジションP12とポジションP16の間に位置するポジションP13には、方向識別装置55を構成している磁束密度計測部が設けられている。磁束密度計測部は、積層セラミックコンデンサ1の積層方向を識別するために、積層セラミックコンデンサ1が通過する際の磁束密度を計測する。
図18に示されるように、磁束密度計測部は、磁気発生装置55aと磁束密度計測器55bとを有する。磁気発生装置55aは、磁束密度計測器55bと対向している。搬送機構52により搬送されている積層セラミックコンデンサ1は、磁気発生装置55aと磁束密度計測器55bとの間を通過する。磁気発生装置55aと磁束密度計測器55bとの間には、積層セラミックコンデンサ1を搬送する搬送テーブル54と搬送ステージ71とが位置している。
【0066】
積層方向が磁気発生装置55aと磁束密度計測器55bとの配列方向に対して垂直であるときと平行であるときとでは、磁気発生装置55aから積層セラミックコンデンサ1を通過して磁束密度計測器55bに至る磁束の密度が異なる。このため、積層セラミックコンデンサ1が磁気発生装置55aと磁束密度計測器55bとの間を通過するときの磁束密度を磁束密度計測器55bによって検出することにより、積層セラミックコンデンサ1の積層方向を識別することができる。磁束密度計測器55bは、検出した磁束密度を制御部73に出力する。制御部73は、測定された磁束密度を適宜演算処理し、たとえば上述の磁束密度の積分値を求める。
【0067】
積層セラミックコンデンサ1の積層方向をより確実に識別する観点からは、搬送テーブル54が、ステンレス鋼、アルミニウム、プラスチック、セラミックス等の非磁性体により構成されていることが好ましい。また、搬送ステージ71が、ステンレス鋼、アルミニウム、プラスチック、セラミックス等の非磁性体により構成されていることが好ましい。なかでも、搬送テーブル54及び搬送ステージ71は、それぞれ、耐摩耗性にも優れているジルコニアにより構成されていることがより好ましい。これらの場合には、積層セラミックコンデンサ1を通過した磁束の密度をより高精度に測定できる。
【0068】
図17に示されるように、搬送経路においてポジションP13とポジションP16との間に位置するポジションP14には、撮像部72が設けられている。撮像部72は、積層セラミックコンデンサ1を上方から撮像する。撮像した画像は、制御部73に出力される。
【0069】
搬送経路においてポジションP14とポジションP16との間に位置するポジションP15には、選別部74が設けられている。選別部74は、制御部73に接続され、制御部73の指示に基づいて積層セラミックコンデンサ1を選別する。具体的には、制御部73は、静電容量測定部75から出力された静電容量が、予め定められた静電容量の範囲(静電容量の規格)内にあるか否かを判断する。また、制御部73は、磁束密度に基づいて特定された積層方向が、予め定められた方向と一致しているか否かを判断する。制御部73は、撮像部72から出力された画像に基づいて、積層セラミックコンデンサ1に外観不良が存するか否かを判断する。制御部73は、上記3つの条件のうちのひとつでも満たさない積層セラミックコンデンサ1を不良品と認定し、除去する。
【0070】
本実施形態における静電容量測定部75、磁束密度計測部(方向識別装置55)、撮像部72、選別部74の配置について、より具体的に説明する。搬送テーブル54は、一定の間隔をおいて回転運動と停止を繰り返す、いわゆる間歇動作をする。静電容量測定部75、撮像部72、選別部74の位置は、搬送テーブル54の停止時における凹部54aの位置と重なる。一方、磁束密度計測部の位置は、搬送テーブル54の回転運動時に凹部54aが通過する位置と重なる。すなわち、静電容量測定部75、撮像部72、選別部74の位置と凹部54aの位置とがそれぞれ重なるとき、磁束密度計測部(方向識別装置55)の位置と凹部54aの位置が重ならない。逆に、磁束密度計測部(方向識別装置55)の位置と凹部54aの位置が重なるとき、静電容量測定部75、撮像部72、選別部74の位置と凹部54aの位置とがそれぞれ重ならない。なお、静電容量測定部75、撮像部72、選別部74、磁束密度計測部の位置と凹部54aの位置が重なるとは、搬送テーブル54の円周方向において、静電容量測定部75、撮像部72、選別部74、磁束密度計測部の中心が、いずれかの凹部54aの一部と重なることを意味する。
【0071】
たとえば、搬送テーブル54にN個の凹部54aが等間隔で配置され、搬送テーブル54は(360/N)度の回転運動と停止を繰り返す場合、静電容量測定部75、撮像部72、選別部74の位置は、互いに、搬送テーブル54の回転中心に対して(360/N)度の整数倍ずれている。一方、磁束密度計測部の位置は、静電容量測定部75、撮像部72、選別部74の配置に対して(360/N)度の整数倍ずれた位置とは異なる。
【0072】
これまで説明してきた第1、第2、第3および第4の実施形態にいずれの形態においても、隣り合う積層セラミックコンデンサ1の間隔は、積層方向の識別精度に影響する。積層方向は、積層セラミックコンデンサ1が磁束密度計測部を通過する際の磁束密度の変化を捉えて、識別される。したがって、隣り合う積層セラミックコンデンサ1の間隔が狭すぎると、磁束密度が隣の積層セラミックコンデンサ1の影響を受け、積層方向の識別精度が低下する。したがって、隣り合う積層セラミックコンデンサ1の間隔を、通過方向における磁気発生装置55aの寸法の1/2以上とすることが好ましい。あるいは、隣り合う積層セラミックコンデンサ1の間隔を、通過方向における積層セラミックコンデンサ1の寸法以上とすることが好ましい。