(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
[樹脂部材]
本発明の樹脂部材は、表面が特定の曲率半径R1で屈曲する表面屈曲部を有する樹脂基材にコーティング層が形成されたものである。以下、本発明を、
図1〜
図7を用いて説明するが、特記しない限り、同じ符号または記号は、形状が異なること以外、同じ部材または同じ意味内容を示すものとする。なお、本明細書で直接的または間接的に用いる「上」、「下」、「高」または「低」などの方向または位置を示す用語はそれぞれ、コーティング層が樹脂基材よりも上側に位置するように水平面上に配置させた樹脂部材の垂直断面における「上」、「下」、「高」または「低」に相当するものとする。
【0014】
本発明の樹脂部材10は、
図1(A)および(B)に示すように、コーティング層3が形成される樹脂基材1において表面屈曲部4を有する。表面屈曲部4とは、樹脂基材1において表面が3mm以下の曲率半径R1で屈曲しているところである。曲率半径R1が3mm超のときは、当該表面屈曲部の表面にコーティング層を形成しても、肉厚部はほとんど形成されない。表面屈曲部4において曲率半径R1が変化する場合、曲率半径R1は、詳しくは、表面の屈曲が始まる屈曲開始点Q1(上方側)から落差(
図1中の下方向)500μmまでの表面屈曲部4表面における最小の凸の曲率半径を意味するものとする。表面屈曲部4は通常、
図1(A)および(B)の紙面上、表裏方向に連続して形成されている。
【0015】
表面屈曲部4における表面全体の屈曲の程度は特に限定されるものではないが、例えば、
図1(A)において屈曲した表面により形成される角度θは通常、60〜120°、特に70〜110°である。
図1(A)および(B)において樹脂部材10は、樹脂基材1の端部に表面屈曲部4を有しているが、これに限定されるものではなく、例えば、樹脂基材の中央部に表面屈曲部4を有していていもよい。
【0016】
本発明の樹脂部材10は、表面屈曲部4に段差部40を有する。段差部40とは表面に高低差が形成された部分のことである。段差部40の存在により、コーティング層3の形成時にコーティング液が当該段差部40に溜まり、その表面張力によりコーティング液を引き寄せる。その結果、表面屈曲部4において液ダレの形成が防止され、肉厚部の形成も防止される。段差部40は、
図1(B)の紙面上、表裏方向に連続して形成されている。
図1(B)において段差部40は、表面が隆起してなる隆起型段差部であり、突き出し構造(返し構造)を有している。
【0017】
段差部40の段差xは0.02〜2.5mmであり、肉厚部の形成をより一層、十分に防止し、かつ隣接部材との隙間の外観品質をさらに向上させる)観点から、好ましくは0.02〜0.8mmである。段差xが小さすぎると、当該段差部に溜まったコーティング液が少ないために、表面屈曲部表面のコーティング液を十分に引き寄せることができない。このため、肉厚部の形成を防止できない。段差部xが大きすぎると、樹脂部材と隣接部材との間の隙間で当該段差部が見えるため、外観品質が低下する。
【0018】
段差xは段差部40自体の高低差のことであり、具体的には表面屈曲部4を規定する曲率半径R1の曲線と段差部40の段差との変曲点P1から、突き出し点P2までの水平距離のことである。
【0019】
表面屈曲部4の落差y(mm)は表面屈曲部4の曲率半径R1(mm)と以下の関係式(1)を満たし、肉厚部の形成をより一層、十分に防止し、かつ隣接部材との隙間の外観品質をさらに向上させる観点から、好ましくは以下の関係式(2)を満たす:
R1×0.2≦y≦R1×1.8 (1)
R1×0.2≦y≦R1×1.2 (2)
落差yが小さすぎると、樹脂部材と隣接部材との間の隙間で当該段差部が見えるため、外観品質が低下する。落差yが大きすぎると、段差部が離れているため、当該段差部に溜まったコーティング液が表面屈曲部表面のコーティング液を十分に引き寄せることができない。このため、肉厚部の形成を防止できない。
【0020】
落差yは、表面の屈曲が始まる屈曲開始点Q1(上方側)から段差部40までの高低差のことであり、具体的には屈曲開始点Q1から前記段差部40の最下点Q2までの垂直距離を意味する。
【0021】
段差部40は、
図1(B)において、下に凸の円弧形状を有しているが、
図2に示すように直線形状を有してもよいし、
図3に示すように上に凸の円弧形状を有してもよいし、またはこれらの複合形状を有してもよい。
図2および
図3においては、これらの図に示すR1、xおよびyがそれぞれ
図1(B)に示すR1、xおよびyに対応する。
【0022】
段差部40が
図1(B)または
図3に示すような円弧形状を有する場合、当該段差部40の曲率半径R2は特に限定されるものではなく、通常は前記段差xについて、x/2以上の値であり、例えば、0.02〜2mm、特に0.03〜1.2mmであってもよい。段差部40の曲率半径R2は、コーティング液をより一層、十分に引き寄せる観点から、表面屈曲部4の曲率半径R1と、以下の関係式(x1)を満たすことが好ましく、より好ましくは以下の関係式(x2)を満たす:
R2<R1 (x1)
R2≦R1×0.8 (x2)
【0023】
図1(B)、
図2および
図3において、段差部40は表面が隆起してなる隆起型段差部であるが、
図4〜
図6に示すように、表面が沈降してなる沈降型段差部であってもよい。沈降型段差部は、隆起型段差部とは対称的に引き込み構造を有している。沈降型段差部においてP2は引き込み点を示す。沈降型段差部であっても、
図4〜
図6に示すようにコーティング層3の形成時にコーティング液が当該段差部40に溜まり、その表面張力によりコーティング液を引き寄せる。
【0024】
沈降型段差部は、隆起型段差部と同様に、
図4に示すように下に凸の円弧形状を有してもよいし、
図5に示すように直線形状を有してもよいし、
図6に示すように上に凸の円弧形状を有してもよいし、またはこれらの複合形状を有してもよい。
図4〜6においては、これらの図に示すR1、x、yおよびR2がそれぞれ
図1(B)に示すR1、x、yおよびR2に対応する。
【0025】
本発明において肉厚部の形成をより一層、十分に防止する観点から好ましい段差部40は、
図1(B)に示す形状を有する段差部である。
【0026】
樹脂基材1を構成する樹脂は、あらゆる熱可塑性ポリマーまたは熱硬化性ポリマーであってもよく、成形性の観点からは通常、熱可塑性ポリマーが使用される。熱可塑性ポリマーとしては、熱可塑性を有するあらゆるポリマーが使用可能である。例えば、以下のポリマーおよびそれらの混合物が挙げられる:
ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂およびそれらの変性物;
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリ乳酸(PLA)などのポリエステル系樹脂;
ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)などのポリアクリレート系樹脂;
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンエーテル(PPE)などのポリエーテル系樹脂;
ポリアセタール(POM);
ポリフェニレンサルファイド(PPS);
PA6、PA66、PA11、PA12、PA6T、PA9T、MXD6などのポリアミド系樹脂(PA);
ポリカーボネート系樹脂(PC);
ポリウレタン系樹脂;
フッ素系ポリマー樹脂;および
液晶ポリマー(LCP)。
【0027】
熱硬化性ポリマーとしては、熱硬化性を有するあらゆるポリマーが使用可能である。例えば、以下のポリマーおよびそれらの混合物が挙げられる:
フェノール樹脂;
エポキシ樹脂;
メラミン樹脂;
尿素樹脂。
【0028】
樹脂基材1としては、特に樹脂部材を車両用ウィンドウ部材として使用する場合、透明樹脂基材が使用される。透明樹脂基材を構成する樹脂としては、上記ポリマーのうち、ポリカーボネート系樹脂などの透明ポリマーが使用される。
【0029】
樹脂基材1にはあらゆる添加剤が含有されてもよい。このような添加剤として、例えば、着色剤、酸化防止剤等が挙げられる。特に樹脂部材を車両用ウィンドウ部材として使用する場合、透明樹脂基材には着色剤は含有されない。
【0030】
樹脂基材1の厚み(T1)は特に限定されず、通常は1〜20mmであり、好ましくは2〜15mm、より好ましくは3〜10mmであり、特に樹脂部材を車両用ウィンドウ部材として使用する場合においては、3〜5mmが最も好ましい。
【0031】
コーティング層3は、コーティング液(コーティング層形成材料)を塗布することを含む方法により形成される層であれば、いかなる層であってもよく、例えば、ハードコート層、反射防止層などの種々の機能層であってもよい。コーティング層3は1層以上の層であってもよい。好ましいコーティング層3はハードコート層である。
【0032】
コーティング層3としては、特に樹脂部材を車両用ウィンドウ部材として使用する場合、透明コーティング層が使用される。透明コーティング層を構成する樹脂としては、例えば、後述の反応性化合物およびその重合物および硬化物が挙げられる。
【0033】
コーティング層3の厚み(乾燥後)は通常、1〜100μmであり、好ましくは2〜50μmである。コーティング層3が1層以上の層からなる場合、それらの合計厚みが上記範囲内であればよい。
【0034】
[樹脂部材の製造方法]
樹脂部材10は、樹脂基材1を形成した後、コーティング層3を形成する方法により製造できる。
【0035】
樹脂基材1の形成方法は上記した所定の形状に成形可能な限り、いかなる方法が採用されてもよい。樹脂基材1は、例えば、所定の形状に対応する形状に加工された金型を用いて、射出成形法、プレス成形法等を用いて成形する。成形性の観点から好ましい樹脂基材1の製造方法は射出成形法である。
【0036】
コーティング層3は通常、コーティング液を、樹脂基材1の表面屈曲部4の表面および端面151を含む面15に塗布し、乾燥後、所望により重合または硬化を行うことにより、形成することができる。
【0037】
コーティング液はコーティング層を形成するためのあらゆるコーティング液が使用可能である。
【0038】
コーティング層がハードコート層である場合、ハードコート層形成用コーティング液は通常、少なくとも反応性化合物を含む。反応性化合物としては、重合性二重結合を有する重合性モノマーおよび反応性基を有する反応性シリコーン樹脂が挙げられる。
【0039】
重合性モノマーとしては、例えば、アクリル系モノマー、オレフィン系モノマー、ビニルエステル系モノマー、スチレン系モノマー、ハロゲン化ビニル系モノマーなどが挙げられる。好ましくはアクリル系モノマーである。
【0040】
アクリル系モノマーの具体例として、例えば、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジメタクリレート、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル等が挙げられる。
オレフィン系モノマーの具体例として、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ヘキセン等が挙げられる。
ビニルエステル系モノマーとして、例えば、酢酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。
スチレン系モノマーの具体例として、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−クロロスチレン、α−ブロモスチレン、2,5−ジクロロスチレン等が挙げられる。
ハロゲン化ビニル系モノマーの具体例として、例えば、塩化ビニル、フッ化ビニル、テトラフルオロエチレン等が挙げられる。
【0041】
反応性シリコーン樹脂は、反応性基およびシロキサン骨格を含有する化合物である。反応性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基;ビニル基;グリシジル基;水酸基;およびフッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子が挙げられる。これらから選択される1以上の反応性基を反応性シリコーン樹脂は有する。
【0042】
反応性シリコーン樹脂の具体例として、例えば、いわゆるカゴ型構造、ハシゴ型構造またはランダム型構造を有するシルセスキオキサン樹脂が挙げられる。このようなシルセスキオキサン樹脂は、例えば、市販のシルセスキオキサン(シグマ・アルドリッチ社)として入手可能である。
【0043】
コーティング液には重合開始剤、溶剤が含有されてもよい。
重合開始剤としては、プラスチックの分野で熱重合開始剤または光重合開始剤として使用されているあらゆる化合物が使用可能である。
【0044】
溶剤は反応性化合物を溶解可能であれば特に限定されるものではない。
【0045】
コーティング液の粘度は特に限定されないが、表面屈曲部4における肉厚部の形成をより一層、十分に防止する観点から、1000mPas以下であることが好ましく、1〜1000mPasであることがより好ましく、1〜300mPasであることがさらに好ましい。粘度が低すぎると塗料の保持が難しくなり塗装が困難になる。粘度が高すぎると塗装面の平滑性の確保が困難になる。
【0046】
粘度はR/S−CCPlus二重円筒タイプ(Brookfield製)により25℃で測定した値を用いている。
【0047】
コーティング液の表面張力は特に限定されないが、表面屈曲部4における肉厚部の形成をより一層、十分に防止する観点から、80mN/m以下であることが好ましく、10〜80mN/mであることがより好ましく、10〜50mN/mであることがさらに好ましい。表面張力が低すぎると塗装面の平滑性の確保が困難になる。表面張力が高すぎると濡れ性の確保が困難になり(はじく)、またエッジ部の塗膜の肉厚部の解決が困難になる。
【0048】
表面張力はDyno−meter(BYK製)により25℃で測定した値を用いている。
【0049】
重合および硬化は、重合開始剤の種類に応じて、加熱または光照射により行えばよい。
【0050】
[樹脂部材の用途]
本発明の樹脂部材は、車両用部材、光学用部材、建築用部材などとして有用である。
【0051】
車両用部材としては、例えば、ルーフウィンドウ、フロントウィンドウ、三角窓、リアウィンドウ、リアクオータウィンドウ、バックウインドウなどの車両用ウィンドウ部材が挙げられる。
【0052】
本発明の樹脂部材を、車両用ウィンドウ部材(リアウィンドウ)として使用する場合について、詳しく説明する。
【0053】
本発明の車両用ウィンドウ部材において、樹脂基材1は前記透明樹脂基材であり、コーティング層3は前記透明コーティング層である。
【0054】
本発明の車両用ウィンドウ部材(リアウィンドウ)の一例を
図7(A)に示す。
図7(A)は車外から車両用ウィンドウ部材を見たときの車両用ウィンドウ部材50の概略全体見取り図であり、
図7(B)は
図7(A)におけるA−A断面を矢印方向で見たときの概略断面図であり、
図7(C)は
図7(B)における車両用ウィンドウ部材の左側端部の拡大断面図である。なお、
図7(C)において省略される右側端部は、
図7(C)における左側端部の構造と左右対称の構造を有している。
【0055】
図7(A)〜(C)に示す車両用ウィンドウ部材50は、
図7(C)における表面屈曲部4の拡大断面図が
図1(B)と同様であることを特徴とする。
図7(C)における表面屈曲部4の拡大断面図は、
図2〜
図6と同様であってもよい。
図7に示す車両用ウィンドウ部材50は、樹脂基材1が下面において彫り込み部16を有すること、および当該彫り込み部16の周縁において環状に樹脂層2を有すること以外、前記した樹脂部材10と同様である。このため、
図1と共通する部材についての説明は省略し、以下、車両用ウィンドウ部材50の製造方法および樹脂層2について詳しく説明する。
【0056】
本発明の車両用ウィンドウ部材50は、樹脂基材1に樹脂層2を形成した後、コーティング層3を形成することにより製造することができる。
【0057】
樹脂基材1の形成方法およびコーティング層3の形成方法はそれぞれ上記した方法と同様である。
【0058】
樹脂層2の形成方法はいかなる方法が採用されてもよい。樹脂層2は、例えば、所定の形状に加工された金型を用いて、射出成形法、プレス成形法等を用いて成形する。
【0059】
成形性の観点から好ましい樹脂基材1および樹脂層2の製造方法は、樹脂基材1を射出成形法により形成した後、樹脂層2を射出成形法により形成する方法である。
【0060】
樹脂層2を構成する樹脂は、樹脂基材1を構成する樹脂として例示した同様の樹脂が使用可能であり、成形性の観点からは通常、熱可塑性ポリマーが使用される。熱可塑性ポリマーとしては、上記樹脂基材1において例示した同様のポリマーおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0061】
樹脂層2としては、有色樹脂層、好ましくは黒色樹脂層が使用される。有色樹脂層の表面に接着剤を塗布し、車両用ウィンドウ部材を固定することにより、車外からの接着剤の透視を防止することができる。有色樹脂層を構成する樹脂としては、上記樹脂基材1において例示した同様のポリマーのうち、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂およびそれらの混合物などが好ましく使用される。
【0062】
樹脂層2にはあらゆる添加剤が含有されてもよい。このような添加剤として、樹脂基材1において例示した同様の添加剤が挙げられる。樹脂層2は通常、添加剤として少なくとも着色剤を含有する。着色剤としては、黒色着色剤などの着色剤が使用される。黒色着色剤としては、例えば、カーボンブラックが挙げられる。
【0063】
樹脂層2の厚み(T2)は特に限定されず、通常は1〜20mmであり、好ましくは2〜15mm、より好ましくは2〜10mmであり、最も好ましくは2〜4mmである。
【実施例】
【0064】
[実験例A]
(実施例A1〜A25および比較例A1〜A12)
図7(A)〜(C)に示す車両用ウィンドウ部材50を製造した。
図7(A)に示す全幅=1000mm、
図7(C)に示すθ=85°、T1=4mmおよびT2=3mm。
図7(C)における表面屈曲部4の拡大断面図は
図1(B)と同様であった。
【0065】
各実施例/比較例において、表面屈曲部4における
図1(B)のR1、x、yおよびR2は表1に示す値を有していた。
【0066】
具体的な製造方法を以下に示す。
ポリカーボネートを溶融し、射出成形法により、所定の表面屈曲部4を有する樹脂基材1を製造し、室温まで冷却した。ポリカーボネートおよびポリエチレンテレフタレートの混合ポリマーおよびカーボンブラックを溶融および混合し、これを、樹脂基材1を収容させた金型内に射出することにより、樹脂基材1上に所定形状の樹脂層2を形成した。
【0067】
ハードコート層の形成
樹脂基材1の面15(
図7(C)参照)にハードコート層3を形成した。詳しくは、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレートのプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)溶液(固形分濃度30重量%)に光重合開始剤を添加および混合し、ハードコート層形成材料を調製した(粘度5mPas、表面張力29mN/m)。このハードコート層形成材料を、表面屈曲部4の表面および端面151を含む面15に塗布し、100℃で6分間乾燥した。照度193mW/cm
2および積算光量1998mJ/cm
2で紫外線を照射することにより塗膜を硬化させ、平均厚み10μmのハードコート層を形成した。
【0068】
評価
・厚み均一性
表面屈曲部において表面の屈曲が始まる屈曲開始点Q1(上方側)から0.75yの落差に至る領域を測定領域とした。この測定領域においてハードコート層の厚みを任意の100点で測定し、最大値と平均値を求め、以下の基準に従って評価した。
○;最大値≦平均値×1.5;
△;最大値≦平均値×2(実用上問題なし);
×;最大値>平均値×2。
【0069】
・隣接部材との間の隙間の外観
ウィンドウ部材の樹脂層2の表面に接着剤を塗布し、このウィンドウ部材をリアウィンドウとして車体に組み込み、固定した。ウィンドウ部材と隣接部材(車体)との間の間隙を目視により観察し、以下の基準に従って評価した。
○;段差部が全く見えず、違和感がなかった;
△;段差部が僅かに見えただけで、違和感は僅かであった(実用上問題なし);
×;段差部がよく見えて、著しい違和感があった。
【0070】
【表1】
【0071】
[実験例B]
(実施例B1〜B25および比較例B1〜B12)
表面屈曲部4における
図1(B)のR1、x、yおよびR2が表2に示す値を有していたこと以外、実験例Aと同様の方法により、ウィンドウ部材の製造および評価を行った。
【0072】
【表2】