(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
マスタシリンダと、ブレーキ操作に伴って前記マスタシリンダ内を摺動するマスタピストンと、を有し、前記マスタピストンの移動に応じて容積が変化するマスタ室に、前記マスタ室の容積に応じた液圧を発生させる第1液圧発生部と、
前記マスタピストンの前進が前記マスタシリンダにより規制されたボトミング状態で、所望の液圧を発生可能に構成されている第2液圧発生部と、
入力されている液圧に応じた制動力を車両の車輪に付与する制動力発生部と、
前記ボトミング状態で、前記第2液圧発生部により液圧を発生させ、前記制動力発生部に入力する制動力制御部と、
前記ボトミング状態であることを判定するボトミング判定部と、
前記車輪に減速スリップが発生していることを判定する減速スリップ判定部と、
を備え、
前記制動力制御部は、前記ボトミング判定部により前記ボトミング状態であることが判定されている場合に、前記車輪に前記減速スリップが発生するまで、前記第2液圧発生部により液圧を発生させる車両用制動装置。
前記操作量検出部は、シミュレータシリンダと、ブレーキ操作に伴って前記シミュレータシリンダ内を摺動するシミュレータピストンと、前記シミュレータピストンの移動量を検出する移動量検出部と、を有し、前記ボトミング状態において前記シミュレータピストンが移動可能に構成されている請求項2に記載の車両用制動装置。
前記操作量検出部は、シミュレータシリンダと、ブレーキ操作に伴って前記シミュレータシリンダ内を摺動するシミュレータピストンと、前記シミュレータピストンの移動に応じて容積が変化するシミュレータ室内の液圧を検出する液圧検出部と、を有し、前記ボトミング状態において前記シミュレータピストンが移動可能に構成されている請求項2又は3に記載の車両用制動装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施例)
以下、本発明の実施例について図に基づいて説明する。なお、説明に用いる各図は概念図であり、各部の形状は必ずしも厳密なものではない場合がある。第1実施例の車両用制動装置は、
図1に示すように、液圧発生部1と、操作量検出部4と、アクチュエータ(「第2液圧発生部」に相当する)5と、ブレーキECU(「制動力制御部」に相当する)6と、を備えている。
【0010】
液圧発生部1は、ブレーキ操作部材11と、倍力装置12と、シリンダ機構(「第1液圧発生部」に相当する)13と、ホイールシリンダ(W/C)(「制動力発生部」に相当する)14〜17と、を備えている。第1実施例のブレーキ操作部材11は、ブレーキペダルを備えている。倍力装置12は、公知の装置であって、運転者がブレーキ操作部材11に加える踏力を倍力してシリンダ機構13に伝える装置である。倍力装置12は、例えば液圧式(サーボ圧を用いる方式)でも電動式でも良い。また、倍力装置12は、ブレーキ操作に応じてマスタピストン131、132を駆動するマスタピストン駆動部といえる。
【0011】
シリンダ機構13は、マスタシリンダ(M/C)130と、マスタピストン131、132と、リザーバ133と、を備えている。マスタピストン131、132は、マスタシリンダ130内に摺動可能に配設されている。マスタピストン131、132は、マスタシリンダ130内を、第1マスタ室130aと第2マスタ室130bとに区画している。リザーバ133は、第1マスタ室130a及び第2マスタ室130bと連通する管路を有するリザーバタンクである。リザーバ133と各マスタ室130a、130bとは、マスタピストン131、132の移動により連通/遮断される。
【0012】
具体的に、第2マスタ室130bの周辺部位について説明する。
図2に示すように、マスタシリンダ130は、リザーバ133に接続される接続ポート21と、シール部材22、23と、アクチュエータ5に接続される接続ポート24と、を備えている。接続ポート21は、リザーバ133と第2マスタ室130bとを連通させるためのポートである。接続ポート21は、シール部材22、23の間に配置されている。換言すると、シール部材22は接続ポート21の後退側(
図2の右側)に配置され、シール部材23は接続ポート21の前進側(
図2の左側)に配置されている。シール部材22、23は、環状のゴム部材であり、マスタピストン132の外周面に液密的に当接している。シール部材22、23の前後方向に切断した断面は、接続ポート21側に凸となる凸弧状(コの字状)である。第1実施例のシール部材22、23は、カップシールである。シール部材22、23は、自身を中心に、接続ポート21側(近い側)と接続ポート21の反対側(遠い側)とを遮断している。シール部材22、23は、接続ポート21側の押圧力(リザーバ133の液圧及び重力)が接続ポート21と反対側の押圧力(マスタ圧)より高くなった場合、その形状によりマスタピストン132から離れるように変形し、接続ポート21と第2マスタ室130bとの連通を許可する。マスタピストン132には、自身の外周側と内周側を連通させる通路31が形成されている。
【0013】
マスタピストン132が初期位置にある場合、リザーバ133と第2マスタ室130bは、流路(「第2流路」に相当する)2Aを介して連通される。流路2Aは、接続ポート21、マスタシリンダ130の内周面、マスタピストン132の外周面、及び通路31で構成されている。一方、マスタピストン132が前進し、通路31がシール部材23の前進側に移動した場合、リザーバ133と第2マスタ室130bはシール部材23により遮断される。つまり、リザーバ133と第2マスタ室130bとの間のブレーキ液の流路2Aは、マスタピストン132の前進に伴って遮断可能に構成されている。また、後述するが、流路2Aは、ポンプ57の作動に伴って開放可能に構成されている。接続ポート24は、第2マスタ室130bとアクチュエータ5を接続するためのポートであって、マスタシリンダ130のシール部材23よりも前進側に形成されている。第1マスタ室130aに対しても第2マスタ室130bの周辺部位同様の接続ポート及びシール部材が設けられているが、説明は省略する。
【0014】
ホイールシリンダ14は、車輪RL(左後輪)に配置されている。ホイールシリンダ15は、車輪RR(右後輪)に配置されている。ホイールシリンダ16は、車輪FL(左前輪)に配置されている。ホイールシリンダ17は、車輪FR(右前輪)に配置されている。マスタシリンダ130とホイールシリンダ14〜17は、アクチュエータ5を介して接続されている。ホイールシリンダ14〜17は、入力されている液圧に応じた制動力を車輪RL〜FRに付与する。
【0015】
このように、運転者がブレーキ操作部材11を踏み込むと、倍力装置12により踏力が倍力され、マスタシリンダ130内のマスタピストン131、132が押圧される。これにより、第1マスタ室130a及び第2マスタ室130bに同圧のマスタシリンダ圧(以下、マスタ圧と称する)が発生する。液圧発生部1は、マスタピストン131、132の移動に応じて容積が変化する第1マスタ室130a及び第2マスタ室130bに、第1マスタ室130a及び第2マスタ室130bの容積に応じたマスタ圧を発生させる。マスタ圧は、アクチュエータ5を介してホイールシリンダ14〜17に伝えられる。
【0016】
操作量検出部4は、ストロークシミュレータ41と、圧力センサ(「液圧検出部」に相当する)42と、管路4aと、を備えている。ストロークシミュレータ41は、ブレーキ操作部材11の操作に応じてブレーキ操作部材11に反力を付与するための装置である。ストロークシミュレータ41は、シミュレータシリンダ411にシミュレータピストン412が摺動可能に嵌合されて構成されている。シミュレータピストン412は圧縮スプリング413によって前方に付勢されており、シミュレータピストン412の前面側にシミュレータ室414が形成される。シミュレータ室414の液圧に応じた反力がブレーキ操作部材11に付与される。圧力センサ42は、液圧発生部1とシミュレータ室414とを接続する管路4aに設けられ、シミュレータ室414の液圧を検出する。圧力センサ42は、ブレーキECU6に通信可能に接続されており、検出結果をブレーキECU6に送信する。
【0017】
操作量検出部4は、マスタピストン131、132の前進がマスタピストン132により規制されたボトミング状態でも、ブレーキ操作量を検出できるように構成されている。つまり、ストロークシミュレータ41は、ボトミング状態でも、ブレーキ操作部材11に対するブレーキ操作量に応じてシミュレータピストン412が前進可能に構成されている。第1実施例のボトミング状態は、マスタピストン132がマスタシリンダ130の底面(前端面)に当接し、且つマスタピストン131がマスタピストン132の後端面に当接した状態である。
【0018】
アクチュエータ5は、ブレーキECU6の指示に応じて、ホイールシリンダ14〜17の液圧(以下、ホイール圧と称する)を制御する装置である。具体的に、アクチュエータ5は、
図1に示すように、油圧回路5Aと、モータ8と、を備えている。油圧回路5Aは、第1配管系統50aと、第2配管系統50bと、を備えている。第1配管系統50aは、車輪RL、RRに加えられる液圧(ホイール圧)を制御する系統である。第2配管系統50bは、車輪FL、FRに加えられる液圧(ホイール圧)を制御する系統である。第1配管系統50aと第2配管系統50bの基本構成は同様であるため、以下、第1配管系統50aについて説明し、第2配管系統50bについては説明を省略する。
【0019】
第1配管系統50aは、主管路(「第1流路」に相当する)Aと、差圧制御弁(「電磁弁」に相当する)51と、増圧弁52、53と、減圧管路Bと、減圧弁54、55と、調圧リザーバ56と、還流管路Cと、ポンプ57と、補助管路Dと、を備えている。
【0020】
主管路Aは、マスタシリンダ130とホイールシリンダ14、15の間に配置された流路であって、マスタシリンダ130とホイールシリンダ14、15とを接続する管路である。差圧制御弁51は、主管路Aに設けられ、主管路Aを連通状態と差圧状態に制御する弁である。差圧制御弁51は、ブレーキECU6の指示に応じて、自身の上流側であるマスタシリンダ130側と、自身の下流側であるホイールシリンダ14、15側との差圧を制御する。換言すると、差圧制御弁51は、主管路Aのマスタシリンダ130側の部分の液圧と主管路Aのホイールシリンダ14、15側の部分の液圧との差圧を制御可能に構成されている電磁弁である。差圧制御弁51は、非通電状態で連通状態となり、特定の制御(自動ブレーキ、横滑り防止制御、又はボトミング制御)を除く通常のブレーキ制御においては連通状態に制御されている。差圧制御弁51は、印加される制御電流が大きいほど、両側の差圧が大きくなるように設定されている。
【0021】
差圧制御弁51に対しては、逆止弁51aが設置されている。主管路Aは、ホイールシリンダ14、15に対応するように、差圧制御弁51の下流側で2つの管路A1、A2に分岐している。
【0022】
増圧弁52、53は、ブレーキECU6の指示により開閉する電磁弁であって、非通電状態で開状態(連通状態)となる常開弁である。増圧弁52は管路A1に配置され、増圧弁53は管路A2に配置されている。減圧管路Bは、管路A1における増圧弁52とホイールシリンダ14の間と調圧リザーバ56とを接続し、管路A2における増圧弁53とホイールシリンダ15の間と調圧リザーバ56とを接続する管路である。増圧弁52、53は、主に減圧制御時に通電されて閉状態となり、マスタシリンダ130とホイールシリンダ14、15を遮断する。
【0023】
減圧弁54、55は、ブレーキECU6の指示により開閉する電磁弁であって、非通電状態で閉状態(遮断状態)となる常閉弁である。減圧弁54は、ホイールシリンダ14側の減圧管路Bに配置されている。減圧弁55は、ホイールシリンダ15側の減圧管路Bに配置されている。減圧弁54、55は、主に減圧制御時に通電されて開状態となり、減圧管路Bを介してホイールシリンダ14、15と調圧リザーバ56とを連通させる。調圧リザーバ56は、シリンダ、ピストン、及び付勢部材を有するリザーバである。
【0024】
還流管路Cは、減圧管路B(又は調圧リザーバ56)と、主管路Aにおける差圧制御弁51と増圧弁52、53の間とを接続する管路である。ポンプ57は、還流管路Cに設けられている。ポンプ57は、モータ8によって駆動される自吸式のポンプである。ポンプ57は、還流管路Cを介して、調圧リザーバ56からマスタシリンダ130側又はホイールシリンダ14、15側にブレーキ液を流動させる。モータ8は、ブレーキECU6の指示により、リレー(図示せず)を介して通電され、駆動する。ポンプ57とモータ8は、1つの電動ポンプともいえる。
【0025】
補助管路Dは、調圧リザーバ56と、主管路Aにおける差圧制御弁51よりも上流側(又はマスタシリンダ130)とを接続する管路である。ポンプ57の駆動(作動)により、マスタシリンダ130のブレーキ液が、補助管路D及び調圧リザーバ56等を介して、主管路Aにおける差圧制御弁51より下流側、すなわちホイールシリンダ14、15側の管路に吐出される。換言すると、ポンプ57は、モータ8の駆動に応じて、第2マスタ室130b内のブレーキ液を、主管路Aの差圧制御弁51とホイールシリンダ14、15との間の部分に吐出する。これにより、横滑り防止装置としての制御(ESC制御)等の特定の制御において、ホイール圧が増圧される。第1実施例のアクチュエータ5は、ブレーキECU6の制御により、横滑り防止装置(ESC)として機能する。アクチュエータ5は、ボトミング状態で、所望の液圧を発生できるように構成されている。また、主管路Aの差圧制御弁51とマスタシリンダ130の間の部分には、当該部分の液圧(マスタ圧)を検出する圧力センサYが設置されている。圧力センサYは、検出結果をブレーキECU6に送信する。
【0026】
ブレーキECU6は、CPUやメモリ等を備える電子制御ユニットである。ブレーキECU6は、各種センサから検出結果(検出値)を受信し、アクチュエータ5の作動を制御する。ブレーキECU6は、ESC制御やABS制御の他に、ボトミング制御を実行する。ブレーキECU6は、ボトミング制御に関する機能として、ボトミング判定部61と、ポンプ制御部62と、操作量取得部63と、差圧設定部64と、を備えている。以下、ブレーキECU6のボトミング制御について、第1配管系統50aを例に説明する。
【0027】
ボトミング判定部61は、シリンダ機構13の状況が、ボトミング状態であるか否かを判定する部分である。具体的に、ボトミング判定部61には、ポンプ57が作動していない状態においてボトミングが発生した時のマスタ圧(圧力センサYの検出値)が判定値として予め記録されている。ボトミング判定部61は、判定値と受信した圧力センサYの検出値とを比較し、検出値が判定値以上である場合に「ボトミング状態」と判定する。
【0028】
ポンプ制御部62は、ボトミング判定部61によりボトミング状態と判定されている場合、モータ8を駆動させてポンプ57を駆動させる。ポンプ57の駆動により、第2マスタ室130b内のブレーキ液が、主管路Aの差圧制御弁51とホイールシリンダ14、15との間の部分に吐出される。第2マスタ室130bの液圧(マスタ圧)は、ブレーキ液の流出により大気圧又は負圧となる。このように、ポンプ57の吸引により、シール部材23が変形し、流路2Aが開放され、リザーバ133と第2マスタ室130bとが連通する。第1実施例では、ポンプ57の駆動により、リザーバ133内のブレーキ液が第2マスタ室130bを介して、主管路Aの差圧制御弁51とホイールシリンダ14、15との間の部分に吐出される。マスタ圧は、
図3に示すように、ポンプ57の駆動により低下する。
図3の操作量相当量は、ブレーキ操作の大小に関するものであって、例えば踏力やストローク量である。
【0029】
操作量取得部63は、圧力センサ42の検出値を取得し、ブレーキ操作部材11の操作量を演算・取得する。操作量取得部63は、圧力センサ42の検出値に基づいて操作量を演算する。操作量取得部63は、ボトミング判定部61によりボトミング状態と判定されている間のブレーキ操作部材11の操作量を取得し、差圧設定部64に送信する。操作量取得部63が取得する操作量は、第1実施例では圧力値に基づいているが、例えばストローク量や踏力に基づくものでも良い。差圧設定部64は、受信した操作量に応じた目標制動力を発生させるために、当該目標制動力に応じたホイール圧が発生するように、差圧制御弁51の差圧状態を設定する。アクチュエータ5は、ブレーキECU6の指示に応じて、ボトミング状態において、差圧制御弁51の両側に対して所望の差圧を発生させる。これにより、
図3に示すように、ボトミング状態になった後も、ブレーキ操作に応じたホイール圧(すなわち制動力)を発揮させることが可能となる。
【0030】
ボトミング制御の流れについて
図4を参照して説明する。ボトミング判定部61が、シリンダ機構13がボトミング状態であるか否かを判定する(S101)。シリンダ機構13がボトミング状態である場合(S101:Yes)、ポンプ制御部62がポンプ57を作動させる(S102)。そして、操作量取得部63がボトミング時のブレーキ操作部材11の操作量を取得する(S103)。そして、差圧設定部64が、差圧制御弁51に対して、操作量取得部63により取得された操作量に応じた差圧を設定する(S104)。一方、シリンダ機構13がボトミング状態でない場合(S101:No)、ボトミング制御が終了し、ブレーキ制御が続行される。例えば、他の制御が為されていない場合、差圧は0に設定されてもよい。
【0031】
第1実施例の車両用制動装置によれば、ボトミング状態において、ブレーキ操作に応じた制動力を車輪RL〜FRに発生させることができる。したがって、フェード時のボトミングを防ぐためのマスタシリンダ130の容積(フェード時使用域)が不要となり、マスタシリンダ130の小型化が可能となる。
図5に示すように、従来のマスタシリンダは、フェード時に必要なブレーキ液量をアクチュエータ5に提供するために、通常使用時(フェード時以外)に必要な容積より大きな容積で形成されている。第1実施例の車両用制動装置によれば、
図5におけるフェード時使用域を設ける必要がなく、マスタシリンダ130の容積を通常使用時に必要な容積(通常使用域)に設定することができる。このように、第1実施例の車両用制動装置によれば、マスタシリンダ130の小型化が可能となる。マスタシリンダは、あらゆるブレーキシステムにおいて基本となる構成であり、小型化されることにより様々な車種への搭載性が大きく向上する。
【0032】
また、第1実施例の車両用制動装置によれば、ボトミング状態でポンプ57が作動すると、リザーバ133内のブレーキ液が第1マスタ室130a及び第2マスタ室130bを介してアクチュエータ5に吸入される。つまり、リザーバ133によって、シリンダ機構13のリザーバとアクチュエータ5のリザーバとが共通化される。これにより、車両用制動装置の構成を簡素化でき、車両用制動装置全体の小型化が可能となる。
【0033】
(第2実施例)
第2実施例の車両用制動装置は、第1実施例の車両用制動装置のボトミング判定部61に相当する構成(以下「ボトミング判定部261」という)と、第1実施例の車両用制動装置のボトミング制御(以下「第2ボトミング制御」という)に相当する制御とが、第1実施例の車両用制動装置と異なる。第2実施例の車両用制動装置は、
図6に示すように、車輪に減速スリップが発生しているか否かを判定する減速スリップ判定部263を備えて構成されている。第2実施例の車両用制動装置は、上記3点を除き、第1実施例の車両用制動装置と実質的に同一である。よって、以下の説明では、第1実施例の車両用制動装置の構成と実質的に同一の構成には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0034】
ボトミング判定部261は、ボトミング状態が発生する前からポンプ57を作動させた上で、マスタ圧に基づいてボトミング状態であるか否かを判定する。例えば、ボトミング判定部261は、圧力センサYが示すマスタ圧が所定圧以上である場合に、ポンプ57を作動させ、差圧制御弁51による差圧を所定圧に設定する。そして、ボトミング判定部261は、
図3に示すようなマスタ圧の低下が発生している場合に、ボトミング状態であることを判定する。
【0035】
なお、上記所定圧が0Paであったとしても、差圧制御弁51のオリフィス効果によって、主管路Aのマスタシリンダ130側の部分と主管路Aのホイールシリンダ14、15側の部分とに差圧が生じる。差圧が生じれば、上述の如くボトミング状態であるか否かの判定が可能である。よって、上記所定圧には0Paが含まれる。
【0036】
減速スリップ判定部263は、周知の判定方法に基づいて車輪に減速スリップが発生しているか否かを判定する。例えば、減速スリップ判定部263は、車体速度と車輪速度とに基づいてスリップ率を算出し、そのスリップ率が所定閾値よりも大きい場合に車輪に減速スリップが発生していることを判定する。
【0037】
図7は、第2ボトミング制御の流れを示している。減速スリップ判定部263は、車輪に減速スリップが発生しているか否かを判定する(S201)。車輪に減速スリップが発生していない場合(S201:No)、ボトミング判定部261がボトミング状態であるか否かを判定する(S202)。
【0038】
シリンダ機構13がボトミング状態である場合(S202:Yes)、ポンプ制御部62がポンプを作動させ(S203)、差圧設定部64が、差圧制御弁51の差圧を所定圧に設定し(S204)、シリンダ機構13がボトミング状態ではない場合(S202:No)、ブレーキ制御を続行する。例えば、他の制御が為されていない場合、差圧設定部64が、差圧制御弁51の差圧を0に設定することが考えられる。
【0039】
上記S204の所定圧は、車輪に減速スリップが発生する液圧に基づいて設定されることが好ましい。よって、上記S204の所定圧は、車両情報や車外情報に基づいて、可変設定されることが考えられる。車両情報には、操舵状態や変速機の状態やエンジンの状態や車輪状態や車体状態などが含まれる。車外状態には、路面状態や天候やナビ情報などが含まれる。また、上記S204において、差圧設定部64が設定する差圧制御弁51の差圧は、車輪に減速スリップが発生していないボトミング状態における経過時間に応じて大きくなるように設定されてもよい。一方、車輪に減速スリップが発生している場合(S201:Yes)、ブレーキECU6が減圧制御を実行する(S205)。第2実施例の車両用制動装置によれば、圧力センサ42を備えずとも、ボトミング状態においても制動力を車輪RL〜FRに発生させることができる。
【0040】
(その他)
本発明は、上記実施例に限られない。例えば、第1実施例の操作量検出部4は、踏力センサやストロークセンサであっても良い。例えば、
図8に示すように、圧力センサ42に代えて、ストロークセンサ(「移動量検出部」に相当する)43が配置されても良い。ストロークセンサ43は、ブレーキ操作部材11(又はそのロッド)のストローク量を検出するセンサである。ストロークセンサ43は、検出結果をブレーキECU6に送信する。
【0041】
また、
図9に示すように、ストロークシミュレータ41がシリンダ機構13に組み込まれていても良い。この場合、シミュレータシリンダ411に相当する部位は、マスタシリンダ130の後端部411aと、マスタシリンダ130内に設けられた壁部411bとで構成される。シミュレータピストン412に相当する部位は、ブレーキ操作部材11に組み付けられたロッド11aで構成される。ロッド11aは、後端部411aの開口に対して摺動可能に配置され、ブレーキ操作に伴って前進する。ロッド11aと壁部411bとの間には圧縮スプリング413aが配置されている。後端部411aと壁部411bによりシミュレータ室414aが構成される。ロッド11aの前進に対して、圧縮スプリング413aの弾性力(及び/又はシミュレータ室414aの液圧)が反力として作用する。ロッド11aは、ボトミング状態で前進可能となっている。このように、ストロークシミュレータ41として機能する構成がシリンダ機構13に組み込まれていても良い。そして、この車両用制動装置に対して、ストロークセンサ43が設置されても良い。このように、操作量検出部4は、ストロークシミュレータ41と、ストロークセンサ43とで構成されても良い。
【0042】
また、
図10に示すように、操作量検出部4が踏力センサ44により構成されていても良い。踏力センサ44は、ブレーキ操作部材11に加えられた踏力を検出し、ブレーキECU6に送信する。なお、
図10のシリンダ機構13では、ロッド11aがマスタピストン131に接続されている。このように、操作量検出部4は、圧力センサ42、ストロークセンサ43、及び踏力センサ44の少なくとも1つを備えていても良い。操作量取得部63は、圧力値、ストローク量、及び/又は踏力に基づいて操作量を取得しても良い。なお、
図8〜
図10は、シリンダ機構13の配置構成を簡略して表した概念図である。
【0043】
また、第1実施例のボトミング判定部61によるボトミング状態の判定は、シミュレータ室414の液圧(圧力センサ42の検出値)、ストロークセンサ43の検出値、及び/又は踏力センサ44の検出値を用いて行われても良い。例えば、ボトミング判定部61は、予めシミュレーションしたボトミング時のセンサ検出値(圧力センサ42の検出値、ストロークセンサ43の検出値、及び/又は踏力センサ44の検出値)を判定値として、ボトミング状態を判定しても良い。また、本発明は、倍力装置12の有無、倍力装置12の配置構成、及び倍力装置12によるマスタピストン131、132の駆動方法にかかわらず、シリンダ機構13を有する車両用制動装置に適用することができる。
【0044】
また、第2実施例の減圧制御(S205)は、ABS制御の一部であってもよい。すなわち、減速スリップ判定部263が、車輪に減速スリップが発生していることを判定した場合、制動制御のモードをABS制御に移行させる。
【0045】
(まとめ)
本実施例の車両用制動装置は、マスタシリンダ130と、ブレーキ操作に伴ってマスタシリンダ130内を摺動するマスタピストン131、132と、を有し、マスタピストン131、132の移動に応じて容積が変化するマスタ室130a、130bに、マスタ室130a、130bの容積に応じた液圧を発生させる第1液圧発生部13と、マスタピストン131、132の前進がマスタシリンダ130により規制されたボトミング状態で、所望の液圧を発生可能に構成されている第2液圧発生部5と、入力されている液圧に応じた制動力を車両の車輪RL〜FLに付与する制動力発生部14〜17と、ボトミング状態で、第2液圧発生部5により液圧を発生させ、制動力発生部14〜17に入力する制動力制御部6と、を備えている。
車両用制動装置は、ボトミング状態であることを判定するボトミング判定部61、261と、車輪に減速スリップが発生していることを判定する減速スリップ判定部263と、を備え、制動力制御部6は、ボトミング判定部61、261によりボトミング状態であることが判定されている場合に、車輪に減速スリップが発生するまで、第2液圧発生部5により液圧を発生させても良い。
また、車両用制動装置は、ボトミング状態で、ブレーキ操作量を検出可能に構成されている操作量検出部4を備え、制動力制御部6は、ボトミング状態で操作量検出部4により検出されているブレーキ操作量に応じた液圧を、第2液圧発生部5により発生させても良い。
また、第2液圧発生部5は、第1液圧発生部13と制動力発生部14〜17との間のブレーキ液の第1流路Aに設けられ、第1流路Aの第1液圧発生部13側の部分の液圧と第1流路Aの制動力発生部14〜17側の部分の液圧との差圧を制御可能に構成されている電磁弁51と、マスタ室130a、130b内のブレーキ液を、第1流路Aの電磁弁51と制動力発生部14〜17との間の部分に吐出するポンプ57と、を有し、所望の液圧を発生させるべく、ポンプ57により、マスタ室130a、130b内のブレーキ液を、第1流路Aの電磁弁51と制動力発生部14〜17との間の部分に吐出しつつ、電磁弁51により差圧を発生させても良い。この場合、第1液圧発生部13は、ブレーキ液が貯留されるリザーバ133を有し、マスタピストン131、132の前進に伴ってリザーバ133とマスタ室130a、130bとの間のブレーキ液の第2流路2Aが遮断可能に構成され、ボトミング状態におけるポンプ57の作動に伴って第2流路2Aが開放可能に構成されていても良い。
また、車両用制動装置は、ポンプ57を作動させている状態であって差圧が発生している状態において、マスタ室130a、130b内の液圧が所定液圧以下である場合に、ボトミング状態であることを判定するボトミング判定部261を備え、制動力制御部6は、ボトミング判定部261によりボトミング状態であることが判定されている場合に、第2液圧発生部5により制動力を発生させても良い。
操作量検出部4は、シミュレータシリンダ411(411a、411b)と、ブレーキ操作に伴ってシミュレータシリンダ411(411a、411b)内を摺動するシミュレータピストン412(11a)と、シミュレータピストン412(11a)の移動量を検出する移動量検出部43と、を有し、ボトミング状態においてシミュレータピストン412(11a)が移動可能に構成されていても良い。
また、操作量検出部4は、シミュレータシリンダ411(411a、411b)と、ブレーキ操作に伴ってシミュレータシリンダ411(411a、411b)内を摺動するシミュレータピストン412(11a)と、シミュレータピストン412(11a)の移動に応じて容積が変化するシミュレータ室414(414a)内の液圧を検出する液圧検出部42と、を有し、ボトミング状態においてシミュレータピストン412(11a)が移動可能に構成されていても良い。第1実施例と第2実施例は組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0046】
1:液圧発生部、 11:ブレーキ操作部材、 13:シリンダ機構(第1液圧発生部)、
130:マスタシリンダ、 131、132:マスタピストン、 133:リザーバ、
130a:第1マスタ室、 130b:第2マスタ室、
14、15、16、17:ホイールシリンダ(制動力発生部)、
2A:流路(第2流路)、 4:操作量検出部、 41:ストロークシミュレータ、
411:シミュレータシリンダ、 412:シミュレータピストン、
414、414a:シミュレータ室、 42:圧力センサ(液圧検出部)、
43:ストロークセンサ(移動量検出部)、 44:踏力センサ、
5:アクチュエータ(第2液圧発生部)、
A:主管路(第1流路)、 51:差圧制御弁(電磁弁)、 57:ポンプ、
6:ブレーキECU(制動力制御部)、 61、261:ボトミング判定部、
62:ポンプ制御部、 63:操作量取得部、 64:差圧設定部、
263:減速スリップ判定部、 RL、RR、FR、FL:車輪