特許第6241455号(P6241455)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241455
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】無線機器
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/38 20150101AFI20171127BHJP
   H01Q 23/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   H04B1/38
   H01Q23/00
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-135612(P2015-135612)
(22)【出願日】2015年7月6日
(62)【分割の表示】特願2013-192339(P2013-192339)の分割
【原出願日】2013年9月17日
(65)【公開番号】特開2015-222965(P2015-222965A)
(43)【公開日】2015年12月10日
【審査請求日】2016年1月28日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】望月 聡
【審査官】 原田 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−525330(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/129064(WO,A1)
【文献】 特開2006−114941(JP,A)
【文献】 特表2010−531093(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/011414(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/38
H01Q 23/00
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィールド機器からの第1信号を無線信号にして送信し、無線信号で送信されてくる前記フィールド機器への第2信号を受信する無線機器において、
無線信号の送受信を行うアンテナを有し、前記フィールド機器の外部に設置されるアンテナモジュールと、
前記フィールド機器の外部に設置され、前記フィールド機器に接続されるとともにケーブルを介して前記アンテナモジュールに接続され、前記フィールド機器との間における通信処理、前記ケーブルを介した前記アンテナモジュールとの間における通信処理、及び通信プロトコルの変換処理を行う半導体チップと、該半導体チップを収容する筐体とを有する信号処理モジュールと
を備え、
前記アンテナモジュールは、前記ケーブルを介して前記信号処理モジュールから送信されてくる前記第1信号を受信して前記アンテナから無線信号にして送信させるとともに、前記アンテナで受信された無線信号の処理を行った前記第2信号を、前記ケーブルを介して前記信号処理モジュールに送信する回路部と、
前記回路部の周囲を覆うように前記回路部を収容する筒状の筐体と、
前記筐体の一端部又は両端部間に設けられて無線信号の送受信が可能なように前記アンテナを収容するアンテナ収容部と、
前記筐体に接合されており、前記ケーブルの一端が接続されるコネクタ部と
を備え
前記信号処理モジュールは、前記ケーブルの他端が接続されるコネクタを備える
ことを特徴とする無線機器。
【請求項2】
前記ケーブルは、前記アンテナモジュールに設けられた前記回路部の基準電位を規定するシグナルグランドに接続されるグランド線と、
前記回路部に接続されて前記第1,第2信号の送受信が行われる信号線と、
前記回路部の電源に接続される電源線と、
前記グランド線、前記信号線、及び前記電源線の周囲に設けられ、前記アンテナモジュールの筐体の電位を規定するフレームグランドに接続されるシールドと
を備えることを特徴とする請求項1記載の無線機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラントや工場等においては、高度な自動操業を実現すべく、フィールド機器と呼ばれる現場機器(測定器、操作器)と、これらの制御を行う制御装置とが通信手段を介して接続された分散制御システム(DCS:Distributed Control System)が構築されている。このような分散制御システムを構成するフィールド機器は、有線通信を行うものが殆どであったが、近年においてはISA100.11aやWirelessHART(登録商標)等の産業用無線通信規格に準拠した無線通信を行うもの(無線フィールド機器)も実現されている。
【0003】
上記の無線フィールド機器は、概して工業プロセスにおける状態量(例えば、圧力、温度、流量等)の測定又は操作を行う入出力部と、上記の産業用無線通信規格に準拠した無線通信を行う無線通信部と、無線フィールド機器の動作を統括して制御する制御部とが筐体内に組み込まれており、単一の電源から供給される電力によって各部が動作する。ここで、無線フィールド機器は、従来のフィールド機器のように通信線又は通信バスに接続する必要がなく、基本的に単独でプラント等に設置されることから、上記の単一の電源として電池を内蔵するものが殆どである。
【0004】
以下の特許文献1には、無線通信部を有しない従来のフィールド機器に取り付けられて、従来のフィールド機器を上記の無線フィールド機器として動作させることが可能な無線機器が開示されている。具体的に、以下の特許文献1に開示された無線機器は、従来のフィールド機器に接続されるインターフェイス部と、無線通信を行う無線通信部と、インターフェイス部を介して従来のフィールド機器に電力を供給する電源部とを備える。この無線機器は、フィールド機器からの信号がインターフェイス部を介して入力されてきた場合には、その信号を無線通信部から送信先(例えば、上位のコントローラ)に向けて送信し、フィールド機器宛ての信号を無線通信部で受信した場合には、インターフェイス部を介して受信した信号をフィールド機器に出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0211664号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した特許文献1等に開示された無線機器は、フィールド機器との接続線を保護するための配管(コンジット)の設置工事を省略してコストの発生を抑える等の理由から、フィールド機器の近くに設置されることが殆どである。しかしながら、フィールド機器は、パイプや生産設備等が多数設置されて電波の反射や遮蔽が生じやすい環境下に設置されることが多い。このため、上述した特許文献1に開示された無線機器のように、インターフェイス部と無線通信部とが一体化された構成では、安定した無線通信が困難になる可能性が考えられるという問題がある。
【0007】
ここで、例えばアンテナケーブルを用いてアンテナを無線通信部から分離可能である場合には、アンテナの設置位置の自由度が高くなるため、安定した無線通信が可能になるとも考えられる。しかしながら、アンテナケーブルを伝送する無線信号は損失が大きくノイズの影響を受けやすいので、延長可能なケーブル長さに限界があるため、安定した無線通信が必ずしも実現されるという訳ではないという問題がある。
【0008】
また、上述した特許文献1等に開示された無線機器から高次高調波等のスプリアスが不要輻射として放射されてしまうと、その不要輻射は周囲に配置されている他の無線機器に悪影響を及ぼす可能性がある。このため、例えば無線機器に設けられた無線通信部をシールド(例えば、金属製の箱状部材)で覆う等の対策を行って不要輻射が外部に放射されないようにする必要がある。ここで、無線通信部の周囲をシールドで完全に覆ってしまえば不要輻射をほぼ零にすることができるが、無線信号も放射されなくなるため、アンテナを介した通常の無線通信を行うことができなくなる。従って、特許文献1等に開示された無線機器では、アンテナを介した通常の無線通信を可能としつつも不要輻射を極力抑える必要があるという問題もある。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、不要輻射を抑えつつフィールド機器の設置位置に拘わらず安定した無線通信を実現することが可能な無線機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のアンテナモジュールは、無線信号の送受信を行うアンテナ(25)を備えるアンテナモジュール(20、40)において、外部から送信されてくる信号を受信して前記アンテナから無線信号にして送信させるとともに、前記アンテナで受信された無線信号の処理を行った信号を外部に送信する回路部(24)と、前記回路部の周囲を覆うように前記回路部を収容する筒状の筐体(21、41)と、前記筐体の一端部又は両端部間に設けられて無線信号の送受信が可能なように前記アンテナを収容するアンテナ収容部(22、42)と、前記筐体に接合されており、前記回路部で送受信される信号が入出力される外部のコネクタ(C0、C12)に接続可能なコネクタ部(23、43a、43b)とを備えることを特徴としている。
この発明によると、外部から送信されてきた信号は、筐体に収容された回路部によって受信されて無線信号にされた後にアンテナ収容部に収容されたアンテナから送信され、アンテナで受信された無線信号は、筐体に収容された回路部によって処理されて処理後の信号が外部に送信される。
また、本発明のアンテナモジュールは、前記回路部が、前記コネクタ部を介して外部から送信されてくる信号を受信するとともに、前記コネクタ部を介して外部に信号を送信する送受信回路(24a)と、前記送受信回路で受信された信号を無線信号にして前記アンテナから送信させるとともに、前記アンテナで受信された無線信号の処理を行う無線信号処理回路(24b、24c)とを備えることを特徴としている。
また、本発明のアンテナモジュールは、前記コネクタ部が、前記外部のコネクタを介して前記回路部の基準電位を規定するシグナルグランド(SG)に接続される第1グランド接続部(T22)と、前記外部のコネクタを介して前記筐体の電位を規定するフレームグランド(FG)に接続される第2グランド接続部とを備えることを特徴としている。
また、本発明のアンテナモジュールは、前記コネクタ部が、前記外部のコネクタの信号入出力端に接続される信号接続部(T21)と、前記外部のコネクタを介して前記回路部の電源(B)に接続される電源接続部(T20)とを備えることを特徴としている。
また、本発明のアンテナモジュールは、前記筐体の内部が、樹脂が充填されていることを特徴としている。
また、本発明のアンテナモジュールは、前記筐体の軸方向における前記アンテナの給電点(Q)と前記筐体との最短距離Lは、前記筐体の軸に直交して前記アンテナの給電点が含まれる面を基準とした前記アンテナの3dB半値角をθ、前記筐体の外半径をφとすると、以下の(1)式で表されることを特徴としている。
L=φ×tanθ …(1)
本発明の無線機器は、フィールド機器(FD)からの第1信号を無線信号にして送信し、無線信号で送信されてくる前記フィールド機器への第2信号を受信する無線機器(1)において、上記の何れかに記載のアンテナモジュール(20、40)と、前記フィールド機器及び前記アンテナモジュールに接続され、前記フィールド機器からの前記第1信号を前記アンテナモジュールに送信するとともに、前記アンテナモジュールからの前記第2信号を受信して前記フィールド機器に出力する信号処理モジュール(10)とを備えることを特徴としている。
また、本発明の無線機器は、前記信号処理モジュールが、前記アンテナモジュールのコネクタ部が直接又はケーブル(CB)を介して接続されるコネクタ(C0)を備えることを特徴としている。
また、本発明の無線機器は、前記信号処理モジュールのコネクタと前記アンテナモジュールのコネクタ部とが前記ケーブルを介して接続される場合に用いられる前記ケーブルが、前記アンテナモジュールに設けられた前記回路部の基準電位を規定するシグナルグランド(SG)に接続されるグランド線(L12)と、前記回路部に接続されて前記第1,第2信号の送受信が行われる信号線(L11)と、前記回路部の電源(B)に接続される電源線(L10)と、前記グランド線、前記信号線、及び前記電源線の周囲に設けられ、前記アンテナモジュールの筐体の電位を規定するフレームグランドに接続されるシールド(SD)とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、無線機器を、フィールド機器との間で通信を行う信号処理モジュールと、無線通信を行うアンテナモジュールとに分けて構成し、これら信号処理モジュール及びアンテナモジュールの間で授受される信号を、コネクタ又はケーブルを介して送受信するようにしている。また、アンテナモジュールは、無線信号を取り扱う回路部の周囲を筐体で覆いつつ、無線信号の送受信が可能なようにアンテナをアンテナ収容部に収容するようにしている。このため、不要輻射を抑えつつフィールド機器の設置位置に拘わらず安定した無線通信を実現することが可能であるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施形態による無線機器の使用状態の一例を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態によるアンテナモジュールの要部構成を示すブロック図である。
図3】本発明の第1実施形態によるアンテナモジュールに設けられる送受信切替部の構成を示すブロック図である。
図4】本発明の第1実施形態による無線機器が備えるアンテナモジュールと信号処理モジュールとの接続状態を説明するための図である。
図5】本発明の第1実施形態によるアンテナモジュールのアンテナの取り付け位置を説明するための図である。
図6】本発明の第2実施形態によるアンテナモジュールを模式的に示す図である。
図7】本発明の第2実施形態によるアンテナモジュールのアンテナの取り付け位置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態によるアンテナモジュール及び無線機器について詳細に説明する。
【0014】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態による無線機器の使用状態の一例を示す図である。図1に示す通り、本実施形態の無線機器1は、信号処理モジュール10とアンテナモジュール20とを備えており、配管PLに取り付けられているフィールド機器FDに接続されて、フィールド機器FDからの信号(第1信号)を無線信号にして送信し、無線信号で送信されてくるフィールド機器FDへの信号(第2信号)を受信する。尚、無線機器1は、ISA100.11aに準拠した無線通信を行う。
【0015】
ここで、フィールド機器FDは、例えば流量計や温度センサ等のセンサ機器、流量制御弁や開閉弁等のバルブ機器、ファンやモータ等のアクチュエータ機器、プラント内の状況や対象物を撮影するカメラやビデオ等の撮像機器、プラント内の異音等を収集したり警報音等を発するマイクやスピーカ等の音響機器、各機器の位置情報を出力する位置検出機器、その他のプラントの現場に設置される機器である。また、配管PLは、例えば原油やガス等の流体が流れる配管である。尚、本実施形態では、理解を容易にするために、フィールド機器FDは、配管PLを流れる流体の流量を測定するセンサ機器であるものとする。
【0016】
このフィールド機器FDは、プラントの現場に敷設されるネットワークや伝送線(例えば、「4〜20mA」信号の伝送に使用される伝送線)に接続されて、ネットワーク等からの電源供給を受けてネットワーク等を介した通信が可能である。具体的に、フィールド機器FDは、HART(登録商標)、BRAIN、ファウンデーションフィールドバス(Foundation Fieldbus:登録商標)、プロフィバス(PROFIBUS:登録商標)、DeviceNet(登録商標)、CC−Link(登録商標)、EtherNet/IP(登録商標)等のプロセス工業用の汎用通信プロトコルを用いた通信が可能である。
【0017】
信号処理モジュール10は、フィールド機器FD及びアンテナモジュール20に接続されて、フィールド機器FDとの間における通信処理、アンテナモジュール20との間における通信処理、及び通信プロトコルの変換処理等の信号処理を行う。この信号処理モジュール10は、いわばフィールド機器FDとアンテナモジュール20との間で授受される各種信号を中継する中継モジュールと言うこともできる。
【0018】
具体的に、信号処理モジュール10は、接続コネクタCNによってフィールド機器FDに接続されており、接続コネクタCNを介してフィールド機器FDと通信(アナログ通信又はディジタル通信)を行う。つまり、信号処理モジュール10には、フィールド機器FDとの間の通信を可能とするために、フィールド機器FDに実装されている通信プロトコルと同じ通信プロトコルが実装されている。
【0019】
また、信号処理モジュール10は、ケーブルCBを介してアンテナモジュール20に接続されており、ケーブルCBを介してアンテナモジュール20と通信(例えば、RS−422等のシリアル通信)を行う。尚、図1では、信号処理モジュール10とアンテナモジュール20とがケーブルCBによって接続されている例を図示しているが、ケーブルCBを用いることなく、アンテナモジュール20を信号処理モジュール10に直接接続することも可能である。つまり、信号処理モジュール10が備えるコネクタC0には、ケーブルCBを接続することも、アンテナモジュール20を接続することも可能である。
【0020】
ケーブルCBを用いて信号処理モジュール10とアンテナモジュール20とを接続した場合には、アンテナモジュール20の設置場所の自由度を高めることが可能になる。これに対し、ケーブルCBを用いることなく、アンテナモジュール20を信号処理モジュール10に直接接続した場合には、アンテナが固定された従来の無線機器と同様に無線機器1を取り扱うことができる。尚、詳細は後述するが、上記のケーブルCBとしては、電源線、信号線、及びグランド線を有する多芯のシールドケーブルが用いられる。
【0021】
この信号処理モジュール10は、電源B(図4参照)を備えており、ケーブルCBを介してアンテナモジュール20に電力を供給する。この電源Bとしては、電池(例えば、塩化チオニルリチウム電池等の自己放電が極めて少ない一次電池や二次電池)、燃料電池、キャパシタ、或いは環境発電(所謂、太陽電池等のエナジーハーベスト)を行う発電回路等を用いることができる。尚、電源Bは、信号処理モジュール10に内蔵されるものであっても、信号処理モジュール10の外部に設けられるものであっても良い。
【0022】
アンテナモジュール20は、無線信号の送受信を行うアンテナ25(図2参照)を備えており、信号処理モジュール10との間で通信を行うとともに、アンテナ25を介した無線信号の送受信を行う。具体的に、アンテナモジュール20は、信号処理モジュール10から送信されてくる信号を受信してアンテナ25から無線信号にして送信するとともに、アンテナ25で受信した無線信号を処理して信号処理モジュール10に向けて送信する。
【0023】
図2は、本発明の第1実施形態によるアンテナモジュールの要部構成を示すブロック図である。図2に示す通り、アンテナモジュール20は、筐体21、アンテナキャップ22(アンテナ収容部)、コネクタ部23、回路部24、及びアンテナ25を備えており、外形形状が円柱形状又は多角柱形状(例えば、四角柱形状)のモジュールである。このアンテナモジュール20は、外形形状が柱形状にされているため、従来の無線機器に設けられていたアンテナ(スリーブアンテナ或いはホイップアンテナ)のように、信号処理モジュール10に直接接続することが可能である。
【0024】
筐体21は、例えば高剛性アルミニウム等の剛性の高い金属によって形成された筒状(円筒状、或いは多角筒状)の部材であり、回路部24の周囲を覆うように回路部24を収容する。ここで、回路部24の周囲を金属製の筐体21で覆うのは、回路部24で発生する不要輻射(例えば、高次高調波等のスプリアス)がアンテナモジュール20の外部に漏れるのを極力抑えて、周囲に配置されている他の無線機器に悪影響を及ぼすのを防止するためである。
【0025】
また、筐体21は、本質安全防爆規格を満たすべく、その内部に樹脂が充填されている。つまり、筐体21の内部に収容される回路部24は、筐体21の内部に充填された樹脂によって封止されている。ここで、筐体21の内部に樹脂を充填してしまうとアンテナモジュール20のコスト及び重量の増大を招いてしまうため、筐体21の内部に樹脂を充填せずに回路部24の表層のみを樹脂でコーティングするように部分的に充填するものであっても良い。
【0026】
アンテナキャップ22は、内部にアンテナ25を収容する樹脂製の部材であり、筐体21の外径の同程度の外径を有しており、筐体21の一端部に設けられる。このアンテナキャップ22は、アンテナ25が筐体21の外部に配置されるように(筐体21がアンテナ25の周囲を覆わないように)アンテナ25を収容する。これは、アンテナ25から送信される無線信号、或いはアンテナ25で受信されるべき無線信号が筐体21によって遮られないようにして、アンテナ25が無線信号を送受信できるようにするためである。尚、アンテナキャップ22は、樹脂の他、無線信号を透過する材質であれば良い。
【0027】
コネクタ部23は、アンテナモジュール20をケーブルCB或いは信号処理モジュール10に接続する接続部であり、筐体21の他端部に接合されている。具体的に、コネクタ部23が、外部のコネクタ(ケーブルCBの端部に設けられているコネクタ、或いは信号処理モジュール10に設けられているコネクタ)と螺合又は嵌合されることにより、アンテナモジュール20は、ケーブルCB或いは信号処理モジュール10に固定され、且つ電気的に接続される。
【0028】
このコネクタ部23は、回路部24に接続された複数の接続端子T20〜T22(図4参照)を備えており、これら接続端子T20〜T22を介して信号処理モジュール10からの電力の受電や、アンテナモジュール20と信号処理モジュール10との間で送受信される信号の入出力が行われる。このコネクタ部23は、アンテナモジュール20が屋外に設置されることが考えられるため、IP(International Protection)規格やNEMA(National Electrical Manufacturers Association)規格等の防水防塵規格に適合するものを用いるのが望ましい。尚、アンテナモジュール20と外部のコネクタとの電気的接続の詳細については後述する。
【0029】
回路部24は、送受信部24a(送受信回路)、信号処理部24b(無線信号処理回路)、無線部24c(無線信号処理回路)、及び送受信切替部24dを備える。かかる構成の回路部24は、信号処理モジュール10から送信されてくる信号を受信してアンテナ25から無線信号にして送信するとともに、アンテナ25で受信した無線信号を処理して信号処理モジュール10に向けて送信する。
【0030】
送受信部24aは、ケーブルCBを介して信号処理モジュール10との間で通信(例えば、RS−422等のシリアル通信)を行う。具体的に、送受信部24aは、コネクタ部23を介して送信されてくる信号処理モジュール10からの信号を受信して信号処理部24bに出力するとともに、信号処理部24bから出力される信号(信号処理モジュール10に送信すべき信号)を、コネクタ部23を介して送信する。
【0031】
信号処理部24bは、送受信部24aからの信号、或いは無線部24cからの信号に対して予め規定された信号処理を行う。具体的に、信号処理部24bは、送受信部24aからの信号に対しては、同期処理、データ変換処理、通信プロトコルの変換処理、暗号化処理、変調処理等を行い、無線部24cからの信号に対しては、復調処理、復号処理、通信プロトコルの変換処理、データ変換処理、同期処理等を行う。また、信号処理部24bは、送受信切替部24dの切り替え制御も行う。
【0032】
無線部24cは、信号処理部24bからの信号を用いてアンテナ25から送信すべき無線信号を生成し、或いはアンテナ25からの無線信号を受信する処理を行う。具体的に、無線部24cは、信号処理部24bからの信号に対しては、同期処理、暗号化処理、周波数変換処理等を行い、アンテナ25からの無線信号に対しては、周波数変換処理、複合処理、同期処理等を行う。
【0033】
送受信切替部24dは、信号処理部24bの制御の下で、無線信号の送受信の切り替えを行う。具体的に、送受信切替部24dは、無線信号の送信時には、無線部24cで生成された無線信号がアンテナ25に入力されるように無線信号の伝送経路を切り替え、無線信号の受信時にはアンテナ25で受信された無線信号が無線部24cに入力されるように無線信号の伝送経路を切り替える。
【0034】
図3は、本発明の第1実施形態によるアンテナモジュールに設けられる送受信切替部の構成を示すブロック図である。図3に示す通り、送受信切替部24dは、スイッチSW1,SW2、出力調整部31、フィルタ部32、高周波アンプ33、出力レベル検出部34、バンドパスフィルタ35、及び増幅器36を備える。尚、これらのうちの出力調整部31〜出力レベル検出部34は、送信経路R1上に設けられており、バンドパスフィルタ35及び増幅器36は受信経路R2上に設けられている。上記送信経路R1は、無線部24cで生成された無線信号をアンテナ25に入力させるための伝送経路であり、上記受信経路R2は、アンテナ25で受信された無線信号を無線部24cに入力させるための伝送経路である。
【0035】
スイッチSW1,SW2は、信号処理部24bの制御の下で、無線部24cに接続された入出力端T1とアンテナ25に接続された入出力端T2との間の伝送経路を送信経路R1にするか受信経路R2にするかを切り替える。出力調整部31は、信号処理部24bによって制御され、入出力端T1から入力されてスイッチSW1を介した無線信号の出力調整を行う。フィルタ部32は、出力調整部31からの無線信号に重畳しているイメージ信号や高次高調波等のスプリアスを除去する。
【0036】
高周波アンプ33は、フィルタ部32を通過した無線信号を所定の増幅率で増幅する。尚、高周波アンプ33の増幅率は、信号処理部24bによって制御される。出力レベル検出部34は、高周波アンプ33で増幅された無線信号の出力レベルを検出する。尚、出力レベル検出部34の検出結果は、信号処理部24bに出力されて、信号処理部24bが出力調整部31或いは高周波アンプ33の減衰率又は増幅率等を制御する際に用いられる。
【0037】
バンドパスフィルタ35は、入出力端T2から入力されてスイッチSW2を介した無線信号のうちの信号成分のみを通過させることによって、その無線信号に重畳されている雑音成分を除去する。増幅器36は、バンドパスフィルタ35を通過した無線信号を所定の増幅率で増幅する。尚、増幅器36の増幅率は、高周波アンプ33の増幅率と同様に、信号処理部24bによって制御される。
【0038】
アンテナ25は、送受信切替部24dの入出力端T2に接続されており、送受信切替部24dからの無線信号を送信するとともに、送信されてきた無線信号を受信して送受信切替部24dに出力する。このアンテナ25は、アンテナキャップ22内に収容される小型のアンテナであれば良く、例えば基板上に形成されたマイクロストリップアンテナを用いることができる。
【0039】
図4は、本発明の第1実施形態による無線機器が備えるアンテナモジュールと信号処理モジュールとの接続状態を説明するための図である。図4に示す通り、信号処理モジュール10は、例えば高剛性アルミニウム等の剛性の高い金属或いは樹脂によって形成されて、内部に基板SBを収容する中空箱状の筐体11を備える。この筐体11の上面には金属製のコネクタ台座12が取り付けられており、コネクタ台座12上にはコネクタC0(図1参照)と、フレームグランドFGに接続される接地端子13とが設けられている。つまり、信号処理モジュール10は、少なくともコネクタ台座12、接地端子13、及びコネクタC0のシェル(外周の金属部分)がフレームグランドFGの電位とされる。
【0040】
筐体11内に収容される基板SBは、信号パターンSP及びグランドパターンGPが形成された多層基板であり、前述した信号処理(フィールド機器FD及びアンテナモジュール20との間における通信処理や通信プロトコルの変換処理等)を行う複数の半導体チップCPが搭載されている。また、筐体11内には、信号処理モジュール10及びアンテナモジュール20を動作させる電力を供給する電源Bが設けられている。
【0041】
電源Bは、一端が基板SB上に搭載された複数の半導体チップCPに接続され、他端が筐体11内に設定されたシグナルグランドSGに接続されている。このシグナルグランドSGは、信号処理モジュール10内の基準電位を規定するとともに、アンテナモジュール20に設けられた回路部24の基準電位を規定するものである。尚、基板SBに形成されたグランドパターンGPもシグナルグランドSGに接続されている。また、コネクタC0には、電源Bの一端に接続された電源接続端子T10、信号パターンSPに接続された信号接続端子T11、及びシグナルグランドSGに接続されたグランド接続端子T12が設けられている。
【0042】
ケーブルCBは、電源線L10、信号線L11、グランド線L12、及びシールドSDを備える多芯のシールドケーブルである。ここで、電源線L10、信号線L11、及びグランド線L12は芯線であり、シールドSDはこれら芯線の周囲に設けられる編組線やアルミ箔等である。このシールドSDは、ケーブルCBの両端部に設けられたコネクタC11,C12のシェル(外周の金属部分)と電気的に接続されている。
【0043】
アンテナモジュール20のコネクタ部23には、回路部24の電源入力端に接続された電源接続端子T20(電源接続部)、回路部24の信号入出力端(図2に示す送受信部24aに接続される端子)に接続された信号接続端子T21(信号接続部)、及び回路部24のグランド端に接続されたグランド接続端子T22(第1グランド接続部)が設けられている。また、コネクタ部23のシェル(外周の金属部分:第2グランド接続部)が筐体21に接合されている。
【0044】
ケーブルCBのコネクタC11が信号処理モジュール10のコネクタC0に接続されると、電源線L10が電源接続端子T10に接続され、信号線L11が信号接続端子T11に接続され、グランド線L12がグランド接続端子T12に接続される。また、シールドSDが、ケーブルCBのコネクタC11のシェル及びコネクタC0のシェルを介してフレームグランドFGに接続される。
【0045】
ケーブルCBのコネクタC12がアンテナモジュール20のコネクタ部23に接続されると、電源線L10が電源接続端子T20に接続され、信号線L11が信号接続端子T21に接続され、グランド線L12がグランド接続端子T22に接続される。また、シールドSDが、コネクタC12のシェル及びコネクタ部23のシェルを介して筐体21に接続される。
【0046】
従って、アンテナモジュール20の電源接続端子T20は、ケーブルCBの電源線L10を介してコネクタC0の電源接続端子T10に接続され、これにより回路部24と電源Bの一端とが電気的に接続される。また、アンテナモジュール20の信号接続端子T21は、ケーブルCBの信号線L11を介してコネクタC0の信号接続端子T11に接続され、これにより回路部24と基板SBに形成された信号パターンSPとが電気的に接続される。
【0047】
また、アンテナモジュール20のグランド接続端子T22は、ケーブルCBのグランド線L12を介してコネクタC0のグランド接続端子T12に接続され、これにより回路部24がシグナルグランドSGに接続される。尚、アンテナモジュール20のコネクタ部23のシェルは、ケーブルCBのコネクタC12のシェル、シールドSD、及びコネクタC11のシェルを介してコネクタC0のシェルに接続され、これにより、アンテナモジュール20の筐体21がフレームグランドFGに接続される。
【0048】
このように、信号処理モジュール10及びアンテナモジュール20がケーブルCBによって接続されると、信号処理モジュール10のコネクタC0からアンテナモジュール20の回路部24までの信号経路の周囲が、フレームグランドFGに接続された金属部材で覆われることになる。尚、上記の金属部材は、コネクタC0のシェル、ケーブルCBのコネクタC11,C12のシェル及びシールドSD、並びにアンテナモジュール20のコネクタ部23のシェル及び筐体21である。このため、回路部24で発生する不要輻射(例えば、高次高調波等のスプリアス)がアンテナモジュール20の外部に漏れるのを極力抑えることができるとともに、外部ノイズの悪影響を軽減することができる。
【0049】
尚、アンテナモジュール20が信号処理モジュール10のコネクタC0に直接接続される場合には、アンテナモジュール20の電源接続端子T20、信号接続端子T21、及びグランド接続端子T22が、コネクタC0の電源接続端子T10、信号接続端子T11、及びグランド接続端子T12にそれぞれ直接接続される。また、アンテナモジュール20のコネクタ部23のシェルは、コネクタC0のシェルに直接接続される。
【0050】
次に、アンテナモジュール20が備えるアンテナ25の取り付け位置について説明する。図5は、本発明の第1実施形態によるアンテナモジュールのアンテナの取り付け位置を説明するための図である。尚、以下では説明を簡単にするために、アンテナ25が、筐体21の軸に直交する面(図5(a)中の基準面P)内において無指向性である場合を例に挙げて説明する。
【0051】
図5(a)に示す通り、筐体21の軸に直交してアンテナ25の給電点Qが含まれる基準面Pを基準としたアンテナ25の3dB半値角をθとし、筐体21の外半径をφとする。アンテナ25は、筐体21の軸方向における給電点Qと筐体21との距離が以下の(2)式で示される最短距離Lとなる位置に取り付けられる。
L=φ×tanθ×α …(2)
【0052】
ここで、筐体21の外径形状が円筒形状である場合には、図5(b)に示す通り、筐体21の外半径φは、筐体21の軸上に位置する給電点Qから筐体21の外周までの距離となる。これに対し、筐体21の外径形状が四角筒形状である場合には、図5(c)に示す通り、筐体21の外半径φは、筐体21の軸上に位置する給電点Qを通る対角線の半分の長さとなる。
【0053】
また、上記(2)式の右辺の変数αは、機械的な製造誤差等を考慮したマージンを示す定数である。つまり、この変数αは、アンテナ25から放射される無線信号が筐体21の影響を受けにくくする(筐体21で遮られないようにする)ために規定されるものである。具体的に、変数αは、アンテナ25から放射される無線信号の放射角(基準面Pに対する角度)の精度、筐体21の製造精度、回路部24の製造精度等を考慮して値が定められ、例えば値「1.05」が設定される。尚、マージンを考慮しない場合(α=1の場合)には、上記(2)式は上記(1)式と等しくなる。
【0054】
アンテナ25を上記の位置に取り付けるのは、アンテナ25の性能に影響を与えることなく不要輻射を極力抑えるためである。つまり、給電点Qと筐体21との距離が上記の最短距離Lよりも短くなる位置にアンテナ25が取り付けられると、金属で形成された筐体21に無線信号が遮られてアンテナ25の性能低下を招いてしまう。これに対し、給電点Qと筐体21との距離が上記の最短距離Lよりも長くなる位置にアンテナ25が取り付けられると不要輻射が大きくなってしまう。このため、アンテナは上記の位置に取り付けられる。尚、不要輻射が許容できる限りにおいて、アンテナ25は、給電点Qと筐体21との距離が上記の最短距離Lよりも僅かに長くなる位置に取り付けられていても良い。
【0055】
次に、上記構成における無線機器1の動作について説明する。尚、以下では、フィールド機器FDからの信号を無線信号にして送信する動作(送信動作)、及び無線信号で送信されてくるフィールド機器FDへの信号を受信する動作(受信動作)を順に説明する。
【0056】
〈送信動作〉
フィールド機器FDから信号が出力されると、この信号は接続コネクタCNを介して信号処理モジュール10に入力され、通信プロトコルの変換処理等の信号処理が行われた後に、信号処理モジュール10とアンテナモジュール20との間で行われる通信によってアンテナモジュール20に向けて送信される。信号処理モジュール10から送信された信号は、図4に示すコネクタC0の信号接続端子T11、ケーブルCBの信号線L11、及びアンテナモジュール20の信号接続端子T21を順に介してアンテナモジュール20の回路部24に入力される。
【0057】
回路部24に入力された信号は、図2に示す送受信部24aで受信されて信号処理部24bに出力され、同期処理、データ変換処理、通信プロトコルの変換処理、暗号化処理、変調処理等の信号処理が行われる。信号処理部24bで信号処理が行われた信号は、無線部24cに出力される。そして、無線部24cにおいて、信号処理部24bからの信号を用いて同期処理、暗号化処理、周波数変換処理等の処理が行われることによって無線信号が生成される。
【0058】
無線部24cで生成された無線信号は、図3に示す送受信切替部24dの入出力端T1に入力され、送信経路R1上に設けられた出力調整部31、フィルタ部32、高周波アンプ33、及び出力レベル検出部34を順に通過した後に入出力端T2から出力される。尚、送信動作時には、信号処理部24bの制御によって、入出力端T1,T2間の伝送経路が送信経路R1となるようにスイッチSW1,SW2が切り替えられている。入出力端T2から出力された無線信号はアンテナ25の給電点Qに入力され、これによりアンテナ25から無線信号が送信される。
【0059】
〈受信動作〉
アンテナ25で無線信号が受信されると、この無線信号は、図3に示す送受信切替部24dの入出力端T2に入力され、受信経路R2上に設けられたバンドパスフィルタ35及び増幅器36を順に通過した後に入出力端T1から出力される。尚、受信動作時には、信号処理部24bの制御によって、入出力端T1,T2間の伝送経路が受信経路R2となるようにスイッチSW1,SW2が切り替えられている。
【0060】
入出力端T1から出力された無線信号は、図2に示す無線部24cに入力されて周波数変換処理、複合処理、同期処理等が行われる。無線部24cから出力された信号は信号処理部24bに入力され、復調処理、復号処理、通信プロトコルの変換処理、データ変換処理、同期処理等の信号処理が行われる。信号処理部24bで信号処理が行われた信号は、送受信部24aに出力され、信号処理モジュール10との間で行われる通信によって信号処理モジュール10に向けて送信される。
【0061】
アンテナモジュール20から送信された信号は、図4に示すコネクタ部23の信号接続端子T21、ケーブルCBの信号線L11、及びコネクタC0の信号接続端子T11を順に介して信号処理モジュール10に入力される。信号処理モジュール10に入力された信号は、通信プロトコルの変換処理等の信号処理が行われた後に、接続コネクタCNを介してフィールド機器FDに向けて送信される。
【0062】
以上の通り、実施形態では、無線機器1を、フィールド機器FDとの間で通信を行う信号処理モジュール10と、無線通信を行うアンテナモジュール20とに分けて構成し、これら信号処理モジュール10及びアンテナモジュール20の間で授受される信号を、ケーブルCBを介して送受信するようにしている。また、アンテナモジュール20は、無線信号を取り扱う回路部24の周囲を筒状の筐体21で覆いつつ、無線信号の送受信が可能なようにアンテナ25をアンテナキャップ22に収容するようにしている。
【0063】
これにより、アンテナモジュール20の設置場所の自由度を高めることができるため、電波状態が良い場所にアンテナモジュール20を設置すれば安定した無線通信を行うことができる。また、アンテナモジュール20の無線信号を取り扱う回路部24から放射される不要輻射の多くは筐体21で遮られるため、不要輻射を極力抑えることができる。このように、本実施形態では、不要輻射を抑えつつフィールド機器の設置位置に拘わらず安定した無線通信を実現することができる。
【0064】
〔第2実施形態〕
図6は、本発明の第2実施形態によるアンテナモジュールを模式的に示す図である。図6に示す通り、本実施形態のアンテナモジュール40は、筐体41、アンテナ収容部42、コネクタ部43a,43b、及びアンテナ25を備えており、アンテナモジュール20と同様に、信号処理モジュール10から送信されてくる信号を受信してアンテナ25から無線信号にして送信するとともに、アンテナ25で受信した無線信号を処理して信号処理モジュール10に向けて送信する。
【0065】
上述した第1実施形態のアンテナモジュール20は、アンテナ25が筐体21の一端部に設けられたアンテナキャップ22に収容されたものであった。これに対し、本実施形態のアンテナモジュール40は、アンテナ25が筐体41の両端部間(端部E1と端部E2との間)に設けられたアンテナ収容部42に収容されたものであって、2つのコネクタ部43a,43bを備えるものである。
【0066】
筐体41は、2つの筐体41a,41bからなる。これら筐体41a,41bは、アンテナモジュール20の筐体21と同様に、例えば高剛性アルミニウム等の剛性の高い金属によって形成された筒状(円筒状、或いは多角筒状)の部材であり、回路部(図示省略)の周囲を覆うように回路部を収容する。尚、回路部は筐体41a,41bの何れか一方に収容されていいても、筐体41a,41bの双方に収容されていても良い。これら筐体41a,41bの内部は、本質安全防爆規格を満たすために、樹脂が充填されていても良い。
【0067】
アンテナ収容部42は、円環状又は多角環状に成形された樹脂製の部材であり、筐体41a,41bの外径の同程度の外径を有しており、筐体41aと筐体41bとの間に配置されて、内部にアンテナ25を収容する。このアンテナ収容部42は、図2に示すアンテナキャップ22と同様に、アンテナ25が筐体41の外部に配置されるように(筐体41がアンテナ25の周囲を覆わないように)アンテナ25を収容する。
【0068】
コネクタ部43a,43bは、図4に示すコネクタ部23と同様のものである。つまり、コネクタ部43a,43bは、電源接続端子T20、信号接続端子T21、グランド接続端子T22、及びフレームグランドFGに接続されるシェル(外周の金属部分)をそれぞれ備える。このように、2つのコネクタ部43a,43bを設けるのは、アンテナモジュール40の上方側(端部E1側)及び下方側(端部E2側)の双方側からケーブルCBを接続可能とするためである。尚、コネクタ部43a,43bは、何れか一方を省略することも可能である。
【0069】
図7は、本発明の第2実施形態によるアンテナモジュールのアンテナの取り付け位置を説明するための図である。尚、本実施形態においても、説明を簡単にするために、アンテナ25が、基準面P内において無指向性である場合を例に挙げて説明する。図7に示す通り、筐体41(筐体41a,41b)の軸に直交してアンテナ25の給電点Qが含まれる基準面Pを基準としたアンテナ25の3dB半値角をθとし、筐体41の外半径をφとする。尚、外半径φは、筐体41の外径形状が円筒形状である場合には、図5(b)に示す通り定義され、筐体41の外径形状が四角筒形状である場合には、図5(c)に示す通り定義される。
【0070】
アンテナ25は、筐体41の軸方向における給電点Qと、筐体41aの端部E11及び筐体41bの端部E12との距離が前述した(2)式で示される最短距離Lとなる位置に取り付けられる。つまり、第1実施形態では、アンテナ25が筐体21の一端部に設けられたアンテナキャップ22に収容されるため、筐体21の影響を考慮してアンテナ25の取り付け位置が決められていた。これに対し、本実施形態では、アンテナ25が、筐体41aと筐体41bとの間に配置されるアンテナ収容部42に収容されるため、筐体41a,41bの影響を考慮してアンテナ25の取り付け位置が決められる。尚、不要輻射が許容できる限りにおいて、アンテナ25は、給電点Qと筐体41a,41bの少なくとも一方との距離が上記の最短距離Lよりも僅かに長くなる位置に取り付けられていても良い。
【0071】
本実施形態のアンテナモジュール40は、第1実施形態のアンテナモジュール20とは、アンテナ25の取り付け位置及びコネクタ部の数が異なるだけであり、機能は同じである。このため、アンテナモジュール20と同様に、設置場所の自由度を高めることができるため、電波状態が良い場所にアンテナモジュール20を設置すれば安定した無線通信を行うことができる。また、アンテナモジュール40の無線信号を取り扱う回路部から放射される不要輻射の多くは筐体41で遮られるため、不要輻射を極力抑えることができる。このように、本実施形態においても、不要輻射を抑えつつフィールド機器の設置位置に拘わらず安定した無線通信を実現することができる。
【0072】
以上、本発明の実施形態によるアンテナモジュール及び無線機器について説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、信号処理モジュール10に電源Bが設けられており、信号処理モジュール10からアンテナモジュール20に電力が供給される例について説明した。しかしながら、信号処理モジュール10の電源Bを省略して、フィールド機器FDからの電力を信号処理モジュール10及びアンテナモジュール20に供給するようにしても良い。また、アンテナモジュール20に電源を設けても良い。
【0073】
また、上記実施形態では、無線機器1が、工業プロセスにおける状態量として流体の流量を測定するものであるとして説明したが、本発明は、他の状態量(例えば、圧力、温度等)を測定する無線機器にも適用することができる。また、上記実施形態では、ISA100.11aに準拠した無線通信を行う無線機器を例に挙げて説明したが、本発明はWirelessHART(登録商標)に準拠した無線通信を行う無線機器、Wi−Fi(登録商標)に準拠した無線通信を行う無線機器、或いはZigBee(登録商標)に準拠した無線通信を行う無線機器にも適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 無線機器
10 信号処理モジュール
20 アンテナモジュール
21 筐体
22 アンテナキャップ
23 コネクタ部
24 回路部
24a 送受信部
24b 信号処理部
24c 無線部
25 アンテナ
40 アンテナモジュール
41 筐体
42 アンテナ収容部
43a,43b コネクタ部
B 電源
C0 コネクタ
C12 コネクタ
CB ケーブル
FD フィールド機器
FG フレームグランド
L12 グランド線
L10 電源線
L11 信号線
Q 給電点
SD シールド
SG シグナルグランド
T20 電源接続端子
T21 信号接続端子
T22 グランド接続端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7