(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
Si含有量が0.5質量%以上であり、任意成分として、Vを含む場合はV含有量が0.30質量%以下、Moを含む場合はMo含有量が0.20質量%以下である成分組成を有し、
表面の平均振幅(Sa)が2.5μm以下であり、
表面の展開面積比(Sdr)が11以下であり、
表面が晶癖面と該晶癖面よりも盛り上がった平滑部とを有し、表面における平滑部の割合が面積率で50%以上であり、
前記平滑部には凹凸が形成されており、該凹凸の高低差は0.1μm以下であることを特徴とする化成処理性に優れるSi含有熱延酸洗鋼板。
前記成分組成は、質量%で、C:0.05〜0.10%、Si:0.5〜1.0%、Mn:1.0〜2.0%、P:0.010%以下、S:0.004%以下、Al:0.05%以下、N:0.0045%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成であることを特徴とする請求項1に記載の化成処理性に優れるSi含有熱延酸洗鋼板。
前記成分組成は、さらに、質量%で、Ti:0.04〜0.10%、Nb:0.005%以下のいずれか1種以上を含有する成分組成であることを特徴とする請求項2に記載の化成処理性に優れるSi含有熱延酸洗鋼板。
前記成分組成は、さらに、質量%で、V:0.05〜0.30%以下及びMo:0.1〜0.20%以下のいずれか1種以上を含有する成分組成であることを特徴とする請求項2又は3に記載の化成処理性に優れるSi含有熱延酸洗鋼板。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車車体の軽量化を図るために、自動車の骨格部品や足まわり部品の素材として、高強度鋼板、特に高強度熱延鋼板が多用されつつある。ここで、高強度鋼板の成分組成は、原材料の調達のしにくさから、希少な合金元素をできるだけ含有しない成分組成であることが求められている。そこで、Si、Mn等の安価な固溶強化元素を活用した高強度鋼板が開発されている。
【0003】
鋼板を高強度化して鋼板の板厚を薄くすることにより、部品等を軽量化する試みが行われており、板厚を薄くする場合、従来にも増して耐食性を高める必要がある。特に自動車の骨格部品や足回り部品の素材に適用される熱延鋼板は、化成処理を施された後、カチオン電着塗装等により、塗装が施されるため、優れた化成処理性を有することが要求される。ここでの化成処理は、防錆油が塗布された鋼板を脱脂後洗浄した後に行われる処理であり、例えば、浸漬型のリン酸亜鉛処理によってフォスフォフィライトを主体とする化成結晶を析出させて、鋼板表面にリン酸亜鉛皮膜(以下、化成処理皮膜ともいう)を形成させる処理である。
【0004】
SiやMn等を固溶強化元素として活用した場合、一般に、これらの元素が鋼板表面に濃化し、化成処理性が劣化しやすい。特に、Siは、成形性を大きく損なうことなく、高強度化を図ることができる元素であるが、鋼板表面にSi含有酸化物を形成して、化成処理性を著しく低下させ、塗装後の耐食性を大きく低下させる元素でもある。
【0005】
このようなSi、Mnといった固溶強化元素を含有する熱延鋼板の化成処理性、塗装後の耐食性を向上させる技術として、例えば特許文献1には、強化元素としてSi、Mn等の鉄より酸化され易い元素(以下、易酸化性元素という)を合計0.5質量%以上含有する熱延鋼材であって、易酸化性元素の鋼材表面における濃度および鋼材表面に存在する酸化物層の被覆状態を調整することで、化成処理後の耐食性、塗装後の耐食性を高めた鋼材に関する技術が開示されている。
【0006】
特許文献1の技術では、鋼材表面での易酸化性元素の濃度が鋼中濃度を超えないようにするとともに地鉄の粒を被覆する表面酸化物層の被覆率を高めること、あるいは、鋼材表面の易酸化性元素の濃度が鋼中濃度よりも高い領域を密に生成させるとともに、地鉄の粒を被覆する表面酸化物層の被覆率を高めることにより、局部アノードの形成を減少させて、塗装後耐食性を確保する。
【0007】
また、一般に熱延鋼板の酸洗後の表面粗度が冷延鋼板よりも大きいために、スケール残りや疵の発生、あるいは脱脂性低下による化成処理性の低下も問題である。このような問題に対して、特許文献2には、平均粒径と表面粗さ上限を規定して解決できるとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の技術では、所定の表面状態を実現するために、従来とは異なる熱延・酸洗条件が必要であるとされ、特定のデスケーリング条件や熱間圧延条件、酸洗条件が開示されている。しかし、実機製造において、特許文献1に記載の製造条件とすることで、表面構造を鋼板全面にわたって安定して確保することは容易ではない。
【0010】
さらに、熱延鋼板の組織やその表面粗さは、強度レベルを変更したり巻取り条件を変更したりすることによっても大きく変化する。このため、熱延鋼板の組織を安定して3.0μm以下、表面粗さを1.5μm以下に制御する特許文献2の技術を実機プロセスで安定して達成することは容易でない。
【0011】
すなわち、従来技術では、自動車用の熱延鋼板について、優れた化成処理性を確保するとともに、塗装後の耐食性を確保することが困難であった。
【0012】
本発明は、このような従来技術の問題を解決して、優れた化成処理性を確保でき、優れた塗装後耐食性を確保できるSi含有熱延酸洗鋼板およびその有利な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一般にSi含有熱延酸洗鋼板を製造するに際し、熱間圧延工程の加熱時及び圧延時において、鋼板表面に強固な酸化被膜(以下、スケールともいう)が生成する。そこで、熱間圧延の加熱時において生成するスケール(一次スケール)を十分にデスケーリングすることや、その後の圧延中に生成するスケール(二次スケール)を除去するために、十分な酸洗を行うことが必要とされている。また、熱間圧延中に生成するスケールが残存する部位では、化成処理中に化成処理皮膜を構成する結晶(以下、化成結晶ともいう)が核生成せず、塗装後耐食性が劣化する。
【0014】
本発明者らは、化成処理不良が起きやすいSi含有熱延酸洗鋼板に関し、化成処理性に大きく影響する酸洗後の熱延鋼板の表面構造および化成処理皮膜の構造について、鋭意検討を重ねた。その結果、以下の知見を得た。
【0015】
上記したように、二次スケールを除去するために酸洗が施され、また、酸洗後は水洗、次いで乾燥が施される。本発明者らは、上記乾燥後における鋼板表面の微細構造が化成結晶の核生成に大きく影響することを新たに見出した。
【0016】
図1に、熱間圧延後に酸洗を施し、次いで、水洗、乾燥を施した後のSi含有熱延酸洗鋼板(Si含有量:0.7質量%)の表面を、走査電子顕微鏡(SEM)で観察した例を示す。上記乾燥後のSi含有熱延酸洗鋼板の表面は、
図1に示すように、明確に窪んだ部分と、それよりも高い比較的平滑な部分(平滑部)からなる特徴的な表面構造を有する。
【0017】
図2は、通常90〜120秒間の処理が必要とされる化成処理を、10秒間という短時間での処理とし、化成結晶の核生成状態を観察した結果を示すものである。
図2から、深くえぐれた部分(窪み部)に較べて、平滑な領域(窪んだ部分に対して盛り上がった部分であり、平滑部に相当する)で化成結晶が核生成しやすいことが明らかである。
【0018】
また、本発明者らは、Si含有熱延酸洗鋼板を酸洗、水洗、乾燥後に認められる上記したような表面構造と、酸洗前の黒皮材のスケール構造との対応関係を調査した。その結果、上記表面構造が黒皮材のスケール構造に強く支配されていることが判った。すなわち、熱延工程における種々の条件によって黒皮材のスケール構造を変化させることにより上記表面構造を調整できることが明らかとなった。例えば、熱延工程の粗圧延後のデスケーリングが不十分な場合、巻き取り温度が高い場合には、スケール厚みが増大するというスケール構造の変化が生じ、これにより上記表面構造も変化する。特に、Si含有熱延酸洗鋼板では、赤スケと呼ばれるスケールの厚い部分が形成されやすく、この赤スケが存在する領域では窪んだ部分と盛り上がった部分との高低差が大きい。このため、Si含有熱延酸洗鋼板では、酸洗後の化成処理において
図2で示した化成処理の不均一性が顕在化しやすいことが明らかになった。
【0019】
一般に、Si含有鋼板の化成処理性向上には、化成処理時の反応性を直接阻害するスケール除去のための酸洗が必須である。しかし、酸洗板の表面構造自体が反応性の不均一性を引き起こしていることから、酸洗のみならず、上記表面構造の調整もまた重要であることが新たにわかった。ここで、表面構造の調整とは、窪んだ部分と盛り上がった部分との高低差を小さくすることである。
【0020】
そこで、本発明者らは、Si含有熱延酸洗鋼板でも、酸洗後の鋼板表面構造を均質化する手法に関して鋭意検討した。その結果、粗圧延後のデスケーリングおよび酸洗を強化するか、又は酸洗を強化するとともに特定の表面調整を行うことにより、後述する三次元走査電子顕微鏡によって評価した酸洗板表面の平均振幅(Sa)を2.5μm以下、表面の展開面積比(Sdr)を11以下に制御すれば、化成処理性が向上し、化成処理後耐食性を安定して確保できることを見出した。
【0021】
さらに、本発明者らは化成結晶核生成に及ぼす鋼板表面の特徴として、より微細な構造であることが重要であることを新規に見出した。すなわち、前述のように大きな窪み部では化成結晶が核生成しにくいのに対し、化成結晶が密に核生成する平滑に見える部分には細かな凹凸が存在していることを見出した。これを明確に示すデータとして、Si含有熱延酸洗板断面を、FIB(Focused Ion Beam)にて、加速電圧30kVのGaイオンで粗加工し、加速電圧10kVのイオンビームにより幅約30μmの領域を仕上げ加工する条件調整し、SEM用45°断面試料とし、加速電圧5kVの条件でSEM観察した結果を
図3に示した。
図3(b)では、明瞭な窪み部分があるが、各々の表面は平滑になっている。一方、
図3(a)では、化成結晶が核生成している表面は、0.1μm程度のピッチの細かい凹凸が観察される。
【0022】
一方、
図4(a)、(b)には、酸洗板の表面形状のデスケーリング圧依存性を示す鳥瞰図であり、450x600μm
2の領域を示した。(高さは平均高さを「0」としたときの±14μmで、高いほど薄く低いほど濃く表記した。)。
図4(a)はデスケーリングの際の圧力を低くした場合であり、
図4(b)はデスケーリングの際の圧力を高くした場合である。
【0023】
この表面形状の定量情報と化成後耐食性の相関を表したのが
図5である。平均粗さSaおよび展開面積比Sdrといった表面形状パラメータで化成後耐食性の良否が判断できる。
【0024】
更にこうした表面構造の規定に加えて、より高強度を達成するために必要となる合金元素の影響についても調査した。その結果、析出強化型フェライト鋼もしくはベイナイト鋼で多用される合金元素のうち、V、Moといった元素を含む場合に、表面構造とは別に化成性が著しく劣化する傾向を見出した。その具体的結果は
図6に示すとおりである(
図6の(a)の「0.05V」はV含有量が0.05質量%の場合であり、(b)の「0.10V」はV含有量が0.10質量%の場合であり、(c)の「0.21V」はV含有量が0.21質量%の場合であり、(d)の「0.30V」はV含有量が0.30質量%の場合である。)。
図6は、V含有量を変化させた熱延酸洗鋼板の化成反応性比較のための図である。表面凹凸の影響排除のため、試料を研磨した面に対して90sの化成処理を施したサンプルを用いた。
図6に記載の通り、V含有量が質量%で0.30%以上では化成結晶が粗大化するとともに、化成結晶で被覆されない部分が生じている。即ち、V等の含有量を抑えつつ、V等による強度向上の効果を得れば、高強度と優れた化成処理性を両立できる。
【0025】
本発明は上記の知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
【0026】
(1)Si含有量が0.5質量%以上であり、任意成分として、Vを含む場合はV含有量が0.30質量%以下、Moを含む場合はMo含有量が0.20質量%以下である成分組成を有し、表面の平均振幅(Sa)が2.5μm以下であり、表面の展開面積比(Sdr)が11以下であることを特徴とする化成処理性に優れるSi含有熱延酸洗鋼板。
【0027】
(2)前記成分組成は、質量%で、C:0.05〜0.10%、Si:0.5〜1.0%、Mn:1.0〜2.0%、P:0.010%以下、S:0.004%以下、Al:0.05%以下、N:0.0045%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成であることを特徴とする(1)に記載の化成処理性に優れるSi含有熱延酸洗鋼板。
【0028】
(3)前記成分組成は、さらに、質量%で、Ti:0.04〜0.10%、Nb:0.005%以下のいずれか1種以上を含有する成分組成であることを特徴とする(2)に記載の化成処理性に優れるSi含有熱延酸洗鋼板。
【0029】
(4)前記成分組成は、さらに、質量%で、V:0.05〜0.30%以下及びMo:0.1〜0.20%以下のいずれか1種以上を含有する成分組成であることを特徴とする(2)又は(3)に記載の化成処理性に優れるSi含有熱延酸洗鋼板。
【0030】
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載のSi含有熱延酸洗鋼板の製造方法であって、鋼素材を熱間圧延する熱間圧延ステップと、該熱間圧延ステップ後の鋼板を酸洗する酸洗ステップとを有し、前記熱間圧延ステップでは、粗圧延後にノズル水圧が30MPa以上の条件でデスケーリングを行い、前記酸洗ステップでは、濃度5vol%以上、温度70℃以上、合計処理時間20s以上の条件で、塩酸浴による酸洗を行うことを特徴とするSi含有熱延酸洗鋼板の製造方法。
【0031】
(6)表面が晶癖面と該晶癖面よりも盛り上がった平滑部とを有し、表面における平滑部の割合が面積率で50%以上であり、前記平滑部には凹凸が形成されており、該凹凸の高低差は0.1μm以下であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のSi含有熱延酸洗鋼板。
【0032】
(7)(6)に記載のSi含有熱延鋼板の製造方法であって、鋼素材を熱間圧延する熱間圧延ステップと、該熱間圧延ステップ後の鋼板を酸洗する酸洗ステップと、該酸洗ステップ後の鋼板の表面を調整する表面調整ステップを有し、前記熱間圧延ステップでは、粗圧延後にデスケーリングを行い、前記酸洗ステップでは、濃度5vol%以上、温度70℃以上、合計処理時間20s以上の条件で、塩酸浴による酸洗を行い、前記表面調整ステップでは、酸洗を行うか、圧下を行うか、又は鋼板表面の研削を行なうことを特徴とするSi含有熱延酸洗鋼板の製造方法。
【発明の効果】
【0033】
本発明により、化成処理性に優れるSi含有熱延酸洗鋼板を安定して提供することができるようになった。本発明のSi含有熱延酸洗鋼板は、Siを0.5質量%以上含有するため高強度である。また、本発明のSi含有熱延酸洗鋼板は、優れた化成処理性を有するため、化成処理後に施される塗装後の耐食性にも優れる。これらの特性を有することから、本発明のSi含有熱延酸洗鋼板は、自動車の骨格部品や足まわり部品等の素材として好適であり、これらの用途に用いられた場合に自動車車体の軽量化に大きく寄与する。
【0034】
また、VやMoを特定量含むことで、優れた化成処理性と高強度とを両立することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0037】
本発明のSi含有熱延酸洗鋼板は、表面の平均振幅(Sa)が2.5μm以下、表面の展開面積比(Sdr)が11以下、Si含有量が0.5質量%以上である。
【0038】
Sa:2.5μm以下、Sdr:11以下
本発明のSi含有熱延酸洗鋼板は、その表面が
図1に例示したように晶癖面を呈する窪んだ部と、それよりも盛り上がった部分である平滑部から構成されている。この表面構造は、酸洗前の黒皮材におけるスケール構造の影響を受ける。特に、Si含有熱延酸洗鋼板では、熱間圧延中に鋼板表面にスケールが生成しやすい。スケールの生成量が多くなると、スケールを除去しようとしても、スケールが残存する場合がある。スケールの残存は、特に冷延外板素材(自動車用の外板パネル材など、めっきや塗装が施される素材)では最終的な外観が不良の要因となる。このため、スケール生成量を低減し、可能な限りスケールの厚みを薄くし、できるだけ酸洗によってスケールを除去するのが望ましい。また、上記の通り、スケールの除去以外に、黒皮材におけるスケール構造を調整することも必要であり、具体的には、黒皮材におけるスケール構造を出来るだけ均一にすることが望ましい。
【0039】
Si含有熱延酸洗鋼板では、粗圧延最終段でのスケール除去(FSB)が充分でないと、残存スケールがその後の仕上げ圧延時に鋼板に深く噛みこむ。その結果、スケール厚みが20μmを超える部分が生じてしまう。このスケールの厚みが厚い部分は熱間圧延方向に対して筋状に形成される。そして、この厚い部分が生じると結果的に表面振幅(Sa)が大きくなる。
【0040】
また、スケール厚みの厚い部分が生じる場合、Saが大きくなるだけでなく、展開面積比(Sdr)も増大する。Sdrの増大は実質的な表面積増大を意味する。
【0041】
ここで、種々の製造条件によって作成した熱延酸洗鋼板の表面に関して、表面形状パラメータを決定できる三次元走査電子顕微鏡(Elionix社製、ERA8800FE)による100〜200倍での観察を2視野以上実施した結果を説明する。
図4で示すように熱延条件を変更することによる熱延酸洗鋼板表面構造の明確な変化と、
図5に示すようなSa、Sdrと化成処理後耐食性の良好な相関が明らかとなった。なお、三次元走査電子顕微鏡は、独立する4つの二次電子検出器の信号強度を処理することにより、観察対象表面の三次元形状を定量的に評価できる。ここでは、表面粗さの指標となるRaに相当する面での指標としてSaと、実質的に比表面積に相当する展開面積比Sdrを評価指標として選択した。より具体的には、ISO25178に規定される3次元表面形状パラメータを用いて、三次元走査電子顕微鏡により評価する。
【0042】
熱延酸洗鋼板の化成処理後耐食性は、酸洗後の鋼板表面構造に大きく依存し、その構造を熱延、酸洗条件の適正化によって、ある範囲に制御することが重要である。ちなみに、
図5においてSaが1μm以下のものは、冷延酸洗板であり、化成処理後耐食性は全く問題にならない。こうしたことから、Si含有熱延酸洗鋼板において、その酸洗後の表面形状をSaおよびSdrによって特定することに技術的意義がある。すなわち、三次元走査電子顕微鏡によって規定される熱延酸洗鋼板の表面形状パラメータSaが2.5μm以下であり、かつSdrが11以下であれば化成処理後耐食性に優れたものとなる。
【0043】
また、上記の通り、Si含有熱延酸洗鋼板の表面は、窪み部と、それらよりも高い平滑部から構成されている。表面における平滑部の割合は面積率で50%以上であることが好ましい。また、平滑部の表面には微細凹凸が形成されており、当該凹凸の高低差は0.1μm以下であることが本発明の効果を高める上で好ましい。上記高低差は、実施例に記載の方法で測定した値を採用する。
【0044】
成分組成
続いて、本発明のSi含有熱延酸洗鋼板の成分組成について説明する。以下の成分組成の説明において、成分の含有量の単位である「%」は特に断らない限り「質量%」を意味するものとする。
【0045】
Si:0.5%以上
本発明は、化成処理性に劣る傾向にあるSi含有熱延酸洗鋼板の表面状態を制御することで、高強度でありながら、化成処理性に優れたSi含有熱延酸洗鋼板とすることに特徴がある。このように、本発明は鋼板がSiを含有することにより生じる課題を解決する発明であり、成分組成についてはSiのみ特定し、その他は特に限定しない。即ち、成分組成は、必須成分であるSiと、任意成分である元素と、Fe及び不可避的不純物からなる残部とから構成される。
【0046】
Si含有量が0.5%未満では、引張強さが590MPa以上である熱延酸洗鋼板とすることが困難である。このため、鋼板中のSi含有量は0.5%以上とする。なお、Si含有量が1.0%を超えると、本発明によっても化成処理性が低下する場合があるため、Si含有量は1.0%以下とすることが好ましい。
【0047】
本発明のSi含有熱延酸洗鋼板は、上記したように、Si含有量を0.5%以上とするものであり、Si以外の成分組成については、任意成分として、Vを含む場合はV含有量が0.30質量%以下、Moを含む場合はMo含有量が0.20質量%以下とする以外は特に限定するものではない。
【0048】
本発明のSi含有熱延酸洗鋼板は、C:0.05〜0.10%、Si:0.5〜1.0%、Mn:1.0〜2.0%、P:0.010%以下、S:0.004%以下、Al:0.05%以下、N:0.0045%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有することが好ましい。また、当該好ましい成分組成は、さらに、Ti:0.04〜0.10%及びNb:0.005%以下のいずれか1種以上を含有することが好ましい。また、当該好ましい成分組成は、さらに、質量%で、V:0.05〜0.30%以下及びMo:0.1〜0.20%以下のいずれか1種以上を含有することが好ましい。以下、好ましい成分について説明する。
【0049】
C:0.05〜0.10%
Cは、鋼を高強度化するのに有効な元素である。C含有量を0.05%以上とすることで、TS≧590MPaに調整しやすい。よって、C含有量を0.05%以上とすることが好ましい。一方、C含有量が0.10%を超えると強度が過剰となる。このため、C含有量は0.10%以下とすることが好ましい。
【0050】
Si:0.5〜1.0%
Siは、成形性を大きく損なうことなく、高強度化を図る元素である。本発明では、上記の通り、強度確保のため、Si含有量を0.5%以上とする必要がある。一方、Si含有量が1.0%を超えると、本発明でも化成処理性が低下する場合がある。このため、Si含有量は1.0%以下とすることが好ましい。
【0051】
Mn:1.0〜2.0%
Mnは、鋼を固溶強化するのに有効な元素である。Mn含有量を1.0%以上とすることで、TS≧590MPaに調整しやすい。よって、Mn含有量は1.0%以上とすることが好ましい。一方、Mn含有量が2.0%を超えると焼入れ性が高まり強度過剰になる。このため、Mn含有量は2.0%以下とすることが好ましい。より好ましくは1.5%以下である。
【0052】
P:0.010%以下
Pは、鋼中の代表的な不可避的不純物である。本発明において、P含有量は0.010%以下とすることが好ましい。
【0053】
S:0.004%以下
Sは、圧延時の熱間脆性を引き起こす不純物である。このため、S含有量は0.004%以下とすることが好ましい。
【0054】
Al:0.05%以下
Alは製鋼工程で脱酸材として、添加される元素である。また、Alは、非金属介在物をスラグとして分離するのに有効な元素である。このため、Al含有量を0.02%以上とすることが好ましい。但し、過剰なAlの添加は粗大なAl
2O
3の凝集合体による割れ発生を誘起するためAl含有量は0.05%以下とすることが好ましい。
【0055】
N:0.0045%以下
Nは、鋼の耐時効性を劣化させる元素であるため、N含有量は0.0045%以下とすることが好ましい。
【0056】
Ti:0.04〜0.10%、Nb:0.005%以下のいずれか1種以上
Ti、Nbは、極めて強い炭窒化物形成元素であり、TS:590MPa以上という強度達成に効果がある元素である。本発明ではTiの場合はTi含有量を0.04%以上、Nbの場合はNb含有量を0.005%以上として、Ti、Nbのいずれか1種以上を含有することが好ましい。一方、これら元素は希少で原料コスト増大を招くため、これらの元素を含有させる場合は、Ti含有量については0.10%以下、Nb含有量については0.005%以下とすることが好ましい。
【0057】
V:0.05〜0.30%及びMo:0.1〜0.20%のいずれか1種以上
V、Moは、強い炭窒化物形成元素であり、TS:590MPaを超える強度達成に効果がある元素である。本発明では、Vの場合はV含有量を0.05%以上、Moの場合はMo含有量を0.1%以上として、V、Moのいずれか1種以上を含有することが好ましい。一方、これら元素を過剰に添加すると著しい化成処理性の低下を招くため、V含有量については0.30%以下、Mo含有量については0.20%以下とする。
【0058】
本発明のSi含有熱延酸洗鋼板の成分組成の上記以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。
【0059】
続いて、本発明のSi含有熱延酸洗鋼板の表面形状の制御を達成する好ましい製造方法について説明する。
【0060】
本発明のSi含有熱延酸洗鋼板の製造方法は、熱間圧延ステップと、酸洗ステップとを有する。
【0061】
熱間圧延ステップ
熱間圧延ステップとは、所望の板厚みに減厚するために、上記の成分組成を有する鋼スラブ等の鋼素材を熱間圧延するステップである。熱間圧延は多段の粗圧延と多段の仕上げ圧延からなる。鋼素材加熱後の高温域で行う粗圧延工程においては、スケール生成が特に顕著であり、通常、これを仕上げ圧延前に除去するデスケーリング装置が粗圧延工程直後に設置されている。本発明においては、粗圧延工程直後にノズル水圧(ノズルから出る水の水圧)が30MPa以上の条件でデスケーリングを行う。本発明の効果を得るためには、この高圧水によりデスケーリングを強化することが必須である(ただし、後述する表面調整ステップを行う場合には必須ではない)。このデスケーリングで除去しきれなかった残存スケールは、引続き行われる仕上げ圧延時に鋼板に噛み込み、顕著な凹凸の要因となる。
【0062】
上記の通り、熱間圧延後、即ち酸洗前の黒皮材のスケール構造を所望の状態とする必要がある。上記スケール構造も考慮した上で、ノズル水圧の条件を設定する必要がある。例えば、スケールが厚くなり過ぎる場合はノズル水圧を高めることで、所望の水圧に調整する必要がある。
【0063】
また、上記ノズル水圧の上限値は特に限定されないが、過剰な圧力では鋼表面温度の急激な低下により、仕上げ圧延時の過重増大や仕上げ温度低下を招くので注意が必要である。
【0064】
なお、高圧水によるデスケーリングに関しては、種々のラインでノズル位置などに差があるため、好ましいノズル水圧はノズル位置等を考慮しつつ、所望の黒皮スケール構造にする観点から決定すればよい。
【0065】
酸洗ステップ
酸洗ステップとは、熱間圧延ステップ後の鋼板を酸洗するステップである。本ステップは、熱間圧延後にスケールを除去する目的で行われる。
【0066】
Siを含有しない熱延鋼板では、スケール厚みの変動も小さく、一般的な高温塩酸酸洗を行えば、スケールの除去および鋼板表面のエッチングを促進できる。これに対して、Siを含有する熱延鋼板では、デスケーリング強化によっても表面を平滑にすることはできない。このため、Si含有熱延鋼板では、酸洗を強化することによって表面を平滑にすることが重要である。酸洗工程も、各工場によって様々であるため厳密にその条件を規定することは難しいが、例えば濃度5vol%以上、70℃以上の塩酸浴に複数回浸漬し、総浸漬時間が20sを超える処理を施すことが望ましい。塩酸濃度や酸洗浴の温度に関しても、酸洗設備に大きく依存するものであり、酸洗後の表面のSa及びSdrが上記範囲になるように、条件設定を行えばよい。なお、鋼板の表面形状を制御する方法としては、上述したものに限定されるものではなく、例えば熱延酸洗板を数%圧延することによって表面をより平滑にすることも有効である。圧延・酸洗後の鋼板は、酸洗液残りがないよう、一般的な水洗、乾燥工程を経て、化成後耐食性に優れる表面形状の制御された熱延コイルとすることができる。
【0067】
なお、熱延酸洗鋼板の表面をより平滑にすることは、成形時に行われる防錆油の脱脂工程において油残りを防止することにも寄与する。この観点からも、本発明のSi含有熱延酸洗鋼板を用いれば、安定した化成処理が可能となる。
【0068】
表面調整ステップ
表面調整ステップとは、酸洗ステップ後の鋼板の表面を調整するステップであり、表面における平滑部の割合が面積率で50%以上とし、平滑部表面の凹凸の高低差を0.1μm以下とするためのステップである。
【0069】
具体的には、本ステップでは、酸洗後の鋼板をさらに酸洗するか、圧下するか、又は鋼板表面を研削する。酸洗後の表面を、追加酸洗や機械的処置によってさらに平滑にすることが本発明の効果を高める上で好ましい。これは、前述のように脱脂工程を容易にするだけでなく、その後の化成処理において一般的に行われる表面調整(Ti酸化物を含有するコロイド溶液の塗布等により化成処理性を促進する処理)の均一性を確保する効果に加え、化成処理反応に対する鋼板表面上の活性を高めて化成処理性をさらに向上させる効果がある。なお、活性が低い例としては、表面が一様な酸化物で被覆され、リン酸によるエッチングが起こらない場合が挙げられる。また、活性が高い例としては、機械的研削などで金属露出面が出たり、表面に細かい突起が形成されたりする場合が挙げられる。
【0070】
追加酸洗(本ステップで行う酸洗)では、初期のマクロな表面凹凸の高低差(窪み部と平滑部との高低差)を軽減しつつ、適度な酸洗ピットを付与できる。これにより、化成処理時の活性点が増加する。なお、上記追加酸洗の酸洗条件は、所望の表面になるように決定すればよく、特に限定されないが、例えば濃度5vol%以上、70℃以上の塩酸浴に10s以上浸漬させる等の処理が好ましい。
【0071】
また、通常の酸洗後(上記酸洗ステップの酸性後)に、軽圧下や研削のためのロールを通板させることで、初期の表面凹凸の高低差を軽減するとともに、表面に歪みを付与して活性点を増やすことができる。ここで、軽圧下とは、板厚み変動に大きく影響しない圧下率1%程度の圧下であることが好ましい。研削条件も板厚み変動に大きく影響しない研削厚み数10μm以下という条件が好ましい。
【0072】
上記のような、追加の表面調整ステップを行えば、たとえ、Si含有量が1.0%を超えるような鋼板に対しても、化成処理において不均一な皮膜形成を回避することができ、化成後耐食性も確保できる。
【実施例1】
【0073】
表1に示す成分組成を有する鋼素材を、表2に示すデスケーリング条件(デスケFSB圧力)にて熱間圧延した。なお、熱間圧延ステップでは、常法に従い、熱間粗圧延、次いで熱間仕上げ圧延を施し、巻取り温度450℃で巻き取った。
【0074】
酸洗前の鋼板について、黒皮材のスケール構造をL断面試料のSEM観察で確認したところ、デスケFSB圧力(ノズル水圧)が30MPa以上の場合にはスケール層の厚み変動が比較的小さいという特徴を持っており、30MPa未満の場合にはスケール厚みが数μmから最大18μm以上となっていた。
【0075】
得られた熱間圧延後の鋼板について、表2に示すいくつかの水準で塩酸酸洗し、スケールを除去し、Si含有熱延酸洗鋼板を作成した。なお、酸洗後の水洗は、スプレー式水洗浴に鋼板を通過させることにより行い、スプレー式水洗浴を通過させる回数(通過させる水洗浴の数)は2回と固定した。また、水洗後の乾燥はドライエアにて行った。
【0076】
このSi含有熱延酸洗鋼板について、下記の引張試験を行い、引張強さ(TS)を調査した。引張試験結果は表2に示す。
【0077】
また、上記のSi含有熱延酸洗鋼板について、表面の平均振幅(Sa)、表面の展開面積比(Sdr)を下記の条件で測定した。また、酸洗板の平滑部よりFocused Ion Beam(FIB)法によって幅30μmの断面試料を作成し、凹凸差をSEMにより評価した。これらの、測定結果を表3に示した。
【0078】
また、上記のSi含有熱延酸洗鋼板について、下記の条件で脱脂性の評価を行った。結果は表3に示した。
【0079】
続いて、Si含有熱延酸洗鋼板から試験片を採取し、アルカリ脱脂(日本パーカライジング社製 FC−E2011)した後、下記条件で化成処理を施し、化成処理後の熱延鋼板について、日本ペイント 社製V−50を用いて、膜厚25μmとなるように電着塗装を施した。その後、腐食試験として、下記条件で塩水噴霧試験を行い、塗装後耐食性を評価した。
【0080】
引張試験
Si含有熱延酸洗鋼板から、圧延方向を引張方向とするJIS5号引張試験片を採取して、JISZ2241の規定に準拠して引張試験を行い、引張強さTSを求めた。
【0081】
Sa、Sdrの測定
Si含有熱延酸洗鋼板から試験片を採取し、表面を加速電圧5kVの条件で三次元走査電子顕微鏡によって100〜200倍で3視野観察し、鳥瞰図を求めるとともに、3視野の平均値として三次元パラメータSaおよびSdrを求めた。また、通常のSEM表面観察において明らかに窪んでいる部分を画像処理により抽出し、残りの部分を平坦部として面積率を評価した。結果を表3に示した。
【0082】
脱脂性評価
Si含有熱延酸洗鋼板について、メーカーで実施される脱脂性の評価も併せて行った。これは、一般に防錆油を塗布して出荷されたSi含有熱延酸洗鋼板に対して化成処理を実施するにあたって、アルカリ脱脂を行うが、この脱脂性が良好でないと、化成処理性も劣位となり、結果として化成処理皮膜のスケにより耐食性も確保できない場合があるためである。ここでは、Si含有熱延酸洗鋼板(幅30mm、長さ60mmの試験片)に対して、防錆油(パーカー興業製 ノックスラスト530F社製防錆油)を塗布した後、アルカリ脱脂液(日本パーカライジング社製 FC−E2011)に浸漬して脱脂後、60s間スプレー水洗し、試験片を30s垂直保持した後の水はじきの状態を目視で判断した。水はじき面積がおおよそ10%以上の場合を脱脂性不良(×)、5%以上10%未満の場合を△、5%未満の場合を脱脂性良好(○)と判断した。結果は表3に示した。
【0083】
化成処理
日本パーカライジング社製(PL−X)用いてTi系コロイド水溶液による表面調整処理を行い、同社製化成処理液(PB−L3065)を用いて、化成処理液の温度を40℃として、表2に示す化成処理時間の間、化成処理液に浸漬して化成処理を施した。
【0084】
塩水噴霧試験
塩水噴霧試験はJIS―Z2371に従って実施した。電着塗装を施した化成処理後の熱延鋼板に表面に、カッターで長さ45mmのクロスカット疵を施した後、35℃、5質量%のNaCl水溶液で720時間の塩水噴霧試験(SST試験)を行った。SST試験後は、クロスカット疵部に粘着テープを貼り付けた後、引き剥がすテープ剥離試験を行い、クロスカット疵部左右を合わせた最大剥離全幅を測定した。ここで、測定した剥離幅が2mm以下の場合、SST試験結果が適合であり、塗装後の耐食性に優れると判断した。また、測定した剥離幅が2mmを超えた場合に、SST試験結果が不適合であり、塗装後の耐食性に劣ると判断した。
【0085】
実施例1の結果について
以下検討結果について説明する。鋼板No.1−5、1−6は、FSB圧力が不足することから、展開面積比Sdrが11を超えた。また、これらの脱脂性は良好でなく、結果的に化成後耐食性が得られていない。
【0086】
鋼板No.2−3は、鋼板No.1−5、1−6と同様にFSB圧力が不足し、平均振幅、展開面積比ともに発明範囲を外れており、脱脂性は確保できておらず、耐食性が劣位である。
【0087】
鋼板No.3−5、4−2は、鋼板No.1−5、1−6と同様にFSB圧力が不足し、Sa及びSdrの少なくとも一方が、本発明範囲をはずれ、脱脂性が良好でなく、結果的に化成後耐食性が確保できない。
【0088】
その他の鋼板については、デスケーリング条件と酸洗条件が適正であり、Sa及びSdrを本発明範囲に制御できているため、脱脂性も良好であり、耐食性が安定して得られている。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【実施例2】
【0092】
実施例1で製造したSi含有熱延酸洗鋼板の一部(表4に示すもの)を用い、更に表5に示すような追加の酸洗もしくは鋼板表面研削を実施した。その後、実施例1と同様の評価を行った。結果を表5に示した。
【0093】
表3で不適であったものも含め、Sa及びSdrが本発明範囲内になり、脱脂性の改善と最終的なSST試験結果は良好であることが確認できた。
【0094】
【表4】
【0095】
【表5】
【実施例3】
【0096】
表6に示す成分組成を有する鋼素材を用いて、表7に示す条件で、実施例1と同様にSi含有熱延酸洗鋼板を製造した。また、実施例1と同様の評価を行い、評価結果を表8に示した。
【0097】
本発明例は、Sa及びSdrを本発明範囲に制御できているため、脱脂性が良好であり、耐食性も安定しているとともに、MoやVを特定量含有するため、引張強度が顕著に高い。
【0098】
【表6】
【0099】
【表7】
【0100】
【表8】