特許第6241477号(P6241477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6241477鉛フリーはんだボール及び鉛フリーはんだボールの検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241477
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】鉛フリーはんだボール及び鉛フリーはんだボールの検査方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/26 20060101AFI20171127BHJP
   C22C 13/00 20060101ALI20171127BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   B23K35/26 310A
   C22C13/00
   G01N21/956 B
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-512227(P2015-512227)
(86)(22)【出願日】2013年4月16日
(86)【国際出願番号】JP2013061321
(87)【国際公開番号】WO2014170963
(87)【国際公開日】20141023
【審査請求日】2015年8月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000199197
【氏名又は名称】千住金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔
(74)【代理人】
【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】立花 賢
(72)【発明者】
【氏名】立花 芳恵
(72)【発明者】
【氏名】奥野 哲也
【審査官】 川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/131861(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/133598(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/081006(WO,A1)
【文献】 特開2006−120695(JP,A)
【文献】 特開2004−154865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/00−35/40
C22C 13/00−13/02
G01N 21/956
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Sn−Ag―Cu系のはんだボールであって、はんだボール表面の最大表面粗さが0.5〜8μmで、均一なつや消し状態の表面を有し、
前記はんだボールは、Agが1.2〜2.0質量%、Cuが0.3〜1.0質量%、Niが0.02〜0.08質量%、残Snからなる、但し、12.5≦Cu/Ni≦100の関係を満たすものを除くはんだ組成であることを特徴とすることを特徴とする鉛フリーはんだボ−ル。
【請求項2】
Sn−Ag―Cu系のはんだボールであって、はんだボール表面の最大表面粗さが0.5〜8μmで、均一なつや消し状態の表面を有し、前記はんだボールは、Agが1.2〜2.0質量%、Cuが0.3〜1.0質量%、Niが0.02〜0.08質量%、P又はGeから選択される元素1種以上を合計で0.05質量%以下、残Snからなる、但し、12.5≦Cu/Ni≦100の関係を満たすものを除くはんだ組成であることを特徴とする鉛フリーはんだボール。
【請求項3】
Sn−Ag―Cu系のはんだボールであって、はんだボール表面の最大表面粗さが0.5〜8μmで、均一なつや消し状態の表面を有し、前記はんだボールは、Agが1.2〜2.0質量%、Cuが0.3〜1.0質量%、Niが0.02〜0.08質量%、Fe、Co、Ptから選択される元素1種以上を合計で0.003〜0.1質量%、残Snからなる、但し、12.5≦Cu/Ni≦100の関係を満たすものを除くはんだ組成であることを特徴とする鉛フリーはんだボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学検査性に優れた鉛フリーはんだボールに関するものであり、その鉛フリーはんだボールを使用する光学検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器用の半導体のプリント基板への配線用の電極は、従来は銅や42アロイなどでできたリードフレームタイプが用いられてきたが、電子機器の小型化と半導体の演算速度の向上の目的から、半導体の下にはんだボールで電極が形成されるBGA(Ball Grid Array)タイプが主流となってきている。BGAタイプの半導体には、BGA、CSPなどが含まれる。
BGAタイプの半導体のプリント基板実装の問題点として、はんだ接合部分が目視では見えないことと、個々の端子の接合強度が測れないことがある。例えば、従来面実装用に用いられたPLCCなどの半導体では、プリント基板のランドと半導体のリードフレームをはんだペーストなどで接合するが、その接合部分は検査時に目視や拡大鏡などではんだ付けの良否が判断できても、BGAタイプの半導体では半導体の裏面に電極があるので、はんだ接合部分が半導体に隠れて、はんだ付けの良否が判別できない。
【0003】
また、従来のPLCCなどのリードフレームで基板に接合させる半導体は、目視や拡大鏡での検査で疑義があるときには、ピンセットなどで引っ張り、リードの接合状態を実際に確認することができるが、BGAタイプの半導体では、個々のはんだボールの接合状態を確認する方法がないため、もっぱら実装前のボール電極部分を光学式の検査装置を用いて、BGAの全ての電極部分にはんだボールが存在しているか、はんだボールに異物の付着やはんだボール形状に異常が見られないか、を確認している。
同じ不具合でも、BGAの電極部分のはんだボールの欠落は、プリント基板に実装後に実施する通電による回路テストで発見できる。しかし、はんだボール電極部分への異物の付着やはんだボール形状の異常による不具合は、はんだ付けがなされるので実装後に実施する通電による回路テストでは、不具合は発見されない。したがって、プリント基板を実装する電子機器メーカは、はんだボール電極部分への 異物の付着やはんだボール形状の異常による不具合を重要視しており、可能な限り光学式の検査装置の検査によって不具合を無くす努力をしている。
【0004】
ところが、はんだボールに異物の付着がないか、はんだボール形状に異常が見られないか、の確認を厳しく行うと、従来のSn−Pbはんだボールでは問題にならないことが、鉛フリーはんだボールでは発生している。つまり、従来のSn−Pbはんだボールは全体に光沢があり、光沢ムラなどは発生しないが、現在使用されているSn−Ag−Cu系の鉛フリーはんだボールでは、光沢ムラが発生し易いため、はんだボール表面の異物の付着や形状異常などを重点的に弾くために、光学式検査装置の感度を強くすると、不具合品でないBGAタイプの半導体まで、不具合として判定してしまい、ラインをストップさせて生産性を悪くしてしまう。光学式検査装置の感度を弱くすると、はんだボール電極部分への異物の付着した物やはんだボール形状の異常な物までも、不具合として判断させないために、市場クレームとなってしまう。
【0005】
このような、はんだボールの光沢ムラを解消したはんだボールとして、本出願人はAg4.0〜6.0質量%、Cu1.0〜2.0質量%、残部Snからなるとともに、表面状態が良好となっている鉛フリーはんだボール(特開2003−1481号公報、特許文献1)や原子%で、Ag:3〜6%、Cu:1〜4%、Co:0.01〜2%、Sn:残部からなる鉛フリーはんだボール用合金(特開2004−154865号公報、特許文献2)、を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−1481号公報
【特許文献2】特開2004−154865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
BGAタイプの半導体では、はんだ付け部が半導体の下面に隠れてしまうので目視での確認ができないため、光学式検査装置を用いて、電極のはんだボールの欠落、はんだボール表面の異物の付着、はんだボール形状の異常などを確認している。
従来のSn−Pbはんだのはんだボールを使用しているときは、はんだボール全体に光沢があり、不具合品でない限り光学式検査装置でエラーが発生することがなかったが、鉛フリーはんだボールへの切り替えによって、光沢ムラが発生するようになり、不具合品でなくとも光学式検査装置でエラーと認識される問題が生じるようになった。特に、鉛フリーはんだとして一般的に使用されているSn−Ag−Cu系のはんだでは、はんだボール表面にSnのデンドライド状の結晶が成長して、はんだボール表面に凹凸が発生し易い。
【0008】
これらを解決したのが、特許文献1や特許文献2のはんだボールである。特許文献1や特許文献2のはんだボールの特徴は、Sn−Ag共晶組成よりもAgを飽和状態にすることで光沢性に優れたはんだボールを提供することである。特許文献2などでは、特許文献1の発明にCoを添加することで、Snのデンドライドの成長を阻害して、より光沢性に優れたはんだボールが開示されている。特許文献1や特許文献2のはんだボールは、光沢性を有するはんだボールとしては非常に優れている特性を有する。
ところが、特許文献1や特許文献2のような、Sn−Pbはんだボールと同様の光沢があるはんだボールを求めても、Snのデンドライドの成長をコントロールすることは難しく、同じロットであるにも関わらず、部分的にデンドライドが成長してはんだボール表面に凹凸が発生してしまう傾向がある。このような鉛フリーはんだボールは、光学式検査装置で、はんだボールの異物付着と判断されて、作業工程が停止することがあった。
【0009】
鉛フリーはんだボールとしてSn−Ag−Cu系のはんだ組成のはんだボールは、温度サイクル特性に優れており、接合後のシェア強度などの接合強度も優れているが、凝固時にSnのデンドライド結晶が成長し易く、はんだボール表面に凹凸が生じ易い。そのために、はんだボールとして良品でもはんだボール表面に凹凸があると、光学式検査装置にかけると不具合品と判定されてしまい、作業工程が停止することがあった。
本発明が解決しようとする課題は、光学式検査性に優れ、はんだボール表面にデンドライドの成長による凹凸がなく、均一なつや消し状態であるはんだボール表面を有する鉛フリーはんだボールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、Sn−Ag−Cu系を含むSn−Ag系の鉛フリーはんだボールのデンドライド結晶の成長をコントロールすることは、同じロット内でもバラツキが生じてしまい非常に困難なことから、発想を転換して、はんだボール表面を均一なつや消し状態にすることが、はんだボール表面を均一な光沢状態にするよりも容易であること、Sn−Ag系はんだのAgの量を共晶点より低下させると、Snのデンドライドの発生をコントロールできる量の範囲が存在すること、そして、表面の最大表面粗さが0.5〜8μmの鉛フリーはんだボールが、光学式検査装置で均一なつや消し状態のボール表面であると判定されること、を見い出して本発明を完成した。
【0011】
ここに、本発明は次の通りである。
(1)本発明は、Agが0.7〜2.0質量%、Cuが0.3〜1.0質量%、Niが0.02〜0.08質量%、残Snからなるはんだ組成のはんだボールであって、はんだボール表面の最大表面粗さが0.5〜8μmであることを特徴とする鉛フリーはんだボールである。
(2)前記はんだ組成に、P又はGeから選択される元素1種以上を合計で0.05質量%以下添加したはんだ組成のはんだボールであることを特徴とする請求項1に記載の鉛フリーはんだボール。
(3)前記はんだ組成に、Fe、Co、Ptから選択される元素1種以上を合計で0.003〜0.1質量%添加したことを特徴とする請求項1に記載の鉛フリーはんだボール。(4)鉛フリーはんだボールの表面が均一なつや消し状態であるはんだボールを用いて、光学式検査装置ではんだボールの良否を判定することを特徴とするはんだボールの検査方法。
【0012】
本発明の鉛フリーはんだボールは、光沢が全く無く、均一なつや消し状態の表面を有することが特徴である。光学式検査装置は、その合格基準として光度を調整するために、表面状態が光沢又は非光沢のどちらか一方に基準を合わせることができるようになっているものが一般的である。しかし、表面状態に光沢と非光沢の両方が混在していると認識装置の基準を設定することができないため、はんだの表面が光沢又は非光沢のどちらかに統一させなければならない。はんだボール表面の状態が均一で有りさえすれば、非光沢のつや消しタイプのはんだボール向けに基準を調整することは容易である。そのために、均一なはんだボール表面のつや消し状態が得られるかが課題となる。
本発明の鉛フリーはんだボールでは、はんだボール表面を均一なつや消し状態としているが、均一なつや消し状態とは、はんだボール表面に微少な凹凸を付けて、はんだボール本来の金属光沢を消した状態である。光学式検査装置で、はんだボールがつや消しと認識されるには、はんだボール表面の最大表面粗さが0.5〜8μmであるときが、最も認識性が良好である。つまり、鉛フリーはんだボール表面の最大表面粗さが均一なつや消し状態であるのは、光学式検査装置の検査方法において、はんだボール表面の最大表面粗さが0.5〜8μmであるときと規定できる。
【0013】
本発明の鉛フリーはんだボールでは、Agの量を規定することで鉛フリーはんだボールのデンドライド結晶の成長をコントロールして、急激なデンドライド結晶の発生を抑制している。また、本発明の鉛フリーはんだボールの合金組成に添加されているCuやNiは、はんだ組成中に金属間化合物を生成させることによって、デンドライド結晶の成長を分断して、はんだボール表面の凹凸を均一化させている。さらに、はんだボールのはんだ組成へのCuの添加は、温度サイクル特性の向上やシェア強度の向上をもたらし、Niの添加は耐落下衝撃性の向上をもたらす。
【発明の効果】
【0014】
本発明の鉛フリーはんだボールを用いることによって、光学式検査装置にかけると不具合品と判定されることもないため、作業工程が停止せず、効率の良い電子機器の組み立て作業が可能となる。また、従来の鉛フリーはんだボールと異なり、良品、不具合品の判定が容易にできるため、半導体部品の選別が容易になる。さらに、はんだボールとして供給している時点からつや消し状態になっているため、半導体の組み立て工程でのはんだボールの認識も容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】光学式検査装置でつや消しと認識されたはんだボールの表面(倍率約1000倍)
図2】光学式検査装置でつや消しと認識されなかったはんだボールの表面(倍率約1000倍)
図3図1の拡大図(倍率約500倍)
図4図2の拡大図(倍率約500倍)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の非光沢で均一なつや消し状態の表面を有する鉛フリーはんだボールは、BGA等のパッケージ部品へのバンプ形成に用いるのが好ましい。
【0017】
本発明に係る鉛フリーはんだボールの合金組成は以下の通りである。
Agの含有量は0.7〜2.0質量%である。Agの含有量が0.7質量%未満又は2.0質量%を超えると、凝固時の固相―液相共存領域が十分に得られず凝固時の挙動が変化し、デンドライト結晶の成長が発生しやすくなり、つや消しの部分的なムラが生じる。したがって、本発明のはんだボール用の合金は、Agの含有量が0.7〜2.0質量%が良い。より好ましくは、1.0〜1.5質量%である。
【0018】
Cuの含有量は0.3〜1.0質量%である。Cuの含有量が0.3質量%未満では、Snのデンドライド結晶が成長し、はんだボールの表面の凹凸にムラが生じる。また、Cuの含有量が1.0質量%を超えると、液相線温度が上がり、濡れ性が悪くなる。したがって、本発明のはんだボール用の合金は、Cuの含有量が0.3〜1.0質量%が良い。より好ましくは、0.5〜1.0質量%である。
【0019】
Niの含有量は0.02〜0.08質量%である。Ni量が本発明の組成範囲内で適量に調整されたときには、NiはCuと一緒に添加されることにより、SnとCuとNiの化合物を形成し、その形成した化合物がはんだ組織中に分散して存在することによりSnのデンドライド結晶の成長を妨げる役割を果たす。Niの含有量が0.02質量%未満では、上記の効果が発揮されない。結果的に、Snデンドライト結晶の成長に起因した表面状態の不均一な凹凸状態を防ぐことが出来る。
一方、Niの含有量が0.08質量%を超えると、液相線温度が上がり、濡れ性が悪くなる。したがって、本発明のはんだボール用の合金は、Niの含有量が0.2〜0.08質量%が良い。より好ましくは、0.05〜0.08質量%である。
【0020】
本発明に係る鉛フリーはんだボールの合金組成には、さらに、P又はGeから選択される元素1種以上を合計で0.05質量%以下添加してもよい。はんだボールはモジュール基板に搭載された後、画像認識によってはんだ付けされているか否かの判定が行われる。もし、はんだボールに黄色などの変色があった場合は、画像認識において不具合と判断される。そのため、はんだボールはリフローで変色されない方がよい。P又はGeのはんだボール用の合金への添加により、熱などによる変色を防止することで、バンプ品質検査におけるエラーを回避することができる。P又はGeから選択される元素が0.05質量%を超えて添加すると、耐落下衝撃性が悪くなるという弊害が現れる。
【0021】
本発明に係る鉛フリーはんだボールの合金組成には、さらに、Fe、Co、Ptから選択される元素1種以上を合計で0.003〜0.1質量%添加してもよい。Fe、Co、Pt元素のはんだボール用の合金への添加は、接合界面に形成する金属間化合物層を微細化し、厚みを抑制するため、落下改善の効果がある。Fe、Co、Ptから選択される元素が0.003質量%未満では上記の効果が極めて得られ難く、0.1質量%を超えて添加するとはんだの濡れ性が向上する。はんだバンプ高度が上昇し衝撃に対し界面剥離が発生するという弊害が現れる。
【0022】
光学式検査装置において、その合格基準を非光沢に合わせた場合に、本発明のはんだボール表面で、最大表面粗さが0.5μm未満では、光沢として認識されてエラーが生じる。また、8μmを超えると、はんだボール表面に引け巣が生じ、凹凸にムラが生じ易い。したがって、本発明のはんだボール表面の表面粗さは、0.5〜8μmが良い。より好ましくは、2〜6μmである。
【0023】
なお、本発明に係る鉛フリーはんだボールは、低α線材を使用することによりα線量を低減することができる。これをメモリ周辺に使用することによりソフトエラーを防止することができる。
【実施例】
【0024】
表1の組成のはんだ合金を作り、気中造球法で直径0.3mmのはんだボールを作製した。このはんだボールを用いて、はんだボールの表面状態と最大表面粗さと検査機での認識不具合率を評価した。
【0025】
表面粗さの測定には、KEYENCE社製のカラー3Dレーザー顕微鏡VK−9700を使用し、倍率約1000倍ではんだボール表面を5点測定し、各組成における表面最大粗さの値を比較した。
【0026】
検査機での認識不具合率は、KEYENCE社製のカラー3Dレーザー顕微鏡VK−9700を使用し、球状として判断されなかったのものを認識不具合と判断し、認識不具合の発生率を集計した。
【0027】
前記の表1に示すはんだ合金、直径0.3mmのはんだボールを基板厚みが1.2mm、電極の大きさが直径0.24mmであるガラスエポキシ基板(FR-4)を用い、0.24mmφ×厚み0.1mmに千住金属工業株式会社製フラックスWF-6400を印刷し、はんだボールを搭載して220℃以上、40秒、ピーク温度245℃の条件でリフローを行った。このサンプルを、せん断強度測定装置(Dage社製 : SERIES 4000HS)により、4000mm/secの条件でせん断強度(N)を測定した。
【0028】
前記の表1に示すはんだ合金、直径0.3mmのはんだボールを0.24mm × 16mmのスリット状の電極を形成した厚み1.2mmガラスエポキシ基板(FR-4)を用い、0.24mmφ×厚み0.1mmに千住金属工業株式会社製フラックスWF-6400を印刷し、はんだボールを搭載して220℃以上、40秒、ピーク温度245℃の条件でリフローを行った。その後、実体顕微鏡を用いて、濡れ広がり面積をJIS Z−3197に準じて測定した。
【0029】
【表1】
【0030】
表1より、本発明の範囲内の合金組成である実施例1〜16では、最大表面粗さが2.6〜5.3μmで、実施例5の図1及びその拡大図の図3が示すとおり、はんだボール表面に均一な凹凸が形成されており、検査機での認識不具合率は0.02〜0.15%と低く、光学式検査性に優れている。
【0031】
比較例17〜30では、比較例23の図2及びその拡大図の図4が示すとおり引け巣が生じて、最大表面粗さは平均約10μm以上であり、検査機での認識不具合率は平均約1%である。これは、認識不具合率が平均約0.1%である実施例1〜16と比較して約10倍高い。
【0032】
Cu量が本発明の範囲外である比較例25は、最大表面粗さが6.8μm、検査機での認識不具合は0.14%であるが、Cuの含有量が多いため液相線温度が高く、濡れ広がり率が0.34mm2であり、BGAタイプの半導体に対しては、はんだ付け性が悪く使用することができない。
【0033】
結論として、Agが0.7〜2.0質量%、Cuが0.3〜1.0質量%、Niが0.02〜0.08質量%、残Snからなるはんだ組成のはんだボールであって、はんだボール表面の最大表面粗さが0.5〜8μmであることを特徴とする鉛フリーはんだボールにおいて、はんだボール表面に均一なつや消し状態で、優れた光学式検査性を得られる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明のはんだボール表面の最大表面粗さが0.5〜8μmであることを特徴とする鉛フリーはんだは、光沢が全く無く、均一なつや消し状態の表面を有し、光学式検査性に優れているため、電子機器の小型化と半導体の演算速度の向上の目的から、半導体の下にはんだボールで電極が形成されるBGA(Ball Grid Array)タイプの用途で使用される電子部品に適する接合材料であるが、他にも従来のBGAタイプの電子部品と比較し、より薄く小さいサイズで仕様を満たすことが可能なウェハーレベルCSP(Chip Scale Package)に使用して優れた効果を奏するものである。
図1
図2
図3
図4