(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記立体障害性フェノールがトリエチレングリコール−ビス−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネートである請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリジオキソランの製造方法。
カチオン性触媒がヘテロポリ酸、イソポリ酸、パーフルオロアルキルスルホン酸及びこれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、カチオン性触媒の存在量が全モノマーに対する質量比で10〜1000ppmである請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリジオキソランの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
また、特に断らない限り、「ppm」は質量基準である。
【0011】
本発明は、式(1)で示される1,3−ジオキソラン化合物をモノマーとしてカチオン重合するポリジオキソランの製造方法であって、該1,3−ジオキソラン化合物、カチオン性触媒及び立体障害性フェノールを混合しながら重合反応することを特徴とする。
すなわち、本発明のポリジオキソランの製造方法は、式(1)で示される1,3−ジオキソラン化合物を、カチオン性触媒と、1,3−ジオキソラン化合物に対して10〜1500ppmの立体障害性フェノールとの存在下で重合する工程を含む。
【0012】
モノマーとして用いられる式(1)で示される1,3−ジオキソラン化合物は、無置換の1,3−ジオキソランを代表に、アルキル基、アリール基、ヒドロキシアルキル基、アルキルオキシ基又はアリールオキシ基などの有機基が置換した化合物である。
【0013】
アルキル基としては炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられ、炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。アリール基としては炭素数6〜10のアリール基が挙げられ、フェニル基が好ましい。
アルキル基及びアリール基は更に置換基を有していてもよい。置換基としては、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子などが挙げられる。アルキル基及びアリール基が置換基を有する場合、その置換数は例えば1〜4であり、好ましくは1〜2である。
【0014】
ヒドロキシアルキル基としては、少なくとも1つのヒドキシ基を有する炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のヒドロキシアルキル基が挙げられ、少なくとも1つのヒドロキシ基を有する炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましい。
アルキルオキシ基におけるアルキル基は上記と同様である。アリールオキシ基におけるアリール基は上記と同様である。
【0015】
式(1)におけるR1〜R6から選択される任意の2つは互いに結合して環を形成してもよい。環を形成する場合、形成される環は3〜6員の脂肪族環であることが好ましく、5〜6員の脂肪族環であることがより好ましい。
【0016】
R1〜R6のうち、少なくとも1個は水素原子であることが好ましく、4個以上が水素原子であることがより好ましい。
【0017】
式(1)で示される1,3−ジオキソラン化合物として具体的には、無置換の1,3−ジオキソラン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、2−エチル−1,3−ジオキソラン、2−プロピル−1,3−ジオキソラン、2−ブチル−1,3−ジオキソラン、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、2−フェニル−2−メチル−1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、2,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン、2−エチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソラン、2,2,4−トリメチル−1,3−ジオキソラン、4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン、4−ブチルオキシメチル−1,3−ジオキソラン、4−フェノキシメチル−1,3−ジオキソラン、4−クロルメチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサビシクロ[3.4.0]ノナン、が例示され、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
これらの中でも、無置換の1,3−ジオキソランが好ましく、重合したポリジオキソランの分子量が十分高く、結晶性を低くできる利点が有る。
【0018】
ポリジオキソランの製造方法においては、式(1)で示される1,3−ジオキソラン化合物を1種単独でも、2種以上組合せて用いてもよい。1,3−ジオキソラン化合物を2種以上用いる場合、無置換の1,3−ジオキソランとそれとは異なり置換基を有する他の1,3−ジオキソラン化合物とを組合せることが好ましい。
無置換の1,3−ジオキソランと他の1,3−ジオキソラン化合物とを組合せて用いる場合、その比率は特に制限されず、目的等に応じて適宜選択することができる。
【0019】
ポリジオキソランの製造方法においては、必要に応じて式(1)で示される1,3−ジオキソラン化合物以外のその他のモノマーを併用してもよい。その他のモノマーとしては、ホルムアルデヒドのみからなる環状三量体であるトリオキサン、環状四量体であるテトラオキソカン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、エピクロルヒドリン、スチレンオキシド、オキシタン、オキセタン、テトラヒドロフラン、およびオキセパンなどを挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
その他のモノマーを用いる場合、式(1)で示される1,3−ジオキソラン化合物以外のモノマーの割合は、式(1)で示される1,3−ジオキソラン化合物100質量部に対して、好ましくは100質量部未満、更に好ましくは20質量部未満である。
【0020】
ポリジオキソランの製造方法に用いる式(1)で示される1,3−ジオキソラン化合物は不純物を含んでいてもよい。式(1)で示される1,3−ジオキソラン化合物中に含まれ得る水、ギ酸、メタノール、ホルムアルデヒド等の不純物は、製造する際に不可避的に発生するものであり、不純物の総量は、式(1)で示される1,3−ジオキソラン化合物中100ppm以下であることが好ましく、より好ましくは70ppm以下、最も好ましくは50ppm以下である。
【0021】
カチオン性触媒は1,3−ジオキソラン化合物をカチオン重合可能な化合物であれば特に制限されず、通常用いられるカチオン性触媒から適宜選択して用いることができる。カチオン性触媒は、ヘテロポリ酸、イソポリ酸、パーフルオロアルキルスルホン酸及びこれらの誘導体などの超強酸からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
ヘテロポリ酸としては例えば、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、リンタングストバナジン酸、ケイモリブデン酸、ケイタングステン酸、ケイモリブドタングステン酸、ケイモリブドタングストバナジン酸等が挙げられる。中でも好ましいのは、リンモリブデン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸及びケイタングステン酸からなる群から選択される少なくとも1種である。また、ヘテロポリ酸のプロトンの一部が、ナトリウム、カリウム、セシウムやルビジウムなどの金属カチオン;脂肪族基又は芳香族基を有していてもよいアンモニウムイオンなどのカチオンに置き換わった形の酸性塩も用いることができ、上記ヘテロポリ酸には、これらの酸性塩も含まれる。
また、ヘテロポリ酸は、一般にα0型、βII型、βIV型が知られているが、重合活性の点でα0型、βIV型が好ましく、特に好ましくはα0型である。
イソポリ酸としては例えば、イソポリモリブデン酸塩、イソポリタングステン酸塩、イソポリバナジン酸塩等の塩溶液をイオン交換樹脂で処理する方法や、濃縮した溶液に鉱酸を加えてエーテル抽出する方法等、各種の方法により調製されるプロトン酸等が挙げられる。これらとしては、例えばパラタングステン酸、メタタングステン酸等の如きイソポリタングステン酸、パラモリブデン酸、メタモリブデン酸等の如きイソポリモリブデン酸、メタポリバナジン酸等の如きイソポリバナジン酸などが挙げられる。更に、これらイソポリ酸のプロトンの一部が、ナトリウム、カリウム、セシウムやルビジウムなどの金属カチオン;脂肪族基又は芳香族基を有していてもよいアンモニウムイオンなどのカチオンに置き換わった形の酸性塩も用いることができ、上記イソポリ酸には、これらの酸性塩も含まれる。
パーフルオロアルキルスルホン酸としては、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ウンデカンフルオロペンタンスルホン酸、パーフルオロヘプタンスルホン酸等が挙げられる。また、パーフルオロアルキルスルホン酸無水物も用いることができる。パーフルオロアルキルスルホン酸無水物の具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、ペンタフルオロエタンスルホン酸無水物、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸無水物等が挙げられる、更に、パーフルオロアルキルスルホン酸誘導体も使用できる。パーフルオロアルキルスルホン酸誘導体の具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸メチル、トリフルオロメタンスルホン酸エチル、ペンタフルオロエタンスルホン酸メチル、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸メチル等のパーフルオロアルキルスルホン酸エステルを挙げることができる。
これらの中でもヘテロポリ酸の1つであるリンタングステン酸が好適に用いられる。
カチオン性触媒は1種単独でも、2種以上を組合せて用いてもよい。
カチオン性触媒の使用量としては全モノマーに対する質量比で10〜1000ppmであることが好ましく、より好ましくは20〜500ppmであり、さらに好ましくは20〜300ppmであり、特に好ましくは20〜100ppmである。
【0022】
カチオン性触媒は単独あるいは溶液の形で重合器に添加されることが好ましい。溶液で使用される場合、溶媒としては、それぞれ重合に悪影響がなく、触媒が可溶の不活性有機溶媒であるエーテル類、エステル類、ケトン類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類などが挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。また原料モノマーである式(1)で示される1,3−ジオキソラン化合物を溶媒として用いてもよい。カチオン性触媒は重合機入口でカチオン性触媒単独あるいはその溶液として添加することが好ましい。
【0023】
立体障害性フェノールとしては、例えばジブチルヒドロキシトルエン、トリエチレングリコール−ビス−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、3,9−ビス{2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル〕プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド〕、3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシベンゼンプロピオン酸1,6−ヘキサンジイルエステル等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。これらの中でもジブチルヒドロキシトルエン、トリエチレングリコール−ビス−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート及び3,9−ビス{2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル〕プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンからなる群から選択される少なくとも1種がより好ましく、トリエチレングリコール−ビス−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネートが最も好適に使用される。
立体障害性フェノールは1種単独でも、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0024】
立体障害性フェノールの使用量としては、式(1)で示される1,3−ジオキソラン化合物に対して質量基準で、10〜1500ppmであり、好ましくは10〜1000ppmであり、より好ましくは50〜1000ppmであり、さらに好ましくは100〜1000ppmであり、特に好ましくは200〜800ppmである。この範囲より少ないと添加による分子量増大の効果が充分に得られない場合があり、逆に多い場合には反応速度の低下を引き起こす場合がある。
この立体障害性フェノールの添加による高分子量化の効果は、上述の通りカチオン性触媒を10〜1000ppmの範囲で用いる系においてより高く得られる。すなわち、カチオン性触媒に対する立体障害性フェノールの質量比(立体障害性フェノール/カチオン性触媒)は、0.1〜100が好ましく、より好ましくは1〜80であり、さらに好ましくは10〜50である。
【0025】
立体障害性フェノールは単独あるいは溶液の形で重合器に添加されることが好ましい。溶液で使用される場合、溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メチレンジクロライド、エチレンジクロライド等のハロゲン化炭化水素などが挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。また原料モノマーである式(1)で示される1,3−ジオキソラン化合物を溶媒として用いてもよい。重合反応中の立体障害性フェノールの活性を保つために、重合機入口で立体障害性フェノール単独あるいはその溶液を添加することが望ましい。
【0026】
重合工程は、式(1)で示される1,3−ジオキソラン化合物等の原料が十分混合でき、開環重合がおきる条件を実現できれば特段の制限は無く、バッチ反応、連続反応などが適用できる。連続反応の場合には少なくとも2本の水平回転軸を有し、それらの回転軸にはスクリュー又はパドルが組み込まれた翼を有する混練機や、スタティックミキサー内部で重合を行うことが好適である。
【0027】
重合工程は窒素雰囲気のような不活性雰囲気下で行うことが好ましい。また溶媒の存在下に行う溶液重合も可能であるが、溶媒の回収コストが不要で立体障害性フェノールの効果がより大きい実質的に無溶媒下における塊状重合が好ましい。溶媒を使用する場合、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メチレンジクロライド、エチレンジクロライド等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。なお、実質的に無溶媒とは、溶媒の添加量が原料モノマーに対して5質量%以下であることを意味し、1質量%以下であることが好ましい。
【0028】
重合時間は、通常1〜120分であるが、好ましくは1〜60分であり、より好ましくは1〜30分である。重合時間が120分以下であれば生産性が向上し、1分以上であれば重合収率が向上する。
重合温度が高すぎる場合には解重合により分子量の低下を来す可能性があることから、0〜100℃が好ましい。0℃以上であれば十分な重合収率となる。
【0029】
重合工程における圧力は、常圧から加圧の範囲で行うのが好ましく、通常常圧〜2MPaの範囲である。系内の温度が上昇し、ジオキソラン化合物の沸点を越えるとこれが蒸発してロスすることにあるため、常圧の場合にはコンデンサーを設けて内部還流させるか、100℃においてもジオキソラン化合物が液を保持する圧力まで加圧することで、効率的に重合反応を進めることが好ましい。
本発明によれば、立体障害性フェノールを添加しない場合に比べて容易に高分子量化することが可能である。
【0030】
重合工程においては系内を混合することが好ましい。混合する方法としては回転する羽根、翼、パドルなども用いた機械的な撹拌や、スタティックミキサーのような連続的に流動しながら静的に混合する方法を用いることができる。系内が充分に混合されない場合、重合反応の進行による分子量の増大に伴い系内の粘度が上昇し、反応活性点へのモノマーの供給が拡散律速により不十分となり、反応速度が低下する場合がある。また蓄熱により暴走的に反応が進行し、系内の温度が高くなりすぎて逆に分子量の低下を来す場合がある。
【0031】
重合工程の後には重合反応を停止する工程を設けることが好ましい。
重合反応の停止は、例えば、重合停止剤を反応生成物と接触させることにより行う。重合停止剤はそのまま、あるいは溶液、懸濁液の形態で使用できる。接触方法は連続的に少量の重合停止剤、重合停止剤の溶液、懸濁液を反応系中に添加し、接触させることが好ましい。接触に際しては撹拌により接触効率を高めることが好ましい。
【0032】
重合停止剤としては、3価の有機リン化合物、有機アミン化合物、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物などが例示され、これらからなる群から選択される少なくとも1種を好ましく使用できる。重合停止剤として用いられる有機アミン化合物としては、一級、二級、三級の脂肪族アミンや芳香族アミン、ヘテロ環アミン等が挙げられる。具体的には、例えば、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノ−n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、N,N−ジメチルブチルアミン、アニリン、ジフェニルアミン、ピリジン、ピペリジン、モルホリン、メラミン、メチロールメラミン、各種ヒンダードアミン類等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を好ましく用いることができる。
3価の有機リン化合物としては、トリブチルホスフィン、トリ−t−ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等のトリアルキルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン等のトリアリールホスフィンなどが挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を好ましく用いることができる。
【0033】
これら例示される重合停止剤の中でも3価の有機リン化合物および三級アミンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。3価の有機リン化合物の中で、特に好ましい化合物は熱的に安定でかつ熱による成形品の着色弊害を及ぼさないトリフェニルホスフィンである。3級アミンの中で、特に好ましい化合物はトリエチルアミンおよびN,N−ジメチルブチルアミンである。
【0034】
重合停止剤の使用量は、使用触媒のモル数に対して、通常0.01〜500倍モル、好ましくは0.05〜100倍モルである。
重合停止剤を溶液、懸濁液の形態で使用する場合、使用される溶剤は特に限定されるものではない。例えば、水、アルコール、原料モノマー、コモノマー、アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチレンジクロライド、エチレンジクロライド等の脂肪族または芳香族の各種有機溶媒が挙げられる。これらは、混合して使用することも可能である。
【0035】
得られたポリジオキソランに対して、必要に応じて酸化防止剤、熱安定剤、着色剤、核剤、蛍光増白剤、又は滑剤、離型剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、他の熱可塑性樹脂、無機充填剤などを添加してもよい。その添加は、重合反応の停止以降で添加されることが好ましく、その方法はバッチ式、連続式を問わない。
【実施例】
【0036】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下に示す実施例に制限されるものではない。
【0037】
<実施例1〜5、比較例1〜5>
重合装置としてジャケットと2枚のZ型翼を有する内容積1Lの卓上型二軸混練機を用い、バッチ式の重合により重合を実施した。ジャケットに50℃温水を循環させ、さらに内部を高温空気で加熱乾燥した後、蓋を取り付けて系内を窒素置換した。原料投入口より純度99.5%以上、水分が50ppm未満の1,3−ジオキソラン300g、立体障害性フェノールとしてトリエチレングリコール−ビス−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネートを所定量仕込み、Z型翼によって撹拌しながら、所定量のリンタングステン酸(和光純薬工業社製試薬)を添加し重合を開始した。所定時間重合させたのち、使用した触媒量の10倍モル量に相当するトリエチルアミンを重合装置内に添加し、15分間混合して重合を停止した。得られた重合物を回収し、40℃で1日間真空燥して収率を求めた。数平均分子量はポリスチレンを標準物質とし、テトラヒドロフランを溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて測定した。その結果を併せて表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1から、式(1)で示される1,3−ジオキソラン化合物を原料モノマーとし、立体障害性フェノールの存在下、カチオン性触媒を用いてポリジオキソランを製造することにより、同じ反応時間であっても高い数平均分子量のポリエーテル系重合体を得ることが可能となることが分かる。
【0040】
<実施例6〜10、比較例6〜7>
カチオン性触媒の添加量をほぼ一定とし、立体障害性フェノールの種類及び添加量を下表に記載したように変更した以外は、同様にしてポリジオキソランを製造した。反応条件と結果を、実施例2と比較例2の結果と併せて表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
表2中の略号は以下のとおりである。
a:トリエチレングリコール−ビス−3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート
b:ペンタエリスリチル−テトラキス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート
c:ジブチルヒドロキシトルエン
d:フェノール
【0043】
表2から、式(1)で示される1,3−ジオキソラン化合物を原料モノマーとし、所定量の立体障害性フェノールの存在下、カチオン性触媒を用いてポリジオキソランを製造することにより、高い数平均分子量のポリエーテル系重合体を得ることが可能となることが分かる。また、立体障害性フェノールの代わりに単純なフェノールを用いた場合には、本発明の効果が得られないことが分かる。
【0044】
日本国特許出願2013−146635号の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。