(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記硫黄加硫可能なエラストマー100質量部に対し、前記カーボンブラックおよび/または白色充填剤を1〜120質量部、前記3次元架橋構造を有する微粒子を1〜50質量部配合してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
前記官能基が、ヒドロキシル基、イソシアネート基、アミノ基、グリシジル基、シラノール基、アルコキシシリル基、ビニル基、(メタ)アクロイル基からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
前記3次元架橋構造を有する微粒子の架橋構造が、水、有機溶剤、非反応性溶媒および前記硫黄加硫可能なエラストマーからなる群から選ばれる少なくとも1つの分散媒中で、前記官能基が前記重合体間を架橋してなる架橋構造であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
前記3次元架橋構造を有する微粒子が、前記カーボンブラックおよび/または白色充填剤の少なくとも1部、および/または他の有機微粒子を含む複合物であることを特徴とする請求項4に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(i)硫黄加硫可能なエラストマー
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、ゴム成分は硫黄加硫可能なエラストマーであり、その主鎖に炭素炭素二重結合を有するエラストマーである。硫黄加硫可能なエラストマーとしては、例えば天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR),塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)、クロロプレンゴム(CR)等を例示することができ、単独又は任意のブレンドとして使用することができる。またエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、スチレンイソプレンゴム、スチレンイソプレンブタジエンゴム、イソプレンブタジエンゴムなどのオレフィン系ゴムを配合することもできる。なかでも硫黄加硫可能なエラストマーとして天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴムが好ましい。
【0013】
(ii)カーボンブラックおよび/または白色充填剤
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、カーボンブラックおよび/または白色充填剤を含有する。カーボンブラックおよび/または白色充填剤と共に、上述した3次元架橋構造を有する微粒子を配合することにより、タイヤ用ゴム組成物の引張り応力および反発弾性率をより優れたものにすることができる。
【0014】
カーボンブラックとしては、例えばSAF、ISAF、HAF、FEF、GPE、SRF等のファーネスカーボンブラックが挙げられ、これらを単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0015】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N
2SA)は、特に制限されるものではないが
、好ましくは10〜300m
2/g、より好ましくは20〜200m
2/g、さらに好ましくは50〜150m
2/gであるとよい。本明細書において、窒素吸着比表面積は、JI
S K6217−2に準拠して測定するものとする。
【0016】
白色充填剤としては、例えばシリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸カルシウム等が挙げられ、なかでもシリカが好ましい。これら白色充填剤は、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0017】
シリカとしては、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、なかでも湿式シリカが好ましい。これらシリカは、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。
【0018】
タイヤ用ゴム組成物に配合するシリカは、CTAB吸着比表面積が好ましくは50〜300m
2/g、より好ましくは70〜250m
2/g、さらに好ましくは90〜200m
2
/gであるとよい。シリカのCTAB吸着比表面積は、JIS K6217−3に準拠して測定するものとする。
【0019】
本発明においては、上記カーボンブラックおよび/または白色充填剤の配合量は、硫黄加硫可能なエラストマー100質量部に対して、カーボンブラックおよび白色充填剤の合計で、好ましくは1〜120質量部、より好ましくは5〜110質量部、さらに好ましくは10〜100質量部であるとよい。
【0020】
タイヤ用ゴム組成物にシリカを配合するとき、シリカと共にシランカップリング剤を配合することにより、硫黄加硫可能なエラストマーに対するシリカの分散性を改良することができ好ましい。シランカップリング剤の配合量は、シリカの配合量に対し、好ましくは3〜15質量%、より好ましくは4〜10質量%にするとよい。シランカップリング剤の配合量が3質量%未満であると、シリカの分散性を十分に改良することができない。また、シランカップリング剤の配合量が15質量%を超えると、シランカップリング剤同士が凝集・縮合してしまい、所望の効果を得ることができなくなる。
【0021】
シランカップリング剤の種類としては、特に制限されるものではないが、硫黄含有シランカップリング剤が好ましい。硫黄含有シランカップリング剤としては、例えばビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジサルファイド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラサルファイド、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン等を例示することができる。
【0022】
(iii)3次元架橋構造を有する微粒子
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上述した硫黄加硫可能なエラストマーに3次元架橋構造を有する微粒子を配合する。この微粒子を配合することにより、タイヤ用ゴム組成物の引張り破断強度や引張り破断伸度の低下を抑制しながら、引張り応力および反発弾性率を従来レベル以上に向上することができる。
【0023】
3次元架橋構造を有する微粒子の配合量は、硫黄加硫可能なエラストマー100質量部に対し好ましくは1〜50質量部、より好ましくは2〜40質量部、さらに好ましくは4〜30質量部である。3次元架橋構造を有する微粒子の配合量が1質量部未満であると引張り応力および反発弾性率を改良する作用が十分に得られない。また3次元架橋構造を有する微粒子の配合量が50質量部を超えるとタイヤ用ゴム組成物のコストが高くなる。
【0024】
本発明において、3次元架橋構造を有する微粒子の平均粒径は、好ましくは0.001〜100μm、より好ましくは0.002〜20μm、さらに好ましくは0.005〜5μm、とりわけ好ましくは0.01〜1μmである。3次元架橋構造を有する微粒子の平均粒径が0.001μm未満であると硫黄加硫可能なエラストマーへの分散性が低下する。また3次元架橋構造を有する微粒子の平均粒径が100μmを超えると引張り応力および反発弾性率を十分に改良することができない。本明細書において平均粒径は、レーザー顕微鏡を用いて測定した円相当径の平均値をいう。例えば、レーザー回折散乱式粒子径分布測定装置LA−300(堀場製作所社製)、レーザー顕微鏡VK−8710(キーエンス社製)を用いて測定することができる。
【0025】
3次元架橋構造を有する微粒子は、チオール基を
有し、任意に2以上の硫黄原子からなるスルフィド結合を主鎖に有するオリゴマーまたはプレポリマーからなる重合体を3次元架橋させてなる微粒子である。
【0026】
2以上の硫黄原子からなるスルフィド結合は、ジスルフィド結合、トリスルフィド結合、テトラスルフィド結合等の2以上の硫黄原子が連結した結合である(以下、「ポリスルフィド結合」ということがある。)このポリスルフィド結合を主鎖に有するオリゴマーまたはプレポリマーとは、液状ポリスルフィドポリマー、ジスルフィド結合を有するポリエーテル、あるいはポリスルフィドポリマーとポリエーテルのブロック重合体などが例示される。また、2分子のチオール化合物の酸化によって、ジスルフィド結合を有する1分子の化合物とすることも可能である。さらに、テトラスルフィド結合を有する化合物としては、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドや、ベンズイミダゾリル系のテトラスルフィド化合物や、或いはテトラスルフィド系シランカップリング剤等が例示され、特に、テトラスルフィド系シランカップリング剤は、そのシラノール縮合による変性を行うことで、各種のオリゴマーまたはプレポリマーに付加することも可能である。またチオール基を有するオリゴマーまたはプレポリマーは、その分子鎖の末端または側鎖にチオール基を有しており、例えばアルキルメルカプタンやメルカプトシラン等のモノメルカプト化合物や、多官能チオール化合物のメルカプト基を有する重合体などをあげることができる。なお、これらポリスルフィド結合およびチオール基は、3次元架橋構造を有する微粒子を構成する共重合体の架橋に関与してもよい。
【0027】
チオール基を
有し、任意にスルフィド結合を有するオリゴマーまたはプレポリマーは、ポリスルフィド結合およびチオール基以外の官能基を更に有し、これらの官能基が架橋に関与し介在することにより3次元架橋構造を形成する。
【0028】
オリゴマーおよびプレポリマーが有するチオール基以外の官能基は、そのモノマー由来の官能基でも、重合体に導入した官能基でもよい。官能基の種類としては、例えばカルボキシル基、エポキシ基、グリシジル基、アシル基、ビニル基、(メタ)アクロイル基、酸無水物基、ヒドロキシル基、シラノール基、アルコキシシリル基、アミノ基、イソシアネート基等を好適に例示することができる。より好ましくは、ヒドロキシル基、イソシアネート基、アミノ基、グリシジル基、シラノール基、アルコキシシリル基、ビニル基、(メタ)アクロイル基からなる群から選ばれる少なくとも1つであるとよい。
【0029】
これらオリゴマーおよびプレポリマーが有する官能基は、3次元架橋構造を有する微粒子を構成する重合体を相互に結合する架橋構造の少なくとも一部を構成する。架橋構造は、上記の官能基が隣接する重合体同士を直接結びつけるものでもよいし、別に添加される架橋剤に作用して架橋構造を形成してもよい。
【0030】
本発明において、上述したオリゴマーおよびプレポリマーの数平均分子量は好ましくは500〜20000、より好ましくは500〜15000、さらに好ましくは1000〜10000である。オリゴマーおよびプレポリマーの数平均分子量が500未満であるとタイヤ用ゴム組成物の物性を十分に向上することができない。またオリゴマーおよびプレポリマーの数平均分子量が20000を超えると微粒子を形成するとき粒子径の調整が困難になる。本明細書において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算により測定するものとする。
【0031】
タイヤ用ゴム組成物に配合する3次元架橋構造を有する微粒子は、水、有機溶剤、非反応性溶媒または硫黄加硫可能なエラストマーからなる分散媒中で
、チオール基
、任意にポリスルフィド結合、並びに官能基を有するオリゴマーまたはプレポリマーを付加した重合体を、官能基を用いて架橋させることにより、或いはこれらの分散媒体中でオリゴマーまたはプレポリマーを付加して重合体としこれを架橋させることにより形成された微粒子である。
【0032】
3次元架橋構造を有する微粒子を調製するとき、オリゴマーおよびプレポリマーの官能基が、水、有機溶剤または非反応性溶媒からなる分散媒中で、結合すべき重合体間を架橋させることにより、架橋構造を形成するとよい。
【0033】
または3次元架橋構造を有する微粒子を調製するとき、オリゴマーおよびプレポリマーの官能基が、ゴム成分からなる分散媒中で、結合すべきセグメント間を架橋させることにより、架橋構造を形成するとよい。ここで分散媒にするゴム成分が、タイヤ用ゴム組成物を組成する硫黄加硫可能なエラストマーの少なくとも1部と同じ種類にすることができる。
【0034】
このとき硫黄加硫可能なエラストマーと共に、カーボンブラックおよび/または白色充填剤の少なくとも1部および/または他の有機微粒子を共存させることにより、カーボンブラック、白色充填剤、他の有機微粒子から選ばれる少なくとも1つと3次元架橋構造を有する微粒子との複合物を得ることができる。このような複合微粒子をタイヤ用ゴム組成物に配合することにより、3次元架橋構造を有する微粒子を配合したときと同様に、引張り破断強度や引張り破断伸度の低下を抑制しながら、引張り応力および反発弾性率を従来レベル以上に向上することができる。
【0035】
本発明において、架橋には、上記官能基のほか、架橋触媒、架橋剤、溶媒(分散媒)を用いることができる。架橋触媒および架橋剤は、官能基の種類に応じて適宜選ぶことができる。分散媒としては、水、有機溶剤、非反応性溶媒、硫黄加硫可能なエラストマーが好ましい。このような分散媒としては、例えば水、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,2−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、3−エチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン、n−オクタン、イソオクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環式炭化水素;キシレン、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素;α−ピネン、β−ピネン、リモネンなどのテルペン系有機溶剤等を例示することができる。
【0036】
また上記架橋には、必要に応じ界面活性剤、乳化剤、分散剤、シランカップリング剤等の配合剤を用いることができる。
【0037】
タイヤ用ゴム組成物は、加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤、ゴム補強剤、軟化剤(可塑剤)、老化防止剤、加工助剤、活性剤、金型離型剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤、増粘剤等の工業用タイヤ用ゴム組成物に通常用いられる配合剤を添加することができる。これらの配合剤は本発明の目的に反しない限り、通常用いられる配合量を適用することができ、また通常の調製方法で添加、混練又は混合することができる。
【0038】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、空気入りタイヤのトレッド部、サイドウォール部を構成することができる。なかでもタイヤトレッド部を構成するのが好ましい。本発明のタイヤ用ゴム組成物をこれらの部位に使用した空気入りタイヤは、タイヤ耐久性能を従来レベル以上に向上することが出来る。
【0039】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
製造例1(微粒子1の製造)
液状ポリサルファイドポリマー(東レファインケミカル社製チオコールLP−3、分子末端がチオール基で、主鎖にジスルフィド結合を有する繰り返し単位からなるセグメントを有するオリゴマーで、数平均分子量が1000)100gとSRF級カーボンブラック(旭カーボン社製旭#500)20gと亜鉛華(正同化学工業社製酸化亜鉛3種)5g、パラキノンジオキシム(大内新興化学工業社製バルノックGM‐P(GM))8g、ジフェニルグアニジン(大内新興化学工業社製ノクセラーD(D−P))2gを混合した。次いでこれを水200gとソルビタン酸系界面活性剤(花王社製、TW−O320V)10gとを混合した混合液に投入し、高速ディゾルバー式攪拌機に投入し、回転数1000rpmで10分間攪拌した。その後70℃に昇温して、攪拌速度を500rpmに落として10時間攪拌を継続した。その後、徐々に減圧していき、最終的に水を蒸発させた微粒子含有化合物を得た。レーザー顕微鏡で観察すると、5μ前後の球状微粒子が生成し含まれていることが確認された。これを微粒子1とする。
【0041】
製造例2(微粒子2の製造)
メチルエチルケトン(MEK、試薬)15gにジメチロールブタン酸(DMBA、試薬)8.5g、トリエチルアミン(TEA、試薬)5gを混合して溶解させた。これに、官能基として水酸基を有し、且つ主鎖にジスルフィド結合を有するオリゴマー(大都産業製SULBRID12、数平均分子量が2500)100gとキシリレンジイソシアネート(三井化学社製タケネート500)20gを投入し混合した。これに、水300gとソルビタン酸系界面活性剤(花王社製TW−0320V)20gを投入し、高速ディゾルバー式攪拌機に投入し、回転数1000rpmで10分間攪拌した。その後60℃に昇温し、回転速度を500rpmまで落として3時間攪拌を継続した。その後、徐々に減圧していき、最終的に水を蒸発させ、最終的に微粒子含有化合物を得た。レーザー顕微鏡で観察すると、1〜10μm前後の球状微粒子が含まれていることが確認された。これを微粒子2とする。
【0042】
製造例3(微粒子3の製造)
二酸化マンガン(試薬)50gとフタル酸ジブチル(DBP、試薬)50gの二酸化マンガンペーストを作製した。液状ポリサルファイドポリマー(東レファインケミカル社製チオコールLP−3、分子末端がメルカプト基で、主鎖にジスルフィド結合を有する繰り返し単位からなるセグメントを有するオリゴマーで、数平均分子量が1000)100gとヒュームドシリカ(日本アエロジル社製アエロジル200)5gと、先に作製しておいた二酸化マンガンペースト10gを混合した。これを水200gとソルビタン酸系界面活性剤(花王社製TW−O320V)10gとを混合した混合液に投入し、高速ディゾルバー式攪拌機に投入し、回転数1000rpmで10分間攪拌した。攪拌速度を500rpmに落として10時間攪拌を継続した。その後、徐々に減圧していき、最終的に水を蒸発させた微粒子含有化合物を得た。これをレーザー顕微鏡で観察すると、10μ前後の球状微粒子が生成し含まれていることが確認された。これを微粒子3とする。
【0043】
製造例4(微粒子4の製造)
ポリカーボネートジオール(旭化成社製T6001、数平均分子量が1000)200gと、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業製ミリオネートMT、数平均分子量が250)100gとを、80℃で5時間反応させ、末端イソシアネートポリカーボネートウレタンプレポリマー(反応物1)を得た。次いで、得られたウレタンプレポリマー(反応物1)44gに、メチルイソブチルケトン(MIBK、試薬)3.5g、ジメチロールブタン酸(DMBA、試薬)2.0g、および、トリエチルアミン(TEA、試薬)1.5gを混合し、10分間撹拌した。次いで、水77gとソルビタン酸系界面活性剤(花王社製TW−0320V)4.0gとジブチルチンジラウレート(DBTL、試薬)0.06gとを投入し、ディゾルバー付き撹拌装置で、ディゾルバー
回転数1000rpmで10分間撹拌した。その後、70℃まで徐々に昇温し、1時間撹拌を続け、乳白色エマルジョン溶液を得た。その後、徐々に減圧していき、最終的に水を蒸発させ、最終的に有機微粒子を得た。これをレーザー顕微鏡で観察すると、1〜5μm前後の球状微粒子が含まれていることが確認された。
【0044】
これとは別に、主鎖にジスルフィド結合を有するオリゴマー(大都産業製SULBRID12、数平均分子量が2500)100gとキシリレンジイソシアネート(三井化学社製タケネート500)20gと、メチルエチルケトン(MEK、試薬)15gにジメチロールブタン酸(DMBA、試薬)8.5g、トリエチルアミン(TEA、試薬)5gを混合して溶解させたものを投入し混合した。さらにこれに、先に作製した有機微粒子30gを投入し、高速ディゾルバー式攪拌機に投入し、回転数1000rpmで10分間攪拌した。その後60℃に昇温し、回転速度を500rpmまで落として3時間攪拌を継続した。その後、徐々に減圧していき、最終的に水を蒸発させ、最終的に微粒子含有化合物を得た。これをレーザー顕微鏡で観察すると、1〜20μm前後の球状微粒子が含まれていることが確認された。これを微粒子4とする。
【0045】
製造例5(微粒子5(比較微粒子)の製造)
ポリカーボネートジオール(旭化成製T6001、数平均分子量1000)200gと、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業製ミリオネートMT、数平均分子量250)100gとを、80℃で5時間反応させ、末端イソシアネートポリカーボネートウレタンプレポリマー(反応物2)を得た。
【0046】
次いで、得られた末端イソシアネートポリカーボネートウレタンプレポリマー(反応物2)132gに、メチルイソブチルケトン(MIBK)10.5g、ジメチロールブタン酸(DMBA)6.0g、および、トリエチルアミン(TEA)4.5gを混合し、10分間撹拌した。
【0047】
次いで、水250gとソルビタン酸系界面活性剤(TW−0320V、花王製)10.0gとジブチルチンジラウレート(DBTL)0.15gとを投入し、ディゾルバー付き撹拌装置で、ディゾルバー回転数1000rpmで10分間撹拌した。その後、70℃まで徐々に昇温し、1時間撹拌を続け、乳白色エマルジョン溶液を得た。その後、徐々に減圧していき、最終的に水を蒸発させ、最終的に微粒子含有化合物を得た。レーザー顕微鏡で観察すると、1〜20μm前後の球状微粒子が含まれていることが確認された。これを微粒子5(比較微粒子)とする。
【0048】
タイヤ用ゴム組成物の調製および評価
表1に示すゴム組成からなる6種類のタイヤ用ゴム組成物(実施例1〜4、標準例1、比較例1)について、それぞれ硫黄および加硫促進剤を除く配合成分を秤量し、1.7L密閉式バンバリーミキサーで5分間混練し、温度150℃でマスターバッチを放出し室温冷却した。その後このマスターバッチを加熱ロールに供し、硫黄および加硫促進剤を加えて混合し、6種類のタイヤ用ゴム組成物を調製した。なおSBRは油展品であるため括弧内に油展成分を除いたSBRの正味の量を記載した。得られた6種類のタイヤ用ゴム組成物を使用して、所定形状の金型中で、160℃、20分間加硫して加硫ゴムシートを作製し、下記の方法により、引張り試験を行い、引張り特性(引張り応力、引張り破断強度および引張り破断伸度)、反発弾性率および20℃のtanδを評価した。
【0049】
引張り試験
得られた加硫ゴムシートから、JIS K6251に準拠してJIS3号ダンベル型試験片を切り出した。得られた試験片用い、JIS K6251に準拠し100%変形時の引張り応力、300%変形時の引張り応力、引張り破断強度および引張り破断伸度を測定
した。また測定された100%変形時の引張り応力と引張り破断伸度の積を算出しこれを強靭性とした。得られた結果は、標準例1の値を100とする指数として表1に示した。いずれの指数も値が大きいほど、100%変形時の引張り応力、300%変形時の引張り応力、引張り破断強度、引張り破断伸度および強靭性が優れることを意味する。
【0050】
反発弾性率
得られた加硫ゴムシートを使用して、JIS K6255に準拠して、リュプケ式反発弾性試験装置により、温度40℃のときの反発弾性を測定した。得られた結果は、標準例1の値を100とする指数として表1に示した。この指数の値が高いほど反発弾性が大きく、空気入りタイヤにしたとき低燃費性に優れることを意味する。
【0051】
20℃のtanδ
得られた加硫ゴムシートの動的粘弾性を、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzで測定し、温度20℃におけるtanδを求めた。得られた結果は、標準例1の値を100とする指数にしてとして表1に示した。この指数が小さいほどtanδ(20℃)が大きく、空気入りタイヤにしたときグリップ性能が優れることを意味する。
【0052】
【表1】
【0053】
なお、表1で使用した原材料の種類を下記に示す。
・SBR:スチレンブタジエンゴム、商品名:タフデンE581(旭化成ケミカルズ社製)、SBR100質量部に対して油展オイル37.5質量部を添加した油展品
・BR:ブタジエンゴム、(Nipol1220、日本ゼオン社製)
・シリカ:Solvay社社製1165MP
・カーボンブラック:シーストN(東海カーボン社製)
・微粒子1〜4:上記製造例1〜4により得られた微粒子1〜4
・微粒子5:上記製造例5により得られた微粒子5(比較微粒子)
・シランカップリング剤:硫黄含有シランカップリング剤、エボニック デグッサ社製Si69
・亜鉛華:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・ステアリン酸:ビーズステアリン酸(日本油脂社製)
・老化防止剤:フレキシス社製サントフレックス6PPD
・硫黄:鶴見化学工業社製金華印微粉硫黄
・加硫促進剤1:大内新興化学工業社製ノクセラーCZ−G
・加硫促進剤2:三新化学工業社製サンセラーD−G
・オイル:エキストラクト4号S(昭和シェル石油社製)
【0054】
表1の結果から、実施例1〜4のタイヤ用ゴム組成物は、標準例1のタイヤ用ゴム組成物と比べ100%変形時の引張り応力、300%変形時の引張り応力、引張り破断強度、引張り破断伸度、反発弾性率およびtanδが優れることが認められた。
【0055】
比較例1のタイヤ用ゴム組成物は、実施例1〜4のタイヤ用ゴム組成物に比べ、また標準例1のタイヤ用ゴム組成物と比べても、破断強度、破断伸度合の低下が認められた。また、100%変形時の引張り応力、300%変形時の引張り応力、および反発弾性も低下していることが認められた。