特許第6241512号(P6241512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241512
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】カテーテル及びカテーテルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20171127BHJP
   A61M 25/098 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   A61M25/00 624
   A61M25/098
   A61M25/00 504
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-135245(P2016-135245)
(22)【出願日】2016年7月7日
(62)【分割の表示】特願2015-82975(P2015-82975)の分割
【原出願日】2010年11月9日
(65)【公開番号】特開2016-172180(P2016-172180A)
(43)【公開日】2016年9月29日
【審査請求日】2016年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】田中 速雄
(72)【発明者】
【氏名】兼政 賢一
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−147080(JP,A)
【文献】 特開2007−236472(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01741463(EP,A1)
【文献】 特開2002−253678(JP,A)
【文献】 特開平08−243168(JP,A)
【文献】 特表平08−508928(JP,A)
【文献】 特開2000−262626(JP,A)
【文献】 特開平08−257033(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0108974(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00−25/098
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料により形成された管状部材と、
前記管状部材よりも硬質な線材と、
を備え、
前記管状部材は、第1端と、第1外周面と、前記第1外周面よりも前記第1端から離れた第2外周面と、を有し、
前記管状部材の前記第1外周面は、溝を有し、
前記溝は、前記線材に覆われておらず、
前記溝は、前記第1外周面において、前記管状部材の長手方向に沿ってスパイラル状に延伸しており、
前記線材は、前記第2外周面において、前記管状部材の長手方向に沿ってスパイラル状に延伸しており、
前記溝は、前記第1外周面において、前記管状部材の長手方向に沿って第1のピッチで並ぶ第1巻き部を含み、
前記線材は、前記第2外周面において、前記管状部材の長手方向に沿って第2のピッチで並ぶ第2巻き部を含み、
前記第1のピッチは、前記第2のピッチよりも広いカテーテル。
【請求項2】
請求項1に記載のカテーテルにおいて、
前記管状部材は、前記第2外周面よりも前記第1端から離れた第3外周面を有し、
前記線材は、前記第3外周面において、前記管状部材の長手方向に沿ってスパイラル状に延伸しており、
前記線材は、前記第3外周面において、前記管状部材の長手方向に沿って第3のピッチで並ぶ第3巻き部を含み、
前記第3のピッチは、前記第2のピッチよりも狭いカテーテル。
【請求項3】
請求項2に記載のカテーテルにおいて、
記第2巻き部のうち互いに隣接する巻き同士は、互いに離間しているカテーテル。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のカテーテルにおいて、
記第3巻き部のうち互いに隣接する巻き同士は、互いに接しているカテーテル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のカテーテルにおいて、
X線不透過性の材料により形成されたマーカーを備え、
前記マーカーは、前記管状部材の前記第1外周面を囲んでいるカテーテル。
【請求項6】
カテーテルの製造方法であって、以下を含む:
(a)樹脂材料により形成され、第1端と、第1外周面と、前記第1外周面よりも前記第1端から離れた第2外周面と、を有する管状部材と、前記管状部材よりも硬質な線材と、を準備する工程;
(b)前記管状部材の前記第1外周面及び前記第2外周面に前記線材を巻く工程;ここで:
前記線材は、前記第1外周面及び前記第2外周面において、前記管状部材の長手方向に沿ってスパイラル状に延伸している;
前記線材は、前記第1外周面において、前記管状部材の長手方向に沿って第1のピッチで並ぶ第1巻き部を含む;
前記線材は、前記第2外周面において、前記管状部材の長手方向に沿って第2のピッチで並ぶ第2巻き部を含む;
前記第1のピッチは、前記第2のピッチよりも広い、
(c)前記第2外周面において前記線材の前記第2巻き部を残して前記第1外周面において前記線材の前記第1巻き部を除去する工程。
【請求項7】
請求項6に記載の方法、
ここで、前記(b)工程では、前記線材を前記管状部材の前記第1外周面に押し付けることにより前記管状部材の前記第1外周面に溝を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、遠位端部を屈曲させることにより体腔への進入方向を操作可能なカテーテルが提供されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1では、体腔内でのカテーテルの位置を確認しながら操作するため、カテーテルにX線不透過性の材料で形成したコイル状のマーカーを設けていることが記載されている。また、特許文献1では、カテーテルを補強するための補強層として、遠位端部付近まで金属素線をメッシュ状に編み込んだ編成体を配置するとともに、マーカーより近位端部側に、金属製のコイル体を配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−88833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、金属製のコイル体とマーカーとが当接しているため、X線でマーカーを確認する際に、マーカーとコイル体との区別が困難で、マーカーの位置が不明瞭で患者の体内のいずれまでカテーテルを挿入したか判別しにくいことがあった。また、このコイル体とマーカーとの当接により、カテーテルの先端の屈曲の際に、この屈曲の内側でマーカーがコイル先端に押しつけられて、互いに干渉し合うため、屈曲性が低下してカテーテルの自在な屈曲ができなくなることも考えられる。さらに、特許文献1では、編成体を含む内側樹脂層の外周にコイル状のマーカーを装着している。そのため、マーカーの内側への縮径力が高いと、内腔が内側方向に変形して平坦性が低下し、さらには、編成体が内側樹脂層に陥入するおそれがある。そのため、内腔内に凹凸が生じて、当該内腔内での薬液の円滑な流通が阻害される、ガイドワイヤーの挿通が阻害される、などの不具合を生じることがある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、カテーテルの先端を屈曲した際に、マーカーと補強層とが互いに干渉せず、円滑な屈曲を実現することが可能なカテーテルを提供することを目的とする。また、カテーテル全体の肉厚を低減(薄型化)するとともに、内腔の平坦化を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内部にメインルーメンを有する長尺の管状本体を備えるカテーテルであって、樹脂材料により形成された管状本体と、管状本体のメインルーメンの外周に、樹脂材料よりも硬質な材料で形成された補強層と、管状本体の遠位端側に装着されたマーカーと、を備え、マーカーが、補強層よりも管状本体の長手方向の遠位側に、当該補強層と離間して配置されている。
【0007】
本発明では、マーカーが、補強層よりもカテーテルの軸方向の前方、すなわち、遠位側に離間して設けられている。そのため、マーカーと補強層との区別が明確で、マーカー位置を確実に把握することができる。その結果、カテーテルの挿入位置を、より明確に把握できる。また、カテーテルを屈曲させる際に、マーカーと補強層とが当接するなど互いに干渉することがなく、カテーテルの円滑な屈曲が可能となる。また、補強層とマーカーとが長手方向に離間しているため、補強層とマーカーとが積層することがない。そのため、カテーテル全体の肉厚を低減することができる。また、このように補強層とマーカーとが積層していないことから、例えば、マーカーをカシメた際にも補強層が内腔側に押圧されて変形し、内腔内に突出するのを防止することができる。そのため、内腔の平坦化が可能となり、液体等の円滑な流通が可能となるとともに、カテーテルの円滑な屈曲をさらに向上できる。以上により、使用性に優れたカテーテルを提供することができる。
【0008】
また、本発明のカテーテルにおいて、管状本体は、内層と、外層と、を有し、補強層は、内層の外周表面にコイルを巻回して形成されたものであってもよい。
【0009】
また、本発明のカテーテルにおいて、補強層とマーカーとの長手方向の離間距離は、コイルを形成する線材の外径よりも少なくとも広いものであってもよい。
【0010】
また、本発明のカテーテルにおいて、補強層とマーカーとの長手方向の離間距離は、補強層の隣接するコイルの巻線間の近接縁間距離よりも広いものであってもよい。
【0011】
また、本発明のカテーテルにおいて、コイルは、遠位側に近くなるほど、隣接するコイルの巻線間の近接縁間距離が次第に大きくなるよう巻回したものであってもよい。
【0012】
また、本発明のカテーテルにおいて、マーカーは、補強層と同層に形成されたものであってもよい。
【0013】
また、本発明のカテーテルにおいて、マーカーは、X線不透過性の材料で形成されたものであってもよい。
【0014】
また、本発明のカテーテルにおいて、外層を有した環状本体の外層は、少なくとも1つのサブルーメンを有し、このサブルーメンは、内部に摺動可能に操作線が挿通され、操作線の近位端部を牽引することにより、管状本体の遠位端部が屈曲するものであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、マーカーが、補強層よりも管状本体の長手方向の遠位側に、当該補強層と離間して配置されているので、カテーテルの先端を屈曲した際に、マーカーと補強層とが互いに干渉せず、カテーテルの遠位端部の円滑な屈曲を実現することができる。さらには、マーカーと補強層とが離間していることで、双方が積層されていないため、カテーテル全体の肉厚を低減(薄型化)することができる。また、補強層とマーカーとが積層されていないため、例えば、マーカーをカシメた際にも補強層が内腔側に押圧されて変形し、内腔内に突出するのを防止することができる。そのため、カテーテルの内腔の平坦化を実現して、薬液の流通と屈曲等の操作とが円滑であるなど、カテーテルの使用性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施形態に係るカテーテルの先端部の側断面図である。
図2図1のX−X線断面図である。
図3図1のY−Y線断面図である。
図4】第1の実施形態に係るカテーテルのマーカーと補強層付近の一部拡大断面図である。
図5】第1の実施形態に係る補強層とマーカーとの形成工程の一部を示す図であって、(a)は内層の外側に、隣接するコイルの巻線間の近接縁間距離を変えてコイルを巻回した状態を示す模式図であり、(b)はマーカー装着予定部分のコイルを切断し除去することで、凹溝が形成された状態を示す模式図であり、(c)はコイルを除去した凹溝部分にマーカーを装着した状態を示す模式図である。
図6】第1の実施形態に係るカテーテルの全体を示す側面図と、先端部の屈曲例を示す側面図であって、(a)はカテーテルを屈曲する前の全体を示す側面図であり、(b)は先端を上方に屈曲させた状態を示す側面図であり、(c)は先端を下方に屈曲させた状態を示す側面図である。
図7】第2の実施形態に係るカテーテルの先端部の側断面図である。
図8】第2の実施形態に係るカテーテルの全体を示す側面図と、先端部の屈曲例を示す側面図であって、(a)はカテーテルを屈曲する前の全体を示す側面図であり、(b)はスライダを操作して先端を上方に屈曲させた状態を示す側面図であり、(c)はスライダを操作して先端を(b)よりも大きな曲率で上方に屈曲させた状態を示す側面図であり、(d)はスライダを操作して先端を下方に屈曲させた状態を示す側面図であり、(e)はスライダを操作して、先端を(d)よりも大きな曲率で下方に屈曲させた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0018】
〔第1の実施形態〕
図1は第1の実施形態に係るカテーテル100の管状本体10における先端部の側断面図である。図1の左方がカテーテル100の先端側(以下、「遠位端側DE」ともいう)にあたり、右方が手元側(以下、「基端部側」あるいは「近位端側CE」ともいう)にあたる。ただし、図1においてはカテーテル100の近位端側CEは図示を省略している。また、図2図1のX−X線断面図で、カテーテル100を補強層(コイル)30付近で切断した断面図である。図3図1のY−Y線断面図で、カテーテル100をマーカー40付近で切断した断面図である。図4は第1の実施形態に係るカテーテル100のマーカー40と補強層30との付近の一部拡大断面図であり、マーカー40と補強層30との位置関係を示している。また、マーカー40と内層11との間に、外層12の樹脂材料121が入り込んだ状態を示している。図5(a)は第1の実施形態に係る補強層30を、隣接するコイル31の巻線間の近接縁間距離(以下、「巻回ピッチ」ということがある)を変えて形成した図である。図5(b)は、マーカー40の装着予定部分のコイル31を切断し除去して凹溝112が形成された状態を示す。図5(c)は、コイル31を除去した凹溝112の位置であって補強層30と離間距離Bの位置に、マーカー40を装着した状態を示す側面図である。図6(a)は第1の実施形態に係るカテーテル100の全体側面図を示し、図6(b)および図6(c)は、カテーテル100の屈曲例を示す側面図である。
【0019】
本実施形態に係るカテーテル100は、図1図4等に示すように、樹脂材料により形成された管状本体10と、当該管状本体10内に、長手方向に沿って配設されたメインルーメン20と、このメインルーメン20の外周に、管状本体10を形成する樹脂材料(111、121)よりも硬質な材料で形成された補強層30と、管状本体10の遠位端側DEに装着されたマーカー40と、を備えている。このマーカー40は、補強層30よりも管状本体10の遠位端側DEに、当該補強層30と離間距離Bだけ離間して配置されている。
【0020】
以下、本実施形態のカテーテル100の構成について具体的に説明する。図1に示すように、本実施形態に係るカテーテル100の管状本体10は、樹脂材料111により形成された内層11と、この内層11とは同種または異種の樹脂材料121により形成されている樹脂材料121により形成された外層12とを有している。なお、内層11および外層12を含むカテーテル100の本体である管状本体10は、シースと呼ばれる。そして、内層11の外周表面に配置された補強層30は、本実施形態では、例えば、弾性体により構成された1本の線材を螺旋状に屈曲させたコイル31により形成されている。また、マーカー40は、X線不透過性の材料で形成されている。そのため、X線によりマーカー40の位置を確認することで、カテーテル100が患者の体内のいずれの位置まで挿入されたかがわかる。また、本実施形態では、マーカー40は、内層11の外周に、補強層30と離間して装着されている。そのため、マーカー40と補強層30とは、図1に示すように同層に形成されている。なお、同層に形成されているとは、管状本体10の径方向に観察した際に、マーカー40と補強層30との位置が一致する程度であることをいう。より具体的には、マーカー40の厚みと補強層30の厚みとの中心同士が一致しているか、または、マーカー40の厚みの中心が補強層30の厚み内にあり、かつ、補強層の厚みの中心がマーカー40の厚み内にあることをいう。したがって、マーカー40と補強層30とが積層することがなく、管状本体10が径方向に肉厚となることがない。また、後述するが、マーカー40を内層11の外周表面にカシメた場合でも、補強層30には影響がないため、補強層30とともに内層11が内腔側に変形する、陥入する、などの不具合がなく、メインルーメン20の平坦性を維持することができる。したがって、薬液の円滑な流通やガイドワイヤーの円滑な挿通が可能となる
【0021】
このように、マーカー40は、管状本体10の長手方向の遠位端側DEに、補強層30と離間距離Bだけ離間して配置されている。この離間距離Bは、X線によるマーカー40の検出の際に、マーカー40と補強層30との区別が明確に検出できれば、特に制限はなく、任意の距離とすることができる。好ましくは、離間距離Bを、コイル31を形成する線材の外径Dよりも少なくとも広くすることにより、補強層30とマーカー40とを、より明確に区別できる。より好ましくは、離間距離Bを、コイル31を巻回した際の隣接する当該コイル31の巻線間の近接縁間距離Aよりも広くすることにより、補強層30とマーカー40との区別がさらに明確となる。そのため、本実施形態では、図1または図4に示すように、離間距離Bを、コイル31の巻線間の近接縁間距離Aよりも広くしている。なお、より好ましくは、離間距離Bが近接縁間距離Aと外径Dとの和以上であってもよく、補強層30とマーカー40とをさらに明確に区別できる。ただし、離間距離Bが大きすぎると、管状本体10の離間距離B部分の剛性が低下することがある。しかし、その場合は、離間距離B部分にX線透過性の補強部材を配置するなどの対応により、剛性が低下することがなく、しかも補強層30とマーカー40との区別の妨げとなることがない。
【0022】
また、管状本体10の遠位端側DEにおける外層12の周囲には、管状本体10の最外層として、潤滑処理が外表面に施された親水性のコート層50が任意で設けられている。
【0023】
このような構成の管状本体10と、シリンジのコネクタ60とにより、第1の実施形態に係るカテーテル100が構成されている。このカテーテル100では、ガイドワイヤーの形状に追随して、図6(a)の直線的な形状から、図6(b)、図6(c)に示すように、管状本体10の遠位端部15側を、上下方向に自在に屈曲させることができる。
【0024】
ここで、カテーテル100の遠位端部15とは、カテーテル100の遠位端側DE(先端)を含む所定の長さの範囲をいう。なお、遠位端側DEは、管状本体10の遠位端でもある。また、カテーテル100の近位端部16とは、カテーテル100の近位端側CEを含む所定の長さの範囲をいう(図6参照)。同様に、管状本体10の遠位端部とは、遠位端側DEを含む所定の長さの範囲をいい、管状本体10の近位端部とは、管状本体10の近位端側PEを含む所定の長さの範囲をいう。
【0025】
ここで、カテーテル100が屈曲するとは、カテーテル100の中心軸(例えばメインルーメン20の中心軸)が直線以外(曲線状または折れ線状など)となるようにカテーテル100が変形する(曲がる)ことを意味する。
【0026】
上記内層11の材料としては、例えば、フッ素系の熱可塑性ポリマーを用いることができる。より具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)などを用いることができる。このように、内層11にフッ素系樹脂を用いることにより、カテーテル100のメインルーメン20を通じて造影剤や薬液などを患部に供給する際のデリバリー性が良好となる。
【0027】
上記外層12の材料としては、例えば、熱可塑性ポリマーを用いることができる。一例として、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)のほか、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、ナイロンエラストマー、ポリウレタン(PU)、エチレン−酢酸ビニル樹脂(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)またはポリプロピレン(PP)などを用いることができる。
【0028】
上記コート層50の材料としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)やポリビニルピロリドンなどの親水性の樹脂材料51を用いることができる。
【0029】
上記マーカー40の材料としては、例えば、白金などのX線不透過材料を用いることができる。
【0030】
また、上記補強層30を構成するコイル31には、金属製の線材を用いることが好ましい。しかし、本願がこれに限定されることはなく、内層11および外層12よりも高剛性で弾性を有する材質材料で形成されていれば、その他の材質(例えば樹脂等)を用いても良い。また、線材の金属材料として、具体的には、例えば、ステンレススチール(SUS)、ニッケルチタン系合金、鋼、チタン或いは銅合金を用いることができる。また、コイル31の断面形状は特に限定されないが、図1に示すように、円形であることが好ましい。
【0031】
また、本実施例では、上述のように、コイル31の巻回ピッチ、すなわち隣接するコイル31の巻線間の近接縁間距離が密巻き部32、狭間隔部33(近接縁間距離A)、広間隔部34(近接縁間距離C)と、次第に大きくなっているが、本願がこれに限定されることはない。例えば、コイル31の巻回ピッチが全長にわたって均一であってもよく、コイル31の巻回ピッチを変える手間を省くことができる。また、狭間隔部33を形成せずに、補強層30をすべて密巻き部32としてもよい。ただし、本実施形態のように、巻回ピッチを変えることにより、密巻き部32に比べ、狭間隔部33や広間隔部34を設けた遠位端側DEの柔軟性が向上する。さらに、広間隔部34が存在することにより、マーカー40の装着部を確保するためのコイル切断部位が分かり易い、などの利点がある。
【0032】
このようなコイル31で補強層30を形成することにより、カテーテル100はコシが強くなり、形態安定性を保つことができる。なお、本実施形態および以下の実施形態では、補強層30をコイル31で形成しているが、本願がこれに限定されることはなく、例えば、メッシュ素材で内層11を被覆する、メッシュ素材で形成された管体内に内層11を挿入する、などにより補強層30を形成してもよい。また、本実施形態では、コイル31を内層11に食い込ませて巻回しているが、内層に内包されていてもよい。また、コイル31の食い込み量は、内層11の内腔の平坦性を維持でき、かつ、コイル31の脱落を防止できる程度が好ましい。例えば、コイル31を形成する線材の外径の1/3〜1/2程度で食い込ませるのが好ましい。以上、カテーテル100の形成材料や形成方法は、コストや製作の容易さ、用途目的などを考慮して、適宜選択することができる。
【0033】
ここで、本実施形態のカテーテル100の代表的な寸法について説明する。まず、メインルーメン20の半径は200〜300μm程度とすることができる。内層11の厚さは10〜30μm程度、外層12の厚さは100〜220μm程度、補強層30の外径は直径500〜860μm、補強層30の内径は直径420〜660μmとすることができる。そして、カテーテル100の(管状本体10の)軸心からコート層50を含む最外半径を350〜490μm程度とすることができる。
【0034】
すなわち、本実施形態のカテーテル100の外径は直径1mm未満であり、腹腔動脈などの血管に挿通可能である。また、本実施形態のカテーテル100は、例えば、分岐する血管内においても所望の方向にカテーテル100を進入させることが可能である。
【0035】
次に、カテーテル100の製造工程の一例について説明する。まず、任意で表面に離型処理された円柱状のマンドレルに前述したような樹脂素材111を押出、または、ディスパージョン被覆成形して内層11を形成する。次に、図5(a)に示すように、内層11の周囲にコイル31を、上述したような巻回ピッチで巻回し、補強層30となる密巻き部32および近接縁間距離Aを介在した狭間隔部33、ならびに、近接縁間距離Cを介在した広間隔部34を形成する。この広間隔部34のコイル31は後に除去する。また、狭間隔部33と広間隔部34との間には、離間間隔Bを介在させている。次いで、図5(b)に示すように、狭間隔部33と広間隔部34との間でコイル31を切断し、広間隔部34のコイル31を除去する。このコイル31の切断手段としては、特に制限はなく、レーザー、バーナー、カッターなどの手段を用いて切断してもよいし、他のいずれの切断手段を用いてもよい。なお、コイル31は、メインルーメン20と略同軸に配置され、内層11に食い込ませることで内層11の外周表面に凹溝112が形成されるように巻回している。そのため、補強層30および内層11、マーカー40および内層11との密着性が向上する。
【0036】
そして、図5(c)に示すように、広間隔部(マーカー装着予定部)34からコイル31を除去して内層11の凹溝112が露出した部分に、X線等の放射線が透過不能な材料を用いたリング状のマーカー40を装着してカシメ固定する。なお、内層11へのマーカー40の固定は、カシメ固定に限定されることはなく、単に装着して、後述の外層12の樹脂材料121を凹溝112に充填することにより内層11に接着固定してもよいし、他のいずれの方法で形成してもよい。また、先に溶融した樹脂材料121をマーカー40の装着予定部分に塗布し、その外周にマーカー40を装着し、樹脂材料121の固化により固定してもよい。また、マーカー40は、リングに限らず、長手方向に補強層30と離間していれば、コイル状の部材で形成してもよいし、金属板などで形成してもよい。
【0037】
次いで、上記補強層30とマーカー40とを被覆するように、内層11の周囲に外層12を形成する。この外層12は、前述したような、内層11の樹脂材料111と同種または異種の樹脂材料121により形成されている。外層12は、樹脂材料121の押し出し成形により形成してもよい。しかし、本実施形態では、予め内層11の外径よりも内径が広い管状の外層12を形成し、この外層12を内層11の外周に装着する。さらに、その外周に図示しない熱収縮チューブを装着して加熱し、熱収縮チューブを熱収縮させることにより内層11と外層12とを密着させている。その後、熱収縮チューブを除去する。このような方法を用いることで、外層12の形成を容易にできる。また、熱収縮チューブの熱収縮時に、図4の拡大断面図に示すように、マーカー40と内層11との間、補強層30と内層11との間、すなわち、コイル31を巻回することによって形成された凹溝112内に、外層12の樹脂材料121が侵入し固化する。この樹脂材料121の介在により、マーカー40および補強層30と内層11との密着性が向上する。そして、外層12の周囲に、樹脂材料51の塗布や化学処理等をすることにより、コート層50を形成する。
【0038】
最後に、マンドレルを内層11から引き抜く。この際、必要に応じ、マンドレルの両端部を互いに逆方向に牽引することによってマンドレルを細径化する。このような工程により、メインルーメン20と、内層11と、外層12と、補強層30と、マーカー40と、コート層50と、を備える管状本体10を得ることができる。そして、この管状本体10とコネクタ60とを組み立てることにより、本実施形態のカテーテル100を製造することができる。
【0039】
次に、カテーテル100の屈曲例を説明する。本実施形態のカテーテル100は、例えば、血管にガイドワイヤーを挿通する。次に、このガイドワイヤーに追随するようにカテーテル100を血管に挿入することにより、受動的にカテーテル100を患部まで到達させることができる。また、ガイドワイヤーが屈曲している場合には、このガイドワイヤーの屈曲に追随して、図6(b)または図6(c)の側面図に示すように、カテーテル100の遠位端部15を屈曲させることができる。また、本実施形態のカテーテル100は、マーカー40と補強層30とを長手方向に離間させて配置しているため、X線等でマーカー40を明確に確認し易くなり、患者の体内で遠位端側DEがいずれの位置にあるか容易に確認できる。
【0040】
また、本実施形態に係るカテーテル100においては、弾性体により構成されたコイル31がメインルーメン20の周囲に巻回されている。そのため、ガイドワイヤーに追随してカテーテル100が屈曲する際に、コイル31にはその軸方向を曲げようとする外力が加わる。しかし、コイル31はその弾性的な反撥力によって、その外力に抗しようとする。このため、カテーテル100の急角度の折れ曲がりを抑制することができる。よって、メインルーメン20の急角度の折れ曲がりも抑制できる。これにより、メインルーメン20の内腔断面積を十分な大きさに維持できるため、メインルーメン20を介した薬剤等の供給や光学系の挿通などを好適に実施できる。
【0041】
また、本実施形態では、コイル31の巻回時に、隣接する巻き同士を密接させた密巻き部32と、この密巻き部32に連続して、遠位端側DEに、隣接する巻き同士に近接縁間距離Aを介在させた狭間隔部33を形成している。したがって、密巻き部32部分は、曲げ剛性が相対的に大きいために、さほど屈曲せずにほぼ軸方向が直線状に維持される。また、狭間隔部33では、曲げ剛性が相対的に小さいため屈曲性が良好で屈曲し易く、また、この屈曲状態を保持することができる。このため、コイル31の狭間隔部33では、ガイドワイヤーの屈曲に追随した遠位端部15の屈曲操作を容易に行うことができる。しかも、密巻き部32は隣接する巻き同士が当接しているので、カテーテル100を体腔内に押し込む際に、その押し込み力を、密巻き部32を介して狭間隔部33にまで有効に伝達させることができる。つまり、カテーテル100のプッシャビリティを向上できる。カテーテル100のプッシャビリティは、コイル31からなる補強層30がメインルーメン20の先端部から基端部にわたって延在していることにより、一層向上する。さらに、カテーテル100のプッシャビリティは、補強層30が狭間隔部33以外は密巻き部32となっていることにより、格段に向上する。
【0042】
以上のように、本実施形態では、マーカー40が補強層30よりも遠位端側DE側に長手方向に離間して配置されているので、カテーテル100の先端を屈曲した際に、マーカー40と補強層30とが互いに干渉せず、円滑な屈曲を実現することができる。さらには、カテーテル100全体の肉厚を低減(薄型化)し、かつ、メインルーメン20の内腔の平坦化を実現することができる。
【0043】
〔第2の実施形態〕
次に、第2の実施形態に係るカテーテルについて説明する。図7は、第2の実施形態に係るカテーテル200の管状本体210先端部(遠位端側DE)の側断面図である。図8は、第2の実施形態に係るカテーテル200の全体図と屈曲例の図である。図8(a)はカテーテル200を屈曲する前の全体を示す側面図である。図8(b)は後述するスライダ264aを操作して先端を上方に屈曲させた状態を示す側面図である。図8(c)はスライダ264aを操作して、先端を図8(b)よりも大きな曲率で上方に屈曲させた状態を示す側面図である。図8(d)はスライダ264bを操作して先端を下方に屈曲させた状態を示す側面図である。図8(e)はスライダ264bを操作して、先端を図8(d)よりも大きな曲率で下方に屈曲させた状態を示す側面図である。
【0044】
第2の実施形態のカテーテル200は、第1の実施形態に係るカテーテル100とほぼ同様の構成で、図7に示すように、樹脂材料2111製の内層211および樹脂材料2121製の外層212からなる管状本体210と、当該管状本体210内に、長手方向に沿って配設されたメインルーメン220と、このメインルーメン220の外周に、管状本体210を形成する樹脂材料よりも硬質な材料で形成されたコイル231を巻回した補強層230と、管状本体210の遠位端側DEに装着されたマーカー240と、を備えている。また、遠位端部215における外層212の周囲には、管状本体210の最外層として、潤滑処理が外表面に施された親水性の樹脂材料251製のコート層250が設けられている。
【0045】
なお、本実施形態においても、マーカー240は、補強層230よりも管状本体210の長手方向の遠位端側DEに、当該補強層230と離間して配置されている。また、第1の実施形態では、コイル31を内層11に食い込むように巻回して、凹溝112を形成していたが、第2の実施形態では、内層211には食い込ませずに巻回している。また、補強層230とマーカー240とは、同層に形成しているが、本実施形態では、補強層230は、マーカー240よりも、内側に配置している。そして、第1の実施形態とは異なる構成として、補強層230の外側に、サブルーメン280が設けられている。このサブルーメン280は、図7に示すように、外層212内に設けられ、メインルーメン220よりも小径で、カテーテル200の長手方向に延在する中空として形成されている。すなわち、サブルーメン280は、メインルーメン220の周囲に配設されている。
【0046】
ここで、サブルーメン280の本数は任意であるが、本実施形態のカテーテル200は、2本のサブルーメン280を有している。複数本のサブルーメン280を有する場合は、これらサブルーメン280をメインルーメン220の軸周りにおいて分散して配置する。本実施形態のようにカテーテル200が2本のサブルーメン280を備える場合は、図7のようにサブルーメン280をメインルーメン220の周囲に180度間隔で配置することが好ましい。なお、カテーテル200は3本以上のサブルーメン280を有していてもよい。例えば3本のサブルーメン280を有する場合は、サブルーメン280をメインルーメン220の周囲に120度間隔で配置することが好ましい。
【0047】
サブルーメン280は、少なくとも管状本体210の近位端側CE、具体的には、例えば、図8に示すように、管状本体210の近位端側PEにおいて開口している。なお、管状本体210の近位端側PEよりも遠位端側DEにおいて開口していてもよい。各サブルーメン280には、それぞれ操作線270が挿通され、且つ、各操作線270がサブルーメン280に対して摺動可能となっている。
【0048】
また、操作線270の先端は、カテーテル200の遠位端部215に固定されている。操作線270の遠位端を遠位端部215に固定する態様は特に限定されない。例えば、図7に示すように、操作線270の先端(遠位端271)をマーカー240に連結しても良いし、遠位端部215におけるマーカー240以外の部分に溶着しても良いし、または接着剤によりマーカー240または管状本体210の遠位端部215に接着固定してもよい。
【0049】
操作線270は、管状本体210の遠位端部から近位端部216にわたってサブルーメン280内を導かれている。操作線270の近位端(図示せず)は、管状本体210の近位端PEにおけるサブルーメン280の開口より導出され、後述する操作部260のスライダ264a、264bに固定されている。
【0050】
操作線270の近位端を牽引する方向(つまり図8の紙面右方向)に操作部260のスライダ264を操作する。すると、操作線270を介してカテーテル200の遠位端部215に引張力が与えられて、当該操作線270が挿通されたサブルーメン280の側に遠位端部215が屈曲する。ただし、操作線270の近位端をカテーテル200に対して押し込む方向(つまり図8の紙面左方向)に操作部260のスライダ264を操作しても、当該操作線270から遠位端部215に対して押込力が実質的に与えられることはない。
【0051】
なお、操作線270を挿通するサブルーメン280をメインルーメン220と外径方向に離間して設けることにより、メインルーメン220を通じて薬剤等を供給したり光学系を挿通したりする際に、これらがサブルーメン280に脱漏しないようにすることができる。そして、本実施形態のようにサブルーメン280を補強層230の外側に設けることにより、摺動する操作線270に対して、補強層230の内側、すなわちメインルーメン220が保護される。
【0052】
ここで、操作線270をサブルーメン280に挿通する方法としては、例えば、予めサブルーメン280が形成されたカテーテル200の管状本体210に対して、その一端側から操作線270を挿通してもよい。または、管状本体210の押出成形時に、樹脂材料とともに操作線270を押し出してサブルーメン280の内部に挿通してもよい。
【0053】
操作線270を樹脂材料とともに押し出してサブルーメン280に挿通する場合、操作線270には、管状本体210を構成する樹脂材料の溶融温度以上の耐熱性が求められる。かかる操作線270の場合、具体的な材料としては、たとえば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、PIもしくはPTFEなどの高分子ファイバー、または、ステンレススチール(SUS)、耐腐食性被覆した鋼鉄線、チタンもしくはチタン合金などの金属線を用いることができる。
【0054】
一方、予め成形された管状本体210のサブルーメン280に対して操作線270を挿通する場合など、操作線270に耐熱性が求められない場合は、上記各材料に加えて、PVDF、高密度ポリエチレン(HDPE)またはポリエステルなどを使用することもできる。
【0055】
ここで、本実施形態のカテーテル200の代表的な寸法について説明する。メインルーメン220の半径は200〜300μm程度、内層211の厚さは10〜30μm程度、外層212の厚さは100〜220μm程度、補強層230の外径は直径500〜860μm、補強層230の内径は直径420〜660μmとすることができる。そして、カテーテル200の(管状本体210の)軸心からサブルーメン280の中心までの半径は300〜450μm程度、サブルーメン280の内径は40〜100μmとすることができ、操作線270の太さは30〜60μmとすることができる。そして、カテーテル200の(管状本体210の)最外半径を350〜490μm程度とすることができる。
【0056】
すなわち、本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、カテーテル200の外径は直径1mm未満であり、腹腔動脈などの血管に挿通可能である。また、本実施形態のカテーテル200に関しては、操作線270の牽引により進行方向が自在に操作されるため、たとえば分岐する血管内においても所望の方向にカテーテル200を進入させることが可能である。
【0057】
図8に示すように、カテーテル200の近位端部216には、操作部260が備えられている。本実施形態の操作部260は、カテーテル200の長手方向に延在する軸部261と、軸部261に対してカテーテル200の長手方向にそれぞれ進退するスライダ264(例えば、第1および第2スライダ264a、264b)と、軸部261と一体に該軸部261の軸周りに回転するハンドル部262と、管状本体210の基端部が軸周りに回転可能に差し込まれた把持部263とを備えている。管状本体210の近位端側PEは、軸部261に固定されている。操作部260のスライダ264に対し、複数本の操作線270をそれぞれ個別に、または二本以上を同時に牽引する操作を行うことにより、カテーテル200の遠位端部215を屈曲させることができるようになっている。また、例えば、一方の手で把持部263を把持した状態で、他方の手でハンドル部262を把持部263に対して軸回転させることにより、管状本体210の全体を軸部261とともに回転させることができるようになっている。
【0058】
ここで、上述のように、本実施形態の場合、カテーテル200は、2本のサブルーメン280と、それらサブルーメン280にそれぞれ挿通された操作線270を有している。以下では、説明の便宜上、一方のサブルーメン280を第1サブルーメン280aと称し、他方のサブルーメン280を第2サブルーメン280bと称する(図7図8参照)。そして、第1サブルーメン280a内に挿通された操作線270を第1操作線270aと称し、第2サブルーメン280b内に挿通された操作線270を第2操作線270bと称する。
【0059】
第1操作線270aの近位端は、操作部260の第1スライダ264aに接続されている。同様に、第2操作線270bの近位端は、操作部260の第2スライダ264bに接続されている。そして、第1スライダ264aと第2スライダ264bとを軸部261に対して個別に基端側にスライドさせる。この操作により、各々に接続された第1操作線270aまたは第2操作線270bが個別に牽引され、カテーテル200の遠位端部215(つまり管状本体210の遠位端DE)に引張力が与えられる。これにより、当該牽引された操作線270の側に遠位端部215が屈曲する。
【0060】
第1操作線270aまたは第2操作線270bの何れかの操作線270を個別に牽引する場合、牽引する距離に応じて、遠位端部215の曲率を変化させることができる。なお、操作線270を個別に牽引するだけでは遠位端部215を所望の姿勢に屈曲させることができない場合には、第1および第2操作線270a、270bを同時に牽引することにより、遠位端部215の所望の姿勢を実現してもよい。
【0061】
このように遠位端部215を様々な形状に屈曲させるとともに、ハンドル部262に対する回転操作によって管状本体(シース)210の回転位相を調節する。この操作により、遠位端部215の屈曲量および屈曲方向を調節し、様々な角度に分岐する体腔に対してカテーテル200を自在に進入させることができる。したがって、例えば分岐のある血管や末梢血管に対しても、本実施形態のカテーテル200を所望の方向に進入させることができる。なお、本実施形態のカテーテル200において、遠位端部215の屈曲角度は90度を超えることが好ましい(図8参照)。これにより、血管の分岐角度がUターンするような鋭角の場合であっても、かかる分岐枝に対してカテーテル200を進入させることができる。
【0062】
次に、第2の実施形態に係るカテーテル200の屈曲例を、図8を用いて説明する。まず、本実施形態のカテーテル200を患者の血管等の体腔内に挿入する。本実施形態では、カテーテル200の軸心を挟んで第1サブルーメン280aと第2サブルーメン280bとが180度対向して形成されている。そして、第1サブルーメン280aには第1操作線270aが挿通され、第2サブルーメン280bには第2操作線270bが挿通され、先端を自在に屈曲させることができる。そのため、上記第1の実施形態のように、ガイドワイヤーなどを必要とせず、操作線を操作しながら、能動的にカテーテル200を患者の体内に挿入できる。
【0063】
ここで、本実施形態のカテーテル200では、操作部260のスライダ264aを操作して第1操作線270aを近位端側CEに牽引すると、図8(b)に示すように、カテーテル200の遠位端部215は図8の上方に屈曲する。さらに、この牽引量を大きくすると、図8(c)に示すように、カテーテル200の遠位端部215は図8の上方に大きく屈曲する。
【0064】
また、操作部260のスライダ264bを操作して、第2操作線270bを近位端側CEに牽引すると、図8(d)に示すように、カテーテル200の遠位端部215は図8の下方に屈曲する。さらに、この牽引量を大きくすると、図8(e)に示すように、カテーテル200の遠位端部215は図8の下方に大きく屈曲する。
【0065】
なお、第1操作線270aと第2操作線270bとを共に牽引する場合には、牽引量を互いに相違させてもよい。すなわち、いずれの操作線270を個別に牽引しても所望の曲率が達成されない場合には、両方の操作線270を牽引して曲率を調整してもよい。より具体的には、何れか一方の操作線270を牽引することにより遠位端部215が屈曲した状態から、何れか他方の操作線270を牽引する。この操作により、遠位端部215の屈曲量を減じる操作や、遠位端部215の姿勢を屈曲した状態から元の直線状の姿勢へ戻す操作を行うことができる。このように屈曲量を減じる操作により、屈曲量の微調整が可能である。
【0066】
また、カテーテル200の遠位端部215を屈曲させた状態で、一方の手で操作部260の把持部263を把持し、他方の手でハンドル部262を、把持部263に対して軸回転させる。この操作により、カテーテル200の全体を軸部261とともに最大90度だけ回転させ、操作者はカテーテル200の遠位端部215の屈曲方向を所望の方向に変えて、遠位端側DEを患部に対向させることができる。なお、本実施形態でも、メインルーメン220の周囲にコイル231が巻回されているので、管状本体210のねじり剛性が高まる。よって、カテーテル200の回転操作時におけるトルク伝達効率が高まり、回転操作に対する遠位端部215の回転応答性が向上する。さらに、補強層230と長手方向に離間していることによりマーカー240の位置を明確に確認できるため、遠位端側DEの現在の位置や向きを容易に確認しながら操作ができる。
【0067】
また、第2の実施形態に係るカテーテル200においては、弾性体により構成されたコイル231がメインルーメン220の周囲に巻回されている。そのため、操作線270に対する操作によってカテーテル200が屈曲する際に、コイル231にはその軸方向を曲げようとする外力が加わる。しかし、コイル231はその弾性的な反撥力によって、その外力に抗しようとする。このため、カテーテル200の急角度の折れ曲がりを抑制することができる。よって、メインルーメン220の急角度の折れ曲がりも抑制できる。これにより、メインルーメン220の内腔断面積を十分な大きさに維持できるため、メインルーメン220を介した薬剤等の供給や光学系の挿通などを好適に実施できる。
【0068】
また、メインルーメン220が内空断面を維持することにより、サブルーメン280の急角度の折れ曲がりも抑制できる。これにより、サブルーメン280の内周壁と操作線270との摩擦係数の増大を抑制できるため、操作線270を用いたカテーテル200の屈曲操作性を良好な状態に維持できるとともに、操作線270の断線の発生も抑制できる。ただし、コイル231は、その軸方向を曲げようとする外力に従って屈曲することが可能であるため、カテーテル200の屈曲性を十分に確保することができる。要するに、カテーテル200の屈曲性を十分に確保しつつも、コイル231が有する弾性的な反撥力によってカテーテル200の急角度の折れ曲がりを抑制することができる。
【0069】
また、本実施形態においても、コイル231は、少なくとも、メインルーメン220の先端部の周囲に巻回されている。そのため、カテーテル200の遠位端部215において、カテーテル200の屈曲性を十分に確保しつつカテーテル200の急角度の折れ曲がりを抑制することができる。
【0070】
また、補強層230は、第1の実施形態と同様に、コイル231の先端部を含む狭間隔部と、巻回ピッチが密な密巻き部とを有するように形成してもよい。この構成により、コイル231の狭間隔部では、牽引された操作線270側が圧縮される挙動を呈するので、操作線270の牽引による遠位端部215の屈曲操作を容易に行うことができる。また、補強層230により、カテーテル200のプッシャビリティについては、第1の実施形態と同様に向上する。
【0071】
また、本実施形態においても、マーカー240が補強層230よりも長手方向の遠位端側DEに離間して配置されているので、カテーテル200の先端を屈曲した際に、マーカー240と補強層230とが互いに干渉せず、円滑な屈曲を実現することができる。さらには、カテーテル200全体の肉厚を低減(薄型化)し、かつメインルーメン220の内腔の平坦化を実現することができる。
【0072】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
【0073】
例えば、上記第2の実施形態においては、カテーテル200が2本の操作線270(第1操作線270a、第2操作線270b)を有する例を説明したが、上述したように、それぞれ操作線270が挿通された3本以上のサブルーメン280を管状本体210に形成してもよい。この場合、これらの操作線270のうちの1本もしくは2本以上を牽引することによって、カテーテル200の屈曲操作を行うことができる。なお、この場合、3本以上の操作線270の牽引長さを個別に制御することにより、遠位端部215を360度にわたり任意の向きに屈曲させることができる。これにより、カテーテル200の全体に対して回転力を付与して遠位端部215を所定方向に向ける回転操作を行うことなく、操作部260による操作線270の牽引操作のみによって、カテーテル200の進入方向を操作することが可能となる。
【0074】
また、カテーテル200が操作線270を1本のみ有している構成とすることも可能である。この場合も、操作線270の牽引による遠位端部215の屈曲操作とカテーテル200の回転操作との併用により、任意の屈曲量および任意の方向に遠位端部215を屈曲させることができる。
以下、参考形態の例を付記する。
1.
内部にメインルーメンを有する長尺の管状本体を備えるカテーテルであって、
樹脂材料により形成された前記管状本体と、
前記管状本体の前記メインルーメンの外周に、前記樹脂材料よりも硬質な材料で形成された補強層と、
前記管状本体の遠位端側に装着されたマーカーと、を備え、
前記マーカーが、前記補強層よりも前記管状本体の長手方向の遠位側に、当該補強層と離間して配置されたカテーテル。
2.
前記管状本体は、内層と、外層と、を有し、
前記補強層は、前記内層の外周表面にコイルを巻回して形成されたことを特徴とする1.に記載のカテーテル。
3.
前記補強層と前記マーカーとの長手方向の離間距離は、前記コイルを形成する線材の外径よりも少なくとも広いことを特徴とする2.に記載のカテーテル。
4.
前記補強層と前記マーカーとの長手方向の離間距離は、前記補強層の隣接する前記コイルの巻線間の近接縁間距離よりも広いことを特徴とする3.に記載のカテーテル。
5.
前記コイルは、
前記遠位側に近くなるほど、隣接する前記コイルの巻線間の近接縁間距離が次第に大きくなるよう巻回したことを特徴とする2.〜4.のいずれか1つに記載のカテーテル。
6.
前記マーカーは、前記補強層と同層に形成されたことを特徴とする1.〜5.のいずれか1つに記載のカテーテル。
7.
前記マーカーは、X線不透過性の材料で形成されたことを特徴とする1.〜6.のいずれか1つに記載のカテーテル。
8.
外層を有した前記管状本体の前記外層は、少なくとも1つのサブルーメンを有し、
前記サブルーメンは、
内部に摺動可能に操作線が挿通され、
前記操作線の近位端部を牽引することにより、前記管状本体の遠位端部が屈曲することを特徴とする2.〜7.のいずれか1つに記載のカテーテル。
【符号の説明】
【0075】
10、210 管状本体(シース)
11、211 内層
111、2111 樹脂材料
12、212 外層
121、2121 樹脂材料
15、215 遠位端部
16、216 近位端部
20、220 メインルーメン
30、230 補強層
31、231 コイル
40、240 マーカー
112 凹溝
100、200 カテーテル
270、270a、270b 操作線
280、280a、280b サブルーメン
A 近接縁間距離
B 離間距離
C 近接縁間距離
D 外径
DE 遠位端側
PE 近位端側
CE 近位端側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8