(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、波長変換部材から出射される蛍光の強度をさらに高めたいという要望がある。蛍光の強度を高める方法としては、波長変換部材における蛍光体の濃度を高める方法が考えられる。しかしながら、蛍光体の濃度を高めた場合であっても、波長変換部材から出射される蛍光の強度を十分に高めることができない場合がある。
【0005】
本発明の目的は、高強度な蛍光を出射できる波長変換部材を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る波長変換部材は、波長変換部材本体と、低屈折率層とを備える。波長変換部材本体は、ガラスマトリクスと、無機蛍光体粉末とを含む。無機蛍光体粉末は、ガラスマトリクス中に配されている。低屈折率層は、波長変換部材本体の表面上に配されている。低屈折率層は、無機蛍光体粉末の屈折率より低い屈折率を有する。
【0007】
低屈折率層は、無機蛍光体粉末を含まないことが好ましい。
【0008】
低屈折率層は、ガラス層により構成されていることが好ましい。
【0009】
ガラスマトリクスの軟化点と、ガラス層の軟化点との差が、200℃以下であることが好ましい。
【0010】
無機蛍光体粉末の屈折率がガラスマトリクスの屈折率よりも高いことが好ましい。
【0011】
低屈折率層の厚みが、0.1mm以下であることが好ましい。
【0012】
低屈折率層の全光線透過率が50%以上であることが好ましい。
【0013】
波長変換部材本体における無機蛍光体粉末の含有量が20体積%以上であることが好ましい。
【0014】
波長変換部材本体の熱膨張係数と、低屈折率層の熱膨張係数との差が、100×10
−7/℃以下であることが好ましい。
【0015】
波長変換部材本体は、光入射面と光出射面とを有し、光出射面と光入射面との両面上に低屈折率層が設けられていてもよい。
波長変換部材本体と低屈折率層との界面は、平面状に形成されていることが好ましい。
【0016】
本発明に係る発光デバイスは、本発明に係る波長変換部材と、光源とを備える。光源は、波長変換部材に無機蛍光体粉末の励起波長の光を照射する。
【0017】
本発明に係る波長変換部材の製造方法では、無機蛍光体粉末と、ガラス粉末とを含む生のセラミック素体の表面上に、ガラス粉末を含む層を形成する。生のセラミック素体とガラス粉末を含む層とを焼成することによって、生のセラミック素体から波長変換部材本体を形成し、ガラス粉末を含む層からガラス層を形成する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高強度な蛍光を出射できる波長変換部材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0021】
また、実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものである。図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0022】
(波長変換部材)
図1は、本実施形態における波長変換部材の略図的断面図である。
【0023】
図1に示されるように、波長変換部材1は、波長変換部材本体10とガラス層20とを備える。
【0024】
(波長変換部材本体10)
波長変換部材本体10は、ガラスマトリクス11と無機蛍光体粉末12とを含む。ガラスマトリクス11は、無機蛍光体粉末12の分散媒として好適なものである限りにおいて特に限定されない。ガラスマトリクス11は、例えば、硼珪酸塩系ガラスや、SnO−P
2O
5系ガラスなどのリン酸塩系ガラスなどにより構成することができる。ガラスマトリクス11の屈折率は、1.45〜2.00であることが好ましく、1.47〜1.90であることがより好ましい。ガラスマトリクス11の軟化点は、250℃〜1000℃であることが好ましく、300℃〜850℃であることがより好ましい。
【0025】
無機蛍光体粉末12は、ガラスマトリクス11中に配されている。具体的には、無機蛍光体粉末12は、ガラスマトリクス11中に分散している。
【0026】
無機蛍光体粉末12は、例えば、酸化物蛍光体、窒化物蛍光体、酸窒化物蛍光体、塩化物蛍光体、酸塩化物蛍光体、硫化物蛍光体、酸硫化物蛍光体、ハロゲン化物蛍光体、カルコゲン化物蛍光体、アルミン酸塩蛍光体、ハロリン酸塩化物蛍光体、ガーネット系化合物蛍光体から選ばれた1種以上を含むものとすることができる。
【0027】
波長300nm〜440nmの紫外〜近紫外の励起光を照射すると青色の蛍光を発する無機蛍光体粉末12の具体例としては、例えば、Sr
5(PO
4)
3Cl:Eu
2+、(Sr,Ba)MgAl
10O
17:Eu
2+などが挙げられる。
【0028】
波長300nm〜440nmの紫外〜近紫外の励起光を照射すると緑色の蛍光(波長が500nm〜540nmの蛍光)を発する無機蛍光体粉末12の具体例としては、例えば、SrAl
2O
4:Eu
2+、SrGa
2S
4:Eu
2+などが挙げられる。
【0029】
波長440nm〜480nmの青色の励起光を照射すると緑色の蛍光(波長が500nm〜540nmの蛍光)を発する無機蛍光体粉末12の具体例としては、例えば、SrAl
2O
4:Eu
2+、SrGa
2S
4:Eu
2+などが挙げられる。
【0030】
波長300nm〜440nmの紫外〜近紫外の励起光を照射すると黄色の蛍光(波長が540nm〜595nmの蛍光)を発する無機蛍光体粉末12の具体例としては、例えば、ZnS:Eu
2+などが挙げられる。
【0031】
波長440nm〜480nmの青色の励起光を照射すると黄色の蛍光(波長が540nm〜595nmの蛍光)を発する無機蛍光体粉末12の具体例としては、例えば、Y
3(Al,Gd)
5O
12:Ce
2+、Lu
3Al
5O
12:Ce
2+、Tb
3Al
5O
12:Ce
2+、La
3Si
6N
11:Ce、Ca(Si,Al)
12(O,N)
16:Eu
2+、(Si,Al)
3(O,N)
4:Eu
2+、(Sr,Ba)
2SiO
4:Eu
2+などが挙げられる。
【0032】
波長300nm〜440nmの紫外〜近紫外の励起光を照射すると赤色の蛍光(波長が600nm〜700nmの蛍光)を発する無機蛍光体粉末12の具体例としては、例えば、Gd
3Ga
4O
12:Cr
3+、CaGa
2S
4:Mn
2+などが挙げられる。
【0033】
波長440nm〜480nmの青色の励起光を照射すると赤色の蛍光(波長が600nm〜700nmの蛍光)を発する無機蛍光体粉末12の具体例としては、例えば、Mg
2TiO
4:Mn
4+、K
2SiF
6:Mn
4+、(Ca,Sr)
2Si
5N
8:Eu
2+、CaAlSiN
3:Eu
2+、(Sr,Ba)
2SiO
4:Eu
2+、(Sr,Ca,Ba)
2SiO
4:Eu
2+などが挙げられる。
【0034】
無機蛍光体粉末12の屈折率は、ガラスマトリクス11やガラス層20を構成しているガラスの屈折率よりも高い。無機蛍光体粉末12の屈折率は、ガラスマトリクス11やガラス層20を構成しているガラスの屈折率より0.05以上、さらには0.1以上高い。
【0035】
なお、本明細書において、特に断りのない限り、屈折率とは、d線(波長が587.6nmの光)に対する屈折率をいうものとする。
【0036】
無機蛍光体粉末12の平均粒子径が大きすぎると、発光色が不均一になる場合がある。従って、無機蛍光体粉末12の平均粒子径(D
50)は、50μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましい。但し、無機蛍光体粉末12の平均粒子径が小さすぎると、発光強度が低下する場合がある。従って、無機蛍光体粉末12の平均粒子径は、1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましい。
【0037】
波長変換部材本体10における無機蛍光体粉末12の含有量は、所望する蛍光体の強度等に応じて適宜設定することができる。高強度の蛍光を得る観点からは、波長変換部材本体10における無機蛍光体粉末12の含有量は、20体積%以上であることが好ましく、30体積%以上であることがより好ましく、40体積%以上であることがさらに好ましい。但し、無機蛍光体粉末12の含有量が高すぎると、波長変換部材本体10の強度が低くなりすぎる場合がある。従って、波長変換部材本体10における無機蛍光体粉末12の含有量は、95体積%以下であることが好ましく、90体積%以下であることがより好ましい。
【0038】
波長変換部材本体10の形状寸法は、波長変換部材1が用いられるデバイスの形状寸法などに応じて適宜設定することができる。波長変換部材本体10は、例えば、平面形状が矩形状や円形状である板状であってもよい。波長変換部材本体10における励起光や蛍光の吸収を抑制する観点から、波長変換部材本体10の厚みは、1mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることが好ましく、0.3mm以下であることがさらに好ましい。但し、波長変換部材本体10の厚みが小さすぎると、無機蛍光体粉末12の量が少なくなりすぎる場合がある。また、波長変換部材本体10の強度が低下する場合がある。従って、波長変換部材本体10の厚みは、0.03mm以上であることが好ましい。
【0039】
波長変換部材本体10は、少なくとも一つの光入出面を有する。本実施形態においては、波長変換部材本体10の主面10aが光入出面を構成している。
【0040】
(ガラス層20)
ガラス層20は、波長変換部材本体10の表面上に配されている。具体的には、ガラス層20は、波長変換部材本体10の主面(光入出面)10a上に配されている。このため、波長変換部材本体10へ入射する励起光と波長変換部材本体10から出射される蛍光とのうちの少なくとも一方はガラス層20を透過する。
【0041】
ガラス層20と波長変換部材本体10とは融着されている。ガラス層20と波長変換部材本体10との密着強度を高める観点からは、波長変換部材本体10の熱膨張係数と、ガラス層20の熱膨張係数との差が、100×10
−7/℃以下であることが好ましく、80×10
−7/℃以下であることがより好ましく、60×10
−7/℃以下であることがさらに好ましく、40×10
−7/℃以下であることがなお好ましい。また、波長変換部材本体10に含まれるガラスマトリクスの軟化点と、ガラス層20の軟化点との差が、200℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることがさらに好ましい。
【0042】
ガラス層20は、無機蛍光体粉末12などの蛍光体粉末や、ガラスマトリクスよりも屈折率の高い添加剤を実質的に含まないことが好ましい。すなわち、ガラス層20は、実質的にガラスマトリクスのみからなることが好ましい。ガラス層20の屈折率(nd)は、1.40〜1.90であることが好ましく、1.45〜1.85であることがより好ましい。
【0043】
ガラス層20は、例えば、硼珪酸塩系ガラス、SnO−P
2O
5系ガラスなどのリン酸塩系ガラスなどにより構成することができる。ガラス層20の軟化点は、250℃〜1000℃であることが好ましく、300℃〜850℃であることがより好ましい。
【0044】
無機蛍光体粉末12を含まないガラス層20の厚みが大きいと、波長変換部材1の全体における無機蛍光体粉末12の含有量が少なくなる傾向にある。また、励起光や蛍光が吸収されやすくなる。このため、ガラス層20の厚みは、0.1mm以下であることが好ましく、0.05mm以下であることがより好ましく、0.03mm以下であることがさらに好ましく、0.02mm以下であることが特に好ましい。ガラス層20の厚みの下限値は、通常0.003mm程度であり、0.01mm程度であることが好ましい。
【0045】
また、ガラス層20において励起光や蛍光が吸収されにくくする観点から、ガラス層20の全光線透過率は、50%以上であることが好ましく、65%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましい。
【0046】
上述のように、波長変換部材本体10は、屈折率が高い無機蛍光体粉末12を含む。波長変換部材本体10の表面には、無機蛍光体粉末12が露出している。すなわち、波長変換部材本体10の表面には、ガラスマトリクス11により構成された領域と、無機蛍光体粉末12により構成された領域とが含まれる。上述の通り、無機蛍光体粉末12は、ガラスマトリクス11よりも高い屈折率を有する。このため、波長変換部材本体10の表面の無機蛍光体粉末12により構成された領域における光反射率は、波長変換部材本体10の表面のガラスマトリクス11により構成された領域における光反射率よりも高い。このため、ガラス層20を設けない場合は、波長変換部材本体10の表面に、光反射率の高い無機蛍光体粉末12により構成された領域が存在するため、波長変換部材本体10の光入出面における光の反射率が高くなる。よって、励起光の波長変換部材本体10内への入射効率が低くなったり、蛍光の波長変換部材本体10からの出射効率が低くなったりする。これに伴い、得られる蛍光の強度が低くなる場合がある。例えば、得られる蛍光の強度を高くしようとして無機蛍光体粉末12の含有量を増やした場合は、波長変換部材本体10の光入出面における無機蛍光体粉末12の占める割合が高くなる。従って、波長変換部材本体10の光入出面に光反射率の高い部分が増加し、期待したほど蛍光の強度を向上できない場合がある。
【0047】
ここで、波長変換部材1では、無機蛍光体粉末12を含む波長変換部材本体10の光入出面を構成している主面10a上に、無機蛍光体粉末12よりも低い屈折率を有するガラス層20が設けられている。このため、波長変換部材1の光入出面における光反射率が低い。よって、界面反射に起因する励起光の入射効率の低下や蛍光の出射効率の低下を効果的に抑制することができる。従って、波長変換部材1から出射する蛍光の強度を高めることができる。
【0048】
より高強度の蛍光を得る観点からは、ガラス層20が実質的に無機蛍光体粉末12を含まないことが好ましい。また、ガラス層20の屈折率が、無機蛍光体粉末12の屈折率以下であることが好ましく、無機蛍光体粉末12の屈折率よりも0.05以上低いことがより好ましく、0.1以上低いことがさらに好ましい。
【0049】
(発光デバイス2)
図2に波長変換部材1を用いた発光デバイス2を示す。
図2に示されるように、発光デバイス2は、光源30と、波長変換部材1とを有する。光源30は、波長変換部材1に無機蛍光体粉末12の励起波長の光L1を照射する。光L1が波長変換部材本体10に入射すると、無機蛍光体粉末12が光L1を吸収し、蛍光L2を出射する。波長変換部材1の光源30とは反対側には反射部材50が設けられているため、蛍光L2は、光源30側に向けて出射される。蛍光L2は、光源30と波長変換部材1との間に配されたビームスプリッタ40により反射され、発光デバイス2から取り出される。
【0050】
上述のように、波長変換部材1は、高強度の蛍光を出射するため、高強度の光を出射できる発光デバイス2を実現することができる。
【0051】
なお、本実施形態では、ガラス層20が波長変換部材本体10の反射部材50とは反対側の主面の上のみに設けられている例について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。例えば、ガラス層20を波長変換部材本体10の反射部材50とは反対側の主面の上に設けると共に、反射部材50側の主面の上にも設けてもよい。また、例えば、ガラス層20を波長変換部材本体10の反射部材50側の主面にのみ設けてもよい。
【0052】
(波長変換部材1の製造方法)
次に、波長変換部材1の製造方法の一例について説明する。
【0053】
まず、無機蛍光体粉末12とガラスマトリクス11を構成するためのガラス粉末とを含む生のセラミック素体の表面上に、ガラス粉末を含む層を形成する。
【0054】
具体的には、ガラス粉末と無機蛍光体粉末12とを含む第1のセラミックグリーンシートを作製する。また、ガラス層20を形成するための、ガラス粉末を含む第2のセラミックグリーンシートを作製する。
【0055】
次に、第1のセラミックグリーンシートと第2のセラミックグリーンシートとを適宜積層し、必要に応じてプレスすることにより、無機蛍光体粉末12とガラスマトリクス11を構成するためのガラス粉末とを含む生のセラミック素体の表面上に、ガラス粉末を含む層が形成された積層体を作製する。
【0056】
次に、積層体を焼成することにより、生のセラミック素体から波長変換部材本体10を形成し、ガラス粉末を含む層からガラス層20を形成する。以上の工程により、波長変換部材1を完成させることができる。
【0057】
なお、まず第1のセラミックグリーンシートのみを焼成して波長変換部材本体10を作製した後、波長変換部材本体10の主面10a上に、ガラス層20を形成するためのガラスフィルムを積層し、熱圧着することにより波長変換部材1を作製しても構わない。
【0058】
また、波長変換部材本体10を作製した後に、ゾルゲル法を用いてガラス層20を形成してもよい。
【0059】
(変形例)
上記実施形態では、波長変換部材本体10のひとつの主面10a上にガラス層20が設けられている例について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。例えば、
図3に示されるように、波長変換部材本体10が光入射面を構成している主面10aと光出射面を構成している主面10bとを有するような場合には、主面10aと主面10bとの両面上にガラス層20が配されていることが好ましい。この場合は、励起光の波長変換部材本体10への入射効率を高めることができると共に、蛍光の波長変換部材本体10からの出射効率を高めることができる。
【0060】
上記実施形態では、低屈折率層としてガラス層20が設けられている例について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。波長変換部材本体の表面上に配された層の屈折率が無機蛍光体粉末の屈折率よりも低い場合には、上記実施形態において説明した効果が得られる。従って、低屈折率層は、無機蛍光体粉末12の屈折率よりも低いものであれば、特に限定されない。低屈折率層は、例えば、樹脂により構成されていてもよい。
【0061】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0062】
(実施例1)
モル%でSiO
2:58%、Al
2O
3:6%、B
2O
3:17%、Li
2O:8%、Na
2O:8%、K
2O:3%となるように原料を調合し、溶融急冷法によってフィルム状にガラスを成形した。得られたガラスフィルムを、ボールミルを用いて湿式粉砕し、平均粒子径(D
50)が2μmであるガラス粉末を得た。
【0063】
得られたガラス粉末と、平均粒子径(D
50)が15μmであるYAG(Yttrium Aluminum Garnet,Y
3Al
5O
12)の蛍光体の粉末とを、ガラス粉末:YAGの蛍光体粉末とが30体積%:70体積%となるように、振動混合機を用いて混合した。得られた混合粉末50gに結合剤、可塑剤、溶剤などを適量添加し、24時間混練することによりスラリーを得た。このスラリーを、ドクターブレード法を用いてポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、乾燥させることにより、第1のセラミックグリーンシートを作製した。ブレードのギャップは200μmとし、得られた第1のセラミックグリーンシートの厚みは100μmとなった。
【0064】
モル%でSiO
2:58%、Al
2O
3:6%、B
2O
3:17%、Li
2O:8%、Na
2O:8%、K
2O:3%となるように原料を調合し、溶融急冷法によってフィルム状にガラスを成形した。得られたガラスフィルムを、ボールミルを用いて湿式粉砕し、平均粒子径(D
50)が2μmであるガラス粉末を得た。
【0065】
得られたガラス粉末と、粉末50gに結合剤、可塑剤、溶剤などを適量添加し、24時間混練することによりスラリーを得た。このスラリーを、ドクターブレード法を用いてポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、乾燥させることにより、第2のセラミックグリーンシートを作製した。ブレードのギャップは50μmとし、得られた第2のセラミックグリーンシートの厚みは25μmとなった。
【0066】
第1のセラミックグリーンシートと第2のセラミックグリーンシートとを重ね合わせて、熱圧着機を用いて、80℃で5分、10kPaの圧力を印加することにより積層体を作製した。大気中において、作製した積層体を500℃で1時間脱脂処理した。その後、脱脂処理した積層体を600℃で20分間焼成することにより、波長変換部材を作製した。焼成後において波長変換部材本体の厚みが80μmであり、ガラス層の厚みが、20μmであった。
【0067】
(実施例2)
モル%でSiO
2:18%、B
2O
3:38%、BaO:3%、SrO:7%:ZnO:15%、Li
2O:13%、ZrO
2:1%、La
2O
3:5%となるように原料を調合し、溶融急冷法によってフィルム状にガラスを成形した。得られたガラスフィルムを、ボールミルを用いて湿式粉砕し、平均粒子径(D
50)が2μmであるガラス粉末を得た。
【0068】
得られたガラス粉末と、平均粒子径(D
50)が15μmであるYAGの蛍光体の粉末とを、ガラス粉末:YAGの蛍光体粉末とが30体積%:70体積%となるように、振動混合機を用いて混合した。得られた混合粉末50gに結合剤、可塑剤、溶剤などを適量添加し、24時間混練することによりスラリーを得た。このスラリーを、ドクターブレード法を用いてポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、乾燥させることにより、第1のセラミックグリーンシートを作製した。ブレードのギャップは200μmとし、得られた第1のセラミックグリーンシートの厚みは100μmとなった。
【0069】
モル%でSiO
2:58%、Al
2O
3:6%、B
2O
3:17%、Li
2O:8%、Na
2O:8%、K
2O:3%となるように原料を調合し、溶融急冷法によってフィルム状にガラスを成形した。得られたガラスフィルムをボールミルによって湿式粉砕し、平均粒子径(D
50)が2μmであるガラス粉末を得た。
【0070】
得られたガラス粉末と、粉末50gに結合剤、可塑剤、溶剤などを適量添加し、24時間混練することによりスラリーを得た。このスラリーを、ドクターブレード法を用いてポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、乾燥させることにより、第2のセラミックグリーンシートを作製した。ブレードのギャップは50μmとし、得られた第2のセラミックグリーンシートの厚みは25μmとなった。
【0071】
第1のセラミックグリーンシートと第2のセラミックグリーンシートとを重ね合わせて、熱圧着機を用いて、80℃で5分、10kPaの圧力を印加することにより積層体を作製した。大気中において、作製した積層体を500℃で1時間脱脂処理を行った。その後、脱脂処理した積層体を600℃で20分間焼成することにより、波長変換部材を作製した。焼成後の波長変換部材の厚みは波長変換部材本体が80μmであり、ガラス層が20μmであった。
【0072】
(実施例3)
ガラス層の厚みを0.08mmとしたこと以外は実施例1と実質的に同様の構成を有する波長変換部材を実質的に同様の方法により作製した。
【0073】
(比較例)
モル%でSiO
2:58%、Al
2O
3:6%、B
2O
3:17%、Li
2O:8%、Na
2O:8%、K
2O:3%となるように原料を調合し、溶融急冷法によってフィルム状にガラスを成形した。得られたガラスフィルムをボールミルによって湿式粉砕し、平均粒子径(D
50)が2μmであるガラス粉末を得た。
【0074】
得られたガラス粉末と、平均粒子径(D
50)が15μmであるYAGの蛍光体の粉末とを、ガラス粉末:YAGの蛍光体粉末とが30体積%:70体積%となるように、振動混合機を用いて混合した。得られた混合粉末50gに結合剤、可塑剤、溶剤などを適量添加し、24時間混練することによりスラリーを得た。このスラリーを、ドクターブレード法を用いてポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、乾燥させることにより、セラミックグリーンシートを作製した。
【0075】
セラミックグリーンシートを大気中において、500℃で1時間脱脂処理を行った後に、600℃で20分間焼成することにより波長変換部材を作製した。すなわち、比較例1に係る波長変換部材は、ガラス層を有さないこと以外は実施例1に係る波長変換部材と実質的に同様の構成を有する。
【0076】
(評価)
実施例1〜3及び比較例のそれぞれにおいて作製した各サンプルの一主面(実施例1〜3については、波長変換部材本体側の面)に、反射基板(マテリアルハウス社製のMIRO−SILVER)を、接着剤(信越化学工業社製の高反射樹脂)を用いて貼付し、測定サンプルを作製した。測定サンプルを15℃に設定したペルチェ素子上に固定し、出力が30Wであり、波長440nmの青色レーザー光を測定サンプルに照射し、得られた蛍光を、光ファイバーを通して小型分光器(USB−4000、オーシャンオプティクス社製)で受光し、発光スペクトルを得た。発光スペクトルから、蛍光の強度を求めた。結果を下記の表1に示す。
【0077】
なお、表1に示す熱膨張係数、軟化点は、以下のようにして測定した。熱膨張係数は、マックサイエンス社製DILATOを用いて、25℃〜250℃の範囲で測定した。軟化点は、リガク社製TAS−200を用いて測定した。なお、全光線反射率は、350nm〜800nmの波長範囲において、島津製作所社製UV2500PCを用いて測定した。
【0079】
表1に示される結果から、波長変換部材本体の表面上にガラス層を設けることにより、得られる蛍光の強度を高め得ることが分かる。