特許第6241521号(P6241521)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6241521バラスト水処理装置及びバラスト水処理方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241521
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】バラスト水処理装置及びバラスト水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/50 20060101AFI20171127BHJP
   C02F 1/76 20060101ALI20171127BHJP
   C02F 1/70 20060101ALI20171127BHJP
   C02F 1/58 20060101ALI20171127BHJP
   B63B 13/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   C02F1/50 510A
   C02F1/50 520F
   C02F1/50 532C
   C02F1/50 532D
   C02F1/50 532H
   C02F1/50 540B
   C02F1/50 550C
   C02F1/50 550H
   C02F1/50 550L
   C02F1/76 A
   C02F1/70 Z
   C02F1/50 520B
   C02F1/50 560Z
   C02F1/58 L
   B63B13/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2016-170100(P2016-170100)
(22)【出願日】2016年8月31日
(62)【分割の表示】特願2016-84801(P2016-84801)の分割
【原出願日】2015年12月17日
(65)【公開番号】特開2017-94320(P2017-94320A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2016年10月13日
(31)【優先権主張番号】特願2015-226036(P2015-226036)
(32)【優先日】2015年11月18日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】宇津木 潔
(72)【発明者】
【氏名】松沢 正夫
(72)【発明者】
【氏名】長藤 雅則
(72)【発明者】
【氏名】岡井 和哉
(72)【発明者】
【氏名】菅 剛
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 武
(72)【発明者】
【氏名】片岡 久
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5924447(JP,B2)
【文献】 特開2011−098269(JP,A)
【文献】 特開2012−254416(JP,A)
【文献】 特開2012−020256(JP,A)
【文献】 特開2013−194949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/50−1/78
B63B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に搭載され、前記船舶が具備するバラストタンクに収容されるバラスト水を殺菌するバラスト水処理装置であって、
バラストポンプにより船舶外から取水された海水を船舶内で流通させる配管経路の少なくとも一部を構成する配管と、
該配管内でバラストタンクに向かって流通する海水に塩素系殺菌剤を注入することにより、前記バラストタンクに収容されるバラスト水に前記塩素系殺菌剤を注入するための殺菌剤注入口と、
該殺菌剤注入口に向けて前記塩素系殺菌剤を流通させる殺菌剤配管経路と、
前記バラスト水の殺菌に用いられずに前記殺菌剤配管経路に残った前記塩素系殺菌剤の残留物の少なくとも一部を収容するとともに除去反応性物質と反応させるタンクと、
該タンクに収容されている前記塩素系殺菌剤の残留物、前記除去反応性物質及び前記塩素系殺菌剤の残留物と除去反応性物質との反応生成物の少なくとも一部を、前記配管内を流通する海水に注入する残留物注入口と、
前記タンクに収容されている前記塩素系殺菌剤の残留物、前記除去反応性物質及び前記塩素系殺菌剤の残留物と前記除去反応性物質との反応生成物のうちの少なくとも一部を前記残留物注入口に向け流通させる残留物配管経路と、
を備えており、
前記除去反応性物質は、還元性物質又はアルカリ性物質であり、
前記残留物注入口は、前記殺菌剤注入口を兼ねる又は前記殺菌剤注入口と異なる注入口であることを特徴とするバラスト水処理装置。
【請求項2】
前記殺菌剤配管経路の少なくとも一部は、前記残留物配管経路の少なくとも一部を構成していることを特徴とする請求項1に記載のバラスト水処理装置。
【請求項3】
前記殺菌剤配管経路は、前記殺菌剤配管経路を流通する前記塩素系殺菌剤のうちの少なくとも一部を、前記殺菌剤配管経路の下流側から上流側に帰還させる帰還配管経路を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のバラスト水処理装置。
【請求項4】
前記残留物配管経路は、前記タンクから排出された前記塩素系殺菌剤の残留物、前記除去反応性物質及び前記塩素系殺菌剤の残留物と前記除去反応性物質との反応生成物のうちの少なくとも一部を前記タンクに帰還させる帰還経路を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のバラスト水処理装置。
【請求項5】
前記殺菌剤配管経路は、前記殺菌剤配管経路を流通する前記塩素系殺菌剤の少なくとも一部を、前記殺菌剤配管経路の下流側から上流側に帰還させる帰還配管経路を備えており、前記残留物配管経路は、前記タンクから排出された前記塩素系殺菌剤の残留物、前記除去反応性物質及び前記塩素系殺菌剤の残留物と前記除去反応性物質との反応生成物のうちの少なくとも一部を前記タンクに帰還させる帰還経路を備えており、前記帰還配管経路の少なくとも一部は、前記帰還経路の一部を構成していることを特徴とする請求項1又は2に記載のバラスト水処理装置。
【請求項6】
船舶が具備するバラストタンクに収容されるバラスト水を船舶内で殺菌するバラスト水処理方法であって、
バラストタンクに収容されるバラスト水の殺菌を行うために塩素系殺菌剤を用意する殺菌剤準備工程と、
バラストポンプにより船舶外から取水された海水を船舶内で流通させる配管経路の少なくとも一部を構成する配管内を流通する海水に、前記塩素系殺菌剤を殺菌剤配管経路を経由して殺菌剤注入口から注入することにより、前記バラストタンクに収容されるバラスト水を殺菌する殺菌処理工程と、
前記バラスト水の殺菌に用いられずに前記殺菌剤配管経路に残った前記塩素系殺菌剤の残留物の少なくとも一部を前記殺菌剤配管経路から除去する残留物除去工程を有しており、
前記残留物除去工程は、前記塩素系殺菌剤の残留物の少なくとも一部をタンクに収容させるとともに前記タンク内で除去反応性物質と反応させる第一工程と、前記タンクに収容されている前記塩素系殺菌剤の残留物、前記除去反応性物質及び前記塩素系殺菌剤の残留物と前記除去反応性物質との反応生成物の少なくとも一部を、前記配管内を流通する海水に残留物注入口から注入する第二工程と、を有し、
前記除去反応性物質は、還元性物質又はアルカリ性物質であり、
前記残留物注入口は、前記殺菌剤注入口を兼ねる又は前記殺菌剤注入口と異なる注入口であることを特徴とするバラスト水処理方法
【請求項7】
前記タンクに収容されている前記塩素系殺菌剤の残留物、前記除去反応性物質及び前記塩素系殺菌剤の残留物と前記除去反応性物質との反応生成物のうちの少なくとも一部を、前記タンクから移動させた後、前記殺菌剤配管経路から除去する前に、前記タンクに帰還させる工程を有することを特徴とする請求項6に記載のバラスト水処理方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶のバラストタンクに収容されるバラスト水を、塩素系薬剤の水溶液を殺菌剤として使用して船舶内で殺菌するバラスト水処理装置及びバラスト水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶のバラスト水を殺菌剤により殺菌するバラスト水処理の代表例は、船外から取水した海水をろ過した後、ろ過後の海水に酸化性物質を含有する殺菌剤を注入し、殺菌剤注入後の海水をバラストタンクに収容又は漲水する殺菌処理と、バラストタンクから取水した殺菌剤注入済みの海水に還元性物質を含有する還元剤を注入し、還元剤注入後の海水を船外へ排水する還元処理とに大別でき、酸化性を有する遊離有効塩素を含有する塩素系薬剤の水溶液を殺菌剤として使用することが知られている(特許文献1〜3)。当該塩素系薬剤の水溶液は、固形の塩素系薬剤を水に溶解させることで用意することができる(特許文献4、5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-92899号公報
【特許文献2】特開2013-75250号公報
【特許文献3】特開2011-92898号公報
【特許文献4】特開2013-56296号公報
【特許文献5】WO2014/007171
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塩素系薬剤の水溶液を用意し、その水溶液を用いてバラストタンクに収容すべき海水を殺菌する場合、通常、当該海水を殺菌するために本来必要な量よりも多目に、当該水溶液を用意する。なぜなら、塩素系薬剤の水溶液を殺菌剤として海水に注入するためには、少なくとも、当該水溶液を当該海水まで流通させるための配管が必要であり、その配管内に行き渡る量の当該水溶液が余分に必要になるからである。
【0005】
しかし、塩素系薬剤の水溶液を本来必要な量よりも多目に用意すると、余分な当該水溶液がバラスト水処理に使用されることなく残留することになる。
【0006】
バラスト水処理に使用されることなく残留する塩素系薬剤の水溶液及び/又は当該塩素系薬剤の成分(以下、まとめて又は個別に「殺菌剤残留物」という)が、配管内で、溶媒である水の蒸発により濃化すると、あるいは、殺菌剤残留物の水温低下に伴い、塩素系薬剤の水に対する溶解度が低下すると、塩素系薬剤の成分の析出物が殺菌剤残留物中や、殺菌剤残留物と配管との接液領域に発生し、堆積し、場合によっては、当該析出物が配管内で固化するおそれがある。そのおそれは、塩素系殺菌剤の原料が固形の塩素系薬剤である場合、特に大きくなる。原料が固形であると、水に対する原料の溶解度の低下は、当該原料の成分の析出物の発生に直結するからである。
【0007】
上記析出物の発生・堆積・固化は、配管の閉塞、圧損増加その他の流通障害、配管に取り付けてあるミキサー、センサ、バルブ、ポンプ等の付属物の機能不全などの不具合(以下、まとめて、殺菌剤残留物に起因する「動作不具合」という)の原因となり、ひいてはバラスト水処理の正常な実行の阻害要因となる。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、塩素系薬剤を水に溶解して得た水溶液を殺菌剤として使用するバラスト水処理の正常な実行の阻害要因の発生を抑制又は防止することができるバラスト水処理装置及びバラスト水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための、本発明の第1の形態に係るバラスト水処理装置は、船舶に搭載され、前記船舶が具備するバラストタンクに収容されるバラスト水を殺菌するバラスト水処理装置であって、バラストポンプにより船舶外から取水された海水を船舶内で流通させる配管経路の少なくとも一部を構成する配管と、該配管内でバラストタンクに向かって流通する海水に塩素系殺菌剤を注入することにより、前記バラストタンクに収容されるバラスト水に前記塩素系殺菌剤を注入するための殺菌剤注入口と、該殺菌剤注入口に向けて前記塩素系殺菌剤を流通させる殺菌剤配管経路と、前記バラスト水の殺菌に用いられずに前記殺菌剤配管経路に残った前記塩素系殺菌剤の残留物の少なくとも一部を収容するとともに除去反応性物質と反応させるタンクと、該タンクに収容されている前記塩素系殺菌剤の残留物、前記除去反応性物質及び前記塩素系殺菌剤の残留物と除去反応性物質との反応生成物の少なくとも一部を、前記配管内を流通する海水に注入する残留物注入口と、前記タンクに収容されている前記塩素系殺菌剤の残留物、前記除去反応性物質及び前記塩素系殺菌剤の残留物と前記除去反応性物質との反応生成物のうちの少なくとも一部を前記残留物注入口に向け流通させる残留物配管経路と、を備えており、前記除去反応性物質は、還元性物質又はアルカリ性物質であり、前記残留物注入口は、前記殺菌剤注入口を兼ねる又は前記殺菌剤注入口と異なる注入口であることを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の形態に係るバラスト水処理装置は、第1の形態に係るバラスト水処理装置であって、前記殺菌剤配管経路の少なくとも一部は、前記残留物配管経路の少なくとも一部を構成していることを特徴とする。
【0012】
本発明の第の形態に係るバラスト水処理装置は、第1又は第2の形態に係るバラスト水処理装置であって、前記殺菌剤配管経路は、前記殺菌剤配管経路を流通する前記塩素系殺菌剤のうちの少なくとも一部を、前記殺菌剤配管経路の下流側から上流側に帰還させる帰還配管経路を備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明の第の形態に係るバラスト水処理装置は、第1乃至第の形態のいずれか1つに係るバラスト水処理装置であって、前記残留物配管経路は、前記タンクから排出された前記塩素系殺菌剤の残留物、前記除去反応性物質及び前記塩素系殺菌剤の残留物と前記除去反応性物質との反応生成物のうちの少なくとも一部を前記タンクに帰還させる帰還経路を備えていることを特徴とする。
【0014】
本発明の第の形態に係るバラスト水処理装置は、第1又は第2の形態に係るバラスト水処理装置であって、前記殺菌剤配管経路は、前記殺菌剤配管経路を流通する前記塩素系殺菌剤の少なくとも一部を、前記殺菌剤配管経路の下流側から上流側に帰還させる帰還配管経路を備えており、前記残留物配管経路は、前記タンクから排出された前記塩素系殺菌剤の残留物、前記除去反応性物質及び前記塩素系殺菌剤の残留物と前記除去反応性物質との反応生成物のうちの少なくとも一部を前記タンクに帰還させる帰還経路を備えており、前記帰還配管経路の少なくとも一部は、前記帰還経路の一部を構成していることを特徴とする。
【0016】
本発明の第の形態に係るバラスト水処理方法は、船舶が具備するバラストタンクに収容されるバラスト水を船舶内で殺菌するバラスト水処理方法であって、バラストタンクに収容されるバラスト水の殺菌を行うために塩素系殺菌剤を用意する殺菌剤準備工程と、バラストポンプにより船舶外から取水された海水を船舶内で流通させる配管経路の少なくとも一部を構成する配管内を流通する海水に、前記塩素系殺菌剤を殺菌剤配管経路を経由して殺菌剤注入口から注入することにより、前記バラストタンクに収容されるバラスト水を殺菌する殺菌処理工程と、前記バラスト水の殺菌に用いられずに前記殺菌剤配管経路に残った前記塩素系殺菌剤の残留物の少なくとも一部を前記殺菌剤配管経路から除去する残留物除去工程を有しており、前記残留物除去工程、前記塩素系殺菌剤の残留物の少なくとも一部をタンクに収容させるとともに前記タンク内で除去反応性物質と反応させる第一工程と、前記タンクに収容されている前記塩素系殺菌剤の残留物、前記除去反応性物質及び前記塩素系殺菌剤の残留物と前記除去反応性物質との反応生成物の少なくとも一部を、前記配管内を流通する海水残留物注入口から注入する第二工程と、を有し、前記除去反応性物質は、還元性物質又はアルカリ性物質であり、前記残留物注入口は、前記殺菌剤注入口を兼ねる又は前記殺菌剤注入口と異なる注入口であることを特徴とする。
【0018】
本発明の第の形態に係るバラスト水処理方法は、第の形態に係るバラスト水処理方法であって、前前記タンクに収容されている前記塩素系殺菌剤の残留物、前記除去反応性物質及び前記塩素系殺菌剤の残留物と前記除去反応性物質との反応生成物のうちの少なくとも一部を、前記タンクから移動させた後前記殺菌剤配管経路から除去する前に、前記タンクに帰還させる工程を有することを特徴とする。
【0020】
なお、本発明において、次に掲げる用語の意味又は解釈は、区別して別段の説明を行う場合を除き、以下のとおりとする。
【0021】
(1) 「塩素系薬剤」とは、溶媒である水に溶解したとき、水溶液中での不均化により、殺菌作用を有する遊離有効塩素を放出する薬剤又はその遊離有効塩素を放出し得る物質を生成する薬剤であり、「固形」とは、常温において粉末、顆粒又は錠剤の状態にあることをいう。「塩素系薬剤」は「固形」である必要はない。
【0022】
一方、「固形の塩素系薬剤」の代表例は、トリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム及びその水和物、ジクロロイソシアヌル酸カリウム等である。「塩素系殺菌剤」とは、遊離有効塩素が有する殺菌作用を利用して殺菌を行う薬剤であり、その代表例は、塩素系薬剤の水溶液である。
【0023】
(2) 「還元性物質」とは、固形であると否と問わず、他の物質から電子を受け取る(つまり還元する)性質を有する物質をいい、塩素系殺菌剤との関係では、塩素系殺菌剤に由来する遊離有効塩素を還元する性質を有する物質である。「還元剤」とは、固形であると否と問わず、他の物質から電子を受け取るために用いる薬剤をいい、塩素系殺菌剤との関係では、塩素系殺菌剤に由来する遊離有効塩素を還元するために用いる物質である。還元剤の代表例は、亜硫酸ナトリウム又はその水和物、チオ硫酸ナトリウム又はその水和物、あるいは、それらの水溶液である。
【0024】
(3) 「アルカリ性物質」とは、水に溶解して塩基性を示す(つまり水素イオン指数(pH)が7より大きくなる)性質を有する物質をいい、その代表例は、水に溶解すると水酸化物イオンを生じる、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物(塩)、またはアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸化物(塩)である。
【0025】
(4) 「配管経路」とは、液体、固体と液体の混合物その他の物質を流通させるための配管ならびにその配管に取り付けて継手、ミキサー、バルブ、ポンプ及びセンサ、バッファタンク等の付属品を含む。配管に取り付けてある付属品が一切存在しない場合であっても、その配管は「配管経路」に該当し、配管に取り付けてある付属品がバルブのみであっても、その配管及びバルブは「配管経路」に該当する。
【0026】
(5) 「容器」とは、液体、固体と液体の混合物その他の物質を長時間又は一時的に収容又は貯留する器としての機能を有する物品であり、「容器の内容物」とは当該物質をいう。「容器」の代表例は、タンク、溶解槽、反応槽及びホッパーである。配管は、当該器としての機能を有する物品なので、「容器」に該当し、従って配管経路もこれに該当する。
【0027】
(6) 定義上、「容器」が「配管経路」に、「配管経路」が「容器」に、それぞれ該当する場合であっても、「容器及び配管経路」、「容器又は配管経路」、「容器に接続する配管経路」などのように一つの文章中で両用語を明確に区別して記載するときは、両用語は互いに異なるものとして解釈する。例えば「配管経路に接続するバッファタンク」と記載する場合には、当該「配管経路」は当該「バッファタンク」を含まず、当該「バッファタンク」は当該「配管経路」を含まない。
【0028】
(7) 「清水」とは、海水より塩分を含有していない水の意であり、真水や淡水と同義である。海水淡水化装置により海水を脱塩した水も、清水に該当する。
【0029】
(8) 「海水」は、第1の運転モード又は第2の運転モードにあるバラストポンプにより船外から取水されるものである限り、淡水、汽水及び海水のいずれであってもよい。従って、後述の海水Woは、海水に限定されず、淡水であっても、汽水であってもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明、特に本発明の第1及び第の形態によれば、バラスト水の殺菌に用いられずに殺菌剤配管経路に残った塩素系殺菌剤の残留物の少なくとも一部がタンクに収容されるとともに除去反応性物質と反応させられ、前記タンクに収容されている前記塩素系殺菌剤の残留物、前記除去反応性物質及び前記塩素系殺菌剤の残留物と前記除去反応性物質との反応生成物の少なくとも一部が、バラストポンプにより船舶外から取水された海水を船舶内で流通させる配管経路の少なくとも一部を構成する配管内を流通する海水に注入されるので、その塩素系殺菌剤の残留物に起因する、容器や配管経路の閉塞、圧損増加その他の流通障害、配管経路を構成する付属物の機能不全などの動作不具合の発生を抑制又は防止することができる。
【0036】
塩素系殺菌剤の残留物中に遊離有効塩素が存在する場合、塩素系殺菌剤の残留物から塩素含有ガスが発生し、その塩素含有ガスにより船内作業環境の悪化が懸念される場合であっても、塩素系殺菌剤の残留物を還元性物質に接触させることにより遊離有効塩素を還元すれば、あるいはアルカリ性物質により塩素系殺菌剤の残留物のpHをより高くしアルカリ性にして、塩素系殺菌剤の残留物中の遊離有効塩素を有する殺菌剤成分の分解を促進すれば、塩素含有ガスの発生は起らないか、抑制される。それ故、本発明の第及び第の形態によれば、バラスト水の殺菌に用いられずに殺菌剤配管経路に残った塩素系殺菌剤の残留物の少なくとも一部タンク内で還元性物質又はアルカリ性物質と反応させることができるので、当該塩素系殺菌剤の残留物から塩素含有ガスが発生することが懸念されるケースであっても、その発生を抑制又は防止することができる(以下、この効果を「反応除去効果」という場合がある)。
【0037】
本発明の第1及び第6の形態においては、塩素系殺菌剤の残留物と還元性物質又はアルカリ性物質との反応により発熱が起こるケースであっても、バラスト水の殺菌に用いられずに殺菌剤配管経路に残った塩素系殺菌剤の残留物の少なくとも一部が還元性物質又はアルカリ性物質である除去反応性物質と反応するのは前記タンクであって、発熱が起こる場所は、主としてタンクになる。そして、前記タンクからは前記塩素系殺菌剤の残留物、前記除去反応性物質及び前記塩素系殺菌剤の残留物と前記除去反応性物質との反応生成物の少なくとも一部が残留物配管経路を残留物注入口まで流通し、当該残留物注入口から、バラストポンプにより船舶外から取水された海水を船舶内で流通させる配管経路の少なくとも一部を構成する配管内を流通する海水に注入される。従って、塩素系殺菌剤の残留物と還元性物質又はアルカリ性物質の両物質が前記タンクに停留されるのは一時的又は短時間である。それ故、第1及び第6の形態によれば、発熱対策を講じるべき対象を、主として前記タンクに絞り込むことができる
【0046】
総じて、本発明によれば、本発明の各形態が奏する効果を発揮し、それにより船舶内でバラスト水処理を正常に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明に係るバラスト水処理方法が適用される船舶の第1の実施形態の基本構成説明図である。
図2】本発明に係るバラスト水処理方法が適用される船舶の第1の実施形態におけるバラストポンプの第1の運転モードの説明図である。
図3】本発明に係るバラスト水処理方法が適用される船舶の第1の実施形態におけるバラストポンプの第3の運転モードの説明図である。
図4】本発明に係るバラスト水処理方法が適用される船舶の第1の実施形態におけるバラストポンプの第2の運転モードのA型の説明図である。
図5】本発明に係るバラスト水処理方法が適用される船舶の第1の実施形態におけるバラストポンプの第2の運転モードのB型の説明図である。
図6】本発明に係るバラスト水処理方法が適用される船舶の第1の実施形態におけるバラストポンプの第2の運転モードのC型の説明図である。
図7】本発明に係るバラスト水処理方法が適用される船舶の第1の実施形態におけるバラストポンプの第2の運転モードのD型の説明図である。
図8】本発明に係るバラスト水処理方法が適用される船舶の第1の実施形態における殺菌剤残留物の除去の説明図である。
図9図8に示されている殺菌剤残留物の除去の変形例の説明図である。
図10図8に示されている殺菌剤残留物の除去の別の変形例の説明図である。
図11図9に示されている殺菌剤残留物の除去の別の変形例の説明図である。
図12】本発明に係るバラスト水処理方法及びその変形例の工程フロー説明図である。
図13】本発明に係るバラスト水処理方法が適用される船舶の第2の実施形態の基本構成説明図である。
図14】本発明に係るバラスト水処理方法が適用される船舶の第2の実施形態におけるバラストポンプの第1の運転モードの説明図である。
図15】本発明に係るバラスト水処理方法が適用される船舶の第2の実施形態におけるバラストポンプの第3の運転モードの説明図である。
図16】本発明に係るバラスト水処理方法が適用される船舶の第2の実施形態におけるバラストポンプの第2の運転モードのA型の説明図である。
図17】本発明に係るバラスト水処理方法が適用される船舶の第2の実施形態におけるバラストポンプの第2の運転モードのB型の説明図である。
図18】本発明に係るバラスト水処理方法が適用される船舶の第2の実施形態におけるバラストポンプの第2の運転モードのC型の説明図である。
図19】本発明に係るバラスト水処理方法が適用される船舶の第2の実施形態におけるバラストポンプの第2の運転モードのD型の説明図である。
図20】還元剤供給装置から還元性物質を取り出す構成例の説明図である。
図21】還元剤供給装置から還元性物質を取り出す別の構成例の説明図である。
図22】本発明に係るバラスト水処理方法が適用される船舶の第2の実施形態の基本構成の変形例の説明図である。
図23】本発明に係るバラスト水処理方法が適用される船舶の第2の実施形態の基本構成の別の変形例の説明図である。
図24】本発明に係るバラスト水処理方法が適用される船舶の第2の実施形態の基本構成の別の変形例におけるバラストポンプの第1の運転モードの説明図である。
図25】本発明に係るバラスト水処理方法が適用される船舶の第2の実施形態の基本構成の別の変形例におけるバラストポンプの第3の運転モードの説明図である。
図26】本発明に係るバラスト水処理方法が適用される船舶の第2の実施形態の基本構成の別の変形例におけるバラストポンプの第2の運転モードのA型の説明図である。
図27】本発明に係るバラスト水処理方法が適用される船舶の第2の実施形態の基本構成の別の変形例におけるバラストポンプの第2の運転モードのB型の説明図である。
図28】本発明に係るバラスト水処理方法が適用される船舶の第2の実施形態の基本構成の別の変形例におけるバラストポンプの第2の運転モードのC型の説明図である。
図29】本発明に係るバラスト水処理方法が適用される船舶の第2の実施形態の基本構成の別の変形例におけるバラストポンプの第2の運転モードのD型の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施形態又は実施例を示し、本発明を詳細に説明する。その際、必要に応じて図表を参照しつつ説明するが、各図表において同じ部分又は相当する若しくは共通する部分にはこれと同じ符号を付す。いうまでもなく、本発明は、図面に記載された実施の形態や実施例に限定されるものではない。
【0049】
<本発明に係るバラスト水処理方法が適用される船舶の第1の実施形態>
1)基本構成
図1は、本発明に係るバラスト水処理方法が適用される船舶(以下「船舶VSL」という)の第1の実施形態の基本構成説明図である。説明の便のため、図1では、すべての開閉バルブが開状態で描かれている。
【0050】
図1に示されているとおり、船舶VSLは、取水口又はシーチェストITと、バラストポンプPmと、バラストタンクTと、排水口DOとを備え、シーチェストIT、バラストポンプPm及びバラストタンクTを連結し、取水口ITを通じて船外から取水した海水WoをバラストタンクTに向かって流通させ、その途中で塩素系殺菌剤Asを注入して、塩素系殺菌剤Asが注入された海水Wsにして、バラストタンクTに排出するバラスト水取水用配管経路Lfと、バラストタンクT、バラストポンプPm及び排水口DOを連結し、バラストタンクTから取水したバラスト水Wtを排水口DOに向かって流通させ、排水口DOを通じて船外へ排出するバラスト水排水用配管経路Lrと、バラスト水取水用配管経路Lfを流通する海水Woをろ過するフィルタ装置Fと、フィルタ装置Fの下流においてバラスト水取水用配管経路Lfに塩素系殺菌剤Asを注入する殺菌剤注入口Isを具備する殺菌剤供給装置Sを備えている。
【0051】
船舶VSLは、更に、バラスト水排水用配管経路Lrに還元剤Anを注入する還元剤注入口Inを具備する還元剤供給装置Nを備えており、バラスト水排水用配管経路Lrの途中でバラストタンクTから取水したバラスト水Wtに還元剤Anを注入して、還元剤Anが注入されたバラスト水Wnにし、還元剤Anが注入されたバラスト水Wnを排水口DOを通じて船外へ排出することを可能にしている。
【0052】
船舶VSLは、更に、取水口ITを通じて船外から取水した海水Woを、バラストタンクTを経由することなく排水口DOに向かって流通させ、その途中で殺菌剤供給装置Sの配管経路Lsにおいて海水Woに殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を注入し、殺菌剤残留物Reが注入された海水Wdとして、排水口DOを通じて船外へ排出する残留物排出用配管経路Ldを備えている。
【0053】
残留物排出用配管経路Ldは、フィルタ装置Fをバイパスする配管経路<Ld1>を具備していても、バイパスしない配管経路<Ld2>を具備していてもよい。
【0054】
殺菌剤残留物Reは、殺菌剤供給装置Sが具備するタンクTsや殺菌剤配管経路Lsに残留している、未使用の塩素系殺菌剤Asであるが、その少なくとも一部が濃化してできる物質、塩素系殺菌剤Asの原料である塩素系薬剤ms及び塩素系薬剤msとその溶媒である水wsとを混合してできる混合物Csの少なくとも一つを含む。混合物Csは、塩素系薬剤msを水wsに溶解してできる水溶液を含む。
【0055】
バラストポンプPmの吐出側には、ポンプの停止、故障等の異常時に起こり得る逆流を防止するために、逆止弁Vcmが設置してある。
【0056】
バラストポンプPmは、少なくとも三つの運転モード(後述の第1乃至第3の運転モード)を備えている。
【0057】
バラストポンプPm、複数個のバルブ、殺菌剤供給装置S、還元剤供給装置Nなどの機器・装置等の操作や調整は、当該操作や調整の一部又は全部を手動で行う場合を除き、制御装置PLC又は、図示されていないその他の制御装置に予めインストールしてある制御プログラムに従って自動で行われる。例えば、バラスト水取水用配管経路Lf、バラスト水排水用配管経路Lr及び残留物排出用配管経路Ld(残留物排出用配管経路<Ld1>及び残留物排出用配管経路<Ld2>)のうちのいずれか一つを選択するための複数個の開閉バルブの開閉の設定、設定した配管経路から他の配管経路への変更ならびにバラストポンプPmの運転モードの切り換えは、当該設定、変更及び切り換えの操作の一部又は全部を手動で行う場合を除き、制御装置PLCに予めインストールしてある制御プログラムに従って自動で行われる。
【0058】
制御装置PLCは、バラスト水取水用配管経路Lf、バラスト水排水用配管経路Lr及び残留物排出用配管経路Ldのうちのいずれか又はすべてが具備する計測機器の出力Smを受信し、記録し、監視し、その出力Smに基づき、他のいずれかの機器・装置等を制御するための制御信号Saを生成し、その機器・装置等に向けて発信する機能を有する監視制御装置であってもよい。出力Smは、例えば流量計の出力F(i)、TRO計測装置の出力Sn(j)であり、図示されていない水温計その他の計測装置の出力であってもよい。制御信号Saは、例えば各バルブの開閉や開度を変更するためのモータの制御信号V(k)、バラストポンプPmを初めとするポンプ装置を駆動するモータの制御信号P(l)であり、その他の機器・装置類の動作を制御する信号であってもよい。
【0059】
機器・装置類の動作を計測装置の出力に基づき直接制御する場合には、制御装置PLCによる当該動作の制御は行われない。
【0060】
2)配管経路
図2は、図1に示されている船舶の第1の実施形態におけるバラストポンプの第1の運転モードの説明図であり、図3は、図1に示されている船舶の第1の実施形態におけるバラストポンプの第3の運転モードの説明図である。図4乃至図7は、それぞれ、図1に示されている船舶の第1の実施形態におけるバラストポンプの第2の運転モードのA型乃至D型の説明図である。図2乃至図7は、各運転モードに対応したバルブの開閉状態で描かれている。
【0061】
なお、バラスト水取水用配管経路Lf、バラスト水排水用配管経路Lr及び残留物排出用配管経路Ldのそれぞれに対応する開閉バルブの開閉の設定は、表1に記載のとおりである。
【0062】
バラスト水取水用配管経路Lfは、図2中で太字により描かれている配管経路であり、殺菌剤注入口Isの下流、バラストタンクTの上流に、船外から取水した海水Woと塩素系殺菌剤Asとの混合を促進するためのミキサーMxsを備えており、IT→V1→Q6→Pm→Vcm→Q3→Q4→V2→F→Q5→Is→Mxs→V3→Qt→V5→Sn1→Ft→Tの経路中に、逆止弁Vcm及び複数個の開状態のバルブ(V1, V2, V3,V5)を備えている。
【0063】
バラスト水排水用配管経路Lrは、図3中で太字により描かれている配管経路であり、T→Ft→Sn1→V5→Qt→V4→In→Mxn→Q1→V6→Q6→Pm→Vcm→Q3→Q4→V7→Q2→Sn2→DOの経路中に逆止弁Vcm及び複数個の開状態のバルブ(V4, V5, V6,V7)を備えている。
【0064】
残留物排出用配管経路Ldには、フィルタ装置Fを通過するものと、しないものの二種類ある。フィルタ装置Fを通過しない残留物排出用配管経路<Ld1>は、図4及び図6中で太字により描かれている配管経路であり、IT→V1→Q6→Pm→Vcm→Q3→V9→Q5→Id→Mxs→V3→Qt→V4→In→Mxn→Q1→V8→Q2→Sn2→DOの経路中に逆止弁Vcm及び複数個の開状態のバルブ(V1, V3, V4, V8,V9)を備えている。フィルタ装置Fを通過する残留物排出用配管経路<Ld2>は、図5及び図7中で太字により描かれている配管経路であり、IT→V1→Q6→Pm→Vcm→Q3→Q4→V2→F→Q5→Id→Mxs→V3→Qt→V4→In→Mxn→Q1→V8→Q2→Sn2→DOの経路中に逆止弁Vcm及び複数個の開状態のバルブ(V1, V2, V3, V4, V8)を備えている。
【0065】
ここで、位置Q1は、ミキサーMxnの下流、バルブV8の上流にあり、位置Q2は、バルブV8の下流、排水口DOの上流にある。位置Q4は、バルブV7とバルブV2の間にあり、位置Q3は、バラストポンプPmの下流、位置Q4の上流にある。位置Q5は、フィルタ装置Fの下流、残留物注入口Idの上流にある。バルブV8は、バラストポンプPmを通過しないQ1→Q2の配管経路中にあり、バルブV9は、フィルタ装置Fを通過しないQ3→Q5の配管経路中にある。位置Q6は、バルブV1の下流、バラストポンプPmの上流にあり、且つ、バルブV1とバルブV6の間に位置する。位置Qtは、バラスト水取水用配管経路Lfの場合はバルブV3の下流、バルブV5の上流にあり、バラスト水排水用配管経路Lrの場合は、バルブV5の下流、バルブV4の上流の位置にある。
【0066】
残留物排出用配管経路<Ld1>及び残留物排出用配管経路<Ld2>はいずれも、その配管経路中に残留物注入口Idを備えている。残留物注入口Idは、残留物排出用配管経路Ldを流通する船外から取水した海水Woに、殺菌剤供給装置Sが具備する配管経路Lsに残存する殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を注入する注入口であり、殺菌剤注入口Isと共通の注入口であってもよく、殺菌剤注入口Isの上流に配置していても、下流に配置していてもよい。注入口の代表例は、排出ノズルや排出用開口部である。
【0067】
バラスト水取水用配管経路Lfは複数個のセンサ(TRO計測器Sn1, 流量計Ft)を備え、バラスト水排水用配管経路Lrは複数個のセンサ(TRO計測器Sn1, Sn2, 流量計Ft)を備え、残留物排出用配管経路LdはTRO計測器Sn2を備えているが、それらは例示に過ぎない。各配管経路は、図示されていないその他の機器・装置等を備えていてもよい。
【0068】
バラスト水取水用配管経路Lf、バラスト水排水用配管経路Lr及び残留物排出用配管経路Ld(残留物排出用配管経路<Ld1>及び残留物排出用配管経路<Ld2>)のそれぞれの設定ならびに設定した配管経路から他の配管経路への変更は、表1に示されている開閉バルブの開閉の設定に基づき手動であるいは制御装置PLC又は、図示されていないその他の制御装置に予めインストールしてある制御プログラムに従って制御装置PLC又はその他の制御装置による制御に従って自動で行われる。
【0069】
【表1】
【0070】
各配管経路は、更に、図示されていない、逆止弁Vcm以外の逆止弁や保守点検の便のための手動バルブを備えていてもよい。
【0071】
3)殺菌剤供給装置S3.1)基本構成
殺菌剤供給装置Sは、図1に示されているとおり、塩素系薬剤ms及び塩素系薬剤msの溶媒となる水wsが注入され、両者を収容するタンクTsと、殺菌剤注入口Isと、タンクTsと殺菌剤注入口Isとを接続する殺菌剤配管経路Lsとを備えている。殺菌剤注入口Isは、バラスト水取水用配管経路Lfを流通する船外から取水した海水Woに塩素系殺菌剤Asを注入する、排出ノズル、排出用開口部などの注入口である。殺菌剤配管経路Lsは、タンクTsの下流、殺菌剤注入口Isの上流にポンプPsを、ポンプPsの下流、殺菌剤注入口Isの上流にバルブVsを備える、Ts→Ps→Fs→Vs→Isの配管経路である。
【0072】
殺菌剤供給装置Sは、更に、タンクTsと、残留物注入口Idと、タンクTsと残留物注入口Idとを接続する残留物配管経路Ls*とを備えている。残留物配管経路Ls*は、タンクTsの下流、残留物注入口Idの上流にポンプPsを、ポンプPsとバルブVsの間の位置Qsの下流、残留物注入口Idの上流にバルブVdを備える、Ts→Ps→Fs→Qs→Vd→Idの配管経路である。残留物配管経路Ls*は、タンクTsから位置Qsまでは殺菌剤配管経路Lsと同じであり、位置Qsから分岐して残留物注入口Idに接続している。
【0073】
なお、殺菌剤供給装置Sは、位置Qsと殺菌剤注入口Isとの距離及び位置QsとバルブVsとの距離は、できるだけ小さくなるように、そしてそれにより位置Qsと殺菌剤注入口Isとの間に残留し得る殺菌剤残留物Reの量が少なくなるように設計し、作製してある。また、タンクTsは、塩素系薬剤msの水wsとの混合及び水wsへの溶解を促進するための攪拌装置Sts(図示されず)を備えていてもよい。攪拌装置の典型例は、インペラ式攪拌機である。
【0074】
殺菌剤配管経路Lsと残留物配管経路Ls*の切り換えは、バルブVs, Vdの開閉の切り換えにより行われる。殺菌剤配管経路Lsを選択する場合には、バルブVsを開、バルブVdを閉にし、残留物配管経路Ls*を選択する場合には、バルブVsを閉、バルブVdを開にする。このようなバルブVs, Vdの開閉の切り換えは、当該切り換えの操作の一部又は全部を手動で行う場合を除き、制御装置PLC又は、図示されていないその他の制御装置に予めインストールしてある制御プログラムに従って自動で行う。
【0075】
殺菌剤供給装置Sは、殺菌剤配管経路Ls中に流量計Fsを備えているが、殺菌剤配管経路Ls及び残留物配管経路Ls*中に図示されていないTRO計測機器その他の機器・装置等を備えていてもよい。また、殺菌剤供給装置Sは、ポンプPsの吐出側、位置Qsの上流に、ポンプPsの停止、故障等の異常時に起こり得る逆流を防止するための逆止弁Vcs(図示されず)を備えていてもよく、殺菌剤配管経路Ls及び残留物配管経路Ls*中に図示されていない、逆止弁Vcs以外の逆止弁や保守点検の便のための手動バルブを備えていてもよい。
【0076】
例えば、殺菌剤注入口Isから船外から取水した海水Woへの塩素系殺菌剤Asの注入圧力が足りない場合には、殺菌剤配管経路Lsは、バルブVsの下流、殺菌剤注入口Isの上流に殺菌剤注入用ポンプPis(図示されず)を備えていてもよく、殺菌剤注入用ポンプPis(図示されず)を備える場合には、殺菌剤注入用ポンプPisの下流(吐出口側)、殺菌剤注入口Isの上流に背圧弁を備えていてもよい。また、残留物注入口Idから船外から取水した海水Woへの殺菌剤残留物Reの注入圧力が足りない場合には、残留物配管経路Ls*は、バルブVdの下流、残留物注入口Idの上流に残留物注入用ポンプPid(図示されず)を備えていてもよく、残留物注入用ポンプPidの下流(吐出口側)、残留物注入口Idの上流に背圧弁を備えていてもよい。
【0077】
なお、バルブVsが開、バルブVdが閉であるとき、殺菌剤注入用ポンプPisが稼動状態、残留物注入用ポンプPidが不稼動状態になるように、また、バルブVsが閉、バルブVdが開であるとき、殺菌剤注入用ポンプPisが不稼動状態、残留物注入用ポンプPidが稼動状態になるように切り換える。このようなポンプの稼動状態の切り換えは、当該切り換えの操作の一部又は全部を手動で行う場合を除き、制御装置PLC又は、図示されていないその他の制御装置に予めインストールしてある制御プログラムに従って自動で行われる。
【0078】
また、殺菌剤配管経路Lsは、内容物Csの一部又は全部を、ポンプPsの下流の位置Qs0(図示されず)から、ポンプPsの上流の位置Qs1(図示されず)に、内容物Csの一部又は全部を戻す帰還配管経路Lsr(図示されず)を備えていてもよい。位置Qs0は、ポンプPsの下流、位置Qsの上流の位置あるいは位置Qsであり、位置Qs1は、タンクTsあるいはタンクTsの下流、ポンプPsの上流の位置である。帰還配管経路Lsrの一例は、位置Qs0において、帰還配管経路Lsrが殺菌剤配管経路Lsから枝状に分岐し、殺菌剤配管経路Lsを流通する内容物Csの少なくとも一部は必ず帰還配管経路Lsrを流れるように構成してある配管経路である。帰還配管経路Lsrの別の例は、位置Qs0に、液体サイクロンに代表される固液分離装置を備え、未溶解の塩素系薬剤msが水wsとともに帰還配管経路Lsrに流通するように構成してある配管経路である。いずれの例も、バルブVs及びバルブVdを閉にすることで、内容物Csの全部が、帰還配管経路Lsrにより位置Qs1に戻り、バルブVs及びバルブVdの開度を調整することで、位置Qs1に戻る内容物Csの量が決まるように構成してある。殺菌剤配管経路Lsから殺菌剤残留物Reの除去を行なう際は、殺菌剤配管経路Lsの一部である帰還配管経路Lsrの少なくとも一部は、残留物配管経路Ls*の一部を構成する。
【0079】
3.2)塩素系殺菌剤
塩素系殺菌剤Asの原料である塩素系薬剤msの代表例は、固形の塩素系薬剤であり、固形の塩素系薬剤の代表例は、トリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム及びその水和物、ジクロロイソシアヌル酸カリウム等であり、塩素系殺菌剤Asの代表例は、塩素化イソシアヌル酸ナトリウムの水溶液である。
【0080】
水に対する固形の塩素系薬剤msの溶解度が低いと、水wsへの当該固形の塩素系薬剤msの溶解に時間がかかる、塩素系薬剤の水溶液中の遊離有効塩素濃度が高くならず塩素系殺菌剤Asとしての役割を十分に果たせない、などの問題が生じる。そのような場合には、適当な加熱装置を用いて水wsの水温や固形の塩素系薬剤msを水wsに混合してできる混合物Csの温度を高めたり、適当な撹拌装置を用いて当該混合物Csをより強く撹拌することにより、殺菌剤として必要な遊離有効塩素濃度を有する水溶液Anを必要量用意する。また、殺菌剤配管経路Lsに帰還配管経路Lsrを備える殺菌剤供給装置Sを採用し、ポンプPsにより混合物Csを強く攪拌する回数を増やすことで、固形の塩素系薬剤msの水wsへの溶解を促進してもよい。
【0081】
3.3)水ws
水wsは、海水でも非海水でもよい。しかし、塩素系薬剤msや殺菌剤残留物Reが海水との接触により塩素含有ガスの発生源となる場合には、水wsは清水とする。
【0082】
清水を水wsとして使用する場合、その清水は、船外から船内の専用貯蔵タンクに予め収容してある清水であってもよく、船内に設置してある海水淡水化装置を用いて製造した清水でもよいが、後者であれば、前者のような専用貯蔵タンクを船内に設置する必要がないので、より好ましい。それ故、塩素系薬剤msがトリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム及びその水和物、ジクロロイソシアヌル酸カリウムである場合には、水wsは、清水とする。
【0083】
3.4)殺菌処理
バラスト水取水用配管経路Lf及び殺菌剤配管経路Lsが設定してある場合、図2中に示されているように、ポンプPsにより、塩素系薬剤msを水wsに混合させてできる混合物CsをタンクTsから排出させ、混合物Csを強く撹拌することにより塩素系殺菌剤の水溶液(塩素系殺菌剤)Asを作り出し、塩素系殺菌剤Asを、殺菌剤配管経路Lsを通じて殺菌剤注入口Isから、バラスト水取水用配管経路Lfを流通する船外から取水した海水Woに注入し、これを殺菌する。
【0084】
3.5)殺菌剤残留物の除去
殺菌剤残留物Reの除去の最中は、タンクTsへの塩素系薬剤msの注入は行わない。
(A)強制除去
残留物排出用配管経路Ld及び残留物配管経路Ls*が設定してある場合、ポンプPsにより、タンクTsを含む殺菌剤配管経路Lsに残留している殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を、残留物配管経路Ls*を通じて残留物注入口Idから、残留物排出用配管経路Ld中を流通する船外から取水した海水Woに注入し、除去する。
【0085】
位置Qsと残留物注入口Idとの間に残留し得る殺菌剤残留物Reについては、これを、残留物排出用配管経路Ldの船外から取水した海水Woの流通に起因する負圧により、残留物注入口Id側から海水Wo側に移動させて、除去する。その場合、必要に応じてバルブVsを一時的に開にして当該移動を促してもよい。
【0086】
(B)水洗除去効果の利用
残留物配管経路Ls*が設定してある場合、図4乃至図7に示されているように、予めタンクTsに水wsを収容させておき、あるいはタンクTsへの水wsの注入を続けながら、ポンプPsにより、水wsをタンクTsから排出させ、勢いを付けて残留物配管経路Ls*に流通させる。そして、殺菌剤残留物Reの流動性が、水wsの勢いにより及び/又は殺菌剤残留物Reの水wsと混合又は水wsへの溶解を通じて、向上することを利用して、タンクTsを含む殺菌剤配管経路Lsに残留している殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を、残留物注入口Idから、残留物排出用配管経路Ldを流通する船外から取水した海水Woに注入し、除去する。
【0087】
殺菌剤残留物Reの水wsへの溶解を促進するため、水wsの水温や殺菌剤残留物Reと水wsとの混合物の温度を、残留物配管経路Ls*の耐熱温度範囲内で、且つ、塩素含有ガスの発生への対処ができる範囲で、高めてもよい。
【0088】
なお、殺菌剤配管経路Lsが帰還配管経路Lsrを備える場合において、帰還配管経路Lsrに残留する殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を除去するためには、まず、一時的にバルブVs及びバルブVdを閉にして、水wsを位置Qs0から位置Qs1に戻し、又は、位置Qs0と位置Qs1との間で循環させ、それにより、帰還配管経路Lsrに残留する殺菌剤残留物Reの流動性を、水wsの勢いにより及び/又は水wsと混合又は溶解することにより向上させる。その後、バルブVsを閉、バルブVdを開にして、当該殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を残留物注入口Idから、船外から取水した海水Woに注入すればよい。
【0089】
(C)反応除去効果の利用
図8は、殺菌剤残留物の除去の変形例の説明図である。図8を参照しながら、図4乃至図7に示されている殺菌剤供給装置Sにおいて、位置Qnから還元性物質又はアルカリ性物質An*(以下「除去反応性物質An*」という場合がある)を注入することにより残留物配管経路Ls*中に注入する場合について説明する。ここで、位置Qnは、水wsを供給する配管経路のタンクTs上流の位置、タンクTs及びタンクTsの下流、残留物配管経路Ls*の途中にある位置のうち少なくとも一つである。位置Qnは、図8中に示されているように、(c1)水wsを供給する配管経路のタンクTs上流の位置であるが、これにとどまらず、(c2)タンクTsの位置や(c3)タンクTsの下流、残留物配管経路Ls*の途中にある位置(図示されず)であってもよく、それら三つ、つまり(c1)乃至(c3)のうち複数の位置であってもよい。
【0090】
タンクTs及び/又はその他の殺菌剤配管経路Lsに残留している殺菌剤残留物Reと除去反応性物質An*とを反応させると、反応生成物の増加とともに当該殺菌剤残留物Reの量は減少し、場合によっては残留する当該殺菌剤残留物Reの流動性が高くなる。減量された又は流動性が高められた殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を、当該反応生成物質とともに残留物注入口Idから、残留物排出用配管経路Ldを流通する船外から取水した海水Woに注入し、除去する。また、殺菌剤残留物Reが塩素含有ガスの発生源になる場合には、還元性物質により当該殺菌剤残留物Re中の遊離有効塩素の還元によって、又はアルカリ性物質により殺菌剤残留物Reを含む系のpHを高くしアルカリ雰囲気として当該殺菌剤残留物質Re中の遊離有効塩素を有する殺菌剤成分を分解することにより、塩素含有ガスの発生を抑制又は防止する。塩素系薬剤msが塩素化イソシアヌル酸塩である場合には、アルカリ性物質により殺菌剤残留物Reを含む系のpHを高くしアルカリ雰囲気とすることによりイソシアヌル酸はシアヌル酸に形態が変化し、塩素化イソシアヌル酸塩と水から遊離有効塩素を有する殺菌剤成分である次亜塩素酸が生成する反応が進み、生成した次亜塩素酸は自己分解反応により塩酸と酸素を生成して有効塩素を失って塩素含有ガスの発生が抑制又は防止される。アルカリ性物質としては、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物(塩)またはアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸化物(塩)を用いる。具体的には水酸化ナトリウムまたは炭酸ナトリウムを用いる。
【0091】
除去反応性物質An*を使用する上記の反応除去効果の利用と、上記(B)の水洗除去効果の利用との組み合わせにより、殺菌剤残留物Reを除去してもよい。例えば、除去反応性物質An*が水溶液である場合には、除去反応性物質An*の水溶液をポンプPsにより勢いを付けて残留物配管経路Ls*に流通させれば、両効果の利用による殺菌剤残留物Reの除去を行うことができる。また、除去反応性物質An*を残留物配管経路Ls*に注入した後、除去反応性物質An*を含有しない水wsをタンクTsに注入し続けながら、ポンプPsにより、水wsをタンクTsから排出させ、勢いを付けて残留物配管経路Ls*に流通させれば、反応除去効果の利用による除去に引き続き、水洗除去効果の利用による除去を行うことができる。
【0092】
(D)除去反応性物質An*
除去反応性物質An*が還元性物質である場合は、後述の還元剤Anと同じ物質であっても、異なる物質であってもよい。また、還元剤供給装置Nが具備するタンクTnから取り出した還元剤Anをそのまま又は必要に応じて希釈して、除去反応性物質An*として使用してもよい(図20及び図21参照)。
【0093】
(E)反応除去の際の発熱対策
殺菌剤残留物Reと除去反応性物質An*との反応(還元反応又は分解反応)に伴う発熱により船内環境が悪化するおそれがある場合には、下記(e1)乃至(e3)の少なくとも一つにより、当該発熱による船内環境への実害を抑制又は防止する。
【0094】
(e1) 除去反応性物質An*の濃度が低くなるようにして、殺菌剤残留物Reと除去反応性物質An*との反応に伴う発熱の量を抑える。
例えば、(e11)タンクTsに注入する水wsの量を、塩素系殺菌剤Asを作り出す場合よりも多くして、タンクTs中の除去反応性物質An*の濃度を低く抑える; e12)除去反応性物質An*の水溶液を予め用意しておき、これをタンクTsに注入して、タンクTs中の除去反応性物質An*の濃度を低く抑える;(e13)除去反応性物質An*の水溶液を予め用意しておき、これを小分けにして複数回にわたり水wsに注入することで、除去反応性物質An*を含有する水wsと除去反応性物質An*を含有しない水wsを交互に残留物配管経路Ls*に流通させ、殺菌剤残留物Reと除去反応性物質An*との反応による発熱を、除去反応性物質An*を含有しない水wsにより抑える、といった対策を行う。(e2) 除去反応性物質An*を残留物配管経路Ls*中に注入した後、除去反応性物質An*を含有しない水wsを残留物配管経路Ls*中に注入し、冷却する。例えば、除去反応性物質An*を残留物配管経路Ls*中に注入した後、除去反応性物質An*を含有しない水wsをタンクTsに注入し、ポンプPsにより、タンクTsからタンクTs内の内容物の少なくとも一部を排出させ、残留物配管経路Ls*中に流通させることで、当該水wsの冷却作用により当該発熱を抑制する。(e3) 残留物配管経路Ls*にタンクTsとは別の反応槽Tsmを設置し、主に反応槽Tsmにおいて、殺菌剤残留物Reと除去反応性物質An*との反応による発熱が起こるように構成する。
【0095】
図9は、図8中に示されている殺菌剤供給装置Sの別の変形例の説明図である。図9を参照して上記(e3)の対策が例説される。この変形例では、殺菌剤配管経路Lsは、Ts→Qsa→Vs2→Qsb→Ps→Fs→Qs→Vs→Isの配管経路であり、残留物配管経路Ls*は、Ts→Qsa→Vs2→Qsb→Ps→Fs→Qs→Vd→Qsc→Vs4→Idの配管経路であり、図8における殺菌剤配管経路Ls及び残留物配管経路Ls*と基本的に変わらない。この変形例は、更に、反応槽Tsmを通過する残留物配管経路Ldrである、Ts→Qsa→Vs1→Tsm→Vs3→Qsb→Ps→Fs→Qs→Vd→Qsc→Vs4→Idの配管経路を備えており、当該残留物配管経路Ldrは、位置Qscから分岐して反応槽Tsmに戻る帰還経路(Qsc→Vs5→Tsm)を備える残留物配管経路Ldr*であってもよい。
【0096】
ここで、位置Qsaは、タンクTsから反応槽Tsmを経由せずにポンプPsに向かう配管経路とタンクTsから反応槽Tsmに向かう配管経路の分岐点であり、位置Qsbは、位置Qsaの下流、ポンプPsの上流にある、位置Qsaから反応槽Tsmを経由せずにポンプPsに向かう配管経路と反応槽TsmからポンプPsに向かう配管経路との接続点である。バルブVs1は、位置Qsaの下流、反応槽Tsmの上流にある開閉バルブであり、バルブVs2は、位置Qsaの下流、位置Qsbの上流にある開閉バルブであり、バルブVs3は、反応槽Tsmの下流、位置Qsbの上流にある開閉バルブである。
【0097】
位置Qscは、バルブVdの下流、残留物注入口Idの上流にある位置である。バルブVs4は、位置Qscの下流、残留物注入口Idの上流にある開閉バルブであり、バルブVs5は、位置Qscの下流にある、位置Qscから分岐する残留物配管経路Ldr*の帰還経路(Qsc→Vs5→Tsm)が備える開閉バルブである。
【0098】
殺菌剤配管経路Lsは、バルブVs2及びVsを開にし、バルブVs1、Vs3及びVdを閉にすることで設定し、残留物配管経路Ls*は、バルブVs2、Vd及びVs4を開にし、バルブVs1、Vs3、Vs及びVs5を閉にすることで設定する。残留物配管経路Ldrは、バルブVs1、Vs3、Vd及びVs4を開にし、バルブVs2、VsおよびVs5を閉にすることにより設定し、残留物配管経路Ldr*は、バルブVs1、Vs3、Vd及びVs5を開にし、バルブVs2、VsおよびVs4を閉にすることにより設定する。
【0099】
殺菌剤配管経路Ls、残留物配管経路Ls*、残留物配管経路Ldr及び残留物配管経路Ldr*の切り換えは、当該切り換えの操作の一部又は全部を手動で行う場合を除き、制御装置PLC又は、図示されていないその他の制御装置に予めインストールしてある制御プログラムに従って自動で行われる。
【0100】
例えば、殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を水wsとともに残留物配管経路Ldr*に沿って循環させ、その循環を所定回数又は所定時間を行った後に残留物配管経路Ldrに切り換えて、残留物注入口Idから、バラスト水取水用配管経路Lfを流通する船外から取水した海水Woに注入するように自動制御が行われる。また、殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を水wsとともに、まず、残留物配管経路Ls*に沿って流通させ、残留物注入口Idから船外から取水した海水Woに注入した後、残留物配管経路Ls*から残留物配管経路Ldr*に切り換え、引き続き、水wsを流通させることで、除去し切れなかった殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を残留物配管経路Ldr*に沿って循環させ、その循環を所定回数又は所定時間を行った後に残留物配管経路Ldrに切り換えて、残留物注入口Idから船外から取水した海水Woに注入するように自動制御が行われる。いずれの自動制御が行われるか、あるいはいかなるその他の自動制御が行われるかは、制御プログラムの内容次第である。
【0101】
残留物配管経路Ldr, Ldr*が設定してある場合、タンクTsから反応槽TsmへのタンクTsの内容物の移動は、位置Qsaの下流、反応槽Tsmの上流にあるポンプ(図示されず)により、又は重力の作用により行われる。バルブVs3が開である場合には、ポンプPsの力が生む出す負圧により当該移動が行われてもよい。
【0102】
反応槽Tsmは、殺菌剤残留物Reが除去反応性物質An*を含有する水wsとともに少なくとも一時的に又は短時間停留する構造(例えば、深底の構造)を有している。そのため、殺菌剤残留物Reと除去反応性物質An*との反応による発熱は、反応槽Tsm内で進行し易くなる。しかも、ポンプPsによりタンクTsの内容物の少なくとも一部を排出させ、さらに、反応槽Tsmの内容物の少なくとも一部を排出させ、勢いを付けて残留物配管経路Ldrに流通させ、反応槽Tsmよりも下流に残留する殺菌剤残留物Reの少なくとも一部とともに残留物注入口Idから、残留物排出用配管経路Ldを流通する船外から取水した海水Woに注入し、除去するので、当該発熱が起こる場所は、主として反応槽Tsmになる。従って、当該発熱への対策は、主として反応槽Tsmに対して講じればよい。
【0103】
なお、除去反応性物質An*を残留物配管経路Ls*中に注入した後、除去反応性物質An*を含有しない水wsをタンクTsに注入し続けながら、ポンプPsにより、水wsをタンクTsから排出させ、勢いを付けて残留物配管経路Ls*中に流通させれば、上記(e2)のとおり、当該水wsの冷却作用により当該発熱を抑制することができ、しかも、水洗除去効果の利用による殺菌剤残留物Reの除去を行うことができ、これによっても当該発熱を抑制することができるので、より好ましい。
【0104】
殺菌剤残留物Reと除去反応性物質An*との反応によると除去反応性物質An*との反応を促進する必要がある場合や当該反応を促進しても発熱対策に支障を生じず、発熱の悪影響を抑えることができる場合には、タンクTsmは、その内容物を攪拌するための攪拌装置(図示されず)を備えていてもよい。
【0105】
(F)帰還配管経路Lsrからの除去
殺菌剤配管経路Lsが帰還配管経路Lsrを備える場合において、帰還配管経路Lsrに残留する殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を除去するためには、(f1)まず、一時的にバルブVs及びバルブVdを閉にして、水wsを位置Qs0から位置Qs1に戻し、又は、位置Qs0と位置Qs1との間で循環させ、帰還配管経路Lsrに残留する殺菌剤残留物Reの流動性を、水wsの勢いにより及び/又は殺菌剤残留物Reの水wsと混合又は水wsへの溶解を通じて向上させる。その後、バルブVsを閉、バルブVdを開にして、当該殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を残留物注入口Idから、船外から取水した海水Woに注入すればよい。また、(f2)まず、一時的にバルブVs及びバルブVdを閉にして、除去反応性物質An*を含有する水wsを位置Qs0から位置Qs1に戻し、又は、位置Qs0と位置Qs1との間で循環させ、その過程で、殺菌剤残留物Reの中の遊離有効塩素と当該除去反応性物質An*とを反応させることにより、あるいは/ならびに、水wsの勢いにより及び/又は殺菌剤残留物Reの水wsと混合又は水wsへの溶解を通じて、帰還配管経路Lsrに残留する殺菌剤残留物Reの流動性を向上させる。その後、バルブVsを閉、バルブVdを開にして、反応生成物を、当該殺菌剤残留物Reの少なくとも一部とともに、残留物注入口Idから、船外から取水した海水Woに注入すればよい。
【0106】
3.6)殺菌剤注入口と残留物注入口の兼用
図1乃至図9に示されているように、殺菌剤注入口Isと残留物注入口Idを別々にすると、殺菌剤配管経路Lsのうち位置Qsと殺菌剤注入口Isとの間の部分の構造が複雑になり、その部分に残留する殺菌剤残留物Reを十分除去できないという問題が生じる場合がある。また、残留物配管経路Ls*のバルブVdの下流、残留物注入口Idの上流に残留物注入用ポンプPid(図示されず)を備える場合は勿論、さらに残留物注入用ポンプPidの下流(吐出口側)、残留物入口Idの上流に背圧弁を備える場合には、残留物配管経路Ls*の構造が複雑化する。これに対し、殺菌剤注入口Isを残留物注入口Idと兼ねさせる(殺菌剤注入口兼残留物注入口Is/Id)と、殺菌剤配管経路Lsは残留物配管経路Ls*を兼ねる簡素なもの(Ts→Ps→Fs→Vs→Is/Id)になり、バルブVdは無用になり、総じて殺菌剤供給装置Sの内部構造が簡素になるので、上記の問題の発生を抑制又は防止することができる。
【0107】
例えば、図10に示されている殺菌剤供給装置Sは、バルブVsを開にすることで、ポンプPsにより、殺菌剤注入口兼残留物注入口Is/Id から、塩素系殺菌剤Asを、バラスト水取水用配管経路Lfを流通する船外から取水した海水Woに注入することができるので、図8中に示されている殺菌剤供給装置Sに比して遜色がない。むしろ、内部構造をより簡素にすることができ、しかも、殺菌剤注入口Isと残留物注入口Idとを別々にした場合に位置Qsと殺菌剤注入口Isとの間に残留する殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を含むより多くの殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を、残留物排出用配管経路Ld中を流通する船外から取水した海水Woに注入することができるので、図8中に示されている殺菌剤供給装置Sよりも好ましい。
【0108】
殺菌剤注入口兼残留物注入口Is/Idは、図9に示されている殺菌剤供給装置Sにおいても、図11中に示されているように採用することができる。図11中に示されている殺菌剤供給装置Sは、殺菌剤注入口兼残留物注入口Is/Idの採用及びその採用に伴い必要になる変形を除き、図9中に示されている殺菌剤供給装置と同じである。具体的には、殺菌剤注入口兼残留物注入口Is/Idの採用により、バルブVd及びバルブVs4が無用になり、位置Qsと位置Qscとを同一視できるようになり、殺菌剤配管経路Lsが残留物配管経路Ls*を兼用し(Ts→Qsa→Vs2→Qsb→Ps→Fs→Qs→Vs→Is/Id)、残留物配管経路LdrがTs→Qsa→Vs1→Tsm→Vs3→Qsb→Ps→Fs→Qs→Vs→Is/idの配管経路となり、残留物配管経路Ldr*が、位置Qsから分岐してタンクTsmに戻る循環経路(Qs→Vs5→Tsm)を伴う残留物配管経路Ldr*に相当することを除き、図9中に示されている殺菌剤供給装置と同じである。
【0109】
4)還元剤供給装置N4.1)基本構成
還元剤供給装置Nは、図1中に示されているとおり、還元剤の原料mn及びその溶媒となる水wnが注入され、両者を収容するタンクTnと、還元剤注入口Inと、タンクTnと還元剤注入口Inとを接続する還元剤配管経路Lnとを備えている。還元剤注入口Inは、バラスト水排水用配管経路Lr中を流通するバラストタンクTから取水したバラスト水Wtに還元剤Anを注入する注入口である。還元剤配管経路Lnは、タンクTnの下流、還元剤注入口Inの上流にポンプPnを、ポンプPnの下流、還元剤注入口Inの上流にバルブVnを備える、Tn→Pn→Fn→Vn→Inの配管経路である。
【0110】
バルブVnの開閉の切り換えは、当該切り換えの操作の一部又は全部を手動で行う場合を除き、制御装置PLC又は、図示されていないその他の制御装置に予めインストールしてある制御プログラムに従って自動で行われる。
【0111】
還元剤供給装置Nは、還元剤配管経路Ln中に流量計Fnを備えているが、還元剤配管経路Ln中に図示されていないTRO計測機器その他の機器・装置等を備えていてもよい。また、還元剤供給装置Nは、ポンプPnの吐出側、バルブVnの上流に、ポンプPnの停止、故障等の異常時に起こり得る逆流を防止のための逆止弁Vcn(図示されず)を備えていてもよく、還元剤配管経路Ln中に図示されていない、逆止弁Vcn以外の逆止弁や、保守点検の便のための手動バルブを備えていてもよい。
【0112】
4.2)還元剤
還元剤Anの原料mnの代表例は、亜硫酸ナトリウム又はその水和物、チオ硫酸ナトリウム又はその水和物あるいはそれらの水溶液である。
【0113】
原料mnが固形であり、水に対する原料mnの溶解度が低い場合には、適当な加熱装置を用いて水wnの水温や原料mnを水wnに混合してできる混合物Cnの温度を高めたり、適当な撹拌装置を用いて当該混合物Cnをより強く撹拌することにより、還元剤として必要な還元性物質の濃度を有する水溶液Anを必要量用意する。
【0114】
原料mnが固形であり、水に対する原料mnの溶解度が高く、原料mnと水wnをタンクTnに収容し軽く撹拌しただけでタンクTn内で還元剤Anの必要量を確保できる場合には、ポンプPnによる混合物Cnの強撹拌は、還元剤Anの用意に不可欠ではない。また、原料mnの水溶液(還元剤An)を予め用意できる場合には、原料mnと水wnをタンクTnに注入する必要がなく、またポンプPnによる混合物Cnの強撹拌も不可欠ではなく、当該水溶液をタンクTnに注入するだけで良い。
【0115】
4.3)還元処理
バラスト水排水用配管経路Lrが設定してあり、バルブVnが開である場合、ポンプPnにより、原料mnの水溶液(還元剤)Anを、還元剤配管経路Lnを通じて還元剤注入口Inから、バラスト水排水用配管経路Lrを流通するバラストタンクTから取水したバラスト水Wtに注入し、バラスト水Wt中に残留する、塩素系殺菌剤に由来する遊離有効塩素を還元し、船外排水が許される水準まで無害化する。
【0116】
バラスト水排水用配管経路Lrが設定してない場合(例えばバラスト水取水用配管経路Lfや残留物排出用配管経路Ldが設定してある場合)には、通常は、バルブVnは閉とし、ポンプPnは停止させる。ただし、後述するバラストポンプPmの第2の運転モードのうち、図6中に示されているC型及び図7中に示されているD型の場合には、残留物排出用配管経路Ldを流通する海水(殺菌剤残留物Reの少なくとも一部が残留物注入口Idから注入済みの海水Wo*)に還元剤Anを注入するので、バルブVnは開とし、ポンプPnを稼動させる。
【0117】
4.4)除去反応性物質An*の用意
殺菌剤残留物Reの反応除去のために使用する除去反応性物質An*を還元剤Anから用意する場合には、図20及び図21中に示されている構成例のように、ポンプPnにより、タンクTnから、タンクTnの内容物Cnの少なくとも一部を排出させた後、ポンプ下流、還元剤注入口Inの上流の位置Qn*で還元剤配管経路Lnから枝分かれする分岐配管経路Lnsを通じて還元剤Anを取り出し、取り出した還元剤Anをそのまま又は水で希釈して当該除去反応性物質An*として使用する。なお、除去反応性物質An*を還元剤Anから用意しない場合には、別途、除去反応性物質An*を収容する容器を用意して、その容器から除去反応性物質An*を残留物配管経路Ls*中に注入する構成にする。
【0118】
5)バラスト水処理方法
図12は、船舶VSLにおいて実行されるバラスト水処理方法の工程フロー説明図である。5.1)バラスト水処理方法WTM
船舶VSLにおいて実行するバラスト水処理方法WTMは、図12中に示されているとおり、三つの段階、つまり第1の段階ST1、第2の段階ST2及び第3の段階ST3を有しており、バラストポンプPmの第1の運転モードにおいて第1の段階ST1が実行され、その第2の運転モード(A型及びB型)において第2の段階ST2が実行され、その第3の運転モードにおいて第3段階ST3が実行される。
【0119】
第1の段階ST1は、殺菌剤供給装置Sにおいて塩素系殺菌剤Asを用意する工程ss1、船外から取水した海水Woを船内のバラスト水取水用配管経路Lfで流通させる工程ss2、バラスト水取水用配管経路Lfで流通している船外から取水した海水Woに対し、用意しておいた塩素系殺菌剤Asを殺菌剤注入口Isから注入して殺菌処理を施す工程ss3及び塩素系殺菌剤Asが注入してある海水WsをバラストタンクTに収容又は漲水する工程ss4を有する。
【0120】
第2の段階ST2は、船外から取水した海水Woを船内の残留物排出用配管経路Ldで流通させる工程sd1、残留物排出用配管経路Ldで流通している船外から取水した海水Woに対して、殺菌剤供給装置Sに残留している殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を、残留物配管経路Ls*を通じて残留物注入口Id又は殺菌剤注入口兼残留物注入口Is/Idから注入して除去する工程sd2及び殺菌剤残留物Reの少なくとも一部が注入してある海水Wdを船外へ排水する工程sd3を有する。
【0121】
第3の段階ST3は、還元剤供給装置Nにおいて還元剤Anを用意する工程sn1、バラストタンクTから取水したバラスト水Wtを船内のバラスト水排水用配管経路Lrで流通させる工程sn2、バラスト水排水用配管経路Lrで流通しているバラスト水Wtに対し、用意しておいた還元剤Anを還元剤注入口Inから注入して還元処理を施す工程sn3及び還元剤Anが注入してあるバラスト水Wnを船外へ排水する工程sn4を有する。
【0122】
第2の段階ST2では、ポンプPsの力、重力及び/又は船外から取水した海水Woの流通が生む出す負圧を利用して、殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を船外から取水した海水Wo側に移動させ海水Woに注入する。その際、タンクTsへの水wsの注入量を増やし、ポンプPsにより勢いを付けたより多くの水woを殺菌剤配管経路Isに流通させることで、殺菌剤残留物Reの流動性を高め、それにより船外から取水した海水Woへの殺菌剤残留物Reの注入を促進させてもよい。
【0123】
また、連続的に、非連続的に、周期的に若しくは反復的に又は一時的に還元性物質An*を残留物配管経路Ls*に流通させる(例えば、除去反応性物質An*を水wsに混入した後、その除去反応性物質An*を含有する水wsを連続的に、非連続的に、周期的に若しくは反復的に又は一時的に残留物配管経路Ls*に流通させる)ことで、殺菌剤残留物Reの中に残存する遊離有効塩素の少なくとも一部と除去反応性物質An*とを反応させて、その反応生成物とともに、残りの殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を船外から取水した海水Woに注入してもよく、その際、タンクTsへの水wsの注入量を増やし、ポンプPsにより勢いを付けたより多くの水wsを殺菌剤配管経路Isに流通させてもよい。
【0124】
第3の段階ST3は、第2の段階ST2において行う殺菌剤残留物Reの除去のために不可欠な段階とはいえないが、第1の段階ST1の工程ss3(塩素系殺菌剤Asによる殺菌処理)を伴うバラスト水処理方法WTMでは、通常は不可欠である。
【0125】
5.2)バラスト水処理方法WTMの変形例
第2の段階ST2において殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を船外から取水した海水Woへ注入すると、その注入の開始から終了までの期間中、当該海水Wo中の、殺菌剤残留物Reに由来する遊離有効塩素の濃度が過度に高くなり、当該海水Woが船外への排水に適さない水質になるおそれがある。そのおそれがある場合には、当該期間中、殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を注入してある海水Wo(以下「Wo*」という場合がある)をバラスト水Wtとみなして第3の段階ST3を行い、海水Wo*中の、殺菌剤残留物Reに由来する遊離有効塩素を還元し、当該海水Wo*を船外排水が許される水準まで無害化するに足る還元剤Anを、還元剤注入口Inから注入する。そのようなバラスト水処理の段階を第2*の段階ST2*と仮称すると、第1の段階ST1、第2*の段階ST2*及び第3の段階ST3を有し、バラストポンプPmの第1の運転モードにおいて第1の段階ST1を実行し、その第2の運転モード(C型及びD型)において第2*の段階ST2*を実行し、その第3の運転モードにおいて第3の段階ST3を実行する、図12中に示されているようなバラスト水処理方法WTMの変形例を考えることができる。
【0126】
第2*の段階ST2*は、船外から取水した海水Woを船内の残留物排出用配管経路Ldで流通させる工程sd1、残留物排出用配管経路Ld中を流通している船外から取水した海水Woに対し、殺菌剤供給装置Sに残留している殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を、残留物配管経路Ls*を通じて残留物注入口Id又は殺菌剤注入口兼残留物注入口Is/Idから注入して除去する工程sd2、還元剤供給装置Nにおいて還元剤Anを用意する工程sn1、殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を注入してある海水Wo(つまり海水Wo*)を船内の残留物排出用配管経路Ldで流通させる工程sn2*、残留物排出用配管経路Ldで流通している海水Wo*に対し、用意しておいた還元剤Anを還元剤注入口Inから注入して還元処理を施す工程sn3*及び還元剤Anが注入してある海水Wo*を船外へ排水する工程sn4*を有する。
【0127】
5.3)バラスト水処理方法の実行例
例えば、貨物船が第1の港から空荷で出港するとき、第1の港で海水がバラストタンクに積み込まれ、貨物を積載する第2の港でバラストタンクから海水が船外へ排出される場合では、第1の港において第1の段階ST1が行われ、第2の港で第3の段階ST3が行われる。第2の段階及び第2*の段階は、いずれも、第1の港から出航する前に又は第1の港から出航後、第2の港に到着する前の航行途中で行われる。
【0128】
なお、第2の港に到着した段階で、第2の段階及び第2*の段階が行われても、塩素系薬剤msの成分の析出物の発生・堆積・固化の進行を抑えることや、殺菌剤残留物Reに起因する動作不具合の発生を抑制又は防止することができるのであれば、それらの段階は、第2の港に到着した段階又はその後に行われてもよい。
【0129】
6)バラストポンプPmの運転モード6.1)第1の運転モード
バラストポンプPmの第1の運転モードにおけるバルブの開閉の設定は、表2に示されているとおりである。
【0130】
【表2】
【0131】
この第1の運転モードでは、図2中に太字により描かれている配管経路において、第1の段階ST1が実行される。具体的には、船舶VSL外にある海水Woを、バラストポンプPmにより、取水口ITから船舶VSL内に取水し、バラスト水取水用配管経路Lfを通じてバラストタンクTに向けて流通させ、途中フィルタ装置Fでろ過し、引き続き殺菌剤注入口Isから塩素系殺菌剤Asを注入し、ミキサーMxsにより撹拌した後、塩素系殺菌剤As注入済みの海水WsとしてバラストタンクTに収容又は漲水する。
【0132】
殺菌剤供給装置Sは、ポンプPsにより、殺菌剤配管経路Lsに沿って、塩素系薬剤msを水wsに混合してできる混合物CsをタンクTsから排出させ、混合物Csを撹拌することにより塩素系殺菌剤の水溶液(塩素系殺菌剤)Asを作り出し、塩素系殺菌剤Asを、殺菌剤注入口Isから、バラスト水取水用配管経路Lf中を流通する船外から取水した海水Woに注入する。
【0133】
塩素系薬剤msが海水との接触により塩素含有ガスの発生源になるおそれがある場合(例えば、塩素系薬剤msがトリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム及びその水和物、ジクロロイソシアヌル酸カリウムである場合)には、水wsを清水とする。その清水は、船内に設置してある海水淡水化装置を用いて製造した清水であることが好ましい。
【0134】
6.2)第2の運転モード
バラストポンプPmの第2の運転モードには、A型、B型、C型及びD型の四種類ある。各型におけるバルブの開閉の設定は、表2に示されているとおりである。
【0135】
A型及びB型では、第2の段階ST2が実行され、それ故、還元剤供給装置Nからの還元剤Anの、残留物排出用配管経路Ld中を流通する海水への注入(工程sn3*)は行われない。C型及びD型では、第2*の段階ST2*が実行され、それ故、還元剤供給装置Nからの還元剤Anの、残留物排出用配管経路Ld中を流通する海水への注入(工程sn3*)が行われる。なお、残留物排出用配管経路Ldは、A型及びC型では、残留物排出用配管経路<Ld1>であり、B型及びD型では、残留物排出用配管経路<Ld2>である。
【0136】
(A)A型
第2の運転モードのA型では、図4中に太字により描かれている配管経路において、第2の段階ST2が実行される。具体的には、船舶VSL外にある海水Woを、バラストポンプPmにより、取水口ITから船舶VSL内に取水し、残留物排出用配管経路<Ld1>を通じて排出口DOに向けて流通させ、途中フィルタ装置Fを通過させず、次いで残留物注入口Idから殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を注入する。引き続き、殺菌剤残留物Re注入済みの海水Wo(つまり海水Wo*)を、ミキサーMxs, Mxnにより撹拌した後、攪拌後の殺菌剤残留物Reが注入された海水Wdとして排出口DOから船VSL外に排水する。
【0137】
(B)B型
第2の運転モードのB型では、図5中に太字により描かれている配管経路において、第2の段階ST2が実行される。具体的には、船舶VSL外にある海水Woを、バラストポンプPmにより、取水口ITから船舶VSL内に取水し、残留物排出用配管経路<Ld2>を通じて排出口DOに向けて流通させ、途中フィルタ装置Fを通過させた後、残留物注入口Idから殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を注入する。引き続き、殺菌剤残留物Re注入済みの海水Wo(つまり海水Wo*)を、ミキサーMxs, Mxnにより撹拌した後、攪拌後の殺菌剤残留物Reが注入された海水Wdとして排出口DOから船VSL外に排水する。
【0138】
(C)C型
第2の運転モードのC型では、図6中に太字により描かれている配管経路において、第2*の段階ST2*が実行される。具体的には、船舶VSL外にある海水Woを、バラストポンプPmにより、取水口ITから船舶VSL内に取水し、残留物排出用配管経路<Ld1>を通じて排出口DOに向けて流通させ、途中フィルタ装置Fを通過させず、次いで残留物注入口Idから殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を船外から取水した海水Woに注入する。引き続き、殺菌剤残留物Re注入済みの海水Wo(つまり海水Wo*)を、ミキサーMxsにより撹拌し、還元剤注入口Inから還元剤Anを注入し、還元剤An注入済みの海水Wo*をミキサーMxnにより撹拌した後、攪拌後の殺菌剤残留物Reが注入された海水Wdとして排出口DOから船VSL外に排水する。
【0139】
(D)D型
第2の運転モードのD型では、図7中に太字により描かれている配管経路において、第2*の段階ST2*が実行される。具体的には、船舶VSL外にある海水Woを、バラストポンプPmにより、取水口ITから船舶VSL内に取水し、残留物排出用配管経路<Ld2>を通じて排出口DOに向けて流通させ、途中フィルタ装置Fを通過させた後、残留物注入口Idから殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を船外から取水した海水Woに注入する。引き続き、殺菌剤残留物Re注入済みの海水Wo(つまり海水Wo*)を、ミキサーMxsにより撹拌し、 還元剤注入口Inから還元剤Anを注入し、還元剤An注入済みの海水Wo*をミキサーMxnにより撹拌した後、攪拌後の殺菌剤残留物Reが注入された海水Wdとして排出口DOから船VSL外に排水する。
【0140】
第2の運転モードがA型乃至D型のいずれであっても:<1> 殺菌剤供給装置Sは、ポンプPsにより、タンクTsや殺菌剤配管経路Lsに残留する殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を、残留物配管経路Ls*に沿って流通させ、残留物注入口Idから、残留物排出用配管経路Ldを流通する船外から取水した海水Woに注入する。この場合、タンクTsには塩素系薬剤msは注入しない。しかし、連続的に、非連続的に、周期的もしくは反復的に又は一時的に水wsをタンクTsに注入し、残留物配管経路Ls*中を流通させでもよい。また、図8中に示されている殺菌剤製造装置Sの場合のように、連続的に、非連続的に、周期的もしくは反復的に又は一時的に除去反応性物質An*を残留物配管経路Ls*中に流通させることで、殺菌剤残留物Reの中に残存する遊離有効塩素の少なくとも一部と除去反応性物質An*とを反応させてもよく、その際、タンクTs中への水wsの注入量を増やし、ポンプPsにより勢いを付けたより多くの水wsを殺菌剤配管経路Is中に流通させてもよい。<2> 除去反応性物質An*を残留物配管経路Ls*中に流通させるのであれば、図9中に示されている殺菌剤製造装置Sの場合のように、タンクTsの下流、残留物配管経路Ldrの途中に反応槽Tsmを設けて、殺菌剤残留物Reと除去反応性物質An*との反応を主に反応槽Tsmで起こさせ、その後タンクTsmの内容物の少なくとも一部を残留物配管経路Ldr中に流通させ、反応槽Tsmよりも下流に残留する殺菌剤残留物Reとともに残留物注入口Idから、残留物排出用配管経路Ldを流通する船外から取水した海水Woに注入するように構成してもよい。<3> 殺菌剤残留物Reが海水との接触により塩素含有ガスの発生源になるおそれがある場合(例えば、塩素系薬剤msがトリクロロイソシアヌル酸、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム及びその水和物、ジクロロイソシアヌル酸カリウムである場合)には、水wsを清水とする。その清水は、船内に設置してある海水淡水化装置を用いて製造した清水であることが好ましい。<4> 除去反応性物質An*は、還元剤Anと同じ物質であっても、異なる物質であってよい。タンクTnから取り出した還元剤Anをそのまま又は必要に応じて希釈して、除去反応性物質An*として使用してもよい。
【0141】
6.3)第3の運転モード
バラストポンプPmの第3の運転モードにおけるバルブの開閉の設定は、表2中に示されているとおりである。
【0142】
この第3の運転モードでは、図3中に太字により描かれている配管経路において、第3の段階ST3が実行される。具体的には、バラストタンクTに収容してある塩素系殺菌剤As注入済みの海水Wsをバラスト水Wtとして当該バラストタンクTから取水し、そのバラストタンクTから取水したバラスト水Wtを、バラストポンプPmにより、バラスト水排水用配管経路Lr中を通じて排水口DOに向けて流通させ、途中還元剤注入口Inから、塩素系殺菌剤Asに由来する遊離有効塩素を還元し無害化するための還元剤Anを注入し、ミキサーMxnにより撹拌した後、還元剤An注入済みのバラスト水Wnとして排水口DOから船舶VSL外へ排水する。
【0143】
還元剤供給装置Nは、ポンプPnにより、還元剤配管経路Lnに沿って、還元剤の原料mnを水wnに混合してできる混合物CnをタンクTnから排出させ、混合物Cnを撹拌することにより還元剤Anを作り出し、還元剤Anを、還元剤注入口Inから、バラスト水排水用配管経路Lr中を流通するバラストタンクTから取水したバラスト水Wtに注入する。
【0144】
なお、水溶液状態の還元剤Anを用意することができ、タンクTnに当該還元剤Anを予め注入しておくことができる場合には、還元剤供給装置Nは、ポンプPnにより、還元剤配管経路Lnに沿って、還元剤AnをタンクTnから排出させ、還元剤注入口Inから、バラスト水排水用配管経路Lr中を流通するバラスト水Wtに注入する。
【0145】
6.4)第1の運転モードの終了と第2の運転モードの開始との時間差
第2の運転モードは、第1の運転モードの終了後のできるだけ早い時期に開始される。第1の運転モードの終了と第2の運転モードの開始との間をより短くするほど、より効果的に、塩素系薬剤msの成分の析出物の発生・堆積・固化の進行を抑え、殺菌剤残留物Reに起因する動作不具合の発生を抑制又は防止することができるからである。それ故、できれば第1の運転モード終了直後に、第2の運転モードを開始し、それが実務的に難しい場合であっても、第1の運転モード終了後2時間以内、それも難しい場合であっても、3時間以内に、第2の運転モードを開始する。尤も、殺菌剤残留物Reに起因する動作不具合の発生を抑制又は防止する効果がある限り、第1の運転モードの終了と第2の運転モードの開始との時間差は3時間を超えてもよい。
【0146】
<本発明に係るバラスト水処理装置が適用される船舶の第2の実施形態>
1)基本構成及び配管経路
図13は、船舶VSLの第2の実施形態の基本構成説明図である。説明の便のため、図13では、すべての開閉バルブが開状態で描かれている。
【0147】
船舶VSLの第2の実施形態における殺菌剤供給装置Sは、図13中に示されているとおり、また後述のとおり、図1中に示されている第1の実施形態における殺菌剤供給装置より、内部構造が簡素になり、殺菌剤残留物Reの除去を効果的に行うことができる。
【0148】
しかし、塩素系殺菌剤Asや殺菌剤残留物Reの少なくとも一部をバラスト水に注入する機能を発揮する装置ブロックとして殺菌剤供給装置Sを捉えた場合、第1の実施形態と第2の実施形態との間に基本的な差異はない。第2の実施形態においても、バラスト水取水用配管経路Lf、バラスト水排水用配管経路Lr及び残留物排出用配管経路Ldのそれぞれに対応する開閉バルブの開閉の設定は、表1に記載のとおりである。
【0149】
それ故、第2の実施形態の基本構成の説明は、殺菌剤供給装置Sの内部構成及びそれに関わる動作に関する箇所を除き、第1の実施形態の基本構成の説明と同じである。
【0150】
2)殺菌剤供給装置S
第2の実施形態における殺菌剤供給装置Sは、図13中に示されているように、殺菌剤注入口Isが残留物注入口Idを兼ねており(殺菌剤注入口兼残留物注入口Is/Id)、それに伴い、殺菌剤配管経路Lsは残留物配管経路Ls*を兼ねており(Ts→Ps→Fs→Vs→Is/Id)、殺菌剤配管経路Lsと残留物配管経路Ls*とを切り替えるためのバルブVdを必要としないので、第1の実施形態における殺菌剤供給装置に比べて、内部構造がより簡素になり、殺菌剤残留物Reの除去をより効果的に行うことができる(上記3.6)参照)。そのことからすると、第2の実施形態の方が、第1の実施形態より好ましいといえる。
【0151】
殺菌剤注入口兼残留物注入口Is/Idから船外から取水した海水Woへの塩素系殺菌剤Asの注入圧力が足りない場合には、殺菌剤配管経路Lsは、バルブVsの下流、殺菌剤注入口兼残留物注入口Is/Idの上流に殺菌剤注入用ポンプPis(図示されず)を備えていてもよく、殺菌剤注入用ポンプPis(図示されず)を備える場合には、殺菌剤注入用ポンプPisの下流(吐出口側)、殺菌剤注入口兼残留物注入口Is/Idの上流に背圧弁を備えていてもよい。
【0152】
殺菌剤注入用ポンプPisは、バルブVsが開であるとき稼動状態になるように、また、バルブVsが閉であるとき不稼動状態になるように切り替える。このようなポンプPisの稼動状態の切り替えは、当該切り替えの操作の一部又は全部を手動で行う場合を除き、制御装置PLC又は、図示されないその他の制御装置に予めインストールしてある制御プログラムに従って自動で行われる。
【0153】
また、殺菌剤配管経路Lsは、既述の帰還配管経路Lsr(図示されず)を備えていてもよい。そして、バルブVsを閉にすることで、内容物Csの全部を、帰還配管経路Lsrを通じてポンプPsの上流に戻すように構成してもよく、バルブVsの開度を調整することで、帰還配管経路Lsrを通じてポンプPsの上流に戻る内容物Csの量が決まるように構成してもよい。殺菌剤配管経路Lsから殺菌剤残留物Reの除去を行なう際は、殺菌剤配管経路Lsの一部である帰還配管経路Lsrの少なくとも一部は、残留物配管経路Ls*の一部を構成する。
【0154】
上記のような内部構造の違いはあるとはいえ、第2の実施形態における殺菌剤供給装置Sの機能や役割は、第1の実施形態における殺菌剤供給装置のそれらと同じである。第2の実施形態における殺菌剤供給装置Sについての説明は、第1の実施形態における殺菌剤供給装置についての上記3)の説明(上記3.6)を除く)と基本的に同じである。
【0155】
3)殺菌剤残留物Reの除去及びその変形例
殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を船外から取水した海水Woに注入する注入口が殺菌剤注入口兼残留物注入口Is/Idである点を除き、図16乃至図19に示されている殺菌剤残留物の除去の原理や作用・仕組みは、それぞれ、図4及び図7に示されている第1の実施形態における殺菌剤残留物の除去のそれらと基本的に同じであり、図10及び図11に示されている殺菌剤残留物の除去の変形例の原理や作用・仕組みは、それぞれ、図8及び図9に示されている第1の実施形態における殺菌剤残留物の除去の変形例と同じである。従って、第1の実施形態における殺菌剤残留物Reの除去及びその変形例についての説明(特に上記3.5)の説明)は、基本的に、第2の実施形態における殺菌剤残留物Reの除去についても当てはまる。たとえば、第2の実施形態における殺菌剤残留物Reの除去においては、タンクTsを含む殺菌剤配管経路Lsに残留している殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を、ポンプPsによりならびに/あるいはタンクTsから排出させた水wsの勢いにより及び/又は殺菌剤残留物Reを水wsに混合又は溶解させて、残留物配管経路Ls*を通じて殺菌剤注入口兼残留物注入口Is/Idから、残留物排出用配管経路Ld中を流通する船外から取水した海水Woに注入する。その際、水wsの勢いにより及び/又は殺菌剤残留物Reの水wsと混合又は水wsへの溶解を通じて、タンクTsを含む殺菌剤配管経路Lsに残留している殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を、殺菌剤注入口兼残留物注入口Is/Idから、残留物排出用配管経路Ldを流通する船外から取水した海水Woに注入し、除去してもよく、タンクTs及び/又はその他の殺菌剤配管経路Lsに残留している殺菌剤残留物Reと除去反応性物質An*とを反応させると、反応生成物の増加とともに当該殺菌剤残留物Reの量は減少し、場合によっては残留する当該殺菌剤残留物Reの流動性が高くなる。減量された又は流動性が高められた殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を、当該反応生成物質とともに殺菌剤注入口兼残留物注入口Is/Idから、残留物排出用配管経路Ldを流通する船外から取水した海水Woに注入し、除去してもよい。
【0156】
4)除去反応性物質An*を取り出す構成例
図20及び図21に示されている、除去反応性物質An*を取り出す構成例及びそれについての説明は、第2の実施形態においても、そのまま当てはまる。
【0157】
5)還元剤供給装置N
第2の実施形態における還元剤供給装置Nは、第1の実施形態における還元剤供給装置と同じである。第2の実施形態における還元剤供給装置Nについての説明は、第1の実施形態における還元剤供給装置についての上記4)の説明と基本的に同じである。
【0158】
6)バラストポンプPmの運転モード
図14中に示されている、第2の実施形態におけるバラストポンプPmの第1の運転モードは、殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を船外から取水した海水Woに注入する注入口が殺菌剤注入口兼残留物注入口Is/Idである点を除き、図2に示されている第1の実施形態におけるバラストポンプの第1の運転モードと同じである。従って、図14についての説明は、図3についての説明と基本的に同じである。
【0159】
バラストポンプPmの第3の運転モードでは、塩素系殺菌剤Asや殺菌剤残留物Reの少なくとも一部をバラスト水に注入せず、殺菌剤供給装置Sは関係しない。それ故、図15についての説明は、図3についての説明と同じである。
【0160】
図16乃至図19中に示されている、第2の実施形態におけるバラストポンプPmの第2の運転モードのA型乃至D型は、殺菌剤残留物Reの少なくとも一部を船外から取水した海水Woに注入する注入口が殺菌剤注入口兼残留物注入口Is/Idである点を除き、図4乃至図7中に示されている第1の実施形態におけるバラストポンプの第2の運転モードのA型乃至D型と同じである。従って、図16乃至図19についての説明は、図4乃至図7についての説明と基本的に同じである。
【0161】
なお、注入口が殺菌剤注入口兼残留物注入口Is/IdであるとバルブVdが不要になるので、バラストポンプPmの各運転モードにおけるバルブの開閉の設定は、表3に示されているとおりである。
【0162】
【表3】
【0163】
7)バラスト水処理方法
図12中に示されているバラスト水処理方法及びその変形例の工程フローについての説明(上記5)参照)は、殺菌剤注入口Is及び残留物注入口Idを、いずれも、殺菌剤注入口兼残留物注入口Is/Idに読み替えれば、第2の実施形態におけるバラスト水処理方法及びその変形例の工程フローについても当てはまる。
【0164】
8)還元剤供給装置Nから除去反応性物質(還元性物質)An*を取り出す構成例
図20は、還元剤供給装置から除去反応性物質(還元性物質)An*を取り出す構成例を示している。この図に示されている構成例では、殺菌剤残留物Reの除去に用いる除去反応性物質An*を用意するための分岐配管経路Lns及びバラスト水排水用配管経路Lrを流通するバラストタンクTから取水したバラスト水Wtに還元剤Anを注入するための還元剤配管経路Lnのいずれかの択一的選択が行われる。還元剤配管経路Lnと分岐配管経路Lnsとの切り換えは、バルブVnと、位置Qn*の下流の分岐配管経路Lnsに設けたバルブVn*との開閉の切り換えにより行われる。
【0165】
分岐配管経路Lnsを選択するときは、バルブVnを閉、バルブVn*を開にする。これは、バラストポンプPmが第2の運転モードのA型もしくはB型である場合又はバラスト水処理方法の第2の段階ST2を実行する場合に対応する。
【0166】
分岐配管経路Lnを選択するときは、バルブVnを開、バルブVn*を閉にする。これは、バラストポンプPmが第2の運転モードのC型もしくはD型である場合又はバラスト水処理方法の第3の段階ST3を実行する場合である場合に対応している。
【0167】
図21は、図20中に示されている構成例とは別の構成例である。図21中に示されている構成例では、殺菌剤残留物が注入された海水Wo*に還元剤Anを注入すると同時に除去反応性物質An*を用意するために、還元剤配管経路Ln及び分岐配管経路Lnsの両方の同時選択が行われる。その同時選択を行うときは、例えば、バルブVn, Vn*をいずれも不完全な開にするか、バルブVn*を開、バルブVnを不完全な開(半開き)にする。これは、バラストポンプPmが第2の運転モードのC型もしくはD型である場合又はバラスト水処理方法の第2*の段階ST2*を実行する場合に対応している。
【0168】
図20及び図21中に示されている各構成例においては、バルブVn, Vn*の開閉の切り換え及び開度の調節は、それらの操作の一部又は全部を手動で行う場合を除き、制御装置PLC又は、図示されていないその他の制御装置に予めインストールしてある制御プログラムに従って自動で行われる。
【0169】
タンクTnから分岐配管経路Lnsを通じて取り出した除去反応性物質An*の濃度が不必要に高い場合には、事前に水で希釈して使用する。
【0170】
本発明の技術的範囲は、上記の実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。例えば、次の掲げる変形例は、いずれも、発明の要旨を変更するものではないので、本発明の技術的範囲に属する。
【0171】
(変形例1)第2の実施形態の基本構成の変形例
図13に示されている第2の実施形態の基本構成の場合には、位置QtとバラストタンクTとの間において、バラスト水取水用配管経路Lfとバラスト水排水用配管経路Lrとが共通の配管経路(Qt−V5−Sn1−Ft−T)になるように構成してある。これに対して、図22に示されている第2の実施形態の基本構成の変形例の場合には、バラスト水取水用配管経路Lfとバラスト水排水用配管経路Lrのぞれぞれが、バラストタンクTに接続するとともに、バラスト水取水用配管経路Lfの位置Qtsとバラスト水排水用配管経路Lrの位置Qtrとが、バルブV5*を備える残留物排出用配管経路Ldの一部により架橋してある。なお、位置Qtsは、ミキサーMxsの下流、バルブV3の上流、バルブV5*の上流にある位置である。位置Qtrは、バルブV4の下流、バルブV5*の下流、還元剤注入口Inの上流の位置である。
【0172】
図22に示されている第2の実施形態の基本構成の変形例において、バラスト水取水用配管経路Lfは、IT→V1→Q6→Pm→Vcm→Q3→Q4→V2→F→Is/Id→Mxs→Qts→V3→Sn1s→Fts→Tの配管経路となり、バラスト水排水用配管経路Lrは、T→Ftr→Sn1r→V4→Qtr→In→Mxn→Q1→V6→Q6→Pm→Vcm→Q3→Q4→V7→Q2→Sn2→DOの配管経路となる。残留物排出用配管経路Ldのうち<Ld1>は、IT→V1→Q6→Pm→Vcm→Q3→V9→Q5→Is/Id→Mxs→Qts→V5*→Qtr→In→Mxn→Q1→V8→Q2→Sn2→DOの配管経路となり、<Ld2>は、IT→V1→Q6→Pm→Vcm→Q3→Q4→V2→F→Q5→Is/Id→Mxs→Qts→V5*→Qtr→In→Mxn→Q1→V8→Q2→Sn2→DOの配管経路となり、それぞれの配管経路におけるバルブの開閉の設定は、表4に記載のとおりである。また、バラストポンプPmの各運転モードにおけるバルブの開閉の設定は、表5に記載のとおりである。
【0173】
【表4】
【0174】
【表5】
【0175】
(変形例2)第1の実施形態の基本構成の変形例
図2に示されている第1の実施形態の基本構成の場合も、位置QtとバラストタンクTとの間において、バラスト水取水用配管経路Lfとバラスト水排水用配管経路Lrとが共通の配管経路(Qt−V5−Sn1−Ft−T)になるように構成してあるので、図22に示されている第2の実施形態の基本構成の変形例と同様の変形が可能である。
【0176】
(変形例3)第2の実施形態の基本構成の別の変形例1)基本構成及び配管経路
図23は、本発明の第2の実施形態の基本構成の別の変形例の説明図である。この図23では、説明の簡便化のため、バルブや計測機器は描写していない。図23に示されている、変形例3は、上記変形例1と同様に、バラスト水取水用配管経路Lfとバラスト水排水用配管経路Lrのぞれぞれが、バラストタンクTに接続している一方で、上記変形例1と異なり、殺菌剤注入口兼残留物注入口Is/InとバラストタンクTとの間に還元剤注入口Inが配置する経路構成を有している。
【0177】
図24は、図23に示されている変形例3におけるバラストポンプの第1の運転モードの説明図であり、図25は、図23に示されている変形例3におけるバラストポンプの第3の運転モードの説明図である。図26乃至図29は、それぞれ、図23に示されている変形例3におけるバラストポンプの第2の運転モードのA型乃至D型の説明図である。
【0178】
図23に示されている第2の実施形態の基本構成の変形例において、図24乃至図27中で太字により描かれているように、バラスト水取水用配管経路Lfは、IT→Qa→Pm→Vcm→Qb→F→Qc→Is/Id→Mxc→Qe→Tの配管経路となり、バラスト水排水用配管経路Lrは、T→Qa→Pm→Vcm→Qb→Qd→Qc→In→Mxc→Qe→DOの配管経路となり、残留物排出用配管経路Ldのうち<Ld1>は、IT→Qa→Qb→Qd→Qc→Is/Id→In→Mxc→Qe→DOの配管経路となり、<Ld2>は、IT→Qa→Qb→F→Qc→Is/Id→In→Mxc→Qe→DOの配管経路となる。
【0179】
位置Qaは、バラスト水取水用配管経路Lfの取水口ITの下流、バラストポンプPmの上流にあり、且つ、バラスト水排水用配管経路LrのバラストタンクTの下流、バラストポンプPmの上流にある位置である。位置Qbは、バラスト水取水用配管経路Lf及びバラスト水排水用配管経路LrのバラストポンプPmの下流、フィルタ装置Fの上流にある位置であり、位置Qcは、バラスト水取水用配管経路Lf及びバラスト水排水用配管経路Lrのフィルタ装置Fの下流、殺菌剤注入口兼残留物注入口Is/Idの上流にある位置であり、位置Qdは、位置Qbと位置Qcとの間を、フィルタ装置Fを通過することなく接続する配管経路の、位置Qbの下流、位置Qcの上流にある位置である。位置Qeは、バラスト水取水用配管経路Lf、バラスト水排水用配管経路Lr及び残留物排出用配管経路Ldの、ミキサーMxcの下流、排水口DOの上流にあり、且つ、バラスト水取水用配管経路LfのバラストタンクTの上流にある位置である。
【0180】
Mxcは、ミキサーである。第2の実施形態では、塩素系殺菌剤As又は殺菌剤残留物Reが注入してある海水を攪拌するためのミキサーMxs及び還元剤Anが注入してある海水を攪拌するためのミキサーMxnを設置していたが、この変形例3では、共通の、一つのミキサーMxcを設置すれば済む。
【0181】
2)殺菌剤供給装置S
この変形例3における殺菌剤供給装置Sは、図13中に示されている第2の実施形態における殺菌剤供給装置と構成が同じであり、機能及び役割も変わらない。
それ故、第2の実施形態における殺菌剤供給装置についての説明は、バラスト水取水用配管経路Lfの経路構成(IT→Qa→Pm→Vcm→Qb→F→Qc→Is/Id→Mxc→Qe→T)が異なる点を除き、この変形例3における殺菌剤供給装置Sについても当てはまる。
【0182】
3)殺菌剤残留物Reの除去
第2の実施形態における殺菌剤残留物の除去についての説明は、残留物排出用配管経路<Ld1>の経路構成(IT→Qa→Qb→Qd→Qc→Is/Id→In→Mxc→Qe→DO)及び残留物排出用配管経路<Ld2>の経路構成(IT→Qa→Qb→F→Qc→Is/Id→In→Mxc→Qe→DO)が異なる点を除き、この変形例3における殺菌剤残留物Reの除去についても当てはまる。なお、図10及び図11に示されている、殺菌剤残留物の除去の変形例及びそれについての説明も、この変形例3における殺菌剤残留物Reの除去の変形例について当てはまる。
【0183】
4)還元剤供給装置N
この変形例3における還元剤供給装置Nは、図13に示されている第2の実施形態における還元剤供給装置と構成が同じであり、機能及び役割も変わらない。
それ故、第2の実施形態における殺菌剤供給装置及びその変形例についての説明は、残留物排出用配管経路<Ld1>の経路構成(IT→Qa→Qb→Qd→Qc→Is/Id→In→Mxc→Qe→DO)及び残留物排出用配管経路<Ld2>の経路構成(IT→Qa→Qb→F→Qc→Is/Id→In→Mxc→Qe→DO)が異なる点を除き、この変形例における還元剤供給装置N及びその変形例についての説明に当てはまる。特に、図20及び図21に示されている、除去反応性物質An*を取り出す構成例及びそれについての説明は、この変形例3における除去反応性物質An*を取り出す構成例についても、そのまま当てはまる。
【0184】
5)バラストポンプPmの運転モード
図24に示されている、この変形例3におけるバラストポンプPmの第1の運転モードは、バラスト水取水用配管経路Lfの経路構成(IT→Qa→Pm→Vcm→Qb→F→Qc→Is/Id→In→Mxc→Qe→T)が異なる点を除き、図14に示されている第2の実施形態におけるバラストポンプの第1の運転モードと同じである。図25に示されている、この変形例3におけるバラストポンプの第3の運転モードでは、バラスト水排水用配管経路Lrの経路構成(T→Qa→Pm→Vcm→Qb→Qd→Qc→In→Mxc→Qe→DO)が異なる点を除き、図15に示されている第2の実施形態におけるバラストポンプの第3の運転モードと同じである。図26乃至図29中に示されている、この変形例3におけるバラストポンプの第2の運転モードのA型乃至D型は、残留物排出用配管経路<Ld1>の経路構成(IT→Qa→Qb→Qd→Qc→Is/Id→In→Mxc→Qe→DO)及び残留物排出用配管経路<Ld2>の経路構成(IT→Qa→Qb→F→Qc→Is/Id→In→Mxc→Qe→DO)が異なる点を除き、図16乃至図19にそれぞれ示されている第2の実施形態におけるバラストポンプの第2の運転モードと同じである。
【0185】
6)バラスト水処理方法
図12中に示されているバラスト水処理方法及びその変形例の工程フローについての説明は、殺菌剤注入口Is及び残留物注入口Idを、いずれも、殺菌剤注入口兼残留物注入口Is/Idに読み替えれば、第2の実施形態におけるバラスト水処理方法及びその変形例の工程フローについても当てはまる。
【0186】
図20及び図21中に示されている各構成例においては、バルブVn, Vn*の開閉の切り替え及び開度の調節は、それらの操作の一部又は全部を手動で行う場合を除き、制御装置PLC又は、図示されていないその他の制御装置に予めインストールしてある制御プログラムに従って自動で行われる。
【0187】
(変形例4)バラストポンプPmが複数台のバラストポンプを備える変形例
図2及び図13には、バラストポンプPmが一台しか描かれていない。しかし、本発明におけるバラストポンプPmは、一台のみのバラストポンプで構成してあるものに限定されず、複数台のバラストポンプで構成してあってもよい。例えば、バラストポンプPmが二台のバラストポンプPm1, Pm2を備えている場合、次のような変形例が可能である。
【0188】
(変形例4−1)
バラストポンプPm1が第1の運転モードであるとき、バラストタンクTに向かって流通する船外から取水した海水Woに対して塩素系殺菌剤Asを注入し、第2の運転モードであるとき、第1の運転モードであるときに船外から取水した海水Woに注入されずに残った殺菌剤残留物Reを除去する。その後、バラストポンプPm1から切り替わったバラストポンプPm2が第3の運転モードであるとき、バラストタンクTから取水したバラスト水Wtを、還元剤An注入済みのバラスト水Wnとして船外に排出する。
【0189】
(変形例4−2)
バラストタンクが複数基(仮にT1,T2の二基)ある場合、バラストポンプPm1が第1の運転モードであるとき、バラストタンクT1に向かって流通する船外から取水した海水Woに対して塩素系殺菌剤Asを注入し、第2の運転モードであるとき、第1の運転モードであるときに船外から取水した海水Woに注入されずに残った殺菌剤残留物Reを除去する。他方、バラストポンプPm2が第1の運転モードであるとき、バラストタンクT2に向かって流通する船外から取水した海水Woに対して塩素系殺菌剤Asを注入し、第2の運転モードであるとき、第1の運転モードであるときに船外から取水した海水Woに注入されずに残った殺菌剤残留物Reを除去する。そして、バラストポンプPm2から切り替わったバラストポンプPm1が第3の運転モードであるとき、バラストタンクT2から取水したバラスト水Wtを、還元剤An注入済みのバラスト水Wnとして船外に排出し、他方、バラストポンプPm1から切り替わったバラストポンプPm2が第3の運転モードであるとき、バラストタンクT1から取水したバラスト水Wtを、還元剤An注入済みのバラスト水Wnとして船外に排出する。
【0190】
バラストポンプPm1, Pm2を一体的に捉えて、これをバラストポンプPmであるとすると、変形例4−1は、バラストポンプPmが第1の運転モードであるとき、バラストタンクTに向かって流通する船外から取水した海水Woに対して塩素系殺菌剤Asを注入し、第2の運転モードであるとき、第1の運転モードであるときに船外から取水した海水Woに注入されずに残った殺菌剤残留物Reを除去する。その後、バラストポンプPmから切り替わったバラストポンプPmが第3の運転モードであるとき、バラストタンクTから取水したバラスト水Wtを、還元剤An注入済みのバラスト水Wnとして船外に排出する、例にほかならない。また、変形例4−2は、バラストポンプPmが第1の運転モードであるとき、バラストタンクT1(又はT2)に向かって流通する船外から取水した海水Woに対して塩素系殺菌剤Asを注入し、第2の運転モードであるとき、第1の運転モードであるときに船外から取水した海水Woに注入されずに残った殺菌剤残留物Reを除去する。その後、バラストポンプPmから切り替わったバラストポンプPmが第3の運転モードであるとき、バラストタンクT1(又はT2)から取水したバラスト水Wtを、還元剤An注入済みのバラスト水Wnとして船外に排出する、例にほかならない。
【0191】
本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。本明細書における各用語の意味又は解釈は、本発明の技術的範囲が均等の範囲にまで及ぶことを妨げるものではない。
【符号の説明】
【0192】
VSL…船舶、IT…取水口、DO…排水口、Lf…バラスト水取水用配管経路、Lr…バラスト水排水用配管経路、Ld, <Ld1>, <Ld2>…残留物排出用配管経路、Ls…殺菌剤配管経路、Ln…還元剤配管経路、Ls*, Ldr, Ldr*…残留物配管経路、Lns…分岐配管経路、V1〜V9, Vs, Vn…バルブ、Pm…バラストポンプ、Ps, Pn…ポンプ、S…殺菌供給装置、N…還元剤供給装置、T…バラストタンク、Ts,Tn…タンク、Is…殺菌剤注入口、In…還元剤注入口、Id…残留物注入口、Is/Id…殺菌剤注入口兼残留物注入口、Mxs, Mxn, Mxc…ミキサー、Fs, Fn,Ft…流量計、Sn1, Sn2…TRO計測装置、As…塩素系殺菌剤、An…還元剤、An*…除去反応性物質、ms…塩素系殺菌剤の原料(塩素系薬剤)、mn…還元剤の原料、ws, wn…水、Cs, Cn…混合物、Re…殺菌剤残留物、Wo…船外から取水した海水、Ws…殺菌剤が注入された海水、Wt…バラストタンクから取水した海水(バラスト水)、Wn…還元剤が注入されたバラスト水、Wd, Wo*…殺菌剤残留物が注入された海水。
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