(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記落下工程は、前記ヒータおよび前記ホルダの一方を保持することによって搬送する保持装置(76、79)から離れた前記ヒータおよび前記ホルダの一方の倒れを案内部材によって抑制しながら、軸方向に落下させることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサの製造方法。
前記ヒータおよび前記ホルダの一方は、前記ホルダに設けられた周方向スリットのスリット縁(39a)と前記ヒータとの衝突を回避するように前記案内部材によって案内されながら落下することを特徴とする請求項2に記載のガスセンサの製造方法。
さらに、前記落下工程の前に、前記ホルダが前記ヒータから離れているが、前記ホルダのコンタクト部が前記先端部に被さる位置まで、前記保持装置によって前記ヒータおよび前記ホルダの一方を位置付ける位置決め工程(152)を備えることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のガスセンサの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図面を参照しながら、ここに開示される発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において、先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。また、後続の実施形態においては、先行する実施形態で説明した事項に対応する部分に百以上の位だけが異なる参照符号を付することにより対応関係を示し、重複する説明を省略する場合がある。各形態において、構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については他の形態の説明を参照し適用することができる。
【0036】
(第1実施形態)
(ガスセンサの構成)
図1において、この実施形態のガスセンサ10の縦断面が図示されている。ガスセンサ10は、内燃機関の排気通路などに装着され、排気ガス中の酸素濃度を計測する酸素センサとして用いることができる。ガスセンサ10は、センサ部11と、配線部12とを有する。センサ部11は、特定のガス成分による電気化学的な反応に起因する電気信号を出力する。配線部12は、センサ部11を機能させるための電力供給と、センサ部11から出力される電気信号を取り出すための電気的な接続を提供する。
【0037】
センサ部11は、センサ素子13を有する。センサ素子13は、固体電解質製のカップ状部材である。固体電解質として、ジルコニアセラミックスを用いることができる。センサ素子13は、内面と外面とのそれぞれに、多孔質電極を有する。センサ素子13は、その内外の酸素濃度差に応じて起電力を発生し、この起電力が多孔質電極から検出される。
【0038】
ハウジングボディ14は、センサ素子13を保持し、計測対象であるガスが流れる通路への装着に適した形状を有する。ハウジングボディ14は、ステンレス鋼製である。以下の説明において、特に材質を述べない部材は、ステンレス、鉄などの金属製である。センサ素子13は、ハウジングボディ14内に挿入され保持されている。センサ素子13とハウジングボディ14との間には、耐火性の封止材15が配置されている。さらに、センサ素子13とハウジングボディ14との間には、リテーナリング16およびスペーサリング17が収容されている。
【0039】
センサ素子13は、ハウジングボディ14の先端部から先端が閉じた筒状に突出するように配置されている。ハウジングボディ14には、センサ素子13を保護するためのインナカバー18と、アウタカバー19とが固定されている。インナカバー18とアウタカバー19とには、ガスがセンサ素子13の外側に到達するように、多数の連通孔が開設されている。
【0040】
ハウジングボディ14の後端には、センサ素子13の開口端が位置付けられている。ハウジングボディ14の後端には、配線部12が連結されている。配線部12は、筒状のリアカバー21を有する。リアカバー21の一端はハウジングボディ14に連結されている。リアカバー21内には、電気配線を保持するためのインシュレータ22が配置されている。インシュレータ22は、電気絶縁性のセラミック製である。リアカバー21の後端には、ゴム製のグロメット23が配置されている。グロメット23は、樹脂で被覆された複数のワイヤ24、25、26を保持する。
【0041】
リアカバー21の内部には、第1センサターミナル28が配置されている。第1センサターミナル28は、センサ素子13の外周面に形成された多孔質電極に接触する金属製の端子である。第1センサターミナル28は、センサ素子13の外周面に圧入される断面C字型の接触部と、この接触部から延びるターミナル部とを有する。ターミナル部は、インシュレータ22内にまで延びている。第1センサターミナル28は、インシュレータ22内の中継ターミナルによってワイヤ24と接続されている。
【0042】
リアカバー21の内部には、第2センサターミナル29が配置されている。第2センサターミナル29は、センサ素子13の内周面に形成された多孔質電極に接触する金属製の端子である。第2センサターミナル29は、センサ素子13の内周面に圧入される断面C字型の接触部と、この接触部から延びるターミナル部とを有する。ターミナル部は、インシュレータ22内にまで延びている。第2センサターミナル29は、インシュレータ22内の中継ターミナルによってワイヤ25と接続されている。第2センサターミナル29は、後述のヒータ32を保持する機能を有するから、ホルダ29とも呼ばれる。
【0043】
ガスセンサ10は、ヒータユニット31を有する。ヒータユニット31は、センサ素子13を所定の活性温度に加熱するために、センサ素子13内に配置されている。ヒータユニット31は、ヒータ32と、上記ホルダ29とを有する。ホルダ29は、ヒータ32をセンサ素子13内において所定の位置に位置付け、その位置に保持する。
【0044】
ヒータ32は、細長い棒状のアルミナ製である。ヒータ32は、その長手方向に延びる中心軸AXを有する。軸方向はヒータ32の中心軸AXに平行な方向を指す。また、周方向はヒータ32の中心軸AXの周りの円周方向を指す。ヒータ32は、正温度特性(PTC)ヒータ素子として機能する。ヒータ32の先端部は、センサ素子13内に挿入されている。ヒータ32の後端部は、センサ素子13の開口端から所定の長さだけ突出して配置されている。ヒータ32の後端部には、電力供給用の一対のヒータ端子33が設けられている。ヒータ端子33は、円柱状のヒータ32の外周面に、互いに離れて配置されている。一対のヒータ端子33は、ヒータ32の外周面の直径上に離れて配置されている。図中には、ひとつのヒータ端子33だけが図示されている。
【0045】
ヒータ端子33には、ニッケル合金製のリード34がろう付けされている。ヒータ32には、一対のリード34が設けられている。2つのリード34は、ヒータ32の中心軸AXを通る直径上に配置されている。リード34は、ヒータ32の長手方向に沿って、ヒータ32から突出して延びている。リード34は、ヒータ端子33上においてヒータ32の外周面に接触している。リード34は、ヒータ32の外周面から、径方向外側にわずかに延び出しながらヒータ32の軸方向に沿って延びることで斜めに延びる部分と、ヒータ32の軸方向に沿って真っ直ぐに延び出す部分とを有する。2つのリード34は、インシュレータ22内にまで延びている。2つのリード34は、インシュレータ22内において、それぞれ、別の中継ターミナルに接続されている。それら中継ターミナルは、ワイヤに接続されている。図中には、2本のワイヤのうちのひとつのワイヤ26だけが図示されている。この結果、ヒータ32は、通電するためのリード34が設けられた基端部と、センサ素子の内部に配置される先端部とを有する。
【0046】
ホルダ29は、バネ鋼等の金属製である。ホルダ29は、ほぼ円筒状である。ホルダ29はヒータ32の中心軸AXと一致する中心軸AXを有する。軸方向はホルダ29の中心軸AXの方向を指す。周方向は、ホルダ29の中心軸AXの周りの円周方向を指す。ホルダ29は、センサ素子13の内部に配置される。ホルダ29は、ヒータ32の外周面に接触することによりヒータ32を保持するヒータ接触部35を有する。以下の説明では、ヒータ接触部35は、ヒータ保持部35とも呼ばれる。ホルダ29は、センサ素子13の内周面に圧入され、センサ素子13の内面に接触しセンサ素子13内に固定されるセンサ接触部37を有する。センサ接触部37は、センサ素子13の内面に設けられた電極に接触することにより電気的な接続を提供するコンタクト部37でもある。以下の説明では、センサ接触部37は、コンタクト部37と呼ばれる。ホルダ29は、ヒータ32をセンサ素子13の内部に支持する。
【0047】
ヒータ保持部35は、断面C字型の筒状部分である。ヒータ保持部35は、軸方向に沿って細長く延びる開口部であるスリット36を有する。スリット36は、第1の縦スリット36とも呼ばれる。ヒータ保持部35は、弾性変形して径方向外側に拡張しており、ヒータ32の外周面に強く接触している。
【0048】
コンタクト部37は、断面C字型の筒状部分である。コンタクト部37は、軸方向に沿って細長く延びる開口部であるスリット38を有する。スリット38は、第2の縦スリット38とも呼ばれる。コンタクト部37は、弾性変形して径方向内側に収縮しており、センサ素子13の内周面に強く接触している。
【0049】
コンタクト部37の外径は、ヒータ保持部35の外径より大きい。ヒータ保持部35の内径は、コンタクト部37の内径より小さい。ヒータ保持部35とコンタクト部37との間は、テーパ状のコーン部によって接続されている。ヒータ保持部35は、コンタクト部37より先端側に設けられている。この結果、ホルダ29は、センサ素子13の開口端においてセンサ素子13の内周面に保持され、ホルダ29は、センサ素子13の開口端より奥側においてヒータ32を保持している。
【0050】
ヒータ保持部35とコンタクト部37との間には、ホルダ29の周方向に沿って延びる周方向スリット39が設けられている。周方向スリット39は、ホルダ29を完全に1周することなく、ヒータ保持部35とコンタクト部37とを連結する連結部を残すように形成されている。周方向スリット39は、ヒータ保持部35とコンタクト部37とを連結する連結部を残すように周方向に沿って180度を超えるが360度には到達しない角度範囲にわたって設けられている。周方向スリット39の幅、すなわち軸方向の幅は、スリット36、38の幅、すなわち周方向の幅にほぼ等しい。周方向スリット39の幅は、スリット36、38の幅より大きく設定されてもよい。周方向スリット39の幅は、スリット36、38の幅より小さく設定されてもよい。
【0051】
周方向スリット39は、ホルダ29の中心軸AXに直交する平面HPに沿って延びるC字型の縁を提供している。この縁は、ホルダ29の軸方向の位置を規定するために利用される。周方向スリット39の両端、すなわち周方向スリット39の周方向に沿って最も奥の2つの端部は、中心軸AXと直交するが中心軸AXから離れて位置する平面を通る直線を規定する。この周方向スリット39の両端は、ホルダ29の中心軸AXの周りにおけるホルダ29の回転を規制するために利用される。
【0052】
ホルダ29は、コンタクト部37の後端から細長く延び出すターミナル部29aを有する。ターミナル部29aは、電気的な接続を提供するために軸方向に延び出している。ターミナル部29aは、断面C字型のコンタクト部37の一部分だけに相当する細幅の板状である。ターミナル部29aは、コンタクト部37からわずかに径方向外側へ延び出した後に、軸方向へコンタクト部37から離れるように延び出している。
【0053】
コンタクト部37の後端には、径方向外側に向けて広がるフレア状のフランジ部29bが設けられている。フランジ部29bは、センサ素子13に対するホルダ29の挿入量を規制するストッパとして機能する。フランジ部29bは、ホルダ29をヒータ32に圧入するための操作部としても機能する。
【0054】
図示の例では、スリット38とターミナル部29aとは、ホルダ29の周方向に関して反対側に位置している。言い換えると、スリット38とターミナル部29aとは、直径上の反対側に位置している。スリット36とスリット38とは、ホルダ29の周方向に関して異なる角度位置に設けられている。図示の例では、スリット36とスリット38とは、ほぼ90度ずれて配置されている。周方向スリット39は、コンタクト部37のためのスリット38から周方向の両側に向けてほぼ等しい角度範囲にわたって延びている。スリット36とスリット38とのずれに起因して、周方向スリット39は、スリット36に対して左右非対称の角度範囲にわたって延びている。
【0055】
(ガスセンサの製造方法)
図2において、ガスセンサ10の製造方法を示す複数のステップが図示されている。ガスセンサの製造方法は、ホルダ29を供給する工程141−143と、ヒータ32を供給する工程145−146とを有する。更に、ガスセンサの製造方法は、ホルダ29とヒータ32とをガスセンサ10の部品としてガスセンサ10を組み立てるガスセンサ組み立て工程148とを有する。組立工程148においてホルダ29内にヒータ32が圧入され、ヒータユニット31が組み立てられる。
【0056】
ステップ141は供給工程である。ここでは、予め所定の形状に成形された複数のホルダ29が供給される。ホルダ29は、例えば振動式のパーツフィーダに供給される。
【0057】
ステップ142は整列工程である。以下の説明では、ホルダ29を所定の姿勢に移行させ、その姿勢に維持する操作を整列と呼ぶ。整列工程には、ホルダ29の移動を含むことができる。ここでは、多数のホルダ29から所定の姿勢のホルダ29を選び出すことによってホルダ29が整列させられる。ここでは、パーツフィーダによって所定の姿勢のホルダ29が取り出され、その姿勢のまま保持される。ここでは、ホルダ29は、その軸方向を縦にした、すなわち軸方向を重力方向と平行にした縦姿勢に位置付けられる。縦姿勢のホルダ29は、後続の搬送工程においてホルダ29を縦姿勢のままチャックすることを容易にする。さらに、ホルダ29は、ターミナル部29aが周方向に関する所定の位置に位置するように整列される。この周方向の位置も、後続の工程におけるホルダ29の位置決めを容易にする。
【0058】
整列工程では、無秩序な姿勢でパーツフィーダに供給された複数のホルダ29から所定の姿勢にあるホルダ29だけがパーツフィーダによって選び出される。整列工程には、ホルダ29を移動させながら、ホルダ29を所定の姿勢に移行させる工程が含まれる。
【0059】
整列工程には、パーツフィーダの外周に沿って設けられた細い溝状の通路によって、その通路の長手方向に沿うようにホルダ29を整列させる工程を含むことができる。この通路における工程には、ホルダ29の縦方向のスリット38とガイドレールとの噛み合いを利用してホルダ29をその周方向に関して位置決めする工程を含むことができる。この工程は、スリット38が上下左右のいずれかの方向に向くようにホルダ29を位置決めする。この工程では、縦方向のスリット38とガイドレール62aとを接触させ、嵌め合うことにより、ホルダ29が整列させられ、ホルダ29の姿勢が維持される。上記通路における工程には、上記スリット38を利用する工程の後に、ホルダ29を細く深い溝に落とし、この溝にホルダ29を嵌め合う工程を含むことができる。ここで利用される溝は、ホルダ29がコンタクト部37を上に位置付け、ヒータ保持部35を下に位置付ける縦姿勢になって嵌り込み、しかもホルダ29がその太い部分によって引っかかるような細く深い溝である。
【0060】
整列工程には、縦姿勢に位置付けられたホルダ29を周方向に回転させることによってホルダ29を周方向に関して位置決めする工程を含むことができる。この工程には、ホルダ29の中心軸AXと直角であるが中心軸AXと交差しない線を規定するホルダ29の縁部を利用する工程を含むことができる。縁は、スリット36、38、39のいずれかひとつまたは複数によって提供される。典型的な例では、整列工程には、周方向スリット39を利用することによってホルダ29を周方向に回転させる工程が含まれる。この工程では、周方向スリット39に嵌り合うガイドレール63が用いられる。周方向スリット39とガイドレール63との嵌め合いは、ホルダ29を軸方向に関して位置決めする工程も提供する。この工程では、周方向スリット39とガイドレール63とを接触させ、嵌め合うことにより、ホルダ29が整列させられ、ホルダ29の姿勢が維持される。
【0061】
ステップ143は搬送工程である。ここでは、所定の姿勢に整列させられたホルダ29が搬送装置によって後続の工程へ搬送される。搬送装置としては、多関節型ロボット、スカラロボットなど多様な機器を利用することができる。さらに、搬送装置は、ターミナル部29aを周方向の所定の位置に位置させる。
【0062】
ステップ145はヒータ32の供給工程である。ここでは、ヒータ32は、専用のパレット上に所定の姿勢で並べた状態で供給される。
【0063】
ステップ146はヒータ32の搬送工程である。ここでは、ヒータ32が搬送装置によって後続の工程へ搬送される。搬送装置としては、多関節型ロボット、スカラロボットなど多様な機器を利用することができる。
【0064】
ステップ148はガスセンサ10の組立工程である。この組立工程は、ホルダ29とヒータ32とをセンサ素子13の中に配置する工程を含む。ひとつの形態では、ホルダ29内にヒータ32が圧入され、ヒータユニット31を組み立てた後に、このヒータユニット31がセンサ素子13の中に圧入され、固定される。これに代えて、センサ素子13の中にホルダ29を圧入した後に、ホルダ29の中にヒータ32を圧入することにより、センサ素子13の中でヒータユニット31を組み立ててもよい。以上に述べた製造方法によって、ガスセンサ10が製造される。
【0065】
(ホルダ整列工程)
図3は、ホルダ29整列させるための整列工程を示す模式的な断面図である。図中には、振動型のパーツフィーダ61と、そのボウル内に供給された多数のホルダ29と、パーツフィーダ61から整列して出てゆく多数のホルダ29とが模式的に図示されている。パーツフィーダ61は、ホルダ29を横姿勢に並べる。パーツフィーダ61の搬送通路62は、ホルダ29を搬送方向TDへ移動させる。搬送通路62は、ホルダ29をパーツフィーダ61から搬出するための通路である。
【0066】
パーツフィーダ61は、無秩序な姿勢でパーツフィーダ61に供給された複数のホルダ29から所定の姿勢にあるホルダ29だけを選び出す。パーツフィーダ61は、所定の姿勢にないホルダ29を篩い落とす選別部と、ホルダ29を移動させながら、ホルダ29を所定の姿勢に移行させる矯正部とを有する。パーツフィーダ61は、その外周に沿って設けられ、所定位置から接線方向又は径方向へ延び出す細い溝状の搬送通路62を有する。搬送通路62は、選別部と、矯正部とを提供する。
【0067】
図3に図示されるように、搬送通路62の初期部分は、搬送通路62の長手方向に沿う姿勢にあるホルダ29だけを搬送通路62に載せ、その姿勢にないホルダ29を篩い落とす。始端部は、第1の選別部を提供する。
【0068】
図3に図示されるように、搬送通路62の中期部分は、搬送通路62の壁面に設けられたガイドレール62aを有する。ガイドレール62aは、搬送通路62の長手方向に沿って延びるとともに、搬送通路62の底面から上に延び出す板状の部材である。ガイドレール62aは、縦ガイドレール62aとも呼ぶことができる。ガイドレール62aは、搬送通路62の始端から終端へ向けて、搬送通路62の壁面から徐々に高くなるように設けられている。ガイドレール62aは、ホルダ29の縦方向のスリット38と嵌り合う厚さをもつ板状部材である。図示されるように、ガイドレール62aは、搬送通路62の底面に設けることができる。ガイドレール62aにスリット38が嵌まり込まない姿勢にあるホルダ29は、ガイドレール62aに乗り上げ、搬送通路62から篩い落とされる。ガイドレール62aにスリット38が嵌まり込む姿勢にあるホルダ29は、ガイドレール62aと噛みあいながら移動してゆく。よって、ガイドレール62aをもつ中期部分は、第2の選別部を提供している。さらに、一部のホルダ29は、スリット38とガイドレール62aとの不完全な嵌め合い状態から、完全な嵌め合い状態に移行するように回転する。よって、ガイドレール62aをもつ中期部分は、第1の矯正部を提供しているともいえる。
図4は、スリット38とガイドレール62aとの嵌め合い状態を示す。
【0069】
図3に戻り、ガイドレール62aは、搬送通路62の途中において中断している。ガイドレール62aの終端が位置付けられた搬送通路62の中期部分には、搬送通路62の形状が浅い溝から深い溝へと変化する転換部分が設けられている。搬送通路62は、細く深い溝を区画形成するガイドレール62bを有する。転換部分の後に設けられた細く深い溝は、ホルダ29がコンタクト部37を上に位置付け、ヒータ保持部35を下に位置付ける縦姿勢となって嵌り込み、しかもホルダ29がその太い部分またはフランジ部29bによって引っかかり、吊り下げられるような幅をもつ。
【0070】
転換部分までの浅い溝は、ホルダ29を横姿勢に位置付け、横姿勢のままで移動させる。転換部分において、ホルダ29は、ガイドレール62aから、細く深い溝に向けて落とされる。ホルダ29は、この溝に嵌め合わせられ、溝を区画形成するガイドレール62bの角部によって吊り下げられる。転換部分の後の深い溝は、ホルダ29を縦姿勢に位置付け、縦姿勢のまま移動させる。転換部分において、コンタクト部37より細いヒータ保持部35を進行方向前方に位置づけた姿勢にあるホルダ29は、ヒータ保持部35から、細く深い溝の中に落ち、その溝に嵌り込む。転換部分において溝に嵌まらない姿勢にあるホルダ29は、搬送通路62から篩い落とされる。よって、転換部分は、第3の選別部を提供する。
【0071】
図3に図示されるように、搬送通路62の終期部分は、搬送通路62の壁面に設けられたガイドレール63を有する。ガイドレール63は、ホルダ29の搬送方向に沿って延びている。ガイドレール63は、搬送通路62の長手方向に沿って延びるとともに、搬送通路62の側面から横方向へ、より詳細には、水平方向に対してやや傾斜して延び出す板状の部材である。ガイドレール63は、横ガイドレール63とも呼ぶことができる。図示されるように、ガイドレール63は、搬送通路62の側面に設けることができる。ガイドレール63は、搬送通路62の始端から終端へ向けて、搬送通路62の壁面から徐々に高くなるように設けられている。ガイドレール63は、搬送通路62の長さ方向に沿って延びる金属製の細長い板である。ガイドレール63は周方向スリット39の中に挿入可能な板状の部材である。
【0072】
整列工程では、ガイドレール63が周方向スリット39内に挿入されている。ガイドレール63は、搬送通路62に並んだホルダ29の周方向スリット39に入り込むように搬送通路内に設けられている。ガイドレール63は、搬送通路が進むにつれて、搬送通路の壁から徐々に立ち上がるように配置されている。これにより、搬送通路をホルダ29が移動するにつれて、周方向スリット39に徐々にガイドレール63が入り込んでゆく。一部のホルダ29は、周方向スリット39とガイドレール63との干渉によって、それらが不完全は嵌め合い状態から、完全な嵌め合い状態に移行するように回転する。よって、ガイドレール63をもつ終期部分は、第2の矯正部を提供している。これにより、ホルダ29は、ガイドレール63に噛み合った状態のまま移動してゆく。ガイドレール63は、周方向スリット39に噛み合うことにより、ホルダ29の周方向への回転を規制する。
【0073】
ターミナル部29aと周方向スリット39は、ホルダ29の周方向に関して互いに所定の角度位置に位置するように設けられている。よって、ガイドレール63上のホルダ29は、ターミナル部29aを所定の位置に位置付けて整列させられる。この結果、ホルダ29は、上下方向の姿勢と、周方向の姿勢との両方が規定の姿勢になるように位置付けられる。
【0074】
図5、
図6、
図7は、搬送通路62の長手方向に直交する断面を示す。搬送通路62の中期部分から終期部分にかけて、搬送通路62は、ホルダ29をやや傾いた縦姿勢に保持する。
【0075】
搬送通路62は、ホルダ29の上側に位置付けられるガイド部材64を有する。ガイド部材64は、ホルダ29に設けられた段部に当接することにより、ホルダ29の軸方向の位置を規定する。図示の例では、ガイド部材64は、ターミナル部29aに設けられた段部の下に位置付けられ、段部を下から支える。ガイド部材64は、ホルダ29の軸方向の姿勢を維持する。ガイド部材64は、ガイドレール62bの一部でもある。
【0076】
搬送通路62は、ホルダ29の下側に位置付けられるガイド部材65を有する。ガイド部材65は、スリット38が提供する開口部に接触する。スリット38を区画するように周方向に離れて位置する2つの縁は、ひとつの平面上に位置している。ガイド部材65は、これら2つの縁に接触することにより、ホルダ29の回転を規制し、ホルダ29の周方向の姿勢を維持する。ガイド部材65は、ガイドレール62bの一部でもある。
【0077】
図5に図示されるように、搬送通路62の初期段階においては、ガイドレール63は周方向スリット39にほとんど入り込んでいないか、またはわずかに入り込んでいる。
図6に図示されるように、ホルダ29が搬送通路62内を進むと、ガイドレール63は周方向スリット39内に深く入り込む。このように、ガイドレール63は、ホルダ29が搬送通路62内を進むにつれて、徐々に周方向スリット39内に深く入り込んでゆく。
【0078】
このとき、ガイドレール63は、周方向スリット39によってホルダ29を吊り上げ、支えている。言い換えると、ホルダ29は、ガイドレール63の上に乗っている。ホルダ29は、縦姿勢のまま、後続の工程への搬送されるまでストックされる。ホルダ29は
図7に図示されるような完全な縦姿勢に保持されてもよい。
【0079】
図8は、
図7を下から見た底面図である。図示されるように、ガイドレール63は、ホルダ29の径方向の半分を超えて周方向スリット39内に入り込んでいる。ホルダ29は、ガイドレール63、ガイド部材64、およびガイド部材65によって縦姿勢に維持される。さらに、ホルダ29は、ガイドレール63およびガイド部材65によって周方向に関して所定の姿勢に維持される。ガイドレール63は周方向スリット39との噛み合いによってホルダ29の周方向への回転を規制する規制部材を提供している。
【0080】
ガイド部材65は、スリット38との噛み合いによってホルダ29の周方向への回転を規制する規制部材を提供している。ガイド部材65は、周方向スリット39とガイドレール63との噛み合いが解消された状態においても、ホルダ29の周方向への回転を阻止する。これにより、周方向スリット39からガイドレール63が抜き出された後においても、ホルダ29は、周方向に関して規定の位置に位置付けられる。
【0081】
この実施形態によると、低コストの生産を可能とするガスセンサの製造方法、およびガスセンサの製造装置が提供される。しかも、安定した品質の提供が可能となる。この実施形態では、ホルダ29を整列させる工程において、ホルダ29を搬送に適した縦姿勢に整列させることができる。また、ホルダ29を後続の工程に適した縦姿勢に整列させることができる。例えば、縦姿勢は、後続の工程への搬送のための把持(チャック操作)に適している場合がある。また、縦姿勢は、後続の工程へそのままの姿勢で移行できる場合がある。
【0082】
しかも、ホルダ29のターミナル部29aの位置が所定の位置になるようにホルダ29を周方向に関して整列させることができる。この結果、低コストの生産が可能となる。具体的には、周方向スリット39に噛み合うガイドレール63によってホルダ29を安定的に縦姿勢に整列させることができる。しかも、ガイドレール63はホルダ29をその周方向に関しても整列させる。周方向の整列は、ガイド部材65によっても提供される。
【0083】
(第2実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態のホルダ29では、スリット36とスリット38とが90度異なる角度位置に設けられている。スリット36とスリット38との位置は、種々の組合せに位置付けることができる。
【0084】
図9、
図10、および
図11に図示されるこの実施形態では、ヒータ保持部35を形成するスリット236と、コンタクト部37を形成するスリット38とが、周方向の同じ位置に形成されている。この実施形態でも、ガイド部材65はスリット38の縁と接触することによりホルダ29の周方向への回転を阻止している。
【0085】
(第3実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、スリット38とガイド部材65とによってホルダ29の周方向への回転が阻止されている。これに代えて、ヒータ保持部35を形成するスリット236によってホルダ29の周方向への回転が阻止されてもよい。
【0086】
図12に図示される実施形態では、ヒータ保持部35を形成するスリット236と、搬送通路62のガイド部材365とによってホルダ29の回転が阻止される。このように、搬送工程におけるホルダ29の回転阻止は、搬送方向TDと平行な平面に沿って広がるスリット38、236を利用することにより実現可能である。
【0087】
(第4実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、搬送方向TDに平行な平面を区画するスリット38、236によってホルダ29の周方向の回転が阻止される。これに代えて、搬送方向TDに直交する平面を区画するスリットによってホルダ29の周方向への回転を阻止してもよい。
【0088】
図13に図示される実施形態では、搬送方向TDの終端において、スリット36を終端壁466に当てることによってホルダ29の周方向への回転が阻止される。この実施形態によると、整列工程の終端、すなわち搬送装置によって搬送される直前に、ホルダ29の周方向の位置を所定の位置に位置決めすることができる。
【0089】
(第5実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態では、整列工程においてホルダ29は重力方向に沿って直立した縦姿勢で搬送される。これに代えて、ホルダ29は、やや傾いた縦姿勢で搬送されてもよい。
【0090】
図14に図示される実施形態では、ホルダ29は、やや傾いた縦姿勢で搬送される。ホルダ29は、周方向スリット39を下に向けるように傾けられている。言い換えると、ホルダ29は、ターミナル部29aを上側に位置付けるように傾けられている。
【0091】
(第6実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。
図15に図示される実施形態では、傾けて搬送されるホルダ29の上側に位置するガイド部材64が除去されている。ホルダ29は、自らの重量によってガイドレール63とガイド部材65とに乗りながら搬送される。よって、上側に位置するガイド部材64を無くすことができる。
【0092】
(第7実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。
図16に図示される実施形態では、両方のガイド部材64、65が除去されている。ホルダ29は、自らの重量によってガイドレール63に乗りながら搬送される。ガイドレール63は、それ単独でホルダ29の姿勢を維持することができる。
【0093】
(第8実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態のホルダ29は、比較的狭い幅のフランジ部29bを有している。ホルダ29は、多様な形状のフランジ部を有することができる。
【0094】
図17、および
図18に図示される実施形態では、ホルダ29は、その端部から径方向外側に向けて長く延び出すように形成されたフランジ部829bを有する。フランジ部829bは、4つのタブ状と呼べる板片を含む。フランジ部829bは、コンタクト部37の端部において径方向外側に延び出すように設けられている。フランジ部829bは、ホルダ29の中心軸AXに直交する平面HPに沿って延びている。
【0095】
この実施形態では、パーツフィーダ61の搬送通路62は、左右一対のガイドレール867と、左右一対のガイドレール868とを有する。これらガイドレール867、868は板状に延びている。
【0096】
図17に図示されるように、ガイドレール867、868の間には、ホルダ29が導入される。ガイドレール867、868は、それらの間にフランジ部829bを挿入可能な隙間または溝を形成する部材である。隙間は、スロットとも呼ぶことができる。整列工程では、フランジ部829bが隙間内に挿入されている。ホルダ29は、ガイドレール867、868の間において縦姿勢を維持しながら搬送される。ガイドレール867とガイドレール868との上下方向の間には、フランジ部829bを配置可能な隙間が形成されている。ガイドレール867とガイドレール868との上下方向の隙間Lと、フランジ部829bの厚さTとは、L<2Tを満足するように設定されることが望ましい。フランジ部829bは、ガイドレール867とガイドレール868との間を滑って移動することができる。
【0097】
図18に図示されるように、下側の一対のガイドレール867は、ホルダ29のコンタクト部37の両側に位置している。下側の一対のガイドレール867は、それらの間に、ホルダ29のコンタクト部37を受け入れ可能な溝状の隙間を形成している。上側の一対のガイドレール868は、ホルダ29の両側に位置している。上側の一対のガイドレール868は、それらの間に、ホルダ29のターミナル部29aを受け入れ可能な溝状の隙間を形成している。この隙間は、ターミナル部29aの移動を規制し、ホルダ29の周方向への回転を規制する程度の細い隙間である。上側の一対のガイドレール868は、ターミナル部29aの両側に配置されている。整列工程では、ホルダ29は一対の第1ガイドレール867の間と一対の第2ガイドレール868の間とに位置付けられる。
【0098】
この実施形態では、上記実施形態の周方向スリット39に代えて、比較的大きいフランジ部829bがホルダ29を縦姿勢に位置付けるための面として利用される。整列工程142では、フランジ部829bを、ガイドレール867、868に接触させることにより、ホルダ29を縦姿勢に整列させる。また、この実施形態でも、整列工程においてホルダ29の周方向への回転を阻止することができる。
【0099】
(第9実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態に代えて、整列工程のいずれかの段階において、縦方向に延びるスリット236、38を利用してもよい。
【0100】
図19に図示される実施形態は、
図9に図示されるホルダ29のスリット236、38が利用される。ガイドレール962aは、ホルダ29のスリット236と、スリット38との両方に噛み合う。
【0101】
(第10実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態に代えて、ターミナル部29aをもたないホルダを採用してもよい。
図20は、ターミナル部を持たないホルダ29を図示している。ホルダ29には、ターミナル部29aに相当する電線またはバスバーが接続される。
【0102】
(第11実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態に加えて、ヒータ32とホルダ29とを組み合わせるための新たな工程を採用することができる。
図21は、この実施形態のガスセンサの製造方法を示す流れ図である。この実施形態では、ホルダ29とヒータ32とを組み合わせることによってヒータユニット31を形成する装着工程150が採用される。この装着工程150では、ホルダ29をヒータ32の上から落下させることによってヒータ32の先端部にホルダ29が位置づけられる。
【0103】
この実施形態では、先行する実施形態のステップ141−146が採用される。ステップ151は、ヒータ32を所定の姿勢に設置するヒータ設置工程である。ここでは、搬送装置によってヒータ32が作業台の上に所定の姿勢となるように位置付けられる。ここでは、ヒータ32は、先端部を上に、リード34を下にした逆さの縦姿勢に位置付けられる。ヒータ32は、その中心軸AXが重力方向と平行となるように位置付けられる。ステップ151は、基端部を下に、先端部を上に向けてヒータ32を縦姿勢に保持する保持工程を提供する。ここでは、ヒータ32の中央部やや上の胴部分が作業台に設けられた保持装置によって締め付けられる。保持装置は、部材を保持または解放可能なチャック装置を含む。チャック装置は、移動可能な爪部によって部材を保持可能である。これにより、ヒータ32が逆さの縦姿勢に調節される。
【0104】
ステップ152は、位置決め工程である。ここでは、搬送装置によってホルダ29がヒータ32上に位置付けられる。ホルダ29は、先端部を上に位置付けて保持されたヒータ32の上に、コンタクト部37を下に、ヒータ保持部35を上に位置付けた逆さの縦姿勢で位置付けられる。すなわち、ホルダ29は、ヒータ32の先端の上から被せるように位置付けられる。この位置決め工程では、ホルダ29がヒータ32から離れているが、ホルダ29のコンタクト部37がヒータ32の先端部に被さる位置まで、保持装置によってホルダ29を位置付けることができる。
【0105】
搬送装置は、ホルダ29を搬送する間中、他の物品との干渉を検出しながらホルダ29を搬送する。搬送装置は、例えば所定のしきい値以上のトルクが発生すると干渉を検出し、作業者へ報知する。
【0106】
ステップ153は搬送装置の保持装置に含まれるチャック装置を緩める隙間チャック工程である。チャック装置は完全に開放状態に移行することなく、ホルダ29の姿勢を維持したまま、ホルダ29を真っ直ぐに下へ落下させるようにわずかに緩められる。チャック装置は、ホルダ29との間に小さい隙間を形成する。チャック装置は、ホルダ29が逆さの縦姿勢から斜めに倒れることを阻止する程度の開度に開かれる。このようなチャック装置の開度は、中間開度とも呼ばれる。この工程において、チャック装置は、ホルダ29の倒れを抑制しながら、軸方向に落下させる案内部材を提供する。
【0107】
ステップ154は、自由落下工程である。ここでは、ホルダ29が、ヒータ32の上にホルダ29の自重だけによって自然落下する。縦姿勢に保持されたヒータ32の上からホルダ29を自重で落下させることにより、ホルダ29を自重によりヒータ32の先端部に接触させる落下工程が提供される。
【0108】
ホルダ29は、大径のコンタクト部37を下にしてヒータ32に被せられ、しかもコンタクト部37とヒータ保持部35との間にコーン部を有しているから、ホルダ29は、自らの重さによってホルダ29の中心軸AXをヒータ32の中心軸AXに一致させる。すなわち、ホルダ29の重さだけで、自動的に調芯が実現される。これにより、ヒータ32の損傷、ホルダ29の過度の変形が抑制される。例えば、ヒータ32の角部または表面の欠けが抑制される。
【0109】
ステップ155は、ホルダ29をヒータ32の先端部に被せる組合せ工程である。ここでは、ステップ154によって落下させられたホルダ29がステップ145−151によって設置されたヒータ32に被せられる。ホルダ29は、自重だけで、ヒータ32の上に落下し、接触することにより、先端部の上に被せられる。
【0110】
図22は、ステップ152からステップ154におけるホルダ29の移動を示している。図中には、ガスセンサの製造装置を制御する制御装置70が図示されている。制御装置70は、
図21に図示された複数の工程において製造装置を制御する。制御装置70は、落下工程および組合せ工程において複数の保持装置を制御する。これら保持装置は、ホルダ29またはヒータ32に接触または離間するように開閉可能なチャック装置と、静止している台座または案内部材とを含む。保持装置は、ホルダ29またはヒータ32の移動を規制するようにそれらと接触する形状をもつ。例えば、保持装置の少なくとも一部は、ホルダ29またはヒータ32を径方向または軸方向に受け入れ可能なU字形空洞、または丸穴を形成する部材によって提供することができる。
【0111】
制御装置は、電子制御装置(Electronic Control Unit)である。制御装置は、少なくともひとつの演算処理装置(CPU)と、プログラムとデータとを記憶する記憶媒体としての少なくともひとつのメモリ装置とを有する。制御装置は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって提供される。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを非一時的に格納している。記憶媒体は、半導体メモリまたは磁気ディスクなどによって提供されうる。制御装置は、ひとつのコンピュータ、またはデータ通信装置によってリンクされた一組のコンピュータ資源によって提供されうる。プログラムは、制御装置によって実行されることによって、制御装置をこの明細書に記載される装置として機能させ、この明細書に記載される方法を実行するように制御装置を機能させる。制御装置は、多様な要素を提供する。それらの要素の少なくとも一部は、機能を実行するための手段と呼ぶことができ、別の観点では、それらの要素の少なくとも一部は、構成として解釈されるブロック、または構成として解釈されるモジュールと呼ぶことができる。
【0112】
制御装置が提供する手段および/または機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、制御装置がハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、またはアナログ回路によって提供することができる。
【0113】
段階(a)は、ステップ152の初期段階である。ヒータ32は、保持装置によって保持されている。ヒータ32は、開閉可能なチャック装置71およびチャック装置72と、台座73と、リードサポート74とによって保持される。台座73およびリードサポート74とは、静止した部材、または可動の部材によって提供することができる。ホルダ29は、保持装置によって保持され、搬送される。保持装置は、駆動機構75によって開閉可能なチャック装置76を含む。ホルダ29は、ヒータ32の上に搬送される。
【0114】
段階(b)は、ステップ152の後期段階である。ホルダ29は、ヒータ32の先端部がコンタクト部37の中に位置するように位置づけられる。言い換えると、ホルダ29は、ヒータ32の先端部が、ホルダ29の周方向スリット39より直径が大きい大径部分の中に位置するように位置づけられる。これにより、後続の落下工程における落下距離を抑制しながら、スリット縁39aと角部32aとの衝突の抑制が図られる。ホルダ29は、径方向に関して、スリット縁39aとの衝突を避けるように位置づけられる。ホルダ29は、コンタクト部37とヒータ保持部35との間の錐面部分35a内にまで到達していてもよい。ただし、この工程では、スリット縁39aとヒータ32の衝突を避けるために、ヒータ32はスリット縁39aを越えて挿し込まれることはない。
【0115】
段階(c)は、ステップ153においてチャック装置76が開かれた直後である。ホルダ29は、チャック装置76から開放され、自重だけによって自由落下する。ホルダ29は、ヒータ32の先端部に被せられているから、ホルダ29はヒータ32の先端部の上に落下する。しかも、搬入工程においてホルダ29はヒータ32の近傍にまで接近させられている。このため、ホルダ29の落下距離はわずかな距離である。ホルダ29は、チャック装置76によって案内されながら、自由落下する。チャック装置76は、案内部材を提供する。このとき、チャック装置76は、スリット縁39aとヒータ32の角部32aとの衝突を避けるようにホルダ29を案内し続ける。
【0116】
段階(d)は、ステップ154の終期段階である。ヒータ32の直径は、スリット縁39aの位置におけるホルダ29の内径より小さい。このため、ヒータ32の先端部は、スリット縁39aを越えてホルダ29の奥へ挿入される。ヒータ32の直径は、ヒータ保持部35の内径より大きい。このため、ヒータ32の先端部は、錐面部分35aに到達するが、角部32aは、錐面部分35aの内面に接触する。これにより、ホルダ29を自由落下させることによる挿入量が規定される。落下工程の後、組合せ工程の間中、ホルダ29は、ヒータ32の先端部の上に安定的に位置付けられる。段階(d)は、ホルダ29とヒータ32との圧入開始位置を示す。ヒータ32は、図示の位置から、ヒータ保持部35の中に圧入される。
【0117】
図23は、ステップ153におけるホルダ29の移動を示している。段階(a)は、初期段階である。ホルダ29が落下するにつれて、ヒータ32の先端は、ホルダ29の奥へ徐々に侵入してゆく。段階(b)は、中期段階である。このとき、ヒータ32の先端部がスリット縁39aを通過する。このとき、角部32aは、スリット縁39aに衝突することなく、スリット縁39aの径方向内側を通過する。この実施形態のヒータ32は、先端部分に段付き形状を有し、その段部によって角部32aが形成されている。このような形状は、セラミックコアの周囲に発熱体を設けることによって形成される。スリット縁39aと角部32aとの衝突が回避されることにより、角部32aにおける破損が抑制される。段階(c)は、後期段階である。角部32aは、錐面部分35aの内面に接触する。
【0118】
図24、
図25は、ホルダ29の中心軸AXに直交する断面におけるチャック装置76の断面を示す。チャック装置76は、ホルダ29の少なくとも一部を収容する凹部76aを有する。凹部76aは、チャック装置76がホルダ29に接触していない状態においても、ホルダ29を囲むことを可能とする。凹部76aが形成する空間はホルダ29を収容するとともに、ホルダ29がその径方向に向けてチャック装置76の間から抜け出すことを阻止することを可能とする。言い換えると、凹部76aは、ホルダ29が縦姿勢から横姿勢へ向けて倒れることを阻止することを可能とする。
図24は、ホルダ29とチャック装置76とが接触している状態を示す。
図25は、チャック装置76の隙間チャック状態(中間チャック状態)を示す。隙間チャック状態は、ホルダ29の倒れを防止しながら、ホルダ29の上下方向への移動を許容する。
【0119】
図24および
図25に図示されるように、落下工程は、ホルダ29の外周面に接触することによりホルダ29を搬送するチャック装置76をわずかに開くことにより提供される。落下工程では、チャック装置76によってホルダ29の倒れを抑制しながら、ホルダ29を軸方向に落下させる。チャック装置76は、ホルダ29の全方向への倒れを阻止するために、凹部76aを有することが望ましい。
【0120】
図26は、スリット縁39aが角部32aに衝突する一例を示す。落下工程においてホルダ29が平行移動または傾斜すると、スリット縁39aが角部32aに衝突することがある。図中には、ホルダ29の中心軸AX29が、ヒータ32の中心軸AX32に対して衝突角度RD1だけ倒れた場合が図示されている。ホルダ29の平行移動量および/または傾斜角は、ヒータ32とホルダ29との接触によって規制される。よって、スリット縁39aと角部32aとが衝突する条件は、ヒータ32とホルダ29との直径、長さなどに基づいて数学的に示すことができる。この実施形態では、スリット縁39aと角部32aとが衝突しないように、中心軸AX29と中心軸AX32との平行移動量および/または傾斜角がチャック装置76によって規制されている。
【0121】
図27は、チャック装置76がホルダ29の倒れを抑制することにより、スリット縁39aと角部32aとの衝突が回避されている一例を示す。図示されるように、チャック装置76は、ホルダ29を保持するほどに強く接触することはないが、ホルダ29の傾斜角を規制するように位置している。チャック装置76は、ホルダ29の傾斜角を上記衝突角度RD1を下回る抑制角度RD2に規制する。これにより、ヒータ32がスリット縁39aの位置に到達したときに、スリット縁39aと角部32aとの間に隙間GPが形成される。
【0122】
図21に戻り、ステップ156はヒータ32をホルダ29に圧入する圧入工程である。ここでは、ホルダ29の中にヒータ32が圧入されることによりヒータユニット31として組み立てられる。圧入工程では、ヒータ32を逆さの縦位置に固定したまま、ホルダ29が上から下へ押し下げられる。圧入工程においては、フランジ部29bに当接する圧入器具、例えば環状パンチ器具が用いられる。ホルダ29は、規定の位置まで押し下げられる。
【0123】
組合せ工程155および圧入工程156は、ヒータ32およびホルダ29を縦姿勢に位置付けて実行される。整列工程142は、周方向スリット39を、ガイドレール63に接触させることにより、ホルダ29を縦姿勢に整列させる。よって、整列工程142において、後続の組合せ工程155および圧入工程156に適した縦姿勢にホルダ29を整列させることができる。
【0124】
ステップ157はステップ141−156の製造方法によって製造されたヒータユニット31を作業台から取り出す排出工程である。ここでは、ヒータユニット31が搬送装置によって作業台から取り出され、次の工程へ搬送される。搬送装置としては、多関節型ロボット、スカラロボットなど多様な機器を利用することができる。
【0125】
ステップ148はガスセンサ10の組立工程である。この組立工程では、ヒータユニット31がセンサ素子13の中に圧入され、固定される。この工程において、ホルダ29とヒータ32とセンサ素子13とが規定の位置関係に位置づけられる。
【0126】
この実施形態では、ガスセンサの製造方法と製造装置とが提供される。保持装置71、72、73、74、76は、ホルダ29の内部にヒータ32の先端部を挿入可能な縦姿勢にヒータ32およびホルダ29を保持する。保持装置71、72、73、74は、下保持装置を提供する。保持装置71、72、73、74は、ヒータ32をホルダ29の下に位置付ける。チャック装置76は、上保持装置を提供する。チャック装置76は、ホルダ29をヒータ32の上に位置付ける。チャック装置76は、上側に位置づけられたホルダ29を自重により落下させるように開放可能である。しかも、チャック装置76は、わずかに開くことにより、ホルダ29の倒れを抑制しながら、軸方向に落下させる。制御装置70は、ホルダ29の内部にヒータ32の先端部を位置づけた後に、ホルダ29を自重により落下させるように上チャック装置76を開放させる。
【0127】
この実施形態によると、ホルダ29とヒータ32とは、ホルダ29を落下させることによって圧入開始位置に位置付けられる。言い換えると、ホルダ29がヒータ32の上からホルダ29の自重だけによって落下することによってホルダ29とヒータ32との接触が図られる。このため、最初の接触時に過大な応力が角部32aに作用することが回避され、ヒータ32の破損が回避される。上チャック装置76がホルダ29を強固に保持しながら、圧入開始位置までヒータ32をホルダ29の内部に挿入する場合に比べると、角部32aがホルダ29に接触する際の力が抑制され、ヒータ32の破損が抑制される。
【0128】
加えて、チャック装置76は、落下過程にあるホルダ29の傾きを抑制する。これにより、スリット縁39aと角部32aとの衝突が抑制される。この結果、角部32aの欠けが抑制されるから、低コストの生産が可能となる。しかも、安定した品質の提供が可能となる。
【0129】
この実施形態によると、縦姿勢のホルダ29と縦姿勢のヒータ32とが組合せられる。このような縦姿勢での工程に適した他の工程が組合せられる。そのひとつは、ホルダ29を縦姿勢に整列させる整列工程である。これにより、ホルダ29は、容易に後続の装着工程および圧入工程に供給される。この実施形態によると、ホルダ29とヒータ32とを連結する一連の工程が効率的に実行可能となる。
【0130】
(第12実施形態)
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。上記実施形態に代えて、ホルダ29内に向けてヒータ32を上から下へ落下させることによってホルダ29とヒータ32とを組み合わせてもよい。
【0131】
図28は、
図22に相当する遷移図である。この実施形態では、ホルダ29がコンタクト部37を上に、ヒータ保持部35を下に位置付ける縦姿勢に保持される。ホルダ29は、保持装置77によって保持される。ヒータ32は、その先端部を下に、リード34を上に位置付ける縦姿勢に保持される。ヒータ32は、駆動機構78によって開閉可能なチャック装置79によって保持され、搬送される。
【0132】
段階(a)は、ステップ152において提供される。ヒータ32は、ホルダ29の上に位置づけられる。段階(b)は、ステップ153において提供される。ヒータ32の先端部は、ホルダ29の中に挿入される。これにより、
図22の段階(b)と上下が逆の状態が提供される。段階(c)は、ステップ154において提供される。チャック装置79が開かれることにより、ヒータ32がホルダ29内に向けて自由落下する。このとき、チャック装置79は、ヒータ32の倒れを抑制する。段落(d)は、ステップ155において提供される。ヒータ32が自由落下することにより、ヒータ32の先端は、ホルダ29の周方向スリット39の縁に衝突することなく錐面部分35aに到達する。この結果、ヒータ32を落下させることにより、ヒータ32の先端部にホルダ29を被せる組合せ工程が提供される。
【0133】
この実施形態では、ガスセンサの製造方法と製造装置とが提供される。保持装置77、79は、ホルダ29の内部にヒータ32の先端部を挿入可能な縦姿勢にヒータ32およびホルダ29を保持する。保持装置77は、下保持装置を提供する。保持装置77は、ホルダ29をヒータ32の下に位置付ける。チャック装置79は、上保持装置を提供する。チャック装置79は、ヒータ32をホルダ29の上に位置付ける。チャック装置79は、上側に位置づけられたヒータ32を自重により落下させるように開放可能である。しかも、チャック装置79は、わずかに開くことにより、ヒータ32の倒れを抑制しながら、軸方向に落下させる。この実施形態でもヒータ32の破損が抑制される。
【0134】
(他の実施形態)
ここに開示される発明は、その発明を実施するための実施形態に何ら制限されることなく、種々変形して実施することが可能である。開示される発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。実施形態は追加的な部分をもつことができる。実施形態の部分は、省略される場合がある。実施形態の部分は、他の実施形態の部分と置き換え、または組み合わせることも可能である。実施形態の構造、作用、効果は、あくまで例示である。開示される発明の技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示される発明のいくつかの技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0135】
例えば、ホルダ29は、図示される形状に限定されることなく種々の形状をもつことができる。例えば、コンタクト部37における良好な電気的な接触を得るために追加的なスリットを設けることができる。また、ターミナル部29aは種々の形状をもつことができる。例えば、ターミナル部29aは、図示の形態より短い形状としてもよい。また、ホルダ29、329に設けられたコンタクト部37は、センサ素子13の内面の電極に電気的に接触させない構成を採用してもよい。この場合、コンタクト部37は、ホルダ29、329をセンサ素子13の内部に固定する部分としてだけ機能する。この場合、ホルダ29、329にターミナル部29aに相当する電線などが接続されない構成が採用される。
【0136】
また、上記実施形態では、周方向スリット39またはフランジ部829bを利用したが、整列工程において、周方向スリット39およびフランジ部829bの両方を利用してホルダ29を所定の位置に所定の姿勢で整列させてもよい。また、ひとつまたは複数の部位における接触によって、ホルダ29の軸の周りにおける回転を規制してもよい。例えば、周方向スリット39にガイドレール63を接触させることにより、および/または、第1の縦スリット36、236または第2の縦スリット38にガイド部材65、365、466を接触させることによりホルダ29の回転を規制できる。
【0137】
また、上記実施形態では、
図7に図示されるようにコンタクト部37を上に、ヒータ保持部35を下に位置付けるようにホルダ29が整列される。これに代えて、ヒータ保持部35を上に、コンタクト部37を下に位置付けるようにホルダ29を整列させてもよい。
【0138】
上記実施形態では、保持装置であるチャック装置によって案内部材が提供される。これに代えて、チャック装置とは別に設けられた部材によって案内部材が提供されてもよい。例えば、チャック装置76の近傍に配置された静的な部材によって、チャック装置76から解放されたホルダ29を案内してもよい。この場合、チャック装置76は、中間チャック開度で停止することなく開くことができる。同様に、チャック装置79の近傍にヒータ32を案内する案内部材を設けてもよい。これら案内部材は、ホルダ29またはヒータ32を径方向または軸方向に受け入れ可能なU字形空洞、または丸穴を形成する部材によって提供することができる。