(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
テトラフルオロエチレン単位のみからなるか、又は、テトラフルオロエチレン単位と前記テトラフルオロエチレンと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位0.001〜2モル%とを含むポリテトラフルオロエチレン粒子を含む水性分散液であって、
前記ポリテトラフルオロエチレン粒子は、体積平均粒子径が0.1nm以上、20nm未満であり、かつ、当量重量が6000以上である
ことを特徴とするポリテトラフルオロエチレン水性分散液(但し、非反応性末端ペルフルオロポリエーテル、H原子一個を含む一端または両端を有するヒドロフルオロポリエーテル、または側鎖末端にフッ素の代りに1個もしくはそれ以上の塩素原子を有するヒドロフルオロポリエーテルを含有するものを除く。)。
炭素数10〜20のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル構造からなるポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む請求項1、2、3、4又は5記載のポリテトラフルオロエチレン水性分散液。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のポリテトラフルオロエチレン水性分散液は、テトラフルオロエチレン[TFE]単位、又は、テトラフルオロエチレン単位と上記テトラフルオロエチレンと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位とを含むポリテトラフルオロエチレン[PTFE]粒子を含む。
【0019】
上記PTFEとしては、ホモPTFEであっても、変性PTFEであってもよい。変性PTFEは、TFE単位とTFEと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位とを含む。また、上記PTFEは、非溶融加工性及びフィブリル化性を有する高分子量PTFEであってもよいし、溶融加工性を有し、フィブリル化性を有しない低分子量PTFEであってもよい。
【0020】
本明細書において、溶融加工性とは、押出機および射出成形機などの従来の加工機器を用いて、ポリマーを溶融して加工することが可能であることを意味する。
【0021】
上記変性モノマーとしては、TFEとの共重合が可能なものであれば特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕等のパーフルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕等のクロロフルオロオレフィン;トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン〔VDF〕等の水素含有フルオロオレフィン;パーフルオロビニルエーテル;パーフルオロアルキルエチレン;エチレン;ニトリル基を有するフッ素含有ビニルエーテル等が挙げられる。また、用いる変性モノマーは1種であってもよいし、複数種であってもよい。
【0022】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては特に限定されず、例えば、下記一般式(5)
CF
2=CF−ORf
8 (5)
(式中、Rf
8は、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるパーフルオロ不飽和化合物等が挙げられる。本明細書において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
【0023】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、上記一般式(5)において、Rf
8が炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基を表すものであるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕が挙げられる。上記パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜5である。
【0024】
上記PAVEにおけるパーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられるが、パーフルオロアルキル基がパーフルオロプロピル基であるパープルオロプロピルビニルエーテル〔PPVE〕が好ましい。
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、更に、上記一般式(5)において、Rf
8が炭素数4〜9のパーフルオロ(アルコキシアルキル)基であるもの、Rf
8が下記式:
【0026】
(式中、mは、0又は1〜4の整数を表す。)で表される基であるもの、Rf
8が下記式:
【0028】
(式中、nは、1〜4の整数を表す。)で表される基であるもの等が挙げられる。
パーフルオロアルキルエチレンとしては特に限定されず、例えば、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、パーフルオロヘキシルエチレン(PFHE)等が挙げられる。
【0029】
ニトリル基を有するフッ素含有ビニルエーテルとしては、CF
2=CFORf
9CN(式中、Rf
9は2つの炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよい炭素数が2〜7のアルキレン基を表す。)で表されるフッ素含有ビニルエーテルがより好ましい。
【0030】
上記変性PTFEにおける変性モノマーとしては、HFP、CTFE、VDF、PPVE、PFBE及びエチレンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。より好ましくは、HFP及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種の単量体である。
【0031】
上記変性PTFEは、変性モノマー単位が0.001〜2モル%の範囲であることが好ましく、0.001〜1モル%の範囲であることがより好ましい。
【0032】
本明細書において、PTFEを構成する各単量体の含有量は、NMR、FT−IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
【0033】
上記PTFE粒子は、体積平均粒子径が0.1nm以上、20nm未満である。体積平均粒子径が上記範囲にあると、マトリックス材料に対して極めて微分散が可能であるため、滑り性や塗膜表面の質感を更に向上させることができるという効果を奏する。また、体積平均粒子径が上記範囲にあるPTFE粒子を多段重合に供すると、極めて小さい粒子径を有するフッ素樹脂粒子を含む水性分散液を製造することができる。体積平均粒子径が大きすぎると、極めて大きな粒子径を有するフッ素樹脂粒子を含む水性分散液となるため、場合によっては反応安定性が悪く、重合途中で期待しない凝集物が生じるおそれがある。また、体積平均粒子径が大きすぎるPTFE粒子を多段重合に供すると、粒子径が極めて小さいフッ素樹脂粒子を含む分散安定性に優れた水性分散液を製造することができない。体積平均粒子径が0.1nm未満のPTFE粒子は製造が容易でない。PTFE粒子の体積平均粒子径は、0.5nm以上であることが好ましく、1.0nm以上であることがより好ましく、15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることが更に好ましい。
【0034】
上記体積平均粒子径は、動的光散乱法により測定される。PTFE固形分濃度1.0質量%に調整したPTFE水性分散液を作成し、ELSZ−1000S(大塚電子株式会社製)を使用して25℃、積算70回にて測定した値である。溶媒(水)の屈折率は1.3328、溶媒(水)の粘度は0.8878mPa・sとした。体積平均粒子径は一次粒子に分散した状態の平均粒子径である。
【0035】
上記PTFEは、溶融粘度(MV)が1.0×10Pa・S以上であることが好ましく、1.0×10
2Pa・S以上であることがより好ましく、1.0×10
3Pa・S以上であることが更に好ましい。
【0036】
上記溶融粘度は、ASTM D 1238に準拠し、フローテスター(島津製作所社製)及び2φ−8Lのダイを用い、予め測定温度(380℃)で5分間加熱しておいた2gの試料を0.7MPaの荷重にて上記温度に保って測定することができる。
【0037】
上記PTFEは、融点が324〜360℃であることが好ましい。
【0038】
本明細書において、融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
【0039】
上記PTFEは、後述するPTFE水性分散液の用途に適用することが困難であることから、フッ素化イオノマーでないことが好ましい。
【0040】
上記PTFEは、当量重量(EW)が6,000以上であることが好ましい。当量重量(EW)は、イオン交換基1当量当たりの乾燥重量であり、PTFEの当量重量(EW)が大きいことは、PTFEを構成するモノマーにイオノマーがほとんど含まれないことを意味する。上記PTFEは、イオノマーがほとんど含まれないにも関わらず、驚くべきことに極めて小さな体積平均粒子径を有する。当量重量(EW)は、10,000以上であることがより好ましく、上限は特に限定されないが、50,000,000以下であることが好ましい。
【0041】
特許文献3に記載されたフルオロポリマー粒子の水性分散液を作製するための方法では、第一段目の工程でフッ素化イオノマーの分散微粒子を形成させることを必須とするため、最終的に得られるフルオロポリマーも耐熱性が劣り、得られるフルオロポリマーを加熱すると、発泡が生じたり、着色が生じたりすることがある。本発明のポリテトラフルオロエチレン水性分散液は、PTFEの当量重量(EW)が6,000以上であることから、PTFE粒子及びそれから得られるファインパウダーや成形品は優れた耐熱性を有している。
【0042】
上記当量重量は、次の方法により測定することができる。
PTFE粒子を含む水性分散液を、塩酸あるいは硝酸を用いてPTFEを凝析させる。凝析したPTFEは、洗浄液が中性になるまで純水にて洗浄を行った後、水分がなくなるまで110℃以下で真空加熱乾燥させる。乾燥させたPTFEのおよそ0.3gを、25℃の飽和NaCl水溶液30mLに浸漬し、攪拌しながら30分間放置する。次いで、飽和NaCl水溶液中のプロトンを、フェノールフタレインを指示薬として0.01N水酸化ナトリウム水溶液を用いて中和滴定する。中和後に得られたイオン交換基の対イオンがナトリウムイオンの状態となっているPTFEを、純水ですすぎ、さらに真空乾燥して秤量する。中和に要した水酸化ナトリウムの物質量をM(mmol)、イオン交換基の対イオンがナトリウムイオンのPTFEの質量をW(mg)とし、下記式より当量重量EW(g/eq)を求める。
EW=(W/M)−22
【0043】
本発明のポリテトラフルオロエチレン水性分散液は、上記PTFE粒子が水性媒体中に分散されてなるものである。上記水性媒体は、水を含む液体であれば特に限定されず、水と、例えば、アルコール、エーテル、ケトン等のフッ素非含有有機溶媒、及び/又は、沸点が40℃以下であるフッ素含有有機溶媒とを含むものであってもよい。上記水性媒体としては水が好ましい。
【0044】
本発明のポリテトラフルオロエチレン水性分散液は、LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤を水性分散液の4600〜500000ppmに相当する量含有してもよい。含フッ素界面活性剤の使用量が少なすぎると、分散安定性に劣るおそれがあり、使用量が多すぎると、使用量に見合った効果が得られず経済的に不利である。含フッ素界面活性剤は、18,000ppm以上であることが好ましく、20,000ppm以上であることがより好ましく、23,000ppm以上であることが更に好ましく、38,000ppm以上であることが特に好ましく、400,000ppm以下であることが好ましく、300,000ppm以下であることがより好ましい。
【0045】
本発明のポリテトラフルオロエチレン水性分散液は、LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤を含有することにより、従来用いられてきた長鎖含フッ素界面活性剤を含有しなくとも、分散安定性に優れる。
【0046】
上記LogPOWは、1−オクタノールと水との分配係数であり、LogP[式中、Pは、含フッ素界面活性剤を含有するオクタノール/水(1:1)混合液が相分離した際のオクタノール中の含フッ素界面活性剤濃度/水中の含フッ素界面活性剤濃度比を表す]で表されるものである。上記LogPOWは、1.5以上であることが好ましく、PTFEから除去しやすい点で、3.0以下であることが好ましく、2.8以下であることがより好ましい。
【0047】
上記LogPOWは、カラム;TOSOH ODS−120Tカラム(φ4.6mm×250mm、東ソー(株)製)、溶離液;アセトニトリル/0.6質量%HClO
4水=1/1(vol/vol%)、流速;1.0ml/分、サンプル量;300μL、カラム温度;40℃、検出光;UV210nmの条件で、既知のオクタノール/水分配係数を有する標準物質(ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸及びデカン酸)についてHPLCを行い、各溶出時間と既知のオクタノール/水分配係数との検量線を作成し、この検量線に基づき、試料液におけるHPLCの溶出時間から算出する。
【0048】
LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤としては、含フッ素アニオン性界面活性剤が好ましく、米国特許出願公開第2007/0015864号明細書、米国特許出願公開第2007/0015865号明細書、米国特許出願公開第2007/0015866号明細書、米国特許出願公開第2007/0276103号明細書、米国特許出願公開第2007/0117914号明細書、米国特許出願公開第2007/142541号明細書、米国特許出願公開第2008/0015319号明細書、米国特許第3250808号明細書、米国特許第3271341号明細書、特開2003−119204号公報、国際公開第2005/042593号パンフレット、国際公開第2008/060461号パンフレット、国際公開第2007/046377号パンフレット、国際公開第2007/119526号パンフレット、国際公開第2007/046482号パンフレット、国際公開第2007/046345号パンフレットに記載されたもの等を使用できる。
【0049】
LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤としては、アニオン界面活性剤であることが好ましい。
【0050】
上記アニオン界面活性剤としては、例えば、カルボン酸系界面活性剤、スルホン酸系界面活性剤等が好ましく、これらの界面活性剤としては、下記一般式(I)で表されるパーフルオロカルボン酸(I)、下記一般式(II)で表されるω−Hパーフルオロカルボン酸(II)、下記一般式(III)で表されるパーフルオロポリエーテルカルボン酸(III)、下記一般式(IV)で表されるパーフルオロアルキルアルキレンカルボン酸(IV)、下記一般式(V)で表されるパーフルオロアルコキシフルオロカルボン酸(V)、下記一般式(VI)で表されるパーフルオロアルキルスルホン酸(VI)、及び/又は、下記一般式(VII)で表されるパーフルオロアルキルアルキレンスルホン酸(VII)からなるものが挙げられる。
【0051】
上記パーフルオロカルボン酸(I)は、下記一般式(I)
F(CF
2)
n1COOM (I)
(式中、n1は、3〜6の整数であり、Mは、H、NH
4又はアルカリ金属元素である。)で表されるものである。
【0052】
上記一般式(I)において、重合反応の安定性の点で、上記n1の好ましい下限は4である。また、上記Mは、得られるPTFE水性分散液の加工時に残存しにくいという点で、NH
4であることが好ましい。
【0053】
上記パーフルオロカルボン酸(I)としては、例えば、F(CF
2)
6COOM、F(CF
2)
5COOM、F(CF
2)
4COOM(各式中、Mは、上記定義したものである。)等が好ましい。
【0054】
上記ω−Hパーフルオロカルボン酸(II)は、下記一般式(II)
H(CF
2)
n2COOM (II)
(式中、n2は、4〜8の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0055】
上記一般式(II)において、重合反応の安定性の点で、上記n2の好ましい上限は6である。また、上記Mは、得られるPTFE水性分散液の加工時に残存しにくいという点で、NH
4であることが好ましい。
【0056】
上記ω−Hパーフルオロカルボン酸(II)としては、例えば、H(CF
2)
8COOM、H(CF
2)
7COOM、H(CF
2)
6COOM、H(CF
2)
5COOM、H(CF
2)
4COOM(各式中、Mは、上記定義したものである。)等が好ましい。
【0057】
上記パーフルオロポリエーテルカルボン酸(III)は、下記一般式(III)
Rf
1−O−(CF(CF
3)CF
2O)
n3CF(CF
3)COOM (III)
(式中、Rf
1は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基であり、n3は、0〜3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0058】
上記一般式(III)において、上記Rf
1は、重合時の安定性の点で、炭素数4以下のパーフルオロアルキル基であることが好ましく、n3は、0又は1であることが好ましく、上記Mは、得られるPTFE水性分散液の加工時に残存しにくいという点で、NH
4であることが好ましい。
【0059】
上記パーフルオロポリエーテルカルボン酸(III)としては、例えば、
C
4F
9OCF(CF
3)COOM、C
3F
7OCF(CF
3)COOM、
C
2F
5OCF(CF
3)COOM、CF
3OCF(CF
3)COOM、
CF
3OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COOM
(各式中、Mは上記定義したものである。)等が好ましく、重合時の安定性と除去効率とが共によい点で、
CF
3OCF(CF
3)COOM、CF
3OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COOM
(各式中、Mは上記定義したものである。)等がより好ましい。
【0060】
上記パーフルオロアルキルアルキレンカルボン酸(IV)は、下記一般式(IV)
Rf
2(CH
2)
n4Rf
3COOM (IV)
(式中、Rf
2は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基であり、Rf
3は、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜3のパーフルオロアルキレン基、n4は、1〜3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0061】
上記一般式(IV)において、上記Rf
2は、炭素数2以上のパーフルオロアルキル基、又は、炭素数4以下のパーフルオロアルキル基であることが好ましい。上記Rf
3は、炭素数1又は2のパーフルオロアルキレン基であることが好ましく、−(CF
2)−又は−CF(CF
3)−であることがより好ましい。上記n4は、1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。上記Mは、得られるPTFE水性分散液の加工時に残存しにくいという点で、NH
4であることが好ましい。
【0062】
上記パーフルオロアルキルアルキレンカルボン酸(IV)としては、例えば、
C
4F
9CH
2CF
2COOM、C
3F
7CH
2CF
2COOM、
C
2F
5CH
2CF
2COOM、C
4F
9CH
2CF(CF
3)COOM、
C
3F
7CH
2CF(CF
3)COOM、C
2F
5CH
2CF(CF
3)COOM、
C
4F
9CH
2CH
2CF
2COOM、C
3F
7CH
2CH
2CF
2COOM、
C
2F
5CH
2CH
2CF
2COOM
(各式中、Mは上記定義したものである。)等が好ましい。
【0063】
上記パーフルオロアルコキシフルオロカルボン酸(V)は、下記一般式(V)
Rf
4−O−CY
1Y
2CF
2−COOM (V)
(式中、Rf
4は、炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基であり、Y
1及びY
2は、同一若しくは異なって、H又はFであり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0064】
上記一般式(V)において、上記Rf
4は、重合安定性の点で、炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であることが好ましく、炭素数3のパーフルオロアルキル基がより好ましい。上記Mは、得られるPTFE水性分散液の加工時に残存しにくいという点で、NH
4であることが好ましい。
【0065】
上記パーフルオロアルコキシフルオロカルボン酸(V)としては、
C
3F
7OCH
2CF
2COOM、C
3F
7OCHFCF
2COOM、
C
3F
7OCF
2CF
2COOM
(各式中、Mは上記定義したものである。)等が好ましい。
【0066】
上記パーフルオロアルキルスルホン酸(VI)は、下記一般式(VI)
F(CF
2)
n5SO
3M (VI)
(式中、n5は、3〜6の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
上記一般式(VI)において、上記n5は、重合安定性の点で、4又は5の整数であることが好ましく、上記Mは、得られるPTFE水性分散液の加工時に残存しにくいという点で、NH
4であることが好ましい。
上記パーフルオロアルキルスルホン酸(VI)としては、例えば、
F(CF
2)
4SO
3M、F(CF
2)
5SO
3M
(各式中、Mは上記定義したものである。)等が好ましい。
【0067】
上記パーフルオロアルキルアルキレンスルホン酸(VII)は、下記一般式(VII)
Rf
5(CH
2)
n6SO
3M (VII)
(式中、Rf
5は、1〜5のパーフルオロアルキル基であり、n6は、1〜3の整数であり、Mは、上記定義したものである。)で表されるものである。
【0068】
上記一般式(VII)において、Rf
5は、炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基であることが好ましく、炭素数3のパーフルオロアルキル基であることがより好ましい。上記n6は、1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。上記Mは、得られるPTFE水性分散液の加工時に残存しにくい点で、NH
4であることが好ましい。
【0069】
上記パーフルオロアルキルアルキレンスルホン酸(VII)としては、例えば、
C
3F
7CH
2SO
3M
(式中、Mは上記定義したものである。)等が好ましい。
【0070】
LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤としては、下記一般式(1)
X−(CF
2)
m1−Y (1)
(式中、XはH又はFを表し、m1は3〜5の整数を表し、Yは−SO
3M、−SO
4M、−SO
3R、−SO
4R、−COOM、−PO
3M
2、−PO
4M
2(MはH、NH4又はアルカリ金属を表し、Rは炭素数1〜12のアルキル基を表す。)を表す。)で表される含フッ素化合物、一般式(II)で表されるω−Hパーフルオロカルボン酸(II)、一般式(III)で表されるパーフルオロポリエーテルカルボン酸(III)、一般式(IV)で表されるパーフルオロアルキルアルキレンカルボン酸(IV)、一般式(V)で表されるパーフルオロアルコキシフルオロカルボン酸(V)、及び、一般式(VII)で表されるパーフルオロアルキルアルキレンスルホン酸(VII)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0071】
また、LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤としては、下記一般式(1)
X−(CF
2)
m1−Y (1)
(式中、XはH又はFを表し、m1は3〜5の整数を表し、Yは−SO
3M、−SO
4M、−SO
3R、−SO
4R、−COOM、−PO
3M
2、−PO
4M
2(MはH、NH4又はアルカリ金属を表し、Rは炭素数1〜12のアルキル基を表す。)を表す。)で表される含フッ素化合物、下記一般式(3)
CF
3OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COOX (3)
(式中、Xは水素原子、NH
4又はアルカリ金属原子を表す。)で表される含フッ素化合物、及び、下記一般式(4)
CF
3CF
2OCF
2CF
2OCF
2COOX (4)
(式中、Xは水素原子、NH
4又はアルカリ金属原子を表す。)で表される含フッ素化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0072】
また、LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤としては、下記一般式(1)
X−(CF
2)
m1−Y (1)
(式中、XはH又はFを表し、m1は3〜5の整数を表し、Yは−SO
3M、−SO
4M、−SO
3R、−SO
4R、−COOM、−PO
3M
2、−PO
4M
2(MはH、NH4又はアルカリ金属を表し、Rは炭素数1〜12のアルキル基を表す。)を表す。)で表される含フッ素化合物が更に好ましい。
【0073】
本発明のポリテトラフルオロエチレン水性分散液は、下記一般式(2)
X−(CF
2)
m2−Y (2)
(式中、XはH又はFを表し、m2は6以上の整数を表し、Yは−SO
3M、−SO
4M、−SO
3R、−SO
4R、−COOM、−PO
3M
2、−PO
4M
2(MはH、NH
4又はアルカリ金属を表し、Rは炭素数1〜12のアルキル基を表す。)を表す。)で表される含フッ素化合物を含まないことが好ましい。本発明のポリテトラフルオロエチレン水性分散液は、このような従来の長鎖含フッ素界面活性剤を含有しなくても、分散安定性に優れる。
【0074】
本発明のPTFE水性分散液の固形分濃度は、1〜70質量%であってよいが、固形分濃度が低いと生産性の面で不利である点から、5〜60質量%であることが好ましい。
本発明のPTFE水性分散液の固形分濃度の下限値は、10質量%であることがより好ましく、15質量%であることが更に好ましく、20質量%であることが更により好ましく、25質量%であることが特に好ましく、30質量%であることが最も好ましい。
本発明のPTFE水性分散液の固形分濃度の上限値は、50質量%であることがより好ましく、40質量%であることが更に好ましい。
上記固形分濃度は、水性分散液1gを、送風乾燥機中で380℃、60分の条件で乾燥し、水性分散液の質量(1g)に対する、加熱残分の質量の割合を百分率で表したものである。
【0075】
本発明のPTFE水性分散液は、PTFE粒子の固形分濃度が5.0質量%であるPTFE水性分散液について測定したPTFE粒子の沈降物量が10.0質量%以下であることが好ましく、7.0質量%以下であることがより好ましく、5.5質量%以下であることが更に好ましく、3.0質量%以下であることが特に好ましい。下限は特に限定されない。
【0076】
ここで、「PTFE粒子の沈降物量」とは、例えば、以下の方法で測定する。25℃に保持した30gのPTFE水性分散液を、専用の容器に入れ、RT15A7型のロータを備えた日立工機社製の遠心分離機(himac CT15D)を用いて、5000rpmの回転数で5分間保持し、沈降物層とPTFE水性分散液層に分離する。PTFE水性分散液層を取り出して固形分量を求め、用いたPTFE水性分散液中の固形分量との差から沈降物量を計算する。沈降物量を、用いたPTFE水性分散液に含まれるPTFE量に占める割合(質量%)として測定する。割合が低いほど貯蔵安定性に優れることを示す。
【0077】
本発明のPTFE水性分散液は、PTFE粒子の固形分濃度が5.0質量%であるPTFE水性分散液について測定したPTFE粒子のメッシュアップ量が2.5質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下であることがより好ましく、1.8質量%以下であることが更に好ましく、1.3質量%以下であることが特に好ましい。下限は特に限定されない。
【0078】
ここで、「PTFE粒子のメッシュアップ量」とは、例えば、以下の方法で測定する。65℃に保持した100gのPTFE水性分散液を、内径4.76mm、外径7.94mmのチューブ(タイゴンチューブ)を備えた東京理化器械株式会社製の定量送液ポンプ(RP−2000型 ローラーポンプ)を用い、吐出流量が10L/時間の条件で2時間循環する。その後、200メッシュSUS網を用いてろ過した際のメッシュアップ量を、用いたPTFE水性分散液に含まれるPTFE量に占める割合(質量%)として測定する。割合が低いほど機械的安定性に優れることを示す。
【0079】
本発明のPTFE水性分散液は、例えば、LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤及び重合開始剤の存在下、テトラフルオロエチレン、又は、テトラフルオロエチレンと上記テトラフルオロエチレンと共重合可能な変性モノマーとの乳化重合を水性媒体中で行う工程を含み、上記含フッ素界面活性剤の使用量は、水性媒体の4600〜500000ppmに相当する量である方法によって製造することができる。
【0080】
上記方法は、特定の含フッ素界面活性剤を多量に使用することにより、粒子径が極めて小さいPTFE粒子を含む分散安定性に優れた水性分散液を製造することができる。
【0081】
上記方法では、LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤及び重合開始剤の存在下、フルオロモノマーの乳化重合を水性媒体中で行うことにより、PTFE粒子を含む水性分散液を製造する。
【0082】
上記LogPOWが3.4以下の含フッ素界面活性剤としては、上述した化合物を挙げることができる。
【0083】
上記方法における含フッ素界面活性剤の使用量は、水性媒体の4600〜500000ppmに相当する量である。含フッ素界面活性剤の使用量が少なすぎると、体積平均粒子径が小さいPTFE粒子を含む水性分散液を得ることができず、使用量が多すぎると、使用量に見合った効果が得られず経済的に不利である。含フッ素界面活性剤の使用量は、18,000ppm以上であることが好ましく、20,000ppm以上であることがより好ましく、23,000ppm以上であること更に好ましく、38,000ppm以上であることが特に好ましく、400,000ppm以下であることが好ましく、300,000ppm以下であることがより好ましい。
【0084】
上記方法で使用する重合開始剤としては、上記重合温度範囲でラジカルを発生しうるものであれば特に限定されず、公知の油溶性及び/又は水溶性の重合開始剤を使用することができる。更に、還元剤等と組み合わせてレドックスとして重合を開始することもできる。上記重合開始剤の濃度は、モノマーの種類、目的とする重合体の分子量、反応速度によって適宜決定される。
【0085】
上記重合開始剤としては、過硫酸塩及び有機過酸化物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。重合開始剤としては、PTFE粒子の水性分散液中での分散安定性が良好となることから、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩、ジサクシニックアシッドパーオキサイド、ジグルタニックアシッドパーオキサイドなどの水溶性有機過酸化物が挙げられる。
【0086】
上記重合開始剤の使用量は、PTFE粒子の水性分散液中での分散安定性が良好となることから、水性媒体の2ppmに相当する量以上であることが好ましい。
【0087】
上記方法で使用する水性媒体は、重合を行わせる反応媒体であって、水を含む液体を意味する。上記水性媒体は、水を含むものであれば特に限定されず、水と、例えば、アルコール、エーテル、ケトン等のフッ素非含有有機溶媒、及び/又は、沸点が40℃以下であるフッ素含有有機溶媒とを含むものであってもよい。
【0088】
上記方法における乳化重合を連鎖移動剤の存在下に行ってもよい。上記連鎖移動剤としては、公知のものが使用できるが、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン等の飽和炭化水素、クロロメタン、ジクロロメタン、ジフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール等のアルコール類、水素等が挙げられるが、常温常圧で気体状態のものが好ましく、エタン又はプロパンがより好ましい。
【0089】
上記連鎖移動剤の使用量は、通常、供給されるフルオロモノマー全量に対して、1〜50,000ppmであり、好ましくは1〜20,000ppmである。
【0090】
上記連鎖移動剤は、重合開始前に一括して反応容器中に添加してもよいし、重合中に複数回に分割して添加してもよいし、また、重合中に連続的に添加してもよい。
【0091】
上記乳化重合は、10〜95℃で行うことが好ましく、30℃以上で行うことがより好ましく、90℃以下で行うことがより好ましい。
【0092】
上記乳化重合は、0.05〜3.9MPaGで行うことが好ましく、0.1MPaG以上で行うことがより好ましく、3.0MPaG以下で行うことがより好ましい。
【0093】
上記乳化重合は、重合反応器に、フルオロモノマーを仕込み、反応器の内容物を撹拌し、そして反応器を所定の重合温度に保持し、次に重合開始剤を加え、重合反応を開始することにより行う。重合反応開始前に、必要に応じて、水性媒体、添加剤等を反応器に仕込んでもよい。重合反応開始後に、目的に応じて、フルオロモノマー、重合開始剤、連鎖移動剤等を追加添加してもよい。
【0094】
上記方法における乳化重合は、下記一般式(2)
X−(CF
2)
m2−Y (2)
(式中、XはH又はFを表し、m2は6以上の整数を表し、Yは−SO
3M、−SO
4M、−SO
3R、−SO
4R、−COOM、−PO
3M
2、−PO
4M
2(MはH、NH
4又はアルカリ金属を表し、Rは炭素数1〜12のアルキル基を表す。)を表す。)で表される含フッ素化合物の非存在下に行うことが好ましい。上記方法によれば、このような従来の長鎖含フッ素界面活性剤を使用しなくても、体積平均粒子径の充分小さいPTFE粒子を含む水性分散液を製造することができる。
【0095】
本発明のPTFE水性分散液は、極めて小さい粒子径を有するPTFE粒子を含むため、多段重合に供することにより、当該PTFE粒子をコア部とするコアシェル構造を有し、かつ粒子径の極めて小さいフッ素樹脂粒子を含む水性分散液を製造することができる。
【0096】
また、本発明のPTFE水性分散液を、ノニオン界面活性剤の存在下に陰イオン交換樹脂と接触させる工程(I)と、工程(I)で得られた水性分散液を、水性分散液中の固形分濃度が水性分散液100質量%に対して30〜70質量%となるように濃縮する工程(II)とを実施することにより、含フッ素界面活性剤を含まず、固形分濃度が高いPTFE水性分散液を製造することもできる。
【0097】
上記濃縮後のPTFE水性分散液の固形分濃度は、水性分散液1gを、送風乾燥機中で380℃、60分の条件で乾燥し、水性分散液の質量(1g)に対する、加熱残分の質量の割合を百分率で表したものである。
【0098】
上記陰イオン交換樹脂と接触させる工程は、従来公知の方法で行うことができる。また、上記濃縮方法としては、上述のものが挙げられる。
本発明のPTFE水性分散液は、上記工程(I)の後、PTFEの水性分散液と陰イオン交換樹脂とを分離して回収することが好ましい。
【0099】
ノニオン界面活性剤としては、フッ素を含有しないノニオン性の化合物からなるものであれば特に限定されず、公知のものを使用できる。上記ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル等のエーテル型ノニオン界面活性剤;エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドブロック共重合体等のポリオキシエチレン誘導体;ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等のエステル型ノニオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等のアミン系ノニオン界面活性剤等が挙げられる。これらはいずれも非フッ素化ノニオン界面活性剤である。
【0100】
上記ノニオン界面活性剤を構成する化合物において、その疎水基は、アルキルフェノール基、直鎖アルキル基及び分岐アルキル基の何れであってもよいが、アルキルフェノール基を構造中に有しない化合物等、ベンゼン環を有さないものであることが好ましい。
【0101】
上記ノニオン界面活性剤としては、なかでも、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、炭素数10〜20のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル構造からなるものが好ましく、炭素数10〜15のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル構造からなるものがより好ましい。上記ポリオキシエチレンアルキルエーテル構造におけるアルキル基は、分岐構造を有していることが好ましい。
【0102】
上記ポリオキシエチレンアルキルエーテルの市販品としては、例えば、Genapol X080(製品名、クラリアント社製)、タージトール9−S−15(製品名、クラリアント社製)、ノイゲンTDS−80(製品名、第一工業製薬社製)、レオコールTD−90(製品名、ライオン社製)等が挙げられる。
【0103】
本発明は、TFE単位、又は、TFE単位とTFEと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位とを含むPTFEからなり、体積平均粒子径が0.1nm以上、20nm未満であることを特徴とするPTFEファインパウダーでもある。
【0104】
上記PTFEとしては、本発明のPTFE水性分散液について述べたPTFEと同様のものを挙げることができる。
【0105】
本発明のPTFEファインパウダーは、体積平均粒子径が0.1nm以上、20nm未満である。体積平均粒子径が上記範囲にあるPTFEファインパウダーは、マトリックス材料に対して極めて微分散が可能であるため、滑り性や塗膜表面の質感を更に向上させることができるという効果を奏する。体積平均粒子径が0.1nm未満のPTFEファインパウダーは製造が容易でない。PTFEファインパウダーの体積平均粒子径は、0.5nm以上であることが好ましく、1.0nm以上であることがより好ましく、15nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることが更に好ましい。
【0106】
本発明のPTFEファインパウダーの体積平均粒子径は、動的光散乱法により測定した値である。PTFE固形分濃度1.0質量%に調整したPTFE水性分散液を作成し、ELSZ−1000S(大塚電子株式会社製)を使用して25℃、積算70回にて測定する。溶媒(水)の屈折率は1.3328、溶媒(水)の粘度は0.8878mPa・sとした。体積平均粒子径は一次粒子に分散した状態の平均粒子径である。
【0107】
本発明のPTFEファインパウダーは、平均粒子径(平均二次粒子径)が0.1〜700μmであることが好ましい。PTFEファインパウダーの平均粒子径は、0.5μm以上であることが好ましい。
【0108】
上記平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(日本電子社製)を用い、カスケードは使用せず、圧力0.1MPa、測定時間3秒で粒度分布を測定し、得られた粒度分布積算の50%に対応する値に等しいとした。
【0109】
本発明のPTFEファインパウダーは、例えば、本発明のPTFE水性分散液を凝析することによって製造することができる。上記PTFE水性分散液を凝析する方法としては、一般に凍結や機械的剪断力により乳化粒子を凝集させる方法が挙げられるが、凝析後の水相に残存するポリマーを低減させる上で、凝析剤として硝酸、硫酸、硝酸アンモニウム等の電解質を凝析前の水性分散液に加えることが好ましく、電解質に酸を用いた場合、凝析後に水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリで凝析後の水相及び凝析粒子を中和することが好ましい。
【0110】
その後、含フッ素界面活性剤の除去の為、通常さらに新たに純水で凝析粒子を洗浄する。除去効率を上げるために、洗浄は複数回繰り返すことが好ましい。
【0111】
凝析粒子を凝析及び洗浄した後、乾燥させることにより、PTFEファインパウダーを得ることができる。
【0112】
本発明のPTFE水性分散液及びPTFEファインパウダーは、成形材料、インク、化粧品、塗料、グリース、オフィスオートメーション機器用部材、トナーを改質する添加剤、めっき液への添加剤等として好適に使用することができる。上記成形材料としては、例えば、ポリオキシベンゾイルポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド等のエンジニアリングプラスチックが挙げられる。
【0113】
本発明のPTFE水性分散液及びPTFEファインパウダーは、成形材料の添加剤として、例えば、コピーロールの非粘着性・摺動特性の向上、家具の表層シート、自動車のダッシュボード、家電製品のカバー等のエンジニアリングプラスチック成形品の質感を向上させる用途、軽荷重軸受、歯車、カム、プッシュホンのボタン、映写機、カメラ部品、摺動材等の機械的摩擦を生じる機械部品の滑り性や耐摩耗性を向上させる用途、エンジニアリングプラスチックの加工助剤等として好適に用いることができる。
【0114】
本発明のPTFE水性分散液及びPTFEファインパウダーは、塗料の添加剤として、ニスやペンキの滑り性向上の目的に用いることができる。本発明のPTFE水性分散液及びPTFEファインパウダーは、化粧品の添加剤として、ファンデーション等の化粧品の滑り性向上等の目的に用いることができる。
【0115】
本発明のPTFE水性分散液及びPTFEファインパウダーは、更に、ワックス等の撥油性又は撥水性を向上させる用途や、グリースやトナーの滑り性を向上させる用途にも好適である。
【0116】
また、本発明のPTFE水性分散液及びPTFEファインパウダーは、二次電池や燃料電池の電極バインダー、電極バインダーの硬度調整剤、電極表面の撥水処理剤等としても使用できる。この用途には、PTFEファインパウダーよりもPTFE水性分散液の方が好適であることが多い。
【実施例】
【0117】
次に本発明を実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0118】
実施例の各数値は以下の方法により測定した。
【0119】
(体積平均粒子径)
動的光散乱法により測定される。PTFE固形分濃度1.0質量%に調整したPTFE水性分散液を作成し、ELSZ−1000S(大塚電子株式会社製)を使用して25℃、積算70回にて測定した。溶媒(水)の屈折率は1.3328、溶媒(水)の粘度は0.8878mPa・sとした。
【0120】
(溶融粘度(MV))
ASTM D 1238に準拠し、フローテスター(島津製作所社製)及び2φ−8Lのダイを用い、予め測定温度(380℃)で5分間加熱しておいた2gの試料を0.7MPaの荷重にて上記温度に保って測定した。
【0121】
(変性量)
NMR、FT−IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせて測定した。
【0122】
(融点)
示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度として求めた。
【0123】
(固形分濃度)
重合により得られた濃縮前の水性分散液の固形分濃度は、水性分散液1gを、送風乾燥機中で380℃、60分の条件で乾燥し、水性分散液の質量(1g)に対する、加熱残分の質量の割合を百分率で表した値を採用した。
また、濃縮後のPTFE水性分散液の固形分濃度は、水性分散液1gを、送風乾燥機中で380℃、60分の条件で乾燥し、水性分散液の質量(1g)に対する、加熱残分の質量の割合を百分率で表した値を採用した。
【0124】
(分散安定性の評価)
(貯蔵安定性試験)
25℃に保持した30gのPTFE水性分散液を、専用の容器に入れ、RT15A7型のロータを備えた日立工機社製の遠心分離機(himac CT15D)を用いて、5000rpmの回転数で5分間保持し、沈降物層とPTFE水性分散液層に分離した。PTFE水性分散液層を取り出して固形分量を求め、用いたPTFE水性分散液中の固形分量との差から沈降物量を計算した。沈降物量を、用いたPTFE水性分散液に含まれるPTFE量に占める割合(質量%)として測定した。割合が低いほど貯蔵安定性に優れることを示す。
【0125】
(機械的安定性試験)
65℃に保持した100gのPTFE水性分散液を、内径4.76mm、外径7.94mmのチューブ(タイゴンチューブ)を備えた東京理化器械株式会社製の定量送液ポンプ(RP−2000型 ローラーポンプ)を用い、吐出流量が10L/時間の条件で2時間循環した。その後、200メッシュSUS網を用いてろ過した際のメッシュアップ量を、用いたPTFE水性分散液に含まれるPTFE量に占める割合(質量%)として測定した。割合が低いほど機械的安定性に優れることを示す。
【0126】
(実施例1)
内容量1Lの撹拌機付きガラス製反応器に、530gの脱イオン水、30gのパラフィンワックス及び55.0gのパーフルオロヘキサン酸アンモニウム分散剤(APFH)を入れた。次いで反応器の内容物を85℃まで加熱しながら吸引すると同時にTFE単量体でパージして反応器内の酸素を除いた。その後、0.03gのエタンガスを反応器に加え、内容物を540rpmで攪拌した。反応器中にTFE単量体を0.73MPaGの圧力となるまで加えた。20gの脱イオン水に溶解した0.11gの過硫酸アンモニウム(APS)開始剤を反応器に注入し、反応器を0.83MPaGの圧力にした。開始剤の注入後に圧力の低下が起こり重合の開始が観測された。TFE単量体を反応器に加えて圧力を保ち、約140gのTFE単量体が反応し終わるまで重合を続けた。その後に、反応器内の圧力が常圧になるまで排気し、内容物を反応器から取り出して冷却した。上澄みのパラフィンワックスをPTFE水性分散液から取り除いた。
得られたPTFE水性分散液の固形分濃度は20.5質量%であり、体積平均粒子径は0.9nmであった。
得られたPTFE水性分散液の一部を冷凍庫に入れて凍結した。凍結したPTFE水性分散液を25℃になるまで放置して凝固した粉末を得た。凝固した湿潤粉末を150℃で18時間乾燥した。このときのPTFE粉末の溶融粘度は3.0×10
3Pa・S、融点は327.0℃であった。
得られたPTFE水性分散液を固形分濃度が5.0質量%となるように脱イオン水を加え、貯蔵安定性を評価した結果、沈降物量は0.1質量%であった。
得られたPTFE水性分散液を分散剤量が10.0質量%となるように重合したときと同一の分散剤であるAPFHを加えた。さらに、固形分濃度が5.0質量%なるように脱イオン水を加え、機械的安定性を評価した結果、メッシュアップ量は0.1質量%であった。
【0127】
また、得られたPTFE水性分散液100gに対して、界面活性剤(第一工業製薬社製ノイゲンTDS−80)を2.0g添加し均一に混合した後、陰イオン交換樹脂(製品名:アンバーライトIRA900J、ローム・アンド・ハース社製)を充填したカラムを通過させた。得られた水性分散液を60℃に保持し、相分離によって得られた濃縮相を回収した。この濃縮相は、固形分濃度が63質量%であった。さらに水と界面活性剤を添加して、固形分濃度60質量%、界面活性剤量8質量%とし、アンモニア水でpHを9.6に調整した。
【0128】
(実施例2)
実施例1における85℃の重合温度を70℃にした以外は実施例1と同様に重合を行った。
【0129】
(実施例3)
実施例1における0.11gの過硫酸アンモニウム(APS)開始剤を0.006gとした以外は実施例1と同様に重合を行った。
【0130】
(実施例4)
実施例1における0.11gの過硫酸アンモニウム(APS)開始剤を0.003gとした以外は実施例1と同様に重合を行った。
【0131】
(実施例5)
実施例1における0.11gの過硫酸アンモニウム(APS)開始剤を0.028gとした以外は実施例1と同様に重合を行った。
【0132】
(実施例6)
実施例1における0.11gの過硫酸アンモニウム(APS)開始剤を0.006gとし、約185gのTFE単量体が反応し終わるまで重合を続けた以外は実施例1と同様に重合を行った。
【0133】
(実施例7)
実施例1における0.11gの過硫酸アンモニウム(APS)開始剤を0.006gとし、55.0gのパーフルオロヘキサン酸アンモニウム分散剤(APFH)を26.4gとし、約10gのTFE単量体が反応し終わるまで重合を続けた以外は実施例1と同様に重合を行った。
【0134】
(実施例8)
実施例1における0.11gの過硫酸アンモニウム(APS)開始剤を0.006gとし、0.03gのエタンガスを0.01gとし、保った0.83MPaGの反応器の圧力を0.20MPaGとし、約40gのTFE単量体が反応し終わるまで重合を続けた以外は実施例1と同様に重合を行った。
【0135】
(実施例9)
実施例1における0.11gの過硫酸アンモニウム(APS)開始剤を0.006gとし、55.0gのパーフルオロヘキサン酸アンモニウム分散剤(APFH)を22.0gの2,3,3,3−テトラフルオロ−2−[1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(トリフルオロメトキシ)プロポキシ]−プロパン酸アンモニウム塩分散剤(CF
3OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COONH
4)〔PMPA〕とし、約40gのTFE単量体が反応し終わるまで重合を続けた以外は実施例1と同様に重合を行った。
【0136】
(実施例10)
実施例9における22.0gの2,3,3,3−テトラフルオロ−2−[1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(トリフルオロメトキシ)プロポキシ]−プロパン酸アンモニウム塩分散剤(CF
3OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COONH
4)〔PMPA〕を16.5gとした以外は実施例9と同様に重合を行った。
【0137】
(実施例11)
実施例9における22.0gの2,3,3,3−テトラフルオロ−2−[1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(トリフルオロメトキシ)プロポキシ]−プロパン酸アンモニウム塩分散剤(CF
3OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COONH
4)〔PMPA〕を11.0gとした以外は実施例9と同様に重合を行った。
【0138】
(実施例12)
実施例9における22.0gの2,3,3,3−テトラフルオロ−2−[1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(トリフルオロメトキシ)プロポキシ]−プロパン酸アンモニウム塩分散剤(CF
3OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COONH
4)〔PMPA〕を9.9gとした以外は実施例9と同様に重合を行った。
【0139】
(実施例13)
実施例9における22.0gの2,3,3,3−テトラフルオロ−2−[1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(トリフルオロメトキシ)プロポキシ]−プロパン酸アンモニウム塩分散剤(CF
3OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COONH
4)〔PMPA〕を110.0gのパーフルオロペンタン酸アンモニウム分散剤(APFP)とし、約140gのTFE単量体が反応し終わるまで重合を続けた以外は実施例9と同様に重合を行った。
【0140】
(実施例14)
内容量1Lの撹拌機付きガラス製反応器に、530gの脱イオン水、30gのパラフィンワックス及び55.0gのパーフルオロヘキサン酸アンモニウム分散剤(APFH)を入れた。次いで反応器の内容物を85℃まで加熱しながら吸引すると同時にTFE単量体でパージして反応器内の酸素を除いた。その後、0.03gのエタンガスと1.12gのパーフルオロ[3−(1−メチル−2−ビニルオキシ−エトキシ)プロピオニトリル](以下、CNVEと略する)とを反応器に加え、内容物を540rpmで攪拌した。反応器中にTFE単量体を0.73MPaGの圧力となるまで加えた。20gの脱イオン水に溶解した0.11gの過硫酸アンモニウム(APS)開始剤を反応器に注入し、反応器を0.83MPaGの圧力にした。開始剤の注入後に圧力の低下が起こり重合の開始が観測された。TFE単量体を反応器に加えて圧力を保ち、約140gのTFE単量体が反応し終わるまで重合を続けた。その後に、反応器内の圧力が常圧になるまで排気し、内容物を反応器から取り出して冷却した。上澄みのパラフィンワックスをPTFE水性分散液から取り除いた。
得られたPTFE水性分散液の固形分濃度は19.9質量%であり、体積平均粒子径は1.3nmであった。
得られたPTFE水性分散液を冷凍庫に入れて凍結した。凍結したPTFE水性分散液を25℃になるまで放置して凝固した粉末を得た。凝固した湿潤粉末を70℃で50時間真空乾燥した。このときのPTFE粉末は加熱しても殆ど流動しなかったため溶融粘度は測定不能であった。融点は327.0℃、CNVE変性量は0.20mol%であった。
【0141】
(実施例15)
実施例14における0.03gのエタンガスを添加しなかったこと以外は実施例14と同様に重合を行った。
【0142】
(実施例16)
実施例14における85℃の重合温度を70℃にした以外は実施例14と同様に重合を行った。
【0143】
(実施例17)
実施例14における0.11gの過硫酸アンモニウム(APS)開始剤を0.006gとし、1.12gのCNVEを0.20gの3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクタ−1−エン(PFHE)とした以外は実施例14と同様に重合を行った。
【0144】
(実施例18)
実施例14における0.11gの過硫酸アンモニウム(APS)開始剤を0.006gとし、1.12gのCNVEを0.20gのHFPとし、0.03gのエタンガスを添加しなかった以外は実施例14と同様に重合を行った。
【0145】
(実施例19)
実施例14における0.11gの過硫酸アンモニウム(APS)開始剤を0.006gとし、1.12gのCNVEを0.12gのPMVEとし、0.03gのエタンガスを添加せず、約40gのTFE単量体が反応し終わるまで重合を続けた以外は実施例14と同様に重合を行った。
【0146】
(実施例20)
実施例19における0.12gのPMVEを0.46gのPPVEとした以外は実施例19と同様に重合を行った。
【0147】
(実施例21)
実施例19における0.12gのPMVEを0.18gのCTFEとした以外は実施例19と同様に重合を行った。
【0148】
(実施例22)
実施例19における0.12gのPMVEを0.01gとし、保った0.83MPaGの反応器の圧力を0.20MPaGとした以外は実施例19と同様に重合を行った。
【0149】
(実施例23)
実施例16における55.0gのパーフルオロヘキサン酸アンモニウム分散剤(APFH)を27.5gの2,3,3,3−テトラフルオロ−2−[1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(トリフルオロメトキシ)プロポキシ]−プロパン酸アンモニウム塩分散剤(CF
3OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COONH
4)〔PMPA〕とした以外は実施例16と同様に重合を行った。
【0150】
(比較例1)
実施例9における22.0gの2,3,3,3−テトラフルオロ−2−[1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(トリフルオロメトキシ)プロポキシ]−プロパン酸アンモニウム塩分散剤(CF
3OCF(CF
3)CF
2OCF(CF
3)COONH
4)〔PMPA〕を8.3gとした以外は実施例9と同様に重合を行った。
得られたPTFE水性分散液の固形分濃度は7.1質量%であり、体積平均粒子径は121.6nmであった。
得られたPTFE水性分散液の分散安定性を評価した結果、機械的安定性、貯蔵安定性が共に低いため、分散安定性が十分ではなかった。
【0151】
各実施例における重合条件及び得られたPTFE水性分散液の評価結果をそれぞれ表1及び2に示す。
【0152】
【表1】
【0153】
【表2】