【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の非水電解質二次電池は、
長尺状の正極板と長尺状の負極板とを長尺状のセパレータを介して巻回した偏平状の巻回電極体と、
前記偏平状の巻回電極体及び非水電解液を収納する外装体とを有し、
オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩及びジフルオロリン酸リチウムの少なくとも一方を含有する非水電解液を用いて作製された非水電解質二次電池であって、
前記偏平状の巻回電極体の中央部にセパレータのみの巻回部が8層以上存在することを特徴とする。
【0013】
偏平状の巻回電極体では極板幅方向への非水電解液の浸透が困難であり、偏平状の巻回電極体の中央部にまで非水電解液が入り難い。また、非水電解液中にオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩及びLiPF
2O
2の少なくとも一方が含有されている場合、非水電解液の粘度が高くなるので、より偏平状の巻回電極体の中央部まで非水電解液が入り難くなる。本発明の非水電解質二次電池においては、偏平状の巻回電極体の中央部にセパレータのみの巻回部を8層以上設けたため、粘度の高い非水電解液であっても、偏平状の巻回電極体の中央部まで非水電解液が浸透し易くなるとともに、充放電時に非水電解液が不足した際には偏平状の巻回電極体の外部に存在する余剰の非水電解液が偏平状の巻回電
極体の内部に導入され易くなる。そのため、本発明の非水電解液二次電池によれば、非水電解液中にオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩ないしLiPF
2O
2を添加したことの効果が良好に奏されるようになる。
【0014】
なお、正極板及び負極板をセパレータを介して互いに絶縁した状態で偏平状の巻回電極体を形成する場合には、通常セパレータは2枚使用される。したがって、2枚のセパレータが2周以上巻回されることにより、偏平状の巻回電極体の中央部にセパレータのみの巻回部が8層以上形成されることになる。また、2枚のセパレータの巻き始め位置が異なり各セパレータの積層数が異なる場合は、各セパレータの総積層数が8層以上となるようにすればよい。このセパレータのみの巻回部が8層未満であると、少なくなるに従って非水電解液が偏平状の巻回電極体の中央部に入り難くなる。また、セパレータのみの巻回部の上限は任意であるが、12層程度に止めることが好ましい。
【0015】
なお、本発明の非水電解質二次電で使用し得る正極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出することが可能な化合物であれば適宜選択して使用できる。これらの正極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵・放出することが可能なLiMO
2(但し、MはCo、Ni、Mnの少なくとも1種である)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物、すなわち、LiCoO
2、LiNiO
2、LiNi
yCo
1−yO
2(y=0.01〜0.99)、LiMnO
2、LiCo
xMn
yNi
zO
2(x+y+z=1)や、LiMn
2O
4又はLiFePO
4などが一種単独もしくは複数種を混合して用いることができる。さらには、リチウムコバルト複合酸化物にジルコニウムやマグネシウム、アルミニウム等の異種金属元素を添加したものも使用し得る。
【0016】
また、本発明の非水電解質二次電池の非水電解液に使用し得る非水溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などの環状炭酸エステル、フッ素化された環状炭酸エステル、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、γ−バレロラクトン(γ−VL)などの環状カルボン酸エステル、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、ジブチルカーボネート(DBC)などの鎖状炭酸エステル、フッ素化された鎖状炭酸エステル、ピバリン酸メチル、ピバリン酸エチル、メチルイソブチレート、メチルプロピオネートなどの鎖状カルボン酸エステル、N,N'−ジメチルホルムアミド、N−メチルオキサゾリジノンなどのアミド化合
物、スルホランなどの硫黄化合物などを例示できる。これらは2種以上混合して用いることが望ましい。
【0017】
また、本発明においては、非水溶媒中に溶解させる電解質塩として、非水電解質二次電池において一般に電解質塩として用いられるリチウム塩を用いることができる。このようなリチウム塩としては、LiPF
6、LiBF
4、LiCF
3SO
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(C
2F
5SO
2)
2、LiN(CF
3SO
2)(C
4F
9SO
2)、LiC(CF
3SO
2)
3、LiC(C
2F
5SO
2)
3、LiAsF
6、LiClO
4、Li
2B
10Cl
10、Li
2B
12Cl
12など及びそれらの混合物が例示される。これらの中でも、LiPF
6(ヘキサフルオロリン酸リチウム)が特に好ましい。前記非水溶媒に対する電解質塩の溶解量は、0.8〜1.5mol/Lとするのが好ましい。
【0018】
本発明の非水電解質二次電池における非水電解液中のオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩の含有量は、非水電解質二次電池作製時において、0.01〜2.0mol/
Lとすることが好ましく、0.05〜0.2mol/Lとすることがより好ましい。また
、本発明の非水電解質二次電池における非水電解液中のLiPF
2O
2の含有量は、非水電解質二次電池作製時において、0.01〜2.0mol/Lとすることが好ましく、0
.01〜0.1mol/Lとすることがより好ましい。本発明の非水電解質二次電池にお
ける非水電解液中のオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩ないしLiPF
2O
2の添加量は、オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩ないしLiPF
2O
2自体を主成分の電解質塩として添加することもできる。しかしながら、非水電解液中のオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩ないしLiPF
2O
2の添加量が多くなると、非水電解液の粘度が大きくなるので、上述した各種電解質塩を主成分として用いるとともに、オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩ないしLiPF
2O
2を添加物として少量、例えば0.1mol/L程度となるように添加するとよい。なお、オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩ないしLiPF
2O
2を添加物として添加する場合、その添加量によっては初期の充電時に全てのオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩ないしLiPF
2O
2が、正極板上ないし負極板上の保護被膜形成に消費されてしまい、非水電解液中に実質的にオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩ないしLiPF
2O
2が存在しない場合が生じることがあるが、この場合も本発明に含まれる。従って、非水電解質二次電池に対して初回の充電を行なう前の状態で、非水電解液中にオキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩ないしLiPF
2O
2が含有されていれば本発明に含まれる。
【0019】
また、本発明の非水電解質二次電池においては、
前記正極板は長手方向に沿って正極芯体露出部が形成され、
前記負極板は長手方向に沿って負極芯体露出部が形成され、
前記偏平状の巻回電極体は、一方の端部に巻回された正極芯体露出部を有し、他方の端部に巻回された負極芯体露出部を有し、
前記正極芯体露出部及び前記負極芯体露出部の少なくとも一方には集電体が溶接され、
前記正極芯体露出部及び前記負極芯体露出部の少なくとも一方と前記集電体との溶接部は、前記巻回電極体の巻回中心軸からずれているものとすることが好ましい。
【0020】
このような構成を備えていると、巻回中心軸に対応する領域より巻回電極体の中央部に非水電解液が入り易くなる。
【0021】
また、本発明の非水電解質二次電池においては、前記外装体は、開口部を有する有底筒状の角形外装体と、前記開口部を封止する封口体からなり、
前記溶接部は、1箇所であって、前記巻回電極体の巻回中心軸から封口体側にずれて
いるものとすることが好ましい。
【0022】
このような構成を備えていると、巻回中心軸に対応する領域及び外装体の底部側の領域より巻回電極体の中央部に非水電解液が入り易くなる。
【0023】
また、本発明の非水電解質二次電池においては、前記外装体は、開口部を有する有底筒状の角形外装体と、前記開口部を封止する封口体からなり、前記溶接部は、2箇所であり、それぞれ前記偏平状の巻回電極体の巻回中心軸から前記封口体側及び前記角形外装体の底部側にずれていることが好ましい。
【0024】
このような構成を備えていると、巻回中心軸に対応する領域より巻回電極体の中央部に非水電解液が浸透し易くなる。
【0025】
また、本発明の非水電解質二次電池においては、前記正極板及び前記負極板の巻回数はそれぞれ30以上とすることが好ましい。また、電池容量は20Ah以上とすることが好ましい。
【0026】
正極板及び負極板の巻回数が多い場合には偏平状の巻回電極体の中央部に非水電解液が入り難く、また、電池容量が大きい場合にはたとえ正極板及び負極板の巻回数が少なくても偏平状の巻回電極体の極板幅方向の中央部への非水電解液の浸透が困難である。そのた
め、正極板及び負極板の巻回数が多い場合ないし電池容量が大きい場合には、本発明の上記効果が良好に現れる。
【0027】
また、本発明の非水電解質二次電池においては、前記オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩はリチウムビス(オキサラト)ホウ酸塩((Li[B(C
2O
4)
2]、以下
「LiBOB」と表すことがある)であることが好ましい。
【0028】
オキサラト錯体をアニオンとするリチウム塩として、LiBOBを用いると、より良好なサイクル特性を達成し得る非水電解質二次電池が得られる。なお、LiBOBの好ましい含有量は0.01〜2.0mol/Lであり、より好ましくは0.05〜0.2mol/Lである。
【0029】
また、本発明においては、前記負極芯体露出部は前記負極板の幅方向の両端に長手方向に沿って形成されていることが好ましい。係る場合においては、負極芯体露出部は一方側が他方側よりも幅広に形成されており、前記幅広側の芯体露出部が前記負極集電体に接続されているものとすることが好ましい。
【0030】
このような構成を備えていると、電極体内部で発生した熱が負極芯体露出部の幅方向の両端側から放熱され易くなり、電極体内部の温度上昇が抑制される。
【0031】
また、前記正極板及び前記負極板の少なくとも一方の表面には、金属酸化物粒子及び結着剤からなる保護層が形成されていることが好ましい。ここで金属酸化物としては、アルミナ、チタニア、ジルコニア等を用いることが好ましい。また、結着剤としては、アクリレート系樹脂を用いることが好ましい。
【0032】
さらに、本発明においては、前記負極芯体露出部は前記負極板の幅方向の両端に長手方向に沿って形成され、前記負極板表面には金属酸化物粒子及び結着剤からなる保護層が形成され、前記保護層は前記負極板の幅方向の両端に長手方向に沿って形成され前記負極芯体露出部の両方の表面にも形成されていることが好ましい。
【0033】
このような構成を備えていると、保護層は、金属酸化物粒子の存在のため、多孔性かつ絶縁性を有しているから、負極板とセパレータの間に微細な隙間が生じた状態となり、より巻回電極体の中央部に非水電解液が浸透し易くなる。加えて、正極芯体露出部とセパレータを介して対向する側の負極芯体露出部と正極芯体露出部との間の絶縁性が良好となるので、信頼性に優れた非水電解質二次電池が得られる。