【実施例1】
【0028】
図1は、ネットワーク10の概略構成を示す図である。ネットワーク10には、様々な外部環境パラメータ(温度等)を計測するためのセンサが搭載された伝送モジュール又は該センサを搭載しない中継機能のみを有する伝送モジュールが属しており、計測された外部環境パラメータを情報処理装置1に収集するように各伝送モジュールが機能するようにネットワークが形成されている。
図1に示すネットワーク10では、伝送モジュールのそれぞれと情報処理装置1との間に、二つの伝送経路が形成されており、一つの伝送経路に含まれる伝送モジュールに対して同じ参照番号(2又は3)を付すこととする。また、一つの伝送経路における複数の伝送モジュールを各々区別して表現する場合には、伝送モジュールの参照番号2、3に続けて、個体を識別するための文字(「A」、「B」等)を付すこととする。
【0029】
具体的には、ネットワーク10には、複数の伝送モジュール2が含まれる伝送経路と、複数の伝送モジュール3が含まれる伝送経路が形成されている。前者の伝送経路には、上記センサが搭載された伝送モジュール2A、2Bが含まれ、後者の伝送経路には、上記センサが搭載された伝送モジュール3A、3Bと、センサが搭載されず中継機能のみを有する伝送モジュール3Cが含まれている。なお、
図1に示すネットワーク10では、伝送モジュール間の通信は無線形式で行われ、各伝送経路における伝送モジュールの中継順序は、各伝送モジュールにおいて情報送信のために設定された送信パラメータに従い決定されている。なお、当該送信パラメータは、中継順序だけではなく、情報送信に関する様々な送信条件を決定する複数のパラメータを含むものであり、その詳細は後述する。なお、ネットワーク10では、伝送モジュール2を含む伝送経路で伝送モジュール2A、2Bの順に送信情報が伝送され、また、伝送モジュール3を含む伝送経路で伝送モジュール3A、3B、3Cの順に送信情報が伝送され、最終的に伝送モジュール2B、3Cから当該経路の目的地である情報処理装置1に伝送されることになっている。
【0030】
ここで、情報処理装置1は、送受信装置1aおよびサーバ1bを有している。送受信装置1aは、各伝送経路において情報処理装置1に最も近くに位置する伝送モジュール2B、3Cから伝送されてくる情報を受信し、また、各伝送経路に位置する伝送モジュールに所定の動作指令や通知を届けるために、伝送モジュール2B、3Cに対して送信するための装置である。このように情報処理装置1は、ネットワーク10の全体を管理する装置としても位置付けられたものである。なお、送受信装置1aはサーバ1bと電気的に接続されている。そして、サーバ1bは、例えば、伝送モジュール2A、2Bや伝送モジュール3A、3Bに搭載されたセンサよって計測された情報を収集し、所定の情報処理を行う。
【0031】
なお、伝送モジュール2A、2Bや伝送モジュール3A、3Bに搭載されたセンサによる計測、およびその計測データの情報処理装置1への伝送は、継続的な情報収集を実現するために、各伝送モジュールで電源が投入されてから、所定の間隔で(例えば、一定の間隔で)繰り返し実行されるものである。また、
図1に示す伝送モジュール2、3のうちセンサが搭載された伝送モジュールについては、計測対象を計測するセンサ機能、計測した情報を記録したり処理したりする機能、伝送モジュール外部への無線機能、電源機能等が実装された小型のデバイスとして構成され、センサが搭載されていない伝送モジュールについては、伝送モジュール外部への無線機能、電源機能等が実装された小型のデバイスとして構成される。
【0032】
このような伝送モジュール2、3に搭載されるセンサとしては、例えば、温度センサ、湿度センサ、加速度センサ、照度センサ、フローセンサ、圧力センサ、地温センサ、パーティクルセンサ等の物理系センサや、CO
2センサ、pHセンサ、ECセンサ、土壌水分センサ等の化学系センサがある。本実施の形態では、説明を簡便にするために、各伝送モジュール2には、それぞれが配置された位置における外部温度を計測するための温度センサが搭載されているものとし、伝送モジュール2A、2B、3A、3Bで計測された温度データはサーバ1bにおける所定の情報処理に供される。
【0033】
ここで、ネットワーク10においては、センサによる計測が行われると、その計測データが送信情報として複数の伝送モジュールによる中継処理を経て、最終的に情報処理装置1にまで届けられることになる。しかし、ネットワーク10においては無線を介して送信情報の伝送が行われているため、その伝送環境が好適でない場合(例えば、伝送経路外の他の無線装置から電波干渉を受けたり、伝送モジュール間に障害物が一時的に存在したりする等)には、伝送モジュール間の送信情報の送信完了状態が送信元から確認できない送信不良が発生し得る。この送信不良が継続すると、情報処理装置1への送信情報の収集が円滑に進まないため、速やかに送信不良を解消することが求められる。一般には、ネットワーク全体を管理する立場の中央機器(基地局等)がネットワークの通信状況を考慮して、伝送モジュール間の通信条件を調整する場合がある。しかし、伝送モジュール間において送信不良が発生しているため、このような中央機器による調整指示が末端に位置する伝送モジュールに到達しない恐れもあり、その場合には、速やかな送信不良の解消は困難と言わざるを得ない。
【0034】
また、伝送モジュールにおいては、センサによって取得された計測データや上流側の伝送モジュールから受信した情報等を、その下流側に伝送するために一時的に記憶するメモリが搭載されている。そして、送信不良を解消する手段として伝送モジュール自体のリセット処理が行われる場合があるが、一般にリセット処理が行われると伝送モジュールが初期化されるため、メモリ内の情報が消失してしまったり、初期化に要する時間においては伝送モジュールが機能しない状態となったりするため、やはり情報処理措置1への情報収集が阻害されてしまう。
【0035】
そこで、本発明に係るネットワーク10においては、送信不良が発生した場合に、その送信不良を把握した伝送モジュール自身が自律的に当該状態の解消を図り、送信できなかった情報を再送する処理(以下、「伝送処理」という)を行うこととする。これにより、情報処理装置1への送信情報の収集を円滑に且つ速やかに実現することが可能となる。
【0036】
一方で、伝送モジュール自身が自律的に送信不良の解消を図ろうとすると、いわばネットワーク10を管理する立場にある情報処理装置1の管理範囲外で、伝送モジュール間の送信条件が変更されることになる。そのため、当該伝送モジュールがどのような送信不良に晒され、その送信不良をどのように解消していったのか等について、情報処理装置1は全く知ることができない。伝送モジュールが個体ごとに勝手に送信条件等を調整してしまった場合、ネットワーク10において情報の輻輳が発生し好適な情報送信が阻害されてしまう可能性もあり、好適な情報収集の観点から看過できない状態を引き起こし得る。そこで、伝送モジュールは、上記の自律的な伝送処理に加えて、送信不良に関する再送結果送信情報を情報処理装置1まで届ける処理(以下、「再送結果情報送信処理」)も行うこととする。これにより、情報処理装置1は集められた再送結果送信情報を利用して、ネットワーク10における送信不良に関する状況を把握し、情報送信が好適に行われるように伝送モジュール2、3を管理することができる。
【0037】
以上を踏まえ、ネットワーク10における伝送モジュール2、3および情報処理装置1による具体的な処理について説明する。伝送モジュール2、3は、内部に演算装置、メモリ等を有し、当該演算装置により所定の制御プログラムが実行されることで、様々な機能が発揮される。そこで、
図2に、ネットワーク10に属する伝送モジュール2が発揮する様々な機能の一部をイメージ化した機能ブロックを示す。なお、
図2には、センサが搭載されている伝送モジュール2についての機能ブロックを具体的に図示しているが、センサを搭載する伝送モジュール3A、3Bについても同様の機能部を有する。また、センサ非搭載の伝送モジュール3Cについては、センサに関連する機能以外は伝送モジュール2と同様の機能を有している。また、センサが搭載されている伝送モジュールについては、搭載される温度センサによって計測された温度データをメモリに記憶し、後述する通信部21によってその計測データを下流側の伝送モジュールに送信するように構成される。
【0038】
ここで、伝送モジュール2は、機能部として、制御部20、通信部21、送信パラメータ記憶部22、計測部24、情報記憶部25を有している。なお、伝送モジュール2の駆動電力は、モジュールが内蔵するバッテリから電力供給を受けてもよく、また、モジュールの外部のAC電源等から電力供給を受けてもよい。以下に、伝送モジュール2が有する各機能部について説明する。
【0039】
制御部20は、伝送モジュール2における様々な制御を司る機能部であるが、特に、送信制御部201、送信完了確認部202、送信パラメータ変更部203、リセット部204、取得部205を有している。この送信制御部201は、後述する送信パラメータ記憶部22が保持している送信パラメータに従って、後述する通信部21を通して自己伝送モジュールから下流側伝送モジュールへの送信情報の送信を行う機能部である。この送信パラメータは、自己伝送モジュールにおける情報送信の条件を決定する複数のパラメータを含むものであり、その詳細については後述する。なお、送信制御部201そのものは、上記の通り、送信パラメータに従った情報送信を行うものであり本発明に係る送信手段として機能するが、後述するように送信情報の送信に失敗した後に改めて当該送信情報を送信する場合、送信制御部201は、後述する送信パラメータ変更部203とともに本発明に係る再送手段として機能することになる。更に、送信制御部201は、後述する取得部205によって取得された再送結果情報の送信にも関与する。
【0040】
また、送信完了確認部202は、送信制御部201によって送信情報の送信が実行されたとき、その送信された送信情報が直接の送信先である下流側伝送モジュール、又は最終的な送信先である情報処理装置1に到達したことを確認する機能部であり、本発明に係る確認手段に相当する。例えば、下流側伝送モジュール又は情報処理装置1が自己伝送モジュールからの送信情報を受信した場合、その受信に対応したアクナレッジ信号(受信通知)を自己伝送モジュールに送信するように設計されている場合には、送信完了確認部202は、そのアクナレッジ信号の受信の有無を確認することで、送信先への送信完了を確認することになる。送信完了確認部202によって送信先への送信完了状態が確認できない場合は、自己伝送モジュールにおいて送信不良が生じたことを意味する。また、送信パラメータ変更部203は、送信完了確認部202による送信完了の確認結果に基づいて、後述する送信パラメータ記憶部22に保持されている送信パラメータの一部又は全部を変更する機能部である。また、リセット部204は、自己伝送モジュールの制御系に関する初期化を実行する機能部である。リセット部204による初期化により、送信パラメータ記憶部22が記憶する送信パラメータの初期化や、後述する情報記憶部25が記憶する様々なデータの消失が生じることになる。
【0041】
次に取得部205は、送信完了確認部202によって確認された送信不良に関する情報である再送結果情報を取得する。この再送結果情報は、自己伝送モジュールから下流側伝送モジュールへの情報送信において送信不良が生じた場合に、その送信不良が発生してから解消するまでの間に利用された送信パラメータと、当該送信パラメータに従った情報送信の結果とに関連する情報である。すなわち、再送結果情報は、それを受け取った情報処理装置1が、伝送モジュールにおいてどのような送信不良が生じ、その解消のために当該伝送モジュールの送信パラメータ変更部203がどのように自律的に送信パラメータを変更していったかについての経緯を把握可能とする情報である。なお、再送結果情報の具体的な内容については、後述する。そして、取得部205によって取得された再送結果情報は、送信制御部201の制御の下、通信部21を介して情報処理装置1に向かって送信される。
【0042】
次に、通信部21は、自己伝送モジュールに搭載されたアンテナを通し外部との情報の送受信を司るものであり、具体的には、送信制御部201からの指示に従った下流側伝送モジュールへの送信、及び、上流側伝送モジュールから送信されてきた送信情報の受信を行う。なお、自己伝送モジュールが備えるアンテナは、ダイバシティ機能を有しており、通信部21は必要に応じてダイバシティ機能のON、OFFを調整し、自己伝送モジュールの受信能力の調整を図る。また、通信部21は、上流側伝送モジュールから送信情報を受信した場合には、当該上流側伝送モジュールに対して当該送信情報を受信したことを示すアクナレッジ信号を通知するように形成されている。
【0043】
次に、送信パラメータ記憶部22は、送信制御部201によって送信情報の送信が行われるときの送信条件を決定する送信パラメータを、自己伝送モジュールのメモリ内に保持する機能部である。具体的な送信パラメータの態様は多岐にわたるため、本発明に大きく関連する送信パラメータとして、以下に5つの送信パラメータを代表的に例示する。
(1)アンテナダイバシティの有効化に関するパラメータ
当該パラメータは、伝送モジュールが有するアンテナダイバシティの機能のON、OFFを設定するためのパラメータであり、本出願では、以降「ダイバシティパラメータ」と称する。アンテナダイバシティの機能がONにされると、自己伝送モジュールの受信能力が向上する一方で、受信に要する消費電力が若干増加する。
(2)送信電力に関するパラメータ
当該パラメータは、伝送モジュールからの送信情報の送信強度に関するパラメータであり、本出願では、以降「送信電力パラメータ」と称する。送信電力が増加されると、伝送モジュールから送信可能な領域が拡大され、また、伝送モジュールの近くに位置する障害物等の影響を受けにくくなるが、一方で送信に要する消費電力が増加することになる。
(3)送信先となる伝送モジュールのノードアドレスに関するパラメータ
当該パラメータは、同一のネットワークに属する伝送モジュールであって自己伝送モジュールからの送信先となる下流側伝送モジュールを識別するためのパラメータであり、本出願では、以降「ノードパラメータ」と称する。
図1に示すネットワーク10では、伝送モジュール2Aにおいて、伝送モジュール2Bのノードアドレスが、ノードパラメータとして設定されている。
(4)ネットワークに関するパラメータ
当該パラメータは、
図1に示すように情報処理装置1を最上位として自己伝送モジュールが送信情報の伝送を行うネットワークを識別するためのパラメータであり、本出願では、以降「ネットワークパラメータ」と称する。
図1に示すネットワーク10では、伝送モジュール2、3におけるネットワークパラメータは、全て同一の、ネットワーク10を識別するための値が設定されることになる。
(5)チャネルに関するパラメータ
当該パラメータは、伝送モジュール間において情報伝送する際に使用される伝送用チャネルに関するパラメータであり、本出願では、以降「チャネルパラメータ」と称する。一般に、同一のネットワークに属する伝送モジュール同士は、共通のチャネルパラメータが設定される。
なお、送信パラメータ記憶部22によって記憶されている上記(1)〜(5)の送信パラメータは、送信パラメータ変更部203の指示により、その一部又は全部が変更可能とされる。また、リセット部204によるリセット処理が行われると、送信パラメータ記憶部22によって記憶されている上記(1)〜(5)の送信パラメータは初期化され、初期の送信パラメータに変更されることになる。
【0044】
次に、計測部24は、自己伝送モジュールに搭載されているセンサ(例えば、温度センサ)を通して外部環境パラメータ(例えば、外部温度)を計測する機能部である。そして、その計測部24による計測データは、情報記憶部25によって自己伝送モジュールのメモリに記憶される。また、情報記憶部25は、自己伝送モジュールが中継器として機能する場合に、通信部21を介して上流側伝送モジュールから受信した送信情報や、後述するようにその送信情報に上流側伝送モジュールにおける再送結果情報が付加されている場合には、当該再送結果情報も記憶する。そして、情報記憶部25によって記憶されているこれらの情報は、通信制御部201からの指示に従って通信部21を介して下流側伝送モジュールに送信されることになる。なお、リセット部204によるリセット処理が行われると、情報記憶部25によって記憶されている情報は消失される。
【0045】
次に、サーバ1bに形成される機能部について
図3に基づいて説明する。サーバ1bは、通信部11、データ記録部12、情報処理部13、受信通知部14を有している。通信部11は、送受信装置1aを介して伝送経路の最も情報処理装置1側に位置する伝送モジュールから、送信情報を収集するための通信を行う機能部である。具体的には、通信部11は、伝送モジュール2B、3Cと、情報処理装置1との間の送受信を司る。データ記録部12は、通信部11を介して伝送モジュール2、3から伝送された送信情報に含まれる情報のうち計測データである温度データや、各伝送モジュールから送信されてくる再送結果情報を記録する機能部である。そして、ここで記録された計測データは、情報処理部13に渡され、当該情報処理部13によって、収集された計測データを用いた所定の情報処理(例えば、温度データに基づいた、伝送モジュールが設置された空間の空調制御等)が行われる。同じように、記録された再送結果情報も情報処理部13に渡され、ネットワーク10の管理に関する処理(例えば、伝送経路に起因して情報の輻輳が生じている可能性がある場合には、伝送経路を変更する処理等)が行われる。次に、受信通知部14は、通信部11を介して受信した伝送モジュールからの送信情報を、サーバ1bが受信したことを、当該送信情報の送信元である伝送モジュールに対して通知する機能部である。
【0046】
次に、
図4に基づいて、伝送モジュールにおける伝送処理について説明する。なお、当該伝送処理は、例として
図1に示す伝送モジュール2Aで所定の制御プログラムが実行されることで、実現される処理として、以下にその具体的な内容を示す。しかし、他の伝送モジュールについても、実質的に同じ伝送処理を適用することができる。
【0047】
また、
図5に、伝送処理において伝送モジュール2Aが伝送する送信情報のデータ構造を示す。
図5の上段(a)は、送信情報全体のデータ構造を概略的に示しており、当該送信情報は、概略的に8つの領域に区分される。本実施例では、8つの領域のうち、特に重要な5つの領域a1〜a5について説明する。領域a1(Start Symbol)は、送信情報の始まりを示す特定のバイト列である。領域a2(Destination Address)は、送信情報が最終的に伝送される宛先(本実施例の場合は、情報処理装置1)のアドレスを表す。領域a3(Source Address)は、送信情報の送信元(本実施例の場合は、伝送モジュール2A)のアドレスを表す。領域a4(Data)は、送信元である伝送モジュール2Aに搭載された温度センサによる計測温度データを格納する。領域a5(Terminator Symbol for Data)は、送信情報の終わりを示す特定のバイト列である。
【0048】
次に、
図5の下段(b)に、領域a4に格納された計測温度データの一例を示す。本実施例では、伝送モジュール2Aにおいて、前回の送信情報の伝送後に計測された2回分の温度データが、領域a4に格納されている。具体的には、データ取得時間の古い順に、時期t10に取得された温度データT1、時期t20に取得された温度データT2が、領域a4に格納されている。これは、伝送モジュール2Aでは、温度センサでデータ計測を行うごとにその計測データを伝送モジュール2Bに伝送するのではなく、複数回の計測データをまとめて伝送するように設計されていることによる。もちろん、伝送される計測データの形態は、
図5(b)に示す形態に限られるものではない。
【0049】
<伝送処理>
ここで、
図4に戻り、伝送モジュール2Aで実行される伝送処理の説明を行う。まず、S101では、送信制御部201により、自己伝送モジュール2Aからその下流側に位置する伝送モジュール2Bに対して送信情報を送信すべき送信時期となっているか否かが判定される。そして、S101で肯定判定されると処理はS102へ進み、否定判定されると再びS101の処理が行われる。
【0050】
次に、S102では、送信制御部201によって、情報記憶部25に記憶されている計測温度データを、伝送モジュール2Bに送信すべき送信情報の領域a4に格納した状態の送信情報が形成され、通信部21を介して伝送モジュール2Bへの送信が実行される。なお、当該送信は、送信パラメータ記憶部22が記憶する送信パラメータ、すなわち、ダイバシティパラメータ、送信電力パラメータ、ノードパラメータ、ネットワークパラメータ、チャネルパラメータを含む送信パラメータに従って実行される。S102の処理が終了すると、S103へ進む。
【0051】
S103では、送信完了確認部202によって、伝送モジュール2Bへの送信情報の送信完了状態が確認できない送信不良が発生したか否かが判定される。具体的には、送信情報を送信し、それを受信した伝送モジュール2Bで発信されるアクナレッジ信号が、送信から所定時間内に送信完了確認部202によって確認できない場合には、送信不良が発生したものと判断される。また、アクナレッジ信号が戻ってきたとしても、伝送モジュール2B側で送信情報の受信が好適に行えない状況や、伝送モジュール2Bで何らかのエラーが生じている状況であることがアクナレッジ信号とともに伝送モジュール2Aに通知された場合にも、送信不良が発生していると判断してもよい。S103で肯定判定されるとS104へ進み、否定判定されると本伝送処理を終了する。
【0052】
次にS104では、伝送処理における送信情報の再送回数、すなわち後述するS106で実行される送信情報の再送回数が所定回数に到達したか否かが判定される。そして、S104で肯定判定されるとS107へ進み、リセット部204によるリセット処理を実行し、本伝送処理を終了する。また、S104で否定判定されると、処理はS105へ進む。S105では、発生している送信不良を解消するために、送信パラメータ変更部203によって、送信パラメータ記憶部22が記憶している送信パラメータ(ダイバシティパラメータ、送信電力パラメータ、ノードパラメータ、ネットワークパラメータ、チャネルパラメータ等)の一部が変更され、その後、S106で、変更された送信パラメータに従って、送信制御部201により送信不良となった送信情報、すなわち伝送モジュール2Bへの送信完了を確認することができなかった送信情報の再送が実行される。そして、S106の処理が終了すると、再びS103の処理により、再送された送信情報に関する送信不良の発生が判断されることになる。なお、これらのS103〜S106の処理が行われる間、自己伝送モジュール2Aにおいてはリセット部204によるリセット処理は行われないため、情報記憶部25が記憶する情報は消失されない。
【0053】
ここで、S105における送信パラメータの変更について詳細に説明する。本実施例においては、変更の対象となる送信パラメータとして、上述のダイバシティパラメータ、送信電力パラメータ、ノードパラメータ、ネットワークパラメータ、チャネルパラメータの5つのパラメータが例示される。以下、各パラメータに対応したS105の処理について述べる。
【0054】
(1)ダイバシティパラメータを変更する場合
自己伝送モジュール2Aにおいてアンテナダイバシティ機能が無効化された状態で、送信不良が発生した場合、送信情報が伝送モジュール2Bによって受信され、伝送モジュール2Bからアクナレッジ信号が送信されたにもかかわらず、自己伝送モジュール2Aが当該アクナレッジ信号を適切に受信することができなかったことに起因して、当該送信不良が発生したものと考えることができる。そこで、送信不良の解消手段として、アンテナダイバシティ機能を有効化し、自己伝送モジュール2Aにおける受信能力を向上させることが有用とされる。
【0055】
具体的には、自己伝送モジュール2Aは、S105の処理として送信パラメータ記憶部22が記憶するダイバシティパラメータを、有効化に対応する値に変更する処理を行う。その後、送信制御部201により、変更後のダイバシティパラメータを含む、送信パラメータ記憶部22が記憶する送信パラメータに従い、送信情報の再送が実行される。
【0056】
(2)送信電力パラメータを変更する場合
自己伝送モジュール2Aにおいて送信電力を高く設定すればその送信能力を向上させることは可能であるが、自己伝送モジュール2Aにおける消費電力の上昇や周辺の無線ネットワークへの干渉等が発生するため、自己伝送モジュール2Aの送信電力は、通常は、ある程度抑えた値としている。そこで、自己伝送モジュール2Aにおける送信電力を増加させることで、伝送モジュール間に障害物が存在することで発生し得る送信不良を解消することが可能となる場合がある。
【0057】
具体的には、自己伝送モジュール2Aは、S105の処理として送信パラメータ記憶部22が記憶する送信電力パラメータを増加させる処理を行う。その後、送信制御部201により、変更後の送信電力パラメータを含む、送信パラメータ記憶部22が記憶する送信パラメータに従い、送信情報の再送が実行される。なお、送信電力パラメータの増加処理としては、例えば、周囲のネットワークへの干渉を可及的に抑制するために徐々に送信電力が増加するように送信電力パラメータを変更してもよく、また、速やかな送信不良の解消のために、自己伝送モジュール2Aにおいて設定し得る最大の送信電力となるように送信電力パラメータを変更してもよい。
【0058】
(3)ノードパラメータを変更する場合
ノードパラメータの変更については、
図6A及び
図6Bに基づいて説明する。
図6Aは、ネットワーク10において伝送モジュール2A、2B間で送信不良が発生した状態(すなわちS103で肯定判定された状態)を表している。このとき、自己伝送モジュール2Aは、周囲に存在している伝送モジュールに対して、自己伝送モジュール2Aが直接の送信先として新たに接続可能な伝送モジュールを探索するためのメッセージをブロードキャストする。当該メッセージは、例えば、メッセージを受け取った伝送モジュールに、該伝送モジュールを識別するためのノードアドレスと、該伝送モジュールのデバイスタイプとを返信させるコマンドを含むものである。
【0059】
自己伝送モジュール2Aは、上記メッセージを受け取った伝送モジュールからの返事を受け取り、当該返事を送ってきた伝送モジュールの中から新たな送信先としての伝送モジュールを選択する。例えば、返事に含まれるデバイスタイプの情報に基づいて、自己伝送モジュール2Aが接続できないタイプの伝送モジュール(例えば、中継機能を有していない伝送モジュール)を除外した伝送モジュールの中から、新たな送信先としての伝送モジュールを決定し、当該決定を送信パラメータ記憶部22が記憶するノードパラメータに反映させ、送信パラメータを変更する。その後、送信制御部201により、変更後のノードパラメータを含む、送信パラメータ記憶部22が記憶する送信パラメータに従い、送信情報の再送が実行される。
【0060】
本実施例の場合、自己伝送モジュール2Aが上記メッセージをブロードキャストした結果、伝送モジュール3Aが接続可能な伝送モジュールとして選択され、
図6Bに示すように伝送モジュール2Aにおいて、伝送モジュール3Aが新たな接続先として設定されるようにノードパラメータの変更がS105において行われることになる。なお、ノードパラメータの詳細な変更については、実施例2において後述する。
【0061】
(4)ネットワークパラメータを変更する場合
ネットワークパラメータの変更については、
図7A及び
図7Bに基づいて説明する。両図に示すネットワークは、伝送モジュール2によって形成されるネットワークN2と伝送モジュール3によって形成されるネットワークN3とを含む。ネットワークN2における最上位には情報処理装置4が配置され、ネットワークN3における最上位には情報処理装置5が配置される。情報処理装置4、5は、それぞれ情報処理装置1と同じように、送受信装置4a、5aと、サーバ4b、5bを有しており、両情報処理装置は、互いに情報の授受が可能となるように電気的に接続され、共有のデータベースDBを構築している。
【0062】
ここで、
図7Aは、ネットワークN2において伝送モジュール2A、2B間で送信不良が発生した状態(すなわちS103で肯定判定された状態)を表している。このとき、自己伝送モジュール2Aは、自己が属しているネットワーク以外のネットワークに存在している伝送モジュールに対して、自己伝送モジュール2Aが直接の送信先として新たに接続可能な伝送モジュールを探索するためのメッセージをブロードキャストする。なお、ネットワークが異なると、そこで使用されている通信チャネルが異なる場合もあるため、上記ブロードキャストは、自己伝送モジュール2Aが使用可能な各通信チャネルを利用して行われる。また、上記メッセージは、例えば、メッセージを受け取った伝送モジュールに、該伝送モジュールが属するネットワークを識別するためのネットワーク名と、該ネットワークで使用されている通信チャネル、上記メッセージの受信強度信号RSSIとを返信させるコマンドを含むものである。
【0063】
自己伝送モジュール2Aは、上記メッセージを受け取ったネットワークN3に属する伝送モジュール3A、3Bからの返事を受け取り、当該返事を送ってきた伝送モジュールの中から新たな送信先としての伝送モジュールを選択する。例えば、返事に含まれる受信強度信号RSSIの情報に基づいて、自己伝送モジュール2Aからの送信情報が最も確実に受信し得る伝送モジュールを新たな送信先として決定し、当該決定を送信パラメータ記憶部22が記憶するネットワークパラメータに反映させ、送信パラメータを変更する。その後、送信制御部201により、変更後のネットワークパラメータを含む、送信パラメータ記憶部22が記憶する送信パラメータに従い、送信情報の再送が実行される。
【0064】
本実施例の場合、自己伝送モジュール2Aが上記メッセージをブロードキャストした結果、ネットワークN3に属する伝送モジュール3A、3Bが接続可能な伝送モジュールとして探索されたとする。ここで、探索された伝送モジュール3A、3Bのうちいずれの伝送モジュールを選択するかについては、受信信号強度RSSIの値が大きい伝送モジュール3Bが選択されることとする。そのため、本実施例では、自己伝送モジュール2Aに関し、
図7Bに示すように、自己が属するネットワークをN2からN3に変更するように、送信パラメータ記憶部22が記憶するネットワークパラメータと、必要に応じてネットワークN3に接続するための通信チャネルに関するチャネルパラメータの変更がS105において行われることになる。
【0065】
(5)チャネルパラメータを変更する場合
自己伝送モジュール2Aにおいて送信先の伝送モジュール2Bとの間で使用されるべき伝送チャネルが相違していたことに起因して、送信不良が発生する可能性が存在する。このような場合には、送信不良の解消手段として、伝送チャネルを変更することが有用とされる。そこで、自己伝送モジュール2Aは、S105の処理として送信パラメータ記憶部22が記憶するチャネルパラメータを変更する処理を行う。その後、送信制御部201により、変更後のチャネルパラメータを含む、送信パラメータ記憶部22が記憶する送信パラメータに従い、送信情報の再送が実行される。
【0066】
なお、S105においては、変更される送信パラメータが複数ある場合には送信パラメータが一つずつ変更されてもよく、別法として複数の送信パラメータが組み合わされて変更されてもよい。また、S105における送信パラメータの変更は、S103において肯定判定され且つS104で否定判定される限り繰り返されることになるが、当該送信パラメータの変更順序は、特定の順序に限定されるものではなく所定の目的に応じて適宜設定することができる。
【0067】
このように
図4に示す伝送処理によれば、自己伝送モジュール2Aから送信情報を送信する際に送信不良が発生すると、S103〜S106の処理が繰り返されることになる。このとき、情報記憶部25が記憶する情報は保持されたまま、自律的に送信パラメータ記憶部22が記憶する送信パラメータの一部が変更されながら送信情報の再送が繰り返され、送信不良の解消が試みられることになる。そして、送信パラメータの変更による送信情報の再送が成功すると伝送処理は終了とされる。
【0068】
<再送結果情報送信処理>
ここで、伝送モジュール2Aにおいて上記伝送処理中に発生した送信不良に関する再送結果情報を、情報処理装置1に向かって送信するための再送結果情報送信処理について、
図8に基づいて説明する。当該再送結果情報送信処理は、
図1に示す伝送モジュール2Aで所定の制御プログラムが所定の間隔で実行されることで、実現される処理として、以下にその具体的な内容を示す。しかし、他の伝送モジュールについても、実質的に同じ再送結果情報送信処理を適用することができる。
【0069】
先ず、S201では、伝送モジュール2Aにおいて送信不良が発生し、且つ当該送信不良が解消しているか否かが判定される。例えば、上記の伝送処理において、一度でもS103の判定において肯定判定がなされた後にS103で否定判定がなされた場合には、S201では肯定判定されることになる。S201で肯定判定されるとS202へ進み、否定判定されると本再送結果情報送信処理を終了する。
【0070】
次に、S202では、取得部205によって再送結果情報の取得が行われる。ここで、再送結果情報は、上述したS105において送信パラメータ(ダイバシティパラメータ、送信電力パラメータ、ノードパラメータ、ネットワークパラメータ、チャネルパラメータの何れかもしくは複数のパラメータ)が送信不良が発生してから解消するまでの間にどのように変更され、そしてその変更された送信パラメータを利用して行われた送信情報の再送の結果がどのように変化していったかについて、情報処理装置1に知らしめるための情報である。なお、再送結果情報の具体的な構成については、後述する。S202の処理が終了すると、S203へ進む。
【0071】
S203では、S101と同じように、送信制御部201により、自己伝送モジュール2Aからその下流側に位置する伝送モジュール2Bに対して送信情報を送信すべき送信時期となっているか否かが判定される。S203の処理は、S202で取得された再送結果情報を、新たに送信する送信情報とともに送信するために、当該新たな送信情報の送信時期を判定するものである。そして、S203で肯定判定されると処理はS204へ進み、否定判定されると再びS203の処理が行われる。
【0072】
そして、S204では、S202で取得された再送結果情報が新たな送信情報に付加されて、新たな送信情報と再送結果情報がともに、送信制御部201により情報処理装置1に向けて自己伝送モジュール2Aから伝送モジュール2Bに対して送信される。ここで、
図9に、再送結果情報が付加された新たな送信情報のデータ構造を示す。
図9の上段(a)は、新たな送信情報全体のデータ構造を概略的に示しており、当該新たな送信情報は、概略的に九つのデータ領域に区分される。本実施例では、九つのデータ領域のうち、データ領域a1〜a6を含む八つの領域で主部情報mdfが形成される。この主部情報mdfは、
図5に示す再送結果情報が付加されていない送信情報そのものであるので、その詳細な説明は省略する。そして、データ領域a6が、主部情報mdfに付加された再送結果情報adfを格納する。
【0073】
ここで、
図9の中段(b)に、再送結果情報adfを格納する領域a6の詳細なデータ構造を示す。なお、
図9(b)では、複数の伝送モジュールにおいて付加された再送結果情報の構造が示されており、その付加された再送結果情報の各々に参照番号adfが付されている。なお、伝送モジュール2Aは、
図1に示すように伝送経路の最上流側に位置するため、そこから送信される送信情報は、他の伝送モジュールによる中継がなされていない。そのため領域a6に格納される再送結果情報は1つのadf1のみである。ここで、再送結果情報adfを形成するデータ領域b1〜b6について説明する。領域b1(Separator Symbol for Appended Data)は、付加された一の再送結果情報adfの始まりを示す特定のバイト列である。領域b2(Appended Data Source Address)は、当該一の再送結果情報adfを付加した伝送モジュール(本実施例の場合は伝送モジュール2A)のアドレスを表す。領域b3(Appended Data ID)は、後述する領域b4の再送結果情報の実体データを識別する識別子である。
【0074】
ここで、領域b4(Appended Data Entity)は、付加される再送結果情報の実体データを表す。本実施例では、
図9の下段(c)に示すように、領域b4の再送結果情報の実体データは、領域c1〜c5を有する。具体的には、領域c1には、伝送処理において変更の対象となった送信パラメータを識別する識別子 (Test ID)が格納される。領域c2には、再送結果情報adfに、領域c1で特定される送信パラメータの何回分の変更情報が含まれているかを示す変更回数情報 (Number of Test)が格納される。領域c3には、領域c1で特定される送信パラメータがどのように変更されたかを示す変更実行情報 (Parameter)が格納される。領域c4には、領域c1で特定される送信パラメータが、領域c3で示される内容の変更を行ったときの送信結果を示す情報 (Result)が格納される。領域c5には、領域c4で特定される送信結果の詳細を示す情報 (Verbose Report)が格納される。
【0075】
さらに、一の再送結果情報adfにおいて、領域b5は、当該一の再送結果情報adfの誤り検出用のチェックサムデータを格納している。また、領域b6は、当該一の再送結果情報adfの終わりを示す特定のバイト列を表す。
【0076】
なお、領域b4に格納される再送結果情報の実体データに関し、送信不良が生じてから解消するまでの間に実行された送信パラメータの変更内容によっては、当該変更内容を領域c1〜c5の一組のデータで表現することができない場合がある。例えば、複数の送信パラメータを変更した場合や、送信パラメータの変更によって複数の送信結果を得た場合等には、一組の領域c1〜c5だけでは当該送信不良の解消のための経緯を表現することができない。そのような場合には、領域c1〜c5を複数組用いてその経緯を表現し、領域b4に格納するようにしてもよい。
【0077】
ここで、
図10に、S204で生成された再送結果情報が付加された新たな送信情報の具体的な構成が示される。
図10中のデータ領域は、
図9に示すデータ領域と対応している。なお、
図10に示す例では、変更の対象とされた送信パラメータは、送信電力パラメータのみである。
図10(a)に示す再送結果情報が付加された送信情報では、主部情報mdfの領域a4に、伝送モジュール2Aに搭載されたセンサによって計測された計測情報(温度データ)が格納されており、その主部情報mdfに対して、伝送モジュール2Aの再送結果情報adf1が付加されている。
【0078】
なお、上記の通り、伝送モジュール2Aは伝送経路の最上流側に位置するため、他の伝送モジュールから送信情報を受信することはない。しかし、例えば伝送モジュール2B等は、その上流側に位置する伝送モジュール2Aから送信情報を受信するため、当該受信した送信情報に再送結果情報が付加されていれば、伝送モジュール2Bで形成される再送結果情報が付加された送信情報においては、
図9に示すように、その主部情報mdfに対して、伝送モジュール2Aに対応する再送結果情報adf1と伝送モジュール2Bに対応する再送結果情報adf2が順次連結された状態となる。なお、伝送モジュール2Bにおいて付加すべき再送結果情報が存在しない場合には、伝送モジュール2Bで形成される再送結果情報が付加された送信情報においては、その主部情報mdfに対して、伝送モジュール2Aに対応する再送結果情報adf1のみが付加された状態となる。
【0079】
ここで、
図10に戻り、再送結果情報adf1の領域b4に格納される再送結果情報の実体データは、3つのデータb41、b42、b43で形成され、各データの詳細がそれぞれ
図10(b)、(c)、(d)に記載されている。先ず、データb41について、
図10(b)に基づいて説明する。上記の通り、変更の対象となった送信パラメータは送信電力パラメータであるから、対応するTest IDである04が領域c1に格納される。なお、本発明においては、Test IDの値と変更された送信パラメータの種類との相関は以下のように紐づけられている。
00:ネットワークパラメータ
01:ノードパラメータ
02:チャネルパラメータ
03:ダイバシティパラメータ
04:送信電力パラメータ
【0080】
次に、領域c2には、データ41に含まれる送信電力パラメータの変更回数情報(4回)に対応する04が格納される。そして、その4回の変更に対応した送信電力パラメータの値が、その変更の範囲の形式で領域c3に格納される。本実施例においては、送信電力が05から08まで1つずつ増加したことを表す情報として、05:08が領域c3に格納されている。
【0081】
また、領域c4には、このように送信電力を増加させて送信情報を再送したときの送信結果が格納されている。領域c4に格納される送信結果については、以下の通り定義される。
00: 送信成功
01: 送信不良(アクナレッジ信号が未受信である状態)
02: 送信不良(アクナレッジ信号を受信したものの、何らかのエラーが発生した状態)
03: 送信不良(アクナレッジ信号を受信したものの、良好な送信環境と定義される所定の条件を形成していない状態)
なお、
図10(b)に示すデータb41においては、送信電力を増加させて送信情報を再送したものの、伝送モジュール2Bからアクナレッジ信号が届かなかった送信不良を意味する01が、領域c4に格納されている。
【0082】
また、領域c5には、上記領域c4に格納された送信結果の詳細が格納されるため、領域c4の値に関連付けられた情報が格納されることになる。当該情報の詳細は、以下の通りである。
送信結果が00の場合: 下流側の伝送モジュールの受信信号強度(RSSI)
送信結果が01の場合: 所定値00
送信結果が02の場合: 発生しているエラーに対応するエラーコード
送信結果が03の場合: 下流側の伝送モジュールの受信信号強度(RSSI)
なお、下流側の伝送モジュールの受信信号強度(RSSI)やエラーコードは、下流側の伝送モジュールから届けられるアクナレッジ信号に含まれる。そして、
図10(b)に示すデータb41においては、送信不良01に対応する所定値00が、領域c5に格納されている。
【0083】
このように構成されるデータb41は、送信不良の発生に伴い送信電力パラメータ05から1つずつ08まで変更させて送信情報を再送したとき、その再送結果は、同じく下流側の伝送モジュール2Bからアクナレッジ信号を受信できない送信不良の状態であったことを表している。4回の送信電力パラメータの変更ごとに対応して4つの情報を作成することも可能であるが、各変更に対応する送信結果は同じであるから、
図10(b)に示すように4回の変更に関する情報を1つの情報としてまとめることで、再送結果情報の容量を圧縮することができる。したがって、
図10(b)に示す情報は、本願発明に係る要約情報に相当する。
【0084】
同じようにデータb42について
図10(c)に基づいて説明する。データb42は、送信電力パラメータを09に変更したときの送信結果が、03で示される送信不良であったことを表している。詳細には、送信電力パラメータを09に変更したとき、下流側の伝送モジュール2Bからアクナレッジ信号は届いたものの、そのRSSIがD0で表されるレベルであり、それは送信成功の基準となるレベルよりまだ低い状態にあることを意味する。次に、データb43について
図10(d)に基づいて説明する。データb43は、更に送信電力パラメータを増加させ0Aに変更したときの送信結果が、送信成功であったことを表している。そして、その際の下流側の伝送モジュール2BにおけるRSSIがE2であり、これは送信成功の基準となるレベルを超えたものである。
【0085】
図10に示すように構成される、再送結果情報adf1が付加された送信情報は、上記S204の処理によって情報処理装置1へと届けられる。そして、情報処理装置1では、データ記録部12によって、再送結果情報adf1が記録され、その情報をもとに情報処理部13が、伝送モジュール2A、2B間で生じた送信不良の状況と、当該送信不良に対して伝送モジュールがどのように対応し、解消を図っていったのかを把握することができる。また、情報処理装置1は、再送結果情報adf1を利用して、伝送モジュール2、3の送信条件を調整してもよい。例えば、伝送モジュール2Aの送信電力パラメータが05から0Aまで大きく増加し、その状態が継続すると消費電力の増大が懸念されることから、状況を把握してから所定時間が経過した時期に、伝送モジュール2Aに対して消費電力を下げるべく送信電力パラメータを減少させる指示を情報処理装置1から出してもよい。
【0086】
ここで、ネットワーク10に含まれる伝送モジュール2A、2B、情報処理装置1において上述した伝送処理と再送結果送信処理が行われた場合の信号の授受を表すシーケンスを、
図11に示す。
図11に示す一例では、伝送モジュール2Aにおいて、タイミングT1に伝送処理が開始され、送信不良が発生する。その後、6度にわたって送信パラメータ(本実施例の場合は、送信電力パラメータ)が変更(増加)され、情報送信が再送される。そして、最後の送信電力パラメータの変更及び送信情報の再送後に、タイミングT2で伝送モジュール2Bから伝送モジュール2Aに対して、伝送モジュール2BにおけるRSSIが基準レベルを満たしている状態でアクナレッジ信号が届き、この時点で伝送モジュールからの情報送信が成功したことが、伝送モジュール2Aにおいて確認されたことになる。なお、その後、伝送モジュール2Bは、伝送モジュール2Aから受け取った送信情報を更に情報処理装置1に送信し、その送信を成功させている。
【0087】
この時点では、情報処理装置1は、上記再送により送信情報を受け取ってはいるものの、タイミングT1での送信で発生した送信不良、および当該送信不良に対して伝送モジュール2Aが送信電力パラメータを05から0Aまで順次増加させる処理を行うことでその解消を図ってきた経緯を把握できてはいない。すなわち、伝送モジュール2Aによる自律的な通信不良の解消のための処理は、情報処理装置1には知られていない。そこで、タイミングT3に再送結果送信処理が開始され、伝送モジュール2Aで行われた上記送信不良の解消のための経緯を再送結果情報の形で取得し、次にタイミングT4に伝送モジュール2Aから伝送モジュール2Bに送信される新たな送信情報に、当該再送結果情報を付加し、
図10に示す新たな送信情報が形成されることになる。その後、この新たな送信情報は、伝送モジュール2Bを経て情報処理装置1へ届けられ、情報処理装置1は送信不良に関する情報を得ることになる。
【0088】
<変形例1>
上記の実施例では、伝送モジュール2A、2B間の情報送信に関連する伝送処理について説明したが、無線通信が行われる伝送モジュール2Bと情報処理装置1の送受信装置1aとの間においても、上記伝送処理を適用することができる。ただし、この場合、伝送モジュール2Bでの伝送処理においては、送受信装置1aに接続されたサーバ1bの受信通知部14から送信される受信通知に基づいて、送信不良発生の確認が行われ、その結果に応じて送信電力パラメータの増加処理が伝送モジュール2Bで行われ、その処理内容が、伝送モジュール2Bで再送結果送信処理が行われることで、情報処理装置1に届けられることになる。
【0089】
<変形例2>
また、上記の実施例では、伝送モジュール2Aから送信される再送結果情報は、その取得後に新たに送信される送信情報に付加されて情報処理装置1へ届けられるが、当該再送結果情報のみを単独に情報処理装置1へと届けてもよい。例えば、伝送モジュール2Aからの送信情報の送信周期が比較的長く設定されている場合、新たな送信情報が送信されるタイミングを待つと、再送結果情報が情報処理装置1へ届くのが遅れてしまい、速やかな再送結果情報の収集が阻害されてしまう場合がある。そのような場合には、上記の通り、再送結果情報のみを単独で送信するのが好ましい。また、伝送モジュール2Aで生じた複数回の送信不良に対応する複数の再送結果情報を、まとめて情報処理装置1に送信してもよい。
【0090】
<変形例3>
また、伝送モジュール2Bがセンサを搭載するタイプの伝送モジュールである場合、伝送モジュール2Bから情報処理装置1に送信される送信情報も、
図5に示すデータ構造を有するが、領域a4に含まれる計測温度データは、伝送モジュール2Aから受信した送信情報に含まれていた計測温度データに、伝送モジュール2Bで計測された温度データを加えたデータとしてもよい。この場合、伝送モジュール2Aから受信した送信情報に含まれていた計測温度データは、伝送モジュール2Bで計測された温度データとともに情報記憶部25に記憶され、
図4に示すS102での処理において伝送モジュール2Bから送信される送信情報内に含まれるように当該送信情報が形成される。
【0091】
<変形例4>
また、上記の実施例では、伝送処理及び再送結果情報送信処理が行われた伝送モジュールから情報処理装置1へ再送結果情報が送信されるが、その態様に代えて、当該伝送モジュールから送信可能な所定の処理装置に再送結果情報を送信するようにしてもよい。この場合、所定の処理装置が届けられた再送結果情報を利用してネットワーク10においてどのような送信不良の解消のための処理が行われているかを把握する。そして、好ましくは、その把握した内容を情報処理装置1へ引き渡すことで、情報処理装置1がネットワーク10に所属する伝送モジュールの管理を効果的に行うことができる。