(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の側面下地電極は、前記電子部品素体の外表面上において、前記端面下地電極から一体的に延びるように、前記側面上に形成されている、請求項2または3に記載の電子部品。
前記側面下地電極の、前記側面への露出部は、前記特定の端縁に沿って延びる互いに平行な複数の線分状露出部によって与えられ、前記第2の側面下地電極の線分状露出部の長手方向寸法は、前記第1の側面下地電極の線分状露出部の長手方向寸法より大きくされる、請求項10に記載の電子部品。
【背景技術】
【0002】
図12および
図13には、この発明にとって興味ある電子部品1が、それぞれ、斜視図および断面図で示されている。電子部品1は、チップ状の電子部品素体2を備えている。電子部品素体2は、外形が4つの側面3、4、5および6ならびに2つの端面7および8で規定される直方体形状を有している。
【0003】
電子部品素体2の内部には、電子部品1の機能に応じた形態の内部導体が設けられる。ここでは、電子部品1として、コイル部品が例示される。よって、
図13に示すように、電子部品素体2の内部には、コイル導体9が設けられる。なお、
図13では、コイル導体9は記号的な表示をもって省略的に図示されている。また、電子部品1がコイル部品である場合、電子部品素体2は、たとえばNi−Zn−Cu系フェライトのような磁性体セラミックから構成され、詳細には図示されないが、複数のセラミック層10によって与えられる積層構造を有している。この積層構造の積層方向は、
図13における左右方向に向けられる。
【0004】
電子部品素体2上には、上述したコイル導体9に電気的に接続される外部電極11および12が形成される。外部電極11および12の各々の少なくとも一部、すなわち、図示の例では、外部電極11および12の各々の表面層は、電解めっきによって形成されるめっき膜13および14によって与えられる。このようなめっき膜13および14の形成のため、たとえば、特開平11-67554号公報(特許文献1)に記載されるように、めっき成長の起点となるシード電極がめっき膜13および14の下地を構成するように形成されている。
【0005】
シード電極としては、電子部品素体2の端面7および8上に形成された端面下地電極15および16、ならびに、側面3〜6において端面7および8に対してそれぞれ平行に延びるように形成された各々複数の側面下地電極17および18がある。
【0006】
端面下地電極15および16は、導電性ペーストを端面7および8上に塗布し、これを焼き付けることによって形成される。
【0007】
側面下地電極17および18は、たとえば、電子部品素体2の積層構造を与える複数のセラミック層10となるべき複数のセラミックグリーンシートの特定のものに、側面下地電極17および18となるべき導電性ペースト膜を印刷しておくことによって、焼成工程を経て得られた電子部品素体2に形成される。
【0008】
また、複数の側面下地電極17相互間ならびに側面下地電極17と端面下地電極15とは、接続用導体19によって電気的に接続される。同様に、複数の側面下地電極18相互間ならびに側面下地電極18と端面下地電極16とは、接続用導体20によって電気的に接続される。接続用導体19および20は、バレルめっき法によって電解めっきを実施するとき、導電性メディアの接触によるシード電極への電気的導通状態が生じる確率を高めるように作用する。これら接続用導体19および20は、たとえば、電子部品素体2の積層構造を与える複数のセラミック層10となるべき複数のセラミックグリーンシートの特定のものに貫通孔を設け、そこに導電性ペーストを充填することによって形成される。
【0009】
以上のような電子部品1において、外部電極11および12の表面層を与えるめっき膜13および14の各々の端縁21および22の各位置に着目すると、これら端縁21および22の各位置は、めっき膜13および14の各々が側面3〜6に沿ってどれだけめっき成長したかによって決まる。この側面3〜6に沿うめっき成長の度合い、すなわち、めっき成長寸法Lは、めっき成長の始端ではなく、めっき成長の終端が重要である。
【0010】
上述しためっき成長寸法Lを決める要素として、電解めっき時に印加される電荷量(電流値×めっき時間)がある。したがって、従来、製造しようとする製品ごとに、目的とするめっき成長寸法Lを得るための印加電荷量を設定し、当該製品を製造する間は、この設定された電荷量を印加して電解めっきを実施していた。しかしながら、同一製品でありながら、製品ロットが変わると、めっき成長寸法Lも変わるといったばらつきが、製品ロット間で生じることがあった。
【0011】
めっき成長寸法Lは、できるだけ、ばらつかないことが望まれる。なぜなら、複数の電子部品1間でのめっき成長寸法Lのばらつきは、複数の電子部品1間での特性のばらつきをもたらすことがあるためである。たとえば、電子部品1がコイル部品である場合、めっき成長寸法Lが大きすぎると、コイルにより形成される磁束とめっき膜13および14との干渉度合いが大きくなり、電子部品1の特性に影響を及ぼすことがある。また、めっき成長寸法Lのばらつきは、以下のような外観不良をもたらすことがある。
【0012】
上述しためっき成長寸法Lのばらつきは、複数の電子部品1間で生じ得るものに限らない。1つの電子部品1において、めっき成長寸法Lがばらついた結果、めっき膜13および14の端縁21および22の直線性が阻害され、端縁21および22が典型的には波状に形成されてしまい、外観不良を招くことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、この発明の目的は、外部電極の少なくとも一部がバレルめっき法によって形成されるめっき膜によって与えられる場合において、このめっき膜のめっき成長寸法のばらつきを抑制し得る構造を有する電子部品を提供しようとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、電子部品素体と、電子部品素体の外表面の複数箇所に露出するように形成された下地電極と、下地電極をめっき成長の起点となるシード電極として、電子部品素体の外表面上に電解めっきによって形成されためっき膜を含む、外部電極と、を備える、電子部品に向けられるものであって、上述した技術的課題を解決するため、次のような構成を備えることを特徴としている。
【0016】
上記下地電極は、下地主電極と下地副電極とに分類される。下地副電極は、めっき膜の特定の端縁に沿って位置し、下地主電極は、下地副電極に比べて、めっき膜の上記特定の端縁からより離れて位置している。
【0017】
また、めっき膜が形成される前の段階において、下地主電極は電気的に共通接続された状態にあり、かつ、下地主電極と下地副電極とは互いに電気的に接続されていない状態にある。
【0018】
さらに、下地副電極の、電子部品素体の外表面への露出面積は、共通接続された下地主電極の、電子部品素体の外表面への露出面積よりも小さくされる。
【0019】
バレルめっき法を実施したとき、電子部品素体の外表面への露出面積がより大きい下地主電極の方が、電子部品素体の外表面への露出面積がより小さい下地副電極に比べて、導電性メディアによる給電の頻度が高い。したがって、下地主電極が与えるめっき成長は、下地副電極が与えるめっき成長に比べて、より促進される。言い換えると、めっき膜の特定の端縁でのめっき成長寸法を決める下地副電極が与えるめっき成長は、より抑制される。
【0020】
この発明の第1の好ましい実施態様では、電子部品素体は、4つの側面ならびに4つの側面の各々に直交する2つの端面で外表面が規定された直方体形状を有し、下地電極は、電子部品素体の2つの端面に露出するようにそれぞれ形成された、端面下地電極と、電子部品素体の少なくとも1つの側面に露出するように形成された、複数の側面下地電極と、を備える。めっき膜は、端面下地電極および複数の側面下地電極をめっき成長の起点となるシード電極として、電子部品素体の2つの端面上ならびに2つの端面の各々から少なくとも1つの側面にまで延びるように形成される。前述した下地主電極は、側面下地電極のうち、めっき膜の特定の端縁からより離れて位置する第1の側面下地電極と、端面下地電極と、によって与えられ、下地副電極は、側面下地電極のうち、めっき膜の特定の端縁に沿って位置する第2の側面下地電極によって与えられる。
【0021】
上記第1および第2の側面下地電極は、典型的には、4つの側面を周回するように形成されている。
【0022】
好ましくは、第1および第2の側面下地電極は、端面に対して平行に延びるように形成される。
【0023】
上記の場合、めっき成長寸法をより長くするには、互いに平行に延びる複数の第1の側面下地電極を備えることが好ましい。
【0024】
端面下地電極と第1の側面下地電極との電気的接続は、電子部品素体の内部を経由して達成されても、電子部品素体の外表面を経由して達成されてもよい。
【0025】
また、第1の側面下地電極は、電子部品素体の外表面上において、端面下地電極から一体的に延びるように、側面上に形成されていてもよい。
【0026】
この発明の第2の好ましい実施態様では、電子部品素体は、4つの側面ならびに4つの側面の各々に直交する2つの端面で外表面が規定された直方体形状を有し、下地電極は、電子部品素体の少なくとも1つの側面に露出するように形成された、複数の側面下地電極を備える。めっき膜は、複数の側面下地電極をめっき成長の起点となるシード電極として、電子部品素体の少なくとも1つの側面上に形成される。前述した下地主電極は、側面下地電極のうち、めっき膜の特定の端縁からより離れて位置する第1の側面下地電極によって与えられ、下地副電極は、側面下地電極のうち、めっき膜の特定の端縁に沿って位置する第2の側面下地電極によって与えられる。
【0027】
第2の好ましい実施態様において、第1および第2の側面下地電極は、典型的には、1つの側面にのみ露出するように形成されたり、隣り合う2つの側面にわたって露出するように形成されたりする。
【0028】
前者のように、第1および第2の側面下地電極が1つの側面にのみ露出するように形成される場合、好ましくは、側面下地電極の、側面への露出部は、上記特定の端縁に沿って延びる互いに平行な複数の線分状露出部によって与えられ、第2の側面下地電極の線分状露出部の長手方向寸法は、第1の側面下地電極の線分状露出部の長手方向寸法より大きくされる。このような構成により、めっき膜の上記特定の端縁の両端にそれぞれ形成される角部をより鋭利な形態とすることができる。
【0029】
この発明に係る電子部品は、典型的には、電子部品素体の内部に設けられる内部導体をさらに備えている。内部導体は、外部電極に電気的に接続される。
【発明の効果】
【0030】
この発明によれば、外部電極の少なくとも一部となるめっき膜についてのめっき成長の起点となる下地主電極および下地副電極のうち、下地副電極の方が、下地主電極に比べて、露出面積が小さく、かつ、下地副電極がめっき膜の特定の端縁に沿って位置し、下地主電極がめっき膜の特定の端縁からより離れて位置しているので、めっき成長の度合いは、下地主電極より下地副電極の方が低く、よって、めっき成長は下地副電極の位置で抑制される。そのため、めっき成長は、下地副電極の近傍を終端とするように生じさせることが容易となり、その結果、めっき成長寸法のばらつきを抑制することができる。したがって、この発明に係る電子部品において、その特性のばらつきを抑制することができる。
【0031】
また、この発明によれば、めっき成長の終端は下地副電極によって規定され、かつめっき成長が下地副電極の位置で抑制されるので、めっき膜の端縁形状は、下地副電極の形状にほぼ倣うようになる。したがって、下地副電極を直線状に延びる形状とすれば、めっき膜の端縁も、これに倣って直線状に延びる形状とすることが容易である。その結果、外部電極の外観において、良好な形態を得ることができ、よって、当該電子部品の実装性を高めることができる。
【0032】
一方、この発明によれば、露出面積の比較的大きい下地主電極が与えるめっき成長は、下地副電極が与えるめっき成長に比べて、より促進されるので、下地主電極上では、めっき膜を能率的に形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1および
図2を参照して、この発明の第1の実施形態による電子部品31について説明する。図示した電子部品31は、コイル部品を意図している。
【0035】
電子部品31は、たとえばNi−Zn−Cu系フェライトのような磁性体セラミックからなるチップ状の電子部品素体32を備えている。電子部品素体32は、外形が4つの側面33、34、35および36(側面34は
図2に示す。側面36は側面34の反対側に現れる。)ならびに2つの端面37および38で規定される直方体形状を有している。
【0036】
電子部品素体32は、詳細には図示されないが、複数のセラミック層40によって与えられる積層構造を有している。この積層構造の積層方向は、
図1における左右方向に向けられる。
【0037】
電子部品素体32の内部には、たとえば、Ag、CuまたはPdを導電成分として含むコイル導体39が設けられる。なお、
図13の場合と同様、
図1では、コイル導体39は記号的な表示をもって省略的に図示されている。コイル導体39は、全体としてコイル状に延びるもので、実際には、セラミック層40間に延びるライン状導体と、各ライン導体の端部に接続されながら、セラミック層40を厚み方向に貫通する層間接続導体と、をもって構成されている。
【0038】
電子部品素体32上には、外部電極41および42が形成される。外部電極41および42の少なくとも各一部は、それぞれ、電解めっきによって形成されるめっき膜43および44によって与えられる。なお、図示した電子部品31では、外部電極41および42は、それぞれ、めっき膜43および44のみから構成されている。めっき膜33および34は、たとえば、NiまたはCuから構成される。なお、めっき膜が複数のめっき層からなる場合もある。電子部品素体32には、めっき膜43および44の形成のため、めっき成長の起点となるシード電極が形成される。
【0039】
シード電極としては、
図13に示した電子部品素体2の場合と同様、電子部品素体32の端面37および38上に形成された端面下地電極45および46、ならびに、側面33〜36において端面37および38に対してそれぞれ平行に延びるように形成された各々複数の側面下地電極47および48がある。
【0040】
端面下地電極45および46は、たとえば、AgまたはCuを導電成分として含む導電性ペーストを端面37および38上に塗布し、これを焼き付けることによって形成される。図示した端面下地電極45および46は、端面37および38の各全面に形成されているが、全面ではなく、たとえばメッシュ状またはストライプ状に形成されてもよい。前述したコイル導体39の各端部は、それぞれ、端面下地電極45および46と電気的に接続される。
【0041】
側面下地電極47および48は、たとえば、電子部品素体32の積層構造を与える複数のセラミック層40となるべき複数のセラミックグリーンシートの特定のものに、側面下地電極47および48となるべき導電性ペースト膜を印刷しておくことによって、焼成工程を経て得られた電子部品素体32に形成される。図示した側面下地電極47および48は、4つの側面33〜36を周回するように形成されている。
【0042】
側面下地電極47および48としては、複数の第1の側面下地電極47aおよび48aと、これら第1の側面下地電極47aおよび48aよりも端面37および38からより離れて位置している、言い換えると、最も内側に位置している第2の側面下地電極47bおよび48bと、がある。
【0043】
端面下地電極45および46ならびに側面下地電極47および48をもって構成される下地電極45〜48は、下地主電極61および62と下地副電極63および64とに分類される。ここで、下地副電極63および64は、それぞれ、めっき膜43および44の端縁43aおよび44aに沿って位置するもので、上述の第2の側面下地電極47bおよび48bがこれに該当する。他方、下地主電極61および62は、それぞれ、下地副電極63および64に比べて、めっき膜43および44の端縁43aおよび44aからより離れて位置するもので、上述の第1の側面下地電極47aおよび48aならびに端面下地電極45および46がこれに該当する。
【0044】
図1に示すように、第1の側面下地電極47aおよび48aはそれぞれ複数存在しているが、第2の側面下地電極47bおよび48bはそれぞれ1つずつである。したがって、電子部品素体32の側面33、34、35および36に露出している第1の側面下地電極47aおよび48aの面積は、第2の側面下地電極47bおよび48bの面積よりも大きい。
【0045】
さらに、下地主電極61および62ならびに下地副電極63および64の各々の露出面積を比較すると、下地主電極61および62は、それぞれ、上述の第1の側面下地電極47aおよび48aに加えて、端面下地電極45および46をも含んでいるので、その露出面積は、下地副電極63および64の露出面積に比べて、圧倒的に大きい。
【0046】
複数の第1の側面下地電極47a相互間ならびに複数の第1の側面下地電極47aと端面下地電極45とは、少なくとも1つの接続用導体49によって電気的に接続される。同様に、複数の第1の側面下地電極48a相互間ならびに複数の第1の側面下地電極48aと端面下地電極46とは、少なくとも1つの接続用導体50によって電気的に接続される。その結果、下地主電極61および62の各々は、電気的に共通接続された状態にある。
【0047】
上述の接続用導体49および50は、たとえば、電子部品素体32の積層構造を与える複数のセラミック層40となるべき複数のセラミックグリーンシートの特定のものに貫通孔を設け、そこに導電性ペーストを充填することによって形成されたビアホール導体によって与えられる。このようにして、端面下地電極45および46と第1の側面下地電極47aおよび48aとのそれぞれの電気的接続ならびに第1の側面下地電極47aおよび48aの各々相互の電気的接続は、電子部品素体32の内部を経由して達成される。
【0048】
他方、第2の側面下地電極47bおよび48bによって与えられる下地副電極63および64は、それぞれ、めっき膜43および44が形成される前の段階では、下地主電極61および62に対しては電気的に接続されていない状態にある。
【0049】
上述した側面下地電極47および48ならびに接続用導体49および50を形成するために用いられる導電性ペーストとしては、たとえば、AgまたはCuを導電成分として含むものが用いられる。
【0050】
図3には、電子部品素体32に対して、バレルめっき法によって電解めっきを施している状態が図解的に示されている。電解液51が収容されためっき槽52内には、矢印53方向に回転するバレル54が配置される。バレル54内には、電解めっきの対象となる複数の電子部品素体32が複数の導電性のメディア55とともに装填される。電解液51内には陽極56が配置され、バレル54内のメディア55と接触し得るように、陰極57が配置される。
【0051】
バレルめっき法によれば、バレル54が回転することによって、その中の電子部品素体32およびメディア55が攪拌され、この攪拌によって、シード電極としての端面下地電極45および46ならびに側面下地電極47および48へのメディア55の接触が促進される。そして、メディア55が接触している間、端面下地電極45および46ならびに側面下地電極47および48に通電され、これらをシード電極として電解めっきが進行する。
【0052】
前述した外部電極41および42を与えるめっき膜43および44が有するめっき成長寸法は、
図1において、「L1」で示されている。上述した下地主電極61および62ならびに下地副電極63および64において採用された露出面積の関係および電気的接続の態様は、めっき成長寸法L1のばらつき、すなわち、めっき膜43および44の端縁43aおよび44aの位置のばらつきを抑制するように作用する。
【0053】
図3に示すようなバレルめっき法を実施したとき、下地主電極61および62の方が、下地副電極63および64に比べて、メディア55による給電の頻度が高い。したがって、下地主電極61および62が与えるめっき成長は、下地副電極63および64が与えるめっき成長に比べて、より促進される。言い換えると、最も内側に位置する、めっき成長寸法L1を決める下地副電極63および64としての第2の側面下地電極47bおよび48bが与えるめっき成長は、より抑制される。
【0054】
そのため、めっき成長は、第2の側面下地電極47bおよび48bの近傍を、めっき膜43および44の端縁43aおよび44aとするように生じさせることが容易となり、その結果、めっき成長寸法L1のばらつきを抑制することができる。したがって、このようなめっき工程を経て得られた電子部品31において、その特性のばらつきを抑制することができる。
【0055】
また、めっき成長の終端は、第2の側面下地電極47bおよび48bによって規定されるので、めっき膜43および44の端縁43aおよび44aの形状は、第2の側面下地電極47bおよび48bの形状に倣うようになる。したがって、第2の側面下地電極47bおよび48bは直線状に延びる形状であるので、めっき膜43および44の端縁43aおよび44aも、これに倣って直線状に延びる形状とすることができる。その結果、外部電極41および42の外観において、良好な形態を得ることができ、よって、当該電子部品31の実装性を高めることができる。
【0056】
一方、下地主電極61および62が与えるめっき成長は、下地副電極63および64が与えるめっき成長に比べて、より促進されるので、下地主電極61および62上では、めっき膜43および44を能率的に成長させることができる。
【0057】
次に、
図4を参照して、この発明の第2の実施形態について説明する。
図4には、電子部品に備える電子部品素体32aが模式的に断面図で示されている。
図4において、
図1または
図2に示す要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0058】
図4に示した電子部品素体32aでは、第1の側面下地電極47aおよび48aは、それぞれ、電子部品素体32aの外表面を経由して端面下地電極45および46に電気的に接続されていることを特徴としている。より具体的には、電子部品素体32aの外表面に露出する状態で設けられた各々少なくとも1つの接続用導体49aおよび50aを介して、それぞれ、第1の側面下地電極47aおよび48aが、端面下地電極45および46に電気的に接続され、かつ、第1の側面下地電極47aおよび48aの各々相互が電気的に接続されている。
【0059】
この第2の実施形態によっても、前述の第1の実施形態の場合と同様の効果が得られる。なお、第2の実施形態では、接続用導体49aおよび50aによっても、多かれ少なかれ、下地主電極61および62の露出面積の増大が図られる。
【0060】
上述の接続用導体49aおよび50aは、たとえば、次のように形成される。すなわち、分割することにより、複数の電子部品素体32aを取り出すことができる電子部品素体の集合体にビアホール導体を設けておき、ビアホール導体を二分するように集合体を分割する。そして、複数の電子部品素体32aを取り出したとき、この取り出された電子部品素体32aの外表面にビアホール導体を二分した形態の接続用導体49aおよび50aが形成される。上述のビアホール導体は、電子部品素体の集合体における積層構造を与える複数のセラミック層40となるべき複数のセラミックグリーンシートの特定のものに貫通孔を設け、そこに導電性ペーストを充填することによって形成され得る。
【0061】
接続用導体49aおよび50aの形成のため、上述の方法を採用すれば、加工費の低減を期待することができる。
【0062】
次に、
図5を参照して、この発明の第3の実施形態について説明する。
図5には、電子部品に備える電子部品素体32bが模式的に断面図で示されている。
図5において、
図1または
図2に示す要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0063】
図5に示した電子部品素体32bでは、第1の側面下地電極47aおよび48aは、それぞれ、電子部品素体32bの外表面上において、端面下地電極45および46から一体的に延びるように、側面33〜36上に形成されていて、それによって、第1の側面下地電極47aおよび48aが、それぞれ、端面下地電極45および46に電気的に接続されていることを特徴としている。このようにして、端面下地電極45および46ならびに第1の側面下地電極47aおよび48aからそれぞれなる下地主電極61および62の各々は、一体的な導体膜から構成される。
【0064】
この第3の実施形態によっても、前述の第1の実施形態の場合と同様の効果が得られる。
【0065】
上述の第1の側面下地電極47aは、端面下地電極45とともに、電子部品素体32b上にディップ法によって付与された導電性ペーストを焼き付けることによって形成され得る。同様に、第1の側面下地電極48aは、端面下地電極46とともに、電子部品素体32b上にディップ法によって付与された導電性ペーストを焼き付けることによって形成され得る。
【0066】
第1の側面下地電極47aおよび48aの形成のため、上述の方法を採用すれば、工程数の削減を期待することができる。
【0067】
下地副電極63および64となる第2の側面下地電極47bおよび48bの形成方法は、第1の実施形態の場合と同様である。
【0068】
次に、
図6を参照して、この発明の第4の実施形態について説明する。
図6には、電子部品31cが模式的に断面図で示されている。
図6において、
図1に示す要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0069】
図6に示した電子部品31cに備える電子部品素体32cでは、コイル導体39の各端部は、それぞれ、複数の第1の側面下地電極47aのいずれか、および複数の第1の側面下地電極48aのいずれかと電気的に接続される。また、接続用導体49aおよび50aは、それぞれ、複数の第1の側面下地電極47a相互間および複数の第1の側面下地電極48a相互間を接続するが、端面下地電極45および46には接続されない。
【0070】
図6に示した電子部品31cでは、各々複数の第1の側面下地電極47aおよび48aによって、それぞれ、下地主電極61および62が与えられ、第2の側面下地電極47bおよび48bによって、それぞれ、下地副電極63および64が与えられる。
【0071】
第1の側面下地電極47aおよび48aはそれぞれ複数存在しているが、第2の側面下地電極47bおよび48bはそれぞれ1つである。したがって、電子部品素体32の側面33、34、35および36に露出している第1の側面下地電極47aおよび48aの面積は、第2の側面下地電極47bおよび48bの面積よりも大きい。言い換えると、下地主電極61および62の露出面積は、下地副電極63および64の露出面積より大きい。
【0072】
図6に示した電子部品31cでは、端面下地電極45および46は、それぞれ、下地主電極61および62とはめっき膜43および44形成前の段階では電気的に接続されていないが、下地主電極61および62と同等の機能を果たす下地電極となる。
【0073】
以上説明した実施形態では、外部電極41および42が電子部品素体32、32a、32bおよび32cの各々の4つの側面33〜36にまで延びるように形成されたが、3つの側面、対向するもしくは隣り合う2つの側面、または1つの側面にまでしか延びないように形成されていてもよい。したがって、めっき膜43および44についても、3つの側面、対向するもしくは隣り合う2つの側面、または1つの側面にまでしか延びないように形成されていてもよく、これに応じて、側面下地電極についても、3つの側面、対向するもしくは隣り合う2つの側面、または1つの側面にのみ露出するように形成されていてもよい。また、外部電極が電子部品素体の端面の一部から1つの側面の一部にのみ延びるように形成された電子部品に対しても、この発明を適用することができる。
【0074】
図7および
図8を参照して、この発明の第5の実施形態について説明する。
図7には、電子部品31dが模式的に断面図で示され、
図8には、
図7に示した電子部品31dが底面図で示されている。
図7および
図8において、
図1に示す要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0075】
図7および
図8に示した電子部品31dは、電子部品素体32dの底面に相当する1つの側面35上にのみ、外部電極67および68が形成されることを特徴としている。外部電極67および68は、それぞれ、電解めっきによって形成されるめっき膜69および70を備えている。電子部品素体32dには、めっき膜69および70の形成のため、めっき成長の起点となるシード電極が形成される。
【0076】
シード電極としては、めっき膜69および70の各々に対応して、電子部品素体32dの側面35に露出するように形成された各々複数の側面下地電極71および72がある。側面下地電極71および72は、前述した側面下地電極47および48と同様の方法によって形成されることができる。側面下地電極71および72は、
図8によく示されているように、互いに平行な複数の線分状露出部によって与えられる。
【0077】
側面下地電極71および72としては、複数の第1の側面下地電極71aおよび72aと、これら第1の側面下地電極71aおよび72aよりも端面37および38からより離れて位置している、言い換えると、最も内側に位置している第2の側面下地電極71bおよび72bと、がある。
【0078】
これら側面下地電極71および72は、下地主電極73および74と下地副電極75および76とに分類される。ここで、下地副電極75および76は、それぞれ、めっき膜69および70の特定の端縁、すなわち、互いに対向する端縁69aおよび70aに沿って位置するもので、上述の第2の側面下地電極71bおよび72bがこれに該当する。他方、下地主電極73および74は、それぞれ、下地副電極75および76に比べて、めっき膜69および70の上記特定の端縁69aおよび70aからより離れて位置するもので、上述の第1の側面下地電極71aおよび72aがこれに該当する。
【0079】
図7および
図8に示すように、第1の側面下地電極71aおよび72aはそれぞれ複数存在しているが、第2の側面下地電極71bおよび72bはそれぞれ1つずつである。したがって、電子部品素体32dの側面35に露出している第1の側面下地電極71aおよび72aの面積によって与えられる下地主電極73および74の露出面積は、第2の側面下地電極71bおよび72bの面積によって与えられる下地副電極75および76の露出面積よりも大きい。
【0080】
複数の第1の側面下地電極71a相互間は、
図7に示すように、少なくとも1つの接続用導体49bによって電気的に接続される。同様に、複数の第1の側面下地電極72a相互間は、少なくとも1つの接続用導体50bによって電気的に接続される。その結果、下地主電極73および74の各々は、電気的に共通接続された状態にある。接続用導体49bおよび50bは、
図1に示した接続用導体49および50の場合と同様の方法によって形成されることができる。接続用導体49bおよび50bは、
図4に示した接続用導体49aおよび50aと同様の態様で設けられてもよい。
【0081】
他方、第2の側面下地電極71bおよび72bによって与えられる下地副電極75および76は、それぞれ、めっき膜69および70が形成される前の段階では、下地主電極73および74に対しては電気的に接続されていない状態にある。
【0082】
また、この電子部品31dでは、電子部品素体32dの内部に設けられる内部導体としてのコイル導体39の各端部は、それぞれ、第1の側面下地電極71aのいずれかおよび第1の側面下地電極72aのいずれかに接続されることによって、外部電極67および68に電気的に接続される。
【0083】
上述した電子部品素体32dに対して、バレルめっき法によって電解めっきを施すとき、シード電極としての側面下地電極71および72へ導電性のメディア55(
図3参照)が接触している間、側面下地電極71および72に通電され、これらをシード電極として電解めっきが進行する。ここで、下地主電極73および74の方が、下地副電極75および76に比べて、メディア55による給電の頻度が高い。したがって、下地主電極73および74が与えるめっき成長は、下地副電極75および76が与えるめっき成長に比べて、より促進される。言い換えると、形成されようとするめっき膜69および70の特定の端縁69aおよび70aに沿って位置する下地副電極75および76としての第2の側面下地電極71bおよび72bが与えるめっき成長は、より抑制される。
【0084】
そのため、めっき成長は、第2の側面下地電極71bおよび72bの近傍を、めっき膜69および70の端縁69aおよび70aとするように生じさせることが容易となり、端縁69aおよび70aの各位置のばらつきを抑制することができる。めっき膜69および70、すなわち外部電極67および68の端縁69aおよび70aは、互いに対向する位置関係にあるため、これら端縁69aおよび70aの位置は、電子部品31dの特性や実装性に比較的大きな影響を及ぼす。
図7および
図8に示した電子部品31dによれば、端縁69aおよび70aの各位置のばらつきを抑制することができるので、特性のばらつきを抑制することができるとともに、実装性を高めることができる。
【0085】
この電子部品31dは、
図8に破線で示すように、第2の側面下地電極71bおよび72bの線分状露出部の長手方向寸法W2が、第1の側面下地電極71aおよび72aの線分状露出部の長手方向寸法W1より大きいという特徴も有している。このように、第1の側面下地電極71aおよび72aと第2の側面下地電極71bおよび72bとの寸法関係が選ばれることにより、めっき膜69および70、ひいては外部電極67および68の内側の端縁69aおよび70aの各々の両端に形成される角部をより鋭利な形態とすることができる。
【0086】
この発明は、外部電極の数が2つの電子部品に限らず、たとえばアレイタイプの電子部品のように、外部電極を3つ以上有する電子部品にも適用することができる。
【0087】
次に、
図9ないし
図11を参照して、この発明の第6の実施形態について説明する。第6の実施形態による電子部品31eが、
図9に正面図で、
図10に底面図で、
図11に、
図10の線XI−XIに沿う断面図でそれぞれ示されている。
図9ないし
図11において、
図1に示す要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明を省略する。
【0088】
図9ないし
図11に示した電子部品31eは、電子部品素体32eの外表面上において、6つの外部電極77〜82が形成されることを特徴としている。外部電極77〜82は、それぞれ、電解めっきによって形成されるめっき膜83〜88を備えている。めっき膜83および84は、電子部品素体32eの底面を構成する側面35から端面37にまで延びるように形成される。めっき膜85および86は、側面35から端面38にまで延びるように形成される。めっき膜87は、側面35から側面34にまで延びるように形成され、めっき膜88は、側面35から側面36にまで延びるように形成される。
【0089】
電子部品素体32eには、めっき膜83〜88の形成のため、めっき成長の起点となるシード電極が形成される。
【0090】
めっき膜83のためのシード電極について説明すると、シード電極は、端面下地電極89および側面下地電極90を備える。側面下地電極90は、めっき膜83の特定の端縁83aからより離れて位置する複数の第1の側面下地電極90aとめっき膜83の特定の端縁83aに沿って位置する第2の側面下地電極90bとに分類される。めっき膜83のための下地主電極91は、接続用導体92によって互いに接続された端面下地電極89および複数の第1の側面下地電極90aによって与えられ、下地副電極93は、第2の側面下地電極90bによって与えられる。
【0091】
めっき膜84〜86の各々のためのシード電極についても、めっき膜83のためのシード電極と実質的に同様の構成であるので、重複する説明を省略する。
【0092】
他方、めっき膜87のためのシード電極は、複数の側面下地電極94を備える。側面下地電極94は、めっき膜87の特定の端縁87aおよび87bからより離れて位置する複数の第1の側面下地電極94aとめっき膜87の特定の端縁87aおよび87bの各々に沿って位置する第2の側面下地電極94bとに分類される。めっき膜87のための下地主電極95は、接続用導体96によって互いに接続された複数の第1の側面下地電極94aによって与えられ、下地副電極97は、第2の側面下地電極94bによって与えられる。
【0093】
めっき膜88のためのシード電極についても、めっき膜87のためのシード電極と実質的に同様の構成であるので、重複する説明を省略する。
【0094】
電子部品本体32eの内部には、内部導体としてのコイル導体98が設けられ、コイル導体98の各端部は、それぞれ、めっき膜83のためのシード電極としての端面下地電極89およびめっき膜85のためのシード電極としての端面下地電極と電気的に接続される。電子部品本体32eの内部に設けられる他の内部導体およびこれら内部導体と外部電極77〜82との接続態様の図示および説明については、これを省略する。
【0095】
この第6の実施形態においても、下地主電極91および95の各々の露出面積は、それぞれ、下地副電極93および97の各々の露出面積よりも大きいという条件を満たしている。
【0096】
以上、この発明の対象となる電子部品として、コイル部品を例にとって説明した。コイル部品の場合、電子部品素体32はフェライト材料からなるが、フェライト材料は、たとえば積層セラミックコンデンサの場合の電子部品素体を構成する誘電体材料より表面抵抗値が低い。よって、めっき成長寸法のばらつきの幅は、フェライト材料の方が誘電体材料よりも広くなると推測できる。この点で、この発明は、積層セラミックコンデンサに適用される場合よりも、コイル部品に適用されたとき、より意義が大きいと言える。
【0097】
しかしながら、この発明は、コイル部品に限らず、積層セラミックコンデンサ、サーミスタ等の他のセラミック電子部品にも、さらには、セラミック電子部品以外の電子部品にも適用することができる。
【0098】
また、下地主電極となる側面下地電極の図示された数は、図面作成の容易さの点から比較的少なくしたが、実際には、より多くの数の側面下地電極が設けられる。他方、下地副電極となる側面下地電極の数は、めっき膜の1つの端縁について、1つ設けられたものが図示されたが、必要に応じて、2つ以上設けられてもよい。また、下地主電極と下地副電極との間での露出面積の差は、側面下地電極の厚みの差によって、もたらされるようにしてもよい。
【0099】
また、図示の実施形態の説明において、直方体形状の電子部品素体の外表面について、「側面」および「端面」という名称を用いたが、これら「側面」および「端面」は、相対的に決まるものであり、いずれの面を「側面」または「端面」と呼ぶかについては任意に決めることができる。
【0100】
また、図示の実施形態では、電子部品素体が直方体形状であったが、電子部品素体が直方体形状以外の、たとえば、円柱状、円板状である電子部品についてもこの発明を適用することができる。