(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電磁石は、発生する磁束の個体差が、磁束の大きさがある限界値を超えると大きくなってしまうという特性がある。そのため、上記限界値を超えた領域では、駆動軸の位置制御が困難になり、駆動軸の負荷に応じて、電磁石に流れる電流を大きくして電磁力を大きくするとしても、上記限界値以下での制御領域に制限されることになる。これに対しては、電磁石を大型化して制御領域を拡げることが考えられるが、磁気軸受のサイズの増大やコストの増大といった問題に繋がる。
【0006】
本発明は上記の問題に着目してなされたものであり、磁束(電磁力)の個体差がより大きな領域でも、磁気軸受における位置制御ができるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、第1の態様は、
駆動軸(13)に電磁力を付与する複数の電磁石(27)を有したステータ(21)と、
上記電磁石(27)に流す電流(i)、上記電磁石(27)に流す鎖交磁束数(ψ)、上記ステータ(21)と上記駆動軸(13)とのギャップ長(G)、上記電磁石(27)の磁気エネルギー(Wm)、上記電磁石(27)における磁気随伴エネルギー(Wm’)、上記電磁石(27)から生ずる電磁力、及びこれらを用いて導出される変数のうちの2つ以上の変数の間の相関関係についての上記電磁石(27)間の個体差の大きさに応じて制御領域を2つに分けて、上記個体差がより小さい方の制御領域である第1制御領域(A1)では各電磁石(27)に共通の制御モデルを使用し、上記個体差がより大きい方の制御領域である第2制御領域(A2)では個々の電磁石(27)若しくは所定の数の電磁石群毎に設けた制御モデルを使用して上記駆動軸(13)の位置制御を行う制御部(30)と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
この構成では、電磁石(27)の個体差に応じて制御領域を2つに分け、個体差がより大きい方の制御領域である第2制御領域(A2)では個々の電磁石(27)若しくは所定の数の電磁石群毎に設けた制御モデルを使用して上記電磁力の制御を行う。
【0009】
また、第2の態様は、第1の態様において、
上記相関関係は、上記電磁石(27)に流す電流(i)、上記ギャップ長(G)、及び上記電磁力の相関関係であり、
上記制御部(30)は、上記電磁石(27)に流す電流(i)、上記ギャップ長(G)、及び上記電磁力の関係についての上記電磁石(27)間の個体差の大きさに応じて制御領域を2つに分けて、上記個体差がより小さい方の制御領域である第1制御領域(A1)では各電磁石(27)に共通の制御モデルを使用し、上記個体差がより大きい方の制御領域である第2制御領域(A2)では個々の電磁石(27)若しくは所定の数の電磁石群毎に設けた制御モデルを使用して上記電磁力の制御を行うことによって上記駆動軸(13)の位置制御を行うことを特徴とする。
【0010】
この構成では、電流、ギャップ長、電磁力の関係についての個体差がより大きい方の制御領域である第2制御領域(A2)では個々の電磁石(27)若しくは所定の数の電磁石群毎に設けた制御モデルを使用して上記電磁力の制御を行う。
【0011】
また、第3の態様は、
第2の態様において、
上記複数の電磁石(27)の一部の電磁石(27)が上記第2制御領域(A2)で制御され、且つその他の所定の電磁石(27)が上記第1制御領域(A1)において制御されることによって上記位置制御が行われた状態において、上記第1制御領域(A1)において制御されている電磁石(27)が発生している電磁力の合成力を該第1制御領域(A1)の制御モデルに基づいて算出するとともに、その合成力を基準として、上記第2制御領域(A2)で制御されている電磁石(27)が発生する電磁力を算出する電磁力算出部(41)と、
上記電磁力算出部(41)が算出した、上記第2制御領域(A2)で制御されている電磁石(27)の電磁力に基づいて、上記第2制御領域(A2)で用いる制御モデルを構築する制御モデル構築部(40)と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
この構成では、第1制御領域(A1)において制御された電磁石(27)の合成電磁力を基準として、第2制御領域(A2)において制御された電磁石(27)の電磁力が求められる。それにより、第2制御領域(A2)で用いる制御モデルが構築される。
【0013】
また、第4の態様は、
第3の態様において、
上記電磁力算出部(41)は、上記駆動軸(13)を低負荷状態で浮上させる場合の電磁力を第1制御領域(A1)の制御モデルに基づいて予め算出しておいて、予め算出した電磁力と上記合成力との差を、上記第2制御領域(A2)で制御されている電磁石(27)が発生する電磁力として求めることを特徴とする。
【0014】
この構成では、低負荷状態における電磁力が予め求められ、その値を利用して、第2制御領域(A2)における電磁力が求められる。
【0015】
また、第5の態様は、
第3又は第4の態様において、
上記電磁力算出部(41)は、上記複数の電磁石(27)の一部の電磁石(27)が上記第2制御領域(A2)よりも発生する電磁力が大きな第3制御領域(A3)で制御され、且つその他の所定の電磁石(27)が上記第2制御領域(A2)または上記第1制御領域(A1)において制御されることによって上記位置制御が行われた状態において、上記第2制御領域(A2)または上記第1制御領域(A1)において制御されている電磁石(27)が発生している電磁力を該第2制御領域(A2)または上記第1制御領域(A1)の制御モデルに基づいて算出するとともに、算出された電磁力を基準として、上記第3制御領域(A3)で制御されている電磁石(27)が発生する電磁力を算出し、
上記制御モデル構築部(40)は、上記電磁力算出部(41)による算出値に基づいて、上記第3制御領域(A3)で用いる制御モデルを構築する
ことを特徴とする。
【0016】
この構成では、制御モデル構築によって制御可能となった第2制御領域(A2)または第1制御領域(A1)で電磁石(27)を動作させ、その電磁力を基準として、第3制御領域(A3)において制御された電磁石(27)の電磁力が求められる。それにより、第3制御領域(A3)で用いる制御モデルが構築される。
【0017】
また、第6の態様は、第1の態様において、
上記相関関係は、上記鎖交磁束数(ψ)、上記ギャップ長(G)、及び上記電磁力の相関関係であり、
上記制御部(30)は、上記鎖交磁束数(ψ)、上記ギャップ長(G)、及び上記電磁力の関係についての上記電磁石(27)間の個体差の大きさに応じて制御領域を2つに分けて、上記個体差がより小さい方の制御領域である第1制御領域(A1)では各電磁石(27)に共通の制御モデルを使用し、上記個体差がより大きい方の制御領域である第2制御領域(A2)では個々の電磁石(27)若しくは所定の数の電磁石群毎に設けた制御モデルを使用して上記電磁力の制御を行うことによって上記駆動軸(13)の位置制御を行うことを特徴とする。
【0018】
この構成では、鎖交磁束数、ギャップ長、電磁力の関係についての個体差がより大きい方の制御領域である第2制御領域(A2)では個々の電磁石(27)若しくは所定の数の電磁石群毎に設けた制御モデルを使用して上記電磁力の制御を行う。
【0019】
また、第7の態様は、第6の態様において、
上記制御部(30)は、上記電磁石(27)のコイル(25)に印加した電圧を時間積分した値を基に、上記鎖交磁束数(ψ)を求めることを特徴とする。
【0020】
また、第8の態様は、第6の態様において、
上記制御部(30)は、上記電磁石(27)のコイル(25)に印加した電圧から該コイル(25)の電圧降下を差し引いた電圧を時間積分した値を基に、上記鎖交磁束数(ψ)を求めることを特徴とする。
【0021】
また、第9の態様は、第1から第8の態様の何れかにおいて、
上記ステータ(21)を構成するコア部(22)は、複数のコアブロック(22a)を結合して構成されていることを特徴とする。
【0022】
この構成では、コアブロック(22a)に分割したことにより、例えばコイルの巻回に種々の工法の採用が可能になる。
【発明の効果】
【0023】
第1の態様や第2の態様によれば、電磁力の個体差がより大きな領域(例えば後述の飽和領域)においても、磁気軸受の位置制御が可能になる。
【0024】
また、第3の態様によれば、第2制御領域(A2)の制御モデル構築の際に、磁気軸受内の電磁石を電磁力測定の基準に用いるので、制御モデル構築のために特別な測定器を用意する必要がない。
【0025】
また、第4の態様によれば、第2制御領域(A2)における電磁力をより正確に求めることができる。
【0026】
また、第5の態様によれば、制御領域の拡大を図ることが可能になる。
【0027】
また、第6の態様によれば、電磁力の個体差がより大きな領域(例えば後述の飽和領域)においても、磁気軸受の位置制御が可能になる。
【0028】
また、第7の態様や第8の態様では鎖交磁束数が算出される。
【0029】
また、第9の態様によれば、ステータの製造(例えばコイルの巻回)が容易になる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0032】
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1では、磁気軸受を用いたターボ圧縮機について説明する。このターボ圧縮機は、冷媒が循環して冷凍サイクル運転動作を行う冷媒回路(図示省略)に接続され、冷媒を圧縮する。
【0033】
〈全体構成〉
図1は、ターボ圧縮機(1)の構造を示す概略図である。このターボ圧縮機(1)は、ケーシング(2)、軸受機構(8)、羽根車(9)、及び電動機(10)を備えている。
【0034】
ケーシング(2)は、両端が閉塞された円筒状であり、円筒の軸線が水平を向くように配置されている。ケーシング(2)は、内部空間が壁部(3)によって区画されている。壁部(3)の右側空間は、羽根車(9)を収容するインペラ室(4)であり、壁部(3)よりも左側の空間は、電動機(10)を収容する空間である。インペラ室(4)の外周側には、該インペラ室(4)と連通する圧縮空間(4a)が形成されている。そして、ケーシング(2)には、冷媒回路の冷媒をインペラ室(4)に導くための吸入管(6)と、インペラ室(4)内で圧縮された圧縮冷媒を再び冷媒回路へ戻すための吐出管(7)とが接続されている。
【0035】
羽根車(9)は、複数枚の羽根によって外形が略円錐形状となるように形成されている。羽根車(9)は、電動機(10)の駆動軸(13)の一端に固定された状態で、インペラ室(4)に収容されている。
【0036】
電動機(10)は、ケーシング(2)内に配置され、羽根車(9)を駆動する。この電動機(10)は、ステータ(11)、ロータ(12)、及び駆動軸(13)を備えている。電動機(10)には、例えば磁石埋め込み型のモータ(いわゆるIMPモータ)を採用する。駆動軸(13)は、ケーシング(2)内において水平に配置され、ロータ(12)に固定されている。
【0037】
軸受機構(8)は、2つのタッチダウン軸受(14,14)と、2つの磁気軸受(20,20)とを備えている。タッチダウン軸受(14)、及び磁気軸受(20)は、駆動軸(13)をラジアル方向に支持するためのものである。なお、軸受機構(8)は、駆動軸(13)をスラスト方向に支持するタッチダウン軸受を備える場合もある。
【0038】
タッチダウン軸受(14)、及び磁気軸受(20)は、共にケーシング(2)内に固定されている。2つの磁気軸受(20)は、駆動軸(13)の左右両端側を支持するように、それぞれ、駆動軸(13)の一端側と他端側とに配置されている。また、タッチダウン軸受(14)は、駆動軸(13)の両端部を支持するように、それぞれ、磁気軸受(20,20)よりも外側に配置されている。
【0039】
タッチダウン軸受(14)は、例えば玉軸受で構成する。タッチダウン軸受(14)は、磁気軸受(20)が作動していない時に、駆動軸(13)が磁気軸受(20)に接触しないように、該駆動軸(13)を支持する。なお、タッチダウン軸受(14)は、玉軸受には限定されるものではない。
【0040】
〈磁気軸受(20)の構成〉
磁気軸受(20)には、複数の電磁石(27)が設けられ、各電磁石(27)の電磁力の合成力(合成電磁力)を駆動軸(13)に付与し、駆動軸(13)を非接触状態で支持する。
【0041】
図2は、実施形態1の磁気軸受(20)の横断面図である。磁気軸受(20)は、
図1及び
図2に示すように、いわゆるヘテロポーラ型のラジアル軸受である。磁気軸受(20)は、ステータ(21)、ギャップセンサ(26)、電磁石(27)、制御部(30)、制御モデル構築部(40)、及び電源部(50)を備えている。
【0042】
−ギャップセンサ(26)−
ギャップセンサ(26)は、ケーシング(2)に取り付けられ、磁気軸受(20)に対する駆動軸(13)のラジアル方向の位置を検出する。より具体的には、ギャップセンサ(26)は、磁気軸受(20)に対する駆動軸(13)のラジアル方向の距離(ギャップ長(G))を検出する。
【0043】
−ステータ(21)−
ステータ(21)は、コア部(22)とコイル(25)とを備えている。コア部(22)は、電磁鋼板を積層して構成され、バックヨーク部(23)と複数のティース部(24)とを備えている。バックヨーク部(23)は、ステータ(21)において略筒状の形態を有した部分である。ティース部(24)は、バックヨーク部(23)の内周面から径方向内方へ向かって突出した部分である。この例では、コア部(22)は、12個のティース部(24)を有し、これらのティース部(24)は、バックヨーク部(23)の内周に沿って等間隔(30度ピッチ)で配置されている。
【0044】
ステータ(21)では、相隣る一対のティース部(24)ごとにコイル(25)が巻回され、一対のティース部(24,24)及びコイル(25)で一つの電磁石(27)を形成している。すなわち、ステータ(21)では、6つの電磁石(27)が形成されている。それぞれのコイル(25)には、電源部(50)が接続されており、該電源部(50)から電力供給されている。なお、
図2では、各電磁石(27)を識別するため、符号の後に枝番1〜6を付してある(例えば、27-1,27-2・・・)。
【0045】
図3は、各電磁石(27)によって駆動軸(13)に作用する力を示す。磁気軸受(20)では、
図3に示すように、6つの電磁石(27-1)〜電磁石(27-6)がそれぞれで発生する力(F1,F2,F3,F4,F5,F6)を合成した支持力(F)によって駆動軸(13)を浮上させている。すなわち、磁気軸受(20)では、6つの電磁石(27-1)〜電磁石(27-6)によって駆動軸(13)の位置制御(浮上制御とも呼ぶ)が行われる。
【0046】
−電源部(50)−
電源部(50)は、各コイル(25)に電力を供給する。この電源部(50)は、各コイル(25)に印可する電圧の大きさを別個に制御できるようになっている。磁気軸受(20)は、6つのコイル(25)を有しているので、電源部(50)の出力は6つある。電源部(50)が各コイル(25)に供給する電圧の大きさは、制御部(30)によって制御される。具体的に、電源部(50)は、制御部(30)が出力した電圧指令値(V
*)に応じて出力電圧を変化させる。これにより各コイル(25)に流れる電流(i)が変化する。電源部(50)には、例えばPWM(Pulse Width Modulation)アンプが用いられ、PWM制御によって電圧を制御する。なお、本実施形態の電源部(50)は、順逆両方向に電流を流せるように構成されている。
【0047】
−制御部(30)−
制御部(30)は、マイクロコンピュータと、それを動作させるプログラムを格納したメモリデバイス(マイクロコンピュータに内蔵されるものでもよい)を含んでいる(図示は省略)。制御部(30)は、後に詳述するように、共通の制御モデルで駆動軸(13)の位置制御を行う制御領域と、電磁石(27)毎に設けた制御モデルで位置制御を行う制御領域との2つに制御領域を分けて、各電磁石(27)を制御する。
【0048】
図4は、電磁石の電流と磁束の大きさの相関関係を示す。一般的に電磁石では、磁束は電流に対して単調増加、ギャップ長に対して単調減少となる。特に、磁束が小さい場合は、電流、ギャップ長、及び磁束の大きさは、以下の(A)式に示す関係となる。
【0049】
磁束=α×(電流/ギャップ長)・・・(A)
ただし、αは定数である。
【0050】
また、磁束の大きさにかかわらず、各電磁石における磁束と電磁力は、以下の(B)式に示す関係となる。
【0051】
電磁力=β×(磁束)
2・・・(B)
ただし、βは定数である。
【0052】
磁束の大きさが、電磁石の形状と素材の物性によって決まる限界値(φS)を超えない場合は、(A)式と(B)式より、各電磁石における電流、ギャップ長、及び電磁力は、以下の(C)式に示す関係となる。
【0053】
電磁力=k×(電流/ギャップ長)
2・・・(C)
ただし、kは定数である。なお、
図5は、電流(i)と電磁力(f)の関係を示す。
【0054】
(A)式、(B)式、及び(C)式における定数α、β、及びkは、電磁石毎のばらつきが小さいため、電流、ギャップ長、電磁力の関係は、電磁石間の個体差(ばらつき)が小さい。
【0055】
一方、磁束が限界値(φS)を超えると、電流、ギャップ長、及び電磁力の関係(相関関係カーブ)は、非線形関係になる。また、相関関係カーブは電磁石毎に異なってしまう(個体差が大きくなる)。以下では、磁束が限界値(φS)を超えない、電磁力、電流、ギャップ長の範囲を不飽和領域といい、磁束が限界値(φS)を超える、電磁力、電流、ギャップ長の範囲を飽和領域という。なお、
図6は、飽和領域と不飽和領域の境界を電流とギャップ長をパラメータとして例示する。
【0056】
電磁石の上記特性に鑑み、制御部(30)は、電磁石(27)に流す電流、ステータ(21)と駆動軸(13)とのギャップ長(G)、及び電磁石(27)から生ずる電磁力の関係についての電磁石(27)間の個体差に応じて制御領域を2つに分けて、個体差がより小さい方の制御領域である不飽和領域では、各電磁石(27)に共通の制御モデルを使用して上記電磁力の制御を行う。そして、上記個体差がより大きい方の制御領域(上記不飽和領域よりも個体差がより大きな制御領域)である飽和領域では、個々の電磁石(27)に設けた制御モデルを使用して上記電磁力の制御を行う。なお、以下では、不飽和領域を第1制御領域(A1)とも呼び、飽和領域を第2制御領域(A2)とも呼ぶ。
【0057】
図7は、実施形態1の制御部(30)、及び制御モデル構築部(40)のブロック図である。制御部(30)は、
図7に示すように、位置制御器(31)、第1変換器(32)、第2変換器(33)、電流制御器(34)、及びロータ位置指令部(35)を備えている。
【0058】
ロータ位置指令部(35)は、駆動軸(13)のラジアル方向における位置(具体的には磁気軸受(20)に対する駆動軸(13)のラジアル方向の距離)の指令値(ロータ位置指令値(X
*))を生成する。ロータ位置指令部(35)は、通常の動作時は、駆動軸(13)の位置制御のためにロータ位置指令値(X
*)を生成し、後述する制御モデル構築時には、制御モデルの構築に必要な範囲のロータ位置指令値(X
*)を適宜生成する。
【0059】
位置制御器(31)は、駆動軸(13)のラジアル方向における目標位置(すなわちロータ位置指令値(X
*))と、ギャップセンサ(26)が検出した駆動軸(13)のラジアル方向の位置との偏差に応じて、駆動軸(13)を浮上させるための支持力の指令値(支持力指令値(Ftotal
*))を第1変換器(32)に出力する。なお、支持力とは、すべての電磁石(27)の電磁力の合力である。
【0060】
第1変換器(32)は、支持力指令値(Ftotal
*)に基づいて、それぞれの電磁石(27)が発生すべき電磁力(以下、浮上電磁力(fL)と呼ぶ)を求め、それぞれの電磁石(27)について、浮上電磁力(fL)の指令値(浮上電磁力指令値(fL
*))を第2変換器(33)に出力する。
【0061】
なお、第1変換器(32)には、制御モデル構築の際に、選択部(43)から磁石番号(T)が入力される。この場合は、第1変換器(32)は、入力された磁石番号(T)に対応した電磁石(制御モデル構築対象磁石と呼ぶ)を除く電磁石(27)に関する浮上電磁力指令値(fL
*)を第2変換器(33)に出力する。
【0062】
第2変換器(33)は、浮上電磁力指令値(fL
*)に基づいて各電磁石(27)のコイル(25)に流す電流(浮上電流(iL)と呼ぶ)の指令値(浮上電流指令値(iL
*))を生成し、電流制御器(34)に出力する。第2変換器(33)は、浮上電流指令値(iL
*)を求める際に、制御部(30)内に格納してある制御モデル(具体的にはプログラム内の関数や、メモリデバイスに格納されたテーブル等)を用いる。なお、制御モデル構築の際には、第2変換器(33)は、制御モデル構築対象の電磁石を除く電磁石(27)に関する浮上電流指令値(iL
*)を出力する。
【0063】
電流制御器(34)は、電流の指令値(コイル電流指令値(i
*))が各電磁石(27)に対応して入力され、それぞれのコイル電流指令値(i
*)に応じた電流が各コイル(25)に流れるように、電圧指令値(V
*)を生成して電源部(50)に出力する。詳しくは、電流制御器(34)には、通常の動作時は、全磁石に対応した浮上電流指令値(iL
*)が入力される。また、制御モデル構築時は、後述の浮上電磁石に対応した浮上電流指令値(iL
*)が入力されるとともに、制御モデル構築対象磁石に対応した、電流指令値(iT
*)が入力される。
【0064】
これにより、電流制御器(34)は、通常の動作時は、浮上電流指令値(iL
*)に応じた電流が全電磁石(27)のコイル(25)に流れるように、電圧指令値(V
*)を生成する。一方、制御モデル構築時は、浮上電磁石に対しては浮上電流指令値(iL
*)に応じた電流が各コイル(25)に流れるように、電圧指令値(V
*)を生成し、制御モデル構築対象磁石に対しては、電流指令値(iT
*)に応じた電流が各コイル(25)に流れるように、電圧指令値(V
*)を生成する。
【0065】
−制御モデル構築部(40)−
制御モデル構築部(40)は、マイクロコンピュータと、それを動作させるプログラムを格納したメモリデバイス(マイクロコンピュータに内蔵されるものでもよい)を含んでいる(図示は省略)。このマイクロコンピュータやメモリデバイスは、制御部(30)と共用してもよいし、別個に設けてもよい。
【0066】
本実施形態の制御モデル構築部(40)は、飽和領域(第2制御領域(A2))における、電磁石(27)に流す電流、ステータ(21)と駆動軸(13)とのギャップ長(G)、及び電磁石(27)から生ずる電磁力の関係をモデル化する。具体的には、制御モデル構築部(40)は、電流、ギャップ長、及び電磁力の関係を示す関数あるいはテーブルを構築する。構築した制御モデルは、制御部(30)内に格納され、第2変換器(33)が浮上電流指令値(iL
*)を生成する際に使用する。なお、不飽和領域(第1制御領域(A1))における制御モデルは、例えば設計段階等に、電流、電流、ギャップ長、及び電磁力の関係を示す関数或いはテーブルを、実験などによって構築しておいて、それを製造時に制御部(30)に予め組み込むようにする。第1制御領域(A1)では、上記個体差が比較的小さいので、第1制御領域(A1)の制御モデルは、各電磁石(27)に共通である。
【0067】
本実施形態の制御モデル構築部(40)は、
図7に示すように、電磁力算出部(41)、電流指令部(42)、選択部(43)、及び相関算出部(45)を備えている。
【0068】
選択部(43)は、制御モデル構築の対象となる1つの電磁石(27)を選択し、選択した電磁石(27)の情報となる磁石番号(T)を第1変換器(32)に出力する。
【0069】
電流指令部(42)は、制御モデル構築の対象となる電磁石(27)のコイル(25)に流す電流の指令値(電流指令値(iT
*))を生成して電流制御器(34)に出力する。なお、電流指令部(42)は、制御モデル構築の対象となる電磁石(27)の磁束が飽和領域の磁束となるように電流指令値(iT
*)を設定する。
【0070】
電磁力算出部(41)は、制御モデル構築時に電磁石(27)が発生する電磁力を算出する。電磁力を算出するために、電磁力算出部(41)には、各電磁石(27)のコイル(25)の電流値が入力されている。なお、電磁力の算出方法は、後に詳述する。
【0071】
相関算出部(45)は、電磁力算出部(41)の算出結果に基づいて、飽和領域における電磁石(27)の電流、電磁力、及びギャップ長(G)の相関関係カーブを、関数若しくはテーブルとして構築する。なお、相関算出部(45)は、ロータ位置指令部(35)を介して駆動軸(13)の位置を変更することで、飽和領域における制御モデル構築の対象の相関関係カーブを、所望範囲のギャップ長(G)に対応できるように構築する。
【0072】
〈制御モデルの構築〉
本実施形態の磁気軸受(20)では、例えば、ユーザーの指示(ユーザによる操作盤の操作等)や,プログラム制御によって、第2制御領域(A2)における制御モデル構築が行われる。なお、プログラム制御では、例えば、磁気軸受(20)の起動時、停止時、あるいはタイマーによって指示された時等に制御モデル構築を行うことが考えられる。
【0073】
図8は、実施形態1に係る制御モデル構築のフローチャートである。制御部(30)及び制御モデル構築部(40)は、
図8に示すように、ステップ(S01)からステップ(S11)までの処理を行う。
【0074】
ステップ(S01)では、選択部(43)が、制御モデル構築の対象となる電磁石(27)を選択し、選択した電磁石(27)の磁石番号(T)を第1変換器(32)に出力する。この例では、まず、磁石番号T=1の電磁石(
図2等における電磁石(27-1)が対応するものとする)が選択されたものとして説明する。
【0075】
ステップ(S02)では、ロータ位置指令部(35)が、モデル構築に必要なギャップ長(G)を選択し、その値に対応したロータ位置指令値(X
*)を生成して位置制御器(31)に出力する。
【0076】
ステップ(S03)では、制御モデル構築の対象となる電磁石(27-1)への電流を第1制御領域(A1)内に制御した状態で、その他の電磁石(以下、浮上電磁石と呼ぶ)の各コイル(25)に第1制御領域(A1)の電流を流して駆動軸(13)を浮上させる。この例では、磁石番号T=1に対応する電磁石(27-1)を除く電磁石(27-2)〜電磁石(27-6)が浮上電磁石である。そこで、電流指令部(42)は、制御モデル構築対象の電磁石(27)に対して第1制御領域(A1)内の電流指令値(iT
*)を出力する。そして、電流制御器(34)は、電流指令部(42)から送られた電流指令値(iT
*)に基づいて、制御モデル構築対象の電磁石(27-1)のコイル(25)の電流を制御する。一方、第1変換器(32)は、浮上電磁石である電磁石(27-2)〜電磁石(27-6)に関する浮上電磁力指令値(fL
*)を第2変換器(33)に出力する。それにより、第2変換器(33)は、制御部(30)内に格納してある、第1制御領域(A1)用の制御モデルを用いて浮上電磁石に対応した浮上電流指令値(iL
*)を生成し、電流制御器(34)に出力する。
【0077】
そして、電流制御器(34)は、浮上電流指令値(iL
*)に応じた電圧指令値(V
*)を出力する。その結果、所定の電圧(V)が各コイル(25)に印可されて、全電磁石(27)の各コイル(25)に電流(i)が流れる。これにより、駆動軸(13)は低負荷状態で浮上する。ここでの低負荷状態とは、制御モデルが既知である領域(この例では第1制御領域(A1))において、駆動軸(13)が磁気軸受(20)によって支持されている状態である。
【0078】
次に、ステップ(S04)では、電磁力算出部(41)が、低負荷浮上時に全電磁石(27)のコイル(25)に流れている電流値を検出する。また、電磁力算出部(41)は、低負荷浮上に要する電磁力を記憶する。
【0079】
ステップ(S05)では、電流指令部(42)が、制御モデル構築対象の電磁石(27-1)のコイル(25)に対する電流指令値(iT
*)を設定する。詳しくは、電流指令部(42)は、電磁石(27-1)の磁束の大きさが飽和領域(第2制御領域(A2))に入るように、電流指令値(iT
*)を設定する。
【0080】
次に、ステップ(S06)では、制御モデル構築対象の電磁石、及び浮上電磁石に電流を流す。具体的には、第2変換器(33)が、浮上電磁石に対して浮上電流指令値(iL
*)を出力し、電流指令部(42)が、制御モデル構築対象の電磁石(27)に対して電流指令値(iT
*)を出力する。
【0081】
そして、電流制御器(34)は、電流指令部(42)から送られた電流指令値(iT
*)に基づいて、制御モデル構築対象の電磁石(27-1)のコイル(25)の電流を制御する。一方、電流制御器(34)は、浮上電流指令値(iL
*)に応じて、浮上電磁石である電磁石(27-2)〜電磁石(27-6)に不飽和領域の電流がコイル(25)に流れるように制御する。これにより、駆動軸(13)は、強制負荷浮上の状態となる。
図9は、制御モデル構築時における各電磁石の電磁力の関係を例示する。
【0082】
次に、ステップ(S07)では、浮上電磁石の電磁力(既知の制御モデルに基づいて算出可能)を基準として、制御モデル構築対象の電磁石(27)の飽和領域における電磁力を求める。具体的には、電磁力算出部(41)が、浮上電磁石の強制負荷浮上時の合成電磁力(ステップ(S06)参照)と、低負荷浮上時の合成電磁力(ステップ(S04)において記憶された値)との差から、制御モデル構築対象の電磁石(27-1)の電磁力(f1)を算出する。
【0083】
すなわち、本実施形態では、駆動軸(13)を低負荷状態で浮上させる場合の電磁力を第1制御領域(A1)の制御モデルに基づいて予め算出しておいて、この予め算出した電磁力と、強制負荷浮上時の浮上電磁石の合成電磁力との差を、第2制御領域(A2)で制御されている電磁石(27)が発生する電磁力として求めるのである。
【0084】
ステップ(S08)では、制御モデル構築に必要な全ての電流値について、制御モデル構築対象の電磁石(27-1)の電磁力を求めたかどうかを判定する。必要な全ての電流値について電磁力を求め終えた場合にはステップ(S09)に移行する。一方、他の電流値について電磁力を求める必要があれば、ステップ(S05)に戻る。ステップ(S05)では、所望の電流指令値(iT
*)を設定して、制御モデル構築対象の電磁石(27-1)の電流を変化させる。
【0085】
ステップ(S09)では、制御モデル構築に必要な全てのギャップ長(G)について、制御モデル構築対象の電磁石(27-1)の電磁力を求めたかどうかを判定する。必要なすべてのギャップ長(G)において、電流と電磁力との関係が得られていれば、ステップ(S10)に移行し、得られていなければ、ステップ(S02)に戻って、必要なギャップ長(G)となるようにロータ位置指令値(X
*)を設定する。
【0086】
ステップ(S10)では、相関算出部(45)が、制御モデル構築対象の電磁石(27-1)について、電流、ギャップ長、及び電磁力の相関関係カーブを求める。相関算出部(45)は、相関関係カーブを例えば関数若しくはテーブルとして制御部(30)内に格納する。
【0087】
そして、ステップ(S11)では、すべての電磁石(27)に対して飽和領域の制御モデルが構築されたかどうかを判定する。全ての電磁石(27)に対して飽和領域の制御モデルが構築されていれば、制御モデル構築を終了する。一方、飽和領域の制御モデルが構築されていない電磁石(27)がある場合には、ステップ(S01)に戻って、残る電磁石(27)を制御モデル構築対象の電磁石(27)として適宜選択する。
【0088】
〈磁気軸受における位置制御〉
磁気軸受(20)では、不飽和領域(第1制御領域(A1))用の制御モデルとして、各電磁石(27)に共通の制御モデルが制御部(30)に予め格納されている。また、上記の制御モデル構築によって、制御部(30)には、飽和領域(第2制御領域(A2))用の制御モデルとして、電磁石(27)毎の制御モデルが格納されている。
【0089】
磁気軸受(20)の起動後は、例えば、第1変換器(32)で生成された浮上電磁力指令値(fL
*)が第1制御領域(A1)に対応する場合には、第2変換器(33)は、各電磁石(27)に共通の制御モデルを用いて浮上電流指令値(iL
*)を生成する。また、第1変換器(32)で生成された浮上電磁力指令値(fL
*)が第2制御領域(A2)に対応する場合には、第2変換器(33)は、電磁石(27)毎に設定された制御モデルを用いて浮上電流指令値(iL
*)を生成する。これにより、不飽和領域(第1制御領域(A1))、及び飽和領域(第2制御領域(A2))の何れの領域においても駆動軸(13)の位置制御が可能になる。
【0090】
〈本実施形態における効果〉
以上の通り、本実施形態によれば、電磁力の個体差がより大きな領域(飽和領域)においても、磁気軸受の位置制御が可能になる。すなわち、本実施形態によれば、電磁石を大型化することなく制御領域の拡大を図ることができる。
【0091】
また、制御モデル構築対象の電磁石(27)が発生する電磁力の算出値を、予め求めた低負荷状態における電磁力を利用して求めるようにしたので、飽和領域における電磁力をより正確に求めることができる。
【0092】
また、第2制御領域(A2)の制御モデル構築の際に、磁気軸受(20)内の電磁石(27)を電磁力測定の基準に用いるので、制御モデル構築のために特別な測定器を用意する必要がない。
【0093】
また、本実施形態の磁気軸受(20)は、制御モデル構築部(40)を備えているので、例えば磁気軸受(20)を備えた装置の設置後に、再度、制御モデルの構築を行えば、電磁石(27)の電磁力に経時変化があったとしても、正確な位置制御が可能になる。
【0094】
また、電磁石毎に制御モデルを構築する飽和領域では、不飽和領域のモデル構築よりも、より多くの電磁力のデータが必要となる。そのため、測定器を用いて飽和領域の電磁力を測定すると、多大な工数が必要になる。しかしながら、本実施形態では、制御モデル構築部(40)によって、概ね自動的に制御モデルの構築ができる。すなわち、本実施形態では、測定器を用いて飽和領域の電磁力を測定するよりも、より容易に制御モデルの構築を行うことが可能になる。
【0095】
《実施形態1の変形例》
なお、制御モデル構築には、浮上電磁石に加え、既知の外乱(例えば重力)を利用することも可能である。
【0096】
具体的には、第1変換器(32)において、浮上電磁石の浮上電磁力(fL)と、既知の外乱の力(以下、外乱力)との合力が支持力(Ftotal)と等価になるように、浮上電磁力指令値(fL
*)を生成する。また、電磁力算出部(41)では、制御モデル構築対象の電磁石(27)の飽和領域における電磁力を算出する際に、浮上電磁石の合成電磁力から、浮上電磁石によって駆動軸(13)を浮上させるのに要する電磁力及び上記外乱力を差し引くようにする。
【0097】
これにより、重力等の既知の外乱力を制御モデル構築に利用することが可能になり、より広い電流の範囲、ギャップ長の範囲について制御モデルの構築が可能となる。
【0098】
《発明の実施形態2》
図10は、実施形態2の磁気軸受(20)の電磁力を示す。この例は、24個の電磁石(27)を有した磁気軸受であり、飽和領域(第2制御領域(A2))では、磁気軸受(20)を構成する電磁石(27)の一部の電磁石(27)であって、2つ以上の電磁石(27)からなる一群の電磁石(以下、電磁石群と呼ぶ)毎に設けた制御モデルを使用して上記電磁力の制御を行う。この例では2つの電磁石を1つの群として、1つの群に1つの制御モデルを対応させる。
【0099】
本実施形態の制御モデル構築部(40)では、
図10に示すように、制御モデル構築対象の電磁石群における一方の電磁石である電磁石(27-1)の電磁力1と、該電磁石(27-1)と対になる電磁石(27-4)の電磁力2とのベクトル和が、浮上電磁石の電磁力の合成電磁力に等しくなるように位置制御を行って、電磁力1と電磁力2のベクトル和を求める。
【0100】
この場合、制御モデル構築対象の電磁石群における各電磁石(27-1,27-4)には、飽和領域(第2制御領域(A2))の磁束となるように電流を流す。また、浮上電磁石に対しては、不飽和領域(第1制御領域(A1))の磁束となるように電流を流す。そして、実施形態1と同様にして、相関算出部(45)において、電磁石群毎に制御モデルを構築する。これにより、電磁力の個体差がより大きな制御領域(飽和領域)でも、磁気軸受(20)の位置制御が可能になる。
【0101】
なお、電磁石群を構成する電磁石の数は例示であり、2つには限定されない。
【0102】
《発明の実施形態3》
実施形態1のように、不飽和領域で制御した電磁石(浮上電磁石)の電磁力を基準にすると、モデル構築できる電磁力の最大値は、浮上電磁石の電磁力の合成電磁力に制約される。
【0103】
しかしながら、実施形態1のようにして飽和領域の制御モデルを構築した後は、その飽和領域用の制御モデルを用いれば、更に、モデル構築できる電磁力の範囲、すなわち制御範囲を拡大することができる。具体的には、まず、既に構築した飽和領域(第2制御領域(A2))または不飽和領域(第1制御領域(A1))の制御モデルによって浮上電磁石を第2制御領域(A2)または第1制御領域(A1)において制御しつつ、第2制御領域(A2)よりも大きな磁束を発生する制御領域(第3制御領域(A3)とする)で、制御モデル構築対象の電磁石(27)を動作させる。
【0104】
そして、制御モデル構築部(40)は、実施形態1と同様にして、ギャップ長(G)が所望の値となるように位置制御を行って、第3制御領域(A3)における制御モデル構築対象の電磁石(27)の電磁力を求める。このような電磁力の測定を、第3制御領域(A3)におけるモデル構築に必要な、全ての電流値、及びギャップ長(G)について、個々の電磁石(27)若しくは所定の数の電磁石群毎に行えば、拡大した制御領域における制御モデルを得ることが可能になる。
【0105】
《その他の実施形態》
なお、第2制御領域(A2)にかかる制御モデルの構築は、例えば工場出荷時などに行うようにし、構築した制御モデルを制御部(30)に記憶させるようにしてもよい。この場合は、磁気軸受(20)内に制御モデル構築部(40)を設けるのではなく、例えば、製造装置(或いは製造ライン)の一部として制御モデル構築部(40)を構成してもよい。
【0106】
また、磁気軸受(20)を構成する電磁石の数は例示である。
【0107】
また、磁気軸受(20)の適用範囲はターボ圧縮機には限定されない。
【0108】
また、制御モデルに用いる相関関係は、電磁石(27)に流す電流(i)、ギャップ長(G)、及び電磁力の3つのパラメータの組み合わせには限定されない。相関関係の例としては、電磁石(27)に流す電流(i)、電磁石(27)に流す鎖交磁束数(ψ)、ステータ(21)と駆動軸(13)とのギャップ長(G)、電磁石(27)の磁気エネルギー(Wm)、電磁石(27)における磁気随伴エネルギー(Wm’)、電磁石(27)から生ずる電磁力、及びこれらを用いて導出される変数のうちの2つ以上の変数の間の相関関係が挙げられる。
【0109】
相関関係があるこれらのパラメータのうち、鎖交磁束数(ψ)は、電磁石(27)のコイル(25)に印加した電圧から該コイル(25)の電圧降下を差し引いた電圧を時間積分した値を基に求めることができる。なお、コイル(25)印可する電圧に比べてコイル(25)の電圧降下が小さい場合には、電磁石(27)のコイル(25)に印加した電圧を時間積分した値を基に鎖交磁束数(ψ)を求めてもよい。
【0110】
また、ステータ(21)のコア部(22)を複数のブロックを結合して形成してもよい。
図11は、コア部(22)の分割例を示す。
図11の例では、コア部(22)は、6個のコアブロック(22a)がバックヨーク部(23)において結合されて構成されている。このような分割構造では、電磁石(27)の特性ばらつきが大きくなりがちであるが、上記の各実施形態の制御を行うことで、確実な位置制御が可能にある。すなわち、上記の制御は分割形式のコア部(22)を有した磁気軸受(20)に適用すると有用である。