特許第6241554号(P6241554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6241554積層モジュールおよび積層モジュールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241554
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】積層モジュールおよび積層モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20171127BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   H05K3/46 Q
   H05K3/46 G
   H05K1/02 E
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-550097(P2016-550097)
(86)(22)【出願日】2015年9月10日
(86)【国際出願番号】JP2015075675
(87)【国際公開番号】WO2016047446
(87)【国際公開日】20160331
【審査請求日】2016年12月7日
(31)【優先権主張番号】特願2014-196768(P2014-196768)
(32)【優先日】2014年9月26日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-51592(P2015-51592)
(32)【優先日】2015年3月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多胡 茂
(72)【発明者】
【氏名】品川 博史
(72)【発明者】
【氏名】若林 祐貴
【審査官】 齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−303202(JP,A)
【文献】 特開2004−327721(JP,A)
【文献】 特開2004−153084(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/125852(WO,A1)
【文献】 特開2014−107514(JP,A)
【文献】 特開2003−86949(JP,A)
【文献】 特開2011−159961(JP,A)
【文献】 特開2012−195468(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/137548(WO,A1)
【文献】 特開2003−303938(JP,A)
【文献】 特開2004−259984(JP,A)
【文献】 特開2014−86617(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/046829(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/117872(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/125851(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/054387(WO,A1)
【文献】 特開2010−21423(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/065035(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/103530(WO,A1)
【文献】 特開2014−107515(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/083908(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K1/00−3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を主成分とする複数の絶縁体層が積層された積層絶縁体と、
前記積層絶縁体の内部に、前記絶縁体層に沿って配置される導体パターンと、
前記導体パターンに接続される内蔵部品と、
前記積層絶縁体の表面に搭載される搭載部品と、
前記積層絶縁体の表面に形成され、前記搭載部品のバンプが超音波接合されるパッドと、
前記パッドと前記内蔵部品との間に形成され、前記絶縁体層の積層方向に視て、前記パッドおよび前記内蔵部品を覆う範囲に広がる補助導体パターンと、
前記補助導体パターンに対して厚み方向に最も近接する位置に設けられ、平面視で、前記補助導体パターンに重なり、且つ前記補助導体パターンの外側領域に亘るように形成される近接導体パターンと、
平面視で、前記補助導体パターンの外側の領域に設けられ、前記近接導体パターンと少なくとも一部が重なる平面導体パターンと、
を備える、
積層モジュール。
【請求項2】
前記補助導体パターンは前記導体パターンの一部である、請求項1に記載の積層モジュール。
【請求項3】
前記補助導体パターンはグランド導体パターンである、請求項1または2に記載の積層モジュール。
【請求項4】
前記内蔵部品の数は複数であり、前記補助導体パターンは前記絶縁体層の積層方向に視て、前記複数の内蔵部品を連続して覆う、請求項1から3のいずれかに記載の積層モジュール。
【請求項5】
前記補助導体パターンの厚みは、他の前記導体パターンの厚みよりも厚い、請求項1から4のいずれかに記載の積層モジュール。
【請求項6】
前記平面導体パターンは浮き電極パターンである、請求項1から5のいずれかに記載の積層モジュール。
【請求項7】
熱可塑性樹脂を主成分とする複数の絶縁体層が積層された積層絶縁体と、
前記積層絶縁体の内部に、前記絶縁体層に沿って配置される導体パターンと、
前記導体パターンに接続される内蔵部品と、
前記積層絶縁体の表面に搭載される搭載部品と、
を備える、積層モジュールの製造方法であって、
前記導体パターンが形成された絶縁体基材を用意する工程と、
前記搭載部品のバンプが超音波接合されるパッドと前記内蔵部品との間に、補助導体パターンを配置し、前記補助導体パターンに対して厚み方向に最も近接する位置に、平面視で、前記補助導体パターンに重なり、且つ前記補助導体パターンの外側領域に亘るように近接導体パターンを配置し、平面視で、前記補助導体パターンの外側の領域に、前記近接導体パターンと少なくとも一部が重なる平面導体パターンを配置し、前記内蔵部品とともに前記絶縁体基材を積層し、加熱プレスする工程と、
前記搭載部品を前記積層絶縁体の表面に形成された前記パッドに超音波接合により接合する工程と、
を有する積層モジュールの製造方法。
【請求項8】
前記絶縁体基材に内蔵部品収納部を形成する工程と、
前記内蔵部品を前記内蔵部品収納部に配置する工程と、
を更に有する、請求項に記載の積層モジュールの製造方法。
【請求項9】
前記絶縁体基材に層間接続導体形成用孔を形成する工程と、
前記層間接続導体形成用孔に導電性ペーストを充填する工程と、
前記層間接続導体形成用孔に充填された導電性ペーストに前記内蔵部品の端子を接触させた状態で加熱プレスすることにより、前記導電性ペーストによる層間接続導体と前記内蔵部品とを接合する工程と、を更に有する、請求項またはに記載の積層モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層絶縁体の内部に導体パターンおよび部品を備える積層モジュールおよびその製造方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
積層絶縁体の内部に導体パターンおよび部品を備える従来の積層モジュール用基板としては、例えば特許文献1に記載の基板が知られている。特許文献1の積層モジュール用基板は、熱可塑性樹脂からなる積層絶縁体と、この積層絶縁体の内部に、チップ状の内蔵部品、配線導体およびビア導体を備え、積層絶縁体の主面に対して垂直方向から視て、内蔵部品を囲む枠状電極を更に備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2012/046829号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示される積層モジュール用基板では、上記枠状電極の存在により、加熱プレスの際に、積層絶縁体の内部に設けられる内蔵部品の配置位置であるキャビティ方向へ樹脂が必要以上に流動されることが抑制される。
【0005】
しかし、積層絶縁体のキャビティへ積層方向に樹脂が流動することは抑制できない。このような、絶縁基材の積層方向に樹脂が流動すると、積層絶縁体内部の部品の接続部が接続不良となるおそれが高まる。
【0006】
また、上記樹脂の流動によって、積層絶縁体の表面が変形すれば、積層絶縁体の表面に搭載される部品(搭載部品)の接合不良が生じやすい。
【0007】
一方、積層絶縁体の絶縁体層を樹脂シートで構成する場合、積層絶縁体の剛性はセラミックに比べて低いので、積層絶縁体に搭載部品を超音波接合する際に、接合部の信頼性を高め難いという問題もある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、熱可塑性樹脂を主成分とする絶縁体層の熱圧着による内蔵部品の接合部の安定性を高めることにある。また、本発明の他の目的は、積層絶縁体の表面に対する搭載部品の接合部の安定性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の積層モジュールは
熱可塑性樹脂を主成分とする複数の絶縁体層が積層された積層絶縁体と、
前記積層絶縁体の内部に、前記絶縁体層に沿って配置される導体パターンと、
前記導体パターンに接続される内蔵部品と、
前記積層絶縁体の表面に搭載される搭載部品と、
前記積層絶縁体の表面に形成され、前記搭載部品のバンプが超音波接合されるパッドと、
前記パッドと前記内蔵部品との間に形成され、前記絶縁体層の積層方向に視て、前記パッドおよび前記内蔵部品を覆う範囲に広がる補助導体パターンと、を備える、
ことを特徴とする。
【0010】
上記構成により、内蔵部品の実装部の近傍における樹脂の流動が補助導体パターンで抑制されるので、内蔵部品の接合部の安定性が高い。また、パッド直下の剛性が高まるので、搭載部品の接合部の安定性が高い。
【0011】
(2)上記(1)において、前記補助導体パターンは前記導体パターンの一部であることが好ましい。これにより、補助導体パターンを備える絶縁体層を他の導体パターンを備える絶縁体層と同様に、容易に構成できる。
【0012】
(3)上記(1)または(2)において、前記補助導体パターンはグランド導体パターンであることが好ましい。これにより、内蔵部品のシールド効果、搭載部品のシールド効果、および内蔵部品と搭載部品との間のアイソレーション効果が得られる。
【0013】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかにおいて、前記内蔵部品の数は複数であり、前記補助導体パターンは前記絶縁体層の積層方向に視て、前記複数の内蔵部品を連続して覆うことが好ましい。これにより、複数の内蔵部品の配置位置を含む広い範囲に亘って樹脂の流動が抑制される。また、複数の内蔵部品の配置位置を含む広い範囲に亘って、搭載部品の搭載位置の剛性が高まる。
【0014】
(5)上記(1)〜(4)のいずれかにおいて、前記補助導体パターンの厚みは他の前記導体パターンの厚みよりも厚いことが好ましい。このことにより、補助導体パターンの剛性が高まり、加熱プレスで積層絶縁体を構成する際に、補助導体パターンの変形は小さくなって、補助導体パターンと、この補助導体パターンに近接する他の導体との間隔が狭くなったり、短絡したりするなどの不具合が防止される。
【0015】
(6)上記(1)〜(5)のいずれかにおいて、前記補助導体パターンに対して厚み方向に最も近接する位置に設けられ、平面視で、前記補助導体パターンに重なり、且つ前記補助導体パターンの外側領域に亘るように形成される近接導体パターンと、平面視で、前記補助導体パターンの外側の領域に設けられ、前記近接導体パターンと少なくとも一部が重なる平面導体パターンと、をさらに含むことが好ましい。このことにより、加熱プレスで積層絶縁体を構成する際の、補助導体パターンに近接する他の導体の変形が抑制される。そのため、補助導体パターンと、この補助導体パターンに近接する近接導体パターンとの間隔が狭くなったり、短絡したりするなどの不具合が防止される。
【0016】
(7)前記平面導体パターンは浮き電極パターンであることが好ましい。このことにより、加熱プレスで積層絶縁体を構成する際の平面導体パターンの変形が大きくても、また、導体パターンと平面導体パターンとの間隔が狭くなっても、電気的特性のばらつきの少ない積層モジュールが得られる。
【0017】
)本発明の積層モジュールの製造方法は、
熱可塑性樹脂を主成分とする複数の絶縁体層が積層された積層絶縁体と、
前記積層絶縁体の内部に、前記絶縁体層に沿って配置される導体パターンと、
前記導体パターンに接続される内蔵部品と、
前記積層絶縁体の表面に搭載される搭載部品と、
を備える、積層モジュールの製造方法であって、
前記導体パターンが形成された絶縁体基材を用意する工程と、
前記搭載部品のバンプが超音波接合されるパッドと前記内蔵部品との間に、補助導体パターンを配置し、前記内蔵部品とともに前記絶縁体基材を積層し、加熱プレスする工程と、
前記搭載部品を前記積層絶縁体の表面に形成された前記パッドに超音波接合により接合する工程と、
を有することを特徴とする。
【0018】
上記方法により、内蔵部品の接合部の安定性および搭載部品の接合部の安定性が高い積層モジュールが得られる。
【0019】
)上記()において、
前記絶縁体基材に内蔵部品収納部を形成する工程と、
前記内蔵部品を前記内蔵部品収納部に配置する工程と、
を更に有することが好ましい。
【0020】
上記方法により、積層絶縁体内への内蔵部品の埋設が容易となり、不要な樹脂の流動が抑制され、内蔵部品の接合部の安定性をより確保できる。
【0021】
10)上記()または()において、
前記絶縁体基材に層間接続導体形成用孔を形成する工程と、
前記層間接続導体形成用孔に導電性ペーストを充填する工程と、
前記層間接続導体形成用孔に充填された導電性ペーストに前記内蔵部品の端子を接触させた状態で加熱プレスすることにより、前記層間接続導体と前記内蔵部品とを接合する工程と、を更に有することが好ましい。
【0022】
上記方法により、層間接続導体に対して内蔵部品の端子を接合する場合でも、その接合部の安定性を確保できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、熱可塑性樹脂を主成分とする絶縁体層の熱圧着による内蔵部品の接合部の安定性が高い積層モジュールが得られる。また、積層絶縁体の表面に対する搭載部品の接合部の安定性が高い積層モジュールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は第1の実施形態に係る積層モジュール用基板101の分解断面図である。
図2図2は積層モジュール用基板101の断面図である。
図3図3は、第2の実施形態に係る積層モジュール201を構成する、積層絶縁体10および搭載部品61の断面図である。
図4図4(A)は第2の実施形態に係る積層モジュール201の断面図であり、図4(B)は積層モジュール201の底面図である。
図5図5は積層モジュール201の外観斜視図である。
図6図6は第3の実施形態に係る積層モジュール用基板の比較例としての積層モジュール基板103CEの部分断面図である。
図7図7(A)は第3の実施形態に係る積層モジュール用基板103の分解断面図である。図7(B)は積層モジュール用基板103の断面図である。
図8図8(A)は第4の実施形態に係る積層モジュール用基板104の部分断面図である。図8(B)は比較例としての積層モジュール基板104CEの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付す。第2の実施形態では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点について説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0026】
《第1の実施形態》
図1は第1の実施形態に係る積層モジュール用基板101の分解断面図である。図2は積層モジュール用基板101の断面図である。この積層モジュール用基板101は、絶縁体層11,12,13,14,15が積層された積層絶縁体10を備える。積層絶縁体10の内部には、絶縁体層11〜15に沿って配置される複数の導体パターンと、これら導体パターンのうち所定の導体パターンに接続される内蔵部品51,52とを備える。内蔵部品51,52は例えば、ランド(Land)型端子を有するチップキャパシタである。
【0027】
絶縁体層11〜15の材料は例えば、液晶ポリマー(LCP)やポリイミド(PI)等の熱可塑性樹脂を主成分とする材料である。
【0028】
図1に表れるように、絶縁体層11の上面には、積層絶縁体10の表面に搭載される搭載部品のバンプが超音波接合されるパッド31〜36が形成される。また、絶縁体層12の上面には、補助導体パターン30が形成される。絶縁体層13の上面には、導体パターン21,22,23,24が形成される。また、絶縁体層14の上面には、導体パターン25,26が形成される。
【0029】
絶縁体層12には層間接続導体47が形成される。絶縁体層13には層間接続導体41〜46が形成される。絶縁体層14には内蔵部品収納部(キャビティ)CA1,CA2が形成される。
【0030】
上記補助導体パターン30は、積層絶縁体10の表面に搭載される搭載部品のバンプが超音波接合されるパッドと内蔵部品51,52との間に形成される。この補助導体パターン30は、絶縁体層11〜15の積層方向に視て、パッド31〜36および内蔵部品51,52を覆う範囲に広がる。また、この補助導体パターン30は、層間接続導体47を介して導体パターン24と導通する。
【0031】
上記積層モジュール用基板は例えば次の手順で製造される。
【0032】
(1)導体パターンが形成された熱可塑性樹脂を主成分とする絶縁体基材を用意する。例えば、片面に銅箔が貼られた片面銅貼り絶縁体シートを用い、このシートの銅箔を上記所定の導体パターンになるようにパターンニングする。
【0033】
(2)絶縁体層12,13に相当する絶縁体基材の所定位置にレーザー加工等により貫通孔を開け、それら貫通孔に導電性ペーストを充填する。これらの導電性ペーストが後に層間接続導体41〜47となる。
【0034】
(3)絶縁体層14に相当する絶縁体基材に、内蔵部品51,52を収納する内蔵部品収納部CA1,CA2を形成する。
【0035】
(4)内蔵部品51,52を内蔵部品収納部CA1,CA2に配置する。例えば、図1に示される絶縁体層15に相当する絶縁体基材の所定位置に内蔵部品51,52を載置し、この絶縁体基材の上面に絶縁体層14に相当する絶縁体基材を重ねる。または、例えば、絶縁体層13に相当する絶縁体基材の層間接続導体42,43,44,45に内蔵部品51,52を仮接合し、絶縁体層13,14,15に相当する絶縁体基材を重ねる。
【0036】
(5)搭載部品61のバンプ71〜76が超音波接合されるパッド31〜36と内蔵部品51,52との間に、補助導体パターン30を配置し、絶縁体層11〜15に相当する絶縁体基材を積層し、加熱プレスする。このことにより、絶縁体層11〜15および内蔵部品51,52が加熱プレスにより熱圧着される。
【0037】
上述のとおり、絶縁体層11〜15および内蔵部品51,52が積層され、加熱プレスされることで、図2に示される積層絶縁体10が構成される。この加熱プレスの際に、内蔵部品51,52の実装部の近傍における樹脂の流動が補助導体パターン30で抑制されるので、内蔵部品51,52の接合部の安定性は高い。特に、内蔵部品51,52を配置するために内蔵部品収納部CA1,CA2を設けた場合に、それら内蔵部品収納部CA1,CA2への樹脂の流動が生じやすいが、上記補助導体パターン30の存在により、上記樹脂の流動は抑制される。仮に、補助導体パターン30が無い場合に、加熱プレス時の樹脂の流動によって、内蔵部品51,52が傾きやすい。内蔵部品51,52が傾くと、内蔵部品51,52の端子と層間接続導体42,43,44,45との接合面が不安定となる。また、内蔵部品51,52の端子が接合する層間接続導体42,43,44,45となる導電性ペーストが流出し、短絡の原因となるおそれもある。上記補助導体パターン30を設けることにより、内蔵部品51,52の接合部の安定性が確保される。
【0038】
なお、内蔵部品51,52の端子と導体パターンとの接続には層間接続導体を用いないで、はんだにより接合してもよい。
【0039】
《第2の実施形態》
図3は、第2の実施形態に係る積層モジュール201を構成する、積層絶縁体10および搭載部品61の断面図である。図4(A)は第2の実施形態に係る積層モジュール201の断面図であり、図4(B)は上記積層モジュール201の底面図である。また、図5は積層モジュール201の外観斜視図である。
【0040】
本実施形態の積層モジュール201は、第1の実施形態に示される積層モジュール用基板101と、搭載部品61とで構成される。
【0041】
搭載部品61は例えばRF−ICや所定の信号処理を行うプロセッサ等である。図3に表れるように、搭載部品61は、その下面に2列のはんだバンプ71〜76等を備えるチップ部品である。この搭載部品61は積層絶縁体10の上面に形成されるパッド31〜36に対して超音波接合される。
【0042】
図4(A)(B)に表れるように、補助導体パターン30は、積層絶縁体10の上面のパッド31〜36と内蔵部品51,52との間に形成され、絶縁体層11〜15の積層方向に視て、パッド31〜36および内蔵部品51,52を覆う範囲に広がる。この補助導体パターン30の存在により、パッド31〜36直下の剛性が高まり、搭載部品61を超音波接合する際に、パッド31〜36およびバンプ71〜76の接合部に超音波エネルギーが効率良く印加される。その結果、搭載部品61の接合部に高い安定性が得られる。
【0043】
図4(B)に表れるように、導体パターン21〜24に繋がる層間接続導体のうち、内蔵部品51,52に接合する層間接続導体以外の層間接続導体41,46,48,49は、平面視でパッド31〜36と重ならないように形成される。このことにより、搭載部品61の搭載面の平坦性を確保できる。より好ましくは、層間接続導体41,46,48,49は補助導体パターン30の平面視での外側に形成される。このことにより、搭載部品61の搭載面の平坦性をより確保できる。また、層間接続導体41,46,48,49が平面視で補助導体パターン30に重なることに起因して補助導体パターン30の平坦性が損なわれることを防止することができるので、搭載部品61を超音波接合する際に、パッド31〜36およびバンプ71〜76の接合部に超音波エネルギーを効率良く印加できる。
【0044】
本実施形態では、上記補助導体パターン30はグランド導体パターンである。これにより、内蔵部品51,52および搭載部品61が電界シールドされる。また、内蔵部品51,52と搭載部品61との間のアイソレーションが高まる。例えば、積層絶縁体内に構成される回路に搭載部品61からの輻射ノイズが伝搬することが抑制される。
【0045】
なお、積層絶縁体10のパッド31〜36側にはんだボールなどの超音波接合時に溶融する接合材が配置されていれば、搭載部品61はランド(Land)型の端子を有するチップ部品でもよい。
【0046】
以上に示した積層モジュールは高周波部品に限らない。例えば搭載部品61がCMOSイメージセンサであり、このイメージセンサと積層絶縁体10とで構成されるカメラモジュールにも同様に適用できる。また、積層絶縁体10に貫通孔が形成され、積層絶縁体10の裏面側(レンズから離れる側)にイメージセンサが搭載される構造にも同様に適用できる。この場合、イメージセンサが傾いた状態で接合されることによる、カメラモジュールとしての機能低下を抑制することができる。
【0047】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、補助導体パターンと他の導体パターンとの間隔を確保する構造について示す。
【0048】
図6は、本発明に係り、第3の実施形態に係る積層モジュール用基板と比較対照するための積層モジュール基板103CEの部分断面図である。この積層モジュール基板103CEの基本的な構成は第1の実施形態で、図2等に示した積層モジュール基板101と同じである。
【0049】
図6に示す比較例は、加熱プレスで積層絶縁体10を構成する際に、補助導体パターン30の変形により、補助導体パターン30と、この補助導体パターン30に近接する導体パターン21との間隔が破線の楕円Aで示す部分で狭くなった例である。
【0050】
図6に示すように、導体パターン21は、補助導体パターン30に対して厚み方向に最も近接する位置で、且つ平面視で、補助導体パターン30に重なっており、且つ、補助導体パターン30の外側領域にも亘るように形成されている。
【0051】
複数の絶縁体層が積層され、加熱プレスされる際に、剛性の高い層間接続導体42の付近で導体パターン21が局部的に変形し、湾曲する場合がある。この場合、層間接続導体42の付近(図6中、破線の楕円Aで示す部分)で、導体パターン21と補助導体パターン30との間隔が狭くなる。この間隔が狭くなりすぎると、導体パターン21と補助導体パターン30とが短絡するおそれが高まる。
【0052】
図7(A)は第3の実施形態に係る積層モジュール用基板103の分解断面図である。図7(B)は積層モジュール用基板103の断面図である。この積層モジュール用基板103は、絶縁体層11,12,13,14,15が積層された積層絶縁体10を備える。積層絶縁体10の内部には、絶縁体層11〜15に沿って配置される複数の導体パターンと、これら導体パターンのうち所定の導体パターンに接続される内蔵部品51,52とを備える。積層絶縁体10の上面に形成されるパッド31〜36に対して搭載部品(図3参照)61が超音波接合される。
【0053】
積層モジュール基板103の補助導体パターン30の厚みは、第1の実施形態で図1図2等に示した積層モジュール基板101の補助導体パターン30より厚い。例えば、補助導体パターン30の厚さは導体パターン21の厚さの1.5倍以上である。そのため、補助導体パターン30の剛性は高い。
【0054】
図6比較例と本実施形態の図7(B)とを比較すると明らかなように、本実施形態に係る積層モジュール用基板103においては、補助導体パターン30の剛性が高いことにより、加熱プレスを行っても導体パターン21は層間接続導体42付近で局部的に変形しにくい。したがって、層間接続導体42の付近(図7(B)中Aで示す部分)で、導体パターン21と補助導体パターン30との間隔が狭くなりにくい。
【0055】
また、本実施形態に係る積層モジュール用基板103を用いた積層モジュールによれば、この厚みが厚い補助導体パターン30の存在により、パッド31〜36直下の剛性が高まり、搭載部品をパッド31〜36にバンプを介して超音波接合する際に、パッド31〜36およびバンプの接合部に超音波エネルギーがさらに効率良く印加される。その結果、搭載部品61の接合部にさらに高い安定性が得られる。
【0056】
《第4の実施形態》
第4の実施形態では、第3の実施形態とは異なる、補助導体パターンと他の導体パターンとの間隔を確保する構造について示す。
【0057】
図8(A)は第4の実施形態に係る積層モジュール用基板の積層モジュール基板104の部分断面図である。図8(B)は本発明に係り、第4の実施形態に係る積層モジュール用基板と比較対照するための積層モジュール基板104CEの部分断面図である。この積層モジュール基板104,104CEの基本的な構成は第1の実施形態で、図2等に示した積層モジュール基板101と同じである。導体パターン21は、平面視で、補助導体パターン30に重なっており、且つ、補助導体パターン30の外側領域にも亘るように形成されている。
【0058】
図8(B)に示す例では、加熱プレスで積層絶縁体10を構成する際に、補助導体パターン30の存在する部分と存在しない部分とで圧力差が生じ、補助導体パターン30に近接する導体パターン21の変形により、補助導体パターン30の外縁(図8(B)中、破線の楕円Aで示す部分)と導体パターン21との間隔が狭くなる。この間隔が狭くなりすぎると、導体パターン21と補助導体パターン30との短絡のおそれが高まる。
【0059】
本実施形態の積層モジュール用基板104において、導体パターン21は本発明に係る「近接導体パターン」の一例である。積層モジュール用基板104において、平面導体パターン37は、平面視で補助導体パターン30の外側の領域に設けられ、導体パターン21と少なくとも一部が重なる。このことにより、図8(A)に表れているように、導体パターン21に平面導体パターン37が対向しており、それにより補助導体パターン30の存在する部分と存在しない部分との圧力差が生じにくくなるので、加熱プレスで積層絶縁体を構成する際、導体パターン21の変形が抑制される。そのため、補助導体パターン30の外縁(図8(A)中、破線の楕円Aで示す部分)と導体パターン21との間隔が極端に狭くはならない。したがって、補助導体パターン30と導体パターン21との短絡が防止される。
【0060】
なお、補助導体パターン30の存在する部分と存在しない部分とで圧力差は、補助導体パターン30の厚みが厚いほど生じやすい。したがって、第3の実施形態の積層モジュール用基板103において、本実施形態の平面導体パターンを設けることが特に好ましい。
【0061】
平面導体パターン37は、浮き電極(他の回路を構成する導体パターンと導通しない独立した電極)であることが好ましい。このことにより、加熱プレスで積層絶縁体を構成する際の平面導体パターン37の変形が大きくても、また、導体パターン21と平面導体パターン37との間隔が狭くなっても、電気的特性のばらつきの少ない積層モジュールが得られる。
【0062】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能であることは明らかである。例えば異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
CA1,CA2…内蔵部品収納部
10…積層絶縁体
11〜15…絶縁体層
21〜26…導体パターン
30…補助導体パターン
31〜36…パッド
37…平面導体パターン
41〜49…層間接続導体
51,52…内蔵部品
61…搭載部品
71〜76…バンプ
101,103,103CE,104,104CE…積層モジュール用基板
201…積層モジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8