【実施例1】
【0035】
以下、図面を参照しながら実施例1を説明する。
図1は本発明のワイヤハーネスの配索状態を示す模式図である。また、
図2はワイヤハーネスの断面図、
図3は外装部材の構成図、
図4及び
図5は外装部材の変形例を示す図、
図6は外装部材の製造装置を示す斜視図、
図7は
図6の製造装置の要部を示す平面図、
図8は輸送前のワイヤハーネスを示す図、
図9は梱包状態及び輸送時のワイヤハーネスを示す図、
図10はワイヤハーネスを車両に取り付ける第一工程の図、
図11はワイヤハーネスの梱包状態を解除する第二工程の図、
図12及び
図13はワイヤハーネスの順次取付部を取り付ける第三工程の図である。
【0036】
本実施例においては、ハイブリッド自動車(電気自動車や一般的な自動車であってもよいものとする)に配索されるワイヤハーネスに対し本発明を採用するものとする。
【0037】
図1において、引用符号1はハイブリッド自動車を示す。ハイブリッド自動車1は、エンジン2及びモータユニット3の二つの動力をミックスして駆動する車両であって、モータユニット3にはインバータユニット4を介してバッテリー5(電池パック)からの電力が供給される。エンジン2、モータユニット3、及びインバータユニット4は、本実施例において前輪等がある位置のエンジンルーム6に搭載される。また、バッテリー5は、後輪等がある自動車後部7に搭載される(エンジンルーム6の後方に存在する自動車室内に搭載してもよいものとする)。
【0038】
モータユニット3とインバータユニット4は、高圧のワイヤハーネス8により接続される。また、バッテリー5とインバータユニット4も高圧のワイヤハーネス9により接続される。ワイヤハーネス9は、この中間部10が車両床下11に配索される。また、車両床下11に沿って略平行に配索される。車両床下11は、公知のボディであるとともに所謂パネル部材であって、所定位置には貫通孔11aが形成される。この貫通孔11aには、ワイヤハーネス9が水密に挿通される。
【0039】
ワイヤハーネス9とバッテリー5は、このバッテリー5に設けられるジャンクションブロック12を介して接続される。ジャンクションブロック12には、ワイヤハーネス9の後端13が公知の方法で電気的に接続される。ワイヤハーネス9の前端14側は、インバータユニット4に対し公知の方法で電気的に接続される。
【0040】
モータユニット3は、モータ及びジェネレータを構成に含むものとする。また、インバータユニット4は、インバータ及びコンバータを構成に含むものとする。モータユニット3は、シールドケースを含むモータアッセンブリとして形成されるものとする。また、インバータユニット4もシールドケースを含むインバータアッセンブリとして形成されるものとする。バッテリー5は、Ni−MH系やLi−ion系のものであって、モジュール化してなるものとする。尚、例えばキャパシタのような蓄電装置を使用することも可能であるものとする。バッテリー5は、ハイブリッド自動車1や電気自動車に使用可能であれば特に限定されないものとする。
【0041】
先ず、ワイヤハーネス9の構成及び構造について説明をする。
【0042】
図2において、ワイヤハーネス9は、高圧導電路15(導電路)と、この高圧導電路15を収容保護する外装部材16と、高圧導電路15の端末に設けられるシールドコネクタ17(接続部材。
図8参照)と、外装部材16の外面に取り付けられる複数のクランプ18(固定部材。
図8参照)と、同じく外装部材16の外面に水密に取り付けられるグロメット19(止水部材。
図1及び
図8参照)とを備えて構成される。
【0043】
尚、ワイヤハーネス9は、高圧導電路15と一緒に低圧導電路も外装部材16に収容保護されるような構成としてもよいものとする。この場合、例えば
図2の引用符号Wで示すような位置に配置されるものとする。
【0044】
高圧導電路15は、二本の高圧回路20と、この二本の高圧回路20を覆うシールド部材21と、シールド部材21の外側に設けられるシース22とを備えて構成される(一例であるものとする)。
【0045】
高圧回路20は、ここでは公知の高圧電線であって、導体23と、この導体23を被覆する絶縁体24とを備えて構成される。高圧回路20は、電気的な接続に必要な長さを有するように形成される。高圧回路20は、ワイヤハーネス9がインバータユニット4とバッテリー5(ジャンクションブロック12)とを電気的に接続する(
図1参照)ことから、長尺なものに形成される。
【0046】
導体23は、銅や銅合金、或いはアルミニウムやアルミニウム合金により製造される。導体23に関しては、素線を撚り合わせてなる導体構造のものや、断面矩形又は丸形となる棒状の導体構造(例えば平角単心や丸単心となる導体構造であり、この場合、電線自体も棒状となる)のもののいずれであってもよいものとする。以上のような導体23は、この外面に絶縁性の樹脂材料からなる絶縁体24が押出成型される。
【0047】
尚、高圧回路20として、本実施例では公知の高圧電線の構成を採用するが、この限りでないものとする。すなわち、公知のバスバーに絶縁体を設けて高圧回路としたもの等を採用してもよいものとする。
【0048】
シールド部材21は、二本の高圧回路20を一括して覆う電磁シールド用の部材(電磁波対策用のシールド部材)であって、多数の素線を筒状に編んでなる公知の編組が採用される。シールド部材21は、二本の高圧回路20の全長とほぼ同じ長さに形成される。シールド部材21は、この端部が上記シールドコネクタ17(
図8及び
図9参照)を介してインバータユニット4(
図1参照)のシールドケース等(図示省略)に接続される。
【0049】
シールド部材21は、電磁波対策をすることが可能であれば、例えば導電性を有する金属箔や、この金属箔を含む部材を採用してもよいものとする。
【0050】
シース22は、絶縁性を有する樹脂材料を所定の厚さでシールド部材21の外側に押出成型してなるものであり、高圧導電路15の最外層となる位置に配置される。シース22は、ワイヤハーネス9の製造においてシールド部材21が所定長さで露出するように端末加工される。尚、端末加工後の状態としては、例えば外装部材16よりも若干長い状態になるものとする。
【0051】
高圧導電路15以外としては、
図15を参照しながら後述する高圧同軸複合導電路72が挙げられるものとする。また、公知のシールド電線等も挙げられるものとする。本数は一又は複数本であるものとする。
【0052】
図2及び
図3において、外装部材16は、上記高圧導電路15を覆う樹脂製の管体であって、高圧導電路15の収容に必要な長さ、及び保護に必要な厚みを有する形状に形成される。また、外装部材16は、この外面25から内面26へと通じる継ぎ目やスリットのない形状にも形成される。外装部材16は、高圧導電路15を水分から遠ざける(防水する)ことができる形状に、また、長尺な形状に形成される。
【0053】
外装部材16は、本実施例において断面円形状に形成される(断面形状は一例であるものとする。後述する実施例2のような楕円形状や長円形状、矩形状であってもよいものとする)。外装部材16は、可撓性を有する複数の可撓管部27と、この可撓管部27のような可撓性を持たない複数の非可撓管部28とを有して、例えば
図3に示す形状に形成される。
【0054】
可撓管部27と非可撓管部28は、可撓管部27を撓ませない状態で全体が直線状となるように一体に樹脂成型される。可撓管部27と非可撓管部28は、管軸方向に交互に連続するように配置形成される。
【0055】
可撓管部27は、車両取付形状(ワイヤハーネス配索先の形状。固定対象の形状)に合わせた位置に配置される。また、可撓管部27は、車両取付形状に合わせた長さにも形成される。尚、可撓管部27の長さを管軸方向に異ならせることで、車両取付形状に合わせて必要な長さで撓ませることができる。このような可撓管部27は、ワイヤハーネス9の後述する梱包状態、輸送時及び車両への経路配索時に、それぞれ所望の角度で撓ませることができる(
図8〜
図13参照)。
【0056】
可撓管部27は、撓ませて曲げ形状にすることができるとともに、元のストレートな形状に戻すことも当然にできるものとする。
【0057】
可撓管部27は、本実施例において蛇腹管形状に形成される(可撓性を有すれば形状は特に限定されないものとする)。具体的には、周方向の凹部29及び凸部30を有するとともに、これら凹部29及び凸部30が管軸方向に交互に連続するように形成される。
【0058】
可撓管部27は、経路配索時に撓ませられる経路配索時用可撓管部31と、ワイヤハーネス9の梱包状態及び輸送時に撓ませられる梱包輸送時用可撓管部32とを含んで構成される。尚、撓ませる必要がない部分であっても可撓管部27を配置形成することは可能であるものとする。
【0059】
外装部材16は、この端末側に可撓管部27を配置する形状に形成される。また、外装部材16は、この端末側に配置された可撓管部27の端部がシールドコネクタ17(
図8参照)の近傍まで延在するような長さに形成される。尚、シールドコネクタ17の近傍とは、シールドコネクタ17によるインバータユニット4(
図1参照)等への電気的な接続作業に支障を来さない程度の近さや、高圧導電路15の端末加工に支障を来さない程度の近さであるものとする。可撓管部27は、上記の如く可撓性を有することから、かなり近くまで延在させることができるのは勿論である。
【0060】
上記電気的な接続作業は曲げが伴う。このことから、可撓管部27を配置せずに非可撓管部28を配置する場合を考えると、非可撓管部28ではこの端部がシールドコネクタ17から離れてしまうことになる。端部がシールドコネクタ17から離れてしまうと、後述する高圧導電路15の端末部分34の露出度合いが大きくなってしまうことになる。非可撓管部28ではなく、可撓管部27を配置することが有効である。
【0061】
端末側に配置された可撓管部27の端部には、シールドコネクタ17(
図8参照)まで延在する柔軟な防水部材が取り付けられる。防水部材としては、例えばゴム製のブーツ33(
図8参照)などが挙げられる。ブーツ33は、可撓管部27の端部から引き出された高圧導電路15の端末部分34(
図8参照)や、可撓管部27の端部開口部分を覆うために取り付けられる。尚、取り付けは任意であるものとする。ブーツ33を代替するものとしては、防水性を有するテープの巻き付けによりなるテープ巻部等が挙げられるものとする。
【0062】
外装部材16における複数の可撓管部27のうち、車両床下11の上記貫通孔11a(
図1参照)の位置に合わせた配置の可撓管部27には、この外面に水密となり、且つ貫通孔11aにも水密となる止水部材が取り付けられる。止水部材としては、例えばゴム製のグロメット19(
図1及び
図8参照)などが挙げられる。グロメット19は、貫通孔11aを介しての水分の浸入を防止する部材として取り付けられる。
【0063】
外装部材16は、可撓管部27の配置部分が恰もコルゲートチューブとなる形状に形成される。言い換えれば、部分的にコルゲートチューブが存在する形状に形成される。外装部材16は、上記の如くコルゲートチューブの部分を有することから、「コルチューブ」や「部分形成コルゲートチューブ」などと呼ぶこともできるものとする。
【0064】
外装部材16は、この管軸方向に沿ってスリットを設けない(腹割きのない)形状に形成される。スリットを設けない理由としては、外装部材16内への水分の浸入を防止して防水性の向上を図る点が挙げられる。また、例えば撓ませた部分において高圧導電路15のはみ出しを生じさせない点も挙げられる。さらには、外装部材16自体の剛性アップを図る点も挙げられる。この他、外装部材16は、周方向の継ぎ目がない形状にも形成される。理由としては、上記スリットと同様である。
【0065】
尚、外装部材16は、上記の点を満足することができれば所定位置で分割されるような形状に形成されてもよいものとする。この場合、接着や溶着、或いは連結するための後付け部材等により一体化されるものとする。
【0066】
非可撓管部28は、非可撓管部本体36と、取り付け部37とを含んで構成される。非可撓管部本体36は、後述する梱包状態や輸送時、経路配索時に曲がらない部分として形成される(曲がらない部分とは、可撓性を積極的に持たせない部分という意味である)。非可撓管部本体36は、断面円形のストレートチューブ形状に形成される(断面円形状に限らず、楕円形状や長円形状、矩形状であってもよいものとする)。
【0067】
非可撓管部28は、図示の如く直管形状に形成される。そのため、「直管部」や「ストレート部」などと呼ぶこともできるものとする。非可撓管部28は、可撓管部27と比べ、リジッドな部分に形成される。非可撓管部28も上記車両取付形状に合わせた位置や長さに形成される。
【0068】
外装部材16は、非可撓管部28として、車両床下11(
図1参照)に配索される床下用非可撓管部38を有する。この床下用非可撓管部38は、車両床下11に配索されることから(例えばリーンホースに沿わせるように配索されることから)長尺に形成される。床下用非可撓管部38は非可撓管部28の一種であり、このような床下用非可撓管部38にも取り付け部37が複数箇所形成される。
【0069】
取り付け部37は、クランプ18(
図8参照)の取り付け部分として形成される。また、取り付け部37は、非可撓管部本体36に一体に形成される(一体成型される)。取り付け部37は、外装部材16が樹脂製であることから、一体化は容易である。尚、取り付け部37は、クランプ18の取り付けが必要な部分に設けられ、取り付け部37が存在しない非可撓管部28もあるものとする。また、本実施例の取り付け部37は、外装部材16の複数箇所に形成されるが、この限りでないものとする。
【0070】
取り付け部37は、一対の移動規制部39と、着脱部40とを含んで構成される。一対の移動規制部39は、クランプ18(
図8参照)の両サイドにあたる位置に配置形成される。一対の移動規制部39は、クランプ18の管軸方向の移動を規制する部分として形成される。また、一対の移動規制部39は、クランプ18の取り付け位置を認識できる部分としても形成される。一対の移動規制部39は、本実施例において環状のフランジ形状に形成される。具体的には、非可撓管部本体36の外面41から突出するとともに周方向に凸となる形状に形成される(形状は一例であるものとする)。
【0071】
尚、経路配索時における固定位置の寸法ズレを吸収するためとして、所定の箇所の一対の移動規制部39の間隔を若干広めにとることも有効であるものとする。間隔を若干広めにとることで、クランプ18(
図8参照)のスライド移動を許容することができることから、結果、上記寸法のズレを吸収することができる。
【0072】
一対の移動規制部39は、本実施例において、この突出高さや幅が例えば可撓管部27における凸部30の突出高さや幅に合うように形成される(一例であるものとする)。
【0073】
着脱部40は、クランプ18(
図8参照)を直接取り付ける部分として形成される。着脱部40は、一対の移動規制部39の間に存する外面41がこれに該当し、曲面に形成される。尚、クランプ18の取り付け後において、確実に回り止めをしたい場合には、曲面の着脱部40に対し食い込む部分をクランプ18側に設けることが有効であるものとする。また、凹凸等の回り止め構造を取り付け部37やクランプ18に追加することも有効であるものとする。
【0074】
ここで、外装部材16の変形例を幾つか挙げてみると、
図4(a)に示す外装部材16では、非可撓管部28が非可撓管部本体36のみとなる形状に形成される。すなわち、取り付け部37(
図3参照)がない形状に形成される。このような外装部材16であってもよいものとする。
【0075】
また、
図4(b)に示す外装部材16では、この床下用非可撓管部38の中間に経路配索時用可撓管部31が配置される形状に形成される。このような外装部材16にあっては、長尺な床下用非可撓管部38の途中で曲げをする場合に有効である。
【0076】
最後に、
図5に示す外装部材16では、取り付け部37が形成されない替わりに、管軸方向に(長手方向に)、及び/又は、周方向に複数のリブ42が存在する形状に形成される。複数のリブ42は、剛性を高めるための部分として形成される。また、クランプ18(
図8参照)に対しこれを取り付けるための部分、取り付け位置を認識させるための部分、回り止めをするための部分としても形成される。
【0077】
以上のような外装部材16は、次のような製造装置や製造方法にて製造される。
図6や
図7を参照しながら以下に説明をする。
【0078】
図6において、引用符号51は外装部材16(例えば
図3ないし
図5参照)を樹脂成型するための製造装置を示す。この製造装置51は、樹脂押出部52と、成型部53と、冷却部54と、切断部55とを備えて構成される。
【0079】
樹脂押出部52の下流側には、成型部53が連続する。また、成型部53の下流側には、冷却部54が連続する。切断部55は、冷却部54の端末に配設され(装置端末に配置され)、外装部材16を所定長さにする際に作動する。
【0080】
樹脂押出部52は、樹脂材料を投入する部分としてのホッパ56と、このホッパ56に連続して水平方向に伸びる押出部本体57と、押出部本体57の端部から突出するダイス58とを備えて構成される。ダイス58は、樹脂材押出口59を有し、この樹脂材押出口59は、成型部53の入口60(
図7参照)内に配置される。
【0081】
図7において、成型部53は、入口60から出口61にかけて直線的に樹脂成型を行う部分であって、一対の成型構造部62を有する。この一対の成型構造部62は、ダイス58(
図6参照)の樹脂材押出口59から導出された柔軟で筒状の樹脂材63の左右両側に配置されて一対となる。一対の成型構造部62は、樹脂材63を所定形状に成型することができるように構成される。
【0082】
成型構造部62は、樹脂材63の進行方向に沿って一対となるタイミングプーリー64と、この一対のタイミングプーリ64により図中矢印方向へ移動する無端ベルト65と、無端ベルト65に取り付けられて移動する金型ブロック集合体66とを備えて構成される。
【0083】
金型ブロック集合体66は、複数の金型ブロック67を有する。各金型ブロック67は、無端ベルト65の直線部分において隙間無しの状態に並べられる。各金型ブロック67は、無端ベルト65に対し取り替え自在に固定される。
【0084】
尚、上記製造装置51や製造方法は一例であるものとする。上記の他には、例えばブロー式のものもある。
【0085】
図8において、取り付け部37に取り付けられるクランプ18は、公知のものが用いられる。
【0086】
クランプ18は、非可撓管部28の外形形状(着脱部40の外形形状)に合わせて形成される管体取付部と、この管体取付部に連続する固定部とを有する。固定部には、ボルト挿通孔が形成される。ワイヤハーネス9は、ボルト挿通孔に挿通されたボルトを介して車両床下11(
図1参照)等の固定対象(ワイヤハーネス配索対象側の部材)に取り付け固定される。ワイヤハーネス9は、固定対象に対し取り付け固定されると、
図1及び
図13に示す如く経路配索が完了する。
【0087】
ワイヤハーネス9の両端末には、公知のシールドコネクタ17がそれぞれ設けられる。一方のシールドコネクタ17はインバータ側のシールドコネクタであり、他方のシールドコネクタ17はバッテリー側のシールドコネクタである。シールドコネクタ17は、可撓管部27から引き出された高圧導電路15の端末部分34に接続固定される。可撓管部27の端部からシールドコネクタ17にかけては、ブーツ33が取り付けられる。
【0088】
次に、ワイヤハーネス9の製造、梱包、輸送、及び経路配索について説明をする。ワイヤハーネス9は、全体が略直線状に成型された外装部材16に高圧導電路15を挿通し、この後に高圧導電路15の端末部分34にシールドコネクタ17を設けることにより、また、ワイヤハーネス9は、取り付け部37の位置に合わせてクランプ18を取り付けることにより、さらには、ブーツ33やグロメット19を外装部材16の外面所定位置に取り付けることにより製造が完了する。
【0089】
ワイヤハーネス9の製造後は、
図8に示す如く所定の可撓管部27の部分で折り畳むように曲げると、ワイヤハーネス9は例えば非可撓管部28同士(図中では非可撓管部28と床下用非可撓管部38)が略平行な状態に配置される。より具体的には、長い床下用非可撓管部38に対し他の非可撓管部28が沿うように略平行な状態に配置される。このような状態により、ワイヤハーネス9の全長が短くなるとともに、ワイヤハーネス9は最小限の幅の状態になる。ワイヤハーネス9は、コンパクトな状態になる。
【0090】
ここで、床下用非可撓管部38がある辺りの範囲Aで示す部分は、特許請求の範囲に記載された最初取付部81に相当するものとする。この最初取付部81は、車両に対し最初に取り付けられる部分として設けられる。また、折り畳まれた可撓管部27がある辺りの範囲Bで示す部分は、特許請求の範囲に記載された可撓部82、83に相当するものとする。この可撓部82、83は、最初取付部81の両端部にそれぞれ配置される可撓性のある部分として設けられる。さらに、可撓部82、83からシールドコネクタ17までの範囲Cで示す部分は、特許請求の範囲に記載された順次取付部84、85に相当するものとする。この順次取付部84、85は、最初取付部81よりも後に順次取り付けられる部分として設けられる。
【0091】
図9において、最初取付部81と順次取付部84、85とに跨るように帯状の面ファスナー86(梱包手段)を二本用いて束ね、これにより梱包状態にすると、ワイヤハーネス9はコンパクトな状態のまま輸送することができるようになる。ワイヤハーネス9の梱包は、ここでは面ファスナー86を用いるだけであることから簡単である。尚、梱包手段は面ファスナー86に限定されないものとする。また、面ファスナー86の使用数は一例であるものとする。面ファスナー86により梱包されたワイヤハーネス9は、最初取付部81が露出した状態にある。
【0092】
面ファスナー86は、巻き付け部分86aと、着け剥がし部分86bと、延在部分86cとを有し、延在部分86cを持ってこれを所定方向へ引っ張ると、着け剥がし部分86bが簡単に剥がれるように形成される。すなわち、梱包状態の解除がし易いように形成される。この他、面ファスナー86は、繰り返し使用することができるようにも形成される。
【0093】
ワイヤハーネス9は、上記のような梱包状態にて輸送される。輸送後は、梱包状態のまま車両に取り付けられる。以下、車両への取り付けについて説明をする。
【0094】
図10において、輸送後、梱包状態にあるワイヤハーネス9は、そのまま車両床下11の下側まで運ばれる。そして、ワイヤハーネス9は、作業員に持ち上げられるような状態から、先ず初めに最初取付部81が車両に取り付けられる(第一工程)。
【0095】
最初取付部81は、クランプ18を介して車両床下11に取り付けられる。最初取付部81の取り付け後は、面ファスナー86、86が外されて、これによりワイヤハーネス9の梱包状態が解除される(第二工程)。
【0096】
図11において、梱包状態が解除されると、最初取付部81の両端部に可撓部82、83が連続することから、順次取付部84、85は取り付け現場の床87に向けて垂れ下がる(垂れ下げることができる)。尚、順次取付部84、85は、取り付け現場の床87に着かない長さに設定されるものとする。
【0097】
ワイヤハーネス9は、順次取付部84、85の先端、具体的にはシールドコネクタ17(
図8参照)が取り付け現場の床に着かないことから、損傷してしまうことはない。つまり、損傷等を気にせずにワイヤハーネス9の取り付けを続けることができる。
【0098】
図12において、本実施例では後側の順次取付部84から取り付けが行われる(第三工程)。先ず順次取付部84が貫通孔11aに挿通され、次にジャンクションブロック12への電気的な接続と、貫通孔11aへのグロメット19の水密な取り付け等とが行われる。これにより、順次取付部84側の一連の取り付けが完了する。順次取付部84の上記挿通は、可撓性を有する可撓部82の存在により容易である。
【0099】
最後に前側の取り付けが行われ(第三工程)、
図13に示す如くインバータユニット4への電気的な接続等が行われると、順次取付部85側の一連の取り付けが完了する。また、これに伴ってワイヤハーネス9の経路配索も完了する。
【0100】
以上、
図1ないし
図13を参照しながら説明してきたように、本発明によれば、梱包状態のままでワイヤハーネス9の取り付けを開始することができることから、従来に比べ車両への取り付けをし易くすることができるという効果を奏する。