(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記発泡性材料破壊工程において、前記伏びの内面と前記通水管の外面との間に充填された前記発泡性材料に、高圧水を前方に噴射する第1の高圧水放出ノズルで前記伏びの長手方向に孔を開け、次に、開けた該孔に、高圧水を側方に噴射する第2の高圧水放出ノズルを差し込み、該第2の高圧水放出ノズルを前記伏びの長手方向に進行させて、前記伏びの内面と前記通水管の外面との間に充填された前記発泡性材料を破壊することを特徴とする請求項2に記載の伏びの応急補修方法。
前記チューブは、該チューブ内に注入された前記発泡性材料が前記伏びの内面方向に膨張することを妨げないことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の伏びの応急補修方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る伏びの応急補修方法を詳細に説明する。
【0025】
図1は、鉄道線路を支持する路盤を鉄道線路と直交する方向で切断した断面図である。路盤50には鉄道線路52と直交する方向に伏び10が埋設されている。この伏び10の中央部付近にひび割れ等の変状部10Aが生じているものとし、この変状部10Aを本発明の実施形態に係る伏びの応急補修方法で応急補修する場合について説明する。
【0026】
本実施形態に係る伏びの応急補修方法は、いくつかの工程を有しているが、それらの工程は大きく分けて前半工程αと後半工程βとに分けられる。
【0027】
前半工程αは、伏び内に通水管および充填チューブを挿入して、充填チューブ内に発泡硬質ウレタンを注入し、伏びの内面と通水管の外面との間に発泡硬質ウレタンを充填する工程であり、後半工程βは、充填した発泡硬質ウレタンを高圧水を用いて破壊して、前半工程αで設置した資材を取り除く工程である。
【0028】
(前半工程α)
前半工程αは、ひび割れ等の変状が進んだ伏び10内に通水管12を設置するとともに、伏び10の内面と通水管12の外面との間隙に発泡硬質ウレタン14を充填して、伏び10の変状の進行、伏び10の崩落および伏び10の背面の土砂の流出を防ぐことを目的とする。前半工程αを実施することにより、緊急的に重大事故を回避することができ、また、本格的な補修がなされるまでの安全確保をなすことができる。
【0029】
図2は、
図1のII−II線(伏び10の長手方向と直交する面)で切断したときの伏び10およびその内部の断面図であり、前半工程αを実施した後の伏び10の状態を主要な構成のみで模式的に示す断面図である。
【0030】
図2に示すように、前半工程αを実施した後の伏び10の内側には通水管12が設置されているとともに、伏び10の内面と通水管12の外面との間隙には発泡硬質ウレタン14が充填されている。
【0031】
通水管12により水の通り道が確保されており、本実施形態に係る伏びの応急補修方法を実施した後も、伏び10内を水が流れることができるようになっている。また、伏び10の内面と通水管12の外面との間隙には発泡硬質ウレタン14が充填されており、この充填された発泡硬質ウレタン14が伏び10の内面を支持するとともに伏び10に生じたひび割れを塞ぎ、伏び10の変状の進行、伏び10の崩落および伏び10の背面の土砂の流出を防ぐ。
【0033】
図3は、前半工程αを実施中の状態(発泡硬質ウレタン14を伏び10の内側に充填している状態)を、施工に用いる資材を含めて模式的に示す断面図(伏び10を伏び10の長手方向に平行な鉛直面で切断した断面図)であり、
図4は
図3のIV−IV線(伏び10の長手方向と直交する面)で切断したときの伏び10およびその内部の断面図である。
【0034】
前半工程αを実施する際には、まず、アウターチューブ18内に通水管12とインナーチューブ16とを配置した状態で、それらを伏び10の全長にわたって送り込む。
図1に示すように、通水管12は伏び10の端から端まで配置する。
【0035】
通水管12は、路盤50の両側間の水の通り道を確保する役割を有し、本実施形態に係る伏びの応急補修方法を実施した後も、伏び10内を水が流れることができるようにし、伏び10の通水能力を確保する役割を有する。
【0036】
発泡硬質ウレタン14は、伏び10の内面と通水管12の外面との間隙に充填されて、伏び10の内面を支持し、伏び10の崩落を防止する役割を有する。また、伏び10に生じたひび割れを塞ぎ、伏び10の変状の進行および伏び10の背面の土砂の流出を防ぐ。
【0037】
発泡硬質ウレタン14には、こうした役割および効果が求められるので、発泡硬質ウレタン14の圧縮強度は8N/cm
2以上であることが好ましく、10N/cm
2以上であることがより好ましい。
【0038】
インナーチューブ16は細長い円筒状のチューブで、発泡硬質ウレタン14が注入されるチューブであり、注入された発泡硬質ウレタン14が直接伏び10の内面に接触しないようにする役割を有する。発泡硬質ウレタン14は接着性があるので、注入された発泡硬質ウレタン14が直接伏び10の内面に接触すると、注入した発泡硬質ウレタン14を後半工程βで伏び10の内部から取り除くことが困難になってしまう。
【0039】
アウターチューブ18は細長い円筒状のチューブであり、通水管12を伏び10内に引き込む時に伏び10の内面を保護するとともに、インナーチューブ16が破れないようにする役割を有する。
【0040】
なお、伏び10の片側から発泡硬質ウレタン14を充填する場合は、インナーチューブ16は底を有する袋状になっていてもよいが、伏び10の両側から発泡硬質ウレタン14を充填する場合は底のない円筒状のチューブとする方がよい。伏び10の両側から発泡硬質ウレタン14を充填する場合にインナーチューブ16が底を有する袋状になっている場合、発泡硬質ウレタン14を充填するための穴を底に開けなければならないからである。また、アウターチューブ18は底のない円筒状のチューブとする方がよい。アウターチューブ18に底がある場合、通水管12の通水機能を阻害しないように、最終的にはアウターチューブ18の底に穴を開けなければならないからである。
【0041】
次に、発泡硬質ウレタン14を噴射するスプレーガン20を伏び10の補修個所の最奥部(伏び10の片側のみから作業する場合)または中心部付近(伏び10の両側から作業する場合)までガイドパイプ22により押し込む。ガイドパイプ22には発泡硬質ウレタン14の2種類の原料をスプレーガン20に供給する2本の塩ビ管(図示せず)が取り付けられている。この塩ビ管としては、例えば呼び径13mm(外径18mm)のものを用いることができる。なお、
図3においてガイドパイプ22が2本存在しているように見えるが、
図3は伏び10を伏び10の長手方向に平行な鉛直面で切断した断面図であり、
図3では1本のガイドパイプ22の2つの切断面が示されているのであり、ガイドパイプ22の本数は1本である。
【0042】
図5は、スプレーガン20の模式図である。スプレーガン20は、2種類の原料を混合して発泡硬質ウレタン14を噴射する機能を有する。また、発泡硬質ウレタン14の噴射の開始および終了ならびに噴射量の調整を遠隔操作により行うことができる機能も有する。
【0043】
スプレーガン20の上部後方には2本の原料供給用ホース20Aが連結されており、この2本の原料供給用ホース20Aから発泡硬質ウレタン14の2種類の原料がスプレーガン20の中に供給され、スプレーガン20の中で混合される。そして、遠隔操作用ケーブル20Bを介してレバー20Cを引く量の調整を行い、発泡硬質ウレタン14の噴射の開始および終了ならびに噴射量の調整を遠隔操作により行う。遠隔操作用ケーブル20Bを介してレバー20Cを引くと、発泡硬質ウレタン14は噴射口20Dから噴射する。
【0044】
このように発泡硬質ウレタン14の2種類の原料はスプレーガン20内で混合されてインナーチューブ16内に注入される。発泡硬質ウレタン14のインナーチューブ16内への注入量に合わせてスプレーガン20を手前に(注入作業を行っている作業者の方に)引き戻しながら、発泡硬質ウレタン14を伏び10の変状部10Aを中心とする補修個所に充填する。
【0045】
本実施形態では、発泡硬質ウレタン14として2液を混合することにより硬化するタイプを用いているが、発泡硬質ウレタン14として用いることができる発泡硬質ウレタンの種類は特に限定されない。ただし、発泡硬質ウレタン14としては2液を混合することにより硬化するタイプを用いることが好ましい。このタイプの発泡硬質ウレタンを用いることにより、伏び10の内側に一気に充填を行っても発泡不良は起こりにくくなる。
【0046】
通水管12としては、例えば、外圧に耐えることができ、かつ、フレキシブルで湾曲自在な高密度ポリエチレン製波付管を使用することができる。伏び10には屈曲したものがあり、また埋設当初は直管であっても経年変化で一部が沈み込んで上下に屈曲したものもあるので、通水管12にはフレキシブルで湾曲自在な管を用いることが好ましい。
【0047】
インナーチューブ16およびアウターチューブ18として用いることができるものは特に限定されないが、発泡硬質ウレタン14の充填の進行とともに伏び10の内面および通水管12の外面に追従できる性質に優れるものであることが好ましく、例えば、厚さ0.05mm〜0.5mmのポリエチレン製のチューブを用いることができる。ただし、インナーチューブ16およびアウターチューブ18の大きさが小さすぎるとインナーチューブ16内に注入された発泡硬質ウレタン14が伏び10の内面に向かう方向に膨張できなくなって、伏び10の内面の支持が不十分となるおそれがあるので、発泡硬質ウレタン14が伏び10の内面に向かう方向に膨張することを妨げない大きさのポリエチレン製のチューブをインナーチューブ16およびアウターチューブ18として用いることが好ましい。
【0048】
また、インナーチューブ16内に注入された発泡硬質ウレタン14が伏び10の内面に向かう方向に膨張できなくなくなることを防止する観点から、インナーチューブ16およびアウターチューブ18の材質としては、伸縮性のある材質を選択することも好ましい。
【0049】
伏び10への発泡硬質ウレタン14の注入終了後、
図1に示すように、伏び10および通水管12の管口部分において、伏び10の内面と通水管12の外面との間隙を土のう54で塞ぐ。通水管12の固定をするとともに、伏び10と通水管12の間隙に土砂が侵入することを防止するためである。
【0050】
ロープ24(
図3、
図4参照)は、後述する後半工程βで発泡硬質ウレタン14を引き出す際に用いる。
【0051】
なお、前半工程αを実施する前に、自動走行するカメラ等で伏び10内を観察して伏び10の変状部10Aの位置を把握して、発泡硬質ウレタン14を充填する範囲を明確にしておくことが望ましい。また、前半工程αを実施する前に伏び10内を浚渫しておくことが望ましい。
【0052】
以上、前半工程αについて説明したが、前半工程αを実施することにより、伏び10内には通水管12が設置され、水は通水管12内を流れ、伏び10の内面に接触しない。このため、伏び10の通水能力を確保しつつ、伏び10の変状が進行することを抑制することができるとともに、伏び10の背面の土砂が流出することを抑制することができる。また、伏び10の変状部10Aの内面に発泡硬質ウレタン14を充填することにより、伏び10の内面を支持することができ、伏び10の崩落を防止することができる。また、伏び10の内面と通水管12の外面との間隙に発泡硬質ウレタン14が充填されて伏び10内の空間の体積が小さくなるので、万一伏び10が崩落しても路盤50の崩落の程度は制限される。
【0053】
以上のことから、前半工程αを実施することにより、緊急的に重大事故を回避することができ、また、本格的な補修がなされるまでの安全確保がなされる。したがって、前半工程αのみでも伏び10に対する応急補修方法として完結している。
【0054】
なお、前半工程αの標準的な直接工事費は、伏びの内周面にライニング層を形成する現状の補修工法の標準的な直接工事費の30%程度である。また、前半工程αを行う際の現地での標準的な作業時間は2.5時間程度であり、伏びの内周面にライニング層を形成する現状の補修工法を現地で行う際の標準的な作業時間の30%程度である。
【0055】
(後半工程β)
後半工程βは、充填した発泡硬質ウレタン14を高圧水を用いて破壊して、通水管12等の資材とともに取り出す工程であり、前半工程αで設置した資材を伏び10内から取り除き、伏び10に対して本格的な補修を施すことを可能な状態にする工程である。
【0056】
前述したように、前半工程αにおいて、ひび割れ等の変状が進んだ伏び10内に通水管12を設置するとともに、伏び10の内面と通水管12の外面との間隙に発泡硬質ウレタン14を充填することにより、伏び10の通水能力を確保しつつ、伏び10の崩落を防止するとともに伏び10の変状の進行および伏び10の背面の土砂の流出を抑制するので、前半工程αのみを応急補修方法と捉えることもできるが、ここでは、伏び10に対して本格的な補修を施すことを可能な状態にする後半工程βを、前半工程αと組み合わせて考えて、前半工程αと後半工程βとを組み合わせた全体の工程を1つの応急補修方法と捉える。
【0058】
後半工程βでは、前半工程αで設置した発泡硬質ウレタン14等の資材を人力で伏び10内から引っ張り出すのであるが、前半工程αで伏び10内に充填した発泡硬質ウレタン14を事前に破壊することなしに、発泡硬質ウレタン14等の資材を伏び10内から人力で引っ張り出すことは困難である。また、過大な力を加えると伏び10が損傷するおそれがある。
【0059】
そこで、後半工程βでは、まず、伏び10内に充填された発泡硬質ウレタン14をある程度(前半工程αで設置した資材を伏び10内から過大な力を加えずに引っ張り出すことができる程度に)高圧水により破壊する。
【0060】
具体的には、
図6に模式的に示すように、後半工程βでは、伏び10内に充填された発泡硬質ウレタン14を高圧水により2段階で破壊する。
図6(A)は前半工程αが終了した状態(通水管12の外面と伏び10の内面との間に発泡硬質ウレタン14が充填された状態)を示す図である。1段階目の破壊では、
図6(B)に示すように、前方破壊ノズル30により比較的小さい径(例えば5〜10cm程度の径)の孔14Aを、伏び10内に充填された発泡硬質ウレタン14に伏び10の長手方向に開ける。そして、2段階目の破壊では、
図6(C)に示すように、側方破壊回転ノズル32により、孔14Aの径を拡張するように発泡硬質ウレタン14を高圧水により破壊していく。
【0061】
図7は高圧水による1段階目の破壊に用いる前方破壊ノズル30を模式的に示す図であり、
図8は前方破壊ノズル30を
図7の矢印VIII方向から見た模式図である。
図9は高圧水による2段階目の破壊に用いる側方破壊回転ノズル32を模式的に示す図である。
【0062】
1段階目の破壊に用いる前方破壊ノズル30は、高圧水を前方に噴射しつつ前方に進む高圧水放出ノズルであり、高圧水を前方に噴射する前方噴射穴30Aを4つ備え、前方への推進力を得るための後方噴射穴30Bを6つ備える。さらに詳細には、前方噴射穴30Aは、
図8に示すように、前方破壊ノズル30の中心部の1つの穴とそれを取り囲む3つの穴からなる。また、前方破壊ノズル30の後部は高圧水を供給する給水管30C(
図6(B)参照)に取り付けられるようになっている。
【0063】
1段階目の破壊ではこの前方破壊ノズル30を用いて、
図6(B)に示すように、高圧水を前方に(伏び10の略長手方向に)噴射させながら前方破壊ノズル30を伏び10の長手方向に進行させて、伏び10内に充填された発泡硬質ウレタン14に伏び10の長手方向に孔14Aを開ける。
【0064】
2段階目の破壊では側方破壊回転ノズル32を用いる。側方破壊回転ノズル32は、高圧水を側後方(斜め後方)に噴射して回転しつつ前方に進む高圧水放出ノズルであり、
図9に示すように、高圧水を斜め後方に噴射する側後方噴射穴32Aを6つ備える。また、側方破壊回転ノズル32の後部は高圧水を供給する給水管32B(
図6(C)参照)に取り付けられるようになっている。1段階目で開けた孔14Aに、側方破壊回転ノズル32を差し込み、高圧水を斜め後方に噴射させながら側方破壊回転ノズル32を伏び10の長手方向に進行させて、伏び10の内面と通水管12の外面との間に充填された発泡硬質ウレタン14を、
図6(C)に示すように孔14Aの径を拡張するように破壊する。
【0065】
伏び10内に充填された発泡硬質ウレタン14を、前半工程αで設置した資材を伏び10内から過大な力を加えずに引っ張り出すことができる程度に破壊できたと判断したら、発泡硬質ウレタン14を破壊する作業を中断し、前半工程αで設置した資材を伏び10内から人力で引っ張り出す。前半工程αで設置した資材を伏び10内から引っ張り出す際には、インナーチューブ16およびアウターチューブ18を人力で引っ張るとともに、ロープ24(
図3、
図4参照)も人力で引っ張る。前半工程αで設置した資材を伏び10内から引っ張り出すことが困難な場合には、側方破壊回転ノズル32を発泡硬質ウレタン14の孔14B(
図6(C)参照)に差し込み、高圧水による破壊作業を再度行い、前半工程αで設置した資材を伏び10内から過大な力を加えずに人力で引っ張り出すことができる程度まで発泡硬質ウレタン14を破壊する。
【0066】
前方破壊ノズル30から放出する高圧水の放出方向は、
図6(B)の状態において、伏び10の長手方向とのなす角が15°以下の範囲になるようにすることが好ましい。前記なす角が15°以下であれば、前方の発泡硬質ウレタン14を効率的に破壊することができ、伏び10の長手方向に貫通する比較的径の小さい孔14Aを発泡硬質ウレタン14に短時間に設けることが可能になる。前記なす角が15°を上回ると、孔14Aの径を比較的大きくすることができるが、発泡硬質ウレタン14を貫通する孔14Aを短時間に設けることが困難になる。発泡硬質ウレタン14を貫通する孔14Aの径が比較的小さくても、側方破壊回転ノズル32を用いて孔14Aを拡張する(孔14Aの径を大きくするように破壊する)ことは効率的に行うことができ、比較的短時間に行うことができるので、発泡硬質ウレタン14を貫通する孔14Aの径がたとえ比較的小さくても、発泡硬質ウレタン14を貫通する孔14Aを短時間で設けるようにした方が、前半工程αで設置した資材を伏び10内から引っ張り出すまでのトータルの作業時間は短くなることが多い。
【0067】
また、側方破壊回転ノズル32から放出する高圧水の放出方向は、
図6(C)の状態において、伏び10の長手方向とのなす角が45°〜60°の範囲になるようにすることが好ましい。前記なす角が45°を下回ると、孔14Aの径を拡張する効率が悪くなるおそれがある。また、前記なす角が60°を上回ると、側方破壊回転ノズル32の前方への推進力が小さくなり、発泡硬質ウレタン14を貫通する孔14Aを全長にわたって拡張する作業に時間が多くかかるおそれがある。
【0068】
また、前方破壊ノズル30および側方破壊回転ノズル32に供給する高圧水の圧力は、12〜18MPaであることが好ましい。高圧水の圧力が12MPaを下回ると、発泡硬質ウレタン14を破壊するのに要する時間が長くなるおそれがあり、また、高圧水の圧力が18MPaを上回ると、高圧水を供給するための設備を小型にすることが困難になるおそれがあるからである。発泡硬質ウレタン14を破壊するのに要する時間を短くする観点および高圧水を供給するための設備を小型にする観点から、前方破壊ノズル30および側方破壊回転ノズル32に供給する高圧水の圧力は、15〜17MPaであることがより好ましく、15.5MPa〜16.5MPaであることが特に好ましい。
【0069】
なお、高圧水による発泡硬質ウレタン14の破壊は、インナーチューブ16およびアウターチューブ18が損傷しない程度までに止めておくことが好ましい。インナーチューブ16およびアウターチューブ18が損傷していなければ、高圧水によって破壊された発泡硬質ウレタン14の回収が容易になるからである。
【0070】
以上、後半工程βならびに後半工程βで用いる前方破壊ノズル30および側方破壊回転ノズル32について詳細に説明したが、説明した前方破壊ノズル30および側方破壊回転ノズル32は発泡硬質ウレタン14を破壊するのに用いることのできるノズルの一例であり、本発明で用いることのできる高圧水放出ノズルが
図7〜
図9に示す形状等のノズルに限定されるわけではない。
【0071】
なお、後半工程βの標準的な直接工事費は、伏びの内周面にライニング層を形成する現状の補修工法の標準的な直接工事費の10%程度であり、前半工程αおよび後半工程βを合わせたトータルの標準的な直接工事費は、伏びの内周面にライニング層を形成する現状の補修工法の標準的な直接工事費の40%程度である。
【実施例】
【0072】
次に実施例について説明するが、実施例についての以下の説明では、
図6に示される構成要素と同様の構成要素には同様の符号を付して説明することがある。
【0073】
(前半工程αについての実施例1)
前半工程αを実施することにより、伏び10の内面と通水管12の外面との間隙に発泡硬質ウレタン14が充填されることを確認するための試験を行った。
【0074】
実際の伏びで試験を行うことは困難なので、管径250mmの直管のボイド管を伏びに見立て、管径100mmの直管の塩ビ管を通水管に見立てて、発泡硬質ウレタンの充填状況を確認するための試験を行った。発泡硬質ウレタンの充填状況を確認するための試験であるので、アウターチューブおよびインナーチューブは用いないで試験を行った。なお、用いた発泡硬質ウレタンの圧縮強度は8.3N/cm
2である。
【0075】
図10は、管径250mmのボイド管の内面と管径100mmの塩ビ管の外面との間隙に発泡硬質ウレタンの充填を開始した直後の状況を撮影した写真であり、
図11は、管径250mmのボイド管の内面と管径100mmの塩ビ管の外面との間隙に発泡硬質ウレタンが充填されていく途中の状況を撮影した写真であり、
図12は、管径250mmのボイド管の内面と管径100mmの塩ビ管の外面との間隙への発泡硬質ウレタンの充填が完了した時の状況を撮影した写真であり、
図13は充填した発泡硬質ウレタンの硬化後にボイド管を切断して取り出した管径100mmの塩ビ管の写真である。
【0076】
図10〜
図12からわかるように、管径250mmのボイド管の内面と管径100mmの塩ビ管の外面との間隙に発泡硬質ウレタンが良好に充填されていくことを確認することができた。
図13からは、硬化した発泡硬質ウレタンがボイド管と通水管との間にまで入り込んでいることがわかる。また、
図13からは読み取りにくいが、実際には、硬化した発泡硬質ウレタンの表面にはボイド管内面のスパイラル状の表面形状が転写されており、このことからも、発泡硬質ウレタンは小さい間隙であっても良好に充填されることを確認することができた。
【0077】
(前半工程αについての実施例2)
本実施例2では、アウターチューブおよびインナーチューブも用いて発泡硬質ウレタンの充填試験を行った。試験に用いた発泡硬質ウレタンの圧縮強度は8.3N/cm
2であり、実施例1と同様である。
【0078】
本実施例2では、管径300mmの直管のボイド管(以下、「模擬伏び」と記すことがある)を伏びに見立て、管径150mmの直管のコルゲートポリエチレン管(以下、「模擬通水管」と記すことがある)を通水管に見立てて、発泡硬質ウレタンの充填状況を確認するための試験を行った。
【0079】
アウターチューブおよびインナーチューブは、本来、伏びの管径(ここでは、模擬伏びの管径300mm)よりも大きいものを使用するが、本実施例2では、チューブの伸びを確認するために、アウターチューブおよびインナーチューブのどちらにおいても直径290mmの円筒状のポリエチレンチューブ(厚さ0.2mm)を使用した。また、スプレーガン、ガイドパイプ、ロープも用いた。そして、これらの資材を
図3と同様に配置した。
図14は、これらの資材の配置が完了した状態を撮影した写真である。
【0080】
そして、インナーチューブ内に発泡硬質ウレタンを充填した。
【0081】
発泡硬質ウレタンの硬化後、模擬伏び内からアウターチューブを人力で引き出すと、模擬通水管および硬化した発泡硬質ウレタンを含む全ての資材とともに容易に引き出すことができた。したがって、発泡硬質ウレタンは模擬伏びの内面に圧力を加えていないと考えられ、本実施例2で用いた発泡硬質ウレタンは、本実施例2で用いたアウターチューブおよびインナーチューブを引き伸ばすことはできなかったと考えられる。したがって、伏びの内面を発泡硬質ウレタンが支持して伏びの崩落を防止するためには、アウターチューブおよびインナーチューブの外径は、伏びの内径よりも十分に大きいものを用いることが好ましいと考えられる。
【0082】
図15は、模擬伏び内から引き出した資材を撮影した写真である。
【0083】
また、
図16は、インナーチューブ内の硬化後の発泡硬質ウレタンの断面を撮影した写真である。インナーチューブ内の発泡硬質ウレタンは、アウターチューブと模擬通水管に拘束されて、三日月状に硬化していた。
【0084】
また、
図17は、インナーチューブから取り出した硬化後の発泡硬質ウレタンの外観を撮影した写真である。インナーチューブから取り出した硬化後の発泡硬質ウレタンの内面には、模擬通水管(コルゲートポリエチレン管)の形状が転写されており、発泡硬質ウレタンは小さい隙間にも適切に充填されていた。
【0085】
(後半工程βについての実施例3)
前半工程αで伏び内に設けた発泡硬質ウレタン等の資材を撤去するための試験を行った。
【0086】
実際の伏びで試験を行うことは困難なので、
図18に示す模擬伏び40と、
図19に示す模擬伏び42を用いて発泡硬質ウレタン等の資材の撤去試験を行った。
図18に示す模擬伏び40は長さ4mで管径250mmの塩ビ管であり、直管である。一方、
図19に示す模擬伏び42は管径250mmの2本の塩ビ管44を角度11°のエルボ46で接続してなる、屈曲部を有する全長3.5mの管である。模擬伏び42は2本作製した。
【0087】
屈曲部を有する模擬伏び42も用いて撤去試験を行った理由は、伏びには屈曲したものがあり、また埋設当初は直管であっても経年変化で一部が沈み込んで上下に屈曲したものも少なからず存在するからである。
【0088】
アウターチューブおよびインナーチューブとしては、直径290mmの円筒状のポリエチレンチューブ(厚さ0.2mm)を使用した。また、前半工程αについての実施例2と同様に、スプレーガン、ガイドパイプ、ロープを
図3と同様に配置し、インナーチューブ内に発泡硬質ウレタンを充填し、模擬伏び40、42内に発泡硬質ウレタンを充填した。充填した発泡硬質ウレタンの圧縮強度は8.3N/cm
2であり、実施例1と同様である。
【0089】
模擬伏び40、42内に発泡硬質ウレタンを充填してから6日後(5日間養生した後)に、模擬伏び40内に設けた発泡硬質ウレタン等の資材の撤去試験を行った。
【0090】
図6を参照しながら前述した内容と同様に、模擬伏び40内に充填された発泡硬質ウレタン14を高圧水を用いて2段階で破壊した。具体的には、
図6(B)に示したのと同様に、まず、前方破壊ノズル30(ノズルの直径は50mm)で比較的小さい径の孔14Aを発泡硬質ウレタン14に伏び10の長手方向に開けた。孔14Aの直径は75mm程度であった。そして、2段階目の破壊では、
図6(C)に示したのと同様に、側方破壊回転ノズル32により、孔14Aの径を拡張するように発泡硬質ウレタン14を高圧水により破壊した。
【0091】
高圧水の供給は、最高圧力20MPa、洗浄水吐出量230L/minの高圧洗浄車により行った。
【0092】
高圧水の圧力を10MPa、12MPa、14MPa、16MPaと変えて、直管の模擬伏び40内の発泡硬質ウレタン14に前方破壊ノズル30で孔14Aを開けた結果を次の表1に示す。
【表1】
【0093】
高圧水の圧力が10MPaの場合は発泡硬質ウレタン14を破壊できなかった(孔を開けることができなかった)。高圧水の圧力が12MPaの場合は発泡硬質ウレタン14を破壊することはできた(孔を開けることはできた)が、破壊する(孔を開ける)までに時間がかかった。高圧水の圧力が14MPaの場合は高圧水の圧力が12MPaの場合よりも短時間に発泡硬質ウレタン14を破壊することができた(孔を開けることができた)。高圧水の圧力が16MPaの場合は高圧水の圧力が14MPaの場合よりも短時間に、かつ、破壊の程度(孔の径)もより大きく発泡硬質ウレタン14を破壊することができた。
【0094】
この結果から、高圧水の圧力は16MPaが適当であると判断し、屈曲部を有する模擬伏び42を用いての撤去試験では、高圧水の圧力は1段階目の破壊および2段階目の破壊とも16MPaにして試験を行い、破壊作業に要する時間も測定した。
【0095】
まず、前方破壊ノズル30を用いて比較的小さい径の孔14A(直径75mm程度)を、
図6(B)に示すように伏び10内に充填された発泡硬質ウレタン14に伏び10の長手方向に開けた。2本の模擬伏び42(No.1とNo.2とする)に孔14Aを開けたが、作業に要した時間はNo.1では12分43秒であり、No.2では9分45秒であった。前方破壊ノズル30を用いて直径75mm程度の孔14Aを開けただけでは、模擬伏び42内から発泡硬質ウレタン14等の資材を引き出すことはできなかった。
【0096】
次に、
図6(C)に示すように、側方破壊回転ノズル32を用いて孔14Aの径を拡張するように発泡硬質ウレタン14の破壊を行った。しかし、孔14A内を模擬伏び42の片道(3.5m)だけ移動させて孔14Aの径の拡張を25秒間程度行っただけでは、模擬伏び42内から発泡硬質ウレタン14等の資材を引き出すことはできなかった。
【0097】
そこで、模擬伏び42内から発泡硬質ウレタン14等の資材を過大な力を加えずに引き出すことができるまで、側方破壊回転ノズル32を用いて孔14Aの径の拡張を行った。模擬伏び42から発泡硬質ウレタン14等の資材を引き出すことができる状態にするまでに要した時間は、No.1では2分40秒であり、No.2では3分55秒であった。なお、前方破壊ノズル30を用いて開けた孔14Aの形状(模擬伏び42の長手方向と直交する断面における形状)はほぼきれいな円形であったが、側方破壊回転ノズル32を用いて孔14Aの径を拡張するように破壊した後は、きれいな円形を保っていなかった。
【0098】
次の表2に、模擬伏び42内から発泡硬質ウレタン14等の資材を引き出すことができる状態にするまでに要した、側方破壊回転ノズル32による作業時間等を示す。
【表2】
【0099】
表2に示す結果からわかるように、模擬伏び42内から発泡硬質ウレタン14等の資材を引き出すのに必要な、側方破壊回転ノズル32による作業時間は、伏び1mあたり40〜70s程度であると考えられる。ただし、必要な作業時間は現場の状況によっても異なると考えられるので、実際の現場では、伏び内から発泡硬質ウレタン等の資材を過大な力を加えずに引き出すことができる程度まで発泡硬質ウレタンの破壊が進んだかどうかを適宜判断しつつ、後半工程βの作業を進めることが望ましいと考えられる。