(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
除菌水を使用する際、従来技術のように各洗浄モードをオンすることやモード切り替えを毎回手動で行うのは、使用者にとって煩雑であり、操作性が悪い。また、キッチン等で除菌水を使用する場合、例えば、調理をしながらまな板や包丁等を除菌する際に、時間や手間を掛けないようにするため、以下に示す一連の工程がなるべく自動で切り替えられることが好ましい。
【0009】
一連の工程としては、始めに除菌対象物の汚れを落とすために水を吐出する工程(汚れ落とし工程)、次に除菌対象物を除菌するために除菌水を吐出する工程(除菌工程)、最後に除菌水を止水する工程(止水工程)である。
【0010】
一方で、本発明者らが行った実験によって、除菌対象物に汚れが付着したままの状態で除菌水が吐出されると、この汚れによって除菌性能が低下してしまうという知見が得られている。このため、除菌水の除菌性能を十分に発揮させるためには、除菌対象物に付着した汚れを予め洗い落としておくことが望ましい。
【0011】
しかしながら、時間や手間の観点から、汚れ落とし工程、除菌工程、止水工程という一連の工程を全て自動化してしまうと、除菌対象物によって異なる汚れ具合に対し、汚れ落とし工程において十分に汚れを落とすことができない場合がある。その結果、汚れが付着した状態の除菌対象物に除菌水を吐出することになってしまい、本発明者らの知見のとおり、除菌性能が落ち、除菌効果が弱くなるという課題があった。
【0012】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、除菌効果の維持及び操作性の向上を図ることができる除菌水吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係る除菌水吐出装置は、次亜塩素酸を含む除菌水を吐出する除菌水吐出装置であって、外部から供給された水を通す給水路と、前記給水路の所定の位置に配置され、前記給水路内の水を電気分解することにより前記除菌水を生成する除菌水生成手段と、前記給水路のうち前記除菌水生成手段の所定の位置よりも下流側の位置に配置され、前記除菌水を吐出する吐出手段と、前記除菌水に関する使用者の操作を受け付ける操作手段と、前記除菌水の生成及び吐出を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記操作手段により受け付けられた使用者の操作に基づいて、前記除菌水生成手段による電気分解がなされていない水を前記吐出手段から吐出する汚れ落とし工程と、前記除菌水生成手段による電気分解がなされて生成された前記除菌水を前記吐出手段から吐出する除菌工程と、を順に実行するように制御し、前記操作手段により受け付けられた使用者の操作により、前記汚れ落とし工程から前記除菌工程へと切り替え、所定の条件が満たされることにより、前記除菌工程において吐出される除菌水を止水するように制御することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る除菌水吐出装置は、外部から供給された水を通す給水路及び当該給水路の所定の位置に配置された除菌水生成手段を備え、この除菌水生成手段によって、外部から供給された水をもとに除菌水を生成するように構成されている。生成された除菌水は、給水路のうち下流側の部分に配置された吐出手段から吐出される。また、本発明に係る除菌水吐出装置は、除菌水に関する使用者の操作を受け付ける操作手段と、除菌水の生成及び吐出を制御する制御手段と、を更に備えている。
【0015】
除菌水生成手段は、給水路の所定の位置に配置され、給水路内の水を電気分解することにより除菌水を生成する。具体的には、給水路内の水を電気分解し、当該水に含まれている塩化物イオンから次亜塩素酸を発生させることにより、次亜塩素酸を含む水、すなわち除菌水を生成する。
【0016】
吐出手段は、給水路のうち上記除菌水生成手段の所定の位置よりも下流側の位置に配置され、除菌水生成手段により生成された除菌水を外部に吐出する。吐出手段からの除菌水の吐出は、操作手段により受け付けられた使用者の操作に基づいて行われる。また、除菌水の生成及び吐出は、制御手段によって制御される。
【0017】
制御手段は、操作手段により受け付けられた使用者の操作に基づいて、汚れ落とし工程と、除菌工程と、を順に実行するように制御する。汚れ落とし工程とは、包丁等の除菌対象物に付着した汚れを洗い落とすために、除菌水生成手段による電気分解がなされていない水を吐出手段から吐出する工程である。除菌工程とは、除菌対象物を除菌するために、除菌水生成手段による電気分解がなされて生成された除菌水(次亜塩素酸を含む水)を吐出手段から吐出する工程である。例えば、操作手段が操作された時点で直ちに除菌水の吐出を開始するのではなく、除菌水ではない通常の水を吐出する工程(汚れ落とし工程)を経た後、除菌水を吐出する工程(除菌工程)を行うように、制御手段による制御が行われる。
【0018】
本発明では、洗い残しの汚れによる除菌効果の減少を防ぐため、上記のように除菌工程に先立って汚れ落とし工程が実行されることで、汚れ落とし工程において除菌対象物に付着した汚れを予め洗い落としておくような使い方が可能となっている。
【0019】
これにより、除菌対象物を除菌するためには、まず、水で除菌対象物に付着した汚れを落とし、その後、除菌対象物に付着している菌を対象に除菌を行うことができる。よって、例えば調理中に除菌することを想定すると、本発明では、汚れ落とし工程で汚れを落とし、除菌工程で除菌することで、調理中の次の作業において、効果的に除菌された道具を用いて安心して調理することが可能になる。
【0020】
また、制御手段は、操作手段により受け付けられた使用者の操作により、汚れ落とし工程から除菌工程へと切り替え、所定の条件が満たされることにより、除菌工程において吐出される除菌水を止水するように制御する。つまり、制御手段は、汚れ落とし工程から除菌工程へは手動で切り替えられるように制御し、除菌工程から止水工程は自動で切り替えられるように制御する。
【0021】
これにより、本発明に係る除菌水吐出装置は、汚れ落とし工程から除菌工程を自動で切り替えてしまうことに起因する、汚れ落とし不足による除菌効果の減少を防ぐことができる。また、本発明に係る除菌水吐出装置は、汚れ落とし工程から除菌工程を手動で切り替えるようにすることで、大きさや汚れの具合が異なる除菌対象物に対し、汚れを洗い落としたと判断するタイミングを使用者が決めることができる。したがって、本発明に係る除菌水吐出装置によれば、様々な除菌対象物に対して、適切に汚れを落とすことができる。
【0022】
さらに、本発明では、除菌工程から止水工程を自動で切り替えることで、除菌対象物に向かって除菌水を過剰に吐出することを防ぐことができる。除菌工程では、除菌対象物に除菌水を付着させるだけでよいが、除菌水の付着を視認することが困難であるので、除菌水の止水を手動にしてしまうと、除菌水を過剰に付着させることが起こりうる。したがって、除菌工程から止水工程への切り替えについては、自動で行われることが好ましい。また、除菌対象物の汚れは洗い落とされた状態であるため、除菌水を付着させるための除菌水の吐出時間は、除菌対象物に応じて大きく異なるものではない。このため、除菌工程から止水工程への切り替えは、自動で行われても特に問題とならない。
【0023】
これにより、本発明に係る除菌水吐出装置は、除菌工程から止水工程を自動で切り替えることにより、各工程をオンすることや工程の切り替えを毎回手動で行うよりも操作性を向上させることができる。
【0024】
上述したとおり、本発明に係る除菌水吐出装置は、除菌対象物の汚れを適切に落とした状態で除菌水を吐出することで、除菌効果を弱めることがなく、かつ、一連の工程の中で、工程の切り替えを自動化できるところは自動化することで、操作性を向上させることができる。
【0025】
また、本発明に係る除菌水吐出装置では、前記制御手段は、前記汚れ落とし工程の開始から終了までの時間に応じて、前記除菌工程の開始から前記除菌水の止水までの時間を変更するように制御することが好ましい。
【0026】
除菌工程における除菌水の止水を自動で行うようにすると、除菌対象物のサイズが大きい場合、除菌水が付着しない箇所が発生する可能性がある。しかしながら、サイズ判別のためのセンサ等を増やすことなく、除菌対象物のサイズを自動で判別することは困難である。
【0027】
そこで、この好ましい態様では、除菌対象物のサイズを判別するために、汚れ落とし工程の開始から終了までの時間(経過時間)を用いる。この経過時間を用いる理由は、除菌対象物のサイズに応じて、この経過時間が変化すると考えられるからである。例えば、除菌対象物のサイズが大きいと、この経過時間が長くなると考えられる。
【0028】
よって、この好ましい態様では、汚れ落とし工程の経過時間に応じて、除菌工程の開始から除菌水の止水までの時間を変更することにより、様々なサイズの除菌対象物に対して適切に除菌を行うことができる。例えば、汚れ落とし工程の経過時間が長くなるにつれ、除菌工程の開始から除菌水の止水までの時間を長くすることで、サイズが大きい除菌対象物であっても、除菌途中で止水されることを防止することができる。さらに、この好ましい態様では、除菌対象物の大きさが変わる度に、使用者は除菌水の吐出時間を予め選択する等の手間がないので、除菌水吐出装置の操作性を向上させることができる。
【0029】
また、本発明に係る除菌水吐出装置では、前記制御手段は、前記汚れ落とし工程において前記吐出手段から吐出される水の流量を変更可能とし、前記除菌工程において前記吐出手段から吐出される除菌水の流量を変更不可とするように制御することが好ましい。
【0030】
汚れ落とし工程では、例えば除菌対象物の汚れ具合により使用者が吐出流量(水勢)を変更できるようにすることで、除菌対象物の汚れ具合に応じて吐出流量を変更して、除菌対象物の汚れを適切に洗い流すことができる。
【0031】
一方で、汚れ落とし工程と同様に、除菌工程においても除菌水の流量を変更してしまうと、除菌水の流量を変更した際に、除菌水に含まれる次亜塩素酸の濃度が変わってしまう。除菌水に含まれる次亜塩素酸の濃度が大きく変動すると、次亜塩素酸の濃度が所定濃度よりも薄い場合に除菌対象物を確実に除菌することが困難になってしまう。
【0032】
そこで、この好ましい態様では、汚れ落とし工程における水の流量を変更できるようにし、除菌工程における除菌水の流量を変更できないようにすることで、様々な除菌対象物に対して汚れを適切に洗い流すことができ、かつ、所望の濃度の次亜塩素酸を含む除菌水で適切に除菌することができる。
【0033】
例えば、除菌工程中に除菌水の流量を少から多に変更した場合、次亜塩素酸の濃度は低下し、除菌工程中に除菌水の流量を多から少に変更した場合、次亜塩素酸の濃度は増加してしまう。したがって、所望の濃度の次亜塩素酸を含む除菌水で適切に除菌するために、この好ましい態様に係る除菌水吐出装置のように、除菌工程における除菌水の流量を変更できないようにすると良い。
【0034】
また、本発明に係る除菌水吐出装置では、前記制御手段は、前記汚れ落とし工程において前記吐出手段から吐出される水の吐出範囲よりも、前記除菌工程において前記吐出手段から吐出される除菌水の吐出範囲の方が広くなるように制御することが好ましい。
【0035】
一般的に吐出範囲が狭い方が吐出される水の勢いが増すため、汚れ落とし工程では、吐出範囲を狭くして、どんな汚れに対しても、水の勢いを利用して除菌対象物の汚れを適切に洗い流すことが好ましい。一方、除菌工程では、除菌対象物の汚れが落とされた状態であり、吐出される除菌水の勢いは求められない。また、除菌工程において、汚れ落とし工程と同じく狭い吐出範囲で吐出してしまうと、サイズの大きい除菌対象物に対し、除菌工程の時間が長くなってしまう可能性がある。さらに、除菌工程では、除菌水の吐出は自動的に停止されるため、除菌対象物に対し、除菌水を迅速に広く行き亘らせることが望ましい。
【0036】
そこで、この好ましい態様では、汚れ落とし工程において吐出される水の吐出範囲よりも、除菌工程において吐出される除菌水の吐出範囲の方が広くなるようにすることで、除菌対象物の汚れは、狭い吐出範囲による水の勢いで適切に洗い流すことができ、かつ、除菌対象物を除菌する際は、広い吐出範囲で、除菌水を迅速に広く行き亘らせることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、除菌効果の維持及び操作性の向上を図ることができる除菌水吐出装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0040】
<除菌水吐出装置の構成>
図1は、本発明の実施形態に係る除菌水吐出装置が、キッチンのシンクに取り付けられた状態を示す図である。除菌水吐出装置WDは、二つのスパウト(メインスパウト100、除菌用スパウト200)を備えており、これらが、例えばシンクSKの上面のうち使用者から見て奥側の部分にそれぞれ立設している。使用者から見て右側に立設しているメインスパウト100は、一般的なスパウトと同様に、水道水(水道管から供給される水)を吐出するものである。メインスパウト100の側面には操作レバー101が配置されている。使用者が操作レバー101を回転させると、その回転角度に応じた流量の水道水が、メインスパウト100の先端からシンクSKに向けて吐出される。
【0041】
使用者から見て左側に立設している除菌用スパウト200は、除菌水又は水道水を吐出するものである。除菌水とは、比較的高濃度の次亜塩素酸を含むことによって除菌性能が付与された水のことである。除菌用スパウト200から吐出された除菌水を包丁やまな板等の表面にかけると、当該表面が除菌され、菌の増殖が抑制される。除菌用スパウト200からの除菌水の吐出は、操作部300に対する使用者の操作に基づいて行われる。
【0042】
操作部300は、例えばシンクSKの上面のうち、メインスパウト100と除菌用スパウト200との間となる位置に配置されている。操作部300は、除菌水に関する使用者の操作を受け付ける。また、操作部300は、例えば使用者が吐出モードを切り替える切替部310を含む操作部としての機能を有するほか、除菌水吐出装置WDの動作状態を使用者に報知する表示部315としての機能をも有している。操作部300の具体的な構成や機能については、後に詳しく説明する。
【0043】
除菌水吐出装置WDは、シンクSKの上面側に配置されたメインスパウト100、除菌用スパウト200、及び操作部300のほかに、除菌用スパウト200から吐出する除菌水を生成するための機構や制御部等を更に備えており、これらがシンクSKの内部に収納されている。
【0044】
図2は、上記のようにシンクSKの内部に収納されている部分も含めて、除菌水吐出装置WDの全体の構成を模式的に示す図である。
図2に示したように、除菌水吐出装置WDは、外部(水道管や給湯機)から供給された水が通る配管として、給水配管110と、給湯配管120と、除菌水用配管130とを備えている。尚、
図2においては、一部の配管や切り替え弁の図示を省略している。省略した配管等の構成や機能については、他の図を参照しながら後に説明することとする。
【0045】
給水配管110は、不図示の水道管とメインスパウト100とを繋ぐ配管である。また、給湯配管120は、不図示の給湯機とメインスパウト100とを繋ぐ配管である。給水配管110を通る水(冷水)と、給湯配管120を通る水(温水)とは、混合水栓であるメインスパウト100にそれぞれ供給され、設定温度となるように混合された後にメインスパウト100から吐出される。既に述べたように、メインスパウト100からの水の吐出は、使用者による操作レバー101の操作に基づいて行われる。
【0046】
除菌水用配管130は、給水配管110の途中に配置された流路切り替え弁410と、除菌用スパウト200とを繋ぐ配管である。流路切り替え弁410は、水道管からの水が給水配管110を通ってメインスパウト100に供給される状態と、水道管からの水が除菌水用配管130を通って除菌用スパウト200に供給される状態とが切り替えられる構成となっている。
【0047】
電解槽600は、除菌水用配管130の所定の位置に配置されている。電解槽600は、中空の容器であって、除菌水用配管130と共に、除菌用スパウト200に繋がる流路の一部を構成するように配置されている。
【0048】
電解槽600の内部には、一対の電極(不図示)が配置されており、これらの間に電圧を印加することで、電解槽600の水を電気分解することが可能となっている。水を電気分解すると、陽極側の電極では下記の式(1)の反応が起き、陰極側の電極では式(2)の反応が起きる。式(1)及び式(2)に示したように、陽極からは酸素が発生し、陰極からは水素が発生する。
陽極:2H
2O→4H
++O
2+4e
- (1)
陰極:4H
2O+4e
-→2H
2+4OH
- (2)
【0049】
ここで、電解槽600の内部に配置された電極には、触媒として、白金・イリジウム(Pt・IrO
2)が塗布されている。このため、陽極側の電極では下記の式(3)の反応が起き、水に含まれる塩化物イオン(Cl
-)から塩素が発生する。
陽極:2Cl
-→Cl
2+2e
- (3)
【0050】
塩素が発生すると、電解槽600の内部では更に下記の式(4)、式(5)の反応が起きて、次亜塩素酸(HClO)及び次亜塩素酸イオン(ClO
-)が発生する。これらは殺菌力を有するものである。
Cl
2+H
2O→HClO+H
2+Cl
- (4)
HClO→ClO
-+H
+ (5)
【0051】
以上のように、電解槽600の内部では、塩化物イオンを含む水を電気分解することによって、殺菌力を有する水、すなわち除菌水が生成される。電解槽600は、本発明の除菌水生成手段に該当するものである。除菌水用配管130を通る水が電解槽600に供給されると、これをもとに除菌水が電解槽600において生成されて、下流側の除菌用スパウト200に供給され吐出される。
【0052】
制御部700は、流路切り替え弁410、及び電解槽600等、除菌水吐出装置WDを構成する各種機器の動作を制御する。制御部700には、操作部300に対して行われた使用者の操作に基づく信号(操作信号)が入力される。制御部700は、当該操作信号に基づいて、流路切り替え弁410等の動作を制御する。
【0053】
<操作部の具体的構成>
図3は、操作部300の具体的な構成の一例を示す図である。操作部300は、既に述べたように、シンクSKの上面に配置されており、使用者がモードや工程を切り替える切替部310を含む操作部としての機能を有するほか、除菌水吐出装置WDの動作状態を使用者に報知する表示部としての機能をも有する。
図3に示したように、操作部300は、切替部310と、流量設定操作部330とを有している。また、操作部300の表示部315は、吐出状態表示部340と、除菌水残時間表示部350と、流量表示部370とを更に有している。
【0054】
切替部310は、除菌用スパウト200から除菌水が吐出されるように、使用者が操作するボタンである。後に詳しく説明するが、除菌水吐出装置WDでは、切替部310が押されてもその時点では除菌水を吐出せず、まず(次亜塩素酸を含まない)通常の水を除菌用スパウト200から吐出する。その後、使用者によって切替部310が再度押されると、次亜塩素酸を含む除菌水の吐出が開始される。換言すれば、使用者が切替部310を押すことで、除菌用スパウト200から吐出される水が通常の水から除菌水へと切り替わる。尚、上記のようにまず通常の水を吐出する工程を「汚れ落とし工程」と称し、汚れ落とし工程の後に除菌水を吐出する工程を「除菌工程」と称する。
【0055】
除菌水吐出装置WDでは、除菌水の吐出に先立って通常の水を吐出するため、除菌対象物に付着している汚れを通常の水によってまず洗い落とした後で、除菌対象物に除菌水をかけるような使い方が可能となっている。これにより、除菌対象物に付着した汚れによって除菌水の除菌性能が低下してしまうことがなく、除菌対象物における菌の増殖を確実に抑制することができる。
【0056】
切替部310が2度押されて除菌水の吐出が開始された後は、特に使用者による操作を待つことなく、除菌水の吐出が自動的に停止する。除菌水が自動停止するまでの時間は、予め所定の時間が設定されていてもよいし、後述するように汚れ落とし工程の経過時間により設定されるようにしてもよい。
【0057】
流量設定操作部330は、汚れ落とし工程で吐出される水の流量を設定するボタンである。使用者が流量設定操作部330を押すごとに、流量が「小」、「中」、「大」の順に切り替わるようになっている。具体的には、流量設定操作部330が押されると、流量設定信号が制御部700に通知され、制御部700は、流量設定信号に基づいて、除菌水用配管130に流れる水の量を制御する。この流量の変更は、流路切り替え弁410が有する流量調整機構によって行われるが、除菌水用配管130の途中に別途流量調整弁を配置して、当該流量調整弁を制御部700が制御することによって行われてもよい。
【0058】
流量表示部370は、流量設定操作部330により設定されて流量を表示する表示部である。一例として、流量表示部370は、「大」、「中」、「小」の3つのLEDからなり、そのうちの一つが点灯した状態となっている。例えば、「大」のLEDが点灯した状態においては、汚れ落とし工程において吐出される水の流量が最も多くなるように設定されている。この状態で、流量設定操作部330が一度押されると、流量表示部370においては「中」のLEDが点灯した状態となり、汚れ落とし工程において吐出される水の流量が(大のときよりも)少なくなるように設定される。流量設定操作部330が更にもう一度押されると、流量表示部370においては「小」のLEDが点灯した状態となり、汚れ落とし工程において吐出される水の流量が最も少なくなるように設定される。
【0059】
吐出状態表示部340は、除菌用スパウト200から吐出される水の状態(種類等)を、使用者に報知するためのLEDである。除菌用スパウト200から吐出されている水が(除菌水ではなく)通常の水であるときには、吐出状態表示部340は消灯している。除菌用スパウト200から吐出されている水が除菌水であるときには、吐出状態表示部340は点灯している。
【0060】
除菌水残時間表示部350は、3つのLEDからなり、これらの点灯状態によって、除菌水の吐出が自動停止するまでの時間の目安を表示する。次に、除菌水吐出装置WD全体の具体的な動作について説明する。
【0061】
<除菌水吐出装置の具体的動作>
図4及び
図5を参照しながら、除菌水吐出装置WDの具体的な動作について説明する。
図4は、除菌水吐出装置WDの動作の一例を示すフローチャートである。
図5は、除菌水吐出装置WDにおける汚れ落とし工程時及び除菌工程時の流路状態を示す図である。
【0062】
図4に示した一連の処理は、水が吐出されていない状態又はメインスパウト100から水が吐出されている状態で、使用者により切替部310が一度押されたときに実行される処理である。また、
図4に示した一連の処理は、汚れ落とし工程における経過時間に応じて、除菌工程の開始から終了(除菌水の止水)までの時間が設定される場合の処理である。
【0063】
ステップS01において、制御部700は、汚れ落とし工程を開始するため、流路切り替え弁410に対し、除菌水用配管130に水が流れるように流路を切り替えるよう制御する。つまり、制御部700は、操作部300から操作信号を受け付けると、流路切り替え弁410を除菌水用配管130側に開弁するように制御し、除菌用スパウト200側に水道管からの水が供給されるようにする。
【0064】
図5(A)は、汚れ落とし工程時の流路状態を示している。同図において矢印で示したように、水道管からの水は、除菌水用配管130の内部を流路切り替え弁410、電解槽600の順に通った後、除菌用スパウト200からシンクSKへ吐出される。このときの電解槽600内の電極には、電圧が印加されていない。
【0065】
ステップS02において、制御部700は、流路切り替え弁410の状態を除菌水用配管130側に開弁するよう切り替えるとほぼ同時に、タイマー(t)をリセットしてスタートさせる。
【0066】
尚、汚れ落とし工程においては、電解槽600の内部に配置された電極には電圧は印加されない。電解槽600は電気分解を行わないため、電解槽600では次亜塩素酸が発生しない。その結果、除菌用スパウト200からシンクSKへ吐出される水には高濃度の次亜塩素酸が含まれず、通常の水道水と同じ水が吐出されることとなる。
【0067】
ステップS03において、制御部700は、操作部300に対して、使用者からの操作が行われたか否かを判定する。つまり、制御部700は、操作部300の切替部310が再度使用者により押されたか否かを判定する。切替部310が押されていなければ、汚れ落とし工程の処理が繰り返される。ステップS03において切替部310が押されていた場合には、ステップS04に移行する。
【0068】
ステップS04において、制御部700は、汚れ落とし工程を終了するように制御する。具体的には、制御部700は、タイマー(t)をストップし、計測した時間tをt1として設定する。この時間t1は、汚れ落とし工程の開始から終了までの時間を表す。
【0069】
ステップS05において、制御部700は、設定した時間t1に基づき、t2を決定する。時間t2は、次の除菌工程を実行する時間を表す。時間t1から時間t2への決定について、制御部700は、例えば、t1を変数とする関数や、t1とt2との対応テーブルなどを予め用意しておき、時間t1から時間t2が一意に決定できるようにしておくと良い。
【0070】
ステップS06において、制御部700は、除菌工程を開始するため、電解槽600の内部に配置された電極に電圧を印加して電気分解を開始する。電解槽600の内部では、除菌水用配管130から、塩化物イオンを含む水が供給される。その結果、電解槽600においては電気分解によって次亜塩素酸が生成され、除菌用スパウト200からは除菌性能を有する除菌水が吐出される。
【0071】
図5(B)は、除菌工程時の流路状態を示している。同図において矢印で示したように、水道管からの水は、除菌水用配管130の内部を流路切り替え弁410、電解槽600の順に通った後、除菌用スパウト200からシンクSKへ吐出される。このときの電解槽600内の電極には、電圧が印加されている。したがって、除菌用スパウト200から次亜塩素酸を含む除菌水が吐出される。
【0072】
ステップS07において、制御部700は、電解槽600の内部に配置された電極に電圧を印加するとほぼ同時に、タイマー(t)をリセットしてスタートさせる。
【0073】
ステップS08において、制御部700は、除菌工程実行時間(t)が所定時間(t2)を超えたか否かを判定する。タイマー(t)がt2を超えていなければ、除菌工程の処理が繰り返される。タイマー(t)がt2を超えていれば、ステップS09に移行する。
【0074】
ステップS09において、制御部700は、除菌工程を終了するため、除菌水用スパウト200から吐出される除菌水を止水するよう制御する。具体的には、制御部700は、流路切り替え弁410を閉弁した状態に戻して、電解槽600内の電極への電圧の印加を停止し、除菌用スパウト200からの除菌水の吐出を(使用者の操作に基づくことなく)自動的に停止する。
【0075】
ステップS10において、制御部700は、タイマーをストップする。尚、ステップS09とステップS10とについて、順序は問わない。
【0076】
尚、ステップS06からステップS10までの除菌工程において除菌用スパウト200から吐出される除菌水の吐出範囲は、汚れ落とし工程において吐出される水の吐出範囲よりも広範囲とすると良い。このような吐出範囲の切り替えは、除菌用スパウト200の吐出口近傍に配置された内部機構(不図示)によって行われる。このような構成の他、除菌用スパウト200内に二つの流路及び(それぞれに対応する)二つの吐出口を形成しておき、汚れ落とし工程においては一方の流路及び吐出口から水を吐出し、除菌工程においては他方の流路及び吐出口から除菌水を吐出することとしてもよい。このような構成によっても、汚れ落とし工程と除菌工程とで吐出範囲(水流の太さ)を異ならせることができる。
【0077】
また、ステップS06からステップS10までの除菌工程においては、制御部700は、3つのLEDからなる除菌水残時間表示部350の表示を変化させることにより、除菌水の吐出が自動停止されるタイミングの目安が使用者に分かるように制御する。具体的には、ステップS06における除菌工程の開始時に、除菌水残時間表示部350は、3つのLEDを全て点灯させる。その後、カウントアップしているタイマーの時間が、時間t2に近づくにつれて、除菌水残時間表示部350は、点灯しているLEDの数を徐々に減少させて行く。除菌水残時間表示部350は、タイマーの時間がt2を超えた時点で、除菌水残時間表示部350を構成する全てのLEDを消灯させた状態とする。
【0078】
また、ステップS08において、制御部700は、除菌工程の実行時間に基づいて、除菌工程における除菌水の止水タイミングを決定したが、使用者の操作とは関係がない、又は使用者の操作とは独立した所定の条件が満たされることにより、この止水タイミングを決定してもよい。例えば、所定の条件とは、除菌工程の実行時間が設定値を超えること以外にも、除菌工程における除菌水の吐出量が設定量を超えることなどでも良い。
【0079】
以上のように、本実施形態に係る除菌水吐出装置WDでは、汚れ落とし工程から除菌工程へは手動で切り替えられるように制御し、除菌工程から止水工程は自動で切り替えられるように制御することで、除菌効果の維持及び操作性の向上を図ることができる。
【0080】
<キッチンにおける仕様態様の例>
図6は、除菌水吐出装置WDが、キッチンで行われる調理作業の合間において使用される態様の一例を示す図である。
図6では、キッチンで行われる調理作業のうち、まな板の上で肉を切り、その後、同じまな板の上で野菜を切るまでの一連の作業(第一作業KS1、第二作業KS2、第三作業KS3、第四作業KS4)を、模式的に図示している。
【0081】
まず、使用者は、まな板KBの上に肉Mを載せた状態で、包丁KNを使って肉Mを切る作業(第一作業KS1)を行う。このとき、肉Mから出た汁等が汚れとしてまな板KB及び包丁KNに付着するほか、肉Mに付着していた菌もまな板KB及び包丁KNに付着する。従って、このままの状態で野菜VGを切る作業を行うと、板KB及び包丁KNを介して汚れや菌が野菜VGに付着してしまうこととなる。そこで、野菜VGを切る作業を行う前に、除菌水吐出装置WDを使用することにより、板KB及び包丁KNの洗浄、除菌を行う。
【0082】
上記の第一作業KS1が完了した後、使用者は、汚れや菌が付着したまな板KBを除菌用スパウト200の下方に位置させる。この状態で、操作部300の切替部310を一度押す。除菌水吐出装置WDでは汚れ落とし工程が開始され、除菌用スパウト200からは通常の水が吐出される。使用者は、吐出された水をまな板KBにかけて、まな板KBに付着した汚れを洗い落とす(第二作業KS2)。同様に、包丁KNに付着した汚れも洗い落とす。汚れ落とし工程において、まな板KBや包丁KNに付着していた汚れは概ね洗い落とされる。
【0083】
使用者は、まな板KBや包丁KNに付着していた汚れが十分に洗い落とされたことを確認した後、再度切替部310を押す。除菌用スパウト200からの水の吐出は一旦停止し、止水工程が開始されてもよい。まな板KB等の表面に残留していた水は、その殆どが止水工程の間にシンクSKに落下する。換言すれば、止水工程の間にまな板KB等の水切りが行われる。
【0084】
止水工程に続いて、除菌工程が自動的に開始され、除菌用スパウト200からは除菌水が吐出され始める。使用者は、吐出された除菌水をまな板KB等にかけて、まな板KB等の除菌を行う(第三作業KS3)。このとき、電解槽600の内部では電気分解が行われており、次亜塩素酸が生成される。除菌水の吐出は所定の時間行われた後、自動的に止水され、除菌工程が完了する。
【0085】
除菌工程が完了した後、使用者は、まな板KBの上に野菜VGを載せた状態で、包丁KNを使って野菜VGを切る作業(第四作業KS4)を行う。まな板KB及び包丁KNは十分に除菌された状態となっているため、肉Mからの菌が野菜VGに付着してしまうことがない。このように、除菌水吐出装置WDによれば、調理の合間においてまな板KBや包丁KN等を短時間で且つ頻繁に除菌することができるため、食中毒の予防のために極めて有効である。
【0086】
<汚れ落とし工程の切替タイミングと除菌工程の止水タイミング>
次に、汚れ落とし工程の切替タイミングと、除菌工程の止水タイミングとについて、2つの場合に分けて説明する。2つの場合とは、除菌工程の止水タイミングが、予め設定された一のタイミングである場合(その1)と、汚れ落とし工程の経過時間に基づいて変更される場合(その2)とである。
【0087】
図7は、汚れ落とし工程の切替タイミングと除菌工程の止水タイミング(その1)との一例を示す図である。
図7に示す上段は、まな板KB11に汚れが少し付着している場合の各タイミングを示す。この場合、使用者によりt11のタイミングで切替部310が押されることで、汚れ落とし工程が開始される。次に、使用者は、まな板KB11の汚れを洗い落とし、t12のタイミングで切替部310を押すとする。t12の時点では、まな板KB12は、汚れが洗い落とされている状態である。その後、除菌工程が開始され、除菌水が除菌用スパウト200からS1の時間だけ吐出され、自動止水する。
【0088】
図7に示す中段は、まな板KB21に、まな板KB11より汚れが付着している場合の各タイミングを示す。この場合、使用者によりt11のタイミングで切替部310が押されることで、汚れ落とし工程が開始される。次に、使用者は、まな板KB21の汚れを洗い落とし、t13のタイミングで切替部310を押すとする。t13の時点では、まな板KB22は、汚れが洗い落とされている状態である。その後は、
図7に示す上段と同じである。
【0089】
図7に示す下段は、まな板KB31に、まな板KB21より汚れが付着している場合の各タイミングを示す。この場合、使用者によりt11のタイミングで切替部310が押されることで、汚れ落とし工程が開始される。次に、使用者は、まな板KB31の汚れを洗い落とし、t14のタイミングで切替部310を押すとする。t14の時点では、まな板KB32は、汚れが洗い落とされている状態である。その後は、
図7に示す上段と同じである。
【0090】
図7に示すように、除菌対象物のまな板KB11、21、31に付着した汚れの程度によって、汚れ落とし工程の経過時間(t11からt12、t11からt13、t11からt14)が異なることが分かる。したがって、汚れ落とし工程から除菌工程への切替は、自動ではなく、手動で行う方が好ましい。
【0091】
一方で、除菌工程の止水タイミングについて、
図7に示すように、除菌対象物のまな板KB12、22、32は、いずれも汚れが洗い落とされている状態であるので、除菌対象物に付着していた汚れの程度に関係なく、除菌水を吐出する時間を自動的に決定しても問題ない。
【0092】
そこで、本実施形態に係る除菌水吐出装置WDでは、汚れ落とし工程から除菌工程へは手動で切り替えられるように制御し、除菌工程から止水工程は自動で切り替えられるように制御する。これにより、本実施形態に係る除菌水吐出装置WDでは、除菌効果の維持及び操作性の向上を図ることができる。
【0093】
図8は、汚れ落とし工程の切替タイミングと除菌工程の止水タイミング(その2)との一例を示す図である。
図8に示す上段は、小サイズのまな板KB41に汚れが付着している場合の各タイミングを示す。この場合、使用者によりt21のタイミングで切替部310が押されることで、汚れ落とし工程が開始される。次に、使用者は、まな板KB41の汚れを洗い落とし、t22のタイミングで切替部310を押すとする。t22の時点では、まな板KB42は、汚れが洗い落とされている状態である。その後、除菌工程が開始され、除菌水が除菌用スパウト200からS1の時間だけ吐出され、自動止水する。
【0094】
図8に示す中段は、中サイズのまな板KB51に、まな板KB41より広範囲の汚れが付着している場合の各タイミングを示す。この場合、使用者によりt21のタイミングで切替部310が押されることで、汚れ落とし工程が開始される。次に、使用者は、まな板KB51の汚れを洗い落とし、t23のタイミングで切替部310を押すとする。t23の時点では、まな板KB52は、汚れが洗い落とされている状態である。その後、除菌工程が開始され、除菌水が除菌用スパウト200からS2(>S1)の時間だけ吐出され、自動止水する。
【0095】
図8に示す下段は、まな板KB61に、まな板KB51より広範囲の汚れが付着している場合の各タイミングを示す。この場合、使用者によりt21のタイミングで切替部310が押されることで、汚れ落とし工程が開始される。次に、使用者は、まな板KB61の汚れを洗い落とし、t24のタイミングで切替部310を押すとする。t24の時点では、まな板KB62は、汚れが洗い落とされている状態である。その後、除菌工程が開始され、除菌水が除菌用スパウト200からS3(>S2)の時間だけ吐出され、自動止水する。
【0096】
ここで、汚れが洗い落とされている状態の除菌対象物に対して除菌する際、除菌対象物の大きさに応じて除菌水の吐出時間を変えることが望ましい。その際、使用者の手間やセンサ等を増やさずに除菌対象物の大きさを判別できることが好ましい。
【0097】
そこで、
図8に示すように、除菌対象物のまな板KB41、51、61に付着した汚れの範囲によって、汚れ落とし工程の経過時間(t21からt22、t21からt23、t21からt24)が異なることに着目する。
図8に示すように、除菌対象物の大きさに応じて、汚れ落とし工程の経過時間が長くなっていることが分かる。
【0098】
したがって、制御部700は、この汚れ落とし工程の経過時間の違いを利用して、除菌対象物の大きさを推定する。具体的には、制御部700は、汚れ落とし工程の経過時間が長くなるにつれ、除菌工程の開始から止水までの経過時間(以下、実行時間ともいう)を長くするようにする。汚れ落とし工程の経過時間と、除菌工程の実行時間との関係は、予め行われた実験等に基づいて制御部700等に設定されていればよい。
【0099】
例えば、
図8に示すように、制御部700は、t21からt22までの汚れ落とし工程の経過時間に対して、除菌工程の実行時間S1を決定する。また、制御部700は、t21からt23までの汚れ落とし工程の経過時間に対して、除菌工程の実行時間S2(>S1)を決定する。また、制御部700は、t21からt24までの汚れ落とし工程の経過時間に対して、除菌工程の実行時間S3(>S2)を決定する。
【0100】
これにより、本実施形態に係る除菌水吐出装置WDでは、汚れ落とし工程の経過時間から除菌対象物の大きさを推定し、除菌工程の実行時間Sを変更することで、除菌対象物の大きさに応じて、除菌水の吐出を止水するまでの時間を自動的に変更することができる。
【0101】
<吐出範囲>
次に、汚れ落とし工程における吐出範囲と、除菌工程における吐出範囲とを異なるように構成した好ましい態様について、
図9を用いて説明する。
図9は、汚れ落とし工程と除菌工程との吐出範囲の違いを説明するための図である。
図9(A)は、汚れ落とし工程における吐出範囲の一例を示す図である。
図9(A)に示すように、汚れ落とし工程では、吐出範囲AR1を狭くすることで、流量によって汚れを適切に洗い流すことができる。
【0102】
図9(B)は、除菌工程における吐出範囲の一例を示す図である。
図9(B)に示すように、除菌工程では、汚れ落とし工程よりも吐出範囲AR2を広くする。これにより、除菌工程では、広範囲に除菌水を吐出することで、サイズが大きい除菌対象物でも短時間で広範囲に除菌を行うことができる。したがって、除菌工程において除菌水を広範囲に吐出する除菌水吐出装置WDは、様々な除菌対象物に対して、適切に除菌することができる。これにより、この好ましい除菌水吐出装置WDによれば、汚れ落とし工程と、除菌工程とにそれぞれ適した吐出範囲で吐出することができる。
【0103】
<除菌対象物の状態変化における各工程の経過時間及び流量>
次に、除菌対象物の状態変化における各工程の経過時間及び流量について、概念的な値を用いて説明する。
図10は、除菌対象物の状態変化における各工程の経過時間及び流量を比較するための図である。
図10に示す値は、それぞれの最大値を10とし、比較のために用いる値であり、値自体に意味があるものではない。
【0104】
図10に示すように、汚れ落とし工程における経過時間について、汚れ度合いが小さいよりも大きい方が、経過時間が長くなる傾向にある。また、この経過時間は、除菌対象物が大きいほど、経過時間が長くなる傾向にある。一番長い経過時間(汚れ度合いが「大」、除菌対象物の大きさが「大」)と、一番短い経過時間(汚れ度合いが「小」、除菌対象物の大きさが「小」)との差は、例えば「8」である。
【0105】
また、汚れ落とし工程における流量(水勢)は、汚れ落とし工程における経過時間と同じ傾向にある。よって、汚れ度合いが小さいよりも大きい方が、流量が多くなり、除菌対象物が大きいほど、流量が少なくするようにすると良い。一番多い流量(汚れ度合いが「大」、除菌対象物の大きさが「大」)と、一番少ない流量(汚れ度合いが「小」、除菌対象物の大きさが「小」)との差は、例えば「4」である。
【0106】
一方、除菌工程における経過時間は、汚れ落とし工程において汚れが落とされているため、汚れ度合いには無関係である。また、この経過時間は、除菌対象物が大きいほど、経過時間が長くなる傾向にある。一番長い経過時間(除菌対象物の大きさが「大」)と、一番短い経過時間(除菌対象物の大きさが「小」)との差は、例えば「2」である。
【0107】
また、除菌工程における流量は、上述したとおり、除菌性能の観点から、除菌水に含まれる次亜塩素酸の濃度をできるだけ変動させない方が良いので、汚れ度合い、及び除菌対象物の大きさに無関係とし、一定にする方がよい。
【0108】
したがって、
図10を参照すると分かるように、汚れ落とし工程は、汚れ度合いや除菌対象物の大きさにより、経過時間が大きく異なる。このため、汚れ落とし工程における経過時間は、使用者の意思により変更できる方が良いので、汚れ落とし工程から除菌工程への切り替えは、手動で行うことができるようにすると良いことが分かる。
【0109】
一方で、除菌工程は、除菌対象物の大きさの違いに対し、経過時間の変化が小さい。したがって、除菌工程の開始から終了までを自動で設定しておいても問題ない。よって、除菌工程の開始から終了までを自動で設定することで、操作性を向上させることができる。
【0110】
また、汚れ落とし工程において、除菌対象物の状態に応じて流量の違いが求められるため、汚れ落とし工程では流量を変更可能とすると良い。一方で、除菌工程では、除菌対象物の状態にかかわらず、流量は一定となるようにすることが良いので、流量を変更不可とすると良い。
【0111】
また、汚れ落とし工程を必ず実行することにより、除菌対象物に付着した汚れを予め洗い落としておくような使い方が常に可能となるため、除菌水の除菌性能を十分に発揮させることができる。
【0112】
尚、本実施形態に係る除菌水吐出装置WDでは、メインスパウト100とは別に除菌用スパウト200を備えた構成となっているが、これらを共通化してもよい。すなわち、
図1に示した除菌水吐出装置WDのように二つのスパウトを備えるのではなく、スパウトを一つだけ備えた構成とした上で、当該スパウトから通常の水道水及び除菌水を吐出するような構成としてもよい。
【0113】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。