(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241629
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】電動車両のシール構造
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20060101AFI20171127BHJP
B60R 13/06 20060101ALI20171127BHJP
F16J 15/06 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B60R13/06
F16J15/06 G
F16J15/06 P
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-34430(P2016-34430)
(22)【出願日】2016年2月25日
(62)【分割の表示】特願2012-136734(P2012-136734)の分割
【原出願日】2012年6月18日
(65)【公開番号】特開2016-104630(P2016-104630A)
(43)【公開日】2016年6月9日
【審査請求日】2016年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176811
【氏名又は名称】三菱自動車エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】鴨川 亮平
(72)【発明者】
【氏名】落合 修一
(72)【発明者】
【氏名】山崎 啓二
【審査官】
加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−083601(JP,A)
【文献】
実開平05−087368(JP,U)
【文献】
特開2000−245015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B60R 13/06
F16J 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の内外を連通し、車載時に弾性変形して密封状態を保持するシール部材が配設される開口部を有するバッテリユニットと、前記開口部と対向する位置に車室内と連通し、前記シール部材の上部に形成された挿入溝が嵌合して取り付けられるシール部材取付孔が形成されるフロアパネルと、前記シール部材取付孔の上部に配設される車両構成部材と、前記車両構成部材と前記フロアパネルとの間を移動させ前記シール部材取付孔を覆うように前記フロアパネルに固定されるキャップ部材と、を備え、前記フロアパネル下部に前記バッテリユニットが配設される電動車両のシール構造において、
前記キャップ部材の取り付け時に前記シール部材の脱落を防止する脱落防止手段を備え、
前記脱落防止手段は、
前記挿入溝の上部より前記フロアパネルに沿って前記キャップ部材の挿入方向に延び、前記キャップ部材の取り付け時に、前記キャップ部材の挿入方向となる側の端部に前記シール部材に抜け止め構造を有して形成されるシール部材側固定部と、
前記シール部材取付孔よりも下方で、前記フロアパネルに形成される挿入孔とからなり、
前記シール部材側固定部の前記端部を前記挿入孔に挿入して前記シール部材を固定することを特徴する電動車両のシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両のシール構造に係り、詳しくは、サービスプラグ操作孔のシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両には、電力を蓄電すると共に電動機に電力を供給するバッテリユニットが搭載されている。そして、バッテリユニットは、電動車両の車室或いは荷室の容積を確保するためにいずれかのフロア下部に配設されている。
そして、このようなバッテリユニットのバッテリケースには、バッテリユニットのメンテナンス等を行う際に車室内側よりバッテリユニット内部に設けられるサービスプラグの操作レバーを操作するためのサービスプラグ用開口部(サービスプラグ操作孔)が設けられている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−83601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のバッテリユニットでは、車両の組み立て時に作業者を感電等から保護するために、バッテリユニットの車載後にサービスプラグ操作孔を覆うキャップ部材をフロアパネルに取り付けるようにしている。また、バッテリユニットとフロアパネル間には、車外よりバッテリユニット内に水やゴミ等の侵入を防ぐ蛇腹状のブーツ部材(シール部材)が設けられている。そして、フロアパネル側のシール部材は、シール部材の上部に形成される取付溝にフロアパネルを嵌合させて取り付けられている。
【0005】
このような、上記特許文献1のバッテリユニットを車載後にバッテリユニットのサービスプラグ操作孔の上部にパーキングブレーキケーブル等の車両構成部材が配設されるような車両に適用すると、キャップ部材を車両構成部材とフロアパネルとの間より横方向に移動させて、フロアパネルに取り付ける必要がある。
しかしながら、キャップ部材を車両構成部材とフロアパネルとの間より横方向に移動させてフロアパネルに取り付けるようにすると、キャップ部材とシール部材とが接触し、シール部材がフロアパネルより外れる虞がある。
【0006】
したがって、このようにシール部材がフロアパネルより外れることで、バッテリユニット内に水やゴミ等が侵入する可能性があり好ましいことではない。
本発明は、この様な問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、バッテリユニット内に水等の侵入を防止することのできる電動車両のシール構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1の電動車両のシール構造では、筐体の内外を連通し、車載時に弾性変形して密封状態を保持するシール部材が配設される開口部を有するバッテリユニットと、前記開口部と対向する位置に車室内と連通し、前記シール部材の上部に形成された挿入溝が嵌合して取り付けられるシール部材取付孔が形成されるフロアパネルと、前記シール部材取付孔の上部に配設される
車両構成部材と、前記
車両構成部材と前記フロアパネルとの間を移動させ前記シール部材取付孔を覆うように前記フロアパネルに固定されるキャップ部材と、を備え、前記フロアパネル下部に前記バッテリユニットが配設される電動車両のシール構造において、前記キャップ部材の取り付け時に前記シール部材の脱落を防止する脱落防止手段を備え、前記脱落防止手段は、前記挿入溝の上部より前記フロアパネルに沿って前記キャップ部材の挿入方向に延び、前記キャップ部材の取り付け時に、前記キャップ部材の挿入方向となる側の端部に前記シール部材に抜け止め構造を有して形成されるシール部材側固定部と、前記シール部材取付孔よりも下方で、前記フロアパネルに形成される挿入孔とからなり、前記シール部材側固定部の前記端部を前記挿入孔に挿入して前記シール部材を固定することを特徴する。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、キャップ部材の取り付け時にシール部材の、キャップ部材の挿入側をフロアパネルに固定しているので、たとえキャップ部材がシール部材と当接しても、シール部材がフロアパネルのシール部材取付孔から外れることを防止することができる。
したがって、バッテリユニット内に水等の侵入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施例に係る電動車両のサービスプラグ操作孔周辺部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
[第1実施例]
まずは、本発明の第1実施例に係る電動車両のサービスプラグ操作孔周辺部の構造に付いて説明する。
図1は、電動車両のサービスプラグ操作孔周辺部の概略図である。また、
図2は、本発明の第1実施例に係る電動車両のシール構造を適用したサービスプラグ操作孔の上面視図である。そして、
図3は、
図2のC−C線での断面図である。
図3中の太矢印は、バッテリユニット車載時におけるメンテナンスリッドの取り付け方向を示す。
【0011】
本発明の車両(電動車両)1は、当該車両1の走行装置として、バッテリユニット20より高電圧回路を介して高電圧の電力が供給されインバータにより作動が制御される走行用モータ(電動機)を備え、充電リッドに外部電源より延びる充電ケーブルを接続し、充電器にてバッテリユニット20を充電することができる電動車両である。
バッテリユニット20は、リチウムイオン電池等の二次電池で構成されるものである。そして、バッテリユニット20は、電池セルを監視するセルモニタリングユニットを備え複数の電池セルで構成される複数のバッテリモジュールと、セルモニタリングユニットの出力に基づきバッテリモジュールの温度及び電池残量等を監視するバッテリモニタリングユニットと、絶縁構造で形成され、
図3に示すような非常時や車両1のメンテナンス時にバッテリユニット20内の高電圧回路を遮断するためのサービスプラグ22と、高電圧を導電する導電部品と、短絡等により高電圧が導電する可能性のある導電性部品とが、樹脂製のバッテリユニットカバー21とバッテリユニットケースとに内包されて一体に構成されている。
【0012】
また、
図3に示すように、バッテリユニットカバー21には、サービスプラグ22を操作可能にするための開口部21aが設けられている。そして、このようなバッテリユニット20は、バッテリユニットカバー21の開口部21aと、車両1の車体の下部を形成するフロアパネル11に形成されるサービスプラグ操作孔(シール部材取付孔)11aとが対向するようにフロアパネル12の下方に配設されている。即ち、バッテリパック20は、車室外に配設されている。また、バッテリユニットカバー21の開口部21aとフロアパネル11のサービスプラグ操作孔11aは、水等の浸入を防止するシール部材23で開口部21aとサービスプラグ操作孔11aとが連通するように接続されている。そして、バッテリユニット20の車載後には、サービスプラグ操作孔11aを覆うように長円形状に形成されたメンテナンスリッド30が取り付けられる。
【0013】
シール部材23のフロアパネル11側となる箇所には、シール部材23をフロアパネルのサービスプラグ操作孔11aに固定するための挿入溝123aが形成されている。そして、シート部材23は、挿入溝123aにフロアパネル11のサービスプラグ操作孔11aを挿入して、フロアパネル11に固定される。また、シール部材23の上端部には、バッテリユニット20の車載時に車室内側に突出するようにグロメット部123bが形成されている。
【0014】
そして、
図1から
図3に示すように、フロアパネル11のサービスプラグ操作孔11aの上部には、車両の停車状態を保持するために運転者が操作するパーキングブレーキのケーブルであるパーキングケーブル13が配設されている。
つぎに、このように構成された本発明の第1実施例に係る電動車両のシール構造を適用したサービスプラグ操作孔の作用及び効果について説明する。
【0015】
図2及び
図3に示すように、メンテナンスリッド30の挿入側(
図3では左側)のフロアパネル11に形成されるサービスプラグ操作孔11aの側方に、挿入孔11bが形成されている。
また、シール部材23のグロメット部123bには、パーキングケーブル13等の
車両構成部材とフロアパネル11との間よりメンテナンスリッド30を横方向に移動させて取り付ける際のメンテナンスリッド30の挿入側(
図3では左側)であって、挿入溝123aの上部よりメンテナンスリッド30の挿入方向に伸びる固定部123cが形成されている。そして、固定部123cの端部123dには、フロアパネル11の挿入孔11bに挿入した際に挿入孔11bの内周部と係合し、抜けを防止する抜け防止構造123dが形成されている。詳しくは、抜け防止構造123dは、固定部123cの端部123dを挿入孔11bに容易に挿入可能とする下方向に頂点を有するテーパ状に形成されるテーパ部123eと、固定部123cの端部123dを挿入孔11bに挿入後にフロアパネル11と当接する箇所が水平に形成される係合部123fとで構成されている。
【0016】
つまり、
図2及び
図3に示すように、メンテナンスリッド30の取り付け時に、メンテナンスリッド30の挿入側(
図3では左側)となるグロメット部123bの固定部123cに抜け防止構造123dを有する端部123dを形成している。そして、端部123dをフロアパネル11の挿入孔11bに挿入して、グロメット部123bをフロアパネル11に固定している。
【0017】
このように、メンテナンスリッド30の取り付け時にグロメット部123bのメンテナンスリッド30の挿入側をフロアパネル11に固定しているので、たとえメンテナンスリッド30がグロメット部123bと当接しても、メンテナンスリッド30にてグロメット部23bを押し、シール部材23の挿入溝23aより、フロアパネル11のサービスプラグ操作孔11aが外れることを防止することができる。
【0018】
よって、バッテリユニット20内に水等の侵入を防止することができる。
【符号の説明】
【0019】
1 車両 (電動車両)
11 フロアパネル
11a サービスプラグ操作孔(シール部材取付孔)
11b 挿入孔
20 バッテリユニット
23 シール部材
123c 固定部(シール部材側固定部)
30 メンテナンスリッド(キャップ部材)