(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241646
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】車載バッテリ情報表示装置
(51)【国際特許分類】
G01D 7/00 20060101AFI20171127BHJP
G01R 31/36 20060101ALI20171127BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
G01D7/00 K
G01R31/36 A
H02J7/00 Y
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-122876(P2013-122876)
(22)【出願日】2013年6月11日
(65)【公開番号】特開2014-240776(P2014-240776A)
(43)【公開日】2014年12月25日
【審査請求日】2016年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 慎也
【審査官】
平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−149840(JP,A)
【文献】
特開2010−254000(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0112781(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 7/00−7/12
G01D 9/00−9/42
H02J 7/00−7/12
H02J 7/34−7/36
G01R 31/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載バッテリからの電源供給によって作動し、車両の始動動作、および電源情報を監視する制御手段と、
前記車両の起動スイッチを介して前記車載バッテリからの配線に接続され、電源電圧の電圧値を検出し、検出した電圧値を前記制御手段へ出力する電圧検出手段と、
前記制御手段によって前記電源情報を格納する記憶手段と、
前記制御手段によって車両情報を表示する表示手段と、
を備え、
前記制御手段は、
前記表示手段の出力を制御するための初期化処理後、
前記電圧検出手段から入力される電圧値が、所定電圧降下しきい値よりも、所定の時間以上の間、下回ったことで、前記車両の始動動作開始を判定する始動開始判定処理と、
前記始動開始後、前記電圧検出手段から入力される電圧値が、所定の変動内に収まることにより、始動動作完了を判定する始動完了判定処理を行い、
前記車両の始動動作開始から前記車両の始動動作完了までを含む所定時間内において、前記電源電圧の電圧値を一定周期毎に前記電源情報として前記記憶手段に複数格納し、
前記記憶手段に格納された前記電圧値の変化量または経過時間に関して複数種類演算し、これらをバッテリ情報として前記表示手段に表示させることを特徴とする車載バッテリ情報表示装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記電源情報の検出日時を特定する付加情報とともに前記記憶手段に格納し、前記付加情報に基づく日時情報とともに、前記バッテリ情報を前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項1に記載の車載バッテリ情報表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載バッテリ情報表示装置に関し、特に、メンテナンスを必要とする車載バッテリの情報を表示するバッテリ情報表示装置として好適である。
【背景技術】
【0002】
従来のバッテリ情報の表示装置は、例えば、特許文献1に開示されるものがある。この表示装置にあっては、バッテリ検出手段と、電圧変化算出手段と、バッテリ劣化判定手段から構成されており、測定された電圧値と、所定の値とを比較し、その比較結果によってアラームによりバッテリ劣化を警報するものであった。
【0003】
また、バッテリ情報表示装置における自動車用バッテリの容量検出,劣化検出は従来の方法として、放電I−V特性に基づいて容量を算出しておきエンジン始動時の電源電圧と電流の変化を利用して容量を検出する方法、またはスタータ使用時の電源電圧を検出し、上限基準値以上なら良、下限基準値以下なら否とする方法がとられている。なお、この種の容量劣化検出方法としては例えば、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2006−509670号公報
【特許文献2】特開昭59−180469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの従来技術は、エンジン始動時における不安定なスタータ電流の検出手段を新たに必要とし、しかも広い使用条件下で信頼性のある設定を行うことは困難であった。いずれにおいても従来のバッテリの劣化検出の方法には、検出のための手段を新たに設定する必要があり、実現は容易ではなかった。
【0006】
また、検出するパラメータが電源電圧または電流値であり、このパラメータが少ないために信頼性にかけるものであった。それは、バッテリの容量が、そのバッテリの電気負荷,周囲温度により変化するものであり、一元的なものではないからである。
【0007】
そこで本発明の目的は、上述した課題に着目し、車載バッテリ劣化に関する必要情報を充分に確認できるようにメンテナンス作業者に報知できる車載バッテリ情報表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車載バッテリ情報表示装置は、車載バッテリからの電源供給によって作動し、車両の始動動作、および
電源情報を監視する制御手段と、
前記車両の起動スイッチを介して前記車載バッテリからの配線に接続され、電源電圧の電圧値を検出し、検出した電圧値を前記制御手段へ出力する電圧検出手段と、前記制御手段によって前記電源情報を格納する記憶手段と、前記制御手段によって車両情報を表示する表示手段と、を備え、前記制御手段は、
前記表示手段の出力を制御するための初期化処理後、前記電圧検出手段から入力される電圧値が、所定電圧降下しきい値よりも、所定の時間以上の間、下回ったことで、前記車両の始動動作開始を判定する始動開始判定処理と、前記始動開始後、前記電圧検出手段から入力される電圧値が、所定の変動内に収まることにより、始動動作完了を判定する始動完了判定処理を行い、前記車両の始動動作開始から前記車両の始動動作完了までを含む所定時間内において、
前記電源電圧の電圧値を一定周期毎に前記電源情報として前記記憶手段に複数格納し、
前記記憶手段に格納された前記電圧値の変化量または経過時間に関して複数種類演算し、これらをバッテリ情報として前記表示手段に表示させることを特徴とする。
【0009】
また、前記制御手段は、前記電源情報の検出日時を特定する付加情報とともに前記記憶手段に格納し、前記付加情報に基づく日時情報とともに、前記バッテリ情報を前記表示手段に表示させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、車載バッテリ情報表示装置に関し、車載バッテリ劣化に関する必要情報を充分に確認できるようにメンテナンス作業者に報知できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】同上実施の形態の起動時の電圧変動例について示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態として、車両用計器に適用したものを例に挙げて、図面を用いて説明する。
【0013】
車両用計器Mは、車載バッテリを駆動電源として、各種センサが検出する計測値(車両の状態)を車両利用者に報知するものであり、例えば、車速計や燃料残量計などを備えている。また、この場合、車両用計器Mは、液晶表示パネルなどの表示手段に、車両のエンジンオイルやフィルタ等の各部品の交換時期などメンテナンス情報を知らせる機能や、時刻を知らせる時計を備えている。
【0014】
車両用計器Mは、
図1に示すように、電圧検出手段1と、制御手段2と、記憶手段3と、表示手段4と、を備えており、起動スイッチ(イグニッションスイッチ)Sを介して車載バッテリVに接続されている。なお、車載バッテリVは、車両用計器M以外にもスタータ機器Fなど負荷に接続されており、通常電圧が12V程度の駆動電源を供給することができる。
【0015】
電圧検出手段1は、車載バッテリVからの配線に接続され、電源電圧の電圧値を検出するためのADコンバータを適用でき、検出した電圧値を制御手段2へ出力する。なお、電圧検出手段1は、制御手段2に内蔵されるものであってもよい。
【0016】
制御手段2は、例えば、マイクロコンピュータを適用でき、電圧検出手段1からの入力情報、または、図示しないがCAN(Controller Area Network)通信ケーブルを経由して別途車両に搭載されるECUからの走行速度や燃料噴射量などの各種情報を入力できるように接続される。
【0017】
また、制御手段2は、該入力情報や各種情報に基づいて演算処理するためのCPUと、このCPUにおける演算処理結果等を一時的に格納する読み出し及び書き換え可能なRAMや、制御プログラムや制御データを格納したROMから構成される記憶部と、前記各種情報や制御信号やクロック信号などをやり取りするためにバス接続された入出力インターフェイスと、を備えている。また、この場合、制御手段2は、表示手段4を駆動するための駆動ドライバ等を設けている。
【0018】
記憶手段3は、前記記憶部(RAMやROM)の他に設けられる不揮発性メモリを適用でき、例えば、EEPROMやフラッシュメモリを用いることができる。記憶手段3は制御手段2によって、記憶手段3に情報を格納、読み出しできるように接続されている。
【0019】
表示手段4は、車両のインストルメントパネルに設けられる複合計器装置内において、制御手段2からの制御信号に基づいて表示するものであり、例えば、バックライトを設けた液晶表示パネルを適用できる。
【0020】
次に、車両始動時の制御手段2の処理手順について説明する。
【0021】
起動スイッチSが、断線状態から接続状態に移行した際(起動操作がなされた際)、制御手段2は、車載バッテリVからの電源供給を受けて、初期動作を行う。この場合、制御手段2は、電圧検出手段1からの入力や、表示手段4の出力を制御するための初期化処理を行う。
【0022】
制御手段2は、初期化処理後、電圧検出手段1からの電圧値を一定時間毎にRAMへ格納する。この場合、
図2に示すように、10m秒間隔で、電圧値を監視している(電圧値監視処理)。
【0023】
更に、作業者による車両の始動操作にともなう、スタータ機器Fの作動によって、電源電圧が一時的に低下した際、制御手段2は、電圧検出手段1からの入力される電圧値が所定電圧降下しきい値(例えば、9V)V1よりも所定の時間(100m秒)T1以上下回ったことで、車両の始動開始を判定(始動開始判定処理)し、この始動開始時点よりも1秒前からの電圧値情報と、この始動開始時点から4秒間の、電圧値情報とを電源情報として保持する。なお、スタータ機器Fは、クランキングを作動させるためのセルモータからなり、作業者の操作を起点にしてエンジンを始動させるための機器である。
【0024】
制御手段2は、前記始動開始時点から4秒間の間に、電圧値の変動が所定の時間(例えば、500m秒)T2、所定の変動(例えば。±0.5V)内に収まるか否かを判定(始動完了判定処理)することで、車両の始動完了を推測する。制御手段2は、車両の始動動作が完了しなかったと判定した場合には、5秒間の電圧値情報(電源情報)の保持をやめて、再び電圧値の監視処理を行う。なお、始動完了判定処理として、エンジン回転数やCAN経由の車両情報から判定、または検出するように構成することもできる。
【0025】
また、制御手段2は、上述した始動完了判定処理によって、正常に始動が完了したと判定した場合に、上記保持された5秒間分の前記電圧値情報を記憶手段3に格納する情報格納処理を行う。この際、日時情報を前記電圧値情報と関連づけて格納する。更に、制御手段2は、この電圧値の変化量または経過時間に関して複数種類演算し、これら演算結果をバッテリ情報として表示手段4に表示させる表示処理を行う。
【0026】
この場合、制御手段2は、一定時間毎の前記電圧値情報に基づいて、演算および表示可能な項目として、「始動中の最低電圧値」V3、「始動中の所定の電圧V4まで回復する時間」T4、「始動開始から完了までの時間」T5、「始動前の電圧値」V6、「始動後の電圧値」V7、「始動から所定の時間T8の電圧値」V8、「始動後の最初の電圧変動のピーク値」V9、「始動後の最初の電圧変動のピークまでの時間」T9、「始動前と始動後の電圧差」V10、「始動開始から始動完了までの電圧変動のピークが発生した数」N11、「始動中の最後の電圧ピークの電圧値」V12、「始動中における電圧変動の最後のピークからエンジン始動完了までの時間」T12、「始動開始から電圧変動の最後のピークまでの時間」T13のように、電圧変動、または計測時間などを車載バッテリVの劣化状態を判断するためのバッテリ情報として表示手段4に表示させることができる。
【0027】
なお、制御手段2は、車両用計器Mに搭載される図示しない操作スイッチからの入力に基づいて、表示手段4を画面切り替えし、他の表示項目(例えば、積算走行距離や外気温度など)から上記バッテリ情報を選択して表示させることもできる。また、この際、始動が監視されて記録された日時情報とともに、バッテリ情報を表示させることができ、例えば、何日前の計測情報であるかを判断できる。なお、記憶手段3に格納される日付情報は、カレンダー機能による日付や時間であってもよいし、始動してからどのくらい時間経過したかを計測するカウンタ値を格納するものであってもよい。
【0028】
また、制御手段2は、複数のバッテリ情報に基づいて、車載バッテリVの劣化状態を判定する判定処理を行うこともできる。この判定処理によって、劣化状態であると判定した場合には、車両用計器Mに設けられる警告灯を点灯表示させたり、表示手段4に上記バッテリ情報を割り込み表示させたりして、車両利用者のメンテナンスの要否を確認する機会を提供できる。
【0029】
斯かる車載バッテリ情報表示装置は、車載バッテリVからの電源供給によって作動し、車両の始動動作、および前記電源情報を監視する制御手段2と、制御手段2によって前記電源情報を格納する記憶手段3と、制御手段2によって車両情報を表示する表示手段4と、を備え、制御手段2は、前記車両の始動動作開始から前記車両の始動までを含む所定時間内において、前記電源の電圧値を一定周期毎に前記電源情報として記憶手段3に複数格納し、前記電圧値の変化量または経過時間に関して複数種類演算し、これらをバッテリ情報として表示手段4に表示させるように制御する。
【0030】
従って、起動時の電圧変動に関するバッテリ情報を多様に表示でき、車載バッテリの劣化を判別するための必要情報を充分に確認できるようにメンテナンス作業者に報知できる車載バッテリ情報表示装置となる。
【0031】
また、制御手段2は、前記電源情報の検出日時を特定する付加情報とともに記憶手段3に格納し、前記付加情報に基づく日時情報とともに、前記バッテリ情報を表示手段4に表示させることによって、作業者は、検出環境についても意識しながらメンテナンスの有無や、メンテナンス方法について判断できる。例えば、気温の高い時に検出したものかどうか、長期間前に検出したものかどうかなど、車載バッテリVをメンテナンスするための判断材料となる。
【0032】
なお、本発明の車載バッテリ情報表示装置を上述した実施の形態の構成にて例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の構成においても、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良、並びに表示の変更が可能なことは勿論である。バッテリ情報として、上述したように電圧値や経過時間等を表示させるものを示したが、これに限らず、記憶手段3に格納する電圧値情報をそのまま表示させることや、
図2に示すように、始動時を含む所定時間内における電圧変化を示すグラフを表示させることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、車載バッテリ情報表示装置に関して、例えば、自動車やオートバイ、あるいは農業機械や建設機械を備えた移動体に搭載される車載バッテリ情報表示装置に適用できる。
【符号の説明】
【0034】
1 電圧検出手段
2 制御手段
3 記憶手段
4 表示手段
M 車両用計器
S 起動スイッチ
V 車載バッテリ
F スタータ機器(負荷)