特許第6241648号(P6241648)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241648
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】床構造、防振用架台
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/18 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
   E04F15/18 601B
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-164598(P2013-164598)
(22)【出願日】2013年8月7日
(65)【公開番号】特開2015-34383(P2015-34383A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】591022656
【氏名又は名称】静岡瀝青工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510087564
【氏名又は名称】積水マテリアルソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593204199
【氏名又は名称】有限会社幸昭
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 謙次
(72)【発明者】
【氏名】渡部 和良
(72)【発明者】
【氏名】小川 欣平
(72)【発明者】
【氏名】宮川 直輝
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭53−114114(JP,U)
【文献】 特開昭61−010664(JP,A)
【文献】 特開平06−166160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/18、15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離隔して位置する建築物構造材上に支持された床下地材の下側に、前記建築物構造材に両端を固定して架設された梁状の架台を有し、前記床下地材と前記架台との間に粘弾性体が挟み込まれ
前記架台は、細長形状の架材部と、この架材部上に該架材部に一体的に設けられて前記架材部長手方向1又は複数箇所に配置された受け板部とを有し、前記受け板部は前記架材部の両側に張り出され、前記粘弾性体は前記受け板部と前記床下地材との間に挟み込まれていることを特徴する床構造。
【請求項2】
前記架台の架材部は細長板状であり、その幅方向が上下に延在する向きで設けられ、前記受け板部は前記架材部上に該架材部に垂直に一体化されていることを特徴する請求項に記載の床構造。
【請求項3】
前記架台の前記架材部は、帯板状の帯状主板部と、この帯状主板部の上端の長手方向の1又は複数箇所から該帯状主板部の幅方向他端とは反対の方向に張り出す突板部とを有し、前記受け板部は前記突板部の上端に該突板部に垂直に一体化されていることを特徴する請求項に記載の床構造。
【請求項4】
前記架材部の前記突板部は、前記帯状主板部長手方向に平行に延在する突端から前記帯状主板部側に行くにしたがって帯状主板部長手方向に沿う延在方向の寸法が増大する台形板状に形成されていることを特徴する請求項に記載の床構造。
【請求項5】
前記架台は、前記架材部の長手方向の端部に架材部長手方向に固定位置可変に取り付けて、前記建築物構造材に固定する取付部材をさらに有することを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の床構造。
【請求項6】
細長形状の架材部、及び該架材部の長手方向の1又は複数箇所に設けられた受け板部を有して構成され、互いに離隔して位置する建築物構造材に固定して架設される梁状の架台本体と、この架台本体の前記受け板部の前記架材部とは反対側の面に取り付けられた粘弾性体とを有し、
前記架材部は、帯板状の帯状主板部と、この帯状主板部の幅方向一端の長手方向の1又は複数箇所から該帯状主板部の幅方向他端とは反対の方向に張り出す突板部とを有し、前記受け板部は前記突板部の突端に該突板部に垂直に設けられ前記突板部の両側に張り出されていることを特徴する防振用架台。
【請求項7】
前記架材部の前記突板部は、前記帯状主板部長手方向に平行に延在する突端から前記帯状主板部側に行くにしたがって帯状主板部長手方向に沿う延在方向の寸法が増大する台形板状に形成されていることを特徴する請求項に記載の防振用架台。
【請求項8】
前記架台本体は、前記架材部の長手方向の端部に架材部長手方向に固定位置可変に取り付けて、前記建築物構造材に固定する取付部材をさらに有することを特徴とする請求項又はに記載の防振用架台。
【請求項9】
建築物構造材に支持された床下地材の下側に、請求項のいずれか1項に記載の防振用架台がその架台本体の両端を前記建築物構造材に固定して架設され、前記防振用架台の粘弾性体が前記床下地材に当接されていることを特徴とする床構造。
【請求項10】
前記防振用架台の粘弾性体と前記床下地材との間に金属板が介在されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸建て住宅等の建築物における床構造及び防振用架台、詳しくは、建築物において階下に影響を与える床衝撃音を低減できる建築物の床構造、防振用架台に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の二階以上の床に対する防音の要求は年々高まっており、特に、複数世帯が一つの建物で生活を行う集合系住宅では、高い防音性能が要求されている。また、戸建て住宅においても二世帯住宅の需要が高まっている背景があり、二階以上の床に対する防音対策は大きな課題となっている。
【0003】
このような防音の要求に対する技術としては、床下地材と床仕上げ材との間に防音材を設置することが一般的である。防音材としては、例えばアスファルト系制振シート(厚さ4〜10mm程度)であるが、この他、石膏ボードやプラスチック発泡体等も多々用いられる。しかしながら、床下地材と床仕上げ材との間に防音材を設置する対策は、軽量衝撃音に対してはランク(床衝撃音遮音等級:L数)を1つか2つアップさせる程度の効果であり、重量衝撃音にの防音効果は殆どアップさせることができない。
【0004】
集合系住宅においてはコンクリートの厚さを上げるなどにより、床下地材の剛性を高めることで防音性能を確保することが基本となっている。しかしながら、床下地材の剛性を高めることは大きなコストアップ要因となる。また、床下地材のコンクリートの厚さを上げれば、建築物全体の強度や高さを上げる必要が生じるという課題がある。
【0005】
また、階下の防音対策としては、いわゆる乾式二重床構造の採用も知られている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、乾式二重床構造も床の高さを上げることから建築物全体の高さを上げる必要が生じる。また、乾式二重床構造は、床下地材上に複数設置した支持脚によって上層の床構造体を支持する構造のため、部材数が多く施工に手間が掛る、大きなコストアップ要因となるという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−293897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
床下地材自体の剛性向上、乾式二重床構造の採用は、防音材の設置に比べて優れた防音性能が得られる対策ではあるが、既述のように、コストアップ等の種々の課題がある。
【0008】
本発明は、前記課題に鑑みて、防音のために床高さを上げることを解消でき、防音性能の向上を低コストで実現できる床構造、防振用架台の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明では以下の構成を提供する。
第1の発明は、互いに離隔して位置する建築物構造材上に支持された床下地材の下側に、前記建築物構造材に両端を固定して架設された梁状の架台を有し、前記床下地材と前記架台との間に粘弾性体が挟み込まれ、前記架台は、細長形状の架材部と、この架材部上に該架材部に一体的に設けられて前記架材部長手方向1又は複数箇所に配置された受け板部とを有し、前記受け板部は前記架材部の両側に張り出され、前記粘弾性体は前記受け板部と前記床下地材との間に挟み込まれていることを特徴する床構造を提供する。
の発明は、前記架台の架材部は細長板状であり、その幅方向が上下に延在する向きで設けられ、前記受け板部は前記架材部上に該架材部に垂直に一体化されていることを特徴する第の発明の床構造を提供する。
の発明は、前記架台の前記架材部は、帯板状の帯状主板部と、この帯状主板部の上端の長手方向の1又は複数箇所から該帯状主板部の幅方向他端とは反対の方向に張り出す突板部とを有し、前記受け板部は前記突板部の上端に該突板部に垂直に一体化されていることを特徴する第の発明の床構造を提供する。
の発明は、前記架材部の前記突板部は、前記帯状主板部長手方向に平行に延在する突端から前記帯状主板部側に行くにしたがって帯状主板部長手方向に沿う延在方向の寸法が増大する台形板状に形成されていることを特徴する第の発明の床構造を提供する。
の発明は、前記架台は、前記架材部の長手方向の端部に架材部長手方向に固定位置可変に取り付けて、前記建築物構造材に固定する取付部材をさらに有することを特徴とする第のいずれか1つの発明の床構造を提供する。
の発明は、細長形状の架材部、及び該架材部の長手方向の1又は複数箇所に設けられた受け板部を有して構成され、互いに離隔して位置する建築物構造材に固定して架設される梁状の架台本体と、この架台本体の前記受け板部の前記架材部とは反対側の面に取り付けられた粘弾性体とを有し、前記架材部は、帯板状の帯状主板部と、この帯状主板部の幅方向一端の長手方向の1又は複数箇所から該帯状主板部の幅方向他端とは反対の方向に張り出す突板部とを有し、前記受け板部は前記突板部の突端に該突板部に垂直に設けられ前記突板部の両側に張り出されていることを特徴する防振用架台を提供する。
の発明は、前記架材部の前記突板部は、前記帯状主板部長手方向に平行に延在する突端から前記帯状主板部側に行くにしたがって帯状主板部長手方向に沿う延在方向の寸法が増大する台形板状に形成されていることを特徴する第の発明の防振用架台を提供する。
の発明は、前記架台本体は、前記架材部の長手方向の端部に架材部長手方向に固定位置可変に取り付けて、前記建築物構造材に固定する取付部材をさらに有することを特徴とする第又はの発明の防振用架台を提供する。
の発明は、建築物構造材に支持された床下地材の下側に、第のいずれか1つの発明の防振用架台がその架台本体の両端を前記建築物構造材に固定して架設され、前記防振用架台の粘弾性体が前記床下地材に当接されていることを特徴とする床構造を提供する。
第1の発明は、前記防振用架台の粘弾性体と前記床下地材との間に金属板が介在されていることを特徴とする第1〜のいずれか1つの発明の床構造を提供する。
【0010】
なお、建築物構造材としては、例えば根太、梁であるが、これに限定されず、床下地材を梁等を介して間接的に支持する柱等も含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、架台(あるいは防振用架台の受け板部)と床下地材との間に挟み込んだ粘弾性体が床下地材の振動エネルギーを吸収して床下地材の振動を抑えることで、防音性能を確保できる。架台及び防振用架台は、床下地材の上側ではなく、床下地材の下側に設けられる。本発明によれば、架台及び防振用架台を床下地材とその下方に離隔して構築する天井部との間のスペースを利用して設置することで、床高さを上げずに床の防音性能を高めることが可能である。
【0012】
架台及び防振用架台は、建築物構造材に支持された床下地材の振動特性に鑑みて、架台あるいは防振用架台の架台本体(具体的には受け板部)、及び粘弾性体の位置を設定することで、床下地材と床仕上げ材との間に防音材を設置する構成に比べて高い防音性能を容易に得ることができる。架台及び防振用架台の架台本体(具体的には受け板部)は、例えば特定周波数域の重量衝撃音の低減のため、その原因となる床下地材の振動に鑑みて、床下地材の下方への振幅が最大となる部位(本明細書において、以下、振幅最大部位とも言う)との間に粘弾性体を挟み込むことで、床下地材の振動を効率良く減衰できる。その結果、目的周波数の重量衝撃音を効率良く低減できる。
防振用架台は、架台本体の建築物構造材に対する固定位置の調整や、架材部長手方向における受け板部の位置が互いに異なる架台本体の選択使用等によって、床下地材の振幅最大部位との間に粘弾性体を挟み込む位置への受け板部の配置を容易に実現できる。
【0013】
架台及び防振用架台は、構造が単純で済み、低コスト化が容易である。
また、本発明は、床下地材と床仕上げ材との間への防音材の設置、床下地材自体の剛性向上、乾式二重床構造の採用といった対策を採らなくても、架台及び粘弾性体、あるいは防振用架台を床下地材下側に設置するだけで優れた防音性能を容易に確保できる。本発明は、床下地材自体の剛性向上、乾式二重床構造の採用といった手法に比べて低コストで簡単に床の防音性能を高めることができる。
また、本発明は、架台及び粘弾性体、あるいは防振用架台を既存建築物の床下地材下側に設置(架台及び粘弾性体、あるいは防振用架台の既存建築物に対する後付け)して、床の防音性能を高めることが可能であるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る実施形態の床構造を示す図である。
図2図1の床構造の防振用架台を示す分解斜視図である。
図3】対比例の床構造を示す図である。
図4図2の防振用架台の架材部の変形例を示す斜視図である。
図5図2の防振用架台の架材部の突板部の変形例を示す斜視図である。
図6図2の防振用架台の変形例であって、架材部長手方向両端部に架材部長手方向に延在形成した長孔によって、架材部長手方向両側の取付部材の架材部長手方向の位置調整を可能とした構成を示す斜視図である。
図7図2の防振用架台の架材部の変形例であって、突板部を複数有する構成を示す斜視図である。
図8図2の防振用架台の粘弾性体に取り付けた金属板を床下地材横架部下面に当接した構成の床構造を示す図である。
図9】(a)、(b)は本発明に係る実施形態の架台本体の断面構造の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る床構造、防振用架台の1実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、図1図9において、上側を上、下側を下として説明する。
【0016】
図1は、床構造、防振用架台10の1実施形態を示す。
図1に例示した床構造は、建築物Bの2階以上の床20の床下地材21下側に防振用架台10を設けた構成となっている。
【0017】
図1に例示した床20は、梁又は根太であり互いに平行に複数設けられた床下地支持材22(建築物構造材)によって、これら床下地支持材22上に載置されたパネル状の床下地材21を支持した構成となっている。床20は、床下地材21上側に施工される床仕上げ材(図示略)等を含む。床20における床下地材21から上側の部分を、以下、床上層部23とも言う。図1に例示した床20は、床下地支持材22と、床下地材21と、床上層部23とで構成されている。
【0018】
ここで説明する建築物Bは木造(木造枠組壁構法等、構造用木質パネルを用いたものを含む)あるいは鉄骨造の戸建て住宅である。
図1に例示した床20の床下地支持材22として用いられる梁は、建築物Bの柱あるいは壁パネル(構造用木質パネル)に支持された大梁、あるいは該大梁に支持された床梁である。
【0019】
床下地材21としては、例えば合板、ALC(軽量気泡コンクリート。ALC:autoclaved lightweight aerated concrete)板等の、床下地材として周知のものを採用可能である。
図1において、床下地材21を支持する複数の床下地支持材22は、水平方向(図1左右方向)において互いに離隔させて互いに平行に設けられている。
床下地材21は、水平方向において隣り合う床下地支持材22間に位置する部分(以下、横架部21a)を有している。
【0020】
図1に例示した建築物Bは、床20の下側に構築された天井部30を有している。
天井部30は、例えば、床下地支持材22等の建築物構造材に支持(吊り木を介して建築物構造材に支持することを含む)された複数の野縁(図示略)と、複数の野縁によって複数配列状態に支持された天井パネルとを有する構造のもの等を採用できる。天井パネルとしては、例えば石膏ボード等の、天井パネルとして周知のものを採用できる。天井部30は床20の床下地材21から下方に離隔した位置に組み立てられている。
【0021】
図1図2に示すように、防振用架台10は、梁状の架台本体11(架台)と、この架台本体11の受け板部12に取り付けられた粘弾性体13とを有する。
図1図2に例示した防振用架台10の架台本体11は、細長形状の架材部14と、この架材部14の長手方向中央部に設けられた受け板部12と、架材部14の長手方向両端部にそれぞれ1つずつ取り付けられた取付部材15とを有している。受け板部12、架材部14、取付部材15は金属製である。
なお、架台本体11における取付部材15以外の部分、すなわち、架材部14と該架材部14に一体の受け板部12とで構成される部分を、以下、架台基幹部18とも言う。
【0022】
受け板部12の片面側は架材部14に一体化されている。受け板部12は架材部14に一体に形成されていても良く、架材部14に固定された別部材であっても良い。架材部14に対して別部材の受け板部12の架材部14への固定手法は、例えば、溶接、ねじ止め等を採用できる。受け板部12の架材部14へのねじ止めは、受け板部12を貫通するねじによる直接ねじ止めの他、受け板部12及び架材部14にねじ止めするL字金物等の固定補助金具を介して実現することも含む。
【0023】
図1図2に例示した防振用架台10の架台本体11の受け板部12は、架材部14に覆われた部分を介して両側に張り出す部分(受け板張出部12a)を有している。
【0024】
図1に示すように、防振用架台10は、粘弾性体13が架台本体11(具体的には受け板部12)の上側に位置し架材部14の受け板部12とは反対側の端が下端となる向きで、互いに離隔して位置する床下地支持材22間に架設される。
以下、防振用架台10における、粘弾性体13と、架材部14の粘弾性体13とは反対側の端との間の間隔方向を、高さ方向、とも言う。図1図2に例示した防振用架台10の受け板部12及び粘弾性体13は、架材部14の高さ方向片側に設けられている。
【0025】
図1図2に例示した防振用架台10の架台本体11の架材部14は細長板状に形成されている。この防振用架台10の高さ方向は受け板部12に垂直の方向である。また、この防振用架台10の高さ方向は、細長板状の架材部14の厚み方向及び長手方向に垂直の板幅方向に一致している。
図1図2に例示した防振用架台10の受け板部12は、細長板状の架材部14の高さ方向(板幅方向)片端に該架材部14に垂直に一体化されている。
【0026】
図1図2に例示した架台本体11の架材部14は、帯板状の帯状主板部14aと、この帯状主板部14aの長手方向中央部の高さ方向一端から高さ方向他端とは反対の方向に張り出す突板部14bとを有する。突板部14bは、帯状主板部14aの長手方向中央部の高さ方向(架材部14高さ方向に一致)一端から帯状主板部14aをその高さ方向他端とは反対の側に延長するように張り出している。
受け板部12は、具体的には、架材部14の突板部14bの帯状主板部14aとは反対側の端に突板部14bに垂直に一体化されている。
【0027】
図1図2に例示した架材部14は金属製一体成形品である。
但し、架材部14としては、帯状主板部14aに、該帯状主板部14aとは別体の突板部14bを固定一体化して構成しても良い。
【0028】
粘弾性体13は、受け板部12の架材部14とは反対側の面(以下、受け板天面12bとも言う)に取り付けられている。図1図2において、粘弾性体13は、受け板天面12bを覆う層状に積層して設けられている。
粘弾性体13は、ここでは、アスファルト基材に金属フィラーを分散混入した構成のアスファルト系制振材を用いている。金属フィラーとしては、例えば鉄フィラー、酸化鉄フィラー等の鉄系フィラーを好適に用いることができる。
【0029】
粘弾性体13は、例えば、粘弾性体13をシート状に形成したもの(粘弾性体シート)を受け板天面12bに接着剤を用いて接着固定する、シート状のアスファルト系制振材(アスファルト制振シート)をアスファルトの粘着力自体によって受け板天面12bに被着一体化させる、といった手法によって、受け板部12に取り付けることができる。
また、粘弾性体13を受け板天面12bに積層する手法としては、シート状等に成形可能な液状の粘弾性体材料を受け板天面12bに塗工し硬化させること等によって、層状の粘弾性体13を受け板天面12bに一体に形成することも可能である。
【0030】
取付部材15は、架台本体11の架材部14とは別体の金属製部材である。
図1において、架台本体11の架材部14の長手方向両端部にはそれぞれ取付部材15が固定されている。取付部材15は取付部材固定具16(図1ではボルト−ナット締結具)を用いて架材部14に固定されている。
そして、図1に示す床構造において、防振用架台10は、架台本体11長手方向両側の取付部材15を床下地材21の横架部21aの両側に位置する一対の床下地支持材22に固定して、該一対の床下地支持材22間に架設されている。架台本体11長手方向両側の取付部材15は、それぞれ、該取付部材15における架台本体11長手方向中央部とは反対側の端部を架台固定具17(図1ではビス)を用いて床下地支持材22に固定されている。
【0031】
なお、取付部材15における架台固定具17(図1ではビス)を用いて床下地支持材22に固定される端部を、以下、固定端部15cとも言う。
図1図2に例示した取付部材15の固定端部15cには、架台固定具17(図1ではビス)を通すための固定具挿通孔15dが形成されている。
【0032】
また、図1に例示した床構造において、防振用架台10は、架材部14が粘弾性体13の下側に位置する向きで、粘弾性体13を床下地材21の横架部21aの下面に当接させて、一対の床下地支持材22間に架設されている。
図1において、架台本体11は、細長板状の架材部14の高さ方向(板幅方向)を上下方向に一致させて、水平方向に互いに離隔して設けられている一対の床下地支持材22間に、該一対の床下地支持材22の間隔方向に長手方向を一致させて設けられている。
【0033】
図1に示す床構造において、防振用架台10は、床下地材21の横架部21a下側にて、一対の床下地支持材22間に位置する領域に設けられている。また、図1に示す床構造の防振用架台10は、その全体が、床下地材横架部21aとその下方の天井部30との間に確保されたスペースS内に位置する。
【0034】
図1に示す床構造において、防振用架台10の粘弾性体13は、床下地材21の横架部21aの下面に当接されている。粘弾性体13は、架台本体11の受け板部12と床下地材21の横架部21aとの間に挟み込まれている。粘弾性体13は、床下地材21の横架部21a下面に重ね合わせて押し付け、横架部21a下面にしっかりと圧接させることが好ましい。
【0035】
図1に示す床構造は、防振用架台10(具体的には受け板部12)と床下地材21との間に挟み込まれた粘弾性体13が床下地材21の振動エネルギーを吸収して床下地材21の振動を抑える。その結果、この床構造は、床20の防音性能を高めることができる。
【0036】
図1に示すように、防振用架台10は、床下地材21の上側ではなく、床下地材21の下側に設けられている。図1に示す床構造は、防振用架台10を床下地材21とその下方の天井部30との間に確保されたスペースS内に設けた構成により、床高さを上げることなく床20の防音性能を高めることができる。
【0037】
防振用架台10は、構造が単純であり、低コスト化が容易である。
図1に例示した床構造は、防振用架台10を床下地材21下側に設置して防振用架台10の粘弾性体13を床下地材21の横架部21a下面に当接させるだけで優れた防音性能を容易に確保できる。この床構造は、床下地材自体の剛性向上、乾式二重床構造の採用といった手法に比べて低コストで簡単に床の防音性能を高めることができる。
また、この床構造は、既存建築物の床の防音性能を高めるべく、防振用架台10を既存建築物の床下地材下側に設置(既存建築物に対する後付け)して構築することが可能である。
【0038】
図1に例示した床構造において、床下地材21の横架部21aにその上方からの落下物等の衝突によって与えられた衝撃力は、横架部21aに下方への撓み変形を生じさせる撓み変形力として作用する。
防振用架台10が設置されておらず床下地材21の横架部21aの撓み変形が自由であるとき、横架部21aはその上方から下方への衝撃力を受けることで、上下方向に振動する。防振用架台10の粘弾性体13は、水平方向に延在する初期状態にある床下地材横架部21aの下面に当接されている。防振用架台10は、下方への衝撃力を受けた横架部21aが初期状態のときの位置から下方へ撓み変形する力を粘弾性体13の変形によって吸収し、横架部21aの振動を減衰させる。その結果、防振用架台10は、横架部21aが下方への衝撃力を受けたときの衝撃音を低減できる。
【0039】
ここで、防振用架台10の架台本体11は、粘弾性体13を、該粘弾性体13を介して床下地材21とは反対側から支持する剛体として機能する。架台本体11は、床下地材横架部21aから作用した下方への力に対して、粘弾性体13(具体的にはその受け板部12側の面)を変位させることなく安定支持する。これにより、防振用架台10は、粘弾性体13による横架部21aの振動エネルギーの吸収減衰、下方への衝撃力を受けた横架部21aが初期状態から下方へ撓み変形しようとする力の吸収減衰)を効率良く実現できる。
【0040】
図1図2に例示した防振用架台10の架材部14の突板部14bは、帯状主板部14aから帯状主板部14a長手方向に平行に形成された突端14b1(図1では上端)側に行くにしたがって帯状主板部14a長手方向に沿う延在方向の寸法が縮小する台形板状に形成されている。架台本体11の受け板部12は、突板部14bの突端14b1に該突板部14bに垂直(細長板状の架材部14に垂直)に設けられている。
【0041】
図1の床構造において、架台本体11の台形板状の突板部14bは、床下地材21の横架部21aから粘弾性体13及び受け板部12を介して作用した下方への変位力を、帯状主板部14aにその長手方向に広く分散して伝達する機能を果たす。台形板状の突板部14bは、床下地材横架部21aから粘弾性体13を介して作用した下方への変位力に対する架台基幹部18の曲げ(撓み)耐力を高め、架台本体11全体の曲げ(撓み)耐力向上に有効に寄与する。
【0042】
図1図2に例示した架台基幹部18の架材部14の突板部14bは、帯状主板部14aの高さ方向片側に帯状主板部14a長手方向全長にわたって形成されている。
但し、架台基幹部としては、例えば図4に示す防振用架台10Aの架台本体11Aの架台基幹部18Aのように、帯状主板部14a長手方向の一部分のみから突板部14bを突設した構成も採用可能である。図4に示す防振用架台10Aの架台基幹部18Aは、図1図2に示す架台基幹部18に比べて一層の小型化、軽量化に有利である。
【0043】
図1図2図4に例示した架台基幹部18の架材部14の突板部14bは、その帯状主板部14a長手方向に沿う延在方向中央部の突端14b1を介してその延在方向両側に、前記突端14b1から突板部14b延在方向に離隔するに従い帯状主板部14aに接近する斜面14b2を有する台形板状に形成されている。この突板部14bを、以下、両側傾斜突板部とも言う。図1図2図4に例示した両側傾斜突板部14bに、図中符号14fを付記する。
【0044】
図1図2図4に例示した両側傾斜突板部14fのその延在方向両側の斜面14b2の帯状主板部14a長手方向に対する傾斜角度は90度未満の鋭角で互いに同じに揃えられている。但し、両側傾斜突板部14fとしては、突端14b1を介して両側の斜面14b2の帯状主板部14a長手方向に対する傾斜角度が互いに異なる構成も採用可能である。
【0045】
また、台形板状の突板部としては、図1図2図4に例示した両側傾斜突板部14fに限定されない。台形板状の突板部としては、図5に示すように、突板部14b延在方向において突端14b1を介して一方の側のみに斜面14b2が形成され、突端14b1を介して他方の側全体が、帯状主板部14a長手方向及び突端14b1延在方向に垂直の垂直面14b3とされた構成も採用可能である。図5のように、突板部14b延在方向において突端14b1を介して一方の側に斜面14b2、他方の側に垂直面14b3が形成された構成の突板部14bを、以下、片側傾斜突板部14gとも言う。
両側傾斜突板部14f及び片側傾斜突板部14gは、本発明に係る実施形態の架台本体(架台)及び防振用架台の架材部の突板部として広く適用可能である。
【0046】
帯状主板部14a長手方向の一部分のみから突出する突板部としては、台形板状に限定されず、突板部の帯状主板部14a長手方向に沿う延在方向全体に亘って帯状主板部14aから一定突出寸法で形成した構成のもの(以下、帯板状突板部とも言う)も採用可能である。
台形板状の突板部14bは、帯状主板部14a長手方向に沿う延在方向の寸法が該突板部14bと同じ帯板状突板部に比べてサイズが小さく、軽量でありながら、粘弾性体13及び受け板部12から下方へ作用した力の帯状主板部14aへの分散を帯板状突板部と同様に行える。台形板状の突板部14bは、架台基幹部18の小型化、軽量化にも有効に寄与する。
【0047】
図1に例示した防振用架台10の架材部14長手方向両端部にそれぞれ設けられた取付部材15の一方(図1において左側の取付部材15。以下、第1取付部材151とも言う)は、架材部14の長手方向端部の所定位置に所定向きで固定される。架材部14長手方向両端側の取付部材15の他方(図1において右側の取付部材15。以下、第2取付部材152とも言う)は、架台本体11の架材部14に対してその長手方向に位置調整して固定できる。
【0048】
図1図2に例示した防振用架台10は、架台本体11の架材部14に対する第2取付部材152の固定位置を架材部14長手方向に調整することで、架台本体11の長さを調整できる。防振用架台10は、第2取付部材152の架材部14に対する架材部14長手方向への固定位置調整によって、床下地支持材22間距離に応じて架台本体11の長さを調整して、架台本体11長手方向両側の取付部材15をそれぞれ床下地支持材22に固定することで、一対の床下地支持材22間に架設できる。
【0049】
既述のように、図1に例示した防振用架台10の取付部材固定具16は、具体的にはボルト−ナット締結具である。図示例の取付部材15は、ボルト−ナット締結具16によって架材部14に締結固定されている。
【0050】
ボルト−ナット締結具16は、具体的には、六角形板状等の、工具を係合させて回転操作される頭部がねじ軸片端に一体化された構成の有頭のボルトと、このボルトのねじ軸に螺着されるナットとを有する構成のものを採用できる。このボルト−ナット締結具16は、ボルトの頭部とナットとの間にて架材部14と取付部材15とを締結固定する。
また、ボルト−ナット締結具16としては、有頭ボルトと該ボルトのねじ軸に螺着されるナットとを有する構成に限定されない。ボルト−ナット締結具16としては、例えば、頭部を有さず全体がねじ軸によって構成されているボルト(以下、無頭ボルトとも言う)と、このボルト(ねじ軸)に螺着される複数のナットとを有し、ボルトに複数螺着したナットの間に架材部14と取付部材15とを締結固定する構成のものも採用可能である。
【0051】
図2に示すように、防振用架台10の架材部14(図示例では帯状主板部14a)の長手方向両端部には、それぞれボルト−ナット締結具16のボルトを通すためのボルト孔14cが架材部14の貫設されている。ボルト孔14cは、細長板状の架材部14の厚みを貫通して形成(貫設)されている。
【0052】
以下、架材部14の長手方向両端部にそれぞれ設けられた取付部材15の一方(図1において左側の取付部材15)を第1取付部材151、他方(図1において右側の取付部材15)を第2取付部材152とも言う。
また、以下、第1取付部材151を架材部14に固定するボルト−ナット締結具16のボルトを通すボルト孔14cを第1ボルト孔14d(図2参照)、第2取付部材152を架材部14に固定するボルト−ナット締結具16のボルトを通すボルト孔14cを第2ボルト孔14e(図2参照)とも言う。
【0053】
図2に示すように、取付部材15は、ボルト孔15bが形成された部材本体15aと、固定具挿通孔15dが形成された固定端部15cとを有する。取付部材15は、そのボルト孔15bと架材部14の第1ボルト孔14dとにボルトを刺し通したボルト−ナット締結具16によって架材部14の長手方向端部に締結固定される。また、図1に示すように、取付部材15は、その固定端部15cを、架材部14長手方向端部を介して架材部14長手方向中央部とは反対の側に配置して架材部14の長手方向端部に固定される。
【0054】
図2に示すように、第1取付部材151は、具体的には、架材部14長手方向一端部に重ね合わされる板状の部材本体15a(以下、主板部151aとも言う)と、この主板部151aに垂直に設けられた板状の固定端部15c(以下、端板部151cとも言う)とを有する。
第1取付部材151のボルト孔15bは第1取付部材151の主板部151aにその厚みを貫通して形成されている。第1取付部材151の固定具挿通孔15dは、第1取付部材151の端板部151cにその厚みを貫通して形成されている。
【0055】
図1に示すように、第1取付部材151は、架材部14長手方向一端部に重ね合わせた主板部151aのボルト孔15bと架材部14の第1ボルト孔14dとにボルトを刺し通したボルト−ナット締結具16によって、架材部14の長手方向一端部に締結固定される。また、第1取付部材151は、ボルト−ナット締結具16によって、端板部151cが架材部14長手方向に垂直の向きで架材部14に固定される。
【0056】
図2において、第1取付部材151のボルト孔15b、及び架材部14の第1ボルト孔14dは、ボルト−ナット締結具16のボルトの外径(具体的にはねじ軸外径。以下同じ)に内径を揃えた丸孔に形成されている。第1取付部材151のボルト孔15bに、図1図2中、符号151bを付記する。
第1取付部材151及び架材部14のボルト孔151b、14dは、ボルト−ナット締結具16のボルト(具体的にはねじ軸)を通したときに、該ボルトのボルト孔151b、14d中心軸線に垂直の方向への変位を規制する。
【0057】
図2に示すように、架材部14の第1ボルト孔14dは、架材部14長手方向一端部の複数箇所(図示例では2箇所)に形成されている。第1取付部材151のボルト孔151bは、第1取付部材151の部材本体15a(主板部151a)の複数箇所に、架材部14の複数の第1ボルト孔14d相互の位置関係と同じ位置関係を以て形成されている。第1取付部材151の複数のボルト孔151bは、架材部14の複数の第1ボルト孔14dに同時に連通させることができる。
【0058】
第1取付部材151は、互いに連通させた複数組のボルト孔14d、15aのそれぞれにボルトを刺し通したボルト−ナット締結具16によって架材部14の長手方向一端部の所定位置に所定向きで締結固定される。すなわち、図1に示すように、第1取付部材151は、架材部14長手方向一端部を介して架材部14長手方向中央部とは反対側に配置した端板部151cが架材部14長手方向に垂直の向きで、ボルト−ナット締結具16によって架材部14の長手方向一端部に締結固定される。
【0059】
図2に示すように、第2取付部材152は、具体的には、架材部14長手方向他端部に重ね合わされる板状の部材本体15a(以下、主板部152aとも言う)と、この主板部152aに垂直に設けられた板状の固定端部15c(以下、端板部152cとも言う)とを有する。
第2取付部材152のボルト孔15b(図1図2中、符号152bを付記する)は、第2取付部材152の主板部152aにその厚みを貫通して形成されている。第2取付部材152の固定具挿通孔15dは、第2取付部材152の端板部152cにその厚みを貫通して形成されている。
【0060】
図1に示すように、第2取付部材152は、架材部14長手方向他端部に重ね合わせた主板部152aのボルト孔15bと架材部14の第2ボルト孔14eとにボルトを刺し通したボルト−ナット締結具16によって、架材部14の長手方向一端部に締結固定される。また、第2取付部材152は、ボルト−ナット締結具16によって、端板部152cが架材部14長手方向に垂直の向きで架材部14に固定される。
【0061】
図2に示すように、架材部14の長手方向他端部の第2ボルト孔14eは、架材部14長手方向を長手方向とする細長に形成された長孔である。以下、第2ボルト孔14eを、ボルト挿通長孔とも言う。
図2において、ボルト挿通長孔14eのその中心軸線に垂直の断面における長手方向に直交する長孔幅方向の寸法(長孔幅寸法)は、第2取付部材152を架材部14に締結固定するボルト−ナット締結具16のボルトの外径に揃えられている。
また、ボルト挿通長孔14eは、その長手方向寸法を長孔幅寸法に比べて格段に大きく設定して形成されている。ボルト挿通長孔14eは、該ボルト挿通長孔14eに通したボルト−ナット締結具16のボルトの、長孔幅方向への変位を規制し、該ボルト挿通長孔14e長手方向への移動を許容するサイズに形成されている。
【0062】
図2において、第2取付部材152のボルト孔152bは、架材部14のボルト挿通長孔14eと同じサイズに形成された長孔である。第2取付部材152のボルト孔152bを、以下、ボルト挿通長孔とも言う。
【0063】
図2に示すように、架材部14の第2ボルト孔14eは、架材部14長手方向他端部の複数箇所(図示例では2箇所)に形成されている。図1図2に例示した防振用架台10において複数のボルト挿通長孔14eは、架材部14長手方向他端部に、架材部14高さ方向に互いに離隔させて形成されている。
第2取付部材152のボルト挿通長孔152bは、第2取付部材152の部材本体15a(主板部152a)の複数箇所に、架材部14の複数のボルト挿通長孔14e相互の位置関係と同じ位置関係を以て形成されている。第2取付部材152の複数のボルト挿通長孔152bは、架材部14の複数のボルト挿通長孔14eに同時に連通させることができる。
【0064】
なお、第2取付部材152のボルト挿通長孔152bは、その中心軸線に垂直の断面における長手方向に直交する長孔幅方向の寸法(長孔幅寸法)が架材部14のボルト挿通長孔152bと同じで、長手方向寸法が架材部14のボルト挿通長孔152bに対して異なっている構成も採用可能である。
【0065】
第2取付部材152は、互いに連通させた複数組のボルト孔14e、15bのそれぞれにボルトを刺し通したボルト−ナット締結具16によって架材部14の長手方向他端部の所定位置に所定向きで締結固定される。すなわち、図1に示すように、第2取付部材152は、架材部14長手方向他端部を介して架材部14長手方向中央部とは反対側に配置した端板部152cが架材部14長手方向に垂直の向きで、ボルト−ナット締結具16によって架材部14の長手方向他端部に締結固定される。
【0066】
第2取付部材152の架材部14に対するその長手方向への固定位置は、互いに連通させたボルト孔14e、152bの長手方向寸法の合計からボルト−ナット締結具16のボルト外径の2倍の寸法を差し引いた長さの範囲で架材部14長手方向に調整可能である。
図1に例示した防振用架台10の架台本体11は、第2取付部材152の架材部14に対するその長手方向への固定位置を調整することで、その長手方向(架材部14長手方向に一致)全長の寸法、換言すれば、架材部14長手方向両側の取付部材15の固定端部15c間の距離を調整できる。
【0067】
但し、図1図2に示すように、第2取付部材152の架材部14に対するその長手方向への固定位置の調整範囲(固定位置調整範囲)は、架台本体11全長に比べて格段に小さい。また、図1図2に例示した架台本体11の受け板部12の架材部14長手方向における中央は、架材部14長手方向両端部のボルト孔14cの中心軸線から等距離に位置している。さらに、受け板部12の架材部14長手方向における中央は、第2取付部材152のボルト挿通長孔152bの中心軸線が架材部14の第2ボルト孔14eの中心軸線上に位置するときに、架台本体11長手方向全長の中央に位置する。受け板部12に層状に設けられた粘弾性体13の架材部14長手方向における中央は、受け板部12の架材部14長手方向における中央と一致している。しかも、受け板部12及び粘弾性体13は、その架材部14長手方向における中央から、架材部14長手方向両側へ、それぞれ、第2取付部材152の架材部14に対する架材部14長手方向への固定位置の調整可能距離と概ね同じかあるいは前記調整可能距離よりも大きい寸法(図1図2では、調整可能距離よりも大きい寸法)で延在している。第2取付部材152の架材部14に対する架材部14長手方向への固定位置の調整可能距離は、粘弾性体13の架材部14長手方向における中央から架材部14長手方向両側への延在寸法と概ね同じかあるいは前記延在寸法よりも短い。
このため、図1図2に例示した防振用架台10は、その長手方向両側の取付部材15を互いに離隔する床下地支持材22に固定して架設するときに、粘弾性体13を、第2取付部材152の架材部14に対する架材部14長手方向の固定位置に依らず、床下地材横架部21aの一対の床下地支持材22の間隔方向中央部下面に当接させることができる。
【0068】
図1に例示した床下地材横架部21aの下方への衝撃力に起因する振動の振幅は、床下地材横架部21a両側の床下地支持材22間の中央部で最も大きく、一対の床下地支持材22の間隔方向である構造材間隔方向における中央部から離隔するに従って小さくなる。
図1に例示した床構造において、防振用架台10の粘弾性体13は、構造材間隔方向における横架部21a中央部の下面にその下方から当接させている。つまり、図1に例示した床構造は、床下地材横架部21a下面に対する防振用架台10の粘弾性体13の当接位置を、床下地材横架部21aの、下方への衝撃力に起因する振動の振幅が最大となる構造材間隔方向中央部に設定した構成になっている。
この構成は、下方への衝撃力を受けた床下地材横架部21aの振動エネルギー吸収、振動減衰を効率良く行え、床20の防音性能を効率良く高めることができる。
【0069】
図3は対比例の床構造を示す。
図3に示す対比例の床構造は、図1に例示した床構造から防振用架台10を省略し、水平方向に互いに離隔させて設けられた床下地支持材22上に粘弾性体13を設け、この粘弾性体13上に設置された床下地材21を床下地支持材22によって支持した構成になっている。
【0070】
図3の床構造の床下地材21は、その全体が、床下地支持材22上の粘弾性体13によって床下地支持材22に対して揺動(微動)可能に支持されている。
図3の床構造は、床下地材21の横架部21aにその上方から下方へ向かって衝撃力が作用したときに、床下地支持材22上の粘弾性体13が衝撃力、床下地材21の振動エネルギーを吸収、減衰する。床下地材21は粘弾性体13を介して床下地支持材22上に揺動可能に支持されているため、横架部21aにその上方から下方へ作用した衝撃力によって粘弾性体13が圧縮変形されればそれに伴い下方へ若干変位する。
【0071】
これに対して、図1に例示した床構造は、図3に示す対比例の床構造とは全く異なる。
図1の床構造の床下地材21は、水平方向に互いに離隔させて設けられた床下地支持材22上に固定あるいは固定せずに載置されている。この床下地材21の床下地支持材22上に位置する部分は、横架部21aにその上方から作用した下方への衝撃力に起因する振動が発生しても変位しないか、あるいは殆ど変位せず、実質的に固定点として機能する。
そして、この床構造は、既述のように、防振用架台10が無い場合の下方への衝撃力を受けた床下地材横架部21aの振幅最大部位にその下側から防振用架台10の粘弾性体13を当接させた構成により、衝撃力に起因する振動エネルギーを効率良く吸収、減衰できる。その結果、この床構造は、高い防音性能を容易に得ることができる。
【0072】
図1のように、下方への衝撃力を受けたときの床下地材横架部21aの振幅最大部位にその下側から防振用架台10の粘弾性体13を当接させた構成は、特に重量衝撃音の抑制に有効に寄与する。
また、図1の床構造は、架台本体11の受け板部12に層状に設けられた粘弾性体13を、床下地材横架部21aの振幅最大部位及びその周囲に当接できる。このため、図1の床構造は、粘弾性体13の床下地材横架部21aへの当接面積によって、広い周波数域にわたって衝撃音を抑制することができる。
【0073】
図3の対比例の床構造は、床下地材21と床下地支持材22との間に粘弾性体13を介在させる分、床面(床上面)の高さが高くなる。また、図3の床構造は、床下地材21及び該床下地材21から上側の床上層部23の床下地支持材22に対する揺動を可能にするべく、建築物の柱や壁が床下地材21及び床上層部23の揺動を規制しない特殊な床組を必要とする。
これに対して、図1に例示した床構造は、床下地材21を床下地支持材22(梁又は根太)上に直接設置する構成であるため、図3に例示した床構造に比べて、床面の高さを低く抑えることができる。また、図1の床構造は、建築物の柱や壁に対する床下地材21及び床上層部23の変位を許容する必要が無いため、図3に例示した床構造に比べて床組が単純で済むといった利点がある。
【0074】
図1図2に示すように、防振用架台10の架台本体11は、架台基幹部18と、架材部14長手方向両端部に取り付けられる、架台基幹部18とは別体の取付部材15とを有する構成となっている。
架台本体11は、ボルト孔15bから固定端部15cの固定具挿通孔15dまでの距離が互いに異なる取付部材15を選択使用して、架台本体11を架設する一対の床下地支持材22間の種々の離隔距離に対応することが可能である。
また、架台本体11は、第1、第2取付部材151、152のそれぞれについて、ボルト孔15bから固定端部15cの固定具挿通孔15dまでの距離を種々選択することで、架台本体11長手方向における受け板部12及び粘弾性体13の位置を調整できる。
【0075】
架台本体としては、架材部14長手方向両側の取付部材15の片方のみを、架材部14に対する固定位置を架材部14長手方向に調整可能とした構成(図1図2参照)に限定されない。架台本体としては、架材部14長手方向両側の取付部材15の両方とも、架材部14に対する固定位置を架材部14長手方向に調整可能とした構成も採用可能である。
【0076】
架材部14長手方向両側の取付部材15の両方とも、架材部14に対する固定位置を架材部14長手方向に調整可能とした架台本体としては、例えば、図6に示す架台本体111を挙げることができる。図6に例示した架台本体111は、図2に例示した架台基幹部18の架材部14の長手方向一端部の第1ボルト孔14d及び第1取付部材151のボルト孔151bを架材部14長手方向に沿って延在する細長の長孔(ボルト挿通長孔)に変更した構成となっている。図6の架台本体111の第1取付部材に図中符号151Aを付記する。
この架台本体111を採用した防振用架台110は、第1取付部材151A、第2取付部材152の架材部14に対するその長手方向への固定位置調整によって、架台本体長手方向における粘弾性体13(及び受け板部12)の位置を容易に調整できる。
【0077】
受け板部12の位置を、架台本体の長手方向両端部を固定する一対の床下地支持材22の間隔方向に調整可能な構成の架台本体(架台)を、以下、チューニング可能架台とも言う。また、の受け板部12の天面12bに粘弾性体13が一体化されたものを、以下、チューニング可能防振用架台とも言う。
図4に例示した架台本体111はチューニング可能架台本体の一例である。
【0078】
図1に例示した床構造から防振用架台10を省略したときの床20の床下地材横架部21aの、下方への衝撃力を受けたときの振幅最大部位の位置は、例えば、床平面視形状や、梁の部分的な曲げ強度のバラツキ、その他、現場での床組に起因する諸般要因(例えば床枠組みの施工誤差など)等によって変動する。
チューニング可能防振用架台は、取付部材15の架材部14に対する架材部14長手方向への固定位置調整によって、床下地材横架部21aの下方への衝撃力を受けたときの振幅最大部位への粘弾性体13の位置合わせを楽に実現できる。
【0079】
このチューニング可能防振用架台は、例えば、その架台本体(チューニング可能架台本体)長手方向両端部を、既設の床下地材21を支持する互いに離隔する床下地支持材22に固定して建築物構造材間に架設した後に、粘弾性体13を、床下地材横架部21aの振幅最大箇所に精度良く位置合わせすることができる。ここで、チューニング可能防振用架台は、例えば床下地材横架部21aに衝撃力を与えてその振幅最大箇所の位置を探りつつ、粘弾性体13を、床下地材横架部21aの振幅最大箇所に位置合わせするといった作業を容易に行なうことができる。その結果、チューニング可能防振用架台は、振動エネルギー吸収、振動減衰をより効率良く行え、床20の防音性能を効率良く高めることができる。
【0080】
チューニング可能架台本体は、架材部14長手方向両側の取付部材15の両方とも、架材部14に対する固定位置を架材部14長手方向に調整可能とした構成に限定されない。
チューニング可能架台本体としては、例えば、架材部14とは別体の受け板部12を採用し、この受け板部12の架材部14に対する固定位置を架材部14長手方向に調整可能とした構成も採用可能である。このチューニング可能架台本体を、以下、受け板位置調整架台本体とも言う。
【0081】
受け板位置調整架台本体としては、例えば、受け板部12のその受け板天面12bとは反対側に突設した突片に形成されたボルト孔と、架材部14長手方向複数箇所に形成したボルト孔から選択したものとにボルト(具体的にはそのねじ軸)を刺し通したボルト−ナット締結具によって、突片を架材部14に締結固定することで受け板部12を架材部14に固定する構成を採用できる。また、受け板位置調整架台本体としては、架材部14長手方向複数箇所のボルト孔にかえて架材部14長手方向に沿って延在する長孔を採用した構成も採り得る。また、受け板部12に突設した突片のボルト孔としては、ボルトのねじ軸外径に対応する内径の丸孔の他、架材部14長手方向に沿って延在する長孔も採用可能である。
なお、受け板部12に突設した突片を架材部14に締結固定するボルト−ナット締結具としては、取付部材15を架材部14に締結固定するボルト−ナット締結具と同様のものを採用できる。
【0082】
以上、本発明を最良の形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の最良の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
(1)架台本体11の架材部14の長手方向端部に取付部材15を固定する取付部材固定具16は、ボルト−ナット締結具に限定されない。
取付部材固定具16としては、架材部14長手方向への取付部材15の固定位置調整が不要な場合、例えば、架材部14のボルト孔及び取付部材15のボルト孔の一方又は両方に形成した雌ねじ孔も採用できる。
(2)架台本体の架台基幹部の架材部としては、例えば図7に示すように、帯状主板部14aの高さ方向片側から突出する突板部14bを、帯状主板部14a長手方向の複数箇所に設けた構成も採用可能である。図7の防振用架台10Bの架台本体11Bの架台基幹部18の架材部に符号11Bを付記する。図7の防振用架台10Bの架台本体11Bの架台基幹部18は、架材部11Bの各突板部14bの突端に、該突板部14bに垂直(細長板状の架材部14に垂直)に受け板部12が一体化された構成となっている。
架材部の複数の突板部のそれぞれの突端に、該突板部に垂直に受け板部が一体化された構成の架台基幹部は、本発明に係る実施形態の架台、防振用架台に広く適用可能である。
(3)架台本体としては、例えば図8に示すように、粘弾性体13の架材部14とは反対側の面に、鉄板等の金属板19を一体化した構成も採用可能である。
この構成の場合、剛体である金属板19を介して床下地材横架部21aから粘弾性体13へ振動エネルギーを効率良く伝達でき、粘弾性体13による振動エネルギーの減衰効率を高めることができる。
(4)床構造としては、粘弾性体13が一体に取り付けられていない架台本体(架台)と床下地材横架部21aとの間に粘弾性体13を挟み込む構成も採用可能である。架材部と該架材部に一体に設けられた受け板部とを有する架台を用いる場合は、受け板部と床下地材横架部21aとの間に粘弾性体13を挟み込む。
この構成の場合の架台本体(架台)としては、受け板部を有していないものも採用可能である。
また、粘弾性体13が一体に取り付けられていない架台本体(架台)を採用する床構造において、床下地材横架部21aと粘弾性体13との間に金属板19を介挿する構成も採用可能である。
(5)架台本体の架台基幹部の架材部としては、帯板状のものに限定されない。
架材部としては、例えば図9(a)に示すように断面コ字形で延在する構成のもの(架材部141)、図9(b)に示すように断面四角枠状で延在する構成のもの(架材部142)、等も採用可能である。
【符号の説明】
【0083】
10、110、10A、10B…防振用架台、11、111、11A、11B…架台本体、12…受け板部、13…粘弾性体、14、141、142…架材部、14b…突板部、14b1…(突板部の)突端、15…取付部材、19…金属板、20…床、21…床下地材、22…建築物構造材(床下地支持材)、30…天井部、B…建築物、S…スペース。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9