(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第一部材に形成されたボルト孔を貫通するボルトであって、前記ボルト孔から一方向へ突出し、前記第一部材の前記一方向に配置された第二部材に固定された一端部と、前記ボルト孔から前記一方向の反対側の他方向へ突出する他端部とを有するボルトと、
前記ボルトの前記他端部を前記他方向に向かって付勢する付勢部材と、
前記ボルトの前記他端部から前記他方向に離間して配置された接触部材と、
前記ボルトの前記他端部と前記接触部材との接触を検知する接触検知手段と、
を備えることを特徴とするボルト損傷検知装置。
第一部材に形成されたボルト孔を貫通するボルトであって、前記ボルト孔から一方向へ突出し、前記第一部材の前記一方向に配置された第二部材に固定された一端部と、前記ボルト孔から前記一方向の反対側の他方向へ突出する他端部とを有するボルトと、
導電性材料からなる前記ボルトの前記他端部と導電性材料からなる前記第二部材との間の電位差を計測して該電位差の変化を検知する電位差検知手段と、
を備えることを特徴とするボルト損傷検知装置。
【背景技術】
【0002】
一般に、複数の部材同士を結合するのに、ボルトが広く使用されている。例えば蒸気タービン用弁のケーシングの端部にボンネット(蓋体)を取り付ける場合、複数のボルトによってボンネットがケーシングの端部に固定される。
【0003】
ところで、ボルトが長期間にわたって使用されると、ボルト自体が経年劣化して、ボルトに亀裂が入ったりボルトが破断したりするなどボルトに損傷が生じる場合がある。このようにボルトが損傷すると、ボルトによる締結力が低下したり失ったりする。よって、損傷したボルトは新しいボルトに交換する必要があるが、ボルトの損傷は、通常、部材内に挿通された部分で発生するため、外観だけで判別するのは困難である。また、複数のボルトで取り付けられている場合、そのうちの1本又はいくつかのボルトが損傷していても、残りのボルトだけで部材同士の結合が維持され得る。しかしながら、損傷したボルトの数が増加すると、結合を維持するために最低限必要な健全ボルト数を下回った際に、急に結合の維持が損なわれることになる。
【0004】
一方、従来、下記特許文献1に示されているような、原子炉内で使用している構造材料の材質の経年劣化の状態を確認するための装置が提案されている。この装置では、構造材料のき裂の成長速度を計測ならびに監視することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した特許文献1に記載の装置では、測定する部位にリード線を直接接続しなければならないので、使用中のボルトの損傷を検知しようとすると、構造的に複雑となり、現実的に適用するのが難しい場合がある。
【0007】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、簡易な構成で、ボルトを外したりすることなく、ボルトの損傷を容易に検知することが可能なボルト損傷検知装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一の態様に係るボルト損傷検知装置は、第一部材に形成されたボルト孔を貫通するボルトであって、前記ボルト孔から一方向へ突出し、前記第一部材の前記一方向に配置された第二部材に固定された一端部と、前記ボルト孔から前記一方向の反対側の他方向へ突出する他端部とを有するボルトと、前記ボルトの前記他端部を前記他方向に向かって付勢する付勢部材と、前記ボルトの前記他端部から前記他方向に離間して配置された接触部材と、前記ボルトの前記他端部と前記接触部材との接触を検知する接触検知手段と、を備える。
【0009】
このような構成のボルト損傷検知装置によれば、ボルトが破断すると、その破断箇所よりも他方向側の部分が付勢部材の付勢力によって他方向に向かって移動し、ボルトの他端部が接触部材に当接する。そうすると、接触検知手段によってボルトの他端部と接触部材との接触が検知され、これにより、ボルトが破断したことが検知される。
【0010】
また、上記したボルト損傷検知装置において、前記ボルトの前記他端部のボルト半径方向への移動範囲を規制する規制部材を備えることがより好ましい。
【0011】
このような構成のボルト損傷検知装置によれば、ボルトの破断箇所よりも他方向側の部分が付勢部材の付勢力によって他方向に向かって移動する際に、規制部材によってボルト半径方向への移動が制限される。これにより、ボルトが破断したときに、ボルトの破断箇所よりも他方向側の部分が接触部材から外れて飛散することが防止される。
【0012】
また、上記したボルト損傷検知装置において、前記接触検知手段が、導電性材料からなる前記ボルトの前記他端部と導電性材料からなる前記接触部材との間の通電を検知する通電検知部を備えることがより好ましい。
【0013】
このような構成のボルト損傷検知装置によれば、ボルトが破断して、ボルトの他端部が接触部材に当接すると、導電性材料からなるボルトの他端部と導電性材料からなる接触部材との間が通電され、それを通電検知部が検知することでボルトの破断が検知される。
【0014】
さらに、このボルト損傷検知装置において、前記接触部材が、電気的な絶縁性を有する絶縁部材を介して前記第一部材又は前記第二部材に設けられていることがさらに好ましい。
【0015】
このような構成のボルト損傷検知装置によれば、接触部材が第一部材又は第二部材に設けられた構成であっても、接触部材と第一部材又は第二部材との間が絶縁部材によって確実に電気的に絶縁されるので、ボルトの他端部と接触部材とが離間しているときには、ボルトと接触部材との間の通電が確実に遮断される。
【0016】
また、上記したボルト損傷検知装置において、導電性材料からなる前記ボルトの前記他端部と導電性材料からなる前記第二部材との間の電位差を計測して該電位差の変化を検知する電位差検知手段を備えることがより好ましい。
【0017】
このような構成のボルト損傷検知装置によれば、ボルトが破断したりボルトに亀裂が発生したりすると、ボルトの他端部と第二部材との間の電位差が変化する。よって、電位差検知手段によって、ボルトの他端部と第二部材との間の電位差を計測して電位差の変化を検知することで、ボルトの破断だけでなくボルトの亀裂も検知される。
【0018】
さらに、このボルト損傷検知装置において、前記ボルト孔内に電気的な絶縁性を有する絶縁スリーブが配設され、該絶縁スリーブ内に前記ボルトが挿通されることがさらに好ましい。
【0019】
このような構成のボルト損傷検知装置によれば、第一部材とボルトとの間が絶縁スリーブによって確実に電気的に絶縁されるので、第一部材とボルトとの電気的な接続に起因するボルトの他端部と第二部材との間の電位差の変化が抑制される。
【0020】
また、本発明の第二の態様に係るボルト損傷検知装置は、第一部材に形成されたボルト孔を貫通するボルトであって、前記ボルト孔から一方向へ突出し、前記第一部材の前記一方向に配置された第二部材に固定された一端部と、前記ボルト孔から前記一方向の反対側の他方向へ突出する他端部とを有するボルトと、導電性材料からなる前記ボルトの前記他端部と導電性材料からなる前記第二部材との間の電位差を計測して該電位差の変化を検知する電位差検知手段と、を備える。
【0021】
このような構成のボルト損傷検知装置によれば、ボルトが破断したりボルトに亀裂が発生したりすると、ボルトの他端部と第二部材との間の電位差が変化する。よって、電位差検知手段によって、ボルトの他端部と第二部材との間の電位差を計測して電位差の変化を検知することで、ボルトの破断だけでなくボルトの亀裂も検知される。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るボルト損傷検知装置によれば、簡易な構成で、ボルトを外したりすることなく、ボルトの損傷を容易に検知することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のボルト損傷検知装置の第一から第五の実施の形態について、上記図面を適宜参照しながら説明する。
【0025】
[第一の実施の形態]
本発明の第一の実施の形態について、
図1及び
図2に基づいて説明する。なお、以下の説明において、
図1及び
図2における下方向を「一方向」とし、その反対側、つまり
図1及び
図2における上方向を「他方向」と記載する場合がある。また、下記のボルト2の軸線Oに沿った方向を「軸方向」と記載し、ボルト2の軸線Oに直交する方向を「半径方向」と記載する場合がある。
【0026】
まず、本実施の形態に係るボルト損傷検知装置1の構成について説明する。
【0027】
図1に示すボルト損傷検知装置1は、第一部材11と第二部材12とを締結しているボルト2の損傷、特に破断を検知するための装置である。このボルト損傷検知装置1が適用されるボルトの一例としては、例えば蒸気タービン用弁のボンネット(第一部材11)をケーシング(第二部材12)に締結するためのボルトが挙げられるが、このボルト損傷検知装置1は様々な場所のボルトに対して適用可能であって、特定の場所のボルトに限定されるものではない。
【0028】
図1に示すように、本実施の形態のボルト損傷検知装置1の概略構成は、ボルト2と、付勢部材3と、接触部材4と、接触検知手段5と、を備える。
【0029】
ボルト2は、例えば金属材料等の導電性材料からなる、いわゆるスタッドボルトであり、第一部材11に形成されたボルト孔13を貫通して配置されている。ボルト2の一方向側の端部(
図1における下端部、以下「一端部2a」と記載する)は、第一部材11の一方向側に配置された第二部材12に固定されている。具体的に説明すると、第二部材12の上端面には、第一部材11のボルト孔13と連通する雌ねじ穴14が形成されており、ボルト孔13の下端から突出したボルト2の一端部2aがこの雌ねじ穴14に螺合されている。また、ボルト2の他方向側の端部(
図1における上端部、以下「他端部2b」と記載する)は、ボルト孔13の上端から他方向へ突出している。このボルト2の他端部2bには、ナット20が螺着されている。なお、ボルト孔13の直径はボルト2の最外直径よりも大きく、ボルト孔13の内周面にボルト2が接触していないことが好ましい。
【0030】
付勢部材3は、ボルト2の他端部2bを他方向に向かって付勢する部材であり、例えばコイルばね等のスプリングからなる。この付勢部材3は、その内側にボルト2が挿通されるようにしてボルト2の他端部2bに装着されると共に、ナット20の下面と第一部材11のボルト孔13の上端開口縁の周りとの間に挟み込まれている。この付勢部材3は、ボルト2が第一部材11と第二部材12とを締結している状態では、
図1に示すように、ナット20と第一部材11とによって軸方向に圧縮されており、その結果、付勢部材3の弾性復元力によってナット20、ひいてはボルト2の他端部2bが上方向に付勢されている。
【0031】
接触部材4は、例えば金属材料等の導電性材料からなる部材であり、ボルト2の他端部2bから他方向に離間して配置されている。具体的に説明すると、接触部材4は、ボルト2の他端部2bを覆うように配設されたカバー状の部材であり、この接触部材4の概略構成は、ボルト2の軸線Oに対して垂直な向きに配置されると共にボルト2の上端面に間隔をあけて対向する接触部40と、ボルト2の軸線Oに平行に配置され、接触部40を支持する支持部41と、を備える。支持部41は、ボルト2の他端部2bの側方に位置しており、ボルト2の他端部2bの半径方向への移動範囲を規制することができる。支持部41の上端は、接触部40に一体的に接続され、支持部41の下端は、電気的な絶縁性を有する絶縁部材6を介して第一部材11に取り付けられている。絶縁部材6としては、例えばゴム材料や合成樹脂材料からなる部材が挙げられる。絶縁部材6は、接触部材4の表面および第一部材11の表面に対して、例えばインサート成形や超音波溶着、接着剤等によって接合される。
【0032】
接触検知手段5は、ボルト2の他端部2bと接触部材4の接触部40との接触を検知するものである。接触検知手段5の概略構成は、導電性材料からなるボルト2の他端部2bと導電性材料からなる接触部材4との間の通電を検知する通電検知部50と、通電検知部50によって検知された情報を記録するデータロガー51と、を備える。通電検知部50は、第一リード線52によって接触部材4の接触部40と電気的に接続されていると共に、第二リード線53によってボルト2と電気的に接続されている。なお、第二リード線53のボルト2側の端部は、ボルト2の他端部2bに接合されている。例えば、第二リード線53のボルト2側の端部は、ボルト2の他端部2bうち、ナット20の他方側に突出した部分の外周面に接合される。
【0033】
次に、上記した構成からなるボルト損傷検知装置1の作用について説明する。
【0034】
上記した構成からなるボルト損傷検知装置1では、ボルト2が例えば経年劣化や外部からの衝撃などにより破断すると、
図2に示すように、その破断箇所Xよりも他方向側の部分(上側部分)が付勢部材3の付勢力によって押し上げられ、ボルト2の他端部2bが接触部材4の接触部40の下面に当接する。そうすると、導電性材料からなるボルト2の他端部2bと導電性材料からなる接触部材4の接触部40との間が通電される。この通電は、第一リード線52及び第二リード線53を介して通電検知部50によって検知され、さらに、その情報がデータロガー51に記録される。よって、このデータロガー51に記録された通電検知に関するデータ、すなわち、ボルト2の他端部2bと接触部材4とが接触したことを示すデータに基づき、ボルト2が破断したことが検知される。
【0035】
また、上記した構成からなるボルト損傷検知装置1では、接触部材4と第一部材11との間が絶縁部材6によって確実に電気的に絶縁されているので、ボルト2の他端部2bと接触部材4とが離間しているときには、ボルト2と接触部材4との間の通電が確実に遮断される。
【0036】
次に、上記した構成からなるボルト損傷検知装置1の効果について説明する。
【0037】
上記したボルト損傷検知装置1によれば、接触検知手段5のデータロガー51に記録されたデータを例えばオンラインなどで監視することにより、簡易な構成で、ボルト2を外したりすることなく、ボルト2の破断を容易に検知することができる。
【0038】
特に、上記したボルト損傷検知装置1によれば、絶縁部材6によって、ボルト2の他端部2bが接触部材4に接触していない状態におけるボルト2と接触部材4との間の通電が確実に遮断されるので、ボルト2の破断の誤検知が防止され、高い検知精度を実現することができる。
【0039】
なお、ボルト2においては、ボルト孔13の下側および上側の開口縁付近に応力が集中する場合が多いため、ボルト2の破断は、ボルト孔13の下側の開口縁付近および上側の開口縁付近で発生する場合が多い。ここで、上記した構成からなるボルト損傷検知装置1では、第二リード線53のボルト2側の端部が、ボルト2のうち、ボルト孔13から他方側に突出した他端部2bに接合されているため、仮に、ボルト孔13の上側の開口縁付近でボルト2の破断が発生しても、接触検知手段5によってボルト2の破断を検知することができる。
【0040】
[第二の実施の形態]
次に、本発明の第二の実施の形態について、
図3に基づいて説明する。なお、上述した第一の実施の形態と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0041】
図3に示すように、本実施の形態のボルト損傷検知装置1には、ボルト2の他端部2bの側方に位置し、ボルト2の他端部2bの半径方向への移動範囲を規制する規制部材7が備えられている。より具体的に説明すると、接触部材4には、接触部40から垂下した庇状の規制部材7が設けられている。この規制部材7は接触部材4の支持部41と向かい合う位置に配置されており、この規制部材7と接触部材4の支持部41との間にボルト2の他端部2bが配置されている。ただし、規制部材7は、ボルト2の軸線Oに対して傾斜しており、規制部材7と接触部材4の支持部41との間隔は、上方にいくに従い漸次小さくなっている。なお、規制部材7は、接触部材4と一体的に形成されていてもよく、或いは、接触部材4とは別体の部品であって、接触部材4に取り付けられた状態であってもよい。
【0042】
上記した構成からなるボルト損傷検知装置1によれば、ボルト2が破断してその破断箇所Xよりも他方向側の部分が付勢部材3の付勢力によって押し上げたときに、ボルト2の破断箇所Xよりも他方向側の部分が飛散しないように、その半径方向への移動が規制部材7によって制限される。これにより、ボルト2が破断したときに、ボルト2の他端部2bが接触部材4の接触部40に確実に接触し、ボルト2が破断したことを確実に検知することができる。
【0043】
[第三の実施の形態]
次に、本発明の第三の実施の形態について、
図4に基づいて説明する。なお、上述した第一又は第二の実施の形態と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0044】
図4に示すように、本実施の形態のボルト損傷検知装置1は、導電性材料からなるボルト2の他端部2bと導電性材料からなる第二部材12との間の電位差を計測してその電位差の変化を検知する電位差検知手段8を備える。この電位差検知手段8の概略構成は、電流(I)を流すと共に電位差(V)を計測する電流源・電位差計80と、電流源・電位差計80で計測された電位差のデータを記録するデータロガー81と、を備える。電流源・電位差計80は、第三リード線82によって第二部材12と電気的に接続されていると共に、第四リード線83によってボルト2の他端部2bと電気的に接続されている。なお、第四リード線83のボルト2側の端部は、ボルト2の他端部2bに接合されている。例えば、第四リード線83のボルト2側の端部は、ボルト2の他端部2bのうち、ナット20の他方側に突出した部分の外周面に接合される。
【0045】
電位差検知手段8のデータロガー81は、接触検知手段5のデータロガー51と共有のデータロガーとなっている。つまり、1つのデータロガー51(81)に、通電検知部50からの検知データと電流源・電位差計80からの計測データとがそれぞれ記録される。電流源・電位差計80による電位差の計測は、例えば24時間に1回などの一定間隔で行われる。
【0046】
上記した構成からなるボルト損傷検知装置1によれば、電流源・電位差計80によってボルト2の他端部2bと第二部材12との間に電流を流してその電位差を一定間隔で計測することで、ボルト2の破断や亀裂を検知することが可能である。詳しく説明すると、ボルト2の他端部2bと第二部材12との間の電位差を(V)とし、電流源・電位差計80によって流す電流を(I)とし、ボルト2及び第二部材12の抵抗を(R)とすると、V=IRの関係式が成り立つ。ボルト2に亀裂が発生したりボルト2が破断したりすると抵抗(R)が大きくなるため、電流(I)が一定ならば電位差(V)も大きくなる。よって、電位差(V)を一定間隔で計測し続け、データロガー81に記録された計測値(電位差)を例えばオンライン等で監視することで、ボルト2の破断だけでなくボルト2の亀裂も容易に検知することが可能である。
【0047】
なお、上記した抵抗(R)はボルト2や第二部材12の温度によっても変化するので、電位差(V)は一定の温度条件の下で監視することが好ましい。この点、例えば蒸気タービン等の場合には、通常、一定温度に調節されているため、温度は問題とならない場合が多い。ただし、ボルト2や第二部材12の温度が変化する場合には、電位差(V)の計測と併せて温度も評価することが好ましい。例えば、熱電対によって温度を実態測定したり、電位差(V)の計測時間とプラント運転履歴とを比較して温度を推定したりし、その温度に基づく温度補正を行う。
【0048】
[第四の実施の形態]
次に、本発明の第四の実施の形態について、
図5に基づいて説明する。なお、上述した第一、第二、または第三の実施の形態と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0049】
図5に示すように、本実施の形態のボルト損傷検知装置1では、ボルト孔13内に電気的な絶縁性を有する絶縁スリーブ9が配設されている。絶縁スリーブ9は、ボルト孔13内に嵌合される筒状部材であり、第一部材11に貫設されている。この絶縁スリーブ9の内側には、ボルト2が挿通されている。絶縁スリーブ9の材料としては、例えばゴム材料や合成樹脂材料などが挙げられる。
【0050】
上記した構成からなるボルト損傷検知装置1によれば、第一部材11とボルト2との間が絶縁スリーブ9によって確実に電気的に絶縁されるので、第一部材11とボルト2との電気的な接続に起因するボルト2の他端部2bと第二部材12との間の電位差の変化が抑制される。これにより、ボルト2の他端部2bと第二部材12との間の電位差の変化に基づくボルト2の損傷の検知精度を向上させることができる。
【0051】
[第五の実施の形態]
次に、本発明の第五の実施の形態について、
図6に基づいて説明する。なお、上述した第一、第二、第三または第四の実施の形態と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0052】
図6に示すように、本実施の形態のボルト損傷検知装置10は、上述した第一、第二、第三または第四の実施の形態と異なり、付勢部材3や接触部材4、接触検知手段5が備えられてなく、電位差検知手段8だけでボルト2の損傷を検知する装置である。また、このボルト損傷検知装置10は、特に複数のボルト2を監視するための装置である。このボルト損傷検知装置10では、監視対象のボルト2によってその初期状態での電位差(V
0)が異なるため、初期状態での電位差(V
0)と計測された電位差を(V)との比率(V/V
0)で規格化した無次元値の時間変化を監視する。なお、このような複数のボルト2の監視方式は、上述した第三の実施の形態においても適用可能である。
【0053】
以上、本発明に係るボルト損傷検知装置の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0054】
例えば、上記した実施の形態では、接触部材4が絶縁部材6を介して第一部材11に取り付けられているが、本発明は、接触部材4が絶縁部材6を介して第二部材12に取り付けられてもよい。さらに、本発明は、接触部材4が第一部材11や第二部材12に設けられていなくてもよく、第一部材11及び第二部材12以外の部分に接触部材4が支持されていてもよい。
【0055】
また、本発明は、絶縁部材6を備えない構成にすることも可能であり、この場合、接触部材4の接触部40と第一部材11又は第二部材12とが確実に電気的に絶縁されるように、例えば接触部材4の支持部41の全部または一部を電気的な絶縁性を有する材料で形成することが好ましい。
【0056】
また、上記した第二の実施の形態では、規制部材7が接触部材4から垂下されているが、本発明は、規制部材7が接触部材4以外に支持されていてもよく、例えば、第一部材11の上面に規制部材7が立設されていてもよい。なお、規制部材7の位置や角度は、ボルト2が破断したときにその破断箇所よりも他方向側の部分の半径方向の移動範囲を規制する限り、適宜変更可能である。
【0057】
また、上記した第三の実施の形態では、電位差検知手段8のデータロガー81と接触検知手段5のデータロガー51とが共有のデータロガーとなっているが、本発明は、電位差検知手段8のデータロガー81と接触検知手段5のデータロガー51とをそれぞれ別々に備えていてもよい。
【0058】
また、上記した第四の実施の形態では、絶縁スリーブ9がボルト孔13の全長に亘って延在しているが、本発明は、絶縁スリーブ9がボルト孔13の長さ方向の一部にのみ設けられてもよい。また、絶縁スリーブ9は、横断面が環状の筒状部材になっていなくてもよく、例えば、横断面がC字形状のスリーブであってもよい。さらに、絶縁スリーブ9は、複数のセグメントに分割されたスリーブであってもよい。
【0059】
また、上記した第五の実施の形態では、複数のボルト2を監視するための構成が説明されているが、本発明は、付勢部材3や接触部材4、接触検知手段5が備えられてなく、電位差検知手段8だけでボルト2の損傷を検知する装置において、一本のボルト2だけを監視する装置であってもよい。また、ボルト2に螺着されるナット20の下にスプリングワッシャ等の付勢部材を配置してもよい。これにより、ボルト2が破断したときに、付勢部材によって破断箇所が引き離され、ボルト2の破断面の接触が防止される。その結果、ボルト2が破断したときに、電位差の変化がより確実かつ明確になり、ボルト2の破断を容易に検知することができる。
【0060】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。