(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241660
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 2/10 20060101AFI20171127BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20171127BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20171127BHJP
H01M 10/643 20140101ALI20171127BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20171127BHJP
H01M 10/6551 20140101ALI20171127BHJP
H01M 10/667 20140101ALI20171127BHJP
H01M 10/6555 20140101ALI20171127BHJP
【FI】
H01M2/10 B
H05K7/20 B
H01M10/625
H01M10/643
H01M10/647
H01M10/6551
H01M10/667
H01M10/6555
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-40537(P2014-40537)
(22)【出願日】2014年3月3日
(65)【公開番号】特開2015-167069(P2015-167069A)
(43)【公開日】2015年9月24日
【審査請求日】2016年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 久雄
【審査官】
守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−196397(JP,A)
【文献】
特開2002−008604(JP,A)
【文献】
特開2008−131512(JP,A)
【文献】
実開昭50−021454(JP,U)
【文献】
特開2012−253838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
H01M 10/60−10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により発熱する発熱部品を有する回路基板と、
前記回路基板に積層され当該回路基板と伝熱的に接続されている熱伝導部材と、
前記熱伝導部材に積層され当該熱伝導部材と伝熱的に接続されるとともに、前記回路基板において前記発熱部品を接続する半田よりも耐熱温度の高い電解液を用いる蓄電ユニットと、を備える蓄電モジュール。
【請求項2】
前記回路基板、前記熱伝導部材および前記蓄電ユニットを収容するケースを備え、
前記ケースが前記蓄電ユニットと伝熱的に接続されている請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記蓄電ユニットと前記ケースとが直接接触している請求項2に記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記回路基板は、前記発熱部品を含む部品を有する、第1回路基板と第2回路基板とからなり、
前記第2回路基板は、前記第1回路基板が有する部品よりも熱の影響を受けやすい部品を有する請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等には複数の蓄電素子を接続してなる蓄電装置と、蓄電ユニットに電力を充電するDC−DCコンバータとが搭載されることがある。
蓄電ユニットと、DC−DCコンバータとは、熱の影響や収容スペースなどを考慮して、別々に配置されるのが一般的である(たとえば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−148762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているように、蓄電ユニットとDC−DCコンバータとを離れた位置に配置すると、それぞれを収容するケースも必要となるため、小型化が困難であった。
そこで、蓄電ユニットとDC−DCコンバータとを一体化することにより小型化することが考えられたが、DC−DCコンバータからの熱を放熱するための大型のヒートシンクを取り付ける必要があるなど、小型化には限界があった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、熱の影響を防止しつつ小型化を可能とした蓄電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するものとして、本発明は、通電により発熱する発熱部品を有する回路基板と、前記回路基板に積層され当該回路基板と伝熱的に接続されている熱伝導部材と、前記熱伝導部材に積層され当該熱伝導部材と伝熱的に接続されるとともに、前記回路基板
において前記発熱部品を接続する半田よりも耐熱温度の高い
電解液を用いる蓄電ユニットと、を備える蓄電モジュールである。
【0007】
本発明において、発熱部品を有する回路基板、熱伝導部材、および蓄電ユニットはこの順で積層されており伝熱的に接続されている。本発明において、蓄電ユニットは回路基板よりも耐熱温度が高いので、回路基板から熱伝導部材に伝わった熱が、熱伝導部材から蓄電ユニットに伝わって放熱可能である。その結果、本発明によれば、発熱部品において発生した熱を放熱するためのヒートシンクが不要となるので、熱の影響を防止しつつ小型化を可能とした蓄電モジュールを提供することができる。
【0008】
本発明は以下の構成としてもよい。
前記回路基板、前記熱伝導部材および前記蓄電ユニットを収容するケースを備え、前記ケースが前記蓄電ユニットと伝熱的に接続されていてもよい。このような構成とすると、蓄電モジュールを構成する各部品を収容するケースが、放熱部材として機能しケース外に放熱するので放熱性に優れる。
【0009】
前記蓄電ユニットと前記ケースとが直接接触していてもよい。このような構成とすると、蓄電ユニットに伝わった熱がケースに伝わりケース外に効率よく放熱される。
【0010】
前記回路基板は、前記発熱部品を含む部品を有する、第1回路基板と第2回路基板とからなり、前記第2回路基板は、前記第1回路基板が有する部品よりも熱の影響を受けやすい部品を有する構成であってもよい。
このような構成とすると、熱の影響を受けやすい部品を、発熱量の大きい部品とは別の回路基板に実装することができるので、熱の影響を受けやすい部品を熱の影響から保護することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱の影響を防止しつつ小型化を可能とした蓄電モジュールを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を
図1ないし
図4によって説明する。
本実施形態の蓄電モジュール10は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車等の車両の電子ブレーキシステムの補助電源装置として使用される。以下の説明において
図1の上下方向を上下とする。複数の同一部材については、一の部材に符号を付し、他の部材については符号を省略することがある。
【0014】
蓄電モジュール10は、
図1に示すように、DC−DCコンバータと、DC−DCコンバータの回路基板の上に積層された熱伝導部材19と、熱伝導部材19の上に積層された蓄電ユニット11と、これらを収容するケース15と、を備える。
【0015】
(ケース15)
ケース15は熱伝導性材料からなる。ケース15は、上方が開口したロアーケース18と、ロアーケース18の開口部分を覆うアッパーケース16と、を備える。ロアーケース18内にはDC-DCコンバータ20、熱伝導部材19、ホルダー27が収容可能とされる。
【0016】
アッパーケース16の上壁は、
図1および
図4に示すように、弧状をなしており、蓄電素子12と直接接触するようになっている。アッパーケース16と蓄電ユニット11(蓄電素子12)とが直接接触することで蓄電ユニット11に伝わった熱がアッパーケース16に効率よく伝わるようになっている。
【0017】
(DC-DCコンバータ20)
蓄電ユニット11に電力を充電するDC-DCコンバータ20は、上方に配される第1回路基板21と、第1回路基板21と接続される第2回路基板25とを備える(回路基板の一例)。
【0018】
第1回路基板21は、導電部材(図示せず)により構成された回路パターンを有するベース基板22の上面にバスバー23を備える。第1回路基板21のベース基板22側には、コイル24A(通電により発熱する発熱部品の一例)、FET24C(発熱部品の一例)、コンデンサ24B等が実装されている。FET24Cは、半田付け等の方法により第1回路基板21に接続されている。ベース基板22と接続されているバスバー23は、銅または銅合金などの導電性の板材からなる。
【0019】
第2回路基板25は、導電部材(図示せず)により構成された回路パターンを有するベース基板26を備える。第2回路基板25のベース基板26の表面には、FET24Cや電子部品24D等の半導体素子が実装されている。FET24Cおよび電子部品24Dは半田付け等の方法により接続されている。本実施形態では、第2回路基板には、第1回路基板よりも熱の影響を受けやすい部品が実装されている。
なお発熱部品を含む部品としては、コイル24A、FET24C、コンデンサ24B、電子部品24Dなどの半導体素子があげられる。
【0020】
(熱伝導部材19)
第1回路基板21を構成するバスバー23の上には、熱伝導材料からなる熱伝導部材19が積層されている。熱伝導部材19は第1回路基板21と伝熱的に接続されている。熱伝導部材19は熱伝導材料からなるシート状またはフィルム状の部材であって、熱伝導材料からなる接着剤からなるものであっても構わない。熱伝導部材19は、DC-DCコンバータ20の第1回路基板21のベース基板22面(実装面)から蓄電ユニット11の表面までの熱抵抗を、たとえば2K/W以下とするものなどであってもよい。
【0021】
(ホルダー27)
熱伝導部材19の上には金属製のホルダー27が積層され、当該ホルダー27には蓄電ユニット11が保持されるようになっている。ホルダー27は熱伝導性を有しており、熱伝導部材19と伝熱的に接続されている。ホルダー27は
図3に示すように、上面側が蓄電ユニット11を構成する蓄電素子12の外周形状に沿った弧状形状をなしており、下面側は扁平面である。ホルダー27の上面の弧状の凹み部27Aに蓄電素子12が嵌るようになっている。
【0022】
(蓄電ユニット11)
ホルダー27の上には蓄電ユニット11が積層されている。蓄電ユニット11はホルダー27を介して、熱伝導部材19に積層されるとともに、熱伝導部材19と伝熱的に接続されている。蓄電ユニット11の上にはアッパーケース16が積層されており、蓄電ユニット11とアッパーケース16とは伝熱的に接続されている。
【0023】
蓄電ユニット11は、
図1に示すように、正極および負極の電極端子13を有する複数(本実施形態では6個)の蓄電素子12と、電極端子13,13間を電気的に接続する接続部材(図示せず)と、を備える。
【0024】
(蓄電素子12)
蓄電素子12は、円筒状をなしており、その端部には正極および負極の電極端子13が外側方向に突出形成されている。隣り合う蓄電素子12は逆極性の電極端子13が隣り合うように配置されており、隣り合う蓄電素子12の正極の電極端子13と負極の電極端子13とが接続部材を介して電気的に接続されている。
【0025】
本実施形態では蓄電素子12(蓄電ユニット11)として、DC-DCコンバータ20(第1回路基板21および第2回路基板25)よりも耐熱温度の高いものを用いる。第1回路基板21および第2回路基板25においてFET24Cなどの電子部品を接続する半田24Eの耐熱温度は105℃程度なので、これよりも耐熱温度の高い蓄電素子12を用いればよい。
【0026】
蓄電素子12としては、たとえば特開2013−84668号公報に記載のイオン液体を電解液として有するものなどを用いてもよい。
【0027】
(蓄電モジュール10の組み付け方法)
以下、蓄電モジュール10の組み付け方法について説明する。
第1回路基板21および第2回路基板25に、FET24C、コンデンサ24B、コイル24A、電子部品24Dなどを実装し、第1回路基板21と第2回路基板25とを接続してDC-DCコンバータ20を作製する。
【0028】
DC-DCコンバータ20をロアーケース18に入れ、熱伝導部材19、ホルダー27、蓄電素子12を順に積層した後、蓄電素子12の上にアッパーケース16をかぶせつけ、ネジなどの固定部材(図示せず)により固定すると蓄電モジュール10が得られる。
【0029】
(本実施形態の作用および効果)
本実施形態によれば、以下の作用、効果を奏する。
本実施形態において、発熱部品を有する第1回路基板21(および第2回路基板25)、熱伝導部材19、および蓄電ユニット11はこの順で積層されており伝熱的に接続されている。本実施形態において、蓄電ユニット11は第1回路基板21よりも耐熱温度が高いので、第1回路基板21から熱伝導部材19に伝わった熱が、熱伝導部材19から蓄電ユニット11に伝わって放熱可能である。その結果、本実施形態によれば、発熱部品において発生した熱を放熱するためのヒートシンクが不要となるので、熱の影響を防止しつつ小型化を可能とした蓄電モジュール10を提供することができる。
【0030】
また、本実施形態によれば、第1回路基板21、熱伝導部材19および蓄電ユニット11を収容するケース15が蓄電ユニット11と伝熱的に接続されているから、ケース15が、放熱部材として機能し第1回路基板21から熱伝導部材19を介して蓄電ユニット11に伝わった熱をケース15外に放熱するので放熱性に優れる。
【0031】
また、本実施形態によれば、蓄電ユニット11とケース15とが直接接触しているから、蓄電ユニット11に伝わった熱がケース15に伝わりケース15外に効率よく放熱される。
【0032】
また、本実施形態において、第2回路基板25は、第1回路基板21の有する部品よりも熱の影響を受けやすい部品(例えば半導体素子)を有する構成であるので、熱の影響を受けやすい部品が、発熱量が大きく熱の影響を受けにくい部品(例えばコイル24A)とは別の回路基板に実装されていることになる。その結果、本実施形態によれば、熱の影響を受けやすい部品を熱の影響から保護することができる。
【0033】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を
図5ないし
図8によって説明する。
本実施形態の蓄電モジュール30は、蓄電素子32の形状とアッパーケース36(ケース35)の形状が実施形態1とは相違する。実施形態1と同様の構成については同一の符号を付し、重複した説明を省略する。以下の説明において
図5の上下方向を上下とする。
【0034】
蓄電ユニット31は4個の蓄電素子32を接続してなる。蓄電素子32は、
図6に示すように直方体状をなしており、一つの面から正負の電極端子33が外側方向に突出して設けられている。
【0035】
蓄電素子32を保持するホルダー39は、
図7に示すようにフレーム状をなしており、凹み部39A内に4つの蓄電素子32のうち一番下側に配される蓄電素子32がはめ込まれるようになっている。
【0036】
アッパーケース36は
図8に示すように、直方体状をなしている。アッパーケース36の下端部は、
図5に示すように、フランジ状をなしており、ロアーケース38の上端部に重ねられるようになっている。本実施形態においても、アッパーケース36は蓄電素子32と直接接触するように積層されており、蓄電ユニット31とアッパーケース36とは伝熱的に接続されている。
その他の構成は概ね実施形態1と同様である。本実施形態によっても実施形態1と同様の効果が得られる。
【0037】
<変形例1>
実施形態2の変形例1を
図9および
図10によって説明する。
変形例1の蓄電モジュール40は、
図9および
図10に示すように、アッパーケース41の形状が実施形態2と相違する。アッパーケース41の上外壁面には放熱フィン42が設けられている。その他の構成は概ね実施形態2と同様である。
本変形例によれば、アッパーケース41(ケース)の外壁面に放熱フィン42を備えるので、放熱性が高まる。
【0038】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、蓄電ユニット11を保持するホルダー27を備えるものを示したが、ホルダーを備えないものであってもよい。
(2)上記実施形態では、ケース15が蓄電ユニット11と直接接触している構成を示したが、蓄電ユニットとが伝熱的に接続されていないケースを備えるものや、蓄電ユニットと熱伝導シートなどを介して伝熱的に接続されているケースなどであってもよい。
(3)上記実施形態では蓄電ユニット11を構成する蓄電素子12が4個と6個の例を示したが、蓄電素子の数はこれに限定されない。
(4)上記実施形態では2枚の回路基板(第1回路基板および第2回路基板)を備え、第2回路基板には、第1回路基板に実装されている部品よりも熱の影響を受けやすい部品が実装されている例を示したが、2枚の回路基板を備えていても、部品が熱の影響により2つの回路基板に分けられて実装されている構成でなくてもよい。また、回路基板は1枚であってもよいし3枚以上であってもよい。
【符号の説明】
【0039】
10,30,40…蓄電モジュール
11,21…蓄電ユニット
12,32…蓄電素子
13,33…電極端子
15,35…ケース
16,36,41…アッパーケース(ケース)
18,38…ロアーケース(ケース)
19…熱伝導部材
20…DC-DCコンバータ
21…第1回路基板(回路基板)
22…ベース基板
23…バスバー
24A…コイル
24B…コンデンサ(発熱部品)
24C…FET(発熱部品)
24D…電子部品
24E…半田
25…第2回路基板(回路基板)
26…ベース基板
42…放熱フィン