(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ドクダミの葉、コメヌカと納豆菌とベニコウジ菌で発酵させ、さらに、プロテアーゼ処理する工程からなる請求項1の式(1)で示される抗ウイルス作用を呈するエラグ酸誘導体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
【0019】
抗ウイルス作用を呈するエラグ酸誘導体とは、下記の式(1)で示される構造からなるものである。
【0021】
前記の式(1)のようにエラグ酸の1分子とアデニンの1分子とカテコール1分子が結合した構造を呈する。
【0022】
もともとエラグ酸とは植物の果実などに含まれるポリフェノールの一種であり、炭素元素14個、水素元素6個及び酸素元素8個より構成され、分子量は302.19、CAS番号476−66−4である。
【0023】
エラグ酸には水酸基が豊富で抗酸化力と抗菌作用を発揮されることは、この誘導体を安定に維持できるとから好ましい。この誘導体では酸素を含む環状構造が開環してカルボン酸になり、反応性を高めている。
【0024】
構成成分であるアデニンは遺伝子内に存在し、遺伝情報を伝達する働きを呈している塩基である。炭素元素5個、水素元素5個及び窒素元素5個より構成され、分子量は135.13である。
【0025】
この誘導体では、アデニンの9位の窒素元素がエラグ酸のフェノール性水酸基と結合している。この酸素と窒素の結合は共有結合である。
【0026】
また、この誘導体に結合しているカテコールはベンゼン環のオルト位に2つの水酸基を有するポリフェノールであり、炭素元素6個、水素元素6個及び酸素元素2個より構成される。分子量110.1の天然に存在しているポリフェノールである。
【0027】
この誘導体では、カテコールはエラグ酸の開環されたカルボキシル基の水酸基と結合している。
【0028】
カテコールは強い抗酸化作用を呈し、抗酸化作用を発揮することから、誘導体が安定に維持され、好ましい。
【0029】
このエラグ酸誘導体は有機化学的に合成でき、標準品として利用できる。その構造はH−NMRにより解析され、90MHzのNMR測定によりケミカルシフトのピークは2.48〜2.5、3.31〜3.85、5.48〜6.72、7.09〜8.13及び10.67〜12.8ppmに認められる性質を有する。
【0030】
すなわち、このエラグ酸誘導体は天然由来のものであり、その安全性は確認されていることから、好ましい。さらに、このエラグ酸誘導体の過剰量と人が接触した場合、または飲んだ場合には、体内のエステラーゼなどの酵素により分解されて、エラグ酸、アデニン及びカテコール分子に分解されることから安全性が高い。
【0031】
このエラグ酸誘導体は土壌においては微生物により分解されやすく、環境に対する負担もなく、蓄積性もないことから好ましい。
【0032】
このエラグ酸誘導体は細胞膜を通過し、さらに、核膜を通過して遺伝子に働くことから、その作用が直接的で効率的であることから好ましい。
【0033】
このエラグ酸誘導体はウイルスに対する親和性が高く、ウイルスに取り込まれやすいことから、抗ウイルス作用が増加することは好ましい。
【0034】
さらに、抗ウイルス作用は、ウイルスのRNAとDNAの合成阻害を起こすことから、RNAウイルスとDNAウイルスともに増殖を抑制する。したがって、すべてのタイプのウイルスに働くことから好ましい。
【0035】
一方、ヒト細胞内では細胞内酵素、特に、エラスターゼにより分解されることから、ヒトに対する安全性が高いことは好ましい。
【0036】
このエラグ酸誘導体は皮膚細胞に働き、抗酸化作用と抗菌作用により皮膚細胞を安定に維持している。
【0037】
さらに、このエラグ酸誘導体は皮膚の上皮細胞の増殖を活性化する。このエラグ酸誘導体による皮膚細胞の増殖は細胞膜のEGF受容体の活性化作用による。
【0038】
また、このエラグ酸誘導体は細胞を安定化し、皮膚細胞のターンオーバーを活性化し、皮膚細胞の増殖をもたらすことから好ましい。
【0039】
得られたエラグ酸誘導体を医薬品素材として利用する場合、目的とするエラグ酸誘導体を分離精製することは、目的とするエラグ酸誘導体の純度が高まり、不純物を除去できる点から好ましい。
【0040】
医薬品として、注射剤または経口剤または塗布剤などの非経口剤として利用され、医薬部外品としては、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、石鹸、塗布剤、ゲル剤、歯磨き粉等に配合されて利用される。
【0041】
経口剤としては、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、ドリンク剤等が挙げられる。前記の錠剤及びカプセル剤に混和される場合には、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤等とともに用いることができる。前記の錠剤は、シェラックまたは砂糖で被覆することもできる。
【0042】
また、前記のカプセル剤の場合には、上記の材料にさらに油脂等の液体担体を含有させることができる。前記のシロップ剤及びドリンク剤の場合には、甘味剤、防腐剤、色素香味剤等を添加することができる。
【0043】
非経口剤としては、軟膏剤、クリーム剤、水剤等の外用剤の他に、注射剤が挙げられる。外用剤の基材としては、ワセリン、パラフィン、油脂類、ラノリン、マクロゴールド等が用いられ、通常の方法によって軟膏剤やクリーム剤等とすることができる。
【0044】
注射剤には、液剤があり、その他、凍結乾燥剤がある。これは使用時、注射用蒸留水や生理食塩液等に無菌的に溶解して用いられる。
【0045】
食品製剤として抗ウイルス作用と抗酸化作用による美容を目的とした健康食品、美容食品などに利用される。また、保健機能食品として、栄養機能食品や特定保健用食品に利用することは好ましい。
【0046】
得られた食品製剤をイヌやネコなどのペットや家畜動物に利用する場合、体内ウイルス除去作用と皮膚の健康を維持する目的として飼料やサプリメントとして利用される。
【0047】
化粧料として常法に従って界面活性化剤、溶剤、増粘剤、賦形剤等とともに用いることができる。例えば、クリーム、毛髪用ジェル、洗顔剤、美容液、化粧水等の形態とすることができる。
【0048】
化粧料の形態は任意であり、溶液状、クリーム状、ペースト状、ゲル状、ジェル状、固形状または粉末状として用いることができる。
【0049】
得られた化粧料は抗ウイルス作用により皮膚の健康を維持し、抗酸化作用により美白作用及びアトピー性皮膚炎の角質バリア形成に利用される。
【0050】
次に、ドクダミの葉、コメヌカと納豆素本舗製の納豆菌と紅麹本舗製のベニコウジ菌で発酵させ、さらに、プロテアーゼ処理する工程からなる
式(1)で示される抗ウイルス作用を呈するエラグ酸誘導体の製造方法について説明する。
【0051】
ここでいう
式(1)で示されるエラグ酸誘導体とはエラグ酸1分子とアデニン1分子とカテコール1分子が結合した前述の誘導体である。このエラグ酸誘導体は生体内で酵素により分解されて排泄されるため安全性が高い。
【0052】
このエラグ酸誘導体のエラグ酸は天然に存在し、食経験も豊富であり、安全性が認められていることから好ましい。
【0053】
この誘導体はウイルスに対して遺伝子の複製を抑制し、抗ウイルス作用を発揮する。また、抗酸化作用により美肌作用を呈する。
【0054】
この製造方法とはドクダミの葉、コメヌカと納豆素本舗製の納豆菌と紅麹本舗製のベニコウジ菌で発酵させ、さらに、プロテアーゼ処理する工程からなる。
【0055】
原料となる物質はドクダミの葉、コメヌカ、納豆菌とベニコウジ菌とプロテアーゼである。
【0056】
ドクダミは学名Houttuynia cordataであり、ドクダミ科ドクダミ属の植物であり、日本やアジアなどに自生する。伝承薬や民間薬として利用されており、葉を乾燥してお茶としても利用される。
【0057】
生薬名はジュウヤクであり、利尿作用、動脈硬化の予防作用などが知られているものの、抗ウイルス作用については知られていない。ドクダミの葉には有用成分が豊富であり、利用され、安全性も高い。
【0058】
ドクダミは日本産やアジア産のいずれでも良く、低農薬や減農薬で生産されたものは好ましい。
【0059】
ドクダミの葉は乾燥され、粉末化されることが好ましく、発酵の前にオートクレーブ滅菌されることは発酵をスムーズに行うることから好ましい。
【0060】
3マイクロメーター以下の粒子サイズの粉末が発酵の工程を実施しやすくすることから好ましい。
【0061】
原料となるコメヌカは、日本産、中国産、アメリカ産、ロシア産などいずれの産地のコメから得られたコメヌカでも用いられる。トレーサビリティーが確実であり、生産者が明確である日本産が好ましい。
【0062】
このうち、有機栽培や無農薬で栽培されたコメ由来のコメヌカは有害な農薬や金属を含有しないことから、さらに好ましい。
【0063】
使用に際してコメヌカは株式会社奈良機械製作所製の自由ミル、スーパー自由ミル、サンプルミル、ゴブリン、スーパークリーンミル、マイクロス、減圧乾燥機として東洋理工製の小型減圧乾燥機、株式会社マツイ製の小型減圧伝熱式乾燥機DPTH−40、エーキューエム九州テクノス株式会社製のクリーンドライVD−7、VD−20、中山技術研究所製DM−6などの粉砕機で粉砕される。これにより発酵の工程が効率的に進行されやすい。
【0064】
さらに、ドクダミの葉とコメヌカは粉砕後、オートクレーブなどにより滅菌されることは雑菌の繁殖を防御できることから好ましい。
【0065】
納豆素本舗の納豆菌は、納豆素本舗から市販されている納豆菌であり、品質と発酵効率に優れている点好ましい。学名はBacillus subtillisであり、古くから日本、中国や台湾において納豆に利用され、食経験も豊富である。
【0066】
前記の発酵は清浄な培養用タンクで実施され、滅菌された水道水により前記の材料を混合することは好ましい。
【0067】
さらに、紅麹本舗製のベニコウジ菌によって発酵される。納豆菌とベニコウジ菌による発酵によりエラグ酸誘導体が形成される。
【0068】
用いる紅麹本舗製のベニコウジ菌は学名Monascuc purpureusの糸状菌であり、古くから日本、中国や台湾において紅酒や豆腐ようなどの発酵食品に利用されている。また、沖縄や鹿児島などの日本産、中国や台湾の東南アジア原産の菌種が用いられる。紅麹本舗製のベニコウジ菌は発酵効率に優れている。
【0069】
発酵に関するそれぞれの添加量はドクダミの葉1重量に対してコメヌカは0.1〜1.2重量、ベニコウジ菌は0.0002〜0.007重量、ベニコウジ菌は0.0001〜0.005重量が好ましい。納豆素本舗の納豆菌と紅麹本舗製のベニコウジ菌は発酵される前に、前培養することは、発酵の初発時間を短縮し、発酵時間が短縮されることから好ましい。
【0070】
前記の発酵は清浄な培養用タンクで実施され、滅菌された水道水により前記の材料を混合することは好ましい。また、この発酵は38〜42℃に加温され、発酵は1日間から15日間行われる。この発酵の工程によって目的とするエラグ酸誘導体が形成される。
【0071】
発酵後、プロテアーゼ処理される。プロテアーゼはタンパク質を分解し、ペプチドやアミノ酸を生成する加水分解の酵素であり、食用としても利用されている。アマノ製薬のプロテアーゼNは酵素活性が高いことから好ましい。
【0072】
前記の発酵物にプロテアーゼを添加して加温することによりエラグ酸とタンパク質が分解され、エラグ酸誘導体になる。
【0073】
発酵物の1重量に対してプロテアーゼの添加量は0.003〜0.08重量が好ましい。加温温度は38〜44℃が好ましい。加温時間は1時間から6時間が好ましい。
【0074】
前記のプロテアーゼ処理した分解物は含水エタノールで抽出されることは、生成物を効率良く回収でき、プロテアーゼを失活でき、次の工程が実施しやすいことから、好ましい。
【0075】
また、得られた発酵物を超音波処理することは、生成物が分離しやすいことから、好ましい。また、凍結乾燥などにより、濃縮することは、以下の工程が短時間に実施できることから好ましい。
【0076】
前記の還元反応物から、目的とするエラグ酸誘導体を分離し、精製することは純度の高い物質として摂取量を減少させることができる点から好ましい。この精製の方法としては、分離用の樹脂などの精製操作を利用することが好ましい。
【0077】
例えば、分離用担体または樹脂により分離され、分取されることにより目的とするエラグ酸誘導体が得られる。分離用担体または樹脂としては、表面が後述のようにコーティングされた、多孔性の多糖類、酸化珪素化合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−ビニルベンゼン共重合体等が用いられる。0.1〜300μmの粒度を有するものが好ましく、粒度が細かい程、精度の高い分離が行なわれるが、分離時間が長い欠点がある。
【0078】
例えば、逆相担体または樹脂として表面が疎水性化合物でコーティングされたものは、疎水性の高い物質の分離に利用される。陽イオン物質でコーティングされたものは陰イオン性に荷電した物質の分離に適している。また、陰イオン物質でコーティングされたものは陽イオン性に荷電した物質の分離に適している。特異的な抗体をコーティングした場合には、特異的な物質のみを分離するアフィニティ担体または樹脂として利用される。
【0079】
アフィニティ担体または樹脂は、抗原抗体反応を利用して抗原の特異的な調製に利用される。分配性担体または樹脂は、シリカゲル(メルク社製)等のように、物質と分離用溶媒の間の分配係数に差異がある場合、それらの物質の単離に利用される。
【0080】
これらのうち、製造コストを低減することができる点から、吸着性担体または樹脂、分配性担体または樹脂、分子篩用担体または樹脂及びイオン交換担体または樹脂が好ましい。さらに、分離用溶媒に対して分配係数の差異が大きい点から、逆相担体または樹脂及び分配性担体または樹脂はより好ましい。
【0081】
分離用溶媒として有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒に耐性を有する担体または樹脂が用いられる。また、医薬品製造または食品製造に利用される担体または樹脂は好ましい。
【0082】
これらの点から吸着性担体としてダイヤイオン(三菱化学(株)社製)及びXAD−2またはXAD−4(ロームアンドハース社製)、分子篩用担体としてセファデックスLH−20(アマシャムファルマシア社製)、分配用担体としてシリカゲル、イオン交換担体としてIRA−410(ロームアンドハース社製)、逆相担体としてDM1020T(富士シリシア社製)がより好ましい。
【0083】
これらのうち、ダイヤイオン、セファデックスLH−20及びDM1020Tはさらに好ましい。
【0084】
得られた抽出物は、分離前に分離用担体または樹脂を膨潤化させるための溶媒に溶解される。その量は、分離効率の点から抽出物の重量に対して1〜30倍量が好ましく、3〜20倍量がより好ましい。分離の温度としては物質の安定性の点から4〜30℃が好ましく、10〜25℃がより好ましい。
【0085】
分離用溶媒には、水、または、水を含有する低級アルコール、親水性溶媒、親油性溶媒が用いられる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが用いられるが、食用として利用されているエタノールが好ましい。
【0086】
セファデックスLH−20を用いる場合、分離用溶媒には低級アルコールが好ましい。シリカゲルを用いる場合、分離用溶媒にはクロロホルム、メタノール、酢酸またはそれらの混合液が好ましい。
【0087】
ダイヤイオン及びDM1020Tを用いる場合、分離用溶媒はメタノール、エタノール等の低級アルコールまたは低級アルコールと水の混合液が好ましい。
【0088】
エラグ酸誘導体を含む画分を採取して乾燥または真空乾燥により溶媒を除去し、目的とするエラグ酸誘導体を粉末または濃縮液として得ることは溶媒による影響を除外できることから、好ましい。
【0089】
また、最終抽出を食用油や化粧料に用いる油脂で実施することは、得られるエラグ酸誘導体が安定に維持されることから好ましい。例えば、大豆油、米ぬか油、グレープシード油、オリーブ油、ホホバ油で抽出することは好ましい。
【0090】
また、このエラグ酸誘導体を粉末化することは防腐の目的から好ましい。
【0091】
以下、前記実施形態を実施例及び試験例を用いて具体的に説明する。なお、これらは一例であり、素材、原料や検体の違いに応じて常識の範囲内で条件を変更させることが可能である。
【実施例1】
【0092】
愛媛県産のドクダミの葉を有限会社やなぎ堂薬局より購入して用いた。これを精製水で水洗後、乾燥機に入れて乾燥させた。
【0093】
愛知県産のコシヒカリのコメヌカをミキサー(クイジナート)に供し、コメヌカの粉砕物を得た。前記のドクダミの葉とコメヌカの粉砕物をオートクレーブに供し、121℃、20分間、滅菌した。
【0094】
これらを清浄な発酵タンク(滅菌された発酵用丸形40リットルタンク)に入れ、滅菌された水道水12kgを添加し、攪拌した。
【0095】
ここに納豆素本舗から購入した粉末の納豆菌10gを前培養して前記発酵タンクに添加した。
【0096】
さらに、前培養した紅麹本舗から購入したベニコウジ菌7gの溶液を前記発酵タンクに添加し、攪拌後、40〜45℃の温度範囲で加温し、5日間発酵させた。発酵過程では、通気によりバブリングと攪拌を行いつつ、発酵液のサンプリングを行った。
【0097】
得られた発酵物1kgに対してアマノ製薬のプロテアーゼNを10g添加し、39〜40℃で3時間加温した。
【0098】
この処理物を加温し、エタノールを添加して目的とするエラグ酸誘導体含有エキス781gを得た。
【0099】
前述のエラグ酸誘導体含有エキスの500gに7%エタノール含有精製水1Lを添加し、ダイアイオン(三菱化学製)200gを9%エタノール液に懸濁して充填したカラムに供した。
【0100】
これに3Lの9%エタノール液を添加して清浄し、さらに、60%エタノール液を2L添加して目的とするエラグ酸誘導体を溶出させ、精製した。精製されたエラグ酸誘導体を減圧蒸留により、エタノール部分を除去し、水溶液とした。これをエラグ酸誘導体の検体1とした。
【0101】
以下に、エラグ酸誘導体の構造解析に関する試験方法及び結果について説明する。
(試験例1)
【0102】
上記のように得られた検体1をエタノールに溶解し、質量分析器付き高速液体クロマトグラフィ(HPLC、島津製作所)で分析した。
【0103】
さらに、核磁気共鳴装置(NMR、ブルカー製)で解析した。構造解析の結果、検体1からエラグ酸誘導体が検出された。さらなる構造解析によりこのエラグ酸誘導体の構造が同定された。
【0104】
つまり、エラグ酸1分子、アデニン1分子及びカテコール1分子が認められた。
【0105】
90MHzのH−NMRの解析の結果から、2.48、2.49、2.50、3.31、3.85、5.48、5.54、6.47、6.60、6.72、7.09、7.45、8.11、8.13、10.67及び12.8ppmにケミカルシフトのピークが観察された。これは、標準物質のピークと一致し、目的とするエラグ酸誘導体が確認できた。
【0106】
すなわち、エラグ酸の水酸基とアデニンの9位の結合及びカテコールと開環したエラグ酸のカルボキシル基の結合が確認された。
【0107】
以下にヒト皮膚上皮細胞を用いた確認試験について述べる。
【0108】
用いた細胞はATCCより購入したMDCK細胞を用いた。培養液には10%FCS添加MEM培地を用いた。細胞を増殖させて増殖期にある細胞を実験に用いた。ウイルスはインフルエンザウイルスAoRP8株をATCCより分与を受けて用いた。
【0109】
ウイルスはMDCK細胞内で増殖させ、遠心分離して得られた上清をウイルス液(30000pfu/ml)として実験に用いた。
【0110】
シャーレ培養したMDCK細胞に37℃で40分間吸着させた。そこに0.1mlを含む10%FCS添加MEM培地を追加し、37℃、5%炭酸ガス下で10時間培養した。培養終了後、細胞を回収して−80℃に保存した。
【0111】
対照として10%FCS添加EME培地を用いた。検体1の最終濃度は0.1mg/mlを含むように10%FCS添加MEM培地で溶解した溶液を用いた。陽性対照としてザナミビル(グラクソ スミスクライン製)を同濃度用いた。
【0112】
ウイルスはRT-PCR法により定量した。前述した細胞を室温で融解し、超音波破壊し、遠心分離後、上清からRNAを抽出した。RNAの抽出・精製はRNA抽出精製キット(フナコシ製)により実施した。
【0113】
抽出されたRNAは蛍光分光光度計により実施した。すなわち、RT反応にバイオラッド製のcDNAキット(iScript)を用いた。
【0114】
キットを用いて反応後、反応液2μLを用いてリアルタイムPCRによりウイルスRNA量の定量を行った。実験は5回実施し、5回の平均値を求めて評価した。
【0115】
その結果、検体1では溶媒対照に比して33%に減少した。これはウイルスの増殖を抑制されたことを示す。一方、対照としたザナミビルでは溶媒対照に比して50%に減少し、検体1の方が抗ウイルス作用に優れていた。
【0116】
次に、ヒト皮膚上皮細胞を用いた確認試験について述べる。
(試験例3)
【0117】
クラボウ株式会社より購入したヒト皮膚上皮細胞を用いた。培養液としては、5%牛胎児血清含有MEM培地(Sigma製)を用いて培養した、1000個の細胞を35mm培養シャーレに播種し、5%炭酸ガス下、37℃で培養した。これに、前記の実施例1で得られた検体1及び対照としてEGF(上皮細胞増殖因子)の0.1mg/mlの最終濃度で添加した。これを48時間培養した。
【0118】
細胞を剥離後、細胞数を計数した後、細胞懸濁液を調製し、細胞内のケラチン量をELISA法(和光純薬)にて測定した。なお、シャーレは5枚を用いてその平均値を算出した。
【0119】
その結果、検体1の0.1mg/mlの添加により皮膚の上皮細胞数が対照群に比して平均値として388%に増加した。EGFでは161%の増加であり検体1の方が皮膚細胞増加作用に優れていた。