特許第6241677号(P6241677)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6241677銅薄膜付基材用アンダーコート剤、銅薄膜付基材及びその製造方法、並びに導電性フィルム及び電極フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241677
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】銅薄膜付基材用アンダーコート剤、銅薄膜付基材及びその製造方法、並びに導電性フィルム及び電極フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/14 20060101AFI20171127BHJP
   C09D 133/06 20060101ALI20171127BHJP
   C08J 7/04 20060101ALI20171127BHJP
   C09D 133/20 20060101ALI20171127BHJP
   C09D 133/26 20060101ALI20171127BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20171127BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20171127BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20171127BHJP
   B32B 15/082 20060101ALI20171127BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   C09D133/14
   C09D133/06
   C08J7/04 ECFD
   C09D133/20
   C09D133/26
   C09D7/12
   C09D5/00 D
   H01B5/14 A
   B32B15/082 Z
   B32B27/30 A
【請求項の数】16
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-74613(P2015-74613)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-199947(P2015-199947A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2015年12月4日
(31)【優先権主張番号】特願2014-71264(P2014-71264)
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山崎 彰寛
(72)【発明者】
【氏名】東本 徹
【審査官】 青鹿 喜芳
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5003849(JP,B2)
【文献】 国際公開第2012/090857(WO,A1)
【文献】 特開平05−028835(JP,A)
【文献】 特開2004−292519(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/090856(WO,A1)
【文献】 特開2012−142349(JP,A)
【文献】 特開2009−227837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00− 10/00
101/00−201/10
C09J 1/00−201/00
B32B 15/082
B32B 27/30
C08J 7/04
H01B 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有(メタ)アクリレート(a1)及びアルキル(メタ)アクリレート(a2)を反応させてなる、水酸基価が10〜150mgKOH/gであり、かつ、ガラス転移温度が30〜100℃であるアクリルコポリマー(A)と、
イソシアネート基を少なくとも3つ有するポリイソシアネート系硬化剤(B)と、
シランカップリング剤(C)とを含有する、
銅薄膜付基材用アンダーコート剤。
【請求項2】
(A)成分が、更に芳香族系ビニルモノマー、(メタ)アクリロニトリル及び(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体(a3)反応成分とするものである、請求項1のアンダーコート剤。
【請求項3】
(B)成分が、ジイソシアネート化合物のアダクト体、イソシアヌレート体及びビウレット体からなる群より選ばれる1種の誘導体(b1)である、請求項1〜のいずれかのアンダーコート剤。
【請求項4】
(A)成分に含まれる水酸基と(B)成分に含まれるイソシアネート基の当量比〔NCO/OH〕が0.2〜5である、請求項1〜のいずれかのアンダーコート剤。
【請求項5】
(C)成分が、一般式(1):X−Si(R(OR3−a(式(1)中、Xは、水酸基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる一種と反応する官能基を含む基を、Rは水素又は炭素数1〜8の炭化水素基を、Rは炭素数1〜8の炭化水素基を、aは0、1又は2を示す。)で表される反応性アルコキシシリル化合物である、請求項1〜のいずれかのアンダーコート剤。
【請求項6】
更にウレタン化触媒(D)を含有する請求項1〜のいずれかのアンダーコート剤。
【請求項7】
(D)成分の使用量が、(A)成分100重量部(固形分換算)に対して0.1〜2重量部である、請求項のアンダーコート剤。
【請求項8】
基材フィルム、請求項1〜のいずれかのアンダーコート剤が硬化してなるアンダーコート層及び銅薄膜層を有する銅薄膜付基材。
【請求項9】
基材がプラスチックである、請求項の銅薄膜付基材。
【請求項10】
プラスチックがプラスチックフィルムである、請求項の銅薄膜付基材。
【請求項11】
プラスチックフィルムがポリエステルフィルムである、請求項10の銅薄膜付基材。
【請求項12】
銅薄膜層が銅蒸着膜又は銅スパッタ膜である、請求項11のいずれかの銅薄膜付基材。
【請求項13】
基材の表面に、
請求項1〜のいずれかのアンダーコート剤を塗工し、
次いで該基材に熱を加えることにより硬化アンダーコート層(1)を形成し、
次いで該硬化アンダーコート層(1)の上に銅薄膜層を形成することを特徴とする、
銅薄膜付基材の製造方法。
【請求項14】
前記硬化アンダーコート層(1)上に銅薄膜層を形成する方法が真空蒸着法又はスパッタリング法である、請求項13の製造方法。
【請求項15】
請求項12のいずれかの銅薄膜付基材を用いてなる導電性フィルム。
【請求項16】
請求項15の導電性フィルムより得られる電極フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種基材の表面に銅薄膜を形成するために用いるアンダーコート剤、該アンダーコート剤からなる層を有する銅薄膜付基材及びその製造方法、並びに該銅薄膜付基材を用いてなる導電性フィルム及び該導電性フィルムより得られる電極フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
銅薄膜付基材は、各種基材の表面に銅薄膜が形成されてなる物品をいい、電子材料分野においては、銅薄膜付プラスチックフィルムがITO導電性フィルムの代替品として検討されている。
【0003】
ITO導電性フィルムは、透明性と導電性に優れるため、スマートフォンやタブレットPC等のタッチパネル用の電極フィルムとして利用されているが、インジウムが高価なレアメタルであるためコストの問題があり、またITO層が硬く脆いため曲げや変形に弱いなど加工性の点で課題がある。
【0004】
加工性が良好な電極フィルムとしては、例えばポリチオフェン、ポリアニリン及びポリピロール等のπ共役性導電性高分子を導電層とするものが知られているが、該導電層が着色しているため、該電極フィルムは色調の点で問題がある。
【0005】
一方、加工性に優れる導電性フィルムとしては、他にも銅薄膜付プラスチックフィルムが知られている。このものは、ITOよりも抵抗率が低い銅を導電層とするため導電性が良好であり、何より安価でもある。銅蒸着プラスチックフィルムを例えばタッチパネル等の表示機器の電極フィルムとして用いると、大画面化や曲面化が容易になるとされる。
【0006】
従来の銅蒸着プラスチックフィルムは、一般的には、基材となるプラスチックフィルムにニッケルを蒸着させた後、更に銅を蒸着させることにより得られる。このニッケル蒸着層は、フィルムと銅蒸着層を密着させるためのアンカー層として機能する。そして、銅蒸着プラスチックフィルムにレジストを電極パターン状に塗工し、エッチング液(アルカリ溶液、酸性溶液)で処理した後、該レジストを除去することによって、目的とする電極フィルムが得られる。
【0007】
しかし、かかる銅蒸着プラスチックフィルムは、ニッケルが耐アルカリ性及び耐酸性に乏しいことから、エッチング処理後に基材フィルムから銅蒸着層が剥離したり、脱落したりする問題があった。また、該銅蒸着プラスチックフィルムは、ITO導電性フィルムと比較すると安価であるが、ニッケルが銅よりも高価であるためそのぶん割高でもあった。そこで、アンカー層としてニッケルではなく有機高分子を主成分とするアンダーコート剤を用いる方法も提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−28835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、銅薄膜付基材の製造に用いる有機高分子系のアンダーコート剤であって、プラスチック基材と銅薄膜との初期密着性のみならず、アルカリ処理後の密着性(以下、耐アルカリ密着性。)及び酸処理後の密着性(以下、耐酸密着性。)に優れるアンダーコート層を形成できるものを提供することにある。
【0010】
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、主剤として所定のアクリルコポリマーを、硬化剤としてポリイソシアネートを、添加剤として水酸基若しくはイソシアネート基と反応するアルコキシシリル化合物を含むアンダーコート剤により前記課題を解決可能であることを見出した。
【0011】
即ち本発明は、水酸基含有(メタ)アクリレート(a1)及びアルキル(メタ)アクリレート(a2)を反応させてなるアクリルコポリマー(A)と、イソシアネート基を少なくとも3つ有するポリイソシアネート系硬化剤(B)と、シランカップリング剤(C)とを含有する銅薄膜付基材用アンダーコート剤に関する。
【0012】
また、本発明は、基材フィルム、前記アンダーコート剤が硬化してなるアンダーコート層及び銅薄膜層を有する銅薄膜付基材にも関する。
【0013】
また、本発明は、基材の表面に、前記アンダーコート剤を塗工し、次いで該基材に熱を加えることにより硬化アンダーコート層(1)を形成し、次いで該硬化アンダーコート層(1)の上に銅薄膜層を形成することを特徴とする、銅薄膜付基材の製造方法にも関する。
【0014】
また、本発明は、前記銅薄膜付基材を用いてなる導電性フィルム、及び当該導電性フィルムより得られる電極フィルムにも関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のアンダーコート剤は、基材の表面に平滑な塗膜を形成する。また、該塗膜は熱によって硬化し、基材と銅薄膜との初期密着性のみならず、耐アルカリ密着性及び耐酸密着性の双方に優れるアンダーコート層を与える。なお、本明細書においては、これらの密着性を単に「密着性」と総称することがある。
【0016】
本発明の銅薄膜付基材は、基材と銅蒸着膜との初期密着性耐アルカリ密着性及び耐酸密着性が良好であるため、該銅薄膜基材をエッチング液や酸性溶液で処理しても基材から銅蒸着膜が脱落し難い。該銅薄膜基材のうち、特に基材がプラスチックフィルムのものは、ITO導電性フィルムを代替する導電性フィルムとして有用である。
【0017】
本発明の導電性フィルムは、各種電極フィルムとして、例えばタッチパネル、ICカード用基板、ICタグ用基板、電子ペーパー用基板、フレキシブルディスプレイ用基板等の用途に供し得る。特に、スマートフォンやタブレットPC等のタッチパネル用の電極フィルムとして好適である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の銅蒸着フィルム用アンダーコート剤(以下、単にアンダーコート剤ということがある。)は、水酸基含有(メタ)アクリレート(a1)(以下、(a1)成分ともいう。)及びアルキル(メタ)アクリレート(a2)(以下、(a2)成分ともいう。)を反応させてなるアクリルコポリマー(A)(以下、(A)成分ともいう。)と、イソシアネート基を少なくとも3つ有するポリイソシアネート系硬化剤(B)(以下、(B)成分ともいう。)と、シランカップリング剤(C)(以下、(C)成分ともいう。)とを含有する組成物である。
【0019】
(A)成分をなす(a1)成分としては、分子内に(メタ)アクリロイル基と少なくとも一つの水酸基とを有する化合物であれば、各種公知のものを特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル、2−ヒドロキシプロピオン酸4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシフェニル、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(1−メチル−2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド等のヒドロキシ(メタ)アクリレート類等が挙げられ、これらは二種以上を組み合わせることができる。
【0020】
(a2)成分としては、分子内に(メタ)アクリロイル基とアルキルエステル基を有する化合物であれば、各種公知のものを特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イコシル、(メタ)アクリル酸ドコシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等が挙げられ、これらは二種以上を組み合わせることができる。
【0021】
(A)成分の反応成分には、更に芳香族系ビニルモノマー、(メタ)アクリロニトリル及び(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体(a3)(以下、(a3)成分ともいう。)を含めることができる。
【0022】
(a3)成分としては、分子内にビニル基と芳香族環を有する化合物であれば、各種公知のものを特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン等のスチレン類や、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸4−メチルベンジル等のアリール(メタ)アクリレート類などが挙げられ、これらは二種以上を組み合わせることができる。
【0023】
(a4)成分としては、具体的には、例えばアクリロニトリル及び/又はメタクリロニトリルが挙げられる。
【0024】
(a5)成分としては、具体的には、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド及びN−メチロールメタクリルアミド等が挙げられる。また、これらは二種以上を組み合わせることができる。
【0025】
(a3)成分としては、特に銅薄膜とアンダーコート層との密着性の改善効果の点より、前記(メタ)アクリロニトリル及び/又は前記(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0026】
また、本発明においては、前記(a1)成分〜(a3)成分以外のビニルモノマーとして、例えば、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、ビニルシクロヘキサン、2−メチルビニルシクロヘキサン等のαオレフィン類や、(メタ)アリルアルコール、4−ペンテン−1−オール、1−メチル−3−ブテン−1−オール、および5−ヘキセン−1−オール等の不飽和アルコール類、(メタ)アクリル酸、3−ブテン酸、4−ペンテン酸、5−ヘキセン酸、フマル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸類等を併用できる。また、これらは二種以上を組み合わせることができる。
【0027】
前記各成分の使用量(モル%)は特に限定されないが、初期密着性、耐アルカリ密着性及び耐酸密着性のバランスの観点より、通常、以下の通りである。
【0028】
<(a3)成分を用いない態様>
(a1)成分:2〜25モル%程度、好ましくは5〜20モル%程度
(a2)成分:75〜98モル%程度、好ましくは80〜95モル%程度
【0029】
<(a3)成分を用いる態様>
(a1)成分:3〜25モル%程度、好ましくは5〜20モル%程度
(a2)成分:30〜90モル%程度、好ましくは35〜80モル%程度
(a3)成分:7〜60モル%程度、好ましくは15〜45モル%程度
【0030】
(A)成分は、各種公知の方法で製造できる。具体的には、例えば、前記各成分を無溶剤下又は適当な有機溶剤中で、通常はラジカル重合開始剤の存在下、80〜180℃程度において、1〜10時間程度共重合反応させることにより得ることができる。該ラジカル重合開始剤としては、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等が挙げられる。なお、その使用量は特に限定されないが、通常、(A)成分を構成する単量体の総重量に対して0.1〜2重量%程度となる範囲である。また、該有機溶剤としては後述のものを挙げることができる。
【0031】
(A)成分の物性は特に限定されないが、初期密着性及び耐アルカリ密着性の観点より、通常水酸基価が10〜150mgKOH/g程度、好ましくは20〜100mgKOH/g程度、更に好ましくは30〜80mgKOH/gである。なお、水酸基価はJIS−0070に準じて測定した値である。また、同じく初期密着性及び耐アルカリ密着性の観点より、ガラス転移温度が0〜100℃程度、好ましくは10〜40℃である。
【0032】
(B)成分としては、分子内にイソシアネート基を少なくとも3つ有するポリイソシアネートであれば、各種公知のものを特に制限なく使用できる。(B)成分は、(A)成分とウレタン化反応することにより、本発明のアンダーコート層に架橋構造を与える。
【0033】
(B)成分の具体例としては、ジイソシアネート化合物のビウレット体、イソシアヌレート体及びアダクト体からなる群より選ばれる1種の誘導体(b1)(以下、(b1)成分。)、該(b1)成分とジオール化合物との反応物(b2)(以下、(b2)成分。)、トリイソシアネート化合物(b3)((b1)成分及び(b2)成分に該当するものを除く。)(以下、(b3)成分。)、並びにその他のポリイソシアネート化合物(以下、(b4)成分。)からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、初期密着性、耐アルカリ密着性及び耐酸密着性のバランスの観点より、特に(b1)成分が好ましい。
【0034】
(b1)成分を構成するジイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート及びリジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、並びにジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート及び水添トリレンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートが挙げられる。
【0035】
なお、前記ジイソシアネート化合物のビウレット体は、下記構造式によって表される。
【0036】
【化1】
(式中、Rは前記ジイソシアネート化合物の残基を表す。)
【0037】
また、前記ジイソシアネート化合物のイソシアヌレート体は、下記構造式によって表される。
【0038】
【化2】
(式中、Rは、前記ジイソシアネート化合物の残基を表す。)
【0039】
また、前記ジイソシアネート化合物のアダクト体は、下記構造式によって表される。
【0040】
【化3】
【0041】
(式中、Rは炭素数1〜3のアルキル基又はOCN−R−HN−C(=O)−O−CH−で示される官能基を表し、Rは前記ジイソシアネート化合物の残基を表す。)
【0042】
(b2)成分を構成するジオール化合物、特に限定されないが、前記脂肪族ジオール類が好ましく、特にエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、オクタンジオール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等からなる群より選ばれる一種が好適である。
【0043】
(b2)成分は、各種公知の方法で製造できる。具体的には、例えば、前記(b1)成分と前記ジオール化合物とを、前者のイソシアネート基(NCO’)と後者の水酸基(OH’)との当量比〔NCO’/OH’〕が通常5〜20程度、好ましくは10〜20程度となる範囲で、通常40〜80℃の下、1〜5時間程度、ウレタン化反応させることによって、得ることができる。また、得られる(b2)成分は、そのイソシアネート基当量が通常1〜10meq/g程度、好ましくは3〜6meq/g程度である。
【0044】
(b3)成分としては、例えば、トルエン−2,4,6−トリイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニール)チオホスフェート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等のトリイソシアネート、並びに6官能のポリイソシアネート(製品名「デュラネートMHG−80B」、旭化成ケミカルズ(株)製)等が挙げられ、二種以上を組み合わせてもよい。
【0045】
(b4)成分としては、例えば、6官能のポリイソシアネート(製品名「デュラネートMHG−80B」、旭化成ケミカルズ(株)製)が挙げられる。
【0046】
また、(B)成分の(A)成分に対する比率も特に限定されないが、初期密着性、耐アルカリ密着性及び耐酸密着性のバランスの観点より、(A)成分の水酸基と(B)成分のイソシアネート基との当量比〔NCO/OH〕が通常0.5〜5程度、好ましくは1〜2程度であるのがよい。
【0047】
(C)成分は、(A)成分及び/又は(B)成分と反応し、本発明のアンダーコート剤からなるアンダーコート層に有機一体的に組み込まれることによって、該層の耐酸密着性及び特に耐アルカリ密着性を向上させると考えられる。
【0048】
(C)成分としては、各種公知のシランカップリング剤が挙げられる。具体的には、一般式(1):X−Si(R(OR3−a(式(1)中、Xは、水酸基及びイソシアネート基からなる群より選ばれる一種と反応する官能基を含む基を、Rは水素又は炭素数1〜8の炭化水素基を、Rは炭素数1〜8の炭化水素基を、aは0、1又は2を示す。)で表される反応性アルコキシシリル化合物を使用できる。
【0049】
前記一般式(1)のXとしては、例えば、イソシアネート基、エポキシ基、チオール基、アミノ基及び酸無水物基からなる群より選ばれる一種を含有する官能基が挙げられる。
【0050】
における反応性官能基がイソシアネート基のものとしては、例えば、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランや、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン及び3−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシシラン等が挙げられ、二種以上を組み合わせてもよい。
【0051】
における反応性官能基がエポキシ基のものとしては、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン及び3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられ、二種以上を組み合わせてもよい。
【0052】
における反応性官能基がチオール基のものとしては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランや、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン及び3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシシラン等が挙げられ、二種以上を組み合わせてもよい。
【0053】
における反応性官能基がアミノ基のものとしては、例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン及び3−ウレイドプロピルトリアルコキシシラン等が挙げられ、二種以上を組み合わせてもよい。
【0054】
における反応性官能基が酸無水物基のものとしては、例えば、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物が挙げられる。
【0055】
(C)成分としては、初期密着性、耐アルカリ密着性及び耐酸密着性のバランスの観点より、Xにおける官能基がイソシアネート基の反応性アルコキシシリル化合物及び/又はエポキシ基の反応性アルコキシシリル化合物が好ましい。
【0056】
なお、(C)成分の含有量は特に限定されないが、通常、(A)成分100重量部(固形分換算)に対して0〜20重量部程度、好ましくは5〜15重量部程度である。
【0057】
本発明のアンダーコート剤には、必要に応じて、更にウレタン化触媒(D)(以下、(D)成分。)を含めることができる。該(D)成分は、(A)成分と(B)成分の硬化反応を速やかにし、本発明のアンダーコート剤の初期密着性、耐アルカリ密着性及び耐酸密着性を向上させる。
【0058】
(D)成分としては、具体的には、例えば、モノブチル錫トリス(2−エチルヘキサノエート)、モノブチル錫オキサイド、ビスマストリオクテート/2―エチルヘキサン酸、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジステアレート、ジオクチル錫オキサイド、ジオクチル錫ジアセテート及びジオクチル錫バーサテート等の錫系ウレタン化触媒や、ビス(2−エチルヘキサン酸)錫、オクチル酸ビスマス等のビスマス系ウレタン化触媒や、ジアザビシクロオクタン、ジメチルシクロヘキシルアミン、テトラメチルプロピレンジアミン、エチルモルホリン、ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミンやトリエチレンジアミン等の有機アミン系ウレタン化触媒等が挙げられ、二種以上を組み合わせてもよい。
【0059】
(D)成分の使用量は特に限定されないが、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100重量部(固形分換算)に対して通常0.1〜2重量部程度、好ましくは0.5〜1.5重量部である。
【0060】
本発明のアンダーコート剤は、前記(A)成分、(B)成分及び(C)成分、並びに必要に応じて(D)成分を各種公知の手段で混合することにより得られる。また、混合の際、必要に応じ各種の有機溶剤(以下、(E)成分。)を希釈溶剤として使用できる。(E)成分の具体例としては、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンの低級ケトン類、トルエン等の芳香族炭化水素類、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエーテルエステル類、酢酸エチル、クロロホルム、ジメチルホルムアミド等が挙げられ、二種以上を組み合わせてもよい。また、(E)成分の使用量は特に限定されないが、通常、本発明のアンダーコート剤の固形分濃度が通常1〜60重量%程度となる範囲である。
【0061】
また、本発明のアンダーコート剤には、その他、例えばレベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、無機粒子等を含めることができる。該無機粒子としては、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ、酸化亜鉛、酸化錫、ジルコニア、ITO(インジウム錫オキサイド)、ATO(アンチモン錫オキサイド)、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム及び水酸化マグネシウム等の粒子が挙げられる。
【0062】
本発明の銅薄膜付基材は、各種基材、本発明のアンダーコート剤が硬化してなるアンダーコート層、及び銅薄膜層を有する積層体である。
【0063】
基材は特に限定されず、表面に銅薄膜を形成できるものであれば、各種公知のものを使用できる。具体的には、例えば、プラスチック、金属、セルロース材、ガラス等が挙げられる。該プラスチックとしては、例えば、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレン及びポリプロピレン等が挙げられる。また、該セルロース材としては、例えば、紙、ナノセルロース紙及び木材等が挙げられる。
【0064】
基材の形状は特に限定されない。例えば球状、円柱状、直方体状、板状、フィルム状であってよい。また、基材は表面の一部又は全部が凹凸若しくは曲面であってもよい。本発明の銅薄膜付基材を導電性フィルムとして用いる場合には、基材としては、耐熱性や光学特性等の点よりプラスチックフィルムが、特にポリエステルフィルムが好ましい。また、該基材フィルムの厚みも特に限定されないが、通常50〜200μm程度である。また、アンダーコート層の厚みは特に限定されないが、通常0.1〜5μm程度である。
【0065】
前記銅薄膜層としては、例えば、銅蒸着膜、銅スパッタ膜、銅CVD膜が挙げられる。本発明の銅薄膜付フィルムを電極フィルムに供する場合には、該銅薄膜としては、特に銅蒸着膜又は銅スパッタ膜が好ましい。また、該銅蒸着膜又は銅スパッタ膜の厚みは特に限定されないが、通常、0.1〜2μm程度である。
【0066】
本発明の銅薄膜付基材の製法は特に限定されないが、一般的には、前記基材の表面に、本発明に係るアンダーコート剤を塗工し、次いで該基材に熱を加えることにより硬化アンダーコート層(1)を形成し、次いで該硬化アンダーコート層(1)の上に銅薄膜層を形成する方法が挙げられる。
【0067】
塗工条件は特に限定されず、例えば塗工手段としてはスプレー、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ドットコーター等が挙げられ、また塗工量も特に限定されないが通常、乾燥固形分として0.01〜10g/m程度である。
【0068】
加熱条件も特に限定されず、通常、温度80〜150℃程度で、時間が10秒〜2分程度である。この処理により(A)成分、(B)成分及び(C)成分が有機一体的に反応し、初期密着性、耐アルカリ密着性及び耐酸密着性に優れるアンダーコート層(1)を与えると考えられる。
【0069】
本発明の電極フィルムは、本発明の導電性フィルムより得られる電子部品である。特に、本発明の導電性フィルムのうち銅蒸着プラスチックフィルム又は銅スパッタフィルムより得られる電極フィルムは、ITO導電性フィルムを用いた電極フィルムの代替品として有用である。
【0070】
本発明の電極フィルムは、本発明の導電性フィルムのレジストを電極パターン状に塗工し、エッチング液(アルカリ溶液、酸性溶液)で処理した後、該レジストを除去することによって得られる。電極パターンの形状は特に限定されず、細線状、ドット状、メッシュ状、面状等が挙げられる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例及び比較例を通じて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらによって限定されるものではない。また、実施例中の「部」は重量基準を表す。また、水酸基価及び酸価はJIS−0070に準拠して測定した値である。また、ガラス転移温度は、市販の測定器具(製品名「DSC8230B」、理学電機(株)製)を用いて測定した値である。
【0072】
製造例1
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた反応容器に、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)94.5部(約0.81モル)、メチルメタアクリレート(MMA)742.5部(約7.4モル)、ブチルアクリレート(BA)378部(約2.9モル)及びスチレン(St)135部(約1.3モル)並びにメチルエチルケトン(MEK)1452.1部を仕込み、反応系を80℃に設定した。次いで、2、2‘―アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(ABN―E)6.75部を仕込み、80℃付近で6時間保温した。次いで、ABN―E18.9部を仕込み、反応系を同温度付近において更に4時間保温した。その後反応系を室温まで冷却することにより、ガラス転移温度が30℃及び水酸基価が35mgKOH/gのアクリルコポリマー(A−1)の溶液を得た。
【0073】
製造例2
製造例1と同様の反応容器に、アクリロニトリル(AN)60部(約1.13モル)、HEA 51部(約0.44モル)、MMA 121.5部(約1.21モル)、及びBA 67.5部(約0.53モル)、並びに酢酸エチル約310部を仕込み、反応系を70℃に設定した。次いで、ABN―V 約3.0部を仕込み、70℃付近で6時間保温した。次いで、ABN―V 約3.0部を仕込み、反応系を同温度付近において更に4時間保温した。その後反応系を室温まで冷却し、メチルエチルケトン390.0部を混合することにより、ガラス転移温度が約30℃、水酸基価が約80mgKOH/gのアクリルコポリマー(A−2)の溶液を得た。
【0074】
製造例3
製造例1と同様の反応容器に、AN 60部(約1.13モル)、アクリルアミド(AAM)15部(約0.21モル)、HEA 51部(約0.44モル)、MMA 72部(約0.72モル)、及びBA 102部(約0.80モル)、並びに酢酸エチル約450部を仕込み、反応系を70℃に設定した。次いで、ABN―V 約3.0部を仕込み、70℃付近で6時間保温した。次いで、ABN―V 約3.0部を仕込み、反応系を同温度付近において更に4時間保温した。その後反応系を室温まで冷却し、メチルエチルケトン250部を混合することにより、ガラス転移温度が約13℃、水酸基価が約80mgKOH/gのアクリルコポリマー(A−3)の溶液を得た。
【0075】
製造例4
製造例1と同様の反応容器に、HEA 94.5部(約0.81モル)、MMA 877.5部(約8.8モル)及びBA 378部(約2.9モル)並びにメチルエチルケトン1452.1部を仕込み、反応系を80℃に設定した。次いで、ABN―E 6.75部を仕込み、80℃付近で6時間保温した。次いで、ABN―E 18.9部を仕込み、反応系を同温度付近において更に4時間保温した。その後反応系を室温まで冷却することにより、ガラス転移温度が30℃及び水酸基価が35mgKOH/gのアクリルコポリマー(A−4)の溶液を得た。
【0076】
<アンダーコート剤の調製>
実施例1
製造例1の(A−1)成分100部、(B)成分としてヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体(商品名「タケネートD110N」、三井化学(株)製)をメチルエチルケトンにて固形分30%に調整した溶液17部及び(C)成分としてイソシアネート基含有シランカップリング剤(商品名「KBE−9007」、信越シリコーン(株)製)をメチルエチルケトンにて固形分30%に調整した溶液10部をよく混合し、アンダーコート剤を調製した。
【0077】
実施例2
製造例1の(A−1)成分を100部、(B)成分としてタケネートD110Nをメチルエチルケトンにて固形分30%に調整した溶液を17部及び(C)成分としてKBE−9007をメチルエチルケトンにて固形分30%に調整した溶液20部をよく混合し、アンダーコート剤を調製した。
【0078】
実施例3
製造例1の(A−1)成分を100部、(B)成分としてタケネートD110Nをメチルエチルケトンにて固形分30%に調整した溶液を17部及び(C)成分として市販のエポキシ系シランカップリング剤(商品名「サイラエース510」、日美商事(株)製)をメチルエチルケトンにて固形分30%に調整した溶液10部をよく混合し、アンダーコート剤を調製した。
【0079】
実施例4
製造例1の(A−1)成分を100部、(B)成分としてタケネートD110Nをメチルエチルケトンにて固形分30%に調整した溶液を17部及び(C)成分としてサイラエース510をメチルエチルケトンにて固形分30%に調整した溶液20部をよく混合し、アンダーコート剤を調製した。
【0080】
実施例5
製造例2の(A−2)成分100部、(B)成分としてヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体(商品名「デュラネート24A−100」、旭化成ケミカルズ(株)製)をメチルエチルケトンにて固形分30%に調整した溶液26部及びKBE−9007をメチルエチルケトンにて固形分30%に調整した溶液10部をよく混合し、アンダーコート剤を調製した。
【0081】
実施例6
製造例3の(A−3)成分100部、(B)成分としてヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体(商品名「コロネートHX」、東ソー(株)製)をメチルエチルケトンにて固形分30%に調整した溶液28部及びKBE−9007をメチルエチルケトンにて固形分30%に調整した溶液10部をよく混合し、アンダーコート剤を調製した。
【0082】
実施例7
製造例の(A−4)成分100部、(B)成分としてタケネートD110Nをメチルエチルケトンにて固形分30%に調整した溶液17部及び(C)成分としてイソシアネート基含有シランカップリング剤(商品名「KBE−9007」、信越シリコーン(株)製)をメチルエチルケトンにて固形分30%に調整した溶液10部をよく混合し、アンダーコート剤を調製した。
【0083】
実施例8
製造例の(A−4)成分を100部、(B)成分としてタケネートD110Nをメチルエチルケトンにて固形分30%に調整した溶液を17部及び(C)成分としてKBE−9007をメチルエチルケトンにて固形分30%に調整したも溶液20部をよく混合し、アンダーコート剤を調製した。
【0084】
実施例9
製造例の(A−4)成分を100部、(B)成分としてタケネートD110Nをメチルエチルケトンにて固形分30%に調整した溶液を17部及び(C)成分として市販のエポキシ系シランカップリング剤(商品名「サイラエース510」、日美商事(株)製)をメチルエチルケトンにて固形分30%に調整した溶液10部をよく混合し、アンダーコート剤を調製した。
【0085】
実施例10
製造例の(A−4)成分を100部、(B)成分としてタケネートD110Nをメチルエチルケトンにて固形分30%に調整した溶液を17部及び(C)成分としてサイラエース510をメチルエチルケトンにて固形分30%に調整した溶液20部をよく混合し、アンダーコート剤を調製した。
【0086】
比較例1
製造例1の(A−1)成分100部及び(B)成分としてタケネートD110Nをメチルエチルケトンにて固形分30%に調整した溶液17部をよく混合し、アンダーコート剤を調製した。
【0087】
比較例2
製造例の(A−4)成分100部及び(B)成分としてタケネートD110Nをメチルエチルケトンにて固形分30%に調整した溶液17部をよく混合し、アンダーコート剤を調製した。
【0088】
<銅蒸着フィルムの作製>
実施例1のアンダーコート剤を市販のポリエステルフィルム(商品名「ルミラーU48」、東レ(株)製、150μm厚)に、乾燥膜厚が1.0μm程度となるようバーコーターで塗工し、130℃で1分間乾燥させた。次いで当該塗工フィルムのアンダーコート面に、市販の蒸着装置(製品名「NS−1875−Z」、西山製作所(株)製)を使用し、銅を蒸着させることにより(厚み約100nm)、銅蒸着フィルムを得た。他の実施例及び比較例のアンダーコート剤についても同様にして銅蒸着フィルムを得た。
【0089】
(初期密着性)
実施例1に係る銅蒸着フィルムの銅蒸着面にカッターナイフで100マスの碁盤目を入れ、当該銅蒸着面に粘着テープ(製品名「セロテープ(登録商標)」、ニチバン(株)製)を貼り付けた後これを垂直方向に一回引き剥がしたときの銅蒸面の外観を評価した。次いで、当該粘着テープを再び該銅蒸着面に貼り付けて垂直方向に引き剥がし、更にもう一度貼り付けて垂直方向に引き剥がしたときの銅蒸着面の外観を評価した。他の実施例及び比較例の銅蒸着フィルムについても同様にして、一回目の引き剥がしのときと、三回目の引き剥がしのときにおける銅蒸着面の外観(銅蒸着層の初期密着性)を評価した。
【0090】
(耐酸密着性)
実施例1に係る銅蒸着フィルムを、40℃に加温した4%塩化水素水溶液に5分間浸漬した後、銅蒸着層の密着性を、前記同様、碁盤目試験により評価した。他の実施例及び比較例の銅蒸着フィルムについても同様にして密着性を評価した。
【0091】
(耐アルカリ密着性)
実施例1に係る銅蒸着フィルムを、40℃に加温した4%水酸化ナトリウム水溶液に5分間浸漬した後、銅蒸着層の密着性を、前記同様、碁盤目試験により評価した。他の実施例及び比較例の銅蒸着フィルムについても同様にして密着性を評価した。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】