(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1端面(2)に対向する側から前記切削インサートをみたとき、前記隆起部(16)は、前記切削インサート(1)の前記コーナ部(5)を2等分するように定められる平面(IS)に沿って、前記コーナ部の前記切れ刃部分から離れるように延在する、請求項1または2に記載の切削インサート。
前記リッジ(12)は、前記コーナ部(5)の前記切れ刃部分(9)の前記内側から前記直線状切れ刃部分(10)の前記内側に至るにしたがい、前記切れ刃(8)から離れるように形成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の切削インサート。
前記第1端面(2)に対向する側から前記切削インサートをみたとき、前記リッジ(12)は、前記切削インサート(1)の前記コーナ部(5)を2等分するように定められる平面(IS)に対して鏡面対称の関係に形成される、請求項1から5のいずれか一項に記載の切削インサート。
前記第1端面(2)のすくい面(6)と前記周側面(4)の逃げ面(7)との交差稜線部には複数の前記切れ刃(8)が形成され、該第1端面(2)は、第1軸線(1b)周りにn回回転対称に構成されている(ただし、nは2以上の自然数)、請求項1から6のいずれか一項に記載の切削インサート。
前記2つの端面のうちの第2端面(3)と前記周側面(4)との交差稜線部には複数の切れ刃(8)が形成され、該第2端面は、前記第1軸線に直交するように定められる第2軸線(1c)周りに、前記第1端面と180°回転対称に構成されている、請求項7に記載の切削インサート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態について図面に基づいて説明する。
【0014】
まず、
参考例に係る切削インサート1について説明する。
【0015】
図1および
図3に示すように、この実施形態の切削インサート1は、略菱形板状をなす。切削インサート1は、対向する略菱形の2つの端面2、3と、これら2つの端面2、3をつなぐ周側面4とを有する。この略菱形の各端面は4つのコーナまたはコーナ部5を有し、より具体的には
図3の平面視で80°の内角を有する2つのコーナ部(第1コーナ部)5aと、
図3の平面視で100°の内角を有する2つのコーナ部(第2コーナ部)5bとを有する。ここでは、
図1において示される端面(第1端面)2を上面と呼び、2つの端面2、3のうちのもう一方の端面(第2端面)を下面3と呼ぶ。なお説明をわかりやすくするために、「上面」など、空間内の向きを表す用語を用いているが、これは便宜上のものであって、空間内の絶対的な向きや位置関係を規定することを企図したものではない。特にことわりがない限り、その他の空間内の向きや位置関係を表す用語も同様である。
【0016】
上で述べたように、上面2は、上面2に対向する側(または方向)から切削インサート1をみたとき、つまり
図3の平面視で、略菱形を有する。したがって、上面2は、2組の対向する辺部を有し、より具体的には、1組の対向する第1上辺部2a、2aと、1組の対向する第2上辺部2b、2bとを有する。同様に、下面3も、略菱形を有し、1組の対向する第1下辺部3a、3aと、1組の対向する第2下辺部3b、3bとを有する。第1上辺部2aと第1下辺部3aとの間に第1側面4aが延在し、第2上辺部2bと第2下辺部3bとの間に第2側面4bが延在する。これら第1および第2側面4a、4bをつなぐように、上面2の第1コーナ部5aと下面3の第1コーナ部5aとをつなぐ第1コーナ側面4cが形成されると共に、上面2の第2コーナ部5bと下面3の第2コーナ部5bとをつなぐ第2コーナ側面4dが形成されている。
【0017】
切削インサート1の端面2、3の各々は、180°回転対称に形成されている。切削インサート1は取付穴1aを有し、この取付穴1aは上面2および下面3を貫通するように延びる。切削インサート1は、取付穴1aの中心軸線(第1軸線)1bの周りに180°回転対称(つまり2回回転対称)である。
【0018】
この
参考例の切削インサート1は、上面2と下面3とを裏返すことにより両面が使用できる、いわゆるネガティブタイプの切削インサート1である。加えて、取付穴1aの中心軸線1bに直交すると共に周側面4を貫通する軸線(第2軸線)1cを
図3に示すように定めるとき、第2軸線1c周りに180°回転対称であるように、切削インサート1は形成されている。したがって、第1および第2上辺部2a、2bは第2および第1下辺部3b、3aとそれぞれ同じ形状および構成を有し、下面3は、上面2と同じ形状を有し、同じ構成を有するので、下面3に対向する側からみたときの切削インサート1の平面図(不図示)は
図3に一致する。つまり、上面側の切れ刃に関する構成を、下面側も同様に有する。切れ刃8は、上面2と周側面4との交差稜線部に形成され、かつ、下面3と周側面4との交差稜線部にも形成されている。各切れ刃8は、すくい面6と逃げ面7との交差部(交差稜線部)に形成されている。すくい面6は、関連するまたは対応する切れ刃8が縁部に形成されている、対応する端面に延在する。逃げ面7は、周側面4に延在する。そして、上下面2、3の各々に、各切れ刃8に対応してチップブレーカ溝11が形成されている。上面2のチップブレーカ溝11は、下面3のチップブレーカ溝11と同じ形状を有し、同じ構成を有する。以下では、上で述べたように下面3は上面2と同じ構成を有するので、上面2側の構成について説明し、下面3側の構成に関する説明を省略する。しかし、上面2側の構成に関する説明が下面3側に関しても同様に適用されることに留意されたい。なお、本発明は、片面にのみ切れ刃を有する切削インサート、および、1つのみまたは複数の切れ刃を有する種々の切削インサートを許容する。
【0019】
各切れ刃8に関して、チップブレーカ溝11が形成される。ここでは、切れ刃8からチップブレーカ溝11へと概して下がっていく傾斜面をすくい面6と呼ぶ。なお例外的に、すくい面6には、すくい角が0°の場合(すくい面が中心軸線1bに直交するように定められる仮想平面に沿って延在する場合)が含まれる。すなわちすくい面は、切れ刃8から下がらないこともあり得る。また切れ刃8にホーニングなどが施されて、すくい面6は、局部的に逆に傾斜する(負のすくい角の形成に貢献するような)面部分を含む場合もある。すくい面6は、ランド15などが設けられて、局部的に逆に傾斜する面部分が含まれる場合もある。
【0020】
切れ刃8に接続する周側面4の部分は、逃げ面7とされる。逃げ面7は上面2および下面3と、それぞれ直角に交差し、切削インサート1は逃げ角が0°の切削インサートとされている。より正確には、取付穴1aの中心軸線1bに直交する仮想平面を定めるとき、該仮想平面に対して、周側面4つまり逃げ面7は直角に延在する。
【0021】
上面2に関して、平面視(つまり
図3)で80°の内角を有する第1コーナ部5aに関して設けられた2つの第1切れ刃8aと、平面視で100°の内角を有する第2コーナ部5bに関して設けられた2つの第2切れ刃8bとが形成されている。コーナ部の内角が異なるので、第1切れ刃8aは、第2切れ刃8bと異なる形状を有するが、同様の構成を備える。
【0022】
各切れ刃8(8a、8b)は、1つの切れ刃セクションとして構成されていて、互いにつながる少なくとも2つの切れ刃部分、つまりコーナ部の切れ刃部分と、このコーナ部の切れ刃部分につながる切れ刃部分とを有する。特に、各切れ刃8は、コーナ部に沿った切れ刃である円弧状をなすコーナ切れ刃(切れ刃部分)9と、これにつながる少なくとも1つの直線状切れ刃(切れ刃部分)10とを有する。具体的に、第1切れ刃8aは、第1コーナ部5に設けられた円弧状をなすコーナ切れ刃9aと、このコーナ切れ刃9aからそれぞれ延びる一対の直線状切れ刃10a、10bとからなる。第2切れ刃8bは、第2コーナ部5bに設けられた円弧状をなすコーナ切れ刃9bと、このコーナ切れ刃9bからそれぞれ延びる一対の直線状切れ刃10c、10dとからなる。コーナ切れ刃9a、9bは、それぞれ、対応するコーナ部5a、5bの湾曲形状に沿った形状を有する。第1切れ刃8aに関しては、直線状切れ刃10aはコーナ切れ刃9aの一端に接続し、上面2の第1辺部2aに沿って第2コーナ部5b側に向けて延在し、直線状切れ刃10bはコーナ切れ刃9aの他端に接続し、上面2の第2辺部2bに沿って第2コーナ部5b側に向けて延在する。また、第2切れ刃8bに関しては、直線状切れ刃10cはコーナ切れ刃9bの一端に接続し、上面2の第2辺部2bに沿って第1コーナ部5a側に向けて延在し、直線状切れ刃10dはコーナ切れ刃9bの他端に接続し、上面2の第1辺部2aに沿って第1コーナ部5a側に向けて延在する。ただし、切削インサート1では、上面2は上で述べたように略菱形であるので、直線状切れ刃10a、10bは
図3において第1コーナ部5aの2等分線(V−V線に相当)に対して左右対称に形成されている。直線状切れ刃10c、10dも
図3において第2コーナ部5bの2等分線に対して左右対称に形成されている。なお、切削インサート1では、第1切れ刃8aは両脇の第2切れ刃8bのそれぞれと連続する。したがって、切削インサート1では、上面2の全周に亘って切れ刃8を有する。しかし、第1切れ刃8aは第2切れ刃8bと連続しなくてもよい。
【0023】
切削インサート1の切れ刃8の材料は、超硬合金、サーメット、セラミック、立方晶窒化ほう素等の硬質材料又はこれら硬質材料の表面にPVD又はCVDコーティング膜を被膜したものの中から選ばれる。また切れ刃8以外の部分の材料も、同様の硬質材料などとされることが好ましい。
【0024】
第1切れ刃8aに対してチップブレーカ溝11(11a)が形成されていて、第2切れ刃8bに対してチップブレーカ溝11(11b)が形成されている。チップブレーカ溝11は、少なくとも第1コーナ部5aの近傍に形成されるとよいが、本
参考例の切削インサート1では第2コーナ部5bにも切れ刃8bがあるので第2コーナ部5bの近傍にも形成されている。切削インサート1では、チップブレーカ溝11aは第1切れ刃8aに沿って形成されていて、チップブレーカ溝11bは第2切れ刃8bに沿って形成されている。上で述べたように第1切れ刃8aと第2切れ刃8bとが互いに対して連続することに伴い、第1および第2チップブレーカ溝11a、11bは互いに連続するが、互いに連続しなくてもよい。チップブレーカ溝11aは、第1切れ刃8a側から順に、すくい面6と、底部11sと、立ち上がり壁面(またはブレーカ壁面)11rとを有する。同様に、チップブレーカ溝11bは、第2切れ刃8b側から順に、すくい面6と、底部11sと、立ち上がり壁面(またはブレーカ壁面)11rとを有する。
【0025】
そして、この
参考例の切削インサート1は、各コーナ部5の近傍に、それぞれ2つずつのリッジ12を有する。チップブレーカ溝11aは、第1コーナ部5aの近傍に、2つのリッジ12を有する。同様に、チップブレーカ溝11bも、第2コーナ部5bの近傍に、2つのリッジ12を有する。第2コーナ部5b近傍のリッジ12は、第1および第2コーナ部5a、5bの形状差に対応する、第1コーナ部5a近傍のリッジ12との違いを有するが、その他の点では第1コーナ部5a近傍のリッジ12と同様の構成を有する。そこで、以下では、主に、第1コーナ部5a近傍のリッジ12に関して説明し、第2コーナ部5b近傍のリッジ12の説明を省略する。さらに、後述するように第1コーナ部5a近傍の2つのリッジ12は、互いに対して左右対称な関係を有するように構成されているので、2つのリッジ12のうちの、直線状切れ刃10a側のリッジ12(
図2のリッジ12a)に関して主に説明する。
【0026】
リッジ12aは、すくい面6において隆起するように形成されている。リッジ12aは、コーナ切れ刃9aからその内側にのびるすくい面6の部分に始端を有する。第1コーナ部5aのコーナ切れ刃9aからすくい面6に沿って上面2の中央部(つまり取付穴1a)側に進むとき、すくい面6を経て、すくい面6の途中からリッジ12の頂面(すくい面として機能する部分)に段差なく移行するように、リッジ12は形成されている。リッジ12は、中心軸線1bに直交する仮想平面に対するすくい面6の傾斜角を途中で相対的に小さく変えるように形成されている。
【0027】
加えて、リッジ12aは、円弧状をなすコーナ切れ刃9から離れる方向に(直線状切れ刃10a側に)のびる。そして、リッジ12aは、直線切れ刃10の内側のすくい面6の部分に達する。したがって、リッジ12aは、概して、コーナ切れ刃9aの内側のすくい面6の部分から直線状切れ刃10aの内側のすくい面6の部分に向けて延在する。さらに、リッジ12aは、第1コーナ部5のコーナ切れ刃9aの内側から直線状切れ刃10aの内側に至るにしたがい、切れ刃8から離れるように形成されている。なお、リッジ12aは、このような特徴を全体的に有していることに限定されず、少なくともその一部に有するとよい。
【0028】
リッジ12aは、すくい面6から隆起する。リッジ12aのすくい面6からの隆起量は、コーナ切れ刃9の近傍の始端側で比較的小さい。リッジ12aは、コーナ切れ刃9aから離れるにつれ、そのすくい面からの隆起量が漸次増大する部分を有する。
【0029】
ここで、
図5を参照する。
図5は、
図3における第1コーナ部5aの2等分線(つまりV−V線)に沿った切削インサート1の一部の断面を、各部分の長さ、傾斜角度および比率を変更しつつ模式的に示す。
図5には、リッジ12aのすくい面からの隆起量が概念的に破線で示されていて、より詳しくは直線状切れ刃10a側からリッジ部12aの輪郭をV−V断面に投影させた様子が示されている。
図5より、リッジ12aは、その切れ刃側部分において、コーナ切れ刃9aから離れるにつれ、そのすくい面6からの隆起量が漸次増大することが明らかである。
【0030】
また、リッジ12aは、切れ刃8a側に凸となるように湾曲形状を有して延在する。すなわちリッジ12aは、コーナ切れ刃9側で切れ刃8に近い。そして、上記説明に対応するように、リッジ12aは、コーナ切れ刃9から離れるにつれ、切れ刃8から遠くなるように湾曲する。
【0031】
リッジ12aがこのような形状に形成されると、第1切れ刃8a(特にコーナ切れ刃9aおよび直線状切れ刃10a)での切削加工のときにすくい面6を擦過する切りくずが、リッジ12aによって持ち上げられ、すくい面6から強制的に引き離される。すなわち、切りくずとすくい面6との接触領域が狭い範囲に制限される。このため切りくずが持つ熱がすくい面6側に伝わり難く、すくい面6にクレータ摩耗が発生すること(およびそれが進展すること)が抑制され、工具寿命が延長できる。さらにリッジ12aは、コーナ部5から離れる方向にのびるため、切りくずはリッジ12aからも強制的に引き離される。したがってリッジ12の摩耗も抑制される。さらに、コーナ切れ刃9近傍でのコーナ切れ刃9とリッジ12の部分との距離より、直線状切れ刃10とリッジ12の部分との距離の方が遠いため、切削条件の切込みが増えるときにも、クレータ摩耗を抑制する効果が最適に得られる。一般に、クレータ摩耗が進展すると、実質的なすくい角が大きくなり、切れ刃周辺が欠けやすくなる。あるいはクレータ摩耗が進展すると、切りくず形状が変化し、切りくず処理性が損なわれる。特に切削条件が高いとき、中でも送りが大きいとき、クレータ摩耗の進展によって工具寿命にいたりやすい。したがって、上記のようにリッジを設けることによりクレータ摩耗の発生つまり形成を抑制することができ、よって大幅な工具寿命の延長が可能になる。
【0032】
第1コーナ部5aにおいて設けられた2つのリッジ12は、鏡面対称な関係に形成されている。ここで、
図3の平面視にて切削インサート1をコーナ部5において2等分する平面ISを定めると、この仮想平面ISは
図3のV−V断面線に重なる。この仮想平面ISに対して、第1コーナ部5aにおいて設けられた2つのリッジ12(リッジ12aを含む)は、鏡面対称の関係に形成されている(
図3、
図6参照)。このような位置にリッジ12が配置されると、切削インサート1を右勝手で使用するときと、左勝手で使用するときとで切削性能の差のない、勝手のない切削インサート1を得られる。この
参考例の切削インサート1は、各コーナ部5にリッジ12が2つずつ形成される。しかし、これに限定されない。1つのコーナ部に関して1つのリッジ12のみが形成される場合、そのリッジ12は切削インサート1をコーナ部5において2等分する平面を横切る、鏡面対称な形状に連続してもよい。1つのコーナ部に関して3つ以上のリッジ12が形成されて、それらリッジは鏡面対称な配置で形成されても構わない。なお切削インサート1は、勝手が設けられても構わない。すなわち鏡面対称の形状にも限定されない。少なくとも1つのリッジ12が、コーナ切れ刃9の近傍から、1つの直線状切れ刃10の内側のすくい面6の部分まで達するように、すくい面6に配置されるとよい。
【0033】
この
参考例の切削インサート1のすくい面6は、2段構造とされている。すなわち、すくい面6は、第1すくい面6aおよび第2すくい面6bを有する。切れ刃8に近い方を第1すくい面6aと呼ぶ。第1すくい面6aは、ランド15とも呼ばれる。切削インサート1では、リッジ12は第2すくい面6bにおいて隆起するように形成されていて、第1すくい面6aと第2すくい面6bとの境界部から、すくい面6と底部11sとの境界部にまで延びている。しかし、第1すくい面6aと第2すくい面6bとの境界部を越えて、第1すくい面6aにまで、リッジ12が延びることを、本発明は排除しない。前述のとおり、ランドの傾斜角度は、0°とされても構わない。また例外的に、ランドの傾斜角度は、負の角度とされても構わない。なおランドの傾斜角度が負の角度とされるときは、リッジ12が第1すくい面において隆起せずに、第2すくい面から隆起することが好ましい。
【0034】
切削インサート1では、ボス面14は、取付穴1aの軸線1bの方向において、切れ刃8よりも、高い位置に形成されている。ボス面14は、工具ボデー(不図示)のインサート取付座に切削インサート1が取り付けられるとき、インサート取付座の壁面に当接する着座面または当接面として機能する。切削インサート1では、ボス面14は、取付穴1aの軸線1bに直交するように定められる平面に沿って、取付穴1aの周囲に延在する。なお、ボス面14は、切れ刃よりも低い位置に形成されてもよく、また、取付穴1aの軸線1bに直交するように定められる平面に沿うことに限定されず、種々の形状および構成を有してもよい。
【0035】
次に、本発明
の実施形態に係る切削インサート101を、
図7から
図10に基づいて説明する。説明を簡略にするため、以下の説明では
、参考例の切削インサート1と同じ構成要素には、同じ部材番号を付し、それらの説明を省略する。また、以下では、本発明
の実施形態に係る切削インサート101の、切削インサート1との主たる相違点について説明する。
【0036】
以下では、上記第1実施形態の説明と同様に、上面2の第1コーナ部5aに関連する第1切れ刃8aに関して説明する。しかし以下の説明は、同様に上面2の第2切れ刃8bおよび下面3の各切れ刃に関しても適用される。
【0037】
この実施形態の切削インサート101は、上記リッジ12に加えて、チップブレーカ溝11の中に丘部または隆起部16を有する。隆起部16は、コーナ部5(5a)からのびるすくい面6において隆起した部分を形成するようにすくい面6に接続する。すなわち隆起部16は、コーナ部5のすくい面6から隆起するように形成される。隆起部16は、コーナ部5の内側に形成され、該コーナ部5と交差する方向において延在する。第1コーナ部5aのコーナ切れ刃9aからすくい面6に沿って上面2の中央部(つまり取付穴1a)側に進むとき、すくい面6を経て、すくい面6の途中から隆起部16の頂面(すくい面として機能する部分)に段差なく移行するように、隆起部16は形成されている。隆起部16は、中心軸線1bに直交する仮想平面に対するすくい面6の傾斜角を途中で相対的に小さく変えるように形成されている。さらに、隆起部16は、
図8A、
図8Bの平面視において、コーナ部5(第1コーナ部5a)に直交する方向に延び、より詳しくは第1コーナ部5aの2等分線に沿って延在する。この2等分線は、(平面視でコーナ部を2等分する平面である)上記仮想平面ISに相当し(
図10参照)、
図8BのIX−IX断面線に対応する。そして、隆起部16は、すくい面6と立ち上がり壁面11rとの間の底部11s近傍まで延びる。しかし、本発明は、隆起部16がすくい面6と立ち上がり壁面11rとの間の底部11sを横切るまで延在することを排除しない。なお、
図8Aおよび
図8Bに示すように、隆起部16と略同じ程度だけ、切れ刃から離れた位置まで、リッジ12は延びる。しかし、隆起部16よりもリッジ12は切れ刃から遠くまで延びてもよく、あるいは、隆起部16はリッジ12よりも切れ刃から遠くまで延びてもよい。
【0038】
隆起部16は、関連する近傍のコーナ部5のコーナ切れ刃9に近づくにつれて幅が漸次広くされる部分を有する。すなわち隆起部16は、幅拡大部分16aを有する。特に、隆起部16の幅拡大部分16aは、隆起部16の最も切れ刃側に配置される。隆起部16がこのような形状とされると、前述のリッジ12と同様に、切削加工のときにすくい面6を擦過する切りくずが、隆起部16によって持ち上げられ、すくい面6から強制的に引き離される。このためすくい面6に発生するクレータ摩耗がより抑制され、工具寿命が延長できる。さらに隆起部16は、その途中において、
図10に示すようにすくい面6から離れるにつれ幅が漸次狭くなるため、切りくずは隆起部16からも強制的に引き離される。したがって隆起部16自体の摩耗も抑制される。なお隆起部16は、全体的な幅について幅拡大部分を有すればよい。したがって、例えば隆起部16の幅拡大部分16aはその先端側(切れ刃側)が分岐するY字形のように構成されてもよい。このように形成された場合、隆起部16の枝部のそれぞれの幅の合計幅は変化しない場合、あるいは逆に切れ刃側ほど減少する場合でも、幅拡大部分16aは全体的なその外側の幅が幅拡大部分に対応した大きさを有していればよい。
【0039】
ここで、
図9を参照する。
図9は、
図8BのIX−IX線に沿った切削インサート101の一部の断面模式図である。なお、
図9には、さらに、
図8Bのα―α線に沿った部分の断面が、寸法、角度および比率を調整しつつ、破線で概念的に重ねて表されている。
図9に示すように、隆起部16の幅拡大部分16aは、切れ刃8から離れるにつれて漸次下がるように傾斜する。すなわち幅拡大部分16aは、関連する上面2の切れ刃8から離れるにつれて、他方の端面である下面3に漸次近づくように傾斜する。この実施形態で幅拡大部分の頂部(切れ刃側端部)16bも、傾斜する平面とされる。幅拡大部分16aの傾斜角度は、すくい面6のすくい角よりも小さくされる。隆起部16は、すくい面6のうち、切れ刃の内側において、第1すくい面6aにつながるように第2すくい面6bから隆起している。幅拡大部分16aの傾斜角度θ1と第1すくい面6aのすくい角θ2との角度差は、1°以上、かつ30°以下の範囲が好ましい。このような角度差とされると、隆起部16によって、切りくずが確実にすくい面6から引き離され、すくい面6のクレータ摩耗が抑制される。なお例外的に、幅拡大部分16aの頂部16bの頂面は、下面3と平行な平面とされても構わない。つまり頂部16bの頂面は、傾斜しない平面とされても(取付穴1aの軸線1bに直交するように定められる仮想平面に沿って延在しても)構わない。頂部16bは、切れ刃8から離れるにつれて上がるように傾斜する部分を一部に含んでも構わない。しかし幅拡大部分16aは、全体としては概ね、切れ刃8から離れるにつれて漸次下がるように傾斜することが好ましい。その上で、幅拡大部分16aの頂部16bの頂面は、下面3と平行な平面であることが好ましい。すなわち幅拡大部分16aの傾斜角度は、0°以上、かつ20°以下の範囲が好ましい。この実施形態の切削インサート1において、第1すくい面6aのすくい角θ2(取付穴1aの軸線1bに直交するように定められる仮想平面Pに対する第1すくい面6aの傾斜角度)は約12°とされる。幅拡大部分16aの仮想平面Pに対する傾斜角度θ1は、約10°とされる。すなわち角度差(=θ2−θ1)は、約2°とされる。
【0040】
この実施形態の切削インサート101のすくい面6は、上記切削インサート1と同様に、2段構造とされている。すなわちすくい面6は第1すくい面6aであるランド15および第2すくい面6bを有する。この実施形態の切削インサート1で、前述のすくい角は、ランド6aの傾斜角度とされる。しかし、これに限定されない。隆起部16は、切れ刃に向けて第2すくい面6bに接続するように設けられても構わない。その場合のすくい角は、第2すくい面のすくい角となる。そして、幅拡大部分の傾斜角度は、第2すくい面のすくい角より小さくされればよい。その場合、幅拡大部分の傾斜角度は、ランドの傾斜角度より大きくされても構わない。もちろんランドの傾斜角度は、0°とされても構わない。また例外的に、ランドの傾斜角度は、負の角度とされても構わない。なおランドの傾斜角度が負の角度とされるときは、隆起部16が第2すくい面と接続されることが好ましい。
【0041】
この実施形態の切削インサート101は、チップブレーカ溝11の中に、さらにコーナ部5aに向かって突出するブレーカ突起部13を有する。切削インサート101では、コーナ部5aの上記2等分線上に、切れ刃8側から隆起部16に続いてブレーカ突起部13が形成されている。ブレーカ突起部13は、チップブレーカ溝11の立ち上がり壁面においてさらに切れ刃側に突出した部分を提供する。ブレーカ突起部13は、切削条件の切り込みや送りが小さいときに、切りくず処理性を向上する作用がある。すなわち適用できる切削条件を拡大する作用がある。リッジ12と、隆起部16と、ブレーカ突起部13との相乗効果で、優れた切りくず処理性を得つつ、すくい面6のクレータ摩耗を抑制し、工具寿命の長い優れた切削インサート101が実現できる。
【0042】
上面2および下面3の中央部には、切削工具に装着されるときの着座面として機能するボス面14が形成される。すなわちチップブレーカ溝11は、有限の幅をあたえられる。この実施形態の切削インサート1のブレーカ突起部13は、全周にわたって突出する部分13aを有するように設けられる。つまり、チップブレーカ溝11のボス面14に接続するブレーカ壁面11rは、全周にわたって2段構造とされている。しかし、これに限定されない。ブレーカ突起部13やブレーカ壁面11rの各形状は、種々の既知の形状が適用可能である。
【0043】
この実施形態の切削インサート101の隆起部16は、隆起部16と同様にコーナ部の2等分線上に位置するブレーカ突起部13と、切れ刃から離れる方向において接続する。それ故、隆起部16を経た切りくずは、的確に、ブレーカ突起部13に至ることができる。そして隆起部16は、ブレーカ突起部13と交差する。しかし、隆起部16は、これに限定されない。なお、ブレーカ突起部13は設けられなくてもよい。隆起部16は、ブレーカ突起部13またはチップブレーカ溝11のブレーカ壁面となめらかに接続されても構わない。
【0044】
次に、
参考例に係る切削インサート201を、
図11に基づいて説明する。説明を簡略にするため、以下では、
参考例の切削インサート1と同じ構成要素には、同じ部材番号を付し、説明を省略する。なお、以下では、
参考例の切削インサート201における、
参考例の切削インサート1との相違点のみを説明する。
【0045】
この
参考例の切削インサート201では、上記切削インサート1における各コーナ部5の2つのリッジ12が一体的に連続するように形成されていて、実質的に1つのリッジ12Fを形成している。すなわち切削インサート201は、各コーナ部に関して、切削インサート201をコーナ部5において2等分する平面(上記仮想平面ISに相当)を横切って、鏡面対称な形状に連続する1つのリッジ12Fを有する。このように、前述のとおり、リッジ12は、鏡面対称な関係に偶数個形成されることに限定されない。
【0046】
この発明の切削インサートは、以上に説明した
参考例に限定されない。例えば、切削インサートは、略三角形板状や略六角形板状など、様々な略多角形板状の外郭形状を採用できる。
【0047】
また、上記
参考例の実施形態の切削インサートでは、切れ刃8は、取付穴1aの軸線1bに直交する平面に沿って延在し、切削インサートの側面視において、リッジ12は、切れ刃8よりも取付穴1aの軸線1b方向において外側に突出しないように形成された。それ故、
図5および
図9においてリッジ12の破線は切れ刃8よりも低い位置に描かれた。しかし、例えば
図12に示すように、リッジ12は、切削インサートの側面視において(例えば矢印A1の方向からみたとき)、切れ刃8から外側に突出してみえる部分12pと、切れ刃8に隠れてみえない外側に非突出の部分12qとを有してもよい。なお、
図12において、線P1は、取付穴1aの軸線1bに直交し、かつ、切れ刃8を通る線である。
【0048】
また、
図13に上記
参考例の切削インサート1の使用例を模式的に示すように、上記
参考例と実施形態の切削インサートは、いずれも、旋盤用の切削インサートである。したがって、切削インサート1がホルダ(工具ボデー)20の先端に取付部材であるねじ(図示省略)を用いて着脱自在に取り付けられたバイト(切削工具)22は、軸線O周りに回転する被削材Wに所定の切込み(矢印A1)で送り方向(矢印A2)に送られる。しかし、本発明は、そのような旋盤用の切削インサートに限定されず、例えばフライス用の切削インサートに適用されてもよい。具体的には、本発明はボールエンドミルを含むエンドミル用の切削インサートに適用されてもよい。また、本発明は、種々のタイプの切削工具の工具ボデーへの装着方法を採用する切削インサートに適用することができ、例えばいわゆる縦インサートタイプの切削インサートに適用することもできる。縦インサートタイプの切削インサートには、すくい面が周側面に定められ、逃げ面が同周側面の一部および端面に定められ、すくい面と逃げ面との交差稜線部に形成された切れ刃がコーナ部に沿った切れ刃部分およびこれにつながる直線状切れ刃部分を有するものがある。このような構成を有する縦インサートタイプの切削インサートにおけるすくい面に、上記実施形態において説明した構成が同様に適用されることができる。あるいは、本発明は溝入れ用の切削インサートなどに適用することもできる。
【0049】
前述した実施形態では本発明をある程度の具体性をもって説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明については、請求の範囲に記載された発明の精神や範囲から離れることなしに、さまざまな改変や変更が可能であることは理解されなければならない。すなわち、本発明には、請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が含まれる。