(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記半田層の前記導電性接着剤層側の面は、前記絶縁層の前記金属支持層側の面と、同一平面上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のサスペンション用基板。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1においては、端子開口部内に設けられた素子接続端子の下面が、絶縁層の下面と同一平面上に形成されている。このことにより、ピエゾ素子と素子接続端子との電気的接続の信頼性向上が困難になるという問題がある。例えば、半田ボールを用いてピエゾ素子と素子接続端子とを電気的に接続する場合、半田ボールが、素子接続端子から位置ずれしやすくなる。この場合、アクチュエータ素子と素子接続端子とを半田材料によって電気的に接続することが困難になり得る。また、半田ペーストを用いる場合には、半田ペーストが、素子接続端子から周囲に濡れ広がるという問題があり、この場合においても、アクチュエータ素子と素子接続端子とを半田材料によって電気的に接続することが困難になり得る。
【0009】
また、ピエゾ素子と素子接続端子とを半田材料によって電気的に接続する場合、アクチュエータ素子の信頼性が低下し得るという問題もある。すなわち、半田材料をアクチュエータ素子の電極に溶着させる際、半田材料が加熱されるが、この際、アクチュエータ素子が、熱的損傷を受ける可能性がある。
【0010】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、実装されるアクチュエータ素子との電気的接続の信頼性を向上させるとともにアクチュエータ素子の信頼性低下を抑制することができるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ハードディスクドライブおよびサスペンション用基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ヘッドスライダと、前記ヘッドスライダを変位させる伸縮自在なアクチュエータ素子とが実装されるヘッド領域を有するサスペンション用基板において、金属支持層と、前記金属支持層上に設けられた絶縁層と、前記絶縁層上に設けられ、素子接続端子を有する配線層と、を備え、前記ヘッド領域において、前記金属支持層に、前記アクチュエータ素子を収容する収容開口部が設けられ、前記絶縁層に、前記素子接続端子を前記収容開口部に露出させる端子開口部が設けられ、前記端子開口部内に、前記アクチュエータ素子と前記素子接続端子とを接続する導電層が設けられ、前記導電層は、前記素子接続端子の前記絶縁層側の面に設けられた半田層と、前記半田層の前記素子接続端子側とは反対側の面に設けられた導電性接着剤層と、を有していることを特徴とするサスペンション用基板を提供する。
【0012】
なお、上述したサスペンション用基板において、前記導電性接着剤層の一部は、前記端子開口部内に形成されている、ようにしてもよい。
【0013】
また、上述したサスペンション用基板において、前記導電性接着剤層は、前記端子開口部から前記収容開口部の側に突出している、ようにしてもよい。
【0014】
また、上述したサスペンション用基板において、前記半田層の前記導電性接着剤層側の面は、前記絶縁層の前記金属支持層側の面と、同一平面上に配置されている、ようにしてもよい。
【0015】
また、上述したサスペンション用基板において、前記導電性接着剤層は、前記半田層の当該導電性接着剤層側の面の一部に形成されている、ようにしてもよい。
【0016】
本発明は、ベースプレートと、前記ベースプレートに、ロードビームを介して取り付けられた上述のサスペンション用基板と、前記サスペンション用基板の前記ヘッド領域に実装された前記アクチュエータ素子と、を備えたことを特徴とするサスペンションを提供する。
【0017】
本発明は、上述のサスペンションと、前記サスペンション用基板の前記ヘッド領域に実装されたヘッドスライダと、を備えたことを特徴とするヘッド付サスペンションを提供する。
【0018】
本発明は、上述のヘッド付サスペンションを備えたことを特徴とするハードディスクドライブを提供する。
【0019】
本発明は、ヘッドスライダと、前記ヘッドスライダを変位させる伸縮自在なアクチュエータ素子とが実装されるヘッド領域を有するサスペンション用基板の製造方法において、金属支持層と、前記金属支持層上に設けられた絶縁層と、前記絶縁層上に設けられ、素子接続端子を有する配線層と、を備えた基板材料体であって、前記ヘッド領域をなす領域において、前記金属支持層に、前記アクチュエータ素子を収容する収容開口部が設けられ、前記絶縁層に、前記素子接続端子を前記収容開口部に露出させる端子開口部が設けられた、基板材料体を準備する工程と、前記端子開口部内に、実装される前記アクチュエータ素子と前記素子接続端子とを接続する導電層を形成する工程と、を備え、前記導電層を形成する工程は、前記素子接続端子の前記絶縁層側の面に半田層を形成する工程と、前記半田層の前記素子接続端子側とは反対側の面に、導電性接着剤層を形成する工程と、を有していることを特徴とするサスペンション用基板の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、実装されるアクチュエータ素子との電気的接続の信頼性を向上させるとともにアクチュエータ素子の信頼性低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1乃至
図7を用いて、本発明の実施の形態におけるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ハードディスクドライブおよびサスペンション用基板の製造方法について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0023】
図1に示すように、ヘッド付サスペンション111は、サスペンション101と、サスペンション用基板1のヘッド領域2に実装されたヘッドスライダ112と、を備えている。このうちヘッドスライダ112は、後述するディスク123(
図5参照)に対してデータの書き込みおよび読み取りを行うためのものであり、後述するサスペンション用基板1のヘッド領域2に接着剤を用いて接合されている。なお、ヘッドスライダ112のスライダ端子(図示せず)は、半田材料によってヘッド端子41に電気的に接続されている。
【0024】
サスペンション101は、ベースプレート102と、ベースプレート102上に取り付けられたロードビーム103と、ロードビーム103に取り付けられたサスペンション用基板1と、サスペンション用基板1のヘッド領域2に実装された一対のピエゾ素子(アクチュエータ素子)104と、を備えている。このうちベースプレート102およびロードビーム103は、いずれも、好適にはステンレスにより形成され、互いに溶接されて固定されている。
【0025】
また、ロードビーム103は、サスペンション用基板1の金属支持層20(後述)に、溶接により取り付けられるようになっている。なお、ロードビーム103には、治具孔(図示せず)が設けられており、サスペンション用基板1には、
図1に示すように、当該ロードビーム103の治具孔とアライメント(位置合わせ)を行うための治具孔5が設けられている。このことにより、サスペンション用基板1にロードビーム103を取り付ける際に、サスペンション用基板1とロードビーム103との位置合わせを行うことができるようになっている。ロードビーム103の治具孔およびサスペンション用基板1の治具孔5は、
図1に示す長手方向軸線(X)上に配置されている。
【0026】
図1および
図2に示すように、ピエゾ素子104は、長手方向(
図2のP方向)に伸縮自在に構成されている。これにより、一対のピエゾ素子104は、ヘッドスライダ112をスウェイ方向(旋回方向、
図2の矢印Q方向)に変位させることができるようになっている。また、各ピエゾ素子104は、
図3に示すように、一対の電極(第1電極104a、第2電極104b)と、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電セラミックスからなる圧電材料部104cと、を有している。一対の電極104a、104bは、圧電材料部104cの絶縁層10の側の面において、圧電材料部104cのうち伸縮方向における両端部(第1素子端部104dおよび第2素子端部104e)に形成されている。すなわち、ピエゾ素子104は、伸縮方向における端部として、第1素子端部104dと第2素子端部104eとを有しており、第1素子端部104dに第1電極104aが形成され、第2素子端部104eに第2電極104bが形成されている。
【0027】
図2および
図3に示すように、ピエゾ素子104の第1電極104aは、後述する第1導電層71を介して、サスペンション用基板1の第1素子接続端子45(後述)に接続されている。この第1素子接続端子45は、導電接続部60(後述)を介して、金属支持層20に接続されて電気的に接地されている。第2電極104bは、後述する第2導電層72を介して、サスペンション用基板1の第2素子接続端子46(後述)に電気的に接続されている。この第2素子接続端子46は、後述する素子配線44に接続されており、第2素子接続端子46には、ピエゾ素子104を伸縮させるために所定の電圧が印加されるようになっている。
【0028】
図3に示すように、各素子端部104d、104eには、非導電性接着剤(例えば、UV硬化樹脂)106が塗布されている。非導電性接着剤106は、ピエゾ素子104をサスペンション用基板1に機械的に接合するためのものである。
【0029】
一対のピエゾ素子104の圧電材料部104cは、互いに180°異なる分極方向となるように形成されており、所定の電圧が印加されると、一方のピエゾ素子104が収縮すると共に、他方のピエゾ素子104が伸長するようになっている。すなわち、ピエゾ素子104は、電極104a、104b間に所定の電圧が印加されることにより
図2の矢印P方向に伸縮自在な圧電素子として構成されている。
【0030】
このようなピエゾ素子104は、
図1に示すように、長手方向軸線(X)に沿って細長の矩形状に形成されており、その伸縮方向が、当該長手方向軸線(X)に平行となっている。また、ピエゾ素子104は、長手方向軸線(X)に対して互いに線対称に配置されており、各ピエゾ素子104の伸縮が、ヘッドスライダ112に均等に伝達されるようになっている。
【0031】
次に、サスペンション用基板1について説明する。
【0032】
図1に示すように、サスペンション用基板1は、ヘッドスライダ112とピエゾ素子104とが実装されるヘッド領域(ジンバル領域)2と、FPC基板(外部接続基板)131が接続されるテール領域3と、を有している。ヘッド領域2には、ヘッドスライダ112に接続される複数のヘッド端子41が設けられ、テール領域3には、FPC基板131に接続される複数のテール端子(外部接続基板端子)42が設けられている。ヘッド端子41とテール端子42とは、後述する複数の信号配線43によってそれぞれ接続されている。
【0033】
図1乃至
図3に示すように、サスペンション用基板1は、金属支持層20と、金属支持層20上に設けられた絶縁層10と、絶縁層10上に設けられ、複数の配線43、44を有する配線層40と、を備えている。すなわち、金属支持層20に、絶縁層10を介して配線層40が積層されている。絶縁層10上には、配線43、44を覆う保護層50が設けられている。上述したヘッドスライダ112は、サスペンション用基板1の保護層50の側(保護層50上)に配置され、ピエゾ素子104は、金属支持層20の側に配置されている。なお、
図1および
図2においては、図面を明瞭にするために、保護層50は省略している。
【0034】
金属支持層20は、
図2乃至
図4に示すように、金属支持層本体21と、ヘッド領域2に配置され、ヘッドスライダ112が取り付けられたタング部22と、を有している。金属支持層本体21とタング部22とは、長手方向軸線(X)に沿って延びる中央連結部24によって連結されている。中央連結部24の幅は小さくなっており、これにより中央連結部24は柔軟性を有し、ヘッドスライダ112のピボット運動が阻害されることを防止すると共に、ピエゾ素子104の伸縮動作が阻害されることを防止している。
【0035】
ヘッド領域2において、金属支持層20に、ピエゾ素子104を収容する矩形状の収容開口部25が設けられている。収容開口部25は、中央連結部24の両側に配置されている。すなわち、一対の収容開口部25の間に中央連結部24が配置されている。本実施の形態においては、収容開口部25の外側(中央連結部24の側とは反対側)には、金属支持層20を構成する部材は形成されていない。しかしながら、ピエゾ素子104の伸縮動作に問題が無ければ、収容開口部25の外側に、金属支持層20を構成する部材が形成されていてもよい。
【0036】
配線層40は、複数の配線、すなわち、一対の読取配線と一対の書込配線とを含む信号配線43と、ピエゾ素子104に接続される一対の素子配線44と、を有している。このうち、信号配線43は、ヘッド端子41とテール端子42とを接続しており、この信号配線43に電気信号が流されることによって、ヘッドスライダ112がディスク123(
図6参照)に対してデータの書き込みまたは読み取りを行うようになっている。テール端子42から延びる素子配線44は、第2素子接続端子46に接続されており、ピエゾ素子104の第2電極104bに所定の電圧を印加するようになっている。
【0037】
配線層40は、ピエゾ素子104の第1電極104aに接続される第1素子接続端子45と、ピエゾ素子104の第2電極104bに接続される第2素子接続端子46と、を有している。このうち、第1素子接続端子45は、ピエゾ素子104の第1電極104aを接地して、ピエゾ素子104の接地をとるためのものであり、後述の導電接続部60を介して、金属支持層20のタング部22に電気的に接続されている。第2素子接続端子46は、上述したように、ピエゾ素子104の第2電極104bに所定の電圧を印加するためのものであり、第2素子接続端子46には、素子配線44が接続されている。
【0038】
図3に示すように、絶縁層10に、素子接続端子45、46をピエゾ素子104の側に露出させる端子開口部11が設けられている。素子接続端子45、46のうち端子開口部11に露出された部分に、ニッケル(Ni)めっきおよび金(Au)めっきがこの順に施されて形成されためっき層(図示せず)が設けられている。このことにより、素子接続端子45、46が腐食することを防止するとともに、ピエゾ素子104の電極104a、104bと素子接続端子45、46との接続抵抗を低減している。なお、ヘッド端子41およびテール端子42にも、同様にして、めっき層が設けられている。
【0039】
図3および
図4に示すように、端子開口部11には、ピエゾ素子104と素子接続端子45、46とを電気的に接続する導電層(第1導電層71、第2導電層72)が設けられている。このうち、第1導電層71は、第1素子接続端子45に対応する端子開口部11内に設けられており、第2導電層72は、第2素子接続端子46に対応する端子開口部11内に設けられている。なお、
図4(後述する
図6乃至
図8も同様)においては、第1導電層71を示しているが、第2導電層72は、第1導電層71と同様の構成とすることができるため、第2導電層72を示す部分拡大断面図は省略する。
【0040】
図4に示すように、導電層71、72は、素子接続端子45、46の絶縁層10の側の面に設けられた半田層73と、半田層73の素子接続端子45、46の側とは反対側の面(ピエゾ素子104の側の面)に設けられた導電性接着剤層74と、を有している。このうち、導電性接着剤層74は、例えば、銀ペースト(エポキシ樹脂などのバインダーと、銀フィラーとが混合されたペースト)などの導電性接着剤により形成されている。この導電性接着剤層74は、ピエゾ素子104の電極104a、104bに接続されるようになっている。このようにして、ピエゾ素子104の電極104a、104bと素子接続端子45、46とが、半田層73および導電性接着剤層74を介して、電気的に接続されるようになっている。なお、導電性接着剤層74は、半田層73の導電性接着剤層74の側の面(ピエゾ素子104の側の面)の全体に設けられていることが好適である。また、導電性接着剤層74は、端子開口部11から収容開口部25の側(ピエゾ素子104の側)に盛り上がるように突出していることが好適である。
【0041】
図4に示すように、導電性接着剤層74の一部は、端子開口部11内に形成されている。すなわち、半田層73のピエゾ素子104の側の面は、絶縁層10の金属支持層20の側の面より、上側(素子接続端子45、46の側)に配置されている。
【0042】
このような、半田層73と導電性接着剤層74とを含む導電層71、72は、本実施の形態においては、サスペンション用基板1を構成する部材として取り扱う。
【0043】
上述したように、第1素子接続端子45は、導電接続部(ビア)60によって、金属支持層20のタング部22に電気的に接続されている。すなわち、絶縁層10に絶縁層貫通孔12が設けられ、配線層40に配線層貫通孔48が設けられており、この絶縁層貫通孔12および配線層貫通孔48に、ニッケルめっきまたは銅めっきを施すことにより導電接続部60が形成されている。このようにして、第1素子接続端子45が接地されるようになっている。なお、
図3に示す形態においては、導電接続部60は、保護層50により覆われており、導電接続部60の腐食を防止している。
【0044】
次に、サスペンション用基板1の各層を構成する材料について詳細に述べる。
【0045】
絶縁層10の材料としては、所望の絶縁性を有する材料であれば特に限定されることはないが、例えば、ポリイミド(PI)を用いることが好適である。なお、絶縁層10の材料は、感光性材料であっても非感光性材料であっても用いることができる。また、絶縁層10の厚さは、5μm〜10μmであることが好ましい。このことにより、金属支持層20と各配線43、44との間の絶縁性能を確保するとともに、サスペンション用基板1全体としての剛性が喪失されることを防止することができる。
【0046】
配線層40の各配線43、44は、電気信号を伝送するための導体として構成されており、各配線43、44の材料としては、所望の導電性を有する材料であれば特に限定されることはないが、銅(Cu)を用いることが好適である。銅以外にも、純銅に準ずる電気特性を有する材料であれば用いることもできる。ここで、各配線43、44の厚さは、5μm〜18μmであることが好ましい。このことにより、各配線43、44の伝送特性を確保するとともに、サスペンション用基板1全体としての柔軟性が喪失されることを防止することができる。なお、ヘッド端子41、テール端子42および素子接続端子45、46は、各配線43、44と同一の材料、同一の厚みとなっており、配線層40を構成している。
【0047】
金属支持層20の材料としては、所望の導電性、弾力性、および強度を有するものであれば特に限定されることはないが、例えば、ステンレス、42アロイ、アルミニウム、ベリリウム銅、またはその他の銅合金を用いることができ、このうちステンレスを用いることが好適である。金属支持層20の厚さは、15μm〜20μmであることが好ましい。このことにより、金属支持層20の導電性、剛性、および弾力性を確保することができる。
【0048】
保護層50の材料としては、樹脂材料、例えば、ポリイミドを用いることが好適である。なお、保護層50の材料は、感光性材料であっても非感光性材料であっても用いることができる。保護層50の厚さは、配線43、44上において3μm〜10μmであることが好ましい。
【0049】
次に、
図5により、本実施の形態におけるハードディスクドライブ121について説明する。
図5に示すハードディスクドライブ121は、ケース122と、このケース122に回転自在に取り付けられ、データが記憶されるディスク123と、このディスク123を回転させるスピンドルモータ124と、ディスク123に所望のフライングハイトを保って近接するように設けられ、ディスク123に対してデータの書き込みおよび読み取りを行うヘッドスライダ112を含むヘッド付サスペンション111と、を有している。このうちヘッド付サスペンション111は、ケース122に対して移動自在に取り付けられており、ケース122にはヘッド付サスペンション111のヘッドスライダ112をディスク123上に沿って移動させるボイスコイルモータ125が取り付けられている。また、ヘッド付サスペンション111は、ボイスコイルモータ125にアーム126を介して取り付けられると共に、ハードディスクドライブ121を制御する制御部(図示せず)に接続されたFPC基板131(
図1参照)に接続されている。このようにして、電気信号が、サスペンション用基板1とFPC基板131を介して、制御部とヘッドスライダ112との間で伝送されるようになっている。
【0050】
次に、本実施の形態によるサスペンション用基板1の製造方法について
図6を用いて説明する。
【0051】
まず、基板材料体1aを準備する(
図6(a)参照)。ここで、基板材料体1aとは、本実施の形態における導電層71、72を含むサスペンション用基板1を作製するための基板であって、
図6(a)に示すように、導電層71、72が形成される前の段階の基板のことを意味する。ここでは、基板材料体1aを、一例として、サブトラクティブ法により製造する場合について説明する。
【0052】
まず、金属支持層20と絶縁層10と配線層40とが積層された積層体(図示せず)を準備する。続いて、配線層40が、所望の形状にエッチングされて、ヘッド端子41、テール端子42、配線43、44、および素子接続端子45、46が形成される。次に、絶縁層10上に、各配線43、44を覆う保護層50が所望の形状で形成される。続いて、絶縁層10が所望の形状にエッチングされる。この際、ヘッド領域2をなす領域において、絶縁層10に端子開口部11が形成される。その後、金属支持層20が所望の形状にエッチングされて外形加工され、ヘッド領域2をなす領域において、金属支持層20にタング部22および収容開口部25が形成される。このようにして、基板材料体1aが得られる。
【0053】
基板材料体1aを準備した後、ピエゾ素子104と素子接続端子45、46とを接続するための導電層71、72が形成される。
【0054】
この場合、まず、素子接続端子45、46の端子開口部11に露出された面に、半田層73が形成される(
図6(b)参照)。
【0055】
半田層73の形成方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、端子開口部11内に、半田ボールを供給し、この半田ボールにレーザ光を照射することによって半田ボールを加熱して溶融させ、素子接続端子45、46に溶着した半田層73を得ることができる。なお、半田ボールを溶融させる際、半田ボールは300℃以上に加熱されることが好適である。
【0056】
また、半田層73を形成する方法としては、半田ボールを用いる方法以外にも、例えば、印刷法によって半田層73を形成することができる。この場合、半田ペースト(クリーム半田ともいう)を、端子開口部11内に塗布して、加熱して溶融させることにより、素子接続端子45、46に溶着した半田層73を得ることができる。ここで、半田ペーストは、微細な粉末状の半田粒がフラックスによってペースト状に形成されたものである。このことから、印刷後に加熱すると半田粒が溶融して、素子接続端子45、46の露出された面に溶着した半田層73が形成される。更には、ソルダージェット法により、溶融された半田を端子開口部11内に供給して、素子接続端子45、46に溶着した半田層73を得ることもでき、めっき法によって半田層73を得ることもできる。
【0057】
半田層73が形成された後、半田層73の素子接続端子45、46の側とは反対側の面に、導電性接着剤層74が形成される(
図6(c)参照)。この場合、まず、導電性接着剤が、印刷法により半田層73上に塗布される。この際、塗布される導電性接着剤は、端子開口部11から盛り上がるように塗布されることが好適である。
【0058】
このようにして、本実施の形態による、半田層73と導電性接着剤層74とを含む導電層71、72が端子開口部11に設けられたサスペンション用基板1が得られる。
【0059】
次に、上述のようにして得られたサスペンション用基板1を用いたサスペンション101の製造方法について、
図7を用いて説明する。
【0060】
まず、ベースプレート102(
図1参照)に、ロードビーム103を介して、上述のサスペンション用基板1が、溶接により取り付けられる。この場合、まず、ベースプレート102にロードビーム103が溶接により固定され、続いて、ロードビーム103に設けられた治具孔(図示せず)と、サスペンション用基板1に設けられた治具孔5とにより、ロードビーム103とサスペンション用基板1とのアライメントが行われる。その後、サスペンション用基板1の金属支持層20に溶接が施されて、ロードビーム103とサスペンション用基板1が互いに接合されて固定される。
【0061】
次に、ピエゾ素子104が、サスペンション用基板1のヘッド領域2に実装される(
図7(a)参照)。この場合、まず、ピエゾ素子104が収容開口部25に収容される。このことにより、ピエゾ素子104の電極104a、104bが、導電層71、72の導電性接着剤層74に電気的に接続される。
【0062】
その後、導電性接着剤層74の導電性接着剤を焼成して、硬化させる。なお、焼成処理は、200℃で所定の時間行われることが好適である。
【0063】
導電性接着剤を硬化した後、ピエゾ素子104の両端部に、非導電性接着剤106が塗布される(ポッティング)。その後、塗布された非導電性接着剤106を、気中環境下に放置して、硬化させる(
図7(b)参照)。このことにより、ピエゾ素子104がサスペンション用基板1に、機械的に接合され、ヘッド領域2にピエゾ素子104が実装される。
【0064】
このようにして、サスペンション用基板1にピエゾ素子104が実装され、本実施の形態によるサスペンション101が得られる。
【0065】
その後、得られたサスペンション101にヘッドスライダ112が実装されて、本実施の形態によるヘッド付サスペンション111が得られる。
【0066】
さらに、このヘッド付サスペンション111がハードディスクドライブ121のアーム126に取り付けられると共に、サスペンション用基板1のテール端子42にFPC基板131(
図1参照)が接続されて、
図5に示すハードディスクドライブ121が得られる。
【0067】
図5に示すハードディスクドライブ121においてデータの書き込みおよび読み取りを行う際、スピンドルモータ124によってディスク123が回転し、ボイスコイルモータ125によってヘッド付サスペンション111のヘッドスライダ112がディスク123に沿って移動する。この際、ヘッドスライダ112は、ディスク123の回転により生じた気流の影響を受けて、タング部22と共にピボット運動を行いながら、ディスク123に所望のフライングハイトを保って浮上する。この状態で、ヘッドスライダ112とディスク123との間で、データの受け渡しが行われる。この間、サスペンション用基板1とFPC基板131を介して、FPC基板131に接続されている制御部(図示せず)とヘッドスライダ112との間で電気信号が伝送される。このような電気信号は、サスペンション用基板1においては、各信号配線43によって、ヘッド端子41(
図1参照)とテール端子42との間で伝送される。
【0068】
ヘッドスライダ112を移動させる際、ボイスコイルモータ125が、ヘッドスライダ112の位置を大まかに調整し、ピエゾ素子104が、ヘッドスライダ112の位置を微小調整する。すなわち、ピエゾ素子104の第2電極104bに所定の電圧を印加することにより、長手方向軸線(X)に沿った方向(
図2の矢印P方向)に、一方のピエゾ素子104が収縮すると共に他方のピエゾ素子104が伸長する。この場合、ピエゾ素子104には、素子配線44、第2素子接続端子46および第2導電層72を介して所定の電圧が入力される。
【0069】
ピエゾ素子104が伸縮すると、ヘッド領域2に実装されているヘッドスライダ112がスウェイ方向(
図2の矢印Q方向)に移動する。このことから、ヘッドスライダ112を、ディスク123の所望のトラックに、精度良く位置合わせすることができる。
【0070】
このように本実施の形態によれば、端子開口部内に、実装されるピエゾ素子104と素子接続端子45、46とを接続する導電層71、72が設けられている。このことにより、導電層71、72を、端子開口部11に係止することができる。このため、導電層71、72が、素子接続端子45、46から位置ずれすることを防止し、ピエゾ素子104と素子接続端子45、46との電気的接続の信頼性を向上させることができる。
【0071】
また、本実施の形態によれば、導電性接着剤層74の一部が、端子開口部11内に形成されている。このことにより、導電性接着剤層74を端子開口部11に係止することがでる。このため、導電層71、72が、素子接続端子45、46から位置ずれすることをより一層防止でき、ピエゾ素子104と素子接続端子45、46との電気的接続の信頼性をより一層向上させることができる。また、この場合、導電性接着剤層74を形成する導電性接着剤を塗布した際、塗布された導電性接着剤が、端子開口部11の周囲に濡れ広がることにより金属支持層20に達して短絡することを抑制でき、電気的接続の信頼性を向上させることができる。
【0072】
また、本実施の形態によれば、上述したように、導電性接着剤層74の一部が、端子開口部11内に形成されていることにより、端子開口部11からの導電性接着剤層74の突出量を低減することができる。このため、ピエゾ素子104を、絶縁層10に近接させて(または密着させて)実装することができ、ピエゾ素子104の実装を安定化させることができる。
【0073】
また、本実施の形態によれば、素子接続端子45、46と導電性接着剤層74との間に、半田層73が介在されている。ここで、導電性接着剤は、素子接続端子45、46上に形成されためっき層との接触抵抗が比較的大きくなる。このため、めっき層と導電性接着剤層74との間に半田層73を介在させることにより、ピエゾ素子104と素子接続端子45、46との接続抵抗を低減することができ、ピエゾ素子104と素子接続端子45、46との電気的接続の信頼性を向上させることができる。
【0074】
また、本実施の形態によれば、素子接続端子45、46に、半田層73および導電性接着剤層74を含む導電層71、72を介して、ピエゾ素子104を電気的に接続することができる。このことにより、比較的高価な導電性接着剤の使用量を低減し、サスペンション用基板1の材料コストを低減することができる。また、導電性接着剤の使用量を低減することにより、導電性接着剤の印刷作業を容易にすることができる。この場合、導電性接着剤の塗布後の焼成時間を短縮することもでき、ピエゾ素子104に熱的損傷を与えることを抑制できる。
【0075】
また、本実施の形態によれば、端子開口部11内に半田層73が形成された後、導電性接着剤層74が形成され、その後、ピエゾ素子104が収容開口部25に収容される。この場合、収容開口部25にピエゾ素子104を収容する前に、半田層73を形成するための半田材料を加熱して溶融させることができる。すなわち、半田材料を溶融させる際に、ピエゾ素子104が熱的損傷を受けることを回避できる。この結果、ピエゾ素子104の信頼性が低下することを抑制できる。なお、導電性接着剤を焼成する際に、ピエゾ素子104が加熱され得るが、導電性接着剤を焼成する際の温度は、半田を溶融する際の温度より低いため、ピエゾ素子104と素子接続端子45、46とを、導電性接着剤を用いずに半田材料によって接続する場合よりも、ピエゾ素子104が受ける熱的損傷を低減することができる。
【0076】
さらに、本実施の形態によれば、導電性接着剤層74は、端子開口部11から収容開口部25の側に突出している。このことにより、導電性接着剤層74とピエゾ素子104の電極104a、104bとの接続面積を増大させて、電気的接続の信頼性を向上させることができる。
【0077】
なお、上述した本実施の形態においては、導電性接着剤層74の一部が、端子開口部11内に配置されている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、例えば、
図8に示すように、導電性接着剤層74は、端子開口部11内に入り込まないように形成されていてもよい。すなわち、半田層73の導電性接着剤層74側の面が、絶縁層10の金属支持層20の側の面と、同一平面上に配置されていてもよい。この場合、導電性接着剤層74を形成するための導電性接着剤の使用量をより一層低減することができる。このため、材料コストをより一層低減し、導電性接着剤の印刷作業性をより一層向上させ、焼成時間をより一層短縮させることができる。ここで、同一とは、厳密に同一という意味に限られることはなく、同一とみなすことができる程度の製造誤差等を含む意味として用いている。
【0078】
また、上述した本実施の形態においては、導電性接着剤層74は、半田層73の導電性接着剤層74の側の面の全体に設けられている例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、導電性接着剤層74は、半田層73の導電性接着剤層74の側の面の一部に形成されるようにしてもよい。この場合、半田層73の当該面の一部に、導電性接着剤層74が形成され、当該面の他の部分が露出される。このことにより、導電性接着剤層74を形成するための導電性接着剤の使用量をより一層低減することができる。このため、材料コストをより一層低減し、導電性接着剤の印刷作業性をより一層向上させ、焼成時間をより一層短縮させることができる。
【0079】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明してきたが、本発明によるサスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンション、ハードディスクドライブおよびサスペンション用基板の製造方法は、上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。