【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から、減圧吸収機能をより効果的に発揮させるため、各種のリブを配設する等の、減圧吸収パネルの形状設計に係る発明や考案がある。
一方で、高温充填してキャップで密閉すると、その直後では壜体内部が加圧状態になり、それに伴い壜体胴部が膨出状に変形し、この変形の度合いが大きくなると充填ラインでの運搬時に支障をきたす、さらには塑性変形により冷却後も変形が回復せず、商品性が損なわれる等の問題が生じる恐れもある。
すなわち、減圧吸収パネルの形状設計にあたっては、減圧吸収機能をより高めると共に、上記した高温充填時における膨出変形を、壜体が歪に変形した感じを与えることなく、また局部的な塑性変形を抑制しながら元の形状へ回復可能に、吸収(緩和)する機能(以下、加圧吸収機能と略記する。)についても考慮する必要がある。
近年、この種の壜体では材料コストや省資源の観点から周壁の肉厚を薄くすることが求められており、薄肉化をさらに進めようとする場合には、高温充填時には合成樹脂がその軟化温度に近づくことも相俟って、局部的な塑性変形が発生し易く、上記した加圧吸収機能を考慮した減圧吸収パネルに係る形状設計が重要となっている。
【0006】
そこで、本発明は合成樹脂製
丸形壜体において、減圧吸収機能と加圧吸収機能を高いレベルで共に発揮させることができる減圧吸収パネルの形状を創出することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の主たる構成は、口筒部とテーパー筒状の肩部と円筒状の胴部を有し、胴部の周壁に複数の減圧吸収パネルを周方向に並列状に形成した合成樹脂製の丸形壜体であって、
減圧吸収パネルは、周縁部に段部を配設し、この段部を介して円筒状の胴部の周壁から段差状に矩形状のパネル部を陥没形成したものとし、
このパネル部は、段部に連結して周縁部を形成する基面壁を有し、この基面壁を基端として中央部に平坦な頂面を有し外方に向けて突出する平坦突出部を配設したものとし、
この平坦突出部は、左右の側端縁では
上下の端縁の位置でその段差がなくなる段差部
を介してそれぞれ段差状に
基面壁に連結し、また上下の端縁では
段差部に沿った平坦突出部または基面壁の傾斜によりそれぞれ段差なく基面壁に連結する構成とし、
この平坦突出部に縦溝と横溝を十字状に配設する、と云うものである。
【0008】
上記構成において、減圧吸収パネルのパネル部の基面壁を基端として外方に向けて突出する平坦突出部を配設することにより、平坦突出部の左右の側端縁の段差状の部分
(段差部)の周方向への伸展により、壜体内の加圧時の膨出変形、あるいは減圧時の陥没変形におけるパネル部の変形量を大きくすることができ、加圧吸収機能と減圧吸収機能を共に大きくすることが可能となる。
また、減圧時には平坦
突出部の内方への反転変形性を利用してその減圧吸収機能をさらに大きくすることもできる。
【0009】
ここで、加圧時と減圧時における矩形状のパネル部の変形性についてみると、矩形状のパネル部の膨出状、あるいは陥没状の変形は周縁に位置する段部により拘束されるが、パネル部の上端部と下端部近傍では中央部に比較して拘束力が強く、上記のように平坦突出部を配設したとしても、その変形性を十分に利用することができず、当該上端部と下端部で加圧吸収機能および減圧吸収機能を十分に発揮させることは難しい。
この点につい
て、上記構成では、平坦突出部
の上下の端縁
が、段差状ではなく傾斜状に、すなわち
上下の端縁の位置でその段差がなくなる左右の側端縁の段差部に合わせて平坦突出部または基面壁を傾斜させた傾斜部により段差のない状態で基面壁に連結する構成としており、当該構成によれば、平坦突出部の上下方向の中央部における変形を、この傾斜状部分(傾斜部)を介してパネル部の周縁部に配設される基面壁の上端部あるいは下端部にスムーズに進展させることができ、パネル部の上端部と下端部も加圧吸収機能および減圧吸収機能を発揮することができる部位として利用することが可能となる。
【0010】
上記のように、上記パネル部の構成により、パネル部の周縁部を構成する基面壁も含めて大きな膨出変形性や陥没変形性を発揮させることができるが、このようにパネル部の変形量が大きくなる形状にすると、一方で、たとえばパネル部の上端近傍で局部的な変形が発生し易くなる等の問題が生じる。
この点については、上記構成で、平坦突出部に縦溝と横溝を十字状に配設することにより、平坦突出部の平坦な頂面に位置する縦溝と横溝が交差する領域を起点として加圧状態での膨出変形と減圧状態における陥没変形を、局部的な変形を抑制しながら上下、左右方向に、周縁部に向けてスムーズに進行させることができ、減圧吸収機能と加圧吸収機能を高いレベルで共に発揮させることが可能となる。
【0011】
ここで、縦溝は特に高温充填時
に膨出変形の起点として作用し、平坦突出部の上下方向の中央部
で左右に開くように変形
する。これにより、パネル部が膨出変形し、大きな加圧吸収機能を発揮させることが可能となるが、縦溝が左右に大きく開
きすぎて塑性変形し、室温状態となっても変形が回復しないと云う問題が発生する。
この点については、上記構成により、さらに
縦溝に交差状態で横溝を配設することにより、上下方向の中央部におけるパネル部の膨出変形を抑制
して縦溝の過度の変形を防止することができ
る。すなわち縦溝の上下方向の中央部近傍への膨
出変形の集中を抑制
することで、膨
出変形を、縦溝と横溝が交差する領域からパネル部の周縁に向けて全体的にスムーズに進展させることが可能となる。
なお、上記構成、あるいは以下の説明では減圧吸収パネルの構成の説明に当たってその方向性を明確にするために内方、外方、左右、縦、横等の用語を使用しているが、内方は壜体の内側方向、外方は壜体の
外側方向を示す。
また、左右、縦、横は壜体を正立させた状態で、減圧吸収パネルを正面から見た際の方向である。
【0012】
本発明の他の構成は、上記主たる構成において、縦溝を平坦突出部の上端部と下端部を除く範囲に延設する構成とする、と云うものである。
【0013】
上記のように、平坦突出部の上端部と下端部には縦溝
が存在しない構成とすることにより、当該上端部と下端部では縦溝による拘束がなくなるので、
前述し
た平坦突出部の上下方向の中央部における変形
が、パネル部の周縁部に配設される基面壁の上端部あるいは下端部
に傾斜状部分(傾斜部)を介してよりスムーズに進展し、パネル部の上端
部と下端部でも加圧および減圧吸収機能をより大きく発揮させることが可能となる。
【0014】
本発明のさらに他の構成は、平坦突出部の左右方向の中央部に縦溝を形成し、上下方向の中央部に横溝を形成する、と云うものである。
【0015】
上記の縦溝と横溝の配設態様は標準的に採用す
ることができるものであるが、勿論、減圧吸収パネルの変形態様、あるいはその周辺部位の変形性等を考慮し、例えば横溝を上下の中央部から一方にずらして形成する等、さまざまな配設態様を選択することができる。
【0016】
本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、各減圧吸収パネルのパネル部の基面壁は、
変形のない状態で縦断面において平坦状、若しくは内方に湾曲する構成とすると云うものである。
【0017】
高温充填工程を要する製品分野では、減圧吸収パネルは高温充填の直後に膨出変形し
、冷却後
に陥没変形するが、上記パネル部の基面壁に係る構成によれば、膨出変形状態から陥没変形状態への移行をよりスムーズに進行させることが可能となる。
ここで、高温充填による膨出変形は
、使用する合成樹脂の軟化温度に近い温度で
生じるため、基面壁が縦断面において予め膨出状
に形成されていない場合でもスムーズに
始まり、そして進展
する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の合成樹脂製丸形壜体は上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。すなわち、本発明の主たる構成を有するものにあっては、
平坦突出部は上下の端縁で、段差状ではなく傾斜状に、すなわち
上下の端縁の位置でその段差がなくなる左右の側端縁の段差部に沿うように平坦突出部または基面壁を傾斜させた傾斜部により段差のない状態で基面壁に連結する構成であり、平坦突出部の上下方向の中央部における変形が、この傾斜状部分(傾斜部)を介してパネル部の周縁部に配設される基面壁の上端部あるいは下端部にスムーズに進展するので、パネル部の上端部と下端部も、加圧吸収機能および減圧吸収機能を発揮できる部位として利用することができる。
【0019】
そして、平坦突出部に縦溝と横溝を十字状に配設することにより、平坦突出部の平坦な頂面に位置する縦溝と横溝が交差する領域を起点として加圧状態での膨出変形と減圧状態における陥没変形を、局部的な変形を抑制しながら上下、左右方向に、周縁部を構成する基面壁に向けてスムーズに進行させることができ、減圧吸収機能と加圧吸収機能を高いレベルで共に発揮させることができる。