特許第6241725号(P6241725)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241725
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】見守り装置および見守りシステム
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/04 20060101AFI20171127BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   G08B21/04
   G08B25/04 K
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-220718(P2013-220718)
(22)【出願日】2013年10月24日
(65)【公開番号】特開2015-82265(P2015-82265A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000202361
【氏名又は名称】綜合警備保障株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加納 史朗
【審査官】 永田 義仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−269655(JP,A)
【文献】 特開昭64−039581(JP,A)
【文献】 特開平04−339282(JP,A)
【文献】 特開平08−220250(JP,A)
【文献】 特開2013−185924(JP,A)
【文献】 特開平09−138241(JP,A)
【文献】 特表2003−536303(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0242769(US,A1)
【文献】 特表2015−502598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00− 1/60
G01J 11/00
G01V 1/00− 1/40
G01V 3/00− 7/16
G01V 8/10− 8/16
G01V 8/20
G01V 9/00−99/00
G08B 13/00−15/02
G08B 19/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサーモパイル素子をマトリクス状に多画素化した赤外線センサアレイと、前記赤外線センサアレイより広角な検出範囲をもつ焦電センサと、前記赤外線センサアレイと前記焦電センサからの信号を処理する信号処理部と、前記信号処理部に接続され移動する発熱体を解析する解析部と前記解析部の出力結果からコマンドを生成して伝達する通信部と、電力を供給する電池からなる見守り装置であって、
前記信号処理部は、前記焦電センサが発熱体を検知している一定時間、前記赤外線センサアレイに前記電池から電源を供給する電源制御手段と、
前記解析部は人体の頭部から発する熱量を前記赤外線センサアレイが検知して頭部信号を抽出する手段と、前記信号処理部の電源制御手段が前記赤外線センサアレイに電源を供給している間、前記頭部信号の座標位置を解析する手段を備えたことを特徴とする見守り装置。
【請求項2】
前記焦電センサの検出範囲は、水平方向に100度以上に設定し、前記赤外線センサアレイの検出範囲は、水平方向に90度以下に設定することを特徴とする請求項1に記載の見守り装置。
【請求項3】
請求項1に記載の見守り装置において、前記見守り装置は、焦電センサが発熱体を検知しなくなり、信号処理部が、赤外線センサアレイが検知した頭部信号を抽出している場合には、通信部から所定のコマンドを外部に発信する手段をさらに備え、受信した通報装置があらかじめ指定されている通報先に通信網を介し通報する通報手段を備えることを特徴とする見守りシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、宅内の対象者の移動状況を赤外線アレイセンサにて検知し、異常を検知して警報を出力する見守り装置および見守りシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、居宅内の高齢者が病気による発作などにより異状状態となり、助けを呼ぶのも困難である場合に対応できるよう、予め所定のコールセンターの電話番号が登録され、簡単な操作で外部との連絡が取れる緊急通報システム及びその機器が提案されている。例えば、利用者が携帯可能な腕時計やペンダントなどに無線送信機能を搭載し、ボタンを押すと無線信号が公衆電話回線に接続されている緊急通報装置に伝達され、緊急通報装置はその無線信号をトリガーとして予め記憶されているコールセンターに自動的に接続するものである。このような緊急通報装置は、既に全国にて普及しており、多くの高齢者宅に設置されている。
【0003】
近年では、超音波などのセンサを居宅内に設置し、または利用者に直接装着することで、利用者の異状を早期に検知して通報するシステムが提案されている。特によく用いられているのが安価に構築できる焦電素子を用いたセンサであり、人体の体温と周囲温度の相対的な温度変化から人が動いているか否かを検出する方法である(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
また、複数の焦電センサを家屋の各部屋に取り付け、居住者がどこにいるかを検知して生活パターンを判断して、センサの値が受信できないなどにより生活パターンが崩れた場合に外部に警報を出力するようにしていた(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−85390
【特許文献2】特開2002−352352
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、焦電センサは人間の体温と周囲温度の相対的な温度の時系列の変化からセンサ出力を生成していることから、利用者が静止している場合にはセンサ出力がなくなり、検知することができない。つまり、利用者が動かない状態なのか、利用者が検知範囲に存在しない状態なのかを判別することができなかった。
【0007】
また、焦電センサは温度の変化をオンオフのデジタルの2値で出力することで人間が動いていると判断しているが、どのように動いているのか、どの方向に動いているのか、などの詳しい動きを判断することは困難であった。よって、玄関の天井などに設置した場合には、玄関の外に出たのか、宅内に戻ったのか、などの判断はできなかった。
【0008】
そのため、居間等の利用者が生活する空間と玄関口の2箇所に焦電センサを設置して、玄関口のセンサが反応して、かつ居間のセンサが反応しなくなった場合、玄関口のセンサの反応がなくなった時点で外出したという判断アルゴリズムを採用せざるをえない。しかしながら、複数のセンサが必要となりコストがかかるばかりではなく、玄関口で利用者が倒れて動けなくなった場合、上述の判断アルゴリズムでは外出したと判断してしまい、利用者の救出ができずに放置してしまうという、問題があった。
【0009】
そこで、赤外線アレイセンサを用いた見守り装置について、出願人は検討している。この見守り装置は、従来焦電センサが持っていた問題を解決するものである。しかしながら、赤外線アレイセンサは消費電力が大きいため、電池による電源駆動では電池寿命が短く、AC電源での駆動を余儀なくされていた。そのため、省配線化が困難であるという課題があった。
【0010】
この発明は、これらの課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、人体の動きそのものを検知することで、利用者が倒れて動けなくなったのか、検知エリアから不在になったのかを判断できることにより、確実に高齢者の安否を確認することができる見守り装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するために、本発明の請求項1に係る見守り装置は、複数のサーモパイル素子をマトリクス状に多画素化した赤外線センサアレイと、前記赤外線センサアレイより広角な検出範囲をもつ焦電センサと、前記赤外線センサアレイと前記焦電センサからの信号を処理する信号処理部と、前記信号処理部に接続され移動する発熱体を解析する解析部と前記解析部の出力結果からコマンドを生成して伝達する通信部と、電力を供給する電池からなる見守り装置であって、前記信号処理部は、前記焦電センサが発熱体を検知している一定時間、前記赤外線センサアレイに前記電池から電源を供給する電源制御手段と、前記解析部は人体の頭部から発する熱量を前記赤外線センサアレイが検知して頭部信号を抽出する手段と、前記信号処理部の電源制御手段が前記赤外線センサアレイに電源を供給している間、前記頭部信号の座標位置を解析する手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項2に係る見守り装置は、焦電センサの検出範囲を水平方向に100度以上に設定し、前記赤外線センサアレイの検出範囲を水平方向に90度以下に設定することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項3に係る見守りシステムは、本発明の請求項1に係る見守り装置において、前記見守り装置は、焦電センサが発熱体を検知しなくなり、信号処理部が、赤外線センサアレイが検知した頭部信号を抽出している場合には、通信部から所定のコマンドを外部に発信する手段をさらに備え、受信した通報装置があらかじめ指定されている通報先に通信網を介し通報する通報手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、赤外線センサアレイの信号から人の動きを検知し、異状を判断するようにしたため、外出などによる誤検知をできるだけ少なくすることができるようになるのに併せて、省電力化による電池駆動が可能となり、省配線および設置の自由度を広げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の見守り装置の構成図である
図2】赤外線センサアレイの構成例を示す図である
図3】見守り装置の信号処理部の構成例を示す図である
図4】焦電センサと赤外線センサアレイの検知範囲の一例を示す図である
図5】電源制御部の構成例を示す図である
図6】電源制御部の信号を時系列に示す図である
図7】見守り装置の解析部の構成例を示す図である
図8】センサチップの分布状況の一例である
図9】頭部信号の移動状況を示す一例である
図10】本発明の見守りシステムの構成図である
図11】見守り装置からの信号により通報するまでの処理フローを示すものである
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、異なる実施の形態において、同一または同様の作用効果を奏する箇所については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0017】
〔実施の形態1〕
図1は、実施の形態の見守り装置の構成を示すものである。見守り装置1は、焦電センサ10、赤外線センサアレイ11、信号処理部12、解析部13、通信部14から構成され、焦電センサ10および赤外線センサアレイ11は信号処理部12に接続され、信号処理部12は解析部13に接続される。通信部14は解析部13に接続され、通信部14からは有線、または無線により外部機器と通信を行なう構成となっている。なお、見守り装置1は屋内に設置するため、電池15を電源として駆動する。
【0018】
図2は、赤外線センサアレイ11の構成例を示したものである。赤外線センサアレイ11は複数のサーモパイル素子によるセンサチップ111が平面状に敷き詰められた状態で配置される。センサチップ111の数が多いほど高精度な計測が可能となるが、消費電力が大きくなり、かつコストが高くなることから、16×16画素程度が適当である。なお、所定の方向の検知に用いるだけであれば、センサチップ111を一次元状に敷き詰めても良い。センサチップ111は、熱電堆と呼ばれる素子群からなり、局所的な温度差あるいは温度勾配に比例した電圧を出力するものである。多数の熱電対を直列に接続して出力電圧を増加させることや、温度を空間的に平均化する。センサチップ111は、発熱体から放出している赤外線を離れた点で計り、それにより温度を求めることができる。赤外線照射によりセンサアレイ素子111の感熱部の温度上昇が起こり、熱起電力が発生することを利用している。なお、温度測定する用途に応じてセンサ前面に波長選択フィルタを付けることが望ましい。
【0019】
センサチップ111の表面にはレンズ112が実装され、視野角の設定をおこなう。レンズ112は赤外線を透過する材質が使用される。なお、後述するが、レンズ112の視野角を大きくすることにより検知範囲が広がるが、その分センサチップ111のカバーするエリアが広がってしまうことから、検知精度が下がる。一方で検知範囲を狭めることで検知精度は向上するが、居室全体をカバーするにはセンサチップ111の数を増やしたり、見守り装置1自体の数を増やす必要があり、コストアップに繋がる。このような現状を考慮したうえ、さらに実験の結果からすると、レンズ112の視野角は60度から90度までが実用的であることが確認できた。その中でも、90度以下であれば、センサの検知精度を落とすことなく運用することが可能となることが実証されている。
【0020】
複数のセンサチップ111の信号はセレクタ113によりそれぞれを分別して信号処理部12に伝達される。セレクタ113のサンプリング周期により温度変化の時系列の精度が変わり、サンプリング周期を高くすることで瞬時の温度変化を捕捉することができる。一方、サンプリング周期を下げることにより、温度変化を捕える周期は遅くなるが、消費電力を抑えることが可能となるため、見守り装置1を電池駆動させるには有効となる。サンプリング周期は人間の動きの速度に合わせて上記のトレードオフの最適値を選定することが望ましい。
【0021】
図3は、信号処理部12の構成例を示したものである。信号処理部12の電源制御部124には焦電センサ10と赤外線センサアレイ11、電池15が接続されている。焦電センサ10には電源制御部124から常時電源が供給されてあり、人体と周囲温度の温度差が約3℃ほどあると反応し、デジタルの2値の信号が電源制御部124に向けて出力される。なお焦電センサ10は赤外線センサアレイ11と比較して消費電力が小さいのが一般的であるが、電池駆動を考えるとできる限り消費電力を抑えたものが望ましい。
【0022】
また、赤外線センサアレイ11は、電源制御部124から電源供給されると、増幅器121にて信号増幅をおこなう。信号増幅のゲインは測定対象の温度を基準として可変となるようにするのが望ましい。増幅された信号はA/D変換器122によりアナログ値からデジタル値に変換する。A/D変換器122の信号は出力部123に伝達される。
【0023】
図4は焦電センサ10と赤外線センサアレイ11の位置関係を示す図である。見守り装置1を屋内の天井に設置し、焦電センサ10と赤外線センサアレイ11は下方を検知するようになっているとする。焦電センサ10の検知範囲は10dの角度に設定され、一方赤外線センサアレイ11の検知範囲はそれよりも狭い11dの角度に設定されている。焦電センサ10および赤外線センサアレイ11は数十mmの大きさであるので、実際にはほぼ同じ位置からの検知範囲を示す角度と考えてよい。焦電センサ10の検知角度10dは赤外線センサアレイ11と比較して検知精度への影響は少ないので100度以上が適当である。これは設置の高さを2mとした場合に約5m四方が検知範囲となる。一方、赤外線センサアレイ11の検知角度11dは75度程度が良く、4m弱四方が検知範囲となる。これにより、焦電センサ10のみの検知エリア10aと、焦電センサ10と赤外線センサアレイ11の双方が検知範囲となる検知エリア11aを作り出すことができる。
【0024】
図5は信号処理部12の電源制御部124の内部構成を示す図、図6は各接続ラインの信号を時系列に示す図である。電源制御部124は電池から安定した内部電源を生成するレギュレータ125と切り替えスイッチ126から構成されている。焦電センサ10にはレギュレータ125から常時安定な電源VDDが供給されている。まず、検知エリア内に人間(発熱体)が入ってくると、検知範囲の広い焦電センサ10が人体を検知して10sの信号を切り替えスイッチ126に伝達する。焦電センサ10の信号10sは人間が動いたときのみONとなることから、検知範囲に人間が居る場合は断続的な信号となる。切り替えスイッチ126では信号10sがONを検知すると、時間tr分のラッチ機能を有して赤外線センサアレイ11に対して電源126pの供給を開始する。焦電センサ10と赤外線センサアレイ11の検知範囲は約50cm異なることから、人間の移動速度を考えると赤外線センサアレイ11は人間が検知エリアに入ってきた時点では電源の供給を受けて動作可能の状態となる。切り替えスイッチ126はトランジスタで構成され、焦電センサ10の信号10sによりレギュレータ125の出力(VDD)を供給するものである。なお、電源制御部124は赤外線センサアレイ11のみの電源制御ではなく、赤外線センサアレイ11の信号を処理する信号処理部12全体の電源制御をおこなっても良い。特に赤外線センサアレイ11と信号処理部12が高精度化などが目的でパッケージングされている場合には、一緒に電源の制御をおこなうことで全体の待機電流を抑制することが可能となる。信号10sが時間tr以内に入力されないと126pはOFFとなる。なお、熱風等の外乱を避けるため、複数回10sが入力された時点で126pをONさせても良い。
【0025】
信号処理部12に接続されている赤外線センサアレイ11は、電源の供給を受けると数〜数十μVと微小な信号を出力し、増幅器121にて信号増幅をおこなう。信号増幅のゲインは測定対象の温度を基準として可変となるようにするのが望ましい。増幅された信号はA/D変換器122によりアナログ値からデジタル値に変換する。A/D変換器122の信号は出力部123に伝達され、各センサチップ111のデジタル変換値をパラレルに出力して解析部13に伝達する。なお、A/D変換器122から出力されるデジタル値は温度を示しているが、赤外線センサアレイ11のセンサチップ111および信号処理部12の部品の特性ばらつきなどがあるため、温度の絶対値とはなり得ない。そこで、赤外線センサアレイ11と信号処理部12が組みつけられた後に、校正機による温度の校正をおこなうことが必要である。
【0026】
図7に解析部13の例を示す。信号処理部12の信号は座標生成部131に入力される。座標生成部131では座標が形成され、各センサチップ111が計測した温度のデジタル値から各座標の温度分布を解析する。座標生成部131で生成された温度分布から、頭部信号抽出部132にて人間の頭部の温度分布を抽出する。また、移動している方向を方向判断部133で判断し、所定の方向に頭部信号が移動したと判断した時点でトリガー生成部134に信号を送出する。
【0027】
図8は解析部13の座標判断部131に入力されたデジタル値を視覚的にわかりやすいように座標毎に色分けをした図である。見守り装置1は例えば玄関の天井に設置され、赤外線センサアレイ11は下部方向を検知面としている。通常、玄関にいない場合には、赤外線センサアレイ11毎の座標は131−aのようにほぼ均一な温度分布の色で表示される。ここで、人間が見守り装置1の検知範囲に入ってきた場合、人間から発する熱量により、各座標の色分けが変わってくる。例えば、服を着ている部分に関しては熱量が多い部分と少ない部分がまだらに存在するので、131−bのようにぼんやりとした熱分布となる。一方、人間の頭部に関しては直接皮膚の表面温度を検知することができることから、131−cのようにほぼ頭の形のまま一様に高い温度分布となる。
【0028】
頭部信号抽出部132では予め人間の体温である36℃あたりの温度のしきい値と、さらに精巧には見守り装置1の設置した高さから計算した人間の頭部の大きさから、人間の頭部がある座標分布を抽出する。波長をλ(μm)、絶対温度をT(K)とすると、36℃の波長は以下の式1により計算される。
(式1) λ=2897/T=2897/309≒9.375μm
【0029】
一方、周囲温度が20℃の場合、λ=9.89μmであることから、A/D変換器122の分解能は両者を区別できるように設定すれば、頭部信号抽出部132では容易に人間の頭部の座標領域を抽出することができる。さらには、周囲温度にあわせてA/D変換器122の分解能を可変にすることにより、夏場や冬場などの周囲温度の違いによる誤差を極力少なくすることが可能となる。これは従来の見守り用のセンサとして使用されていた周囲温度との相対的な温度の時系列の変化をオンオフの2値でしか出力できなかった焦電センサでは到底できないものである。頭部信号抽出部132では一度捕捉した頭部信号を、利用者が見守り装置1の検知範囲を外れるまで、どの座標に存在しているかを常時追尾できる。
【0030】
図9は見守り装置1の検知範囲内を人間が移動した場合の頭部信号の動きを示したものである。見守り装置1は予め決められた向きに設置されている。これは頭部信号、つまり人間がどちらの方向に移動しているかを認識するようにするためである。例えば131−t1において、所定の方向に向かってP1からP4の方向に配置している。例えば玄関に設置された見守り装置1で、座標P4を玄関のドアの方向に設置した場合、利用者が外出する場合には131−t1、131−t2、131−t3の順に頭部信号が座標を移動する。方向判断部133ではこの移動の方向と速度と利用者が見守り装置1の検知外に出たことから、どの方向に動いたかを判断する。一つの例を示すと、各座標フレームにおける一番温度の高い部分を頭部信号として捕捉し、所定の時系列の頭部信号データから回帰曲線を生成する。さらに回帰曲線と頭部信号からの離れている距離の逆数を重みとして、重みづけ平均を求める。重み付け平均と予め設定したしきい値を比較することで頭部信号の移動の方向と量を判断する。なお、例えば座標の移動が131−t2などで停滞した場合の処理については以降後述する。
【0031】
方向判断部133は所定の方向に頭部信号が移動したと判断した時点でトリガー生成部134に信号を送出する。例えば、図4において検知エリア11aを通過したと判断した場合などである。トリガー生成部134では方向判断部133の信号によりステータスをオンとして通信部14に伝達する。通信部14はこの情報に関してコマンドを生成して外部に送出する。玄関に見守り装置1を設置した場合には、利用者が外出したことを示すコマンドとなる。利用者が外出した場合、焦電センサ10の検知エリアである10aも外れるので、図6において焦電センサ10の信号10sもOFFになることから、電源制御部124は赤外線センサアレイ11への電源供給126pを時間tr後にOFFとする。
【0032】
図10には実際に見守りをおこなう見守りシステムの実施の形態を示す。見守り装置1は異常が発した場合などに通報装置2に対して通信部14を介してその旨を伝える通信をおこなう。通信手段としては無線でも良いし、有線でも良い。通報装置2は公衆電話回線網に接続され、コールセンターなど予め指定されている通報先に通報することができる。公衆電話回線網としてはアナログ電話回線やひかり回線3や、携帯電話などのモバイル通信回線網4など、さまざまな手段が考えられる。よって通報装置2は扱うデータや公衆電話回線網にあわせたものを選択することが望ましい。見守り装置1が異常を検知して通報装置2が通報するまでの流れを図11に示す、
【0033】
図11では見守り装置1の動作についてのフローを示している。見守り装置1は電池により電源が供給されると(S101)、電源制御部124の切り替えスイッチ126を一旦OFFにして赤外線センサアレイ11への電源供給を中止する(S102)。その後焦電センサ10により人間が検知エリアに入ってくるかを監視し(S103)、人間を検知すると切り替えスイッチ126をONにして赤外線センサアレイ11に電力を供給して動作可能状態とする(S104)。頭部信号抽出部132にて人間の頭部を捕捉し(S105)、焦電センサ10が人間を検知している間、頭部信号を追尾する(S106)。頭部信号の追尾が終了し、かつ焦電センサ10が人間を検知しなくなったら(S108)、その旨を通信部14に連絡して(S109)、通報装置2に伝達する(S110)。
【0034】
一方、利用者が見守り装置1の検知範囲内で倒れた場合を想定する。その場合、頭部信号抽出部132が捕捉した頭部信号が、座標生成部131の1つの座標で停滞すると共に、焦電センサ10の信号はOFFとなってしまう。そこで頭部信号を追尾しているときに(S106)、頭部信号は残っているが、焦電センサ10の信号がOFFになった場合は、検知エリアにて人間が倒れた可能性があることから、同様に通信部14に連絡して(S109)、通報装置2に警報として伝達する(S110)。この場合、一時的に検知エリア内で人間の動きがなくなった可能性があるので、電源制御部124の切り替えスイッチ126はONのままとして、赤外線センサアレイ11を継続して動作させることが望ましい。つまり、赤外線センサアレイ11の信号を焦電センサ10の信号よりも優先させる論理を電源制御部124に盛り込む。これにより、異常が発生したと疑れる場合にも安全に対応することが可能となる。
【0035】
このように、複数のサーモパイルをマトリクス状に多画素化した赤外線センサアレイと、赤外線センサアレイより広角な検出範囲をもつ焦電センサと、赤外線センサアレイと焦電センサからの信号を処理する信号処理部とからなり、信号処理部は、焦電センサが検知している期間に赤外線センサアレイに電池から電源を供給する電源制御手段を有して、解析部は人体の頭部から発する熱量を赤外線センサアレイが検知して頭部信号を抽出する手段と、信号処理部の電源制御手段が赤外線アレイに電源を供給している期間に頭部信号の座標位置を解析するようにしていることから、必要なときにだけ赤外線センサアレイを駆動させることができ、消費電力が大きい赤外線センサアレイによる電力消費を抑えることが可能となり、電池での駆動が可能な見守り装置を構築することができる。また、人間の頭部を発する熱量の波長から抽出し、その動く方向を判断することにより、従来高齢者の見守りなどに使用されていた焦電センサでは困難であった、どのように動いているのか、どの方向に動いているのか、などの人間の詳しい動きを判断することが可能となり、利用者が動かない状態なのか、利用者が検知範囲に存在しない状態なのかを判別も容易となる。またカメラ画像のようなプライバシーの侵害を起こすことがないシステムとなる。
【0036】
本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は、上述した実施の形態の構成に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても本発明に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0037】
1:見守り装置、10:焦電センサ、11:赤外線センサアレイ、12:信号処理部、13:解析部、14:通信部、15:電池、2:通報装置、3:公衆回線網、4:モバイル通信回線網
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11