【実施例】
【0034】
以下、実施例及び比較例を挙げて、前記実施形態を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<合成例1>
[アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−1)の合成]
撹拌装置、空気導入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、(a−1)成分として、アロファネート基含有ポリイソシアネート(デスモジュールXP2580、住化バイエルウレタン(株)製、イソシアネート基含有率20.0%、以下、「XP2580」という。一般式(4)で表されるアロファネート基含有ポリイソシアネート(a−1)においてR
2がヘキサキサメチレン基、R
3がブチル基である化合物)43部、(a−2)成分としてポリオキシエチレンモノアクリレート(オキシエチレン基の繰り返し単位数4.5、水酸基価202mgKOH/g、以下、「PEG200MA」という。)57部、ジブチルスズジラウレート(以下、「DBTDL」という。)0.02部、ハイドロキノンモノメチルエーテル(以下、「MEHQ」という。)0.04部を投入した。なお、この時のイソシアネート基/水酸基の当量比は1.0である。
次に、空気を吹き込みながら内温を60℃に保持して5時間反応させた後、JIS K 7301の方法で、イソシアネート基含有率が0.1%以下となり、イソシアネート基が水酸基とほぼ全て反応してウレタン結合が形成されたことを確認して、アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−1)を100部得た。
得られたウレタンアクリレート(A−1)は、一般式(1)においてR
1及びR
4が水素原子、R
2がヘキサメチレン基、R
3がブチル基、A
1O及びA
2Oがオキシエチレン基、並びにm及びnが4.5である化合物であり、25℃における粘度は下表1に示す通り10Pa・s、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量(標準ポリエチレングリコール換算)は1000であった。
【0035】
<合成例2>
[アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−2)の合成]
撹拌装置、空気導入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、(a−1)成分として、合成例1で使用したXP2580を37部、(a−2)成分としてポリオキシエチレンモノアクリレート(オキシエチレン基の繰り返し単位数6、水酸基価165mgKOH/g、以下、「PEG260MA」という。)を63部、DBTDLを0.02部、MEHQを0.04部投入した。なお、この時のイソシアネート基/水酸基の当量比は1.0である。
次に、空気を吹き込みながら内温を60℃に保持して5時間反応させた後、JIS K 7301の方法で、イソシアネート基含有率が0.1%以下となり、イソシアネート基が水酸基とほぼ全て反応してウレタン結合が形成されたことを確認して、アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−2)を100部得た。
得られたウレタンアクリレート(A−2)は、一般式(1)においてR
1及びR
4が水素原子、R
2がヘキサメチレン基、R
3ブチル基、A
1O及びA
2Oがオキシエチレン基、並びにm及びnが6である化合物であり、25℃における粘度は下表1に示す通り9Pa・s、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量は1400であった。
【0036】
<合成例3>
[アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−3)の合成]
撹拌装置、空気導入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、(a−1)成分として、合成例1で使用したXP2580を54部、(a−2)成分としてポリオキシエチレンモノアクリレート(オキシエチレン基の繰り返し単位数2、水酸基価326mgKOH/g、以下、「PEG90MA」という。)を46部、DBTDLを0.02部、MEHQを0.04部投入した。なお、この時のイソシアネート基/水酸基の当量比は1.0である。
次に、空気を吹き込みながら内温を60℃に保持して5時間反応させた後、JIS K 7301の方法で、イソシアネート基含有率が0.1%以下となり、イソシアネート基が水酸基とほぼ全て反応してウレタン結合が形成されたことを確認して、アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−3)を100部得た。
得られたウレタンアクリレート(A−3)は、一般式(1)においてR
1及びR
4が水素原子、R
2がヘキサメチレン基、R
3がブチル基、A
1O及びA
2Oがオキシエチレン基、並びにm及びnが2である化合物であり、25℃における粘度は下表1に示す通り12Pa・s、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量は800であった。
【0037】
<合成例4>
[アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−4)の合成]
撹拌装置、空気導入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、(a−1)成分として、合成例1で使用したXP2580を33部、(a−2)成分としてポリオキシエチレンモノアクリレート(オキシエチレン基の繰り返し単位数8、水酸基価129mgKOH/g、以下、「PEG360MA」という。)を67部、DBTDLを0.02部、MEHQを0.04部投入した。なお、この時のイソシアネート基/水酸基の当量比は1.0である。
次に、空気を吹き込みながら内温を60℃に保持して5時間反応させた後、JIS K 7301の方法で、イソシアネート基含有率が0.1%以下となり、イソシアネート基が水酸基とほぼ全て反応してウレタン結合が形成されたことを確認して、アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−4)を100部得た。
得られたウレタンアクリレート(A−4)は、一般式(1)においてR
1及びR
4が水素原子、R
2がヘキサメチレン基、R
3がブチル基、A
1O及びA
2Oがオキシエチレン基、並びにm及びnが8である化合物であり、25℃における粘度は下表1に示す通り7Pa・s、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量は1800であった。
【0038】
<合成例5>
[アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−5)の合成]
撹拌装置、空気導入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、(a−1)成分として、アロファネート基含有ポリイソシアネート(デスモジュールXP2565、住化バイエルウレタン(株)製、イソシアネート基含有率12.0%、以下、「XP2565」という。一般式(4)で表されるアロファネート基含有ポリイソシアネート(a−1)においてR
2が一般式(3)で表される脂環式炭化水素基、R
3がブチル基である化合物)50部、(a−2)成分としてPEG260MAを50部、DBTDLを0.02部、MEHQを0.04部投入した。なお、この時のイソシアネート基/水酸基の当量比は1.0である。
次に、空気を吹き込みながら内温を60℃に保持して5時間反応させた後、JIS K 7301の方法で、イソシアネート基含有率が0.1%以下となり、イソシアネート基が水酸基とほぼ全て反応してウレタン結合が形成されたことを確認して、アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−5)を100部得た。
得られたウレタンアクリレート(A−5)は、一般式(1)においてR
1及びR
4が水素原子、R
2が一般式(3)で表される脂環式炭化水素基、R
3がブチル基、A
1O及びA
2Oがオキシエチレン基、並びにm及びnが6である化合物であり、25℃における粘度は下表1に示す通り50Pa・s、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量は1300であった。
【0039】
<合成例6>
[アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−6)の合成]
撹拌装置、空気導入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、(a−1)成分として、合成例5で使用したXP2565を43部、(a−2)成分としてPEG360MAを57部、DBTDLを0.02部、MEHQを0.04部投入した。なお、この時のイソシアネート基/水酸基の当量比は1.0である。
次に、空気を吹き込みながら内温を60℃に保持して5時間反応させた後、JIS K 7301の方法で、イソシアネート基含有率が0.1%以下となり、イソシアネート基が水酸基とほぼ全て反応してウレタン結合が形成されたことを確認して、アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−6)を100部得た。
得られたウレタンアクリレート(A−6)は、一般式(1)においてR
1及びR
4が水素原子、R
2が一般式(3)で表される脂環式炭化水素基、R
3がブチル基、A
1O及びA
2Oがオキシエチレン基、並びにm及びnが8である化合物であり、25℃における粘度は下表1に示す通り16Pa・s、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量は1650であった。
【0040】
【表1】
【0041】
<比較合成例1>
[アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A’−1)の合成]
撹拌装置、空気導入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、(a−1)成分として、合成例1で使用したXP2580を63部、(a’−2)成分として2−ヒドロキシエチルアクリレート(オキシエチレン基の繰り返し単位数1、水酸基価483mgKOH/g、以下、「HEA」という。)を37部、DBTDLを0.02部、MEHQを0.04部投入した。なお、この時のイソシアネート基/水酸基の当量比は1.0である。
次に、空気を吹き込みながら内温を60℃に保持して5時間反応させた後、JIS K 7301の方法で、イソシアネート基含有率が0.1%以下となり、イソシアネート基が水酸基とほぼ全て反応してウレタン結合が形成されたことを確認して、アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A’−1)を100部得た。
得られたウレタンアクリレート(A’−1)は、一般式(1)においてR
1及びR
4が水素原子、R
2がヘキサメチレン基、R
3がブチル基、A
1O及びA
2Oがオキシエチレン基、並びにm及びnが1である化合物であり、25℃における粘度は下表2に示す通り11Pa・s、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量は700であった。
【0042】
<比較合成例2>
[アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A’−2)の合成]
撹拌装置、空気導入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、(a−1)成分として、合成例4で使用したXP2565を38部、(a’−2)成分としてポリオキシエチレンモノアクリレート(オキシエチレン基の繰り返し単位数11、水酸基価98mgKOH/g、以下、「PEG480MA」という。)を62部、DBTDLを0.02部、MEHQを0.04部投入した。なお、この時のイソシアネート基/水酸基の当量比は1.0である。
次に、空気を吹き込みながら内温を60℃に保持して5時間反応させた後、JIS K 7301の方法で、イソシアネート基含有率が0.1%以下となり、イソシアネート基が水酸基とほぼ全て反応してウレタン結合が形成されたことを確認して、アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A’−2)を100部得た。
得られたウレタンアクリレート(A’−2)は、一般式(1)においてR
1及びR
4が水素原子、R
2が一般式(3)で表される脂環式炭化水素基、R
3がブチル基、A
1O及びA
2Oがオキシエチレン基、並びにm及びnが11である化合物であり、25℃における粘度は下表2に示す通り9Pa・s、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量は2100であった。
【0043】
<比較合成例3>
[ウレタンアクリレート(A’−3)の合成]
撹拌装置、空気導入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、(a’−1)成分として、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート(デュラネートTPA−100、旭化成ケミカルズ(株)製、イソシアネート基含有率23.1%、以下、「TPA−100」という。)を39部、(a−2)成分としてPEG200MAを61部、DBTDLを0.02部、MEHQを0.04部投入した。なお、この時のイソシアネート基/水酸基の当量比は1.0である。
次に、空気を吹き込みながら内温を60℃に保持して5時間反応させた後、JIS K 7301の方法で、イソシアネート基含有率が0.1%以下となり、イソシアネート基が水酸基とほぼ全て反応してウレタン結合が形成されたことを確認して、ウレタンアクリレート(A’−3)を100部得た。
得られたウレタンアクリレート(A’−3)は、一分子中に繰り返し単位数が4.5のオキシエチレン基を有するがアロファネート基は有さず、上記一般式(1)に含まれない化合物であり、25℃における粘度は下表2に示す通り16Pa・s、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量は2300であった。
【0044】
【表2】
【0045】
<実施例1〜7、比較例1〜6>
[光硬化型ウレタン(メタ)アクリレート組成物の調製]
合成例1で得た(A−1)10部、(メタ)アクリロイル基含有化合物としてペンタエリスリトールテトラアクリレート(式(2)で表される(メタ)アクリロイル基含有化合物において、R
5が水素原子、Xが炭素数5の4価の脂肪族多価アルコールであるペンタエリスリトールの水酸基を除いた基、s=4、t=0である化合物)10部、光重合開始剤として1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184、BASF社製、以下、「Irgacure184」という。)0.6部、添加剤としてポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(BYK−3570、ビックケミー・ジャパン(株)製、以下、「BYK−3570」という。)0.04部、有機溶剤としてメチルエチルケトン(以下、「MEK」という。)30部を均一に混ぜ、樹脂固形分40%の光硬化型ウレタンアクリレート組成物1を調製した。
同様に、合成例1〜6で得た(A−1)〜(A−6)、比較合成例1〜3で得た(A’−1)〜(A’−3)、表3に示す(B)成分、Irgacure184、BYK−3570、MEKを用い、表4及び表5に示す割合(質量部)で混ぜ、光硬化型ウレタン(メタ)アクリレート組成物2〜14を調製した。
【0046】
【表3】
【0047】
<光硬化型ウレタン(メタ)アクリレート組成物の硬化膜層を有するフィルムの作製>
易接着PETフィルム(コスモシャインA4300、膜厚100μm、東洋紡績(株)製)上に、上記で得られた光硬化型樹脂組成物を、乾燥膜厚で25μmとなるよう塗工し、80℃で1分間乾燥して有機溶剤を蒸発させた。次に、紫外線照射装置(ヘレウス・ノーブルライト・フュージョン・ユーブイ(株)製、光源:Hバルブ)を用いて積算光量500mJ/cm
2の紫外線を照射することで、光硬化型樹脂組成物の硬化膜層を有するフィルムを得た。作製したフィルムについて下記評価を実施した結果を、下表4及び5に示す。
【0048】
<密着性>
JIS K 5600に準拠し、作製した硬化膜層を有するフィルムを、カッターナイフで1mm四方の碁盤目を100個作製し、市販のセロハンテープを表面に密着させた後に一気に剥がしたとき、剥離せずに残った碁盤目の個数を、下記の基準により判定した。
◎:残存した碁盤目の個数が100個
○:残存した碁盤目の個数が90〜99個
△:残存した碁盤目の個数が60〜89個
×:残存した碁盤目の個数が60個未満
<鉛筆硬度>
JIS K 5600に準拠し、作製した硬化膜層を有するフィルムを、45°の角度で750gの荷重をかけ、多様な硬度の鉛筆で引っ掻き、硬化膜に生じた傷の有無を目視にて確認することで判定した。
【0049】
<自己修復性>
作製した硬化膜層を有するフィルムに、23℃、60%RHの条件下、真鍮ブラシにより1kgの荷重をかけて10往復擦ったとき、硬化物の表面状態を目視によって下記の基準により判定した。
◎:傷が3分以内に復元する。または傷がつかない。
○:3分後に傷が認められるが、60℃恒温槽内に1分間保持することにより復元する。
×:3分後に傷が認められ、60℃恒温槽内に1分間保持しても傷が復元しない。
<耐屈曲性>
JIS K 5600に準拠し、作製した硬化膜層を有するフィルムの硬化膜面が外側になるように円筒に巻きつけたときの、硬化膜の状態を下記基準により判定した。
○:直径1mmの円筒でクラックが生じない。
△:直径1mmの円筒ではクラックが生じるが、直径4mmの円筒ではクラックが生じない。
×:直径4mmの円筒でクラックが生じる。
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
【0052】
上表4に示したとおり、本発明の実施例1〜8の光硬化型樹脂硬化物は、一旦付いた傷が経時的に復元して消失する特性を有し、鉛筆硬度、耐屈曲性、密着性に優れていた。
他方、上表5の比較例1及び2に示すように、一般式(1)においてm及びnが本発明の範囲を外れる化合物を用いた場合、傷復元性及び硬度を両立することができなかった。比較例3のようにアロファネート基を有しない化合物を用いた場合、傷復元性、耐屈曲性を満足しなかった。また、比較例4及び5に示すように一般式(2)で表される化合物の含有量が本発明の範囲を外れる場合、密着性、鉛筆硬度、耐屈曲性のいずれかを満足しなかった。
また、比較例6に示すようにアロファネート基含有ウレタンアクリレート単独では自己修復性が十分でなく、鉛筆硬度が劣っていた。