特許第6241727号(P6241727)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241727
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】ウレタン(メタ)アクリレート組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 299/06 20060101AFI20171127BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   C08F299/06
   C08G18/67
【請求項の数】1
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-226283(P2013-226283)
(22)【出願日】2013年10月31日
(65)【公開番号】特開2015-86300(P2015-86300A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162628
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 博
(74)【代理人】
【識別番号】100119286
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 操
(72)【発明者】
【氏名】楠本 光司
(72)【発明者】
【氏名】田中 将啓
(72)【発明者】
【氏名】石川 正和
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−111876(JP,A)
【文献】 特開2009−074070(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/100024(WO,A2)
【文献】 特開2006−083273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 299/06
C08G 18/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)及び(B)成分を含有し、(A)成分/(B)成分の質量比が40/60〜60/40である、ウレタン(メタ)アクリレート組成物。
(A)成分
下記一般式(1)で表される、アロファネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート
【化1】
(式中、R及びRは、それぞれ同一でも異なっていてもよく水素原子又はメチル基、Rは炭素数1〜20の2価の脂肪族、脂環式、又は芳香族炭化水素基、Rは炭素数1〜20の脂肪族、脂環式、又は芳香族炭化水素基、AO及びAOは、それぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素数2〜4のオキシアルキレン基、m及びnは、同一でも異なっていてもよく、オキシアルキレン基の繰り返し単位数を表す2〜10の数である。)
(B)成分
下記一般式(2)で表される、(メタ)アクリロイル基含有化合物
【化2】
(式中、Rは水素原子又はメチル基、Xは炭素数3〜10の脂肪族多価アルコールの水酸基を除いた残基を示し、s+tは脂肪族多価アルコールの水酸基の数を示す3〜6の数であり、s=3〜6、t=0又は1である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己修復性を有し、優れた表面硬度、耐屈曲性を兼ね備えた硬化膜を形成することのできる、ウレタン(メタ)アクリレート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチックは、軽量で透明性、成形加工性に優れ安価であることから、種々の分野で使用されている。一方でプラスチックは、一般的に柔軟で硬度が低く、傷がつきやすいため、表面にコーティングを施す場合が多い。特に、表面を硬質化し傷がつきにくくするハードコートが一般的に普及している。ハードコートの材質は硬く、傷つきにくい特性が必要となるが、硬い材料とするほど柔軟性に乏しくなる傾向がある。
【0003】
架橋密度を高め、表面硬度を高めたハードコート層を形成する手法として、例えばペンタエリスリトールトリアクリレート等の分子内に少なくとも2以上の(メタ)アクリロイル基と水酸基を有する多官能(メタ)アクリレートと、イソホロンジイソシアネート等のポリイソシアネートを反応させた多官能ウレタン(メタ)アクリレートを含有する樹脂組成物を用いる方法が知られている(特許文献1)。この方法によれば、高硬度化による耐擦傷性は達成されるものの、柔軟性は乏しく耐屈曲性が十分でないために加工性が低下するという問題がある。
【0004】
他方、塗膜に自己修復性を付与し耐擦傷性を高める技術も知られている。ここで自己修復性とは、擦過傷もしくは圧力によるへこみ傷に対して、一時的には他の平面と比べて傷として存在するが、その塗膜の弾性により経時的に傷を修復する機能のことをいう。最近では、塗膜に傷をつけないための塗膜の硬質化とともに、自己修復性による傷の回復性を付与する技術があり、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体とのウレタンアクリレート、及びペンタエリスリトールトリアクリレートを含有する樹脂組成物を用いる方法(特許文献2)が知られている。この方法によれば塗膜は高い硬度を示すものの、傷の復元性試験では、100℃で10分間の加熱が行われている。傷の修復のためとはいえこのような加熱を行えば、熱に弱いプラスチック基材であれば変形を来す恐れがあることから、当該方法は、自己修復性の面で問題があると考えられる。また、1分子中に2以上のヒドロキシル基を有するポリオールと、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのポリイソシアネートと2‐ヒドロキシエチルアクリレートを反応させたウレタン(メタ)アクリレートを用いる方法(特許文献3)も知られている。この方法では自己修復性の発現は認められるものの、硬度については満足いくものではない。また、2−ヒドロキシエチルアクリレートと、ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート変性ポリイソシアネートとのウレタンアクリレートを含有する樹脂組成物を用いる方法(特許文献4)が知られている。この方法では、硬度についての検討はあるものの更なる向上が必要であり、また自己修復性を有していない。さらに、ペンタエリスリトールトリアクリレートと2−ヒドロキシエチルアクリレートと、ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート変性ポリイソシアネートとのウレタンアクリレートを含有する樹脂組成物を用いる方法(特許文献5)が知られている。この方法では、硬化物の可撓性、耐擦傷性について検討されているが、硬度や自己修復性は満足いくものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−113648号公報
【特許文献2】WO2012/086551号公報
【特許文献3】特開2013−184988号公報
【特許文献4】特開2012−052019号公報
【特許文献5】特開2006−083273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、自己修復性と優れた硬度を有し、各種製品の表面の傷付きを防止し、かつ良好な耐屈曲性を示す硬化膜を与えることができる、ウレタン(メタ)アクリレート組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定構造のウレタン(メタ)アクリレートと特定構造の(メタ)アクリロイル基含有化合物を、特定の比率で組み合わせたウレタン(メタ)アクリレート組成物が、上記目的を達成することを見出した。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1] 下記(A)及び(B)成分を含有し、(A)成分/(B)成分の質量比が40/60〜60/40である、ウレタン(メタ)アクリレート組成物。
(A)下記一般式(1)で表される、アロファネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、R及びRは、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子又はメチル基、Rは炭素数1〜20の2価の脂肪族、脂環式、又は芳香族炭化水素基、Rは炭素数1〜20の脂肪族、脂環式、又は芳香族炭化水素基、AO及びAOは、それぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素数2〜4のオキシアルキレン基、m及びnは、同一でも異なっていてもよく、オキシアルキレン基の繰り返し単位数を表す2〜10の数である。)
(B)下記一般式(2)で表される、(メタ)アクリロイル基含有化合物
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、Rは水素原子又はメチル基、Xは炭素数3〜10の脂肪族多価アルコールの水酸基を除いた残基を示し、s+tは脂肪族多価アルコールの水酸基の数を示す3〜6の数であり、s=3〜6、t=0又は1である。)
【発明の効果】
【0012】
本発明のウレタン(メタ)アクリレート組成物を塗布して形成される硬化膜は、硬度が高いうえに自己修復性にすぐれ、傷が発生しても短時間で修復され、受傷前の表面に復元しやすい。また、耐屈曲性にも優れるため、曲面への施行にもよくなじみ、クラックの発生を来すことがない。さらに、基材への密着性がよいため、合成樹脂成形品をはじめとする各種製品の表面被覆剤として極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書中で記載する「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを表す用語である。
<(A)成分:アロファネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート>
上記一般式(1)で表される本発明のアロファネート基含有ウレタン(メタ)アクリレートにおいて、R及びRは水素原子又はメチル基であるが、硬化速度の観点から水素原子が好ましい。これらR及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。Rは炭素数1〜20の2価の脂肪族、脂環式又は芳香族炭化水素である。
脂肪族炭化水素基としては、テトラメチレン基、カルボキシメチルペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等が挙げられる。脂環式炭化水素基としては、メチルシクロへキシレン基、シクロヘキサンジイルビスメチレン基、下記一般式(3)で表される基等が挙げられる。
【0014】
【化3】
【0015】
芳香族炭化水素基としては、トリレン基、キシリレン基等が挙げられる。Rは自己修復性と硬度がより高い物性で両立する観点から、脂肪族又は脂環式炭化水素基が好ましく、直鎖状の脂肪族炭化水素基がより好ましい。
【0016】
は炭素数1〜20の脂肪族、脂環式、又は芳香族炭化水素基である。脂肪族炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基等が挙げられる。脂環式炭化水素基としては、シクロぺンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ベンジル基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数2〜6の直鎖状の脂肪族炭化水素基がより好ましい。
【0017】
O及びAOは炭素数2〜4の直鎖又は分岐状のオキシアルキレン基であり、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシテトラメチレン基等が挙げられる。これらの中でも、自己修復性と硬度の観点から、オキシエチレン基が好ましい。これらAO及びAOは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
m及びnは、オキシアルキレン基の繰り返し単位数を表す2〜10の数であり、3〜6の範囲であることが好ましい。これらm及びnは、それぞれ同一でも異なっていてもよく、オキシアルキレン基は、それぞれ二種類以上をランダム状やブロック状に含んでいてもよい。m又はnが2未満であると傷が修復せずに傷跡が残りやすく、かつ、耐屈曲性に劣る。他方、m又はnが10を超えると傷が修復せずに傷跡が残りやすくなる。上記の範囲であることにより、後述する一般式(2)で表される(メタ)アクリロイル基含有化合物と組合せることで良好な自己修復性、硬度、耐屈曲性を得ることができる。
【0018】
本発明のアロファネート基含有ウレタン(メタ)アクリレートは、具体的には、下記一般式(4)で表されるアロファネート基含有ポリイソシアネート(a−1)と、下記一般式(5)で表されるポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート(a−2)を反応させることによって得られる化合物である。
【0019】
【化4】
【0020】
(式中、Rは炭素数1〜20の2価の脂肪族、脂環式又は芳香族炭化水素基、Rは炭素数1〜20の脂肪族、脂環式、又は芳香族炭化水素基である。)
【0021】
【化5】
【0022】
(式中、Rは上記一般式(1)におけるR又はRであり、水素原子又はメチル基、AOは上記一般式(1)におけるAO又はAOであり、炭素数2〜4のオキシアルキレン基、pは上記一般式(1)におけるm又はnであり、オキシアルキレン基の繰り返し単位数を表す2〜10の数である。)
【0023】
前記アロファネート基含有ポリイソシアネート(a−1)は、上記一般式(4)で表される化合物であれば、特に限定されない。一般的には公知の方法に従って、脂肪族、脂環式、又は芳香族炭化水素基を有するモノアルコールと、該モノアルコール中の水酸基当量に対してイソシアネート当量が過剰となる量の脂肪族、脂環式、又は芳香族ジイソシアネートを、2−エチルヘキサン酸ジルコニウム等のアロファネート化触媒の存在下でアロファネート化反応させることによって得られる化合物である。
一般に入手可能な市販品としては、例えば、上記一般式(1)におけるRがヘキサメチレン基である住化バイエルウレタン(株)製「デュラネートXP2580」、旭化成ケミカルズ(株)製「LVA−209」、「LVA−210」、「VA−211」や、Rが一般式(3)で表される脂環式炭化水素基である住化バイエルウレタン(株)製「デスモジュールXP2565」等が挙げられる。これら(a−1)成分は、単独でも二種類以上併用してもよい。
【0024】
前記ポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート(a−2)は、上記一般式(5)で表される化合物であれば特に限定されず、一般的には公知の方法に従って、(メタ)アクリル酸又は水酸基含有(メタ)アクリレートに、三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体等の触媒の存在下で、炭素数2〜4のアルキレンオキサイド又はテトラヒドロフランを開環重合させることによって得られる化合物である。
具体的な化合物としては、例えば、ポリオキシエチレン(平均付加モル数2〜10)モノ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(平均付加モル数2〜10)モノ(メタ)アクリレート、ポリオキシブチレン(平均付加モル数2〜10)モノ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン(平均付加モル数2〜10)モノ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン・ポリオキシテトラメチレン(平均付加モル数2〜10)モノ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン・ポリオキシテトラメチレン(平均付加モル数2〜10)モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら(a−2)成分は、単独でも二種類以上を併用してもよい。
【0025】
本発明のアロファネート基含有ウレタン(メタ)アクリレートは、前記アロファネート基含有ポリイソシアネート(a−1)と前記ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート(a−2)をウレタン化反応させることによって得られる化合物である。
(a−1)成分と(a−2)成分の配合比率は、(a−1)成分中のイソシアネート基1当量に対して(a−2)成分の水酸基が通常0.1〜10当量であり、0.5〜5当量が好ましく、0.9〜1.2当量がより好ましい。
反応温度は通常10〜150℃であり、30〜120℃が好ましく、40〜80℃がより好ましい。反応の終点はイソシアネート基を示す2270cm−1の赤外吸収スペクトルの消失や、JIS K 7301に記載の方法でイソシアネート基の含有量を求めることで確認することができる。後者の方法では、イソシアネート化合物の含有量を算出し、反応生成物の質量の0.5質量%以下、好ましくは0.1質量%以下になった時を終了とする。
なお、前記ウレタン化反応では反応速度を促進する目的としてジブチルスズジラウレート等のスズ化合物や、トリエチルアミン等のアミンを触媒として用いてもよい。
【0026】
ウレタン化反応は、触媒、重合禁止剤の存在下で行われる。ウレタン化触媒は、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、塩化第一スズ、塩化第二スズ、テトラ−n−ブチルスズ、トリ−n−ブチルスズアセテート、n−ブチルスズトリクロライド、トリメチルスズハイドロオキシド、ジメチルスズジクロライド、ジブチルスズアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジエチルヘキソエート、ジブチルスズサルファイト、オクテン酸スズ等が挙げられる。これらの触媒を使用する場合、原料の総質量に対し10〜1000ppmとなる範囲で使用するのが好ましい。
【0027】
重合禁止剤の例としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、モノ−tert−ブチルヒドロキノン、カテコール、p−tert−ブチルカテコール、2,6−ジ−tert−ブチル−m−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、ピロガロール、β−ナフトール等のフェノール類、ベンゾキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン、p−トルキノン、p−キシロキノン等のキノン類;ニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、2−メチル−2−ニトロソプロパン、α−フェニル−tert−ブチルニトロン、5,5−ジメチル−1−ピロリン−1−オキシド等のニトロ化合物又はニトロソ化合物;クロラニル−アミン、ジフェニルアミン、ジフェニルピクリルヒドラジン、フェノール−α−ナフチルアミン、ピリジン、フェノチアジン等のアミン類;ジチオベンゾイルスルフィド、ジベンジルテトラスルフィド等のスルフィド類等が挙げられる。これらの重合禁止剤は、一種のみを用いてもよく、また、二種以上を混合して用いてもよい。
重合禁止剤の使用量は、原料の総質量に対して、10〜10000ppm(質量基準)が好ましく、より好ましくは100〜1000ppmである。
ウレタン化反応における反応温度は20〜90℃が好ましく、反応時間は1〜30時間が好ましい。
また、ウレタン化反応において有機溶剤を使用しても良い。有機溶剤の例としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤が挙げられる。
【0028】
<(B)成分:(メタ)アクリロイル基含有化合物>
本発明に用いる(メタ)アクリロイル基含有化合物((B)成分)は前記一般式(2)で表され、該式において、Rは水素原子又はメチル基である。
Xは炭素数3〜10の脂肪族多価アルコールの水酸基を除いた残基を示し、s+tは脂肪族多価アルコールの水酸基の数を示し3〜6の数である。脂肪族多価アルコールとして、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、またアラビトール、キシリトール、リビトールなどのペンチトール、ソルビトール、マンニトールなどのヘキシトールなどであり、好ましくはトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールである。
(メタ)アクリロイル基の数を表すsは3〜6の範囲、好ましくは4〜6の数であり、(メタ)アクリル酸とエステル結合を形成していない水酸基の数を表すtは0又は1であり、この範囲にある(メタ)アクリロイル基含有化合物を用いることで硬化物の架橋密度が高くなり、得られる硬化膜の強度が向上するとともに、硬化膜の自己修復性を両立することが可能となる。
【0029】
(メタ)アクリロイル基含有化合物として、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジグリセリントリ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、トリグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、トリグリセリンペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アラビトール、キシリトール、及びリビトールなどのペンチトールのテトラアクリレート又はペンタアクリレート、ソルビトールやマンニトールなどのヘキシトールのペンタアクリレート又はヘキサアクリレートなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、又は2種以上を組み合わせてもよい。その中でも、優れた硬度の観点から、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのうちの、1種又は2種以上が好ましく用いられる。
【0030】
<ウレタン(メタ)アクリレート組成物>
本発明のウレタン(メタ)アクリレート組成物は、前記の(A)成分:アロファネート基含有ウレタン(メタ)アクリレートと、(B)成分:(メタ)アクリロイル基含有化合物を含有する組成物である。
(A)成分と(B)成分の比率は、(A)成分/(B)成分の質量比が40/60〜60/40であり、45/55〜55/45が好ましい。この比率にあるウレタン(メタ)アクリレート組成物は、自己修復性、硬度、耐屈曲性に優れた硬化塗膜を得ることができる。
本発明のウレタン(メタ)アクリレート組成物は、各種重合開始剤を配合して重合性ウレタン(メタ)アクリレート組成物とすることができる。
【0031】
重合開始剤としては、例えば光硬化を目的とした場合は、光重合開始剤が配合される。光重合開始剤の例としては、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、o−ベンゾイルメチルベンゾエート、アセトフェノン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、エチルアントラキノン、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(例えば、BASF社製のイルガキュア184)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(例えば、BASF社製のダロキュア1173)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(例えば、BASF社製のイルガキュア651)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキシド、メチルベンジルホルメートなどがある。
本発明のウレタン(メタ)アクリレート組成物には、上記の他にも、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、有機溶剤やレベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、着色剤などを適宜配合することができる。
【0032】
本発明のウレタン(メタ)アクリレート組成物は、(A)成分、(B)成分、及び必要に応じて重合開始剤のほか、種々の添加剤を加え、常法により均一に混合することによって得られる。
本発明のウレタン(メタ)アクリレート組成物を基材へ塗工する方法は、公知の方法で行うことができ、ディッピングコート、スプレーコート、フローコート、シャワーコート、ロールコート、スピンコート、刷毛塗りなどが挙げられる。これらコーティングにおける塗膜の厚さは、硬化後、通常0.1〜400μmであり、好ましくは、1〜200μmである。
本発明のウレタン(メタ)アクリレート組成物は、熱線、紫外線、赤外線、可視光線、X線、放射線、電子線などの活性エネルギー線を照射することにより、架橋し、硬化膜を形成させることができる。特に光硬化では高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等が使用することができ、照射する雰囲気は、空気中でもよいし、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中でもよい。
【0033】
本発明のウレタン(メタ)アクリレート組成物は、塗料、コーティング剤等として使用される。携帯電話筐体、パソコン筐体、オーディオ機器やOA機器等のプラスチック製品、タッチパネル、液晶画面等の電子材料部品、冷蔵庫、掃除機、電子レンジ等の家電製品、階段、床、机、椅子、ダンス、その他の家具等の木工製品、自動車の内外装、サングラスや矯正用メガネレンズ等の光学レンズの保護層等、表面の傷防止が求められる用途に好適に用いることができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例及び比較例を挙げて、前記実施形態を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<合成例1>
[アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−1)の合成]
撹拌装置、空気導入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、(a−1)成分として、アロファネート基含有ポリイソシアネート(デスモジュールXP2580、住化バイエルウレタン(株)製、イソシアネート基含有率20.0%、以下、「XP2580」という。一般式(4)で表されるアロファネート基含有ポリイソシアネート(a−1)においてRがヘキサキサメチレン基、Rがブチル基である化合物)43部、(a−2)成分としてポリオキシエチレンモノアクリレート(オキシエチレン基の繰り返し単位数4.5、水酸基価202mgKOH/g、以下、「PEG200MA」という。)57部、ジブチルスズジラウレート(以下、「DBTDL」という。)0.02部、ハイドロキノンモノメチルエーテル(以下、「MEHQ」という。)0.04部を投入した。なお、この時のイソシアネート基/水酸基の当量比は1.0である。
次に、空気を吹き込みながら内温を60℃に保持して5時間反応させた後、JIS K 7301の方法で、イソシアネート基含有率が0.1%以下となり、イソシアネート基が水酸基とほぼ全て反応してウレタン結合が形成されたことを確認して、アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−1)を100部得た。
得られたウレタンアクリレート(A−1)は、一般式(1)においてR及びRが水素原子、Rがヘキサメチレン基、Rがブチル基、AO及びAOがオキシエチレン基、並びにm及びnが4.5である化合物であり、25℃における粘度は下表1に示す通り10Pa・s、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量(標準ポリエチレングリコール換算)は1000であった。
【0035】
<合成例2>
[アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−2)の合成]
撹拌装置、空気導入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、(a−1)成分として、合成例1で使用したXP2580を37部、(a−2)成分としてポリオキシエチレンモノアクリレート(オキシエチレン基の繰り返し単位数6、水酸基価165mgKOH/g、以下、「PEG260MA」という。)を63部、DBTDLを0.02部、MEHQを0.04部投入した。なお、この時のイソシアネート基/水酸基の当量比は1.0である。
次に、空気を吹き込みながら内温を60℃に保持して5時間反応させた後、JIS K 7301の方法で、イソシアネート基含有率が0.1%以下となり、イソシアネート基が水酸基とほぼ全て反応してウレタン結合が形成されたことを確認して、アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−2)を100部得た。
得られたウレタンアクリレート(A−2)は、一般式(1)においてR及びRが水素原子、Rがヘキサメチレン基、Rブチル基、AO及びAOがオキシエチレン基、並びにm及びnが6である化合物であり、25℃における粘度は下表1に示す通り9Pa・s、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量は1400であった。
【0036】
<合成例3>
[アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−3)の合成]
撹拌装置、空気導入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、(a−1)成分として、合成例1で使用したXP2580を54部、(a−2)成分としてポリオキシエチレンモノアクリレート(オキシエチレン基の繰り返し単位数2、水酸基価326mgKOH/g、以下、「PEG90MA」という。)を46部、DBTDLを0.02部、MEHQを0.04部投入した。なお、この時のイソシアネート基/水酸基の当量比は1.0である。
次に、空気を吹き込みながら内温を60℃に保持して5時間反応させた後、JIS K 7301の方法で、イソシアネート基含有率が0.1%以下となり、イソシアネート基が水酸基とほぼ全て反応してウレタン結合が形成されたことを確認して、アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−3)を100部得た。
得られたウレタンアクリレート(A−3)は、一般式(1)においてR及びRが水素原子、Rがヘキサメチレン基、Rがブチル基、AO及びAOがオキシエチレン基、並びにm及びnが2である化合物であり、25℃における粘度は下表1に示す通り12Pa・s、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量は800であった。
【0037】
<合成例4>
[アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−4)の合成]
撹拌装置、空気導入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、(a−1)成分として、合成例1で使用したXP2580を33部、(a−2)成分としてポリオキシエチレンモノアクリレート(オキシエチレン基の繰り返し単位数8、水酸基価129mgKOH/g、以下、「PEG360MA」という。)を67部、DBTDLを0.02部、MEHQを0.04部投入した。なお、この時のイソシアネート基/水酸基の当量比は1.0である。
次に、空気を吹き込みながら内温を60℃に保持して5時間反応させた後、JIS K 7301の方法で、イソシアネート基含有率が0.1%以下となり、イソシアネート基が水酸基とほぼ全て反応してウレタン結合が形成されたことを確認して、アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−4)を100部得た。
得られたウレタンアクリレート(A−4)は、一般式(1)においてR及びRが水素原子、Rがヘキサメチレン基、Rがブチル基、AO及びAOがオキシエチレン基、並びにm及びnが8である化合物であり、25℃における粘度は下表1に示す通り7Pa・s、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量は1800であった。
【0038】
<合成例5>
[アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−5)の合成]
撹拌装置、空気導入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、(a−1)成分として、アロファネート基含有ポリイソシアネート(デスモジュールXP2565、住化バイエルウレタン(株)製、イソシアネート基含有率12.0%、以下、「XP2565」という。一般式(4)で表されるアロファネート基含有ポリイソシアネート(a−1)においてRが一般式(3)で表される脂環式炭化水素基、Rがブチル基である化合物)50部、(a−2)成分としてPEG260MAを50部、DBTDLを0.02部、MEHQを0.04部投入した。なお、この時のイソシアネート基/水酸基の当量比は1.0である。
次に、空気を吹き込みながら内温を60℃に保持して5時間反応させた後、JIS K 7301の方法で、イソシアネート基含有率が0.1%以下となり、イソシアネート基が水酸基とほぼ全て反応してウレタン結合が形成されたことを確認して、アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−5)を100部得た。
得られたウレタンアクリレート(A−5)は、一般式(1)においてR及びRが水素原子、Rが一般式(3)で表される脂環式炭化水素基、Rがブチル基、AO及びAOがオキシエチレン基、並びにm及びnが6である化合物であり、25℃における粘度は下表1に示す通り50Pa・s、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量は1300であった。
【0039】
<合成例6>
[アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−6)の合成]
撹拌装置、空気導入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、(a−1)成分として、合成例5で使用したXP2565を43部、(a−2)成分としてPEG360MAを57部、DBTDLを0.02部、MEHQを0.04部投入した。なお、この時のイソシアネート基/水酸基の当量比は1.0である。
次に、空気を吹き込みながら内温を60℃に保持して5時間反応させた後、JIS K 7301の方法で、イソシアネート基含有率が0.1%以下となり、イソシアネート基が水酸基とほぼ全て反応してウレタン結合が形成されたことを確認して、アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A−6)を100部得た。
得られたウレタンアクリレート(A−6)は、一般式(1)においてR及びRが水素原子、Rが一般式(3)で表される脂環式炭化水素基、Rがブチル基、AO及びAOがオキシエチレン基、並びにm及びnが8である化合物であり、25℃における粘度は下表1に示す通り16Pa・s、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量は1650であった。
【0040】
【表1】
【0041】
<比較合成例1>
[アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A’−1)の合成]
撹拌装置、空気導入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、(a−1)成分として、合成例1で使用したXP2580を63部、(a’−2)成分として2−ヒドロキシエチルアクリレート(オキシエチレン基の繰り返し単位数1、水酸基価483mgKOH/g、以下、「HEA」という。)を37部、DBTDLを0.02部、MEHQを0.04部投入した。なお、この時のイソシアネート基/水酸基の当量比は1.0である。
次に、空気を吹き込みながら内温を60℃に保持して5時間反応させた後、JIS K 7301の方法で、イソシアネート基含有率が0.1%以下となり、イソシアネート基が水酸基とほぼ全て反応してウレタン結合が形成されたことを確認して、アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A’−1)を100部得た。
得られたウレタンアクリレート(A’−1)は、一般式(1)においてR及びRが水素原子、Rがヘキサメチレン基、Rがブチル基、AO及びAOがオキシエチレン基、並びにm及びnが1である化合物であり、25℃における粘度は下表2に示す通り11Pa・s、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量は700であった。
【0042】
<比較合成例2>
[アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A’−2)の合成]
撹拌装置、空気導入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、(a−1)成分として、合成例4で使用したXP2565を38部、(a’−2)成分としてポリオキシエチレンモノアクリレート(オキシエチレン基の繰り返し単位数11、水酸基価98mgKOH/g、以下、「PEG480MA」という。)を62部、DBTDLを0.02部、MEHQを0.04部投入した。なお、この時のイソシアネート基/水酸基の当量比は1.0である。
次に、空気を吹き込みながら内温を60℃に保持して5時間反応させた後、JIS K 7301の方法で、イソシアネート基含有率が0.1%以下となり、イソシアネート基が水酸基とほぼ全て反応してウレタン結合が形成されたことを確認して、アロファネート基含有ウレタンアクリレート(A’−2)を100部得た。
得られたウレタンアクリレート(A’−2)は、一般式(1)においてR及びRが水素原子、Rが一般式(3)で表される脂環式炭化水素基、Rがブチル基、AO及びAOがオキシエチレン基、並びにm及びnが11である化合物であり、25℃における粘度は下表2に示す通り9Pa・s、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量は2100であった。
【0043】
<比較合成例3>
[ウレタンアクリレート(A’−3)の合成]
撹拌装置、空気導入管、温度計を備えた四つ口フラスコに、(a’−1)成分として、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート(デュラネートTPA−100、旭化成ケミカルズ(株)製、イソシアネート基含有率23.1%、以下、「TPA−100」という。)を39部、(a−2)成分としてPEG200MAを61部、DBTDLを0.02部、MEHQを0.04部投入した。なお、この時のイソシアネート基/水酸基の当量比は1.0である。
次に、空気を吹き込みながら内温を60℃に保持して5時間反応させた後、JIS K 7301の方法で、イソシアネート基含有率が0.1%以下となり、イソシアネート基が水酸基とほぼ全て反応してウレタン結合が形成されたことを確認して、ウレタンアクリレート(A’−3)を100部得た。
得られたウレタンアクリレート(A’−3)は、一分子中に繰り返し単位数が4.5のオキシエチレン基を有するがアロファネート基は有さず、上記一般式(1)に含まれない化合物であり、25℃における粘度は下表2に示す通り16Pa・s、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量は2300であった。
【0044】
【表2】
【0045】
<実施例1〜7、比較例1〜6>
[光硬化型ウレタン(メタ)アクリレート組成物の調製]
合成例1で得た(A−1)10部、(メタ)アクリロイル基含有化合物としてペンタエリスリトールテトラアクリレート(式(2)で表される(メタ)アクリロイル基含有化合物において、Rが水素原子、Xが炭素数5の4価の脂肪族多価アルコールであるペンタエリスリトールの水酸基を除いた基、s=4、t=0である化合物)10部、光重合開始剤として1‐ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184、BASF社製、以下、「Irgacure184」という。)0.6部、添加剤としてポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(BYK−3570、ビックケミー・ジャパン(株)製、以下、「BYK−3570」という。)0.04部、有機溶剤としてメチルエチルケトン(以下、「MEK」という。)30部を均一に混ぜ、樹脂固形分40%の光硬化型ウレタンアクリレート組成物1を調製した。
同様に、合成例1〜6で得た(A−1)〜(A−6)、比較合成例1〜3で得た(A’−1)〜(A’−3)、表3に示す(B)成分、Irgacure184、BYK−3570、MEKを用い、表4及び表5に示す割合(質量部)で混ぜ、光硬化型ウレタン(メタ)アクリレート組成物2〜14を調製した。
【0046】
【表3】
【0047】
<光硬化型ウレタン(メタ)アクリレート組成物の硬化膜層を有するフィルムの作製>
易接着PETフィルム(コスモシャインA4300、膜厚100μm、東洋紡績(株)製)上に、上記で得られた光硬化型樹脂組成物を、乾燥膜厚で25μmとなるよう塗工し、80℃で1分間乾燥して有機溶剤を蒸発させた。次に、紫外線照射装置(ヘレウス・ノーブルライト・フュージョン・ユーブイ(株)製、光源:Hバルブ)を用いて積算光量500mJ/cmの紫外線を照射することで、光硬化型樹脂組成物の硬化膜層を有するフィルムを得た。作製したフィルムについて下記評価を実施した結果を、下表4及び5に示す。
【0048】
<密着性>
JIS K 5600に準拠し、作製した硬化膜層を有するフィルムを、カッターナイフで1mm四方の碁盤目を100個作製し、市販のセロハンテープを表面に密着させた後に一気に剥がしたとき、剥離せずに残った碁盤目の個数を、下記の基準により判定した。
◎:残存した碁盤目の個数が100個
○:残存した碁盤目の個数が90〜99個
△:残存した碁盤目の個数が60〜89個
×:残存した碁盤目の個数が60個未満
<鉛筆硬度>
JIS K 5600に準拠し、作製した硬化膜層を有するフィルムを、45°の角度で750gの荷重をかけ、多様な硬度の鉛筆で引っ掻き、硬化膜に生じた傷の有無を目視にて確認することで判定した。
【0049】
<自己修復性>
作製した硬化膜層を有するフィルムに、23℃、60%RHの条件下、真鍮ブラシにより1kgの荷重をかけて10往復擦ったとき、硬化物の表面状態を目視によって下記の基準により判定した。
◎:傷が3分以内に復元する。または傷がつかない。
○:3分後に傷が認められるが、60℃恒温槽内に1分間保持することにより復元する。
×:3分後に傷が認められ、60℃恒温槽内に1分間保持しても傷が復元しない。
<耐屈曲性>
JIS K 5600に準拠し、作製した硬化膜層を有するフィルムの硬化膜面が外側になるように円筒に巻きつけたときの、硬化膜の状態を下記基準により判定した。
○:直径1mmの円筒でクラックが生じない。
△:直径1mmの円筒ではクラックが生じるが、直径4mmの円筒ではクラックが生じない。
×:直径4mmの円筒でクラックが生じる。
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
【0052】
上表4に示したとおり、本発明の実施例1〜8の光硬化型樹脂硬化物は、一旦付いた傷が経時的に復元して消失する特性を有し、鉛筆硬度、耐屈曲性、密着性に優れていた。
他方、上表5の比較例1及び2に示すように、一般式(1)においてm及びnが本発明の範囲を外れる化合物を用いた場合、傷復元性及び硬度を両立することができなかった。比較例3のようにアロファネート基を有しない化合物を用いた場合、傷復元性、耐屈曲性を満足しなかった。また、比較例4及び5に示すように一般式(2)で表される化合物の含有量が本発明の範囲を外れる場合、密着性、鉛筆硬度、耐屈曲性のいずれかを満足しなかった。
また、比較例6に示すようにアロファネート基含有ウレタンアクリレート単独では自己修復性が十分でなく、鉛筆硬度が劣っていた。