特許第6241728号(P6241728)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241728
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】ツインクラッチ式変速機の油圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/02 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
   F16H61/02
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-230224(P2013-230224)
(22)【出願日】2013年11月6日
(65)【公開番号】特開2015-90185(P2015-90185A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230121968
【弁護士】
【氏名又は名称】堀米 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100080056
【弁理士】
【氏名又は名称】西郷 義美
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 和彦
(72)【発明者】
【氏名】釜付 裕之
【審査官】 尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−333129(JP,A)
【文献】 特開2012−112504(JP,A)
【文献】 特開2011−133013(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/111431(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの一時的な停止と始動を行うアイドリングストップ手段と、奇数変速段を有する第1入力軸と、偶数変速段を有する第2入力軸と、前記エンジンからの出力を前記第1入力軸に伝達するための第1入力軸クラッチと、前記エンジンからの出力を前記第2入力軸に伝達するための第2入力軸クラッチと、前記第1入力軸クラッチの締結のための油圧を調整する第1油圧調整部と、前記第2入力軸クラッチの締結のための油圧を調整する第2油圧調整部と、前記エンジンの動力を用いて駆動し、前記第1油圧調整部と前記第2油圧調整部に油圧を供給する油圧供給部と、を有するツインクラッチ式変速機の油圧制御装置において、前記アイドリングストップ手段による前記エンジンの停止を行い、回転している前記エンジンの駆動力を利用して前記油圧供給部を駆動し、前記油圧供給部による供給油圧を増加させるとともに、前記第1油圧調整部と前記第2油圧調整部による前記第1入力軸クラッチと前記第2入力軸クラッチへの供給油圧を増加させ、前記エンジンの停止から前記エンジンの停止後の前記エンジンの始動までの間、前記第1入力軸クラッチと前記第2入力軸クラッチへの前記供給油圧を増加させた状態を維持することを特徴とするツインクラッチ式変速機の油圧制御装置。
【請求項2】
車両の車速を検出する車速検出手段を備え、前記アイドリングストップ手段は、前記車速が所定車速以下であることが検出された場合にエンジン停止を行い、前記油圧供給部による供給油圧を増加させることを特徴とする請求項1に記載のツインクラッチ式変速機の油圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はツインクラッチ式変速機の油圧制御装置に係り、特にエンジンの動力を利用して駆動する機械式オイルポンプと、エンジンを一時的に停止させるアイドリングストップ機能を備えたツインクラッチ式変速機の油圧制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの出力を変速機等に伝達するために、オイルポンプ等のオイル供給源を用いてエンジンと変速機との間のクラッチ締結のための油圧を供給して行っていた。
このオイルポンプには機械式オイルポンプと呼ばれるものがあり、このオイルポンプにおいてはエンジンの駆動力を利用して駆動している。
一方、所定条件下のもとでエンジンを一時的に停止およびその後の再始動を行うことのできる、アイドリングストップ手段が知られている。
このアイドリングストップ手段を実施すると、エンジンは駆動を停止するので上述の機械式オイルポンプも停止する。
すると、クラッチ締結のための油圧の供給が行われず、クラッチ締結のために必要な油圧が発生しないために、車両の発進までに時間がかかってしまう。
また、油圧を調整するソレノイドバルブにはオイルを排出するための排出経路が設けられており、この排出経路からオイルが排出されてしまうので、より車両の発進までに時間を要していた。
そのため、例えば下記特許文献1では、電磁オイルポンプやクラッチと油室との連通を遮断する機構を備えることで、クラッチ締結のための油圧を保持して、アイドリングストップから復帰した車両の再発進性を向上させるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−197899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、クラッチ締結のための油圧保持のために電磁オイルポンプ等の機器を備えねばならず、それらの機器のためのスペース確保を行う必要があったり、コストが上昇するという不都合がある。
【0005】
この発明は、電動オイルポンプ等の他の機器を用いることなく、アイドリングストップ中の油圧供給経路中の油圧低下を抑制し、アイドリングストップ後の車両走行を早期に行うことが可能なツインクラッチ式変速機の油圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、この発明は、上述不都合を除去するために、エンジンの一時的な停止と始動を行うアイドリングストップ手段と、奇数変速段を有する第1入力軸と、偶数変速段を有する第2入力軸と、前記エンジンからの出力を前記第1入力軸に伝達するための第1入力軸クラッチと、前記エンジンからの出力を前記第2入力軸に伝達するための第2入力軸クラッチと、前記第1入力軸クラッチの締結のための油圧を調整する第1油圧調整部と、前記第2入力軸クラッチの締結のための油圧を調整する第2油圧調整部と、前記エンジンの動力を用いて駆動し、前記第1油圧調整部と前記第2油圧調整部に油圧を供給する油圧供給部と、を有するツインクラッチ式変速機の油圧制御装置において、前記アイドリングストップ手段による前記エンジンの停止を行い、回転している前記エンジンの駆動力を利用して前記油圧供給部を駆動し、前記油圧供給部による供給油圧を増加させるとともに、前記第1油圧調整部と前記第2油圧調整部による前記第1入力軸クラッチと前記第2入力軸クラッチへの供給油圧を増加させ、前記エンジンの停止から前記エンジンの停止後の前記エンジンの始動までの間、前記第1入力軸クラッチと前記第2入力軸クラッチへの前記供給油圧を増加させた状態を維持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、エンジン停止直前にライン圧を上げることで、エンジン停止後の油圧の低下が抑制され、より長時間油圧回路内にオイルが残った状態となる。また、機械式オイルポンプからなる油圧供給部の吐出が可能な段階で第1入力軸クラッチ及び第2入力軸クラッチの指示圧を上げることで、各クラッチ油圧回路にもオイルが充填される。アイドリングストップ中に第2入力軸クラッチの指示圧を上げることで、より多くのオイルを油圧回路に満たすことができる。
また、アイドリングストップ時間が短時間であれば、油圧回路内にはオイルが排出されずに残っているため、油圧充填時間を縮めることができ、短時間で第1入力軸クラッチを接続させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1はツインクラッチ式変速機の油圧制御装置のシステム図である。(実施例)
図2図2はツインクラッチ式変速機の概略構成図である。(実施例)
図3図3はツインクラッチ式変速機の油圧制御装置の制御用フローチャートである。(実施例)
図4図4はツインクラッチ式変速機の油圧制御装置のタイムチャートである。(実施例)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面に基づいてこの発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例】
【0010】
図1図4はこの発明の実施例を示すものである。
図2において、1はツインクラッチ式変速機である。
このツインクラッチ式変速機1は、駆動源であるエンジン2が発生する駆動力をツインクラッチ式変速機1に伝達する変速機入力軸3を備え、エンジン2からの駆動力を変換している。
このとき、前記ツインクラッチ式変速機1とエンジン2の変速機入力軸3との間には、油圧制御装置4を配置する。
【0011】
そして、前記ツインクラッチ式変速機1は、図2に示す如く、奇数変速段を有する第1入力軸5と、偶数変速段を有する第2入力軸6と、前記エンジン2からの出力を前記第1入力軸5に伝達するための第1入力軸クラッチ7と、前記エンジンからの出力を前記第2入力軸6に伝達するための第2入力軸クラッチ8とを備えている。
つまり、前記エンジン2の変速機入力軸3を第1入力側と第2入力側とに分岐させた際に、変速機入力軸3の第1入力側端部を前記第1入力軸クラッチ7に連結する一方、変速機入力軸3の第2入力側端部を前記第2入力軸クラッチ8に連結する。
このとき、前記ツインクラッチ式変速機1は、図示しない変速機ケース内に前記第1入力軸5と前記第2入力軸6と出力軸9と夫々平行に配置している。
【0012】
前記第1入力軸5と前記出力軸9との間には、前記エンジン2側の一端から離間する他端に向かって、奇数変速段を構成する第1速ギヤ列10、第3速ギヤ列11、第5速ギヤ列12を配置する。
このとき、前記第1入力軸5と前記出力軸9との間において、第5速ギヤ列12よりも更に前記エンジン2側の他端に位置する部位にリバースギヤ列13を配置する。
そして、前記第1速ギヤ列10は、前記第1入力軸5に配置した第1速駆動ギヤ14と、この第1速駆動ギヤ14に噛み合うように前記出力軸9に配置した第1速・第2速従動ギヤ15とからなる。
また、前記第3速ギヤ列11は、前記第1入力軸5に配置した第3速駆動ギヤ16と、この第3速駆動ギヤ16に噛み合うように前記出力軸9に配置した第3速・第4速従動ギヤ17とからなる。
更に、前記第5速ギヤ列12は、前記第1入力軸5に配置した第5速駆動ギヤ18と、この第5速駆動ギヤ18に噛み合うように前記出力軸9に配置した第5速・第6速従動ギヤ19とからなる。
更に、前記リバースギヤ列13は、前記第1入力軸5に配置したリバース駆動ギヤ20と、このリバース駆動ギヤ20に噛み合うように前記出力軸9に配置したリバース従動ギヤ21とからなる。
【0013】
また、前記第2入力軸6と前記出力軸9との間には、前記エンジン2側の一端から離間する他端に向かって、偶数変速段を構成する第2速ギヤ列22、第4速ギヤ列23、第6速ギヤ列24を配置する。
そして、前記第2速ギヤ列22は、前記第2入力軸6に配置した第2速駆動ギヤ25と、この第2速駆動ギヤ25に噛み合うように前記出力軸9に配置した前記第1速・第2速従動ギヤ15とからなる。
また、前記第4速ギヤ列23は、前記第2入力軸6に配置した第4速駆動ギヤ26と、この第4速駆動ギヤ26に噛み合うように前記出力軸9に配置した前記第3速・第4速従動ギヤ17とからなる。
更に、前記第6速ギヤ列24は、前記第2入力軸6に配置した第6速駆動ギヤ27と、この第6速駆動ギヤ27に噛み合うように前記出力軸9に配置した前記第5速・第6速従動ギヤ19とからなる。
【0014】
そして、前記ツインクラッチ式変速機1は、図2に示す如く、前記第1入力軸5と前記第2入力軸6との途中にシフトアクチュエータ28を配置している。
このため、シフトアクチュエータ28は、制御手段29によって、第1速ギヤ列10〜第6速ギヤ列24、または、リバースギヤ列13の各変速ギヤに向かって移動されることで、前記エンジン2の出力を各変速ギヤを介して前記出力軸9に伝達し、駆動輪(図示せず)を駆動させることができる。
つまり、前記エンジン2の出力は、前記変速機入力軸3を介して、前記第1入力軸5及び前記第2入力軸6に伝達される。
このとき、前記変速機入力軸3に伝達されたエンジン2の出力は、前記第1入力軸クラッチ7を介して第1入力軸5に伝達される一方、前記第2入力軸クラッチ8を介して第2入力軸6に伝達される構成となっている。
【0015】
前記ツインクラッチ式変速機1の油圧制御装置4は、図1及び図2に示す如く、前記制御手段29によって、前記第1入力軸クラッチ7の締結のための油圧を調整する第1油圧調整部30と、前記第2入力軸クラッチ8の締結のための油圧を調整する第2油圧調整部31と、前記エンジン2の動力を用いて駆動し、前記第1油圧調整部30と前記第2油圧調整部31に油圧を供給する油圧供給部32と、を有している。
つまり、前記制御手段29は、図1及び図2に示す如く、アイドリングストップ手段33を備えている。
そして、このアイドリングストップ手段33は、前記エンジン2の一時的な停止と始動を行う。
また、前記油圧制御装置4は、図1に示す如く、前記エンジン2内の制御用オイル34を吸い上げるオイルポンプからなる前記油圧供給部32を備えており、この油圧供給部32を駆動制御する。
つまり、この油圧供給部32からの油圧をライン圧ソレノイドバルブからなるライン圧調整部35に供給し、ライン圧調整部35から第1ソレノイドバルブからなる前記第1油圧調整部30に油圧を供給する一方、第2ソレノイドバルブからなる前記第2油圧調整部31に油圧を供給する。
そして、前記第1油圧調整部30は、前記第1入力軸クラッチ7の締結のための油圧を調整し、前記第2油圧調整部31は、前記第2入力軸クラッチ8の締結のための油圧を調整する。
【0016】
追記すれば、図1は前記油圧制御装置4を示し、第1入力軸クラッチ7及び第2入力軸クラッチ8の動作原理を示している。
つまり、前記油圧制御装置4は、オイルポンプからなる前記油圧供給部32を備えている。
そして、この油圧供給部32で供給された油圧は、ライン圧ソレノイドバルブからなるライン圧調整部35で所定の油圧に調整される。
その後、ライン圧調整部35を経た所定の油圧が第1ソレノイドバルブからなる前記第1油圧調整部30及び第2ソレノイドバルブからなる前記第2油圧調整部31に供給される。
この前記第1油圧調整部30及び前記第2油圧調整部31においては、ソレノイドバルブ開度を調整して前記第1入力軸クラッチ7及び前記第2入力軸クラッチ8への供給油圧を調整し、第1入力軸クラッチ7及び第2入力軸クラッチ8の締結圧を調整している。
そして、前記第1油圧調整部30及び前記第2油圧調整部31を経た油圧は、第1油圧センサ36及び前記第2油圧センサ37を介して、前記第1入力軸クラッチ7及び前記第2入力軸クラッチ8に供給される。
【0017】
前記ツインクラッチ式変速機1の油圧制御装置4は、前記アイドリングストップ手段33による前記エンジン2の停止を行い、前記油圧供給部32による供給油圧を増加させるとともに、前記第1油圧調整部30と前記第2油圧調整部31による前記第1入力軸クラッチ7と前記第2入力軸クラッチ8への供給油圧を増加させる構成を有している。
詳述すれば、前記ツインクラッチ式変速機1の油圧制御装置4は、前記アイドリングストップ手段33によってアイドリングストップ開始条件が成立したか否かを判断し、この判断が成立した際に、前記エンジン2の停止を行う一方、前記油圧供給部32による供給油圧を増加させている。
そして、この油圧供給部32によって供給油圧が増加されるため、前記第1油圧調整部30と前記第2油圧調整部31による前記第1入力軸クラッチ7と前記第2入力軸クラッチ8への供給油圧が増加されるものである。
これにより、エンジン停止直前にライン圧を上げることで、エンジン停止後の油圧の低下が抑制され、より長時間油圧回路内にオイルが残った状態となる。また、機械式オイルポンプからなる前記油圧供給部32の吐出が可能な段階で前記第1入力軸クラッチ7及び前記第2入力軸クラッチ7の指示圧を上げることで、各クラッチ油圧回路にもオイルが充填される。アイドリングストップ中に第2入力軸クラッチ8の指示圧を上げることで、より多くのオイルを油圧回路に満たすことができる。
また、アイドリングストップ時間が短時間であれば、油圧回路内にはオイルが排出されずに残っているため、油圧充填時間を縮めることができ、短時間で前記第1入力軸クラッチ7を接続させることができる。
【0018】
また、車両の車速を検出する車速検出手段38と、エンジン回転数を検出するエンジン回転数検出手段39とを備えている。
つまり、図1及び図2に示す如く、前記制御手段29に車速検出手段38を接続して設ける。
そして、前記アイドリングストップ手段33は、前記車速が所定車速以下であることが検出された場合にエンジン停止を行い、前記油圧供給部32による供給油圧を増加させる。
つまり、前記車速が所定車速以下、例えば図4に示す如く、第1入力軸回転数もしくは車速のいずれか少なくとも一方が0(ゼロ)となった際に、前記アイドリングストップ手段33によってアイドリングストップ開始条件が成立したと判断し、前記エンジン2の停止を行う。
そして、アイドリングストップ開始条件が成立した後には、図4の点t3位置に示す如く、回転している前記エンジン2の駆動力を利用して前記油圧供給部32を駆動し、ライン圧充填制御を開始して油圧供給部32による供給油圧を増加させるものである。
これにより、車速が所定車速以下になることを検出した場合に、前記油圧供給部32による供給油圧の増加を行うので、早めに供給油圧の増加を行うことができ、より多くのオイルを油圧回路内に満たすことができる。
【0019】
ここで、図4にタイムチャートを説明する。
まず、車速の低下に伴い、エンジン回転数も低下する。
そして、図4の点t1位置において、車速が第1車速以下、もしくはエンジン回転数が第1エンジン回転数以下となることで、ライン圧の低下指示を行う。
具体的には、前記油圧供給部32からの供給量を調整するライン圧ソレノイドバルブからなる前記ライン圧調整部35の開度を減少してライン圧を減少させる。
その後、前記第1入力軸クラッチ7の第1入力軸クラッチ圧の低下指示を行い、第1ソレノイドバルブからなる前記第1油圧調整部30の開度も減少させて第1入力軸クラッチ7への供給油圧を低下させる。
図4の点t1位置〜点t2位置までの範囲においては、ライン圧及び前記第1入力軸クラッチ7への供給油圧の低下に伴い、第1入力軸クラッチ7の締結力が低下することから、前記第1入力軸5に伝達する前記エンジン2からの出力が減少する。
これにより、第1入力軸回転数は低下する。
一方のエンジン回転数は所定のエンジン回転数を維持することとなる。
図4の点t2位置において、ライン圧が所定指示圧になると、第1ソレノイドバルブからなる前記第1油圧調整部30の開度を0(ゼロ)とし、前記第1入力軸クラッチ7への供給油圧を0(ゼロ)とする。
図4の点t3位置においては、第1入力軸回転数もしくは車速のいずれか少なくとも一方が0(ゼロ)となることで、前記アイドリングストップ手段33によるアイドリングストップ開始条件が成立する。
そして、アイドリングストップ開始条件の成立後には、ライン圧充填制御が開始させ、回転している前記エンジン2の駆動力を利用して前記油圧供給部32を駆動し、この油圧供給部32による供給油圧を増加させる。
図4の点t4位置においては、エンジン回転数が所定値である所定のエンジン回転数n以下となることで、前記第1入力軸クラッチ7及び前記第2入力軸クラッチ8への指示供給圧を増大し、第1ソレノイドバルブからなる前記第1油圧調整部30及び第2ソレノイドバルブからなる前記第2油圧調整部31の開度を所定開度とし、第1入力軸クラッチ7及び第2入力軸クラッチ7への油圧供給を行う制御を開始、つまり、油圧充填制御を実施する。
図4の点t4位置〜点t5位置までの範囲においては、前記第1入力軸クラッチ7及び前記第2入力軸クラッチ8への油圧供給を継続する。
図4の点t5位置において、アイドリングストップ終了条件が成立すると、前記エンジン2の駆動が開始されることにより、前記油圧供給部32からのオイルの圧送が再開される。
このとき、車両の走行に使用しない前記第2入力軸クラッチ8への供給指示圧を0(ゼロ)とし、一方で車両の走行に使用する前記第1入力軸クラッチ7への油圧供給を開始する。
【0020】
次に、図3の前記ツインクラッチ式変速機1の油圧制御装置4の制御用フローチャートに沿って、作用を説明する。
【0021】
このツインクラッチ式変速機1の油圧制御装置4の制御用プログラムがスタート(101)すると、アイドリングストップ開始条件が成立するか否かの判断(102)に移行する。
この判断(102)においては、前記アイドリングストップ手段33によってアイドリングストップ開始条件が成立するか否かを判断している。
そして、アイドリングストップ開始条件が成立するか否かの判断(102)において、判断(102)がNOの場合には、後述する前記ツインクラッチ式変速機1の油圧制御装置4の制御用プログラムのエンド(108)に移行する。
アイドリングストップ開始条件が成立するか否かの判断(102)がYESの場合には、ライン圧充填制御を開始する処理(103)に移行する。
このライン圧充填制御を開始する処理(103)においては、回転している前記エンジン2の駆動力を利用して前記油圧供給部32を駆動し、この油圧供給部32による供給油圧を増加させている。
そして、ライン圧充填制御を開始する処理(103)の後には、エンジン回転数が所定値である所定のエンジン回転数n以下であるか否かの判断(104)に移行する。
このエンジン回転数が所定値である所定のエンジン回転数n以下であるか否かの判断(104)においては、前記第1入力軸クラッチ7及び前記第2入力軸クラッチ8への指示供給圧を増大させて、第1入力軸クラッチ7及び第2入力軸クラッチ7への油圧供給を行う制御を開始、つまり、油圧充填制御を実施する時期を判断している。
エンジン回転数が所定値である所定のエンジン回転数n以下であるか否かの判断(104)において、判断(104)がNOの場合には、この判断(104)がYESとなるまで、判断(104)を繰り返し行う。
エンジン回転数が所定値である所定のエンジン回転数n以下であるか否かの判断(104)がYESの場合には、油圧充填制御を実施する処理(105)に移行する。
この油圧充填制御を実施する処理(105)においては、前記第1入力軸クラッチ7及び前記第2入力軸クラッチ8への指示供給圧を増大させて、第1入力軸クラッチ7及び第2入力軸クラッチ7への油圧供給を行う制御を開始している。
そして、油圧充填制御を実施する処理(105)の後には、アイドリングストップ終了条件が成立するか否かの判断(106)に移行する。
このアイドリングストップ終了条件が成立するか否かの判断(106)においては、前記アイドリングストップ手段33によってアイドリングストップ終了条件が成立するか否かを判断している。
上述のアイドリングストップ終了条件が成立するか否かの判断(106)において、判断(106)がNOの場合には、この判断(106)がYESとなるまで、判断(106)を繰り返し行う。
アイドリングストップ終了条件が成立するか否かの判断(106)がYESの場合には、第2入力軸クラッチソレノイド閉弁の処理(107)に移行する。
この第2入力軸クラッチソレノイド閉弁の処理(107)において、図4の点t5位置に示すように、前記エンジン2の駆動が開始されることにより、前記油圧供給部32からのオイルの圧送が再開され、車両の走行に使用する前記第1入力軸クラッチ7への油圧供給を開始しているが、一方では、車両の走行に使用しない前記第2入力軸クラッチ8への供給指示圧を0(ゼロ)としている。
そして、第2入力軸クラッチソレノイド閉弁の処理(107)の後には、前記ツインクラッチ式変速機1の油圧制御装置4の制御用プログラムのエンド(108)に移行する。
【0022】
なお、この発明は上述実施例に限定されるものではなく、種々の応用改変が可能である。
【0023】
例えば、この発明の実施例においては、複数、つまり2本の入力軸を有するツインクラッチ式変速機の油圧制御装置として説明したが、1本の入力軸を有する変速機に、この発明の構成を採用する特別構成とすることも可能である。
さすれば、この発明に記載した効果と同様の効果を得ることが可能である。
また、エンジンのアイドリングストップが開始された場合に、オイルポンプからなる油圧供給部の供給油圧を上昇させ、その1つの入力軸とエンジンとを接続するクラッチへの油圧供給を行うように制御する特別構成とすることも可能である。
更に、この発明の実施例においては、図4の点t3位置において、アイドリングストップ条件が成立したと判断されるための条件の1つを車速が0(ゼロ)としたが、この車速が0(ゼロ)以外の所定車速以下となる場合に、アイドリングストップ条件が成立している判断する特別構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 ツインクラッチ式変速機
2 エンジン
3 変速機入力軸
4 油圧制御装置
5 第1入力軸
6 第2入力軸
7 第1入力軸クラッチ
8 第2入力軸クラッチ
9 出力軸
10 第1速ギヤ列
11 第3速ギヤ列
12 第5速ギヤ列
13 リバースギヤ列
14 第1速駆動ギヤ
15 第1速・第2速従動ギヤ
16 第3速駆動ギヤ
17 第3速・第4速従動ギヤ
18 第5速駆動ギヤ
19 第5速・第6速従動ギヤ
20 リバース駆動ギヤ
21 リバース従動ギヤ
22 第2速ギヤ列
23 第4速ギヤ列
24 第6速ギヤ列
25 第2速駆動ギヤ
26 第4速駆動ギヤ
27 第6速駆動ギヤ
28 シフトアクチュエータ
29 制御手段
30 第1油圧調整部
31 第2油圧調整部
32 油圧供給部
33 アイドリングストップ手段
34 制御用オイル
35 ライン圧調整部
36 第1油圧センサ
37 第2油圧センサ
38 車速検出手段
39 エンジン回転数検出手段
図1
図2
図3
図4