【実施例】
【0042】
以下、本発明のアクチュエータの実施例を、図面を参照して説明する。
【0043】
(1)アクチュエータの構成
以下、
図1から
図2を参照して、本実施例のアクチュエータ1について説明する。
図1は、上面側から観察した本実施例のアクチュエータ1の構成の一例を示す平面図である。
図2は、下面側から観察した本実施例のアクチュエータ1の構成の一例を示す平面図である。尚、
図1及び
図2(更には、
図3から
図4)では、X軸、Y軸及びZ軸によって規定される仮想的な3次元空間を用いながら、アクチュエータ1の説明を進める。
【0044】
図1及び
図2に示すように、本実施例のアクチュエータ1は、例えばレーザ光のスキャニングに用いられるプレーナ型電磁駆動アクチュエータ(即ち、MEMSスキャナ)である。アクチュエータ1は、外側支持体110と、一対の外側トーションバー130と、内側支持体210と、一対の内側トーションバー230と、可動部120と、駆動コイル140と、一対の永久磁石160と、一対の電源端子170とを備えている。また、
図1に示すように、可動部120の一方の面(例えば、上面又は表側の表面)には、ミラー121が形成されている。また、
図2に示すように、可動部120の他方の面(例えば、下面又は裏側の表面)には、リブ123(具体的には、第1リブ1231及び第2リブ1232)が形成されている。
【0045】
外側支持体110、一対の外側トーションバー130、内側支持体210、一対の内側トーションバー230、可動部120及びリブ123は、例えばシリコン基板等の非磁性基板から一体的に形成されている。即ち、外側支持体110、一対の外側トーションバー130、内側支持体210、一対の内側トーションバー230、可動部120及びリブ123は、例えばシリコン基板等の非磁性基板の一部が除去されることにより間隙が形成されることで形成されている。このときの形成プロセスとして、MEMSプロセスが用いられることが好ましい。尚、シリコン基板に代えて、任意の弾性材料から、外側支持体110、一対の外側トーションバー130、内側支持体210、一対の内側トーションバー230、可動部120及びリブ123が一体的に形成されてもよい。
【0046】
外側支持体110は、内側支持体210を取り囲むような枠形状を有している。外側支持体110は、内側支持体210の両側に位置する(言い換えれば、内側支持体210の両側から当該内側支持体210を挟み込む)一対の外側トーションバー130によって内側支持体210と連結されている。尚、
図1及び
図2は、外側支持体110の形状が枠形状となる例を示しているが、外側支持体110の形状が枠形状に限定されないことは言うまでもない。例えば、外側支持体110の形状は、その一部が開口している枠形状となってもよい。
【0047】
内側支持体210は、可動部120を取り囲むような枠形状を有している。内側支持体210は、一対の外側トーションバー130が延びる方向(つまり、一対の外側トーションバー130の長手方向であり、X軸方向)に沿った回転軸を中心に揺動可能なように、一対の外側トーションバー130を介して外側支持体110に軸支されている。内側支持体210は、更に、可動部120の両側に位置する(言い換えれば、可動部120の両側から当該可動部120を挟み込む)一対の内側トーションバー230によって可動部120と連結されている。内側支持体210の上面には、駆動コイル140が形成されている。但し、駆動コイル140は、内側支持体210の内部又は下面に形成されてもよい。尚、
図1及び
図2は、内側支持体210の形状が枠形状となる例を示しているが、内側支持体210の形状が枠形状に限定されないことは言うまでもない。例えば、内側支持体210の形状は、その一部が開口している枠形状となってもよい。
【0048】
可動部120は、一対の内側トーションバー230が延びる方向(つまり、一対の内側トーションバー230の長手方向であって、Y軸方向)に沿った回転軸を中心に揺動可能なように、一対の内側トーションバー230を介して内側支持体210に軸支されている。
【0049】
図1に示すように、可動部120の上面には、レーザ光を反射するミラー121が形成される。ミラー121が上面に形成される可動部120は、例えば、板状の(言い換えれば、平面状の)部材であることが好ましい。
【0050】
また、ミラー121がレーザ光を好適に反射するためには、ミラー121の平坦性が維持されていることが好ましい。ミラー121の平坦性が維持されるためには、可動部120の平坦性が維持されていることが好ましい。従って、
図2に示すように、可動部120の平坦性を維持するために、可動部120の下面(つまり、ミラー121が形成される面とは反対側の面)には、リブ123が形成される。
【0051】
リブ123は、可動部120の平坦性を確保することができる所望の形成態様で可動部120の下面上に形成されている。
図2に示す例では、リブ123は、可動部120の中心に中心が概ね一致する円形状の第1リブ1231と、当該第1リブ1231の外形である円形の外側に形成される円弧形状の第2リブ1232a及び1232bとを含んでいる。このとき、第2リブ1232a及び1242bの夫々は、可動部120の下面に平行な面上においてミラー121の外縁よりも外側(つまり、可動部120の中心から遠ざかる側)に形成されると共に、ミラー121に向かって凸となるように湾曲していることが好ましい。このようなリブ123の形成態様は、内側支持体210の回転軸(Y軸)及び可動部120の回転軸(X軸)に沿った方向における可動部120の剛性を極力確保しつつも、可動部120と内側トーションバー230とが連結される連結箇所からリブ123を遠ざけるという観点から決定されている。
【0052】
尚、
図2に示すリブ123の形成態様が一例であることは言うまでもない。従って、リブ123は、
図2に示す形成態様とは異なる形成態様で形成されていてもよい。
【0053】
一対の外側トーションバー130は、内側支持体210が外側支持体110に対して揺動可能なように、内側支持体210と外側支持体110とを連結する。一対の外側トーションバー130の弾性によって、内側支持体210は、一対の外側トーションバー130が延びる方向に沿った軸を回転軸として回転するように遥動する。つまり、内側支持体210は、X軸を回転軸として、当該回転軸の周りで回転するように遥動する。このとき、可動部120は、一対の内側トーションバー230を介して内側支持体210に連結されている。従って、内側支持体210の遥動に伴って、可動部120は、実質的には、X軸を回転軸として、当該回転軸の周りで回転するように遥動する。
【0054】
一対の内側トーションバー230の夫々は、可動部120が内側支持体210に対して揺動可能なように、可動部120と内側支持体210とを連結する。一対の内側トーションバー230の弾性によって、可動部120は、一対の内側トーションバー230が延びる方向に沿った軸を回転軸として回転するように遥動する。つまり、可動部120は、Y軸を回転軸として、当該回転軸の周りで回転するように遥動する。
【0055】
駆動コイル140は、例えば、内側支持体210の上に延びるコイルである。駆動コイル140は、例えば相対的に導電率の高い材料(例えば、金や銅等)を用いて形成されてもよい。また、駆動コイル140は、めっきプロセスやスパッタリング法等の半導体製造プロセスを用いて形成されてもよい。或いは、駆動コイル140は、外側支持体110、一対の外側トーションバー130、内側支持体210、一対の内側トーションバー230、可動部120及びリブ123を形成するためのシリコン基板に対してインプラント法を用いて埋め込まれてもよい。尚、
図1上では、図面の見やすさを重視して、駆動コイル140の外形を簡略化して記載してあるが、実際には、駆動コイル140は、内側支持体210の表面上に形成された一又は複数の巻き線によって構成されている。
【0056】
駆動コイル140には、外側支持体110上に形成されている一対の電源端子170及び当該一対の電源端子170と駆動コイル140とを電気的に接続するための配線150であって且つ一対の外側トーションバー130上に形成された配線150を介して、電源から制御電流が供給される。制御電流は、内側支持体210及び可動部120を遥動させるための制御電流であって、典型的には、内側支持体210が遥動する周波数と同期した周波数の信号成分及び可動部120が遥動する周波数と同期した周波数の信号成分を含む交流電流である。尚、電源は、アクチュエータ1自身が備えている電源であってもよいし、アクチュエータ1の外部に用意される電源であってもよい。
【0057】
一対の永久磁石160は、外側支持体110の外部に取り付けられている。但し、一対の永久磁石160は、駆動コイル140に対して所定の静磁界を印加することができる限りは、どのような箇所に取り付けられてもよい。一対の永久磁石160は、駆動コイル140に対して所定の静磁界を印加することができるように、その磁極の向きが適切に設定されていることが好ましい。尚、一対の永久磁石160には、静磁界の強度を高めるために、ヨークが付加されていてもよい。
【0058】
このような本実施例のアクチュエータ1が動作する(具体的には、可動部120が遥動する)場合には、まず、電源から、電源端子170及び配線150を介して、駆動コイル140に対して制御電流が供給される。このとき駆動コイル140に対して供給される制御電流は、内側支持体210を遥動させるための信号(具体的には、内側支持体210の遥動の周期に同期した信号)と可動部120を遥動させるための信号(具体的には、可動部120の遥動の周期に同期した信号)とが重畳された電流であることが好ましい。一方で、駆動コイル140には、一対の永久磁石160によって静磁界が印加されている。従って、駆動コイル140には、一対の永久磁石160から印加される静磁界と駆動コイル140に供給される制御電流との電磁相互作用に起因した力(つまり、ローレンツ力)が生ずる。その結果、駆動コイル140が形成されている内側支持体210は、一対の永久磁石160から印加される静磁界と駆動コイル140に供給される制御電流との電磁相互作用に起因したローレンツ力によって遥動する。つまり、内側支持体210は、X軸を回転軸として回転するように遥動する。このとき、可動部120は、複数の一対のトーションバー230を介して内側支持体210に接続されている。従って、内側支持体210の遥動に伴って、可動部120は、実質的には、X軸を回転軸として、当該回転軸の周りで回転するように遥動する。
【0059】
加えて、一対の永久磁石160から印加される静磁界と駆動コイル140に供給される制御電流との電磁相互作用に起因したローレンツ力は、慣性力として可動部120に伝達される。その結果、可動部120は、Y軸を回転軸として回転するように遥動する。
【0060】
このように、本実施例のアクチュエータ1によれば、可動部120の2軸駆動が行われる。
【0061】
尚、本実施例では、アクチュエータ1は、可動部120の2軸駆動を行う。但し、アクチュエータ1は、可動部120の1軸駆動を行ってもよい。この場合、アクチュエータ1は、外側支持体110及び一対の外側トーションバー130を備えていなくともよい。或いは、アクチュエータ1は、可動部120のN(但し、Nは3以上の整数)軸駆動を行ってもよい。
【0062】
本実施例では特に、
図1及び
図2に示すように、一対の内側トーションバー230の一部は、複数の分岐バー231(つまり、分岐バー231a及び分岐バー231b)に分岐している。具体的には、例えば、一対の内側トーションバー230は、一対の内側トーションバー230と可動部120とが連結される連結箇所の近傍において、複数の分岐バー231に分岐している。つまり、可動部120の近傍に位置する一対の内側トーションバー230の一部は、複数の分岐バー231に分岐している。
【0063】
複数の分岐バー231の夫々は、一対の内側トーションバー230の長手方向(つまり、Y軸方向)に沿って延びる。複数の分岐バー231の夫々は、可動部120に連結される。つまり、一対の内側トーションバー230は、複数の分岐バー231の夫々が可動部120に連結されることで、可動部120と内側支持体210とを連結する。
【0064】
更に、本実施例では、可動部120は、各分岐バー231と可動部120とが連結される連結箇所の近傍に、一対の突出部分122を備えている。具体的には、可動部120は、分岐バー231aと可動部120とが連結される連結箇所の近傍に、一対の突出部分122a(つまり、突出部分122a−1及び突出部分122a−2)を備えている。同様に、可動部120は、分岐バー231bと可動部120とが連結される連結箇所の近傍に、一対の突出部分122b(つまり、突出部分122b−1及び突出部分122b−2)を備えている。更に、
図2に示すように、第2リブ1232(つまり、第2リブ1232a及び第2リブ1232b)は、その少なくとも一部が少なくとも一つの突出部分122上にまで延びるように形成されている。
【0065】
以下、
図3を参照しながら、可動部120が備える突出部分122及び当該突出部分122上にまで延びる第2リブ1232についてより詳細に説明する。
図3は、可動部120の下面の一部を拡大して示す下面図である。
【0066】
図3に示すように、突出部分122は、当該突出部分122の周囲の領域部分(言い換えれば、突出部分122に隣接する領域部分)と比較して突き出している領域部分である。より具体的には、突出部分122は、可動部120の下面に沿った方向(つまり、XY平面に沿った方向)であって且つ可動部120の中心から離れる方向に向かって突き出している。言い換えれば、突出部分122は、可動部120の下面に沿った方向であって且つ可動部120の外部に向かう方向に向かって突き出している。更に言い換えれば、突出部分122は、突出部分122を備えていないと仮定した場合の可動部122の仮想的な外縁から、可動部120の下面に沿った方向であって且つ可動部120の中心から離れる方向に向かって突き出ている。つまり、可動部120の一部は、可動部120の下面に沿った方向であって且つ可動部120の中心から離れる方向に向かって突き出している。
【0067】
尚、
図3(a)に示す突出部分122の形状はあくまで一例である。従って、突出部分122は、突出部分122が周囲の領域部分と比較して突き出している(例えば、突出部分122を備えていないと仮定した場合の可動部122の仮想的な外縁から突き出している)限りは、どのような形状を有していてもよい。
【0068】
突出部分122は、可動部120と一体化されている(言い換えれば、同一の構造物から一体的に形成されている)ことが好ましい。但し、突出部分122は、可動部120に対して事後的に付加された(言い換えれば、接続された又は取り付けられた)構造を有していてもよい。但し、後に詳述するように、アクチュエータ1は、SOI(Silicon On Insulator)ウェハから製造されることが多い。この場合、可動部120及び突出部分122は、SOIウェハの第1シリコン層(言い換えれば、デバイス層又は活性層)等から一体的に形成されることが好ましい。
【0069】
また、突出部分122は、可動部120と同一平面上に位置することが好ましい。言い換えれば、突出部分122の下面と可動部120の下面とが同一平面上に位置することが好ましい。但し、突出部分122は、可動部120と同一平面上に位置していなくともよい。尚、アクチュエータ1がSOIウェハから製造される場合には、可動部120及び突出部分122がSOIウェハの第1シリコン層等から一体的に形成されるがゆえに、可動部120と突出部分122とは同一平面上に位置することになる。
【0070】
また、突出部分122の厚さと可動部120の厚さとが同一になることが好ましい。但し、突出部分122の厚さと可動部120の厚さとが同一でなくともよい。尚、アクチュエータ1がSOIウェハから製造される場合には、可動部120及び突出部分122がSOIウェハの第1シリコン層等から一体的に形成されるがゆえに、可動部120の厚さと突出部分122の厚さとは同一になる。
【0071】
また、突出部分122と当該突出部分122の周囲の領域部分との境界は、角が丸めこまれるフィレット加工(或いは、面取り加工、湾曲加工又は丸め加工等)が行われることが好ましい。但し、突出部分122と当該突出部分122の周囲の領域部分との境界は、角が丸めこまれるフィレット加工(或いは、面取り加工、湾曲加工又は丸め加工等)が行われていなくともよい。
【0072】
図3に示すように、第2リブ1232は、突出部分122上にまで延びるように形成されている。言い換えれば、第2リブ1232は、突出部分122以外の領域部分から突出部分122に向かって連続的に延びるように形成されている。つまり、第2リブ1232は、突出部分122と共に、可動部120の下面に沿った方向に向かって且つ可動部120の中心から離れる方向に向かって突き出すように形成されている。
【0073】
より具体的には、例えば、第2リブ1232aは、一対の突出部分122a−1及び122a−2の夫々の上にまで延びるように形成されている。
【0074】
特に、第2リブ1232aは、分岐バー231aと可動部120とが連結される連結箇所124aを包囲する形状を有している。言い換えれば、可動部120の下面に平行な面(つまり、XY平面)上における第2リブ1232の形状は、分岐バー231aと可動部120とが連結される連結箇所124aを包囲する形状となる。
図3に示す例では、第2リブ1232が連結箇所124aを包囲する形状の一例として、第2リブ1232の内壁(例えば、連結箇所124a側を向いている側面)によって規定される空間若しくは平面内に連結箇所124aが位置することが可能な形状が例示されている。つまり、
図3に示す例では、第2リブ1232が連結箇所124aを包囲する形状の一例として、第2リブ1232の内壁によって囲まれる空間又は平面内に連結箇所124aが位置することが可能な形状が例示されている。
【0075】
尚、ここで言う「連結箇所124aを包囲する」状態は、連結箇所124aの周囲の全体を包囲する状態(例えば、開口を備えていない閉ループ形状の第2リブ1232によって連結箇所124aを包囲する状態)を意味していてもよい。或いは、「連結箇所124aを包囲する」状態は、連結箇所124aの周囲の一部を包囲する状態((例えば、開口を備えている開ループ形状の第2リブ1232によって連結箇所124aを包囲する状態:
図3参照)をも含む。
【0076】
このとき、
図3に示すように、可動部120の下面に平行な面上における第2リブ1232aの形状は、突出部分122a−1から可動部120の下面を経由して突出部分122a−2に至るまで連続的に延びる円弧状の形状となる。より具体的には、第2リブ1232aの形状は、分岐バー231aと可動部120とが連結される連結箇所124aから見て、当該連結箇所124aから遠ざかる方向に向かって凸となる円弧形状となる。その結果、第2リブ1232aは、分岐バー231aと可動部120とが連結される連結箇所124aを好適に包囲することができる。但し、第2リブ1232aが一対の突出部分122a−1及び122a−2上にまで延びる限りは、第2リブ1232aの形状は、円弧形状以外の任意の形状であってもよい。
【0077】
尚、一対の突出部分122a−1及び122a−2上にまで延びる第2リブ1232aが連結箇所124aを包囲していることを考慮すれば、このような第2リブ1232aがその上に形成される一対の突出部分122a−1及び122a−2もまた、連結箇所124aを包囲する形状を有していてもよい。例えば、
図3に示すように、可動部120の下面に平行な面上における一対の突出部分122a−1及び122a−2の形状は、分岐バー231aと可動部120とが連結される連結箇所124aを包囲する(
図3に示す例では、挟みこむ)ことが可能な形状であってもよい。
【0078】
以上の説明は第2リブ1232aについての説明であるが、第2リブ1232bについても同様である。例えば、第2リブ1232aと同様に、第2リブ1232bもまた、一対の突出部分122b−1及び122b−2上にまで延びるように形成されている。例えば、第2リブ1232bもまた、分岐バー231bと可動部120とが連結される連結箇所124bを包囲する形状を有している。例えば、可動部120の下面に平行な面上における第2リブ1232bの形状は、突出部分122b−1から可動部120の下面を経由して突出部分122b−2に至るまで連続的に延びる円弧状の形状となる。
【0079】
突出部分122上では、第2リブ1232の回転軸側(内側トーションバー230側)の外縁は、突出部分122の回転軸側の外縁から離間している(離れている)ことが好ましい。つまり、可動部120の回転軸から見て(言い換えれば、内側トーションバー230から見て)、可動部120の回転軸に交わる(典型的には、直交する)方向に沿って、突出部分122のうち第2リブ1232が形成されていない領域部分と突出部分122のうち第2リブ1232が形成されている領域部分とがこの順に現れるように、第2リブ1232が形成されていることが好ましい。
【0080】
このような本実施例のアクチュエータ1によれば、突出部分122上にまで第2リブ1232が延伸しているがゆえに、可動部120の遥動に伴って第2リブ1232の付け根(言い換えれば、第2リブ1232と可動部120との接続部分)に加わる応力を緩和することができる。特に、可動部120の遥動に伴って、内側トーションバー230と可動部120との接続部分の近傍に位置する第2リブ1232の付け根に加わる応力を緩和することができる。言い換えれば、可動部120の遥動に伴う第2リブ1232の付け根における応力の集中を緩和することができる。
【0081】
以下、突出部分122上にまで第2リブ1232が延伸することで可動部120の遥動に伴う第2リブ1232の付け根における応力の集中を緩和することができる理由ついて簡単に説明する。
【0082】
一般的に、一対の内側トーションバー230によって支持された可動部120が遥動する場合には、可動部120の硬さが急激に変化する領域部分に応力が集中しやすい傾向がある。ここで、可動部120は、可動部120の幅(具体的には、可動部120の回転軸に直交する方向に沿った長さ)が大きくなるほど硬くなる傾向がある。
【0083】
そうすると、本実施例のアクチュエータ1においては、内側トーションバー230から可動部120に向かう方向に沿って、当初は可動部120の幅が徐々に大きくなっていく一方で、突出部分122が現れる位置において可動部120の幅が急激に大きくなることが分かる。従って、可動部120の遥動に伴う応力は、可動部120の幅が急激に大きくなる位置(つまり、突出部分122の回転軸側の外縁と周囲の領域部分との境界)に集中することになる。その結果、可動部120の遥動に伴う応力は、突出部分122の回転軸側の外縁と周囲の領域部分との境界から離れた位置に形成されている第2リブ1232(或いは、第2リブ1232の付け根)に集中することがない。つまり、突出部分122の回転軸側の外縁と周囲の領域部分との境界から離れた位置に形成されている第2リブ1232(或いは、第2リブ1232の付け根)に加わる応力が緩和される。
【0084】
尚、参考までに、リブ123の付け根に加わる応力の緩和を重視すると、トーションバー230と可動部120との接続部分から大きく離れた可動部120の領域部分に、リブ123が形成されればよいとも考えられる。つまり、第1リブ1231を形成する一方で第2リブ1232を形成しなければよいとも考えられる。というのも、可動部120が遥動する際に可動部120に加わる応力は、当該応力が加わる領域部分が内側トーションバー230に近ければ近いほど大きくなるからである。しかしながら、内側トーションバー230と可動部120との連結箇所から大きく離れた可動部120の領域部分に第1リブ1231のみを形成する(つまり、第2リブ1232を形成しない)と、可動部120の平坦性を確保することが困難になってしまいかねない。しかるに、本実施例のアクチュエータ1では、可動部120の平坦性を確保しつつも第2リブ1232と可動部120との接続部分に加わる応力を緩和することができるという実践上大変有用な効果が得られる。
【0085】
加えて、本実施例では、各分岐バー231が可動部120に連結される連結箇所124を個別に包囲する第2リブ1232が複数形成される。ここで、本願発明者の実験によれば、可動部120の遥動に伴う第2リブ1232と可動部120との接続部分に加わる応力は、第2リブ1232の曲率が大きくなるほど(つまり、第2リブ1232の曲率半径が小さくなるほど)緩和されることが判明している。そうすると、本実施例では、複数の分岐バー231に夫々対応する複数の連結箇所124をまとめて包囲する単一の第2リブ1232が形成される場合と比較して、第2リブ1232のサイズが相対的に小さくなる。その結果、本実施例では、複数の連結箇所124をまとめて包囲する単一の第2リブ1232が形成される場合と比較して、第2リブ1232の曲率が相対的に大きくなる(つまり、第2リブ1232の曲率半径が小さくなる)。このため、可動部120の遥動に伴う第2リブ1232と可動部120との接続部分に加わる応力を緩和することができる。
【0086】
加えて、本実施例では、内側トーションバー230が複数の分岐バー231に分岐している。このため、内側トーションバー230全体としての幅を相対的に大きくしつつも、可動部120の遥動に伴う第2リブ1232と可動部120との接続部分に加わる応力を緩和することができる。
【0087】
ここで、
図4を参照しながら、比較例として、内側トーションバー230を複数の分岐バー231に分岐させることなく内側トーションバー230全体としての幅のみを大きくするアクチュエータについて検討する。
図4に示すように、比較例では、内側トーションバー230と可動部120との連結箇所124の幅もまた相対的に大きくなる。その結果、比較例では、相対的に大きい幅を有する連結箇所124を包囲する単一の第2リブ1232が形成される。この場合、相対的に大きい幅を有する連結箇所124を包囲する第2リブ1232のサイズが相対的に大きくなる。つまり、第2リブ1232の曲率が相対的に小さくなる(つまり、第2リブ1232の曲率半径が大きくなる)。その結果、可動部120の遥動に伴う第2リブ1232と可動部120との接続部分における応力が緩和されにくい。
【0088】
しかるに、本実施例では、上述したように、内側トーションバー230が複数の分岐バー231に分岐しているがゆえに、複数の分岐バー231に対応する複数の連結箇所124の夫々を個別に包囲する第2リブ1232が複数形成される。このため、比較例と比較して、内側トーションバー230全体としての幅を相対的に大きくした場合であっても、各連結箇所124を包囲する第2リブ1232のサイズを相対的に小さくすることができる。このため、第2リブ1232の曲率を相対的に大きくする(つまり、第2リブ1232の曲率半径を相対的に小さくすることができる。従って、本実施例では、比較例と比較して、内側トーションバー230全体としての幅を相対的に大きくした場合であっても、可動部120の遥動に伴う第2リブ1232と可動部120との接続部分に加わる応力を緩和することができる。
【0089】
尚、内側トーションバー230の幅を相対的に大きくすると、内側トーションバー230のバネ定数が大きくなる。内側トーションバー230のバネ定数が大きくなると、内側トーションバー230を介して内側支持体210に軸支されている可動部120の遥動の周波数が高くなる。従って、本実施例では、可動部120の遥動に伴う第2リブ1232と可動部120との接続部分に加わる応力を緩和しつつも、可動部120の遥動の周波数を相対的に高くすることができるという実践上大変有益な効果を享受することができる。
【0090】
また、上述したように、本実施例のアクチュエータ1は、SOIウェハから製造されることが多い。この場合、
図5に示すように、可動部120及び内側トーションバー230が第1シリコン層(言い換えれば、デバイス層又は活性層)181から形成される一方で、リブ123が第2シリコン層(言い換えれば、ハンドル層又は支持層)183から形成される。ここで、第1シリコン層181と第2シリコン層183との間には、ボックス層(言い換えれば、酸化膜層)182が存在している。ところが、ボックス層182は、第1シリコン層181及び第2シリコン層183と比較して脆いがゆえに、可動部120の遥動に伴う応力によって破壊されやすい。このようなボックス層182の破壊は、リブ123の可動部120からの剥離につながりかねない。更には、アクチュエータ1の製造工程の関係上、
図5の右側の図面に示すように、第2シリコン層183から形成されるリブ123の付け根には、ノッチが入りやすくなっている(但し、
図5の中央の図面に示すように、通常は、第2シリコン層183から形成されるリブ123の付け根にノッチが入らないようにアクチュエータ1が製造される)。このようなノッチは、可動部120の遥動に伴う応力によるリブ123の可動部120からの剥離につながりかねない。しかるに、本実施例では、リブ123の付け根に加わる応力の緩和が実現されるがゆえに、ボックス層182を介して第2シリコン層183(リブ123)と第1シリコン層181(可動部120)とが接続され且つリブ123の付け根にノッチが入っている場合であっても、リブ123の可動部120からの剥離が生じにくいという実践上大変有用な効果が得られる。
【0091】
尚、上述した説明では、連結箇所124aを包囲する第2リブ1232aと連結箇所124bを包囲する第2リブ1232bとが物理的に分離している。しかしながら、連結箇所124aを包囲する第2リブ1232aの少なくとも一部と連結箇所124bを包囲する第2リブ1232bの少なくとも一部とが一体化されていてもよい。例えば、
図6に示す例では、第2リブ1232aのうち突出部分122a−2の近傍に位置するリブ部分と、第2リブ1232bのうち突出部分122b−2の近傍に位置するリブ部分とが一体化されている。この場合、一体化された第2リブ1232aが形成される突出部分122a−2と、一体化された第2リブ1232bが形成される突出部分122b−2もまた一体化されていてもよい。このように構成しても、上述した各種効果が好適に又は相応に享受される。
【0092】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うアクチュエータもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。