特許第6241737号(P6241737)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6241737-アルカリ電池及びその製造方法 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6241737
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】アルカリ電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20171127BHJP
   H01M 4/06 20060101ALI20171127BHJP
   H01M 4/50 20100101ALI20171127BHJP
   H01M 4/42 20060101ALI20171127BHJP
   H01M 6/08 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   H01M4/62 C
   H01M4/06 E
   H01M4/06 T
   H01M4/50
   H01M4/42
   H01M6/08 A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-5636(P2014-5636)
(22)【出願日】2014年1月16日
(65)【公開番号】特開2015-135724(P2015-135724A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2016年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】住廣 泰史
【審査官】 前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】 特表平08−510355(JP,A)
【文献】 特表2002−500428(JP,A)
【文献】 米国特許第06828064(US,B1)
【文献】 特開昭57−095077(JP,A)
【文献】 特開昭56−076168(JP,A)
【文献】 特開2009−043643(JP,A)
【文献】 特開2007−173097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/62
H01M 4/06
H01M 4/42
H01M 4/50
H01M 6/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛合金を含む負極と、
二酸化マンガンを含む正極と、
アルカリ電解液と
を備えたアルカリ電池であって、
前記正極は、アナターゼ型二酸化チタンを含有し、
前記アナターゼ型二酸化チタンに含有されるアンチモンは、7ppm以下に規制されている、アルカリ電池。
【請求項2】
前記正極は、前記二酸化マンガンに対して、0.1〜2.5質量%の範囲のアナターゼ型二酸化チタンを含む、請求項1に記載のアルカリ電池。
【請求項3】
前記二酸化マンガンは、25℃、40質量%の水酸化カリウム水溶液中で、水銀/酸化水銀の参照電極を基準として、260〜310mVの範囲の電位を有する、請求項1に記載のアルカリ電池。
【請求項4】
前記亜鉛合金は、50〜200ppmのビスマス、100〜500ppmのインジウム、及び40〜150ppmのアルミニウムを含有する、請求項1に記載のアルカリ電池。
【請求項5】
アンチモンの含有が7ppm以下に規制されたアナターゼ型二酸化チタンを用意する工程と、
二酸化マンガンに、前記アナターゼ型二酸化チタンを含有させて、正極合剤を作した後、該正極合剤を中空円筒状に成形する工程と、
前記正極合剤を電池ケース内に収容する工程と、
前記正極合剤の内側に有底円筒状のセパレータを挿入する工程と、
前記電池ケース内に、アカリ電解液を注入する工程と、
前記セパレータの内側に、亜鉛合金を含むゲル状負極合剤を充填する工程
とを含む、アカリ電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存特性に優れたアルカリ電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゲーム機器やデジタルスチルカメラなどの機器にも使用できる、中負荷放電特性、及び高負荷放電特性に優れたアルカリ電池が要求されている。
【0003】
特許文献1には、正極に、アナターゼ型二酸化チタンを添加することによって、放電中のイオンの可動性を高め、これにより、放電中の分極を抑制して、中負荷放電特性、及び高負荷放電特性を向上させたアルカリ電池が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平8−510355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地震や台風などの自然災害に備えた非常用電源として、長期間保存しても、電解液の漏液の生じないアルカリ電池が要求されている。
【0006】
ところが、正極にアナターゼ型二酸化チタンを添加して、中負荷放電特性、及び高負荷放電特性を向上させたアルカリ電池を長期間保存したとき、電解液の漏液が生じる電池が一定の割合で発生するという問題が見出された。
【0007】
本発明は、長期間保存しても電解液の漏液の生じない、放電特性に優れたアルカリ電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るアルカリ電池は、亜鉛合金を含む負極と、二酸化マンガンを含む正極と、アルカリ電解液とを備え、正極は、アナターゼ型二酸化チタンを含有し、アナターゼ型二酸化チタンに含有するアンチモンは、7ppm以下に規制されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、長期保存しても電解液の漏液の生じない、放電特性に優れたアルカリ電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態におけるアルカリ電池の構成を模式的に示した半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を説明する前に、本発明を想到するに至った経緯をまず説明する。
【0012】
本願発明者は、正極にアナターゼ型二酸化チタンを含むアルカリ電池を作製し、その中負荷放電特性及び高負荷放電特性を評価するとともに、5年の保存特性の評価に相当する加速試験(60℃、3ヶ月間保存)を行って、漏液発生の有無を評価した。
【0013】
表1は、その結果を示した表である。ここで、二酸化チタンの添加量は、正極活物質である二酸化マンガンに対する割合(質量%)を示す。また、中負荷放電特性は、電池1個に、3.9Ωの負荷をかけて、0.9Vに達するまでの連続放電時間を示し、高負荷放電特性は、電池1個に、2.2Ωの負荷をかけて、0.8Vに達するまでの連続放電時間を示す。また、漏液発生は、作製した電池60個のうち、漏液の生じた電池の個数を示す。
【0014】
【表1】
【0015】
表1に示すように、正極に二酸化チタンを添加していない電池Aでは、漏液の生じた電池はなかった。
【0016】
これに対して、正極に二酸化チタンを添加した電池B〜Dでは、二酸化チタンを添加することによって、中負荷放電特性及び高負荷放電特性は向上していた。なお、二酸化チタンの添加量が2.5質量%の電池Dは、添加量が1.0質量%の電池DCに比べて、中負荷放電特性及び高負荷放電特性が低かったのは、正極に含まれる二酸化マンガンの量が、相対的に減少したためと考えられる。
【0017】
一方、正極に二酸化チタンを添加した電池B〜Dでは、一定の割合で、漏液の生じた電池があった。そして、漏液の生じた電池の割合は、二酸化チタンの添加量が増えるに従い、増加していた。
【0018】
このように、正極に二酸化チタンを添加することによって、中負荷放電特性及び高負荷放電特性の向上を図ることができる一方、長期保存したとき、一定の割合で、電解液の漏液が生じるという問題が判明した。
【0019】
電解液の漏液の原因の一つとして、電池内部に混入した金属不純物が電解液に溶出し、溶出した金属イオンが電池内を移動して負極に到達し、亜鉛の表面に金属不純物が析出して、亜鉛との間に局部電池を形成してしまうことが考えられる。このような局部電池が電解液中で形成されると、水素が発生し、発生した水素で電池内の圧力が上昇することによって、電解液が漏液することになる。
【0020】
上記の漏液が、正極に二酸化チタンを添加していない電池Aでは生じていないことから、局部電池を形成する金属不純物としては、二酸化チタンに由来するものと考えられる。さらに、上記の漏液が、同一条件で作製した電池において、一定の割合で発生していることから、二酸化チタンに含まれる金属不純物の量がばらついて、その量が所定値を超えたとき、局部電池の形成に起因する水素ガスの発生が顕在化したものと考えられる。
【0021】
ところで、工業的に製造される二酸化チタンは、その用途に応じて、様々なグレードが存在する。電池の正極に添加する二酸化チタンは、中負荷放電特性及び高負荷放電特性を向上させる優れた機能を有するが、電池の性能に影響のでない純度のものを使用する必要がある。特に、鉄やニッケルは、金属不純物として電池内に混入すると、上述した局部電池を形成して、漏液の原因になるおそれがある。
【0022】
そこで、本願発明者は、正極に添加する二酸化チタンに含まれる金属不純物を分析し、二酸化チタンを添加することによって生じた漏液との関係を調べた。
【0023】
表2は、表1に示した電池A〜Dにおいて、正極に添加した二酸化チタンに含まれる金属不純物の分析結果を示した表である。なお、二酸化チタンは、市販している2社(A社、B社)から購入したもので、それぞれの会社の3種類のグレードのものを使用した。また、表2の最下段には、正極に、6種類の二酸化チタン(2.5質量%)をそれぞれ添加して作製したアルカリ電池10個に対して、5年の保存特性の評価に相当する加速試験(60℃、3ヶ月保存)を行ったときの、漏液の生じた電池の割合(個/10個)を示す。
【0024】
【表2】
【0025】
なお、二酸化チタン中の金属不純物の含有量の測定は、以下の方法で行った。
【0026】
(1)ICP発光分析法による測定
二酸化チタン試料1gに、硫酸アンモニム5gと硫酸15mlを加え、これを加熱溶解し、これに超純水を加えて、100mlの測定溶液とした。この測定溶液を噴霧状にして、高周波誘導結合プラズマ(IPC)に導入し、発生したイオンを発光分析部で検出することにより、二酸化チタン試料中の鉄(Fe)及びにニオブ(Nb)の含有量を測定した。
【0027】
(2)ICP質量分析法による測定
二酸化チタン試料0.5gに、硫酸アンモニウム3gと硫酸10mlを加え、これを加熱溶解し、これに超純水を加えて、100mlの測定溶液とした。この測定溶液を噴霧状にして、高周波誘導結合プラズマ(IPC)に導入し、発生したイオンを質量分析部で検出することにより、二酸化チタン試料中の鉛(Pb)、タングステン(W)、アンチモン(Sb)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、及びスズ(Sn)の含有量を測定した。
【0028】
表2に示すように、二酸化チタンに含まれる鉄及びニオブの含有量は多いが、それぞれ、含有量の多少とは関係なく、漏液が生じたり、生じなかったりしている。従って、これらの金属不純物の含有量と漏液発生とは相関がなく、これらの金属不純物は、漏液の原因ではないと考えられる。
【0029】
なお、二酸化チタンに含まれる鉄は、どの試料も100ppm以下であり、この値は、通常、正極活物質として使用する電解二酸化マンガンに含まれる鉄の含有量と同程度である。従って、少なくとも、二酸化チタンに含まれる鉄の含有量を、電解二酸化マンガンに含まれる鉄の含有量と同程度に管理していれば、正極に二酸化チタンを添加したことに起因する漏液は生じないものと考えられる。
【0030】
同様に、含有量の少ない鉛、ニッケル、コバルト、スズについても、含有量の多少とは関係なく、漏液が生じたり、生じなかったりしている。従って、これらの金属不純物の含有量と漏液発生とは相関がなく、これらの金属不純物も、漏液の原因ではないと考えられる。
【0031】
これに対して、タングステン及びアンチモンは、含有量が多いとき(試料A−3、B−1)に漏液が生じ、含有量が少ないとき(試料A−1、A−2、B−2、B−3)に漏液が生じていない。従って、二酸化チタンに含まれるタングステン及び/又はアンチモンは、正極に二酸化チタンを添加したことに起因する漏液の原因である可能性がある。
【0032】
そこで、本願発明者は、純度の高い二酸化チタンの試料に対して、所定量のタングステン及びアンチモンを加えて、意図的に、タングステン及びアンチモンの含有量を変えた試料を作成し、この試料を用いて、正極に二酸化チタンを添加した電池を作製して、5年の保存特性の評価に相当する加速試験(60℃、3ヶ月保存)を行ったときの、漏液発生の有無を調べた。
【0033】
なお、試料は、それぞれ、次のようにして作製した。
【0034】
純度の高い(99.0%)二酸化チタン(関東化学製 酸化チタン(IV))1000gに、WO粉末を、それぞれ、0.001g、0.014g、0.033g、0.133g加え、これらを濃硫酸に溶解して濃縮し、加熱加水分解させた。そして、白色の沈殿物を水洗・乾燥した後、800℃、12時間焼成して、タングステンの含有量を、1〜105ppmの範囲に変えた二酸化チタン試料を作成した。
【0035】
同様に、純度の高い(99.0%)二酸化チタン(関東化学製 酸化チタン(IV))
1000gに、Sb粉末を、それぞれ、0.001g、0.018g、0.039g、0.114g加え、これらを濃硫酸に溶解させて濃縮し、加熱加水分解させた。そして、白色の沈殿物を水洗・乾燥した後、800℃、12時間焼成して、アンチモンの含有量を、1〜95ppmの範囲に変えた二酸化チタン試料を作成した。
【0036】
表3及び表4は、その結果を示した表である。
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
表3に示すように、タングテンの含有量が105ppmの電池Hでも、漏液は生じなかった。これに対し、表4に示ように、アンチモンの含有量が15ppmを超えた電池J〜Lでは、全ての電池で漏液が生じた。
【0040】
これにより、正極に二酸化チタンを添加したことに起因する漏液の原因は、二酸化チタンに不純物として含まれるアンチモンにあることが判明した。なお、表2及び表4から分かるように、アンチモンの含有量が10ppm程度の少量でも、長期保存による漏液の原因となるが、従来、このような少量のアンチモンは、不純物の管理として考慮されていなかったものである。
【0041】
換言すれば、正極に二酸化チタンを添加することによって、中負荷放電特性及び高負荷放電特性を向上させたアルカリ電池において、長期保存したときの漏液発生を防止する上で、二酸化チタンに不純物として含まれるアンチモンの含有量が、重要な管理項目であることが判明した。
【0042】
本願発明者は、管理すべきアンチモンの含有量を把握するために、アンチモンの含有量をさらに詳細に変えた試料を作成し、この試料を用いて、正極に二酸化チタンを添加した電池を作製して、5年の保存特性の評価に相当する加速試験(60℃、3ヶ月保存)を行ったときの、漏液発生の有無を調べた。なお、試料は、上述した方法と同じ方法で作成し、アンチモンの含有量を、1〜10ppmの範囲に変えた二酸化チタン試料を作成した。また、漏液発生の有無の評価は、5年の保存特性の評価に相当する加速試験(60℃、3ヶ月間保存)に加え、10年の保存特性の評価に相当する加速試験(80℃、3ヶ月間保存)も行った。
【0043】
表5は、その結果を示した表である。
【0044】
【表5】
【0045】
表5に示すように、5年の保存特性の評価では、アンチモンの含有量が7ppm以下の電池M〜Qでは、漏液が生じていなかったのに対し、アンチモンの含有量が10ppmの電池Rでは、漏液が生じていた。一方、10年の保存特性の評価では、アンチモンの含有量が3ppm以下の電池M〜Oでは、漏液が生じていなかったのに対し、アンチモンの含有量が5ppm以上の電池P〜Rでは、漏液が生じていた。
【0046】
以上の結果から、正極に二酸化チタンを添加することによって、中負荷放電特性及び高負荷放電特性を向上させたアルカリ電池において、二酸化チタンに含まれるアンチモンの含有量を7ppm以下に規制することによって、長期保存したときの漏液発生を防止することができる。さらに、二酸化チタンに含まれるアンチモンの含有量を3ppm以下に規制することによって、10年の長期保存をしたときでも、漏液発生を防止することができる。
【0047】
図1は、本発明の一実施形態におけるアルカリ電池の構成を模式的に示した半断面図である。
【0048】
図1に示すように、本実施形態におけるアルカリ電池は、有底円筒状の電池ケース1内に配設された中空筒状の正極2と、正極2の中空部内に充填された負極3と、正極2と負極3との間に配されたセパレータ4と、電池ケース1内に注液されたアルカリ電解液(不図示)とを備えている。そして、電池ケース1の開口部は、ガスケット5と、負極集電子6が接続された負極端子板7とで構成された封口ユニット9で封口されている。
【0049】
本実施形態における正極2は、正極活物質である二酸化マンガンを含み、負極3は、亜鉛合金粉末を含む。また、正極2は、アナターゼ型二酸化チタンを含有し、アナターゼ型二酸化チタンに含有するアンチモンは、質量当たり、7ppm以下に規制されている。
【0050】
このように構成されたアルカリ電池は、正極2にアナターゼ型二酸化チタンを含有させることによって、中負荷放電特性及び高負荷放電特性を向上させることができるとともに、アナターゼ型二酸化チタンに含有するアンチモンを7ppm以下に規制することによって、長期保存したときの電解液の漏液発生を防止することができる。さらに、10年の長期保存でも漏液を生じさせないためには、アナターゼ型二酸化チタンに含有するアンチモンを3ppm以下に規制することが好ましい。
【0051】
また、このように構成されたアルカリ電池は、アンチモンの含有量が7ppm以下に規制されたアナターゼ型二酸化チタンを用意する工程と、二酸化マンガンに、このアナターゼ型二酸化チタンを含有させて、正極合剤を作成した後、正極合剤を中空円筒状に成形する工程と、この正極合剤を電池ケ−ス1内に収容する工程と、正極合剤の内側に有底円筒状のセパレ−タ4を挿入する工程と、電池ケース1内に、アリカリ電解液を注入する工程と、セパレータ4の内側に、亜鉛合金を含むゲル状負極合剤を充填する工程により製造することができる。
【0052】
本実施形態において、正極2に添加するアナターゼ型二酸化チタンの含有量は特に限定されない。含有量が少なければ、中負荷放電特性及び高負荷放電特性の向上が得られず、また、含有量が多ければ、逆に、正極活物質である二酸化マンガンの量が減って、放電特性の低下を招く。従って、中負荷放電特性及び高負荷放電特性の向上を得るには、二酸化マンガンに対して、0.1〜2.5質量%の範囲のアナターゼ型二酸化チタンを含むことが好ましい。
【0053】
また、アナターゼ型二酸化チタンの平均粒子径が小さければ、電解液と接触する界面が増大し、アナターゼ型二酸化チタンに含まれる金属不純物が溶出しやすくなる虞がある。一方、アナターゼ型二酸化チタンの平均粒子径が大きければ、正極活物質と接触する界面が減少し、中負荷放電特性及び高負荷放電特性の向上が得にくくなる。従って、アナターゼ型二酸化チタンの平均粒子径は、0.1〜0.5μmの範囲のものを用いることが好ましい。
【0054】
ところで、アナターゼ型二酸化チタンに含まれるアンチモンは、酸化物の形態で存在すると考えられる。そこで、アンチモン酸化物の電解液の溶出を抑制するためには、アンチモン酸化物と二酸化マンガンとの電気化学的ポテンシャルの差を小さくすることが好ましい。すなわち、二酸化マンガンは、25℃、40質量%の水酸化カリウム水溶液中で、水銀/酸化水銀の参照電極を基準として、260〜310mVの範囲の電位を有していることが好ましい。これにより、アンチモン酸化物の電解液への溶出が抑制されるため、溶出したアンチモンが亜鉛表面に析出するのが抑制される。その結果、局部電池の形成に起因する水素の発生が抑制されるため、発生した水素で電池内の圧力が上昇することによる電解液の漏液を抑制することができる。
【0055】
また、亜鉛合金に、水素過電圧の高い元素(ビスマス、インジウム)を含有させることによって、亜鉛合金の耐食性を向上させることができる。また、亜鉛合金に、亜鉛表面を平滑化する元素(アルミニウム)を含有させることによっても、亜鉛合金の表面積を抑制して、耐食性を向上させることができる。これにより、電解液の漏液をより抑制するこができる。これらのことから、亜鉛合金は、50〜200ppmのビスマス、100〜500ppmのインジウム、及び40〜150ppmのアルミニウムを含有することが好ましい。
【0056】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、もちろん、種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、長期間保存するアルカリ電池に有用である。
【符号の説明】
【0058】
1 電池ケース
2 正極
3 負極
4 セパレータ
5 ガスケット
6 負極集電子
7 負極端子板
9 封口ユニット
図1